特許第6415768号(P6415768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6415768マスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415768
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】マスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/50 20120101AFI20181022BHJP
   G03F 1/32 20120101ALI20181022BHJP
   G03F 1/30 20120101ALI20181022BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20181022BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   G03F1/50
   G03F1/32
   G03F1/30
   G03F1/24
   H01L21/30 502D
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-30096(P2018-30096)
(22)【出願日】2018年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-141969(P2018-141969A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2018年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-34706(P2017-34706)
(32)【優先日】2017年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】野澤 順
(72)【発明者】
【氏名】大久保 亮
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 博明
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−111212(JP,A)
【文献】 特開2014−010454(JP,A)
【文献】 特開昭54−037579(JP,A)
【文献】 特開平04−125643(JP,A)
【文献】 特許第6158460(JP,B1)
【文献】 特許第6325153(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、遮光膜およびハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなり、
前記ハードマスク膜は、前記遮光膜側とは反対側の表面及びその近傍の領域に酸素含有量が増加した組成傾斜部を有する単層膜であり、
前記ハードマスク膜は、クロム、酸素および炭素を含有する材料からなり、
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が50原子%以上であり、
前記ハードマスク膜は、X線光電子分光法で分析して得られるN1sのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であり、
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが574eV以下の結合エネルギーで最大ピークを有する
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分における炭素の含有量[原子%]をクロム、炭素および酸素の合計含有量[原子%]で除した比率は、0.1以上であることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記ハードマスク膜の組成傾斜部は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが576eV以上の結合エネルギーで最大ピークを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記ハードマスク膜は、X線光電子分光法で分析して得られるSi2pのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が80原子%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、炭素含有量が10原子%以上20原子%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、酸素含有量が10原子%以上35原子%以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも10原子%未満であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項9】
前記遮光膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)の露光光に対する光学濃度が2.8以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項10】
前記遮光膜は、厚さが60nm以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項11】
前記ハードマスク膜は、厚さが15nm以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、前記ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に転写パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク、該マスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法、及び該方法により製造された転写用マスクを用いる半導体デバイスの製造方法に関する。特に、波長200nm以下の短波長の露光光を露光光源とする露光装置に好適に用いられるマスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスク(フォトマスク)と呼ばれている基板が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、このフォトマスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
この転写用マスクは同じ微細パターンを大量に転写するための原版となるため、転写用マスク上に形成されたパターンの寸法精度は、この転写用マスクを用いて作製される微細パターンの寸法精度に直接影響する。近年、半導体デバイスのパターンの微細化が著しく進んできており、それに応じて転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、そのパターン精度もより高いものが要求されている。他方、転写用マスクのパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源波長の短波長化が進んでいる。具体的には、半導体デバイス製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
【0004】
また、転写用マスクの種類としては、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリマスクのほかに、ハーフトーン型位相シフトマスクが知られている。また、近年では、透光性基板上に、ケイ素系材料やタンタル系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリマスクなども出現している。
【0005】
また、マスクブランクの表面に形成するレジスト膜の薄膜化を目的として、遮光膜の上に、この遮光膜とはエッチング選択性を有する材料からなるハードマスク膜(「エッチングマスク膜」と呼ばれることもある。)を設けた構成のマスクブランクが以前より提案されている。例えば、特許文献1には、クロム系材料の遮光膜の上に、ケイ素系材料のエッチングマスク膜を有する構成のマスクブランクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−137388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の透光性基板上にケイ素系材料やタンタル系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリマスクは、透光性基板上にケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜を有するマスクブランクを用いて作製されるが、このマスクブランクにおいて上記のハードマスク膜を遮光膜の上に設ける構成とする場合、ハードマスク膜は、ドライエッチングで遮光膜にパターンを形成する際のエッチングマスクとして機能するため、ハードマスク膜の材料は、遮光膜のドライエッチング環境に対して十分な耐性を有する材料で形成する必要がある。ケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜のドライエッチングには、通常、フッ素系ガスがエッチングガスとして用いられるため、ハードマスク膜の材料としては、このフッ素系ガスのドライエッチングに対し、遮光膜との間で十分なエッチング選択性を有する例えばクロム系材料を用いることが好適である。
【0008】
このような透光性基板上にケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜およびクロム系材料からなるハードマスク膜がこの順に積層された構造のマスクブランクを用いて転写用マスク(バイナリマスク)を作製するには、マスクブランクの表面に形成した転写パターン(この転写パターンとは、遮光膜に形成すべきパターンのことである。)を有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、上記ハードマスク膜に転写パターンを形成し、次いで、前記転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、上記遮光膜に転写パターンを形成し、最後に残存する上記ハードマスク膜パターンを除去する。こうして、透光性基板上にケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜パターンを有する転写用マスクが出来上がる。
【0009】
こうして作製される転写用マスクに高い精度で微細パターンが形成されるためには、少なくとも、レジスト膜に形成された転写パターンがハードマスク膜に精度良く転写される必要がある。
【0010】
上記のとおり、転写パターンを有するレジスト膜(レジストパターン)をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、上記クロム系材料のハードマスク膜に転写パターンが形成されるが、この塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスをエッチングガスに用いるドライエッチングは、異方性エッチングの傾向が小さく、等方性エッチングの傾向が大きい。一般に、ドライエッチングによって薄膜にパターンを形成する場合、薄膜の厚さ方向のエッチングのみならず、薄膜に形成されるパターンの側壁方向へのエッチング、所謂サイドエッチングが進む。このサイドエッチングの進行を抑制するために、ドライエッチングの際、基板の薄膜が形成されている主表面の反対側からバイアス電圧を印加し、エッチングガスが膜の厚さ方向により多く接触するように制御することがこれまでも行われていた。フッ素系ガスのようにイオン性のプラズマになる傾向が大きいエッチングガスを用いるイオン主体のドライエッチングの場合には、バイアス電圧を印加することによるエッチング方向の制御性が高く、エッチングの異方性が高められるため、エッチングされる薄膜のサイドエッチング量を微小にできる。一方、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによるドライエッチングの場合、酸素ガスはラジカル性のプラズマになる傾向が高いため、バイアス電圧を印加することによるエッチング方向の制御の効果が小さく、エッチングの異方性を高めることが難しい。このため、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いるドライエッチングによって、クロム系材料からなる薄膜にパターンを形成する場合、サイドエッチング量が大きくなりやすい。
【0011】
また、上記のように、有機系材料からなるレジストパターンをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングでクロム系材料のハードマスク膜をパターニングする場合、レジストパターンは上方からエッチングされて減退していくが、このとき、レジストパターンの側壁方向もエッチングされて減退し、そのサイドエッチング量が大きくなりやすいという問題がある。
