(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物:
【0025】
【化3】
[式中、
Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、アルキルアミノアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルであり、
Pは、アミノ基、保護されたアミノ基、又はNH
3+Y
−(式中、Y
−は、対アニオンである)であり、
Aは、CH又はNであり、
Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、又はアルコキシであり、
nは、0〜4の整数である。]、
又は、薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、式(I−A)の化合物:
【0027】
【化4】
[式中、
Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、アルキルアミノアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルであり、
Aは、CH又はNであり、
Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、又はアルコキシであり、
nは、0〜4の整数である。]、
又はその塩を提供する。
【0028】
一実施形態では、本発明は、式(II):
【0029】
【化5】
[式中、
Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、アルキルアミノアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルであり、
Aは、CH又はNであり、
Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、又はアルコキシであり、
nは、0〜4の整数であり、
Zは、結合又は−C(O)−NH−(CH
2CH
2O)
p−CH
2CH
2−(式中、pは1〜50の範囲である)であり、
N
*により示される窒素原子は、抗原と共有結合する。]により表される少なくとも1つのセグメントを有する、抗原の複合体、
又は、薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0030】
本明細書において使用するところの「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、及び接頭辞「アルキ(ケ)」とは、直鎖及び分枝鎖の基、並びに例えばシクロアルキル及びシクロアルケニルなどの環状基のいずれをも含む。特に断らないかぎり、これらの基は1〜20個の炭素原子を有し、アルケニル基は2〜20個の炭素原子を含み、アルキニル基は2〜20個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、これらの基は、合計で10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、7個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。環状基は、単環式又は多環式であってよく、好ましくは3〜10個の環状炭素原子を有する。例示的な環状基としては、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、並びに置換及び非置換のボルニル、ノルボルニル、及びノルボルネニルが挙げられる。
【0031】
特に断らないかぎり、「アルキレン」、「アルケニレン」、及び「アルキニレン」は、上記に定義した「アルキル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」基の2価の形である。「アルキレニル」、「アルケニレニル」、及び「アルキニレニル」なる用語は、それぞれ、「アルキレン」、「アルケニレン」、及び「アルキニレン」が置換されている場合に用いる。例えば、アリールアルキニレニル基は、アリール基が結合したアルキレン部分からなる。
【0032】
「ハロアルキル」なる用語は、パーフルオロ化された基を含む、1以上のハロゲン原子によって置換された基を含む。これは、接頭辞「ハロ」を有する他の基についても当てはまる。適当なハロアルキル基の例としては、クロロメチル及びトリフルオロメチルが挙げられる。
【0033】
場合により−O−によって「分断された」炭素原子を有するアルキレン基とは、−O−の両側に炭素原子を有することを指す。一例として、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−がある。
【0034】
場合により−O−によって「終端する」炭素原子を有するアルキレン基とは、アルキレン基又は炭素原子の鎖のいずれかの端部に−O−を有することを指す。例としては、−O−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−、及び−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−O−が挙げられる。本発明の化合物及び複合体においては、Xが、−O−によって終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンである場合、この−O−は、イミダゾル環の窒素又はベンズアミド若しくはニコチンアミド基の窒素のいずれかに結合してよい。
【0035】
本発明は、本明細書に述べられる化合物(中間体を含む)を、異性体(例えばジアステレオマー及びエナンチオマーなど)、塩、溶媒和物、多形体、プロドラッグ、及びこれに類するものを含む、薬学的に許容される形態のいずれかとして含む。詳細には、ある化合物が光学活性を有する場合、本発明は、その化合物のエナンチオマーのそれぞれ、及びエナンチオマーのラセミ混合物を具体的に含む。「化合物」なる用語には、明記されるとされないとに関わらず(折に触れて「塩」と明記されているが)、こうした形態のいずれか又はすべてが含まれることは理解されなければならない。
【0036】
当業者であれば理解されるように、式I、I−A、及びIIを含む、本明細書に示される化合物のいずれについても、その実施形態のいずれかにおける以下の変量(例えばX、R
2、R、nなど)のそれぞれを、それらの実施形態のいずれかにおける他の変量のいずれか1以上のものと組み合わせ、更に、本明細書に述べられる式のいずれか1つと関連付けることができる。得られる変量の組み合わせのそれぞれが、本明細書の一実施形態である。
【0037】
特定の実施形態では、Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンである。
【0038】
