特許第6415898号(P6415898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415898
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】溝渠連結体の自在継手及び溝渠連結体
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/02 20060101AFI20181022BHJP
   E02B 13/00 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   E02B5/02 S
   E02B13/00 304
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-169824(P2014-169824)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-44469(P2016-44469A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鐵住金建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100178283
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 孝太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】原田 剛男
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−336244(JP,A)
【文献】 特開2007−057071(JP,A)
【文献】 特開2008−240818(JP,A)
【文献】 特開2013−002507(JP,A)
【文献】 特開2007−146932(JP,A)
【文献】 米国特許第06273640(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/02
E02B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地溝に嵌め込んで連結しながら敷設される溝渠連結体の屈曲箇所に用いられる溝渠連結体の自在継手であって、
コルゲート状に形成されたゴム弾性体の蛇腹状部を有し、この蛇腹状部の内面及び/又は外面の表層に切欠き溝が形成されており、
前記切欠き溝は、前記蛇腹状部の襞に沿った方向と交差する前記溝渠連結体の長手方向に沿った溝を有すること
を特徴とする溝渠連結体の自在継手。
【請求項2】
前記切欠き溝は、直線状に形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の溝渠連結体の自在継手。
【請求項3】
前記切欠き溝は、前記蛇腹状部の襞の頂部付近及び底部付近の内面又は外面に形成されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の溝渠連結体の自在継手。
【請求項4】
前記切欠き溝は、前記蛇腹状部の襞に沿って複数形成されていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の溝渠連結体の自在継手。
【請求項5】
前記切欠き溝は、互いに交差する2方向に沿ってそれぞれ複数形成されていること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の溝渠連結体の自在継手。
【請求項6】
前記2方向は、互いに直交すること
を特徴とする請求項5に記載の溝渠連結体の自在継手。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の溝渠連結体の自在継手を備えること
を特徴とする溝渠連結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の直線状の部材からなる連結体を掘削造成された地溝に嵌め込み連結することにより構築される溝渠連結体に関し、より詳しくは、任意の角度に屈曲する溝渠の屈曲部分に適用可能な溝渠連結体の自在継手及びそれを備えた溝渠連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用水路や工業用水路、土木工事用仮設水路等の溝渠として、鋼製、コンクリート製、樹脂製等の様々なタイプのU字溝が提案されている。いずれのタイプのものも、直線状の複数の部材を連結等して溝渠連結体として用いるものであるが、これらの溝渠は、地形に応じて造成されるため、必ずしも直線状の部材からなる溝渠連結体だけで足りるものではなく、いずれかの地点で流路の方向転換が必要であった。
【0003】
