(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415890
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
B60K11/04 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-158351(P2014-158351)
(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-34799(P2016-34799A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 基成
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・オース
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−247465(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0038775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されたエンジンと、
前記エンジンの車体前後方向で一方側に配置された冷却ファンユニットと、
前記冷却ファンユニットの前記エンジンとは反対側に配置された冷却液ラジエータと、
前記冷却液ラジエータの前記冷却ファンユニットとは反対側に配置された冷却ユニットと、
車体前後方向で前記冷却ユニットと前記冷却液ラジエータとの間の距離を変更可能なように前記冷却液ラジエータと冷却ユニットとを連結するリンク機構とを備え、
前記リンク機構が、左右一対のアッパーリンクと左右一対のロアーリンクとを有する4節リンク機構であり、
前記アッパーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点、及び、前記ロアーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点が、前記冷却液ラジエータの上端部に設けられ、
前記アッパーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点の支点間距離は、前記ロアーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点の支点間距離より短く、
前記冷却液ラジエータの上半分領域と前記冷却ユニットにおける前記冷却液ラジエータの上半分領域と対向する部分との間にダンパが設けられている作業車。
【請求項2】
前記冷却ユニットは、前記冷却液ラジエータの上半分領域に配置された第1冷却器と、
前記冷却液ラジエータの下半分領域に配置された第2冷却器とからなり、
前記第1冷却器が前記リンク機構を介して前記冷却液ラジエータと連結され、前記第1冷却器の下端と前記第2冷却器の上端とが連結ユニットで連結されている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記連結ユニットは、前記第1冷却器と前記第2冷却器とを車体横断方向の揺動軸心周りで揺動可能に連結している請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記冷却ユニットは、さらに前記第2冷却器の前記冷却液ラジエータとは反対側に配置された第3冷却器を備えており、前記第3冷却器は前記第1冷却器の下端に連結されている請求項2または3に記載の作業車。
【請求項5】
前記アッパーリンクと前記ロアーリンクの前記冷却液ラジエータ側のそれぞれの支点の支点間距離は、前記アッパーリンクと前記ロアーリンクの前記冷却ユニット側のそれぞれの支点の支点間距離より短い請求項1から4のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記アッパーリンクと前記ロアーリンクの前記冷却ユニット側のそれぞれの支点の支点間距離は、前記アッパーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点との支点間距離より短い請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記冷却ユニットは、前記冷却液ラジエータの上半分領域に配置された第1冷却器と、前記冷却液ラジエータの下半分領域に配置された第2冷却器とを有し、