特定の実施形態では、Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する5個以下の炭素原子を有するアルキレンである。
【0039】
特定の実施形態では、Xは、−O−C
2〜8アルキレン(例えば−O−C
2〜5アルキレン)である。これらの実施形態では、−O−はイミダゾル環の窒素に直接結合している。
【0040】
特定の実施形態では、Xは、−O−C
3〜8アルキレン(例えば−O−C
3〜5アルキレン)である。これらの実施形態では、−O−はイミダゾル環の窒素に直接結合している。
【0041】
特定の実施形態では、Xは、−O−C
1〜8アルキレン(例えば−C
2〜5アルキレン)である。
【0042】
特定の実施形態では、Xは、−O−によって分断された−C
1〜8アルキレン(例えば−C
2〜5アルキレン)である。
【0043】
特定の実施形態では、Xは、−C
3〜8アルキレン(例えば−C
3〜5アルキレン)である。
【0044】
特定の実施形態では、Xは、−O−ブチレン(例えば−O−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−)である。これらの実施形態では、−O−はイミダゾル環の窒素に直接結合している。
【0045】
特定の実施形態では、Xは、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−である。
【0046】
Xが定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、アルキルアミノアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルである。
【0047】
Xが定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルである。
【0048】
Xが定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、R
2は、水素、アルキル、又はアルコキシアルキレニルである。
【0049】
Xが定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、R
2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、エチルアミノメチル、又は2−メトキシエチルである。
【0050】
Xが定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、R
2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、又は2−メトキシエチルである。
【0051】
Xが定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、R
2は、エチル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、又は2−メトキシエチルである。
【0052】
Xが定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、R
2は、ブチル(例えば−CH
2−CH
2−CH
2−CH
3)である。
【0053】
X又はR
2が定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Aは、CH又はNである。
【0054】
X又はR
2が定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Aは、CHである。
【0055】
X又はR
2が定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Aは、Nである。
【0056】
X、A、又はR
2が定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、又はアルコキシである。
【0057】
X、A、又はR
2が定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Rは、ハロゲン又はヒドロキシルである。
【0058】
X、A、R、又はR
2が定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、nは1である。
【0059】
X、A、又はR
2が定義された、上記の式I、I−A、及びIIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、nは0である。
【0060】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、アミノ基(すなわちNH
2)、保護されたアミノ基、又はNH
3+Y
−、(式中、Y
−は対イオンである)である。
【0061】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、アミノ基(すなわちNH
2)である。
【0062】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、NH
3+Y
−又は保護されたアミノ基である。
【0063】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、NH
3+Y
−(式中、Y
−は対イオンである)である。Y
−は、式Iの化合物の溶解度に悪影響を与えず、また、式Iの化合物のアルデヒド結合抗原との反応も阻害しない、任意の薬学的に許容される対イオンであってよい。
【0064】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、NH
3+Y
−[式中、Y
−は、ハロゲン化物(すなわち、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、R’−C(O)−O
−、R’−SO
2−O
−、R”−O−SO
2−O
−、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、又はテトラフルオロボレートであり、R’及びR”は、独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキレニル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキレニルであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキレニル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキレニル基は、置換されないか、又は、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、及びアリールオキシからなる群から独立して選択される1以上の置換基によって置換されてよい]である。