【0012】
このクロム系材料の薄膜のドライエッチングにおけるサイドエッチングの問題を解決する手段として、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いるドライエッチングにおいて、混合ガス中の塩素系ガスの混合比率を大幅に高めることが検討されている。塩素系ガスは、イオン性のプラズマになる傾向が大きいからである。ただし、塩素系ガスの混合比率を高めた塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングでは、クロム系材料の薄膜のエッチングレートが低下することは避けられない。このクロム系材料の薄膜のエッチングレートの低下を補うために、ドライエッチング時に印加されるバイアス電圧を大幅に高くすることも検討されている。なお、このような塩素系ガスの混合比率を高めた塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、且つ高いバイアス電圧を印加した状態で行われるドライエッチングのことを、以降の説明において、単に「高バイアス条件のドライエッチング」と呼ぶこととする。
【0013】
上記の高バイアス条件のドライエッチングを用いることによって、クロム系材料の薄膜に転写パターンを形成するときに生じるサイドエッチング量をある程度小さくすることが可能となる。そして、従来よりも微細な転写パターンを薄膜に形成することができるようになる。しかし、その微細な転写パターンが形成された薄膜をCD−SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)で観察したところ、その薄膜のパターン幅の場合、問題となるLWR(Line Width Roughness)の値になっていることが新たに判明した。ここで、このLine Width Roughnessとは、ラインパターンにおける左右のラインのエッジのばらつき(ゆらぎ)により生じるパターン幅のばらつきのことである。
【0014】
レジストパターンをマスクとして、クロム系材料のハードマスク膜に形成した転写パターンのLWRの値が大きいと、この転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとして、遮光膜に転写パターンを形成した場合、遮光膜のパターン精度が低下してしまう。そして、このことは、転写用マスクを用いて製造される半導体デバイスにおけるデバイスパターンの精度に影響し、重大な欠陥につながるおそれもある。しかし、ハードマスク膜に微細な転写パターンを形成するときの高バイアス条件のドライエッチングで生じるサイドエッチング量をさらに低減させることができれば、そのドライエッチングによってハードマスク膜に形成された微細な転写パターンのLWRも低減させることができる。
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、第1に、透光性基板上に、ケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜およびクロム系材料からなるハードマスク膜がこの順に積層された構造のマスクブランクであって、遮光膜に形成すべきパターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜をパターニングした場合においても、ハードマスク膜のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を低減でき、且つLWRについても低減できることにより、ハードマスク膜に精度良く微細な転写パターンを形成することができ、さらにこの転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとして遮光膜をパターニングすることで、遮光膜にも微細パターンを精度良く形成することが可能となるマスクブランクを提供することであり、第2に、このマスクブランクを用いることにより、高精度の微細な転写パターンが形成された転写用マスクの製造方法を提供することであり、第3に、この転写用マスクを用いて、半導体基板上のレジスト膜に高精度のパターン転写を行うことが可能な半導体デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、以上の課題を解決するため、とくに薄膜の深さ方向の化学結合状態を分析することに着目し、さらに鋭意研究を続けた結果、本発明を完成したものである。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0017】
(構成1)
透光性基板上に、遮光膜およびハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、前記遮光膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなり、前記ハードマスク膜は、前記遮光膜側とは反対側の表面及びその近傍の領域に酸素含有量が増加した組成傾斜部を有する単層膜であり、前記ハードマスク膜は、クロム、酸素および炭素を含有する材料からなり、前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が50原子%以上であり、前記ハードマスク膜は、X線光電子分光法で分析して得られるN1sのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であり、前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが574eV以下の結合エネルギーで最大ピークを有することを特徴とするマスクブランク。
【0018】
(構成2)
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分における炭素の含有量[原子%]をクロム、炭素および酸素の合計含有量[原子%]で除した比率は、0.1以上であることを特徴とする構成1に記載のマスクブランク。
(構成3)
前記ハードマスク膜の組成傾斜部は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが576eV以上の結合エネルギーで最大ピークを有することを特徴とする構成1又は2に記載のマスクブランク。
【0019】
(構成4)
前記ハードマスク膜は、X線光電子分光法で分析して得られるSi2pのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が80原子%以下であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載のマスクブランク。
【0020】
(構成6)
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、炭素含有量が10原子%以上20原子%以下であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、酸素含有量が10原子%以上35原子%以下であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【0021】
(構成8)
前記ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも10原子%未満であることを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記遮光膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)の露光光に対する光学濃度が2.8以上であることを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載のマスクブランク。
【0022】
(構成10)
前記遮光膜は、厚さが60nm以下であることを特徴とする構成1乃至9のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成11)
前記ハードマスク膜は、厚さが15nm以下であることを特徴とする構成1乃至10のいずれかに記載のマスクブランク。
【0023】
(構成12)
構成1乃至11のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、前記ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、前記転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に転写パターンを形成する工程とを有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0024】
(構成13)
構成12に記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0025】
上記構成を有する本発明のマスクブランクによれば、透光性基板上に、ケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜およびクロム系材料からなるハードマスク膜がこの順に積層された構造のマスクブランクであって、遮光膜に形成すべきパターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜をパターニングした場合においても、ハードマスク膜のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を低減でき、且つLine Width Roughnessについても低減できることにより、ハードマスク膜に精度良く微細な転写パターンを形成することができ、さらにこの転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとして遮光膜をパターニングすることで、遮光膜にも微細パターンを精度良く形成することが可能となる。また、このマスクブランクを用いることにより、高精度の微細な転写パターンが形成された転写用マスクを製造することができる。さらに、この転写用マスクを用いて、半導体基板上のレジスト膜にパターン転写を行うことにより、パターン精度の優れたデバイスパターンが形成された高品質の半導体デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るマスクブランクの一実施の形態の断面概略図である。
図2】本発明に係るマスクブランクの他の実施の形態の断面概略図である。
図3】本発明に係るマスクブランクを用いた転写用マスクの製造工程を示す断面概略図である。
図4】実施例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたCr2pのナロースペクトルを示す図である。
図5】実施例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたO1sのナロースペクトルを示す図である。
図6】実施例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたN1sのナロースペクトルを示す図である。
図7】実施例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたC1sのナロースペクトルを示す図である。
図8】実施例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたSi2pのナロースペクトルを示す図である。
図9】実施例2のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたCr2pのナロースペクトルを示す図である。
図10】実施例2のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたO1sのナロースペクトルを示す図である。
図11】実施例2のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたN1sのナロースペクトルを示す図である。
図12】実施例2のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたC1sのナロースペクトルを示す図である。
図13】実施例2のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたSi2pのナロースペクトルを示す図である。
図14】比較例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたCr2pのナロースペクトルを示す図である。
図15】比較例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたO1sのナロースペクトルを示す図である。
図16】比較例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたN1sのナロースペクトルを示す図である。