前記第1冷却器が前記リンク機構を介して前記冷却液ラジエータと連結され、前記第1冷却器の下端と前記第2冷却器の上端とが連結ユニットで連結され、
前記連結ユニットは、前記第1冷却器と前記第2冷却器とを車体横断方向の揺動軸心周りで揺動可能に連結し、
前記第1冷却器が前記リンク機構を介して前記冷却液ラジエータと連結され、
前記冷却液ラジエータの上半分領域と前記第1冷却器との間にダンパが設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項8】
前記冷却ユニットは、さらに前記第2冷却器の前記冷却液ラジエータとは反対側に配置された第3冷却器を備えており、前記第3冷却器は前記第1冷却器の下端に連結され、
前記リンク機構により、前記第1冷却器と前記第2冷却器とが一体的に揺動する請求項7に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液ラジエータと、この冷却液ラジエータと近接して向き合っている冷却ユニットとを備えた冷却システムを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した冷却システムでは、メンテナンス時に、冷却液ラジエータと冷却ユニットとの隙間に手を入れることができるように、冷却液ラジエータと冷却ユニットとのいずれかを動かす必要がある。例えば、特許文献1による冷却システムでは、第1ラジエータに対して第2ラジエータが第1連結手段と第2連結手段とによって変位可能に取り付けられている。第1連結手段はスライド機構を有する揺動リンク機構であり、第1ラジエータと第2ラジエータの各上部を連結する。第2連結手段はスライド機構であり、第2ラジエータと第2ラジエータの各下部を連結する。これにより、第2ラジエータの上部は揺動変位とスライド変位とによって第1ラジエータの上部から大きく離れることができ、第2ラジエータの下部はスライド変位とによって第1ラジエータの下部から少し離れることができる。これにより、第1ラジエータと第2ラジエータの間に手を入れることが可能となる。しかしながら、スライド機構を有する揺動リンク機構とスライド機構が必要となり、第2ラジエータを第1ラジエータに取り付けるためにスライド機構を有する揺動リンク機構とスライド機構が必要となり、その取り付け構造が複雑となり、その占有スペースも大きくなる。特に長孔とピンとによるスライド機構は製造費がかさむだけでなく、長孔に異物が詰まりやすいという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許8,342,277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記実情に鑑み、本発明の課題は、作業車用のクーリングシステムを構築する冷却液ラジエータと冷却ユニットとの間に保守点検に必要な空間を簡単に作り出すことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による作業車は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されたエンジンと、前記エンジンの車体前後方向で一方側に配置された冷却ファンユニットと、前記冷却ファンユニットの前記エンジンとは反対側に配置された冷却液ラジエータと、前記冷却液ラジエータの前記冷却ファンユニットとは反対側に配置された冷却ユニットと、車体前後方向で前記冷却ユニットと前記冷却液ラジエータとの間の距離を変更可能なように前記冷却液ラジエータと冷却ユニットとを連結するリンク機構とを備えている。さらに、前記リンク機構が、左右一対のアッパーリンクと左右一対のロアーリンクとを有する4節リンク機構
であり、前記アッパーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点、及び、前記ロアーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点が、前記冷却液ラジエータの上端部に設けられ
、前記アッパーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点の支点間距離は、前記ロアーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点の支点間距離より短く、前記冷却液ラジエータの上半分領域と前記冷却ユニットにおける前記冷却液ラジエータの上半分領域と対向する部分との間にダンパが設けられている。