【0065】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、NH
3+Cl
−である。
【0066】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、保護されたアミノ基である。保護されたアミノ基は、式Iの化合物の溶解度に悪影響を与えず、アルデヒド結合抗原との反応が可能となるように容易に脱離することが可能な任意の保護されたアミノ基であってよい。例示的な好適な保護されたアミノ基としては、カルバメート及びイミンが挙げられる。
【0067】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、式−N(H)−C(O)−O−R’を有しうるカルバメート[式中、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキレニル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキレニルであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキレニル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキレニル基は、置換されないか、又は、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、及びアリールオキシからなる群から独立して選択される1以上の置換基によって置換されてよい]である。
【0068】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、−N(H)−C(O)−O−R’[式中、R’は、メチル、エチル、tert−ブチル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、2−フェニルエチル、1−アダマンチル、又はベンジルである]である。
【0069】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、−N(H)−C(O)−O−tert−ブチルである。
【0070】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、式−N=C(R’)
2を有しうる
イミン[式中、各R’は、独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキレニル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキレニルであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキレニル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキレニル基は、置換されないか、又は、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、及びアリールオキシからなる群から独立して選択される1以上の置換基によって置換されてよい]である。
【0071】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Pは、−N=C(CH
3)
2である。
【0072】
X、A、R
2、R、P、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−P基は、Aに対してオルト又はメタ位にある。
【0073】
X、A、R
2、R、P、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−P基は、Aに対してオルト位にある。
【0074】
X、A、R
2、R、P、又はnが定義された、上記の式Iの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−P基は、Aに対してメタ位にある。
【0075】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式I−Aの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−NH
2基は、Aに対してオルト又はメタ位にある。
【0076】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式I−Aの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−NH
2基は、Aに対してオルト位にある。
【0077】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式I−Aの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−NH
2基は、Aに対してメタ位にある。
【0078】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−N=CH−基は、Aに対してオルト又はメタ位にある。
【0079】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−N=CH−基は、Aに対してオルト位にある。
【0080】
X、A、R
2、R、又はnが定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、−NH−N=CH−基は、Aに対してメタ位にある。
【0081】
X、A、R
2、R、n、又は−NH−N=CH−基の位置が定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Zは結合である。Zが結合である実施形態では、Zが存在せず、式IIによって表されるセグメントが、下式のように書き表すこともできる点は理解されるはずである。すなわち、
【0083】
X、A、R
2、R、n、又は−NH−N=CH−基の位置が定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、Zは−C(O)−NH−(CH
2CH
2O)
p−CH
2CH
2−である。これらの実施形態では、カルボニル基が芳香族環に結合し、式IIによって表されるセグメントが、下式のように書き表すこともできる点は理解されるはずである。すなわち、
【0085】
これらの実施形態の一部のものでは、pは1〜50の範囲である。他の実施形態では、pは、2〜50、1〜40、2〜40、1〜30、2〜30、2〜24、2〜16、2〜12、4〜24、4〜16、又は4〜12の範囲である。