図17】比較例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたC1sのナロースペクトルを示す図である。
図18】比較例1のマスクブランクのハードマスク膜に対し、X線光電子分析法(XPS)で分析して得られたSi2pのナロースペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳述する。
まず、本発明に至った経緯について説明する。
クロム系材料膜に対する高バイアス条件のドライエッチングでは、同じエッチングガスの条件を用いて通常のバイアス電圧で行うドライエッチング(以下、「通常条件のドライエッチング」とも呼ぶ。)に比べて膜厚方向のエッチングのエッチングレートを大幅に速くすることができる。通常、薄膜をドライエッチングする際には、化学反応によるドライエッチングと物理的作用によるドライエッチングの両方が行われる。化学反応によるドライエッチングは、プラズマ状態のエッチングガスが薄膜の表面に接触し、薄膜中の金属元素と結合して低沸点の化合物を生成して昇華するプロセスで行われる。これに対し、物理的作用によるドライエッチングは、バイアス電圧によって加速されたエッチングガス中のイオン性のプラズマが薄膜の表面に衝突することで、薄膜表面の金属元素を含む各元素を物理的にはじき飛ばし、その金属元素と低沸点の化合物を生成して昇華するプロセスで行われる。
【0028】
高バイアス条件のドライエッチングは、通常条件のドライエッチングに比べて物理的作用によるドライエッチングを高めたものである。物理的作用によるドライエッチングは、膜厚方向へのエッチングに対して大きく寄与するが、パターンの側壁方向へのエッチングにはあまり寄与しない。これに対し、化学反応によるドライエッチングは、膜厚方向へのエッチング及びパターンの側壁方向へのエッチングのいずれにも寄与するものである。したがって、サイドエッチング量を従来よりも小さくするためには、クロム系材料膜における化学反応によるドライエッチングのされやすさを従来よりも低減しつつ、物理的作用によるドライエッチングのされやすさを従来と同等程度に維持することが必要となる。
【0029】
クロム系材料膜における化学反応によるドライエッチングに係るエッチング量を小さくするためには、たとえばクロム系材料膜中のクロム含有量を増やすことが挙げられる。しかし、クロム系材料膜中のクロム含有量が多すぎると、物理的作用によるエッチング量が大幅に小さくなってしまい、クロム系材料膜のエッチングレートが大幅に低下してしまう。エッチングレートが大幅に低下すると、クロム系材料膜をパターニングするときのエッチング時間が大幅に長くなり、パターンの側壁がエッチングガスに晒される時間が長くなるので、サイドエッチング量が増加することにつながる。したがって、クロム系材料膜中のクロム含有量を単に増やすといった方法は、膜のエッチングレートが大きく低下し、サイドエッチング量の抑制には結びつかない。
【0030】
そこで、本発明者は、クロム系材料膜中のクロム以外の構成元素について検討した。サイドエッチング量を抑制するためには、化学反応によるドライエッチングを促進する酸素ラジカルを消費する軽元素を含有させることが効果的である。本発明におけるハードマスク膜を形成する材料には、少なくとも洗浄時の耐薬液性などが求められるため、ハードマスク膜を形成するクロム系材料に、一定量以上含有させることができる軽元素は限られる。クロム系材料に一定量以上含有させることができる軽元素としては、酸素、窒素、炭素などが挙げられる。
【0031】
たとえば、本発明におけるハードマスク膜を形成するクロム系材料に酸素を含有させることで、高バイアス条件のドライエッチング及び通常条件のドライエッチングのいずれの場合もエッチングレートが大幅に速くなる。同時にサイドエッチングも進行しやすくなるが、ハードマスク膜の厚さは通常15nm以下であり、膜厚方向のエッチング時間が大きく短縮されることを考慮すると、高バイアス条件のドライエッチングの場合、ハードマスク膜を形成するクロム系材料には酸素を含有させる必要がある。
【0032】
また、ハードマスク膜を形成するクロム系材料に窒素を含有させると、上述の酸素を含有させる場合ほど顕著ではないが、高バイアス条件のドライエッチング及び通常条件のドライエッチングのいずれの場合もエッチングレートが速くなる。しかし、同時にサイドエッチングも進行しやすくなる。クロム系材料に窒素を含有させた場合、膜厚方向のエッチング時間が短縮される度合いに比べ、サイドエッチングの進行しやすさが大きくなることを考慮すると、高バイアス条件のドライエッチングの場合、ハードマスク膜を形成するクロム系材料には窒素を含有させない方が望ましいといえる。
【0033】
また、通常条件のドライエッチングの場合、クロム系材料に炭素を含有させると、クロムのみからなる膜の場合よりもエッチングレートがわずかに遅くなる。しかし、クロム系材料に炭素を含有させると、クロムのみからなる膜の場合よりも物理的作用によるドライエッチングに対する耐性が低くなる。このため、物理的作用によるドライエッチングの傾向が大きい高バイアス条件のドライエッチングの場合には、クロム系材料に炭素を含有させると、クロムのみからなる膜の場合よりもエッチングレートが速くなる。また、クロム系材料に炭素を含有させると、サイドエッチングを促進する酸素ラジカルを消費するため、酸素や窒素を含有させる場合に比べてサイドエッチングが進行しにくい。これらを考慮すると、高バイアス条件のドライエッチングの場合、ハードマスク膜を形成するクロム系材料には炭素を含有させる必要がある。
【0034】
クロム系材料に窒素を含有させた場合と炭素を含有させた場合とでは上記のような大きな相違が生じるのは、Cr−N結合とCr−C結合との間の相違に起因する。Cr−N結合は結合エネルギーが低く、結合の解離がし易い傾向があるため、プラズマ状態の塩素と酸素が接触すると、Cr−N結合が解離して低沸点の塩化クロミルを形成し易い。他方、Cr−C結合は結合エネルギーが高く、結合の解離がし難い傾向があるため、プラズマ状態の塩素と酸素が接触しても、Cr−C結合が解離して低沸点の塩化クロミルを形成し難い。
【0035】
高バイアス条件のエッチングは、前記のように、物理的作用によるドライエッチングの傾向が大きく、この物理的作用によるドライエッチングでは、イオン衝撃によって薄膜中の各元素がはじき飛ばされて、その際に各元素間の結合が断ち切られた状態になる。このため、元素間の結合エネルギーの高さの相違によって生じる塩化クロミルの形成し易さの差は、化学反応によるドライエッチングの場合に比べて小さい。前述のように、物理的作用によるドライエッチングは、膜厚方向のエッチングに対して大きく寄与する半面、パターンの側壁方向へのエッチングへはあまり寄与しない。したがって、クロム系材料で形成するハードマスク膜の膜厚方向への高バイアス条件のドライエッチングでは、Cr−N結合とCr−C結合との間でのエッチングのされ易さの差は小さい。
【0036】
これに対し、パターンの側壁方向に進行するサイドエッチングでは、化学反応によるドライエッチングの傾向が高いため、ハードマスク膜を形成するクロム系材料中のCr−N結合の存在比率が高いとサイドエッチングが進行しやすい。他方、ハードマスク膜を形成するクロム系材料中のCr−C結合の存在比率が高いとサイドエッチングが進行し難いことになる。
【0037】
本発明者は、これらのことを総合的に考慮し、さらには薄膜の深さ方向の化学結合状態を分析することにも着目して検討した結果、上記課題を解決するため、遮光膜に形成すべきパターンを有するレジスト膜をマスクとし、高バイアス条件のドライエッチングでパターニングされるハードマスク膜は、遮光膜側とは反対側の表面及びその近傍の領域に酸素含有量が増加した組成傾斜部を有する単層膜であり、このハードマスク膜は、クロム、酸素および炭素を含有する材料からなり、このハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が50原子%以上であり、このハードマスク膜は、X線光電子分光法で分析して得られるN1sのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であり、ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが574eV以下の結合エネルギーで最大ピークを有するものであることがよいとの結論に至り、本発明を完成するに至ったものである。
【0038】
以下、実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るマスクブランクの一実施の形態を示す断面概略図である。
図1に示されるとおり、本発明の一実施の形態に係るマスクブランク10は、透光性基板1上に、遮光膜2およびハードマスク膜3がこの順に積層した構造を備える。
【0039】
ここで、上記マスクブランク10における透光性基板1としては、半導体デバイス製造用の転写用マスクに用いられる基板であれば特に限定されない。半導体デバイス製造の際の半導体基板上へのパターン露光転写に使用する露光波長に対して透明性を有するものであれば特に制限されず、合成石英基板や、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)が用いられる。この中でも合成石英基板は、微細パターン形成に有効なArFエキシマレーザー(波長193nm)又はそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、特に好ましく用いられる。
【0040】
上記ハードマスク膜3は、直下の遮光膜2とエッチング選択性の高い素材であることが必要であり、本発明では、ハードマスク膜3の素材にクロム系材料を選択することにより、ケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜2との高いエッチング選択性を確保することができる。そのため、マスクブランク10の表面に形成するレジスト膜の薄膜化のみならずハードマスク膜3の膜厚も薄くすることが可能である。また、本発明では、ハードマスク膜3は上述の構成を有することにより、マスクブランク10表面に形成されたレジスト膜の微細な転写パターンをハードマスク膜3へ精度良く転写することができる。
【0041】
次に、本発明における上記ハードマスク膜3の構成をさらに詳しく説明する。
上記ハードマスク膜3は、クロム(Cr)、酸素(O)および炭素(C)を含有する材料からなる。そして、上記ハードマスク膜3は、上記遮光膜2側とは反対側の表面及びその近傍の領域に酸素含有量が増加した組成傾斜部を有する単層膜である。
【0042】
完成したマスクブランク10は、たとえば大気中などの酸素を含む雰囲気中におかれると、マスクブランク10の表面である上記ハードマスク膜3の表面及びその近傍には酸素含有量が他の部分よりも増加する領域が形成される。この酸素含有量は、酸素を含む雰囲気に直接さらされる表面が最も高く、表面から内方へ離れるほど緩やかに低下する。そして表面からある程度離れると、ハードマスク膜3の組成がほぼ一定となる。本発明では、このようなハードマスク膜3の表面及びその近傍領域に形成された酸素含有量が増加し且つ表面から緩やかに変化する領域を組成傾斜部とする。また、このハードマスク膜3の上記組成傾斜部を除いた部分(つまり組成傾斜部以外の領域)では、組成がほぼ一定であり、具体的には厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも10原子%未満であることが好ましく、8原子%以下であるとより好ましく、5原子%以下であるとさらに好ましい。
【0043】
また、本発明において、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が50原子%以上である。このクロム含有量が50原子%以上であれば、マスクブランク10の表面に形成した転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、このハードマスク膜3を高バイアス条件のドライエッチングでパターニングするときに生じるサイドエッチングを抑制することができる。さらに、そのドライエッチングによってハードマスク膜3に形成される転写パターンのLWRを低減させることができる。
【0044】
また、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が80原子%以下であることが好ましい。このクロム含有量が80原子%よりも多いと、ハードマスク膜3を高バイアス条件のドライエッチングでパターニングするときのエッチングレートが大幅に低下してしまう。従って、ハードマスク膜3を高バイアス条件のドライエッチングでパターニングするときのエッチングレートを十分に確保するためには、上記のとおり、ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が80原子%以下であることが好ましい。
【0045】
また、本発明において、上記ハードマスク膜3は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)で分析して得られるN1sのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下である。