また、溝渠が地形に合わせて造成されることから、方向転換地点での溝渠連結体同士の連結角度は、地形によって水平面における屈曲角度や鉛直面における勾配が様々であるため、方向転換地点の溝渠の屈曲部分に既製品を用いて対応することが困難であるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するべく、特許文献1には、接続作業が非常に簡便で、接続後は水漏れを起こすこともなく、施工現場の状況に応じた角度に湾曲が可能な可撓性U字溝の提供を課題として、硬質合成樹脂又は繊維強化樹脂からなり、断面略U字形状をなし、その底部から左右の側部に延びる山部及び谷部が交互に溝の長手方向に連続形成されてなる可撓性蛇腹状部を備えた可撓性U字溝が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落0005、0012、図面の図1等参照)。
【0005】
また、特許文献2には、U字溝を屈曲配置で連結可能とする屈曲部の屈曲性を損なうことなく、簡易な構成により屈曲部の側壁部分が土圧によって倒れ込むことを防止できるようにすることを目的として、長手方向に直交する向きの波形により蛇腹状に形成された屈曲部12の両側に各々U字溝を連結する連結部14a、14bが延設されてなる樹脂製のU字溝自在エルボ30において、前記屈曲部12の波形の一つあるいは複数個所に、波形の内面に沿って、屈曲部12の側壁部分の倒れ込みを防止する補強部材32が屈曲部に挿入されて装着されているU字溝自在エルボが開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落0007、0009〜0012、図面の図5等参照)。
【0006】
このような特許文献1に記載の可撓性U字溝や特許文献2に記載のU字溝自在エルボは、流路としてU字形状を保持できる程度の曲げや捩じり強度、砂等の流下による磨耗に対抗できる程度の表面硬度等が必要であり、結果的に、溝渠としての耐久性を確保するためには、蛇腹状部にも一定以上の剛性が求められていた。そのため、容易に変形しない蛇腹状部となっており、流路の方向転換地点において、U字溝とU字溝との屈曲角度に合わせて蛇腹状部を変形させることが困難であるだけでなく、蛇腹状部を変形させながらU字溝とU字溝を接続することが困難であるという問題があった。
【0007】
特に、これらの蛇腹状部が設けられたU字溝は、例えば、蛇腹状部の代わりにゴム製の弾性材料を用いた場合でも、溝渠の任意の屈曲箇所に対する適応性、自在性を十分に備えるものとなると考えられる。しかし、溝渠の屈曲部分にゴム製の弾性材料を使用した場合、前述の曲げ剛性の観点から弾性材料の復元力が大きく、U字溝とU字溝を屈曲させた状態で接続する際に、人力で屈曲した状態で保持することが困難で、作業効率が悪いという問題があった。
【0008】
なお、特許文献1に記載の可撓性U字溝や特許文献2に記載のU字溝自在エルボに係る発明においても、蛇腹状部の襞の数を増やすことで、可撓性を向上させて作業効率を向上させることは可能と考えられるが、U字溝自在エルボ(屈曲部分)以外のU字溝の直線部分、即ち、溝渠連結体の直線状の部材の方が、継手部材(蛇腹状部、自在エルボ)よりも圧倒的に単価が安く、襞の数を増やして蛇腹状部(自在エルボ)部分の距離を長くすると製造コスト及び設置(施工)コストが上がってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−336244号公報
【特許文献2】特開2003−064761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、溝渠としての機能及び耐久性を確保しつつ自在継手部分を極力短くするとともに、蛇腹状部分の可撓性を向上させて溝渠連結体全体の設置作業の作業効率を向上させることができる溝渠連結体の自在継手及びそれを備えた溝渠連結体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る溝渠連結体の自在継手は、地溝に嵌め込んで連結しながら敷設される溝渠連結体の屈曲箇所に用いられる溝渠連結体の自在継手であって、コルゲート状に形成されたゴム弾性体の蛇腹状部を有し、この蛇腹状部の内面及び/又は外面の表層に切欠き溝が形成されており、前記切欠き溝は、前記蛇腹状部の襞に沿った方向と交差する前記溝渠連結体の長手方向に沿った溝を有することを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る溝渠連結体の自在継手は、第1発明において、前記切欠き溝は、直線状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る溝渠連結体の自在継手は、第1発明又は第2発明において、前記切欠き溝は、前記蛇腹状部の襞の頂部付近及び底部付近の内面又は外面に形成されていることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る溝渠連結体の自在継手は、第1発明ないし第3発明のいずれかの発明において、前記切欠き溝は、前記蛇腹状部の襞に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る溝渠連結体の自在継手は、第1発明ないし第4発明のいずれかの発明において、前記切欠き溝は、互いに交差する2方向に沿ってそれぞれ複数形成されていることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