【0086】
式I、I−A、及びIIの特定の実施形態では、nは0であり、Xは−O−C
3〜5アルキレンであり、R
2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、又は2−メトキシエチルである。
【0087】
式I、I−A、及びIIの特定の実施形態では、nは0であり、Xは−O−ブチレンであり、R
2はブチルである。
【0088】
特定の実施形態では、式Iの化合物は、N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−ヒドラジノニコチンアミド:
【0089】
【化8】
又は、薬学的に許容されるその塩である。
【0090】
特定の実施形態では、式Iの化合物は、N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ニコチンアミド:
【0091】
【化9】
又は、薬学的に許容されるその塩である。
【0092】
特定の実施形態では、式Iの化合物は、N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−4−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ベンズアミド:
【0093】
【化10】
又は、薬学的に許容されるその塩である。
【0094】
特定の実施形態では、式Iの化合物は、N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−4−ヒドラジノベンズアミド:
【0095】
【化11】
又は、薬学的に許容されるその塩である。
【0096】
上記に定義したように、「抗原」とは、ある程度免疫特異的なかたちで結合され、体液性免疫反応、細胞性免疫反応、又はその両方を引き起こすあらゆる物質のことを指す。例示的な抗原としては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖他、脂質、糖脂質、多糖類、炭水化物、ポリヌクレオチド、プリオン、オリゴヌクレオチド(例えばCpG)、DNA、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、毒素、又はトキソイドが挙げられる。
【0097】
X、A、R
2、R、n、p、又は−NH−N=CH−基の位置が定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、抗原はタンパク質である。
【0098】
X、A、R
2、R、n、p、又は−NH−N=CH−基の位置が定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、抗原は脂質である。
【0099】
X、A、R
2、R、n、p、又は−NH−N=CH−基の位置が定義された、上記の式IIの実施形態のいずれかを含む特定の実施形態では、抗原はワクチンである。
【0100】
化合物の調製
本発明の化合物は、特に本明細書に記載される説明を考慮することで、化学分野においてよく知られるものと類似のプロセスを含む合成経路によって合成することができる。開始物質は、アルドリッチ・ケミカルズ社(Aldrich Chemicals)(米国、ウィスコンシン州、ミルウォーキー)などの商業的供給元から一般的に入手されるか、又は当業者には周知の方法を用いて容易に調製される(例えば、Louis F.Fieser and Mary Fieser,Reagents for Organic Synthesis,v.1〜19,Wiley,New York,(1967〜1999 ed.);Alan R.Katritsky,Otto Meth−Cohn,Charles W.Rees,Comprehensive Organic Functional Group Transformations,v 1〜6,Pergamon Press,Oxford,England,(1995);Barry M.Trost and Ian Fleming,Comprehensive Organic Synthesis,v.1〜8,Pergamon Press,Oxford,England,(1991);又は、Beilsteins Handbuch der organischen Chemie,4,Aufl.Ed.Springer−Verlag,Berlin,Germany,(補遺を含む)(Beilsteinオンラインデータベースから入手することも可能)に一般的に述べられる方法により調整される。)。
【0101】
下記に示す反応スキームは、説明を目的として、本発明の化合物及び主要な中間体を合成するための可能な経路を与えるものである。個々の反応工程のより詳細な説明については、下記実施例の項を参照されたい。当業者であれば、他の合成経路を使用して本発明の化合物を合成することも可能である点は認識されるであろう。具体的な開始物質及び試薬を反応スキームに示し、以下に考察するが、様々な誘導体及び/又は反応条件を与えるために他の開始物質及び試薬に容易に置き換えることができる。更に、下記に述べる方法によって調製される化合物の多くは、本開示を考慮し、当業者には周知の従来の方法を用いることで更に改変することが可能である。
【0102】
本発明の化合物の調製においては、中間体の他の官能基を反応させる一方で特定の官能基は保護する必要が時として生じうる。このような保護の必要性は、特定の官能基の性質及び反応工程の条件に応じて異なる。適当なアミノ保護基としては、アセチル、トリフルオロアセチル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル、及び9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。適当なヒドロキシ保護基としては、tert−ブチルジメチルシリル基などのアセチル及びシリル基が挙げられる。保護基及びその使用の一般的な説明については、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,New York,USA,1991を参照されたい。
【0103】
従来の分離及び精製の方法並びに技術を使用して、本発明の化合物及び本発明の化合物に関連した様々な中間体を単離することができる。このような技術としては、例えば、あらゆる方式のクロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、シリカゲルなどの一般的な吸収剤を使用したカラムクロマトグラフィー、及び薄層クロマトグラフィー)、再結晶化、及び分別(すなわち液体/液体)抽出法が挙げられる。
【0104】