【0006】
冷却液ラジエータと冷却ユニットと間に4節リンク機構を架設することで、冷却ユニットが冷却液ラジエータに対して揺動可能に支持される。4節リンク機構を用いて冷却ユニットを揺動することで、冷却液ラジエータと冷却ユニットと間に空間が形成されるので、互いの冷却面の保守点検が容易となる。また、4節リンク機構は構造が簡単で、製造コストが低いという利点もある。
【0007】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記冷却ユニットは、前記冷却液ラジエータの上半分領域に配置された第1冷却器と、前記冷却液ラジエータの下半分領域に配置された第2冷却器とからなり、前記第1冷却器が前記リンク機構を介して前記冷却液ラジエータと連結され、前記第1冷却器の下端と前記第2冷却器の上端とが連結ユニットで連結されている。この構成では、冷却風の流通が良好な冷却液ラジエータの冷却面に対向して、第1冷却器と第2冷却器とを配置することになり、2種類の冷却器に対して効率よく冷却風を通過させることができる。その際、前記連結ユニットとして、前記第1冷却器と前記第2冷却器とを車体横断方向の揺動軸心周りで揺動可能に連結する揺動連結ユニットを採用すると、第1冷却器が傾斜姿勢にもかかわらず、第2冷却器を直立姿勢に維持することができる。第1冷却器と連動して第2冷却器も傾斜姿勢をとると、第2冷却器の下端が冷却液ラジエータから大きく離れ、第2冷却器の揺動スペースが大きくなりすぎるという不都合が生じる。第1冷却器と第2冷却器との揺動連結は、この不都合を解消する。
【0008】
冷却ユニットが、第1冷却器と第2冷却器とに加え、さらにもう1つの第3冷却器を備えている場合、第3冷却器を第2冷却器の冷却液ラジエータとは反対側に配置し、この第3冷却器を前記第1冷却器の下端に連結すると好都合である。これにより、第3冷却器は冷却液ラジエータに対して第2冷却器を挟んだ位置に配置される。つまり、冷却液ラジエータの冷却面と第2冷却器の一方の冷却面、及び第2冷却器の一方の冷却面と第3冷却器の内側の冷却面がほぼ平行でそれぞれ近接した位置関係となる。保守点検時に、第1冷却器を傾斜姿勢に揺動することで、第3冷却器は第1冷却器の延長上で同様な傾斜姿勢となる。これに対して、第2冷却器は垂直姿勢を維持することができるので、冷却液ラジエータの冷却面と第2冷却器の一方の冷却面との間、及び第2冷却器の一方の冷却面と第3冷却器の内側の冷却面との間にスペースが形成され、保守点検が容易となる。
【0009】
保守点検に最小限必要な冷却面同士の間隔、クーリングシステムに与えられるスペースを制約条件として、冷却液ラジエータに対する冷却ユニットの適正な揺動姿勢を考察すると、前記アッパーリンクと前記ロアーリンクの前記冷却液ラジエータ側のそれぞれの支点の支点間距離は、前記アッパーリンクと前記ロアーリンクの前記冷却ユニット側のそれぞれの支点の支点間距離より短く、前記アッパーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点の支点間距離は、前記ロアーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点の支点間距離より短くすることが好適であることが判明した。さらに、前記アッパーリンクと前記ロアーリンクの前記冷却ユニット側のそれぞれの支点の支点間距離は、前記アッパーリンクの前記冷却液ラジエータ側の支点と前記冷却ユニット側の支点との支点間距離より短くすることで、スペースの有効利用及び保守点検の容易性が達成される。
また、前記冷却ユニットは、前記冷却液ラジエータの上半分領域に配置された第1冷却器と、前記冷却液ラジエータの下半分領域に配置された第2冷却器とを有し、
前記第1冷却器が前記リンク機構を介して前記冷却液ラジエータと連結され、前記第1冷却器の下端と前記第2冷却器の上端とが連結ユニットで連結され、
前記連結ユニットは、前記第1冷却器と前記第2冷却器とを車体横断方向の揺動軸心周りで揺動可能に連結し、前記第1冷却器が前記リンク機構を介して前記冷却液ラジエータと連結され、
前記冷却液ラジエータの上半分領域と前記第1冷却器との間にダンパが設けられていると好適である。
また、前記冷却ユニットは、さらに前記第2冷却器の前記冷却液ラジエータとは反対側に配置された第3冷却器を備えており、前記第3冷却器は前記第1冷却器の下端に連結され、前記リンク機構により、前記第1冷却器と前記第2冷却器とが一体的に揺動すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による作業車におけるクーリングシステムの基本的な構成を説明する模式図である。