る溝渠連結体の自在継手は、第5発明において、前記2方向は、互いに直交することを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る溝渠連結体、請求項1ないし6のいずれかに記載の溝渠連結体の自在継手を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明〜第7発明によれば、コルゲート状に形成されたゴム弾性体の蛇腹状部を有し、この蛇腹状部の内面及び/又は外面の表層に切欠き溝が形成されているので、溝渠としての機能及び耐久性を確保するため、ゴム弾性体としてクロロプレンゴム(CRゴム)などの硬質ゴムを使用した場合であっても、切欠き溝により、蛇腹状部分の可撓性を向上させて溝渠連結体全体の設置作業の作業効率を向上させることができる。また、このため、第1発明〜第7発明によれば、蛇腹状部を極力短くしても、自在継手の機能である任意の角度で溝渠連結体の直線部材同士を連結することを確保することができ、溝渠連結体全体の製造コスト及び設置(施工)コストを低減することができる。
【0019】
特に、第2発明によれば、切欠き溝が直線状なので、押し出し成形や切削加工等により切欠き溝の形成が容易であり、溝渠連結体の自在継手の製造コストを低減することができる。
【0020】
特に、第3発明、第4発明によれば、溝渠連結体の自在継手を蛇腹状部の襞に沿って曲げるのが容易となり、さらに蛇腹状部分の可撓性を向上させて溝渠連結体全体の設置作業の作業効率を向上させることができる。
【0021】
特に、第5発明によれば、互いに交差する2方向に沿って複数の切欠き溝が形成されているので、溝渠の屈曲箇所において、水平面上で屈曲しているだけでなく鉛直面上でも屈曲しており、溝渠連結体の自在継手に捩り応力が生じているような場合であっても、切欠き溝により、捩り応力に対するゴム弾性体の復元力を緩和して、溝渠連結体全体の設置作業の作業効率を向上させることができる。
【0022】
特に、第6発明によれば、切欠き溝が互いに直交しているので、ゴム弾性体の曲げ応力に対する復元力と、捩じり応力に対する復元力を、同時に効率よく、緩和することができ、さらに溝渠連結体全体の設置作業の作業効率を向上させることができる。
【0023】
特に、第7発明によれば、溝渠連結体において、前記作用効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る溝渠連結体及びその自在継手の設置状態を主に示す斜視図である。
図2】同上の溝渠連結体及びその自在継手を示す平面図である。
図3】同上の溝渠連結体及びその自在継手を示す側面図である。
図4】同上の溝渠連結体のU字溝を示す斜視図である。
図5】同上のU字溝を幅方向に沿って見た側面図である。
図6】同上のU字溝を長手方向に沿って見た正面図である。
図7図1の溝渠連結体の自在継手(ゴム板)を幅方向に沿ってみた側面図である。
図8】同上の自在継手(ゴム板)を示す斜視図である。
図9】同上の自在継手の設置状態を示す斜視図である。
図10図1の溝渠連結体のU字溝と自在継手の接続部分を主に示す拡大平面図である。
図11】同上の溝渠連結体のU字溝と自在継手の接続部分を主に示す斜視図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る自在継手(ゴム板)を幅方向に沿ってみた側面図である。
図13】同上の自在継手(ゴム板)を示す斜視図である。
図14】同上の自在継手の設置状態を示す斜視図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る自在継手(ゴム板)を幅方向に沿ってみた側面図である。
図16】同上の自在継手(ゴム板)を示す斜視図である。
図17】同上の自在継手の設置状態を示す斜視図である。
図18】本発明の第4実施形態に係る自在継手(ゴム板)を幅方向に沿ってみた側面図である。
図19】同上の自在継手(ゴム板)を示す斜視図である。
図20】同上の自在継手の設置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る溝渠連結体の自在継手及びそれを用いた溝渠連結体について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1図11を用いて、本発明の実施の形態に係る溝渠連結体1について説明する。先ず、図1を用いて、流水方向がA方向からB方向へ転換する方向転換地点Cを有する溝渠Kに溝渠連結体1を設置する場合を例示して説明する。溝渠連結体1が設置される溝渠Kは、水をA方向からB方向へ転換しながら水を通水する水路として利用される長手方向の断面がU字状の溝であり、農業用水路、工業用水路又は工事用仮設水路などの用途に使用される。勿論、開渠又は暗渠のいずれであって構わないが、図示形態には、開渠を例示している。
【0027】