反応スキームIでは、本発明の実施に有用な中間化合物について述べる。反応スキームIの工程(1)では、式IVのヒドラジノ安息香酸又はヒドラジノニコチン酸化合物を室温でアセトンと反応させることによって式Vのヒドラゾン置換化合物を得る。式IVの開始ヒドラジン置換化合物は、4−ヒドラジノ安息香酸(IV、式中、A=CH)及び6−ヒドラジノニコチン酸(IV、式中、A=N)である。これらの化合物は、Lagisetty,P.;Vilekar,P.;and Awasthi,V.Biorganic and Medicinal Chemistry Letters,19,pp.4764〜4767(2009)、又はPegurier,C.;Collart,P.;Danhaive,P.;Defays,S.;Gillard,M.;Gilson,F.;Kogej,T.;Pasau,P.;Van Houtvin,N.;Van Thuyne,M.;Van Keulen,B.Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,17,pp.4228〜4231(2007)、又は国際特許出願公開第2006071940号(フリン(Flynn)ら)により述べられる反応条件を用いて調製することができる。
【0105】
反応スキームIの工程(2)では、式Vの化合物を室温で、N−ヒドロキシスクシンイミド及び1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又は1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド(EDC)などの標準的なカップリング試薬と、ジクロロメタン又はピリジンなどの適当な溶媒中で反応させる。式VIの生成物は従来の手段を用いて単離することができる。
【0106】
反応スキームIの工程(3)では、式VIIのヒドラジノ安息香酸又はヒドラジノニコチン酸化合物を室温でアセトンと反応させることによって式VIIIのヒドラゾン置換化合物を得る。式VIIの開始ヒドラジン置換化合物は、3−ヒドラジノ安息香酸(VII、式中、A=CH)及び5−ヒドラジノニコチン酸(VII、式中、A=N)である。これらの化合物は、式IVの化合物を調製するために示した参照文献の方法にしたがって調製することができる。
【0107】
反応スキームIの工程(4)では、式VIIIのヒドラゾン置換化合物の化合物を室温でNヒドロキシスクシンイミドと、例えば工程(2)について上記に述べた条件を用いて反応させる。
【0109】
本発明の化合物は反応スキームIIにしたがって調製することができる。なお、反応スキームIIにおいて、R、R
2、A、及びnは上記に定義されたものであり、X’は8個以下の炭素原子を有するアルキレンである。
【0110】
反応スキームIIの工程(1)では、式Xの4−クロロ−3−ニトロキノリンを還元して式XIの3−アミノ−4−クロロキニリンを得る。この還元反応は、炭素に担持させた白金又は炭素に担持させたパラジウムなどの従来の不均質水素化触媒を用いて行うことができる。式Xの特定の化合物、例えばRがハロゲンであるような化合物に対しては、白金触媒が好ましい。反応は、パー(Parr)装置を使用し、トルエン及び/又はイソプロパノールなどの適当な溶媒中で行うことができる。生成物は従来の方法により単離することができる。式Xの化合物の多くは公知のものであるか、又は公知の合成法を用いて調製することができる。これについては、例えば、米国特許第4,689,338号(ガースター(Gerster))、同第5,175,296号(ガースター(Gerster))、同第5,367,076号(ガースター(Gerster))及び同第5,389,640号(ガースター(Gerster)ら)、並びにこれらの特許に引用される文献を参照されたい。式XIの化合物の一部は知られているものである。例えば、3−アミノ−4−クロロキノリン、3−アミノ−4,5−ジクロロキノリン、及び3−アミノ−4,7−ジクロロキノリンは、スレイ(Surrey)らにより調製されている(Journal of the American Chemical Society,73,pp.2413〜2416(1951))。
【0111】
また、還元工程(1)は、1相又は2相のジチオン酸ナトリウム還元を使用して行うこともできる。この反応は、Park,K.K.;Oh,C.H.;and Joung,W.K.Tetrahedron Letters,34,pp.7445〜7446(1993)に述べられる条件を用い、炭酸カリウム及び二臭化エチルビオロゲン、二ヨウ化エチルビオロゲン、又は1,1’−ジ−n−オクチル−4,4’−ビピリジニウムジブロミドの存在下、室温でジクロロメタンと水の混合物中で式Xの化合物にジチオン酸ナトリウムを加えることによって行われる。生成物は従来の方法により単離することができる。
【0112】
反応スキームIIの工程(2)では、式XIの3−アミノ−4−クロロキノリンを、式R
2C(O)Cl又はR
2C(O)Brのアシルハライドと反応させることにより式XIIのN−(4−クロロキノリン−3−イル)アミドを得る。アシルハライドは、トリエチルアミン、ピリジン、又は4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基の存在下、ジクロロメタンなどの適当な溶媒に式XIの化合物を加えた溶液に加える。この反応は、例えば0℃などの低温、又は室温で行うことができる。生成物は再結晶化などの従来の方法によって単離することができる。
【0113】
反応スキームIIの工程(3)では、式XIIのN−(4−クロロキノリン−3−イル)アミドを式CBZ−NH−X’−ONH
2のヒドロキシルアミンと反応させて環化することによって式XIIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリンを得る。CBZは、カルボキシベンジル基の一般的な化学略称である。CBZ−NH−X’−ONH
2を、式XIIの化合物をアルコール溶媒に加えた溶液に加える。反応は、イソプロパノール中で例えば環流温度などの高温で行うことができる。トリエチルアミンなどの塩基を反応に加えることもできる。生成物は再結晶化などの従来の方法によって単離することができる。
【0114】
反応スキームIIの工程(3)において用いられるCBZ−NH−X’−ONH
2化合物は、式H
2N−X’−OHのアミノアルキルアルコールをクロロギ酸ベンジルと反応させて式CBZ−NH−X’−OHの化合物を得ることによって調製することができる。クロロギ酸ベンジルは、ピリジンなどの塩基の存在下、式H
2N−X’−OHをジクロロメタンなどの適当な溶媒に加えた溶液に加える。反応は最初、例えば0℃などの低温で行った後、室温にまでゆっくりと昇温することができる。生成物は再結晶化などの従来の方法によって単離することができる。式CBZ−NH−X’−OHの化合物を、光延反応条件を用いて更に反応させて式CBZ−NH−X’−ONH