【
図2】本発明の具体的な実施形態の1つであるトラクタの側面図である。
【
図4】使用時におけるクーリングシステムの姿勢を示す側面図である。
【
図5】保守点検時におけるクーリングシステムの姿勢を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による作業車、特にそのクーリングシステムの具体的な実施形態を説明する前に、
図1を用いて基本的な構成を説明する。このクーリングシステムは、車体フレーム10に搭載されたエンジン20を冷却する冷却ファンユニット4を通過する冷却風を利用する。なお、
図1では、便宜上、図の左側を前方、図の右側を後方として、各構成要素の配置の説明に用いる。但し、ここでの前後方向は作業車の前後方向(車体長手方向)とは無関係である。つまり、エンジン20が、作業車の前後方向(車体長手方向)に関して冷却ファンユニット4の前方にあることを、本発明において限定されているわけではない。本発明は、冷却ファンユニット4がエンジン20の前方に位置する構成、クーリングシステムを構成する各種機器の前後方向の任意に選択された構成を含むものである。
【0012】
図1では、冷却ファンユニット4は冷却液ラジエータ5の後面に取り付いている。冷却液ラジエータ5の前側近くに冷却ユニット6が配置されている。冷却ユニット6はリンク機構7によって前後方向で揺動可能に冷却液ラジエータ5に支持されている。
図1の(a)は、リンク機構7の第1揺動姿勢を示しており、冷却ユニット6がほぼ垂直姿勢となっており、冷却ユニット6と冷却液ラジエータ5が近接している。
図1の(b)は、リンク機構7の第2揺動姿勢を示しており、冷却ユニット6が冷却液ラジエータ5から離れている。これにより、冷却ユニット6と冷却液ラジエータ5との間への保守点検者の手の進入が可能となる。
【0013】
リンク機構7は、左右一対のアッパーリンク71と左右一対のロアーリンク72とを有する4節リンク機構であり、リンク長さと支点間距離を適切に選択することにより、揺動時の冷却ユニット6の冷却液ラジエータ5に対する姿勢を最適に選ぶことができる。
【0014】
図1で示された例では、冷却ユニット6は、冷却液ラジエータ5の上半分領域に対向するように配置された第1冷却器6aと、冷却液ラジエータ5の下半分領域に対向するように前記第1冷却器6aの下側に配置された第2冷却器6bと、さらには、第2冷却器6bの冷却液ラジエータ5とは反対側、つまり第2冷却器6bの前側に配置された第3冷却器6cとを含む。第1冷却器6aは、リンク機構7介して冷却液ラジエータ5に揺動可能に支持されている。左右一対のアッパーリンク71の一端は、第1支点P1で冷却液ラジエータ5の側面に揺動可能に連結されており、その他端は、第2支点P2で第1冷却器6aの側面にと揺動可能に連結されている。同様に、左右一対のロアーリンク72は、一端は、第3支点P3で冷却液ラジエータ5の側面に揺動可能に連結されており、その他端は、第4支点P4で第1冷却器6aの側面に揺動可能に連結されている。第3冷却器6cは、第1冷却器6aの下端から前方に延びた固定ブラケット80によって、第1冷却器6aより第2冷却器6bの前後方向厚さ分だけ前方にオフセットされた姿勢で支持されている。したがって、
図1で示すリンク機構7の第1揺動姿勢において、第3冷却器6cは、第2冷却器6bの前方で、第3冷却器6cの後面と第2冷却器6bの前面がわずかな隙間を形成する姿勢となる。また、第3冷却器6cの後面と第2冷却器6bの前面とは、実質的に平行である。
【0015】
第1冷却器6aの下端と前記第2冷却器6bの上端とが連結ユニット8で上下方向で直列に連結されている。
図1では、この連結ユニット8は、横断方向(図面の鉛直方向)に延びた揺動軸心Pxを有する揺動連結機構として構成されている。したがって、
図1の(a)に示すリンク機構7の第1揺動姿勢において、第2冷却器6bは重力により第1冷却器6aのほぼ真下に位置し、第1冷却器6aの後面と第2冷却器6bの後面とは、冷却液ラジエータ5の前面に密接する実質的に1つの平面を構成している。