本発明の実施の形態に係る溝渠連結体1は、溝渠Kの直線状部分に設置される同一形状の複数のU字溝2,・・・,2と、方向転換地点Cの溝渠Kの屈曲部分に設置される自在継手3などから構成され、掘削造成された地溝に嵌め込んで連結することにより構築され、流水が地中に浸透して消失してしまうことを防止するとともに、地溝が浸食されることを防止する機能を有している。なお、図中のX方向が、水を流す水路延長方向(水流方向)となる溝渠連結体1の長手方向、Y方向が、溝渠連結体1の幅方向、Z方向が、X方向と直交する鉛直断面の上下方向である(図中のX、Y、Z方向は全て同じ方向を指している)。
【0028】
また、複数のU字溝2,・・・,2は、水を流す水路延長方向(X方向)を長手方向として、直線状にボルト接合等で連結され、溝渠Kの屈曲部分に自在継手3が設置されるものである。このとき、連結部分に水流の抵抗を受けにくいように、上流側のU字溝2が下流側のU字溝2よりも上になるように互いに連結される(図1等参照)。
【0029】
(溝渠連結体のU字溝)
このU字溝2は、図4図6に示すように、長手方向に直交する鉛直断面がU字状となったU字溝本体20と、このU字溝本体20の長手方向に沿ってその上端から横方向に張り出した鍔部21などから構成されている。このU字溝本体20は、図5図6に示すように、板厚が約1.6mm〜4.0mmのコルゲート状(波形:段差13mm×山と山とのピッチが68mm)の鋼板からプレス成形等により長手方向に直交する鉛直断面がU字状に成形された鋼製部材であり、本実施の形態では、高さH=450mm×幅W=560mm×長さL=1058mmに成形されている。
【0030】
(溝渠連結体の自在継手)
本発明の実施の形態に係る自在継手3は、図7図8に示すように、クロロプレンゴム(CRゴム)などの硬質ゴムから押し出し成形等により所定形状に成形されたゴム板30からなり、溝渠Kの屈曲部分において捩じり変位を含めた任意の屈曲角度にU字溝2同士を連結する機能を有している(図1も参照)。このゴム板30は、中央に設けられたコルゲート状の襞が形成された蛇腹状部31と、この蛇腹状部31の左右両側に設けられた平板状の接続部32、32と、を有している。なお、硬質ゴムとは、クロロプレンゴムを始め、ニトリルゴムなど、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)による硬さが70°以上のゴム弾性体を指している。
【0031】
この蛇腹状部31は、図7図9に示すように、外部となる裏面側に突出した大きな2つの襞33、33と、この襞33、33の左右両側に配置された同じく裏面側に突出した小さな2つの襞34、34と、を備え、これらの襞33、34が広がったり狭まったりすることにより、自在継手3で連結するU字溝2同士の水平及び鉛直角度の違いを吸収する機能を有している(図1等も参照)。また、蛇腹状部31の表層には、円弧状の切欠き溝M1、M2が形成されている。この切欠き溝M1、M2については、後で詳述する。また、硬質ゴムのみで自在継手を形成した際に、設置条件により土圧に対して剛性が低く容易に変形してしまう場合には、壁34を水平及び鉛直角度の違いを吸収することに用いず、U字形状の補強棒鋼を嵌め込んで設置するために用いてもよい。
【0032】
接続部32は、図10に示すように、鋼板などの金属平板の条材からU字状に成形されたU字金具4で上方からU字溝本体20の長手方向の端部との間に挟み込んでボルトで止め付けられることにより、U字溝2に接続される部分である。なお、U字金具4は、丸鋼などの丸棒状の部材から形成されていても良く、U字金具4の形状も、接続部32をU字溝本体20等に取り付けることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0033】
また、図10に示すように、接続部32とU字溝2と間に、ゴムパッキンなどのゴム弾性体や粘性の高い塑性材からなる止水材5を噛ましても良い。そうすることで、U字溝2と自在継手3との間の止水性が良くなり、溝渠連結体1により通水する水が地溝から消失してしまうことを防止し、溝渠連結体1の通水効率を向上させることができる。
【0034】
このゴム板30は、前述のように、両端の接続部32がU字金具4でU字溝2に止め付けられることにより、図9図11に示すように、長手方向と直交する鉛直断面が略U字状となり、蛇腹状部31の襞33、34が、U字に沿って外側に突出した形状となる。このため、自在継手3が、自在継手としての機能を発揮することができるようになる。なお、磨耗を考慮して自在継手の厚みを厚くする場合には、以下の全ての実施形態において、水を流す水路方向と直交する鉛直断面の形状が、初めから略U字形状になるように成形してもよい。
【0035】
次に、本発明の特徴的部分である蛇腹状部の切欠き溝の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
[第1実施形態]
先ず、図7図9を用いて、本発明の第1実施形態に係る自在継手3の切欠き溝について説明する。前述のように、第1実施形態に係る自在継手3の蛇腹状部31の表層には、互いに直交する2種類の円弧状の切欠き溝M1、M2が所定間隔をおいてそれぞれ複数本形成されている。勿論、これらの切欠き溝M1、M2は、機能的には、断面V字状の溝でもよいが、溝に鋭角な角があるとそこから切れやすくなるため円弧状となっている。また、ここで、表層とは、表裏を問わず、ゴム板30の厚さの半分以下の部分を指している。
【0037】