2の化合物を得る。N−ヒドロキシフタルイミド、式CBZ−NH−X’−OHの化合物、及びトリフェニルホスフィンをジクロロメタンなどの適当な溶媒中で合わせて0℃に冷却する。ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)をゆっくりと加え、反応を室温にまで昇温する。必要な場合、反応を60℃などの高温で行うことができる。減圧下で濃縮後、エタノールなどの適当な溶媒中でヒドラジン(水溶液)で処理することによってフタルイミド保護基を外す。式CBZ−NH−X’−ONH
2の生成物は、再結晶化などの従来の方法によって単離することができる。
【0115】
反応IIの工程(4)では、式XIIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリンに3段階の変換反応を行って式XIVの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを得る。最初に、ピリジン環の窒素原子のN−オキシドを生成することが可能な従来の酸化剤を用いて式XIIIの化合物を酸化する。この反応は、クロロホルム又はジクロロメタンなどの適当な溶媒に式XIIIの化合物を加えた溶液を、3−クロロ過酸化安息香酸で処理することにより行われる。N−オキシド反応生成物は必要に応じて単離してもよく、あるいは第2の変換反応をその場で生成したN−オキシドとともに同じ反応容器中で行ってもよい。第2の変換反応では、適当な活性化剤によりN−オキシドを活性化した後、適当なアミノ化剤によってアミノ化することにより、N−オキシド生成物をアミノ化する。適当な活性化剤としては、アルキル又はアリールスルホニルクロリド(例えばベンゼンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリドなど)が挙げられる。特定の実施形態では、アリールスルホニルクロリド(例えばp−トルエンスルホニルクロリド)が有用である。適当なアミノ化剤としては、アンモニア(例えば水酸化アンモニウムとして)及びアンモニウム塩(例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム)が挙げられる。この反応は、式XIIIの化合物のN−オキシドを、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン又はクロロホルムなどの適当な溶媒に溶解し、水酸化アンモニウム、次いでアリールスルホニルクロリドを加えることによって行うことができる。必要に応じて反応は加熱しながら行ってもよい。必要に応じて、反応は高温(85〜100℃)で、密封した容器中で行うこともできる。第3の変換反応では、酸性条件下(例えば高温の濃塩酸)でCBZ保護基を外して式XIVの化合物を得る。式XIVの化合物は、従来の方法によって、遊離塩基又は酸塩(例えばマレイン酸塩又はフマル酸塩)として単離することができる。
【0116】
反応スキームIIの工程(5)では、式XIVの化合物を式Vの化合物(A=CH又はNである反応スキームIから得たもの)と反応させることによって式XVの化合物を得る。反応は、室温で、ジクロロメタン、ピリジン又は1−ブタノールなどの溶媒中、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又は1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]3−エチルカルボジイミド(EDC)などの標準的なカップリング試薬を使用して行うことができる。式XVの化合物は、従来の方法によって単離することができる。反応スキームIIの工程(5)の代替的な方法として、式XIVの化合物を式VIの化合物(A=CH又はNである反応スキームIから得たもの)と反応させることによって式XVの化合物が得られる。式XIVの化合物は、1−ブタノールなどの適当なアルコール溶媒に溶解し、式VIの化合物を室温でゆっくりと加えることができる。
【0117】
反応スキームIIの工程(6)では、酸性条件下でアセトアミン保護基を外して式XVIの化合物を得る。この反応は、塩酸中で、室温又は高温(例えば60℃)で行うことができる。式XVIの生成物は、例えば凍結乾燥により塩酸塩として単離することができる。
【0118】
反応スキームIIの工程(7)では、工程(5)で述べた対応する手順にしたがって、式XIVの化合物を、式VIII又は式IXの化合物(A=CH又はNである反応スキームIから得たもの)と反応させて式XVIIの化合物を得る。
【0119】
反応スキームIIの工程(8)では、酸性条件下でアセトアミン保護基を外して式XVIIIの化合物を得る。この反応は、工程(6)で述べた手順にしたがって行うことができる。
【0121】
本発明の化合物は、R、R
2、A、及びnが上記に定義されたものであり、X’が、8個以下の炭素原子を有するアルキレンであるものとして、反応スキームIIIにしたがって調製することができる。
【0122】
反応スキームIIIの工程(1)では、式Xの4−クロロ−3−ニトロキノリンを式HO−X’−NH
2のアミンで処理することによって式XIXの化合物を得る。式HO−X’−NH
2のアミンとしては幾つかのものが市販されており、他のものは公知の合成法によって調製することができる。この反応は、式HO−X’−NH
2のアミンを、ジクロロメタンなどの適当な溶媒に式Xの4−クロロ−3−ニトロキノリンを加えた溶液に、トリエチルアミンなどの第三級アミンの存在下で加えることによって行われる。この反応は、室温又は例えば0℃などの室温よりも低い温度で行うことができる。反応生成物は従来の方法によって単離することができる。
【0123】
反応スキームIIIの工程(2)では、式XIXの化合物を還元して式XXのジアミンを得る。この反応は、例えば反応スキームIIの工程(1)で述べた方法を用いて行うことができる。
【0124】
反応スキームIIIの工程(3)では、式XXのジアミンをカルボン酸同等物と反応させて式XXIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリンを得る。適当なカルボン酸同等物としては、式R
2C(O−アルキル)
3のオルトエステル、式R
2C(O−アルキル)
2(O−C(O)−アルキル)の1,1−ジアルコキシアルキルアルカノエート、及び式R
2C(O)Clの酸塩化物が挙げられる。カルボン酸同等物の選択は、R
2の所望の置換基によって決められる。例えば、オルトギ酸トリエチルは、R
2が水素である化合物を与え、オルト酪酸トリメチルは、R
2がプロピル基である化合物を与える。
【0125】
工程(3)は、トルエン又はキシレンなどの適当な溶媒中で式XXのジアミンにカルボン酸同等物を加えることによって行われる。必要に応じて、触媒の塩酸ピリジンを加えることができる。反応は、反応中に生成するアルコール又は水がとばされるような充分に高い温度で一般的に行われる。ディーンスタークトラップを使用して揮発成分を回収すると都合がよい。式XXIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン生成物は従来の技術を用いて単離し、必要に応じて精製することができる。また、反応スキームIIIの工程(3)は、式R