このN1sのナロースペクトルのピークが存在すると、上記ハードマスク膜3を形成するクロム系材料中にCr−N結合が所定比率以上存在することになる。上記ハードマスク膜3を形成する材料中にCr−N結合が所定比率以上存在すると、ハードマスク膜3を高バイアス条件のドライエッチングでパターニングするときのサイドエッチングの進行を抑制することが困難となる。本発明では、上記ハードマスク膜3における窒素(N)の含有量は検出限界値以下であることが望ましい。
【0046】
また、本発明においては、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが574eV以下の結合エネルギーで最大ピークを有する。
クロム系材料において、Cr2pのナロースペクトルが574eVよりも高い結合エネルギーで最大ピークを有している状態、すなわちケミカルシフトしている状態である場合、他の原子(特に窒素)と結合しているクロム原子の存在比率が高い状態であることを示している。このようなクロム系材料は、パターンの側壁方向へのエッチングに寄与する化学反応によるドライエッチングに対する耐性が低い傾向があるため、サイドエッチングの進行を抑制することが困難である。これに対し、本発明のように上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分が、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが574eV以下の結合エネルギーで最大ピークを有するクロム系材料で形成されている場合、このようなハードマスク膜3を高バイアス条件のドライエッチングでパターニングするときのサイドエッチングの進行を抑制することができる。さらに、そのドライエッチングによってハードマスク膜3に形成される転写パターンのLWRを低減させることができる。
【0047】
また、本発明において、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分における炭素の含有量[原子%]をクロム、炭素および酸素の合計含有量[原子%]で除した比率は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは、0.14以上である。本発明において、上記ハードマスク膜3は、クロム、酸素および炭素を含有する材料からなり、ハードマスク膜3中のクロムは、Cr−O結合の形態、Cr−C結合の形態、酸素および炭素のいずれとも結合していない形態のいずれかの形態で存在するものが大勢となっている。したがって、炭素の含有量[原子%]をクロム、炭素および酸素の合計含有量[原子%]で除した比率が高いクロム系材料は、材料中のCr−C結合の存在比率が高く、このようなクロム系材料を高バイアス条件のドライエッチングでパターニングしたときのサイドエッチングの進行を抑制することができる。さらに、そのドライエッチングによってハードマスク膜3に形成される転写パターンのLWRを低減させることができる。なお、ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分における炭素の含有量[原子%]をクロム及び炭素の合計含有量[原子%]で除した比率は、0.14以上であることが好ましく、0.16以上であるとより好ましい。
【0048】
上記のとおり、ハードマスク膜3は、クロム、酸素および炭素を含有する材料からなるが、これらクロム、酸素および炭素の合計含有量が95原子%以上であることが好ましく、より好ましくは98原子%以上である。上記ハードマスク膜3は、たとえば成膜時に混入することが不可避な不純物を除き、上記のクロム、酸素および炭素で構成されていることが特に好ましい。ここでいう混入することが不可避な不純物とは、ハードマスク膜3をスパッタリング法で成膜するときのスパッタリングガスに含まれる例えばアルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、水素等の元素である。
【0049】
本発明においては、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分は、酸素含有量が10原子%以上35原子%以下であることが好ましい。ハードマスク膜3を形成するクロム系材料中にこのような範囲の含有量で酸素を含有することにより、高バイアス条件のドライエッチングの場合のエッチングレートが大幅に速くなり、膜厚方向のエッチング時間を大幅に短縮することができる。
【0050】
また、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分は、炭素含有量が10原子%以上20原子%以下であることが好ましい。ハードマスク膜3を形成するクロム系材料中にこのような範囲の含有量で炭素を含有することにより、高バイアス条件のドライエッチングの場合のエッチングレートを速めるとともに、サイドエッチングの進行を抑制することができる。さらに、そのドライエッチングによってハードマスク膜3に形成される転写パターンのLWRを低減させることができる。
【0051】
また、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが576eV以上の結合エネルギーで最大ピークを有することが好ましい。
【0052】
また、上記ハードマスク膜3は、X線光電子分光法で分析して得られるSi2pのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であることが好ましい。Si2pのナロースペクトルのピークが存在すると、ハードマスク膜3を形成する材料中に、未結合のケイ素や、他の原子と結合したケイ素が所定比率以上存在することになる。このような材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによるドライエッチングに対するエッチングレートが低下する傾向があるため望ましくない。したがって、上記ハードマスク膜3は、ケイ素の含有量が1原子%以下であることが好ましく、検出限界値以下であることが望ましい。
【0053】
上記ハードマスク膜3を形成する方法については特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。上記ハードマスク膜3の形成には導電性の高いターゲットを用いるため、成膜速度が比較的速いDCスパッタリングを用いることがより好ましい。
【0054】
上記ハードマスク膜3の膜厚は特に制約される必要はないが、通常15nm以下であることが好ましい。このハードマスク膜3は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、直下の遮光膜2をパターニングするときのエッチングマスクとして機能するものであるため、少なくとも直下の遮光膜2のエッチングが完了する前に消失しない程度の膜厚が必要である。一方、ハードマスク膜3の膜厚が厚いと、直上のレジストパターンを薄膜化することが困難である。このような観点から、本発明における上記ハードマスク膜3の膜厚は、例えば3nm以上15nm以下の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは3.5nm以上10nm以下である。
【0055】
次に、上記遮光膜2について説明する。
本発明において、上記遮光膜2は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなる。
本発明では、ハードマスク膜3の素材にクロム系材料を選択することにより、ケイ素系材料やタンタル系材料からなる遮光膜2との高いエッチング選択性を確保することができる。
【0056】
上記遮光膜2を形成するケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料としては、本発明では以下の材料が挙げられる。
ケイ素を含有する材料としては、ケイ素および窒素からなる材料、またはこの材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が好ましく挙げられる。この場合の半金属元素は、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素であると好ましい。また、この場合の非金属元素には、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン)、ハロゲン、および貴ガスが含まれる。
【0057】
また、このほかの遮光膜2に好適なケイ素を含有する材料としては、ケイ素および遷移金属に、酸素、窒素、炭素、ホウ素および水素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。この場合の遷移金属としては、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、クロム(Cr)などが挙げられる。このようなケイ素と遷移金属を含有する材料は遮光性能が高く、遮光膜2の厚さを薄くすることが可能となる。
【0058】
また、タンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が用いられ、具体的には、例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが好ましく挙げられる。
【0059】
上記遮光膜2を形成する方法についても特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。遮光膜2がケイ素および窒素からなる材料、またはこの材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成される場合、ターゲットの導電性が低いため、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを用いて成膜することが好ましい。一方、遮光膜2がケイ素および遷移金属に、酸素、窒素、炭素、ホウ素および水素から選ばれる1以上の元素を含有する材料あるいはタンタルを含有する材料で形成される場合、ターゲットの導電性が比較的高いため、成膜速度が比較的速いDCスパッタリングを用いて成膜することが好ましい。
【0060】
上記遮光膜2は、単層構造でも、積層構造でもよい。例えば、遮光層と表面反射防止層の2層構造や、さらに裏面反射防止層を加えた3層構造とすることができる。
【0061】
上記遮光膜2は、所定の遮光性を確保することが求められ、例えば微細パターン形成に有効なArFエキシマレーザー(波長193nm)の露光光に対する光学濃度(OD)が2.8以上であることが求められ、3.0以上であるとより好ましい。
【0062】
また、上記遮光膜2の膜厚は特に制約される必要はないが、微細パターンを精度良く形成できるためには、80nm以下であることが好ましく、70nm以下であるとより好ましい。他方、遮光膜2は、上記のとおり所定の遮光性(光学濃度)を確保することが求められることから、上記遮光膜2の膜厚は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましい。
【0063】
上記のマスクブランク10は、透光性基板1と遮光膜2の間に他の膜が設けられていない構成について説明したが、本発明のマスクブランクはそれに限られない。上記の透光性基板1と遮光膜2の間にエッチングストッパー膜を備える積層構造のマスクブランクも本発明のマスクブランクに含まれる。この場合のエッチングストッパー膜の材料としては、例えば、クロムを含有する材料、アルミニウムと酸素を含有する材料、アルミニウムとケイ素と酸素を含有する材料などが挙げられる。また、上記の透光性基板1と遮光膜2の間に光半透過膜(ハーフトーン位相シフト膜等)を備えた積層構造のマスクブランクも本発明のマスクブランクに含まれる。なお、光半透過膜と遮光膜2が同じフッ素系ガスでドライエッチングされる材料で形成されている場合、光半透過膜と遮光膜2の間にエッチングストッパー膜を設けるとよい。この場合のエッチングストッパー膜を形成する好適な材料は上記と同様である。
【0064】
また、以上のマスクブランク10の表面にレジスト膜を有する形態のものも本発明のマスクブランクに含まれる。
図2は、本発明に係るマスクブランクの他の実施の形態の断面概略図である。図1と同等の箇所には同一符号を付している。
【0065】
図2に示されるとおり、本発明の他の実施の形態に係るマスクブランク12は、透光性基板1上に、遮光膜2およびハードマスク膜3がこの順に積層され、さらにその上にレジスト膜4が形成された構造を備える。このマスクブランク12の透光性基板1、遮光膜2およびハードマスク膜3については、上述の図1のマスクブランク10と同様であるので、ここでは説明を省略する。また、上記レジスト膜4は有機材料からなるもので、電子線描画用のレジスト材料であると好ましく、特に化学増幅型のレジスト材料が好ましく用いられる。
【0066】
上記レジスト膜4は、通常、スピンコート法等の塗布法によってマスクブランクの表面に形成される。
また、上記レジスト膜4は、微細パターン形成の観点から、例えば100nm以下の膜厚とすることが好ましい。本発明においては、レジスト膜4をより薄膜化することができ、80nm以下の膜厚とすることが可能である。