図1の(b)に示すリンク機構7の第2揺動姿勢において、第1冷却器6aは、下端が冷却液ラジエータ5から前側に離れた傾斜姿勢となる。その際、第2冷却器6bは、連結ユニット8と重力により第1冷却器6aから垂直に吊り下げられた姿勢となり、第2冷却器6bの後面は、冷却液ラジエータ5の前面とほぼ平行となる。つまり、第1冷却器6aの下端の冷却液ラジエータ5からの距離が、実質的には、そのまま第2冷却器6bの高さにわたって維持され、冷却液ラジエータ5と第2冷却器6bとの間に良好な保守点検スペースが確保される。
【0016】
第1冷却器6aと第3冷却器6cとの相対的な位置関係はリンク機構7の揺動によって変化しないので、
図1の(b)に示すリンク機構7の第2揺動姿勢において、第3冷却器6cは、傾斜した第1冷却器6aの延長上に位置する。その結果、第3冷却器6cの下端と第2冷却器6bの下端とは第2揺動姿勢における傾斜分だけ離れることになり、第3冷却器6cの後面と第2冷却器6bの後面との間に良好な保守点検スペースが確保される。
【0017】
リンク機構7の構成によって、リンク機構7の揺動に伴う、冷却液ラジエータ5からの第1冷却器6aの離れ度合や傾斜姿勢が決定する。過剰な離れや傾斜は、他の機器との干渉をもたらすので、適切に選ばなければならない。本発明による好適な実施形態として1つとして、
図1で示すように、第1支点P1と第3支点P3との距離をd3とし、第2支点P2と第4支点P4との距離をd4とし、アッパーリンク71の長さをd2とし、ロアーリンク72の長さをd4とすると、d4>d3かつd2>d1が成立することが提案される。さらには、d3>d2という条件を付加すれば、d4>d3>d2>d1となり、
図1で示されたクーリングシステムの構成において、他の機器との干渉を抑えながらも、十分な保守点検スペースを確保することができる。
【0018】
次に、図面を用いて、本発明による作業車の具体的な実施形態の1つであるトラクタを説明する。
図2は、トラクタの側面図である。このトラクタは、前輪2aと後輪2bとによって支持されているトラクタの車体1の前部にエンジン20が搭載され、エンジン20の後方に図示されていないトランスミッションが配置されている。このトラクタは四輪駆動型であり、エンジン20の動力は、トランスミッションに内装された変速機構を介して駆動輪として機能可能な前輪2a及び後輪2bに伝達される。エンジン20はボンネット21によって覆われている。ボンネット21の後方にキャビン24が配置されている。
【0019】
キャビン24の内部は運転空間として機能し、その前部には、前輪2aの操向操作を行うステアリングハンドル11が、その後部で、左右一対の後輪フェンダの間には、運転座席12が配置されている。運転座席12の側方から前方にかけて、多機能操作具15を有するアームレスト操作装置14が設けられている。アームレスト操作装置14の前方には運転者に種々の情報を視覚的に報知するディスプレイ13が設けられている。
【0020】
図2に示されているように、この実施形態では、エンジン20の前方に、クーリングシステムを構成する冷却ファンユニット4、冷却液ラジエータ5、冷却ユニット6が配置されている。
図3と
図4と
図5に詳しく示されているように、このクーリングシステムは、
図1で示された基本構成に準じているので、
図1で述べた説明は、ここでも流用される。
【0021】
冷却液ラジエータ5は、車体フレーム10に固定されたベースプレート30に立設されており、冷却液ラジエータ5の後側に冷却ファンユニット4が取り付けられている。冷却液ラジエータ5の後面となるファン側冷却面51は、冷却ファンユニット4のファン回転軌跡面とほぼ平行で近接している。冷却液ラジエータ5の左右の側面及び上面には板状の隔壁フレーム50が立設されており、ボンネット21と協働して、エンジンルームとクーリングシステムとを分離している。
【0022】
この実施形態でも、冷却ユニット6は、第1冷却器6aと第2冷却器6bと第3冷却器6cから構成されている。第1冷却器6aはエアーインタークーラであり、第2冷却器6bはオイルクーラであり、第3冷却器6cはAC(空調)コンデンサである。
【0023】
冷却液ラジエータ5と第1冷却器6aとは4節リンク機構7によって揺動可能に連結されている。4節リンク機構7のアッパーリンク71は、第1冷却器6aから延びるパイプ部の外形に倣うような円弧状である。4節リンク機構7のロアーリンク72は、アッパーリンク71に相似するような円弧状部分と下方に延びる直線部分とからなる。アッパーリンク71及びロアーリンク72の一端は、ブラケットを介して冷却液ラジエータ5の側面に揺動可能に支持されており、アッパーリンク71及びロアーリンク72の他端は、揺動ピンボルトによって、第1冷却器6aの側面に揺動可能に支持されている。