切欠き溝M1は、蛇腹状部31の襞33の可撓性及び伸縮機能を向上させるための断面円弧状の曲げ応力用の溝であり、蛇腹状部31の内面及び外面に、襞33に沿って直線状に形成されている。このため、蛇腹状部31の可撓性及び伸縮機能が向上し、ゴム弾性体からなる自在継手3の復元力を緩和して、蛇腹状部31の襞33を開いたり閉じたりすることが容易となり、U字溝2と自在継手3との連結作業の効率が向上する。
【0038】
切欠き溝M2は、蛇腹状部31に作用する捩じりに対する伸縮機能を向上させるための断面円弧状の捩じり応力用の溝であり、蛇腹状部31の内面に、X方向に沿って直線状に形成されている。このため、蛇腹状部31の捩じりに対する伸縮機能が向上し、ゴム弾性体からなる自在継手3の捩じりの復元力を緩和して、図1で示したA方向とB方向が3次元的に回転しながら曲がっている場合であっても、U字溝2と自在継手3との連結作業の作業効率が向上する。
【0039】
また、第1実施形態に係る自在継手3の切欠き溝M1は、図7等に示すように、襞33の最も外側に突出した頂部の内側に形成されているとともに、襞33と襞33の間の最も内側に入り込んだ底部の外側に形成されている。このため、ゴム板30が成形された際の形状より襞33と襞33が狭まった場合及び広がった場合であっても、ゴム弾性体の反発力を緩和することができる。
【0040】
その上、第1実施形態に係る自在継手3の切欠き溝M1は、蛇腹状部31の曲面の曲率半径の外側となる位置の内面及び外面に形成されている。このため、特に、蛇腹状部31が折り畳まれる際のゴム弾性体の反発力を緩和することができる。
【0041】
なお、切欠き溝M1、M2として、直線状のものを例示したが、タイヤのトレッドパターンの如く、折れ線や波形などの一定形状のパターンが繰り返されるものであれば、直線状でない円弧状の溝であっても構わない。その場合であっても、前記作用効果を奏することは明らかである。但し、切欠き溝M1、M2が直線状であれば、押し出し成形や切削加工等により切欠き溝の作成が容易となるため好ましい。
【0042】
また、切欠き溝M1と切欠き溝M2とが、襞33に沿って直交する場合を例示したが、互いに交差する関係であれば、いずれか一方又は両方がゴム弾性体の捩じり応力に反発する力を緩和することができるのは明らかである。但し、切欠き溝M1と切欠き溝M2とが、直交する場合の方が、自在継手3にどのような捩じり応力が作用した場合であっても、効率よくその反発力を緩和することができる。
【0043】
要するに、第1実施形態に係る自在継手3によれば、耐久性を考慮してゴム弾性体としてクロロプレンゴム(CRゴム)などの硬質ゴムを使用した場合であっても、切欠き溝M1、M2により、蛇腹状部31の可撓性を向上させて溝渠連結体1の連結・設置作業の作業効率を向上させることができる。
【0044】
なお、自在継手の可撓性を向上させる手段としては、背景技術で述べたように、一般に、蛇腹状部分(蛇腹状部31)の襞の数を増やすことが考えられる。しかし、その場合、溝渠連結体の直線状の部材(U字溝2)の方が、継手部材(自在継手3)よりも長さあたり単価が安く、襞の数を増やして蛇腹状部分の距離を長くすると製造コスト及び設置(施工)コストが上がってしまう。
【0045】
また、自在継手の可撓性を向上させる他の手段としては、ゴム弾性体の硬度を低く(柔らかく)したり、ゴム板の厚さを薄くしたりすることが考えられるが、そうすると、磨耗により損傷しやすくなり、耐久性が低下して望ましくない。また、自在継手の定形性を悪化させ、自在継手の運搬効率が悪くなるとともに、U字溝と自在継手との連結作業の作業効率も悪くなってしまう。
【0046】
一方、第1実施形態に係る自在継手3によれば、切欠き溝M1と切欠き溝M2の機能により、十分な厚みを備えた磨耗に強い自在継手3とすることができる。また、蛇腹状部31を極力短くしても、自在継手3の定形性を悪化させることなく、溝渠連結体1のU字溝2とU字溝2とを容易に任意の角度で連結することでき、溝渠連結体全体の製造コスト及び設置(施工)コストを低減することができる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、図12図14を用いて、本発明の第2実施形態に係る自在継手6の切欠き溝について説明する。前述の第1実施形態に係る自在継手3と相違する点は、自在継手6として成形されたゴム板が、自在継手の内面(内側)にのみ切欠き溝M1、M2が設けられているゴム板60となっている点だけであるため、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0048】
第2実施形態に係る自在継手6として成形されたゴム板60の切欠き溝M1は、図12等に示すように、全て襞33の内面(内側)に形成されている。自在継手6の切欠き溝M1は、自在継手3と同じく、襞33の最も外側に突出した頂部の内側に形成されているとともに、自在継手3と相違して、襞33と襞33の間の最も内側に入り込んだ底部の内側に形成されている。この場合であっても、自在継手3と同様に、ゴム板60が成形された際の形状より襞33と襞33が狭まった場合及び広がった場合において、ゴム弾性体の反発力を緩和することができる。