【0067】
以上説明した構成を有する本発明の実施形態のマスクブランク10、12によれば、透光性基板上に、ケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜および本発明の構成のクロム系材料からなるハードマスク膜がこの順に積層された構造であって、遮光膜に形成すべきパターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜をパターニングした場合においても、ハードマスク膜のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を低減でき、且つLine Width Roughnessについても低減できる。このことにより、ハードマスク膜に精度良く微細な転写パターンを形成することができ、さらにこの転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとして遮光膜をパターニングすることで、遮光膜にも微細パターンを精度良く形成することが可能となる。
【0068】
本発明は、上記の本発明に係るマスクブランクから作製される転写用マスクの製造方法についても提供するものである。
図3は、本発明に係るマスクブランクを用いた転写用マスクの製造工程を示す断面概略図である。なお、ここでは上述の図2に示すレジスト膜を有する実施形態のマスクブランク12を用いて説明する。
【0069】
マスクブランク12の表面には、電子線描画用のレジスト膜4が所定の膜厚で形成されている(図3(a)参照)。
まず、このレジスト膜4に対して、所定のパターンを電子線描画し、描画後、現像することにより、所定のレジストパターン4aを形成する(図3(b)参照)。このレジストパターン4aは最終的な転写パターンとなる遮光膜2に形成されるべき所望のデバイスパターンを有する。
【0070】
次に、マスクブランクのハードマスク膜3上に形成された上記レジストパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜3に、ハードマスク膜のパターン3aを形成する(図3(c)参照)。本発明では、この場合前述の高バイアス条件のドライエッチングを適用することが好ましい。
【0071】
本発明のマスクブランクを用いることにより、上記ハードマスク膜3をドライエッチングでパターニングする際のハードマスク膜3のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を低減でき、且つLWRについても低減できるので、ハードマスク膜3に精度良く微細なパターンを形成することができる。これによって、レジストパターン4aが有する微細な転写パターンはハードマスク膜3に精度良く転写される。
【0072】
次に、残存する上記レジストパターン4aを除去した後、上記ハードマスク膜3に形成されたパターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、遮光膜2に、遮光膜のパターン2aを形成する(図3(d)参照)。
微細なパターン3aが精度良く形成されたハードマスク膜をマスクとして遮光膜2をパターニングすることで、遮光膜2にも微細パターンを精度良く形成することが可能となる。
【0073】
最後に、表面に露出しているハードマスク膜パターン3aを塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いドライエッチング(この場合、通常条件のドライエッチングを適用することが好ましい。)で除去することにより、透光性基板1上に転写パターンとなる遮光膜の微細パターン2aを備えた転写用マスク(バイナリマスク)20が出来上がる(図3(e)参照)。
以上のようにして、本発明のマスクブランクを用いることにより、高精度の微細な転写パターンが形成された転写用マスク20を製造することができる。
【0074】
また、このような本発明のマスクブランクを使用して製造される転写用マスク20を用いて、リソグラフィー法により当該転写用マスクの転写パターンを半導体基板上のレジスト膜に露光転写する工程を備える半導体デバイスの製造方法によれば、パターン精度の優れたデバイスパターンが形成された高品質の半導体デバイスを製造することができる。
【0075】
なお、上述ではマスクブランク10からバイナリマスクを製造する方法に関して説明したが、このマスクブランク10から掘り込みレベンソン型の位相シフトマスクを製造することも可能である。
【0076】
一方、本発明のマスクブランクのハードマスク膜3は、極端紫外(Extreme Ultra Violet:以下、EUVという。)光を露光光源とするEUVリソグラフィー用の反射型マスクを製造するためのマスクブランクにも適用可能である。すなわち、別の形態のマスクブランクは、基板上に、多層反射膜、吸収体膜およびハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、吸収体膜は、タンタルを含有する材料からなり、ハードマスク膜は、吸収体膜側とは反対側の表面及びその近傍の領域に酸素含有量が増加した組成傾斜部を有する単層膜であり、ハードマスク膜は、クロム、酸素および炭素を含有する材料からなり、ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が50原子%以上であり、ハードマスク膜は、X線光電子分光法で分析して得られるN1sのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であり、ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが574eV以下の結合エネルギーで最大ピークを有することを特徴とするものである。なお、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外領域の波長帯の光を指し、具体的には、波長が0.2〜100nm程度の光のことをいう。
【0077】
この別の形態のマスクブランクにおけるハードマスク膜の構成に関しては、上記の本発明のハードマスク膜3の場合と同様である。吸収体膜は、タンタルを含有する材料で形成されるが、上記の本発明の遮光膜2におけるタンタルを含有する材料の場合と同様である。基板は、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、単結晶シリコンおよびSiC等の材料が適用可能である。
【0078】
多層反射膜は、EUV光に対する屈折率が低い低屈折率材料からなる低屈折率層と、EUV光に対する屈折率が高い高屈折率材料からなる高屈折率層の積層を1周期とし、これを複数周期積層した多層膜である。通常、低屈折率層は軽元素またはその化合物で形成され、高屈折率層は重元素またはその化合物で形成される。多層反射膜の周期数は、20〜60周期であることが好ましく、30〜50周期であることがより好ましい。波長13〜14nmのEUV光が露光光として適用される場合、多層反射膜としては、Mo層とSi層とを交互に20〜60周期積層させた多層膜を好適に用いることができる。また、その他に、EUV光に適用可能な多層反射膜としては、Si/Ru周期多層膜、Be/Mo周期多層膜、Si化合物/Mo化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜およびSi/Ru/Mo/Ru周期多層膜等が挙げられる。適用されるEUV光の波長帯に応じて、材質および各層の膜厚を適宜選定することができる。多層反射膜は、スパッタリング法(DCスパッタ法、RFスパッタ法およびイオンビームスパッタ法等)で成膜することが望ましい。特に、膜厚制御が容易なイオンビームスパッタ法を適用することが望ましい。
【0079】
この別の形態のマスクブランクから反射型マスクを製造する方法についても、本発明の転写用マスクの製造方法が適用可能である。すなわち、この別の形態のマスクブランクを用いる反射型マスクの製造方法は、転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、転写パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記吸収体膜に転写パターンを形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0080】
さらに、本発明のマスクブランクのハードマスク膜3は、インプリントモールドを製造するためのマスクブランクにも適用可能である。すなわち、このインプリントモールド用のマスクブランクは、基板の主表面上にハードマスク膜が設けられたマスクブランクであって、ハードマスク膜は、基板側とは反対側の表面及びその近傍の領域に酸素含有量が増加した組成傾斜部を有する単層膜であり、ハードマスク膜は、クロム、酸素および炭素を含有する材料からなり、ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、クロム含有量が50原子%以上であり、ハードマスク膜は、X線光電子分光法で分析して得られるN1sのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であり、ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分は、X線光電子分光法で分析して得られるCr2pのナロースペクトルが574eV以下の結合エネルギーで最大ピークを有することを特徴とするものである。
【0081】
このインプリントモールド用のマスクブランクにおけるハードマスク膜の構成に関しては、上記の本発明のハードマスク膜3の場合と同様である。このハードマスク膜は、基板の主表面上にモールドパターンを形成する(基板を掘り込む)ときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対してハードマスクとして機能する。この場合の基板は、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、単結晶シリコンおよびSiC等の材料が適用可能である。また、基板の主表面の形状は限定されないが、矩形状であると好ましい。
【0082】
この基板は、ハードマスク膜を備える側の主表面に台座構造を設けてもよい。この場合、主表面の台座構造上にモールドパターンが形成される。台座構造は、主表面の中央に配置されることが好ましい。また、台座構造は、例えば平面視(主表面側から見たとき)で矩形状である。また、この基板は、ハードマスク膜を備える側の主表面とは反対側の主表面に凹部を設けてもよい。この凹部の平面視の大きさは、モールドパターンが形成される領域を包含する大きさであることが好ましい。さらに、基板のハードマスク膜を備える側の主表面に台座構造が形成される場合は、凹部の平面視の大きさは、この台座構造が設けられた領域を包含する大きさであることが好ましい。凹部は、例えば平面視で円形状である。なお、平面視での基板の形状、台座構造の形状、凹部の形状は、その基板から製造するインプリントモールドの用途などによって適宜決定されるものであり、上述の構成に限定されない。
【0083】
このインプリントモールド用のマスクブランクからインプリントモールドを製造する方法についても、本発明の転写用マスクの製造方法が適用可能である。すなわち、このインプリントモールド用のマスクブランクを用いるインプリントモールドの製造方法は、モールドパターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜にモールドパターンを形成する工程と、モールドパターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、基板の表面にモールドパターンを形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0084】
なお、このマスクブランクから製造されるインプリントモールドは、マスターモールド、レプリカモールド(コピーモールド)のいずれであってもよい。マスターモールドを製造する場合は、例えば、ハードマスク膜上に電子線描画露光用のレジスト膜を塗布形成し、そのレジスト膜に電子線でモールドパターンを描画露光し、現像処理等を経て、モールドパターンを有するレジスト膜を形成する。また、レプリカモールドを製造する場合は、例えば、ハードマスク膜上に、液体の光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を滴下し、その液体樹脂にマスターモールドのモールドパターンを押し当てた状態で紫外線照射処理または加熱処理を行って液体樹脂を硬化させた後に、マスターモールドを剥離することで、モールドパターンを有するレジスト膜を形成する。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例は、波長193nmのArFエキシマレーザーを露光光として用いる転写用マスク(バイナリマスク)の製造に使用するマスクブランク及び転写用マスクの製造に関する。
本実施例に使用するマスクブランク10は、図1に示すような、透光性基板1上に、遮光膜2およびハードマスク膜3をこの順に積層した構造のものである。このマスクブランク10は、以下のようにして作製した。