【0024】
第1冷却器6aは、
図5に示すように、4節リンク機構7によって前方に揺動することで、第1冷却器6aの後面である第1冷却面61と冷却液ラジエータ5の全面である冷却ユニット側冷却面52との間に側面視で台形形状の空間を作り出す。この揺動を許すように、第1冷却器6aから延びるパイプ部は屈曲性を有する。また、第1冷却器6aの揺動をスムーズにするため、及び急速な下方揺動を避けるためにダンパ74が冷却液ラジエータ5と第1冷却器6aとの間に設けられている。
【0025】
第1冷却器6aと第2冷却器6bとの揺動連結は連結ユニット8によって行われる。この連結ユニット8は、一体化された第1ブラケット81と第2ブラケット82とを有する。第1ブラケット81は第1冷却器6aの下面に固定されるとともに、第2冷却器6bを揺動可能に吊り下げる揺動ピン構造を有している。第2ブラケット82は、第3冷却器6cを固定支持するために下方に延びたブラケットである。第2ブラケット82の下部には図示されていないが、第2冷却器6bとの接当を和らげるクッションが設けられている。
【0026】
図5で示された第1冷却器6aの傾斜状態(揺動状態)においても、第2冷却器6bは重力により垂直姿勢を維持するので、第2冷却器6bの第2冷却面62と冷却液ラジエータ5の冷却ユニット側冷却面52との間に空間が形成される。同様に、第1冷却器6aの第2冷却面64と第3冷却器6cの第1冷却面65との間にも空間が形成される。
【0027】
図4で示されたクーリングシステムの通常使用時では、第1冷却器6a、第2冷却器6b及び第3冷却器6cはほぼ立ち姿勢となっており、第1冷却器6aの第1冷却面61と冷却液ラジエータ5の冷却ユニット側冷却面52との間、第2冷却器6bの第2冷却面62と冷却液ラジエータ5の冷却ユニット側冷却面52との間、及び第1冷却器6aの第2冷却面64と第3冷却器6cの第1冷却面65との間にはほとんど隙間が形成されていない。この状態での第2冷却器6bを冷却液ラジエータ5に離脱可能に固定するために、留め金具75、好ましくはパッチン金具が設けられている。
【0028】
さらに、第3冷却器6cの前方には、
図3に示すように、門型の縦支柱31が立設されており、その縦支柱31の上部と隔壁フレーム50を連結する横支柱32が設けられている。
図5にだけ示しているが、横支柱32の下部には燃料クーラ6dが取り付けられ、縦支柱31の下部には作業機用のクーラ6eが取り付けられている。
【0029】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態のトラクタでは、エンジン20が運転座席12の前方に配置され、エンジン20の前側に冷却ファンユニット4、その前側に冷却液ラジエータ5、さらにその前側に冷却ユニット6が配置されていた。これに代えて、エンジン20の後側に順に冷却ファンユニット4、冷却液ラジエータ5、冷却ユニット6を順に配置してもよい。また、エンジン20が運転座席12の後方に配置されても、上述のようにクーリングシステムを配置することができる。エンジン20が横置きの場合では、クーリングシステムも横配置されることになる。
(2)第1冷却器6aの揺動をスムーズにするためダンパ74が用いられていたが、第1冷却器6aの傾斜姿勢を保持するストッパー機構が設けられてもよい。また、ダンパ74に代えてストッパー機構だけ設けてもよい。
(3)第1冷却器6aと第2冷却器6bとを連結する揺動式の連結ユニット8に、第1冷却器6aに対する第2冷却器6bの揺動角を一時的に固定できるロック機構を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による作業車は、トラクタ以外、田植機、コンバインなどの農用作業車、あるいはフロントローダなどの建設土木作業車などに適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 :車体
4 :冷却ファンユニット
5 :冷却液ラジエータ
6 :冷却ユニット
6a :第1冷却器
6b :第2冷却器
6c :第3冷却器
6d :燃料クーラ
6e :クーラ
7 :4節リンク機構(リンク機構)
8 :連結ユニット
10 :車体フレーム
20 :エンジン
50 :隔壁フレーム
71 :アッパーリンク
72 :ロアーリンク
74 :ダンパ
75 :留め金具
P1 :第1支点
P2 :第2支点
P3 :第3支点
P4 :第4支点
Px :揺動軸心