【0049】
なお、第2実施形態に係る自在継手6の切欠き溝M2は、形状、形成位置等全て自在継手3と同じ構成となっている。このため、蛇腹状部31の捩じりに対する伸縮機能が向上し、ゴム弾性体からなる自在継手3の捩じりの復元力を緩和して、図1で示したA方向とB方向が3次元的に回転しながら曲がっている場合であっても、U字溝2と自在継手6との連結作業の作業効率が向上する。
【0050】
第2実施形態に係る自在継手6によれば、切欠き溝M1、M2が、自在継手6の内面にのみ設けられているので、ゴム板60の一面のみの加工、成形で切欠き溝M1、M2を作成することができ、金型の作成費を低減したり、加工時間を短縮したりすることができ、自在継手6の作成コストを低減することができる。
【0051】
[第3実施形態]
次に、図15図17を用いて、本発明の第3実施形態に係る自在継手7の切欠き溝について説明する。前述の第1実施形態に係る自在継手3と相違する点は、自在継手7として成形されたゴム板が、自在継手の外面にのみ切欠き溝M1、M2が設けられているゴム板70となっている点だけであるため、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0052】
第3実施形態に係る自在継手7として成形されたゴム板70の切欠き溝M1は、図15等に示すように、全て襞33の外面(外側)に形成されている。自在継手7の切欠き溝M1は、自在継手3と相違して、襞33の最も外側に突出した頂部の外側(外面)に形成されているとともに、自在継手3と同様に、襞33と襞33の間の最も内側に入り込んだ底部の外側(外面)に形成されている。この場合であっても、自在継手3と同様に、ゴム板70が成形された際の形状より襞33と襞33が狭まった場合及び広がった場合において、ゴム弾性体の反発力を緩和することができる。
【0053】
ゴム板70の切欠き溝M2は、蛇腹状部31に作用する捩じりに対する伸縮機能を向上させるための断面円弧状の溝であり、蛇腹状部31の外面(外側)に、X方向に沿って直線状に形成されている。このため、蛇腹状部31の捩じりに対する伸縮機能が向上し、ゴム弾性体からなる自在継手7の捩じりの復元力を緩和して、図1で示したA方向とB方向が3次元的に回転しながら曲がっている場合であっても、U字溝2と自在継手7との連結作業の作業効率が向上する。
【0054】
第3実施形態に係る自在継手7によれば、切欠き溝M1、M2が、自在継手7の外面(外側)にのみ設けられているので、自在継手6と同様に、自在継手7の作成コストを低減することができるだけでなく、水流により流されてくる砂礫等により切欠き溝M1、M2が摩耗したり損傷したりするおそれが少なく、自在継手7の耐久性が向上する。
【0055】
[第4実施形態]
次に、図18図20を用いて、本発明の第4実施形態に係る自在継手8の切欠き溝について説明する。前述の第2実施形態に係る自在継手6と相違する点は、切欠き溝M1、が形成されている数が少なくなっている点だけであるため、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0056】
第4実施形態に係る自在継手8として成形されたゴム板80の切欠き溝M1は、自在継手6と同様に、全て襞33の内面(内側)に形成されている。つまり、自在継手8の切欠き溝M1は、自在継手6と同じく、襞33の最も外側に突出した頂部の内側に形成されているとともに、襞33と襞33の間の最も内側に入り込んだ底部の内側に形成されている。但し、自在継手6と相違して、自在継手8の切欠き溝M1は、図に示すように、襞33の頂部及び底部の内側を除いた位置の切欠き溝が少なくなっている。また、自在継手8の切欠き溝M2は、形状、形成位置等全て自在継手3、6と同じ構成となっている。
【0057】
第4実施形態に係る自在継手8によれば、切欠き溝M1の数が、前述の自在継手6と比べて少なくなっているので、自在継手8の作成コストを自在継手6より低減することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態に係る溝渠連結体1及び、その自在継手3、6、7、8について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施の形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施の形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、自在継手の切欠き溝の深さや本数(数)等は、自在継手を構成するゴム板の硬さや厚さ等に応じて適宜定めればよいものであり、それらが相違しても前述の作用効果を奏することは明らかである。
【符号の説明】
【0059】
1 :溝渠連結体
2 :U字溝(直線状部材)
20 :U字溝本体
21 :鍔部
3、6、7、8 :自在継手
30 :ゴム板
31 :蛇腹状部
32 :接続部
33、34 :襞
4 :U字金具
5 :止水材
M1 :切欠き溝(曲げ応力用の溝)
M2 :切欠き溝(捩じり応力用の溝)
図1
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