【0086】
合成石英ガラスからなる透光性基板1(大きさ約152mm×152mm×厚み約6.35mm)を準備した。この透光性基板1は、主表面及び端面が所定の表面粗さ(例えば主表面はRqで0.2nm以下)に研磨されている。
【0087】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)及び窒素(N)の混合ガス(流量比 Kr:He:N=10:100:1、圧力=0.1Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素及び窒素からなる遮光膜2(Si:N=50原子%:50原子%)を57nmの厚さで形成した。ここで、遮光膜2の組成は、別の透光性基板上に上記と同じ条件で形成した遮光膜に対してX線光電子分光法(XPS)による測定によって得られた結果である。
【0088】
次に、膜の応力調整を目的に、この遮光膜2が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の遮光膜2の分光透過率を分光光度計(Agilent Technologies社製 Cary4000)を用いて測定した。その結果、波長800nm以上900nm以下の長波長の光に対する遮光膜2の透過率は波長が長くなるとともに単調に増加しており、波長800nm、850nm、890nm及び900nmの透過率はそれぞれ42.8%、44.9%、46.7%及び47.0%であった。また、遮光膜2のArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する光学濃度(OD値)は2.96であった。
【0089】
また、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いて遮光膜2の屈折率nと消衰係数kを測定した。その結果、遮光膜2の波長193nmにおける屈折率nは1.830、消衰係数kは1.785、波長800nmにおける屈折率nは3.172、消衰係数kは0.093、波長850nmにおける屈折率nは3.137、消衰係数kは0.066、波長890nmにおける屈折率nは3.112、消衰係数kは0.050、波長900nmにおける屈折率nは3.106、消衰係数kは0.047であった。さらに、分光光度計(日立ハイテクノロジー製 U−4100)を用いて波長193nmにおける遮光膜2の表面反射率及び裏面反射率を測定したところ、その値は各々37.1%、30.0%であった。
【0090】
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に、上記遮光膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記遮光膜2上に、クロム、酸素および炭素を含有するCrOC膜からなるハードマスク膜3を厚さ9nmで形成した。
以上のようにして、本実施例のマスクブランク10を製造した。
【0091】
別の透光性基板1上にこの実施例1のハードマスク膜3のみを形成し、そのハードマスク膜3に対し、X線光電子分光法(RBS補正有り)で分析を行った。この結果、上記ハードマスク膜3は、遮光膜2側とは反対側の表面近傍の領域(表面から2nm程度の深さまでの領域)に、それ以外の領域よりも酸素含有量が多い組成傾斜部(酸素含有量が40原子%以上)を有することが確認できた。また、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除く領域における各構成元素の含有量は、平均値でCr:71原子%、O:15原子%、C:14原子%であることが確認できた。さらに、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除く領域の厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも3原子%以下であり、厚さ方向の組成傾斜は実質的にないことが確認できた。
【0092】
別の透光性基板1上に形成されたこの実施例1のハードマスク膜3に対するX線光電子分光法での分析を行うことによって得られた、Cr2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図4に、O1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図5に、N1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図6に、C1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図7に、Si2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図8に、それぞれ示す。
【0093】
上記ハードマスク膜3に対するX線光電子分光法による分析では、まずハードマスク膜3の表面に向かってX線を照射してハードマスク膜3から放出される光電子のエネルギー分布を測定し、次いでArガススパッタリングでハードマスク膜3を所定時間だけ掘り込み、掘り込んだ領域のハードマスク膜3の表面に対してX線を照射してハードマスク膜3から放出される光電子のエネルギー分布を測定するというステップを繰返すことで、ハードマスク膜3の膜厚方向の分析を行う。なお、本実施例では、このX線光電子分光法での分析は、X線源に単色化Al(1486.6eV)を用い、光電子の検出領域は100μmφ、検出深さが約4〜5nm(取り出し角45deg)の条件で行った(以降の実施例及び比較例においても同様。)。
【0094】
また、図4図8における各深さ方向化学結合状態分析では、Arガススパッタリングをする前(スパッタリング時間:0min)におけるハードマスク膜3の最表面の分析結果が各図中の「0.00min」のプロットに、ハードマスク膜3の最表面から1.60minだけArガススパッタリングで掘り込んだ後におけるハードマスク膜3の膜厚方向の位置での分析結果が各図中の「1.60min」のプロットにそれぞれ示されている。
【0095】
なお、ハードマスク膜3の最表面から1.60minだけArガススパッタリングで掘り込んだ後におけるハードマスク膜3の膜厚方向の位置は、上述の組成傾斜部よりも深い位置である。すなわち、「1.60min」のプロットは、ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分における測定結果である。
【0096】
また、図4図8の各ナロースペクトルにおける縦軸のスケールは同じではない。図6のN1sナロースペクトルと図8のSi2pナロースペクトルは、図4図5及び図7の各ナロースペクトルに比べて縦軸のスケールを大きく拡大している。従って、図6のN1sナロースペクトルと図8のSi2pナロースペクトルにおける振動の波は、ピークの存在が表れているのではなく、ノイズが表れているだけである。
【0097】
図4のCr2pナロースペクトルの結果から、上記実施例1のハードマスク膜3は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが574eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、酸素等の原子と未結合のクロム原子が一定比率以上存在していることを意味している。
【0098】
図5のO1sナロースペクトルの結果から、上記実施例1のハードマスク膜3は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが約530eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−O結合が一定比率以上存在していることを意味している。
【0099】
図6のN1sナロースペクトルの結果から、上記実施例1のハードマスク膜3は、すべての厚さ方向の領域で最大ピークが検出下限値以下であることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−N結合を含め、窒素と結合した原子が検出されなかったことを意味している。
【0100】
図7のC1sナロースペクトルの結果から、上記実施例1のハードマスク膜3は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが282eV〜283eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−C結合が一定比率以上存在していることを意味している。
【0101】
図8のSi2pナロースペクトルの結果から、上記実施例1のハードマスク膜3は、すべての厚さ方向の領域で最大ピークが検出下限値以下であることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−Si結合を含め、ケイ素と結合した原子が検出されなかったことを意味している。
【0102】
次に、このマスクブランク10を用いて、前述の図3に示される製造工程に従って、転写用マスク(バイナリマスク)を製造した。なお、以下の符号は図3中の符号と対応している。
まず、上記マスクブランク10の上面に、スピン塗布法によって、電子線描画用の化学増幅型レジスト(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を塗布し、所定のベーク処理を行って、膜厚80nmのレジスト膜4を形成した(図3(a)参照)。
【0103】
次に、電子線描画機を用いて、上記レジスト膜4に対して所定のデバイスパターン(遮光膜2に形成すべき転写パターンに対応するパターン)を描画した後、レジスト膜を現像してレジストパターン4aを形成した(図3(b)参照)。なお、このレジストパターン4aは、線幅100nmのライン・アンド・スペースパターンを含むものとした。
【0104】
次に、上記レジストパターン4aをマスクとして、前述の高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜3のドライエッチングを行い、ハードマスク膜3にパターン3aを形成した(図3(c)参照)。ドライエッチングガスとしては塩素ガス(Cl)と酸素ガス(O)との混合ガス(Cl:O=13:1(流量比))を用い、バイアス電圧を印加した時の電力が50Wの高バイアスでドライエッチングを行った。
【0105】
次に、上記レジストパターン4aを除去した後、上記ハードマスク膜のパターン3aをマスクとして、SiN膜からなる遮光膜2のドライエッチングを行い、遮光膜2にパターン2aを形成した(図3(d)参照)。ドライエッチングガスとしてはフッ素系ガス(CF)を用いた。
【0106】
最後に、上記ハードマスク膜のパターン3aを前述の通常条件のドライエッチングで除去し、透光性基板1上に遮光膜のパターン2aを備えたバイナリ型の転写用マスク20を完成した(図4(e)参照)。なお、ここでは、ドライエッチングガスとしては塩素ガス(Cl)と酸素ガス(O)との混合ガス(Cl:O=4:1(流量比))を用い、バイアス電圧を印加した時の電力が5Wの低バイアスでドライエッチングを行った。
【0107】
上記の転写用マスクの製造過程において、上記レジストパターン4a、上記ハードマスク膜のパターン3a、および上記遮光膜のパターン2aの各々に対して、上記のライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域で、測長SEM(CD−SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)でライン線幅の測長を行った。
【0108】
そして、同じライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域内の複数個所で、上記レジストパターン4aのライン線幅と上記ハードマスク膜のパターン3aのライン線幅との間の変化量であるエッチングバイアスをそれぞれ算出し、さらにエッチングバイアスの平均値を算出した。その結果、エッチングバイアスの平均値は6nm程度であり、従来のクロム系材料膜に対するドライエッチングの場合よりも大幅に小さい値であった。また、ハードマスク膜のパターン3aのLine Width Roughnessは、6nm程度であり、大幅に小さい値であった。
【0109】
このことは、上記レジストパターン4aをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜3をパターニングした場合においても、ハードマスク膜3のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を低減でき、且つLine Width Roughnessについても低減できるので、ハードマスク膜3に精度良く微細なパターンを形成することができ、これによって、レジストパターン4aが有する微細な転写パターンはハードマスク膜3に精度良く転写されることを示している。
【0110】