2C(O)Clの酸塩化物がカルボン酸同等物として用いられる場合には、2段階で行うこともできる。工程(3)のパート(i)は、酸塩化物を、ジクロロメタン又はアセトニトリルなどの適当な溶媒に式XXのジアミンを加えた溶液に加えることによって行うことができる。必要に応じて、トリエチルアミン、ピリジン、又は4−ジメチルアミノピリジンなどの第三級アミンを加えることができる。この反応は室温で行うことができる。アミド生成物は従来の技術を用いて単離し、必要に応じて精製することができる。工程(3)のパート(ii)では、パート(i)で調製したアミドを塩基の存在下で加熱して式XXIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリンを得る。この反応は、水酸化ナトリウム又は水性炭酸カリウムなどの塩基の存在下、エタノールなどの適当な溶媒中で、高温で行うことができる。式XXIの生成物は従来の方法を用いて単離することができる。
【0126】
nが0であるような式XXIの化合物としては幾つかのものが知られており、他の関連する経路によって調製されている(例えば、米国特許第4,689,338号(ガースター(Gerster))、同第5,605,899号(ガースター(Gerster)ら)、及び同第5,175,296号(ガースター(Gerster))を参照)。
【0127】
反応スキームIIIの工程(4)では、式XXIのヒドロキシル置換化合物を、光延反応条件下でN−ヒドロキシフタルイミドにより処理することによって式XXIIのN−フタルイミド保護されたヒドロキシルアミンを得る。この反応は、トリフェニルホスフィン及びN−ヒドロキシフタルイミドを、テトラヒドロフラン又はN,N−ジメチルホルムアミドなどの適当な溶液に式XXIのアルコールを加えた溶液に加え、次いでジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)をゆっくりと加えることによって行うことができる。この反応は、60℃などの高温で行うことができる。生成物は従来の方法によって単離することができる。
【0128】
反応スキームIIIの工程(5)及び(6)では、N−オキシドを生成することが可能な従来の酸化剤を使用して式XXIIのN−フタルイミド保護されたヒドロキシルアミンを酸化することによって式XXIIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−5N−オキシドを得た後、この式XXIIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−5N−オキシドをアミノ化して式XXIVの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを得る。これらの反応は、反応スキームIIの工程(4)の第1及び第2の変換反応において述べた条件を用いて行うことができる。これらの条件下では、N−フタルイミド保護基が外れて式XXIVの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンが得られる。式XXIVの化合物は知られているものであり、それらの他の調製方法も述べられている(例えば米国特許第7,648,997号(クシルサガー(Kshirsagar)ら)を参照)。
【0129】
反応スキームIIIの工程(7)では、式XXIVの化合物を式V又はVIの化合物(A=CH又はNである反応スキームIから得たもの)と反応させることによって式XXVの化合物を得る。この反応は、反応スキームIIの工程(5)に述べられる対応する方法にしたがって行うことができる。
【0130】
反応スキームIIIの工程(9)では、反応スキームIIの工程(5)で述べた対応する手順にしたがって、式XXIVの化合物を、式VIII又は式IXの化合物(A=CH又はNである反応スキームIから得たもの)と反応させて式XXVIIの化合物を得る。
【0131】
反応スキームIIIの工程(8)及び(10)では、反応スキームIIの工程(6)で述べたように、アセトアミン保護基を酸性条件下で外すことによってそれぞれ式XXVI及びXXVIIIの化合物を得る。
【0133】
本発明の化合物は反応スキームIVにしたがって調製することができる。なお、反応スキームIVにおいて、R、R
2、A及びnは上記に定義されたものであり、BOCはtert−ブトキシカルボニルであり、Y及びZは、合計で8個以下の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0134】
反応スキームIVの工程(1)では、式XXIXのアミノアルコールのアミノ基をtert−ブトキシカルボニル基(BOC)で保護することによって式XXXの化合物を得る。前記アミノアルコールのテトラヒドロフラン溶液を、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下でジ−tert−ブチルジカーボネートにより処理することができる。式XXIXのアミノアルコールの多くのものは市販されており、他のものは公知の合成法によって調製することができる。
【0135】
反応スキームIVの工程(2)では、式XXXの保護されたアミノアルコールを式XXXIのヨウ化物に変換する。ヨウ素を、トリフェニルホスフィン及びイミダゾルのジクロロメタン溶液に加え、次いで保護されたアミノアルコールXXXのジクロロメタン溶液を加えることができる。この反応は室温で行うことができる。式XXXIの化合物は、従来の方法によって単離することができる。
【0136】
反応スキームIVの工程(3)では、式XXXIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イルアルコールを、式XXXIのヨウ素でアルキル化することによって式XXXIIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イルエーテルを得る。この式XXXIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イルアルコールは、反応スキームIIIの式XXIによって表される化合物のサブセットを表すものである。式XXXIIの化合物は、反応スキームIIIの式XXIの化合物の合成について述べた手順を用いて調製することができる。工程(3)では、式XXXIIのアルコールを、N,N−ジメチルホルムアミドなどの適当な溶媒中で水素化ナトリウムと反応させることによってアルコキシドを生成することができる。前記ヨウ化物を、前記アルコキシド溶液に室温で加えた後、高温で撹拌する(約100℃)。
【0137】
