特許第6415861号(P6415861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6415861-鉄道車両用の主幹制御器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415861
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】鉄道車両用の主幹制御器
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/02 20060101AFI20181022BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   B60L3/02
   B60L15/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-116871(P2014-116871)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-231296(P2015-231296A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 明彦
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−234802(JP,A)
【文献】 特表2013−500700(JP,A)
【文献】 特開2009−035255(JP,A)
【文献】 特開2000−127775(JP,A)
【文献】 実公昭33−014805(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ハンドルを有し、この主ハンドルのグリップ部にデッドマン装置の操作部を設け、操作部を握り込みながら操作される鉄道車両用の主幹制御器において、
主ハンドルは、支軸に揺動自在に連結されるアーム部と、このアーム部の先端に、アーム部の長手方向に直交する方向にのびるグリップ部とで構成され、アーム部とグリップ部は共に内部空間を有し、
デッドマン装置が、操作部に対応させて主ハンドルのグリップ部の内部空間に組み込まれる伸縮自在なエアバッと、操作部に設けられ、操作部の握り込みによりグリップ部の内部空間に侵入してエアバッグを押圧する突片と、一端がエアバッグに接続された配管と、この配管の他端が接続されるエアシリンダと、操作部の握り込みで突片によりエアバッが収縮したときのエアシリンダ内のピストンの移動に連動して切り換わる接点とを備えることを特徴とする鉄道車両用の主幹制御器。
【請求項2】
前記エアバッ収縮時におけるエアシリンダ内でのピストンの移動方向を一方向とし、当該ピストンを他方向に付勢する付勢手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用の主幹制御器。
【請求項3】
前記配管には継手が介設され、この継手は、前記主ハンドルのアーム部の下端部に設けられ、前記支軸に平行に挿設される基部と、アーム部の前記内部空間に位置する基部の一端に、軸受を介して回転自在に内挿される回転部とで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両用の主幹制御器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の主幹制御器に関し、特に、デッドマン装置を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両には、原動機等を制御する制御装置に対して制御指令信号を出力する主幹制御器(マスターコントローラ)が運転席に設置され、鉄道車両の運行時、運転手が主幹制御器の主ハンドルを操作する。そして、主幹制御器には、運転手に何等かの異常事態(例えば、身体的なトラブルにより主幹制御器の操作が不能になる)が発生した時、可及的速やかに鉄道車両を停止させるためにデッドマン装置が備えられ、運転手は、主ハンドルのグリップ部に設けたデッドマン装置の操作部を常時握り込みながら主ハンドルを操作するようになっている。
【0003】
このような主幹制御器は例えば特許文献1で知られている。このものは、主ハンドルの握り部分に切欠き部を設け、この切欠き部に、取付板を介して透明導電性フィルムに組み込んだ機械的可動部のない検出器を取り付けると共に、検出器の動作状態を視認できる表示灯を主ハンドルに設けている。検出器には、主ハンドル内を挿通する電気配線を介して鉄道車両の起動回路に接続され、運転手が主幹制御器を操作するために主ハンドルの握り部分を握ると、検出器がONになり、このON信号が起動回路に入力されて起動可能状態になり、制御装置に対する制御指令信号の出力が可能になる。
【0004】
ところで、主ハンドルの中には、運転台に設けた支軸に揺動自在に連結されるアーム部を備えるものがあり、このアーム部内を挿通させて電気配線されていると、主ハンドルの操作時、アーム部の可動部分にて電気配線が撚れたり、この可動部分に噛み込んだりして断線や地絡が発生するといった不具合が生じるおそれがある。このような場合、電気配線を保護チューブで囲繞して保護することが考えられるが(特許文献1参照)、これでは配線作業が面倒になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−268701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、断線や地絡の発生の危険性がないデッドマン装置を備える主幹制御器を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、主ハンドルを有し、この主ハンドルのグリップ部にデッドマン装置の操作部を設け、操作部を握り込みながら操作される本発明の鉄道車両用の主幹制御器は、主ハンドルは、支軸に揺動自在に連結されるアーム部と、このアーム部の先端に、アーム部の長手方向に直交する方向にのびるグリップ部とで構成され、アーム部とグリップ部は共に内部空間を有し、デッドマン装置が、操作部に対応させて主ハンドルのグリップ部の内部空間に組み込まれる伸縮自在なエアバッと、操作部に設けられ、操作部の握り込みによりグリップ部の内部空間に侵入してエアバッグを押圧する突片と、一端がエアバッグに接続された配管と、この配管の他端が接続されるエアシリンダと、操作部の握り込みで突片によりエアバッが収縮したときのエアシリンダ内のピストンの移動に連動して切り換わる接点とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、運転手が主ハンドルのグリップ部に設けたデッドマン装置の操作部を握り込むと、エアバッが収縮され、このときの空気圧が配管を介してピストンに作用し、シリンダ内のピストンを移動させる。このピストンの移動に伴って接点が切り換わり、このときの信号が起動回路に入力されて起動可能状態になり、主幹制御器からの制御装置に対する制御指令信号の出力が可能になる。このように本発明では、上記従来例とは異なり、空気圧で接点が切り換える構成を採用したため、可動部分での電気配線の噛み込みで断線や地絡が発生する危険性がなく、常時安定してデッドマン装置を作用させることができる。