また、同じライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域内の複数個所で、上記ハードマスク膜のパターン3aのライン線幅と上記遮光膜のパターン2aのライン線幅との間のエッチングバイアスの平均値についても算出した結果、5nm程度であり、非常に小さい値であった。つまり、微細なパターン3aが精度良く形成されたハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングで遮光膜2をパターニングした場合、遮光膜2にも微細パターンを精度良く形成することが可能となる。
【0111】
得られた上記転写用マスク20に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行った結果、設計値から許容範囲内で微細パターンが形成されていることが確認できた。
以上のように、本実施例のマスクブランクを用いることにより、高精度の微細な転写パターンが形成された転写用マスク20を製造することができる。
【0112】
さらに、この転写用マスク20に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける露光転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションで得られた露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。以上のことから、本実施例のマスクブランクから製造された転写用マスク20は、露光装置にセットしてArFエキシマレーザーの露光光による露光転写を行うと、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができるといえる。
【0113】
(実施例2)
実施例2のマスクブランク10は、ハードマスク膜3以外については、実施例1と同様にして作製した。実施例2におけるハードマスク膜3は、以下のように実施例1のハードマスク膜3とは成膜条件を変更して形成した。
具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に、上記実施例1のSiN膜からなる遮光膜2が形成された合成石英基板を設置し、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記遮光膜2上に、クロム、酸素および炭素を含有するCrOC膜からなるハードマスク膜3を厚さ9nmで形成した。
以上のようにして、実施例2のマスクブランク10を作製した。
【0114】
別の透光性基板1上にこの実施例2のハードマスク膜3のみを形成し、そのハードマスク膜3に対し、X線光電子分光法(RBS補正有り)で分析を行った。この結果、上記ハードマスク膜3は、遮光膜2側とは反対側の表面近傍の領域(表面から2nm程度の深さまでの領域)に、それ以外の領域よりも酸素含有量が多い組成傾斜部(酸素含有量が40原子%以上)を有することが確認できた。また、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除く領域における各構成元素の含有量は、平均値でCr:55原子%、O:30原子%、C:15原子%であることが確認できた。さらに、上記ハードマスク膜3の組成傾斜部を除く領域の厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも3原子%以下であり、厚さ方向の組成傾斜は実質的にないことが確認できた。
【0115】
実施例1の場合と同様に、別の透光性基板1上に形成されたこの実施例2のハードマスク膜3に対するX線光電子分光法での分析を行うことによって得られた、Cr2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図9に、O1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図10に、N1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図11に、C1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図12に、Si2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図13に、それぞれ示す。
【0116】
なお、図9図13における各深さ方向化学結合状態分析では、Arガススパッタリングをする前(スパッタリング時間:0min)におけるハードマスク膜3の最表面の分析結果が各図中の「0.00min」のプロットに、ハードマスク膜3の最表面から1.60minだけArガススパッタリングで掘り込んだ後におけるハードマスク膜3の膜厚方向の位置での分析結果が各図中の「1.60min」のプロットにそれぞれ示されている。
【0117】
また、ハードマスク膜3の最表面から1.60minだけArガススパッタリングで掘り込んだ後におけるハードマスク膜3の膜厚方向の位置は、上述の組成傾斜部よりも深い位置である。すなわち、「1.60min」のプロットは、ハードマスク膜3の組成傾斜部を除いた部分における測定結果である。
【0118】
また、図9図13の各ナロースペクトルにおける縦軸のスケールは同じではない。図11のN1sナロースペクトルと図13のSi2pナロースペクトルは、図9図10及び図12の各ナロースペクトルに比べて縦軸のスケールを大きく拡大している。従って、図11のN1sナロースペクトルと図13のSi2pナロースペクトルにおける振動の波は、ピークの存在が表れているのではなく、ノイズが表れているだけである。
【0119】
図9のCr2pナロースペクトルの結果から、上記実施例2のハードマスク膜3は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが574eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、酸素等の原子と未結合のクロム原子が一定比率以上存在していることを意味している。
【0120】
図10のO1sナロースペクトルの結果から、上記実施例2のハードマスク膜3は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが約530eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−O結合が一定比率以上存在していることを意味している。
【0121】
図11のN1sナロースペクトルの結果から、上記実施例2のハードマスク膜3は、すべての厚さ方向の領域で最大ピークが検出下限値以下であることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−N結合を含め、窒素と結合した原子が検出されなかったことを意味している。
【0122】
図12のC1sナロースペクトルの結果から、上記実施例2のハードマスク膜3は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが282eV〜283eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−C結合が一定比率以上存在していることを意味している。
【0123】
図13のSi2pナロースペクトルの結果から、上記実施例2のハードマスク膜3は、すべての厚さ方向の領域で最大ピークが検出下限値以下であることがわかる。この結果は、上記ハードマスク膜3では、Cr−Si結合を含め、ケイ素と結合した原子が検出されなかったことを意味している。
【0124】
次に、この実施例2のマスクブランク10を用いて、前述の実施例1と同様の製造工程に従って、透光性基板1上に遮光膜のパターン2aを備えた転写用マスク(バイナリマスク)20を製造した。
【0125】
実施例1と同様に、上記実施例2の転写用マスクの製造過程において、上記レジストパターン4a、上記ハードマスク膜のパターン3a、および上記遮光膜のパターン2aの各々に対して、上記のライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域で、前記の測長SEMでライン線幅の測長を行った。
【0126】
そして、同じライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域内の複数個所で、上記レジストパターン4aのライン線幅と上記ハードマスク膜のパターン3aのライン線幅との間の変化量であるエッチングバイアスをそれぞれ算出し、さらにエッチングバイアスの平均値を算出した結果、エッチングバイアスの平均値は10nm程度であり、従来のクロム系材料膜に対するドライエッチングの場合よりも大幅に小さい値であった。また、ハードマスク膜のパターン3aのLine Width Roughnessは、6.5nm程度であり、大幅に小さい値であった。
【0127】
このことは、上記レジストパターン4aをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜3をパターニングした場合においても、ハードマスク膜3のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を低減でき、且つLine Width Roughnessについても低減できるので、ハードマスク膜3に精度良く微細なパターンを形成することができ、これによって、レジストパターン4aが有する微細な転写パターンはハードマスク膜3に精度良く転写されることを示している。
【0128】
また、同じライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域内の複数個所で、上記ハードマスク膜のパターン3aのライン線幅と上記遮光膜のパターン2aのライン線幅との間のエッチングバイアスの平均値についても算出した結果、5nm程度であり、非常に小さい値であった。つまり、微細なパターン3aが精度良く形成されたハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングで遮光膜2をパターニングした場合、遮光膜2にも微細パターンを精度良く形成することが可能となる。
【0129】
得られた上記実施例2の転写用マスク20に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行った結果、設計値から許容範囲内で微細パターンが形成されていることが確認できた。
以上のように、本実施例2のマスクブランクを用いることにより、高精度の微細な転写パターンが形成された転写用マスク20を製造することができる。
【0130】
さらに、この実施例2の転写用マスク20に対し、実施例1と同様にAIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける露光転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションで得られた露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。以上のことから、実施例2のマスクブランクから製造された転写用マスク20は、露光装置にセットしてArFエキシマレーザーの露光光による露光転写を行うと、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができるといえる。
【0131】
(比較例1)
比較例1のマスクブランクは、ハードマスク膜以外については、実施例1と同様にして作製した。比較例1におけるハードマスク膜は、以下のように実施例1のハードマスク膜3とは成膜条件を変更して形成した。
具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に、上記実施例1のSiN膜からなる遮光膜2が形成された合成石英基板を設置し、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記遮光膜2上に、クロム、酸素、炭素及び窒素を含有するCrOCN膜からなるハードマスク膜を厚さ9nmで形成した。
以上のようにして、比較例1のマスクブランクを作製した。
【0132】
次に、別の透光性基板1上にこの比較例1のハードマスク膜のみを形成し、そのハードマスク膜に対し、X線光電子分光法(RBS補正有り)で分析を行った。この結果、上記比較例1のハードマスク膜は、遮光膜側とは反対側の表面近傍の領域(表面から2nm程度の深さまでの領域)に、それ以外の領域よりも酸素含有量が多い組成傾斜部(酸素含有量が40原子%以上)を有することが確認できた。また、上記比較例1のハードマスク膜の組成傾斜部を除く領域における各構成元素の含有量は、平均値でCr:55原子%、O:22原子%、C:12原子%、N:11原子%であることが確認できた。さらに、上記ハードマスク膜の組成傾斜部を除く領域の厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも3原子%以下であり、厚さ方向の組成傾斜は実質的にないことが確認できた。
【0133】
実施例1の場合と同様に、別の透光性基板1上に形成されたこの比較例1のハードマスク膜に対するX線光電子分光法での分析の結果得られた、Cr2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図14に、O1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図15に、N1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図16に、C1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図17に、Si2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果を図18に、それぞれ示す。
【0134】
なお、図14図18における各深さ方向化学結合状態分析では、ハードマスク膜の最表面から1.60minだけArガススパッタリングで掘り込んだ後におけるハードマスク膜の膜厚方向の位置での分析結果が各図中の「1.60min」のプロットにそれぞれ示されている。
【0135】
また、ハードマスク膜の最表面から1.60minだけArガススパッタリングで掘り込んだ後におけるハードマスク膜の膜厚方向の位置は、上述の組成傾斜部よりも深い位置である。すなわち、「1.60min」のプロットは、ハードマスク膜の組成傾斜部を除いた部分における測定結果である。
【0136】
図14のCr2pナロースペクトルの結果から、上記比較例1のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、574eVよりも大きい結合エネルギーで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、いわゆるケミカルシフトしている状態で、窒素、酸素等の原子と未結合のクロム原子の存在比率がかなり少ない状態であることを意味している。そのため、化学反応が主体のエッチングに対する耐性が低く、サイドエッチングを抑制することが困難である。
【0137】
図15のO1sナロースペクトルの結果から、上記比較例1のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが約530eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、Cr−O結合が一定比率以上存在していることを意味している。
【0138】
図16のN1sナロースペクトルの結果から、上記比較例1のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが約397eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、比較例1のハードマスク膜では、Cr−N結合が一定比率以上存在していることを意味している。そのためサイドエッチングが進行しやすいといえる。
【0139】
図17のC1sナロースペクトルの結果から、上記比較例1のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが283eVで最大ピークを有していることがわかる。この結果は、Cr−C結合が一定比率以上存在していることを意味している。
【0140】
図18のSi2pナロースペクトルの結果から、上記比較例1のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、最大ピークが検出下限値以下であることがわかる。この結果は、比較例1のハードマスク膜では、Cr−Si結合を含め、ケイ素と結合した原子が検出されなかったことを意味している。
【0141】
次に、この比較例1のマスクブランクを用いて、前述の実施例1と同様の製造工程に従って、比較例1の転写用マスク(バイナリマスク)を製造した。
【0142】
実施例1と同様に、この比較例1の転写用マスクの製造過程において、上記レジストパターン4a、および上記ハードマスク膜のパターン3aの各々に対して、上記のライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域で、前記の測長SEMでライン線幅の測長を行った。
【0143】
そして、同じライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域内の複数個所で、上記レジストパターン4aのライン線幅と上記ハードマスク膜のパターン3aのライン線幅との間の変化量であるエッチングバイアスをそれぞれ算出し、さらにエッチングバイアスの平均値を算出した結果、エッチングバイアスの平均値は27nmであり、従来のクロム系材料膜に対するドライエッチングの場合と同様、比較的大きい値であった。また、ハードマスク膜のパターン3aのLine Width Roughnessは、7.5nm程度であり、比較的大きい値であった。
【0144】
このことは、上記レジストパターン4aをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜3をパターニングした場合においても、ハードマスク膜3のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を抑制することが難しく、そのためハードマスク膜3に精度良く微細なパターンを形成することができず、レジストパターン4aが有する微細な転写パターンをハードマスク膜3に精度良く転写することが困難であることを示している。
【0145】
さらに、この比較例1の転写用マスクに対し、実施例1と同様にAIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける露光転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションで得られた露光転写像を検証したところ、転写不良が確認された。これは、上記ハードマスク膜のパターンのサイドエッチング量が大きく、またLine Width Roughnessが大きいことに起因する最終的な遮光膜パターンにおけるパターン精度不良が要因であると推察される。
【0146】
(比較例2)
比較例2のマスクブランクは、ハードマスク膜以外については、実施例1と同様にして作製した。比較例2におけるハードマスク膜は、以下のように実施例1のハードマスク膜3とは成膜条件を変更して形成した。
具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に、上記実施例1のSiN膜からなる遮光膜2が形成された合成石英基板を設置し、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記遮光膜2上に、クロム、酸素及び窒素を含有するCrON膜からなるハードマスク膜を厚さ9nmで形成した。
以上のようにして、比較例2のマスクブランクを作製した。
【0147】
次に、別の透光性基板1上にこの比較例2のハードマスク膜のみを形成し、そのハードマスク膜に対し、X線光電子分光法(RBS補正有り)で分析を行った。この結果、上記比較例2のハードマスク膜は、遮光膜側とは反対側の表面近傍の領域(表面から2nm程度の深さまでの領域)に、それ以外の領域よりも酸素含有量が多い組成傾斜部(酸素含有量が40原子%以上)を有することが確認できた。また、上記比較例2のハードマスク膜の組成傾斜部を除く領域における各構成元素の含有量は、平均値でCr:58原子%、O:17原子%、N:25原子%であることが確認できた。さらに、上記ハードマスク膜の組成傾斜部を除く領域の厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも3原子%以下であり、厚さ方向の組成傾斜は実質的にないことが確認できた。
【0148】
実施例1の場合と同様に、別の透光性基板1上に形成されたこの比較例2のハードマスク膜に対するX線光電子分光法での分析を行い、Cr2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果、O1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果、N1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果、C1sナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果、Si2pナロースペクトルの深さ方向化学結合状態分析の結果をそれぞれ取得した。
【0149】
Cr2pナロースペクトルの結果から、上記比較例2のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、574eVよりも大きい結合エネルギーで最大ピークを有していることがわかった。この結果は、いわゆるケミカルシフトしている状態で、窒素、酸素等の原子と未結合のクロム原子の存在比率がかなり少ない状態であることを意味している。そのため、化学反応が主体のエッチングに対する耐性が低く、サイドエッチングを抑制することが困難である。
【0150】
O1sナロースペクトルの結果から、上記比較例2のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが約530eVで最大ピークを有していることがわかった。この結果は、Cr−O結合が一定比率以上存在していることを意味している。
【0151】
N1sナロースペクトルの結果から、上記比較例2のハードマスク膜は、組成傾斜部を除く領域では、結合エネルギーが約397eVで最大ピークを有していることがわかった。この結果は、比較例2のハードマスク膜では、Cr−N結合が一定比率以上存在していることを意味している。そのためサイドエッチングが進行しやすいといえる。
【0152】
C1sナロースペクトルの結果から、上記比較例2のハードマスク膜は、すべての厚さ方向の領域で最大ピークが検出下限値以下であることがわかった。この結果は、比較例2のハードマスク膜では、Cr−C結合を含め、炭素と結合した原子が検出されなかったことを意味している。
【0153】
また、Si2pナロースペクトルの結果から、上記比較例2のハードマスク膜は、すべての厚さ方向の領域で最大ピークが検出下限値以下であることがわかった。この結果は、比較例2のハードマスク膜では、Cr−Si結合を含め、ケイ素と結合した原子が検出されなかったことを意味している。
【0154】
次に、この比較例2のマスクブランクを用いて、前述の実施例1と同様の製造工程に従って、比較例2の転写用マスク(バイナリマスク)を製造した。
【0155】
この比較例2の転写用マスクの製造過程において、上記レジストパターン4a、および上記ハードマスク膜のパターン3aの各々に対して、上記のライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域で、前記の測長SEMでライン線幅の測長を行った。
【0156】
そして、同じライン・アンド・スペースパターンが形成されている領域内の複数個所で、上記レジストパターン4aのライン線幅と上記ハードマスク膜のパターン3aのライン線幅との間の変化量であるエッチングバイアスをそれぞれ算出し、さらにエッチングバイアスの平均値を算出した結果、エッチングバイアスの平均値は30nmであり、従来のクロム系材料膜に対するドライエッチングの場合と比べても、大分大きい値であった。また、ハードマスク膜のパターン3aのLine Width Roughnessは、8nm程度であり、比較的大きい値であった。
【0157】
このことは、比較例2のマスクブランクでは、上記レジストパターン4aをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用い、高バイアス条件のドライエッチングでハードマスク膜3をパターニングした場合、ハードマスク膜3のパターン側壁に生じるサイドエッチング量を抑制することが難しく、そのためハードマスク膜3に精度良く微細なパターンを形成することができず、レジストパターン4aが有する微細な転写パターンをハードマスク膜3に精度良く転写することが困難であることを示している。
【0158】
さらに、この比較例2の転写用マスクに対し、実施例1と同様にAIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける露光転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションで得られた露光転写像を検証したところ、転写不良が確認された。これは、上記ハードマスク膜のパターンのサイドエッチング量が大きく、またLine Width Roughnessが大きいことに起因する最終的な遮光膜パターンにおけるパターン精度不良が要因であると推察される。
【0159】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、これは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載した技術には、以上に例示した具体例を変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0160】
1 透光性基板
2 遮光膜
3 ハードマスク膜
4 レジスト膜
10,12 マスクブランク
20 転写用マスク(バイナリマスク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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