反応スキームIVの工程(4)では、式XXXIIIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イルエーテルを酸化して式XXXIVの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−5N−オキシドを得る。反応スキームIVの工程(5)では、式XXXIVの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−5N−オキシドをアミノ化して式XXXVの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを得る。これらの反応は、反応スキームIIの工程(4)の第1及び第2の変換反応において述べた条件を用いて行うことができる。
【0138】
反応スキームIVの工程(6)では、酸性条件下での加水分解反応によりBOC保護基を外して式XXXVIの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを得る。式XXXVの化合物は、塩酸のエタノール溶液により、室温又は穏やかに加熱しながら処理することができる。nが0であるような式XXXIVの化合物は知られているものであり、その調製及び単離方法が述べられている(米国特許第6,660,747号(クルックス(Crooks)ら)を参照)。
【0139】
反応スキームIVの工程(7)では、式XXXVIの化合物を式V又はVIの化合物(A=CH又はNである反応スキームIから得たもの)と反応させることによって式XXXVIIの化合物を得る。この反応は、反応スキームIIの工程(5)に述べられる対応する方法にしたがって行うことができる。
【0140】
反応スキームIVの工程(9)では、反応スキームIIの工程(5)で述べた対応する手順にしたがって、式XXXVIの化合物を、式VIII又は式IXの化合物(A=CH又はNである反応スキームIから得たもの)と反応させて式XXXIXの化合物を得る。
【0141】
反応スキームIVの工程(8)及び(10)では、酸性条件下でアセトアミン保護基を外すことによってそれぞれ式XXXVIII又はXLの化合物を得る。この反応は、塩酸中で、室温又は高温(例えば60℃)で行うことができる。式XXXVIII又はXLの生成物は、凍結乾燥により塩酸塩として単離することができる。
【0143】
本発明の化合物は、当業者には明らかであろう反応スキームI〜IVの変法を用いて調製することもできる。例えば、X基が8個以下の炭素原子を有する式Iの化合物は、−Y−O−Z−がC
1〜8アルキレンに置き換えられた式XXXVIの化合物を開始物質とする反応スキームIVの変法を用いて調製することができる。このような開始化合物は、米国特許第6,069,149号(ナンバ(Nanba))に述べられる方法を用いて調製することができる。別の例では、アルキルアミノアルキレニル基を有する式Iの化合物を、例えば米国特許第5,389,640号(ガースター(Gerster)ら)に述べられる方法を用いた反応スキームII〜IVの変法を用いて調製することができる。本発明の化合物は、下記実施例に述べられる合成経路を用いて調製することもできる。
【0144】
複合体の調製
式1又はI−Aの化合物をアルデヒド結合抗原と反応させることによって本発明の複合体を得ることができる。したがって、本発明の複合体は、式I又はI−Aの化合物若しくはその塩とアルデヒド結合抗原との反応生成物である。これらの反応生成物は、一般的にヒドラゾノベンズアミド又はヒドラゾノニコチンアミド1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンである。
【0145】
アルデヒド結合抗原は、様々な方法にしたがって調製することができる。特定の場合では、抗原を、アルデヒド官能基及び第2の反応性官能基を有するヘテロ二官能性連結化合物と反応させることができる。このような場合では、抗原は、ヘテロ二官能性連結化合物との反応(例えば第2の反応性官能基における)を可能とする反応性官能基を一般的に有している。例えば、抗原は、例えばヘテロ二官能性連結化合物上のカルボン酸又はその誘導体との反応性を有しうる、リシン残基に由来する1以上(通常は多数の)末端アミノ基を有しうる。多数のアミノ基(すなわちリシン)を有するタンパク質などの生体分子では、必要なだけ多くのアミノ基がヘテロ二官能性連結化合物と反応しうる点は当業者には認識されるところであろう。この修飾度は、使用される連結化合物のモル等量の数によって調節することができる。
【0146】
特定の実施形態では、ヘテロ二官能性連結化合物は芳香族である。具体例として、アミノ官能性抗原は、スクシンイミジル4−ホルミルベンゾエート(SFB)と反応してアミド結合を形成し、芳香族環を介して抗原と共有結合により結合したアルデヒド官能基を与えることができる。この反応は、適当な緩衝溶液中(例えばpH 7.2〜7.5の範囲のリン酸緩衝溶液中)で行うことができる。SFBは、適当な極性溶媒(例えばDMSO又はDMF)に溶解して、抗原を含んだ前記緩衝溶液と合わせることができる。この反応は、室温で行うことができるので都合がよい。
【0147】
特定の実施形態では、ヘテロ二官能性連結化合物は芳香族であり、ポリ(エチレンオキシ)セグメントを有する。これらの実施形態のうちの特定のものでは、ヘテロ二官能性連結化合物は、
【0148】
【化16】
である(式中、pはその実施形態のいずれかにおいて上記に定義したものである)。このような化合物は、例えば、イリノイ州ロックフォード所在のサーモ・サイエンティフィック社(Thermo Scientific)より販売されるもののようなカルボキシ−PEG−アミン化合物を、N−スクシンイミジル−4−ホルミルベンゾエートと反応させることによって調製することができる。この後、カルボン酸基を、例えばN,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)と反応させることにより活性化エステルに変換することができる。ヘテロ二官能性連結化合物と抗原との反応は、適当な緩衝溶液中(例えばpH 7.2〜7.5の範囲のリン酸緩衝溶液中)で行うことができる。ヘテロ二官能性連結化合物は、適当な極性溶媒(例えばDMSO又はDMF)に溶解して、抗原を含んだ前記緩衝溶液と合わせることができる。この反応は、室温で行うことができるので都合がよい。このようなヘテロ二官能性連結化合物に関する更なる情報については、本明細書にその全容を援用するところの、2011年6月3日出願の同時係属中の米国特許出願第61/493,143号を参照されたい。
【0149】
他の実施形態では、抗原は、ヘテロ二官能性連結化合物を必要としない場合もある。例えば、抗原が、アルデヒド基に容易に変換されうる官能基を有してもよい。例えば、糖タンパク質又は糖脂質の炭水化物上の一級ヒドロキシル基は容易にアルデヒドに酸