【0009】
本発明においては、運転手がデッドマン装置の操作部を握り込むことで接点を切り換えた後、運転手がデッドマン装置の操作部を開放したとき、確実に接点が再度切り換わるように、前記エアバッ収縮時におけるエアシリンダ内でのピストンの移動方向を一方向とし、当該ピストンを他方向に付勢する付勢手段を更に備えることが好ましい。また、本発明においては、前記配管には継手が介設され、この継手は、前記主ハンドルのアーム部の下端部に設けられ、前記支軸に平行に挿設される基部と、アーム部の前記内部空間に位置する基部の一端に、軸受を介して回転自在に内挿される回転部とで構成されていることも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の主幹制御器の構成を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、デッドマン装置を備える本発明の鉄道車両用の主幹制御器の実施形態を説明する。
【0012】
図1を参照して、1は、鉄道車両に設けられる原動機等を制御する制御装置に対して制御指令信号を出力する主幹制御器(マスターコントローラ)の主ハンドルである。主ハンドル1は、運転台に設けた支軸2に揺動自在に連結されるアーム部11と、アーム部11の先端に、このアーム部11の長手方向に直交する方向にのびるように形成されたグリップ部12とで構成されている。そして、主ハンドル1にデッドマン装置3が備えられている。
【0013】
デッドマン装置3は、運転手が主ハンドルを操作するときに握り込む操作部としての操作レバー4を有する。操作レバー4は、グリップ部12に開設されたスリット孔13に出没自在に設けられ、突片41が設けられている。また、主ハンドル1のグリップ部12に対応する内部空間12aには伸縮自在なエアバッ5が設けられている。そして、運転手が操作レバー4を握り込むと、突片41が内部空間12aに侵入してエアバッ5を押圧してエアバッ5が収縮するようになっている。
【0014】
エアバッ5には、配管としての可撓性のエアホース61の一端が接続され、その他端がグリップ部12とアーム部11との内部空間12a,11aを通してアーム部11の下部に設けた継手7に接続されている。エアバッ5やエアホース61としては公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。継手7としては、特に内部構造を示して説明しないが、所謂エルボ型のロータリージョイントが用いられ、主ハンドル1に支軸に平行に挿設される基部71と、主ハンドル1の内部空間11aに位置する基部71の一端に、軸受を介して回転自在に内挿される回転部72とで構成され、回転部72にエアホース61の他端が接続されている。これにより、主ハンドル1が揺動されるとき、基部71を回転中心として回転部72、ひいては、アーム部11内に存するエアホース61の部分が主ハンドル1の揺動に追従して回動し、主ハンドル1内でエアホース61が折れ曲げられたりすることが防止される。
【0015】
主ハンドル1外に位置する基部71の他端には、他のエアホース62の一端が接続され、その他端がエアシリンダ8に接続されている。エアシリンダ8は、シリンダ81と、このシリンダ81内に摺動可能に配設されてその内部を第1室81aと第2室81bとに区画するピストン82と、ピストン82に連結され、第2室81b側のシリンダ81端壁に挿設されたピストンロッド83とを有する。ピストンロッド83に、ピストン82の移動に連動して切り換わる接点9が接続されている。また、シリンダ81の第2室81bには、エアバッ5が収縮する時のエアシリンダ81内でのピストン82の移動方向を一方向とし、当該ピストンを他方向に付勢する付勢手段としてのコイルバネ84が縮設されている。以下に、デッドマン装置3の作動を説明する。
【0016】
接点9のOFF状態において運転手が主ハンドル1のグリップ部12に設けた操作レバー4を握り込むと、突片41によりエアバッ5が押圧されて収縮し、このときの空気圧がエアホース61,62を介してピストン82に作用し、コイルバネ84に抗してピストン82がシリンダ81内の一方向(図1中、左側)に移動する。これにより、接点9がON状態に切り換わる(図1に示す状態)。操作レバー4が握り込まれた状態では、常時、空気圧が作用して接点9がONのままとなり、このときの信号が起動回路に入力されて起動可能状態になり、主幹制御器からの制御装置に対する制御指令信号の出力が可能になる。他方、運転手が操作レバー4の握り込みを開放すると、コイルバネ84の付勢力によりピストン82がシリンダ81内の他方向(図1中、右側)に移動し、第1室81a内の空気圧がエアホース61,62を介してエアバッ5に作用し、エアバッ5が膨張する。
【0017】
以上、説明したように、本実施形態では、上記従来例とは異なり、空気圧で接点9が切り換わる構成を採用したため、主ハンドル1の可動部分での電気配線の噛み込みで断線や地絡が発生する危険性がなく、常時安定してデッドマン装置3を作動させることができる。また、付勢手段としてのコイルバネ84を備えることで、接点9を切り換えた後、運転手が操作レバー4の握り込みを開放したとき、確実に接点9が再度切り換わるようにできる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、付勢手段としてコイルバネ84を用い、このコイルバネ84をシリンダ81に内蔵したものを例に説明したが、確実に接点9が再度切り換わるようにできるものであればこれに限定されるものではなく、例えば、コイルバネ84はシリンダ81の外側に設けることもできる。また、上記実施形態では、支軸2へのアーム部11の連結箇所の近傍においてエルボ型のロータリージョイントを用いて配管接続するものを例に説明したが、アーム部11が揺動したとき、エアホース61,62が無理に折り曲げられたりしないようにできるものであれば、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0019】
1…主幹制御器の主ハンドル、12…主ハンドルのグリップ部、3…デッドマン装置、4…操作レバー(操作部)、5…エアバッ、61,62…エアホース(配管)、8…エアシリンダ、82…ピストン、9…接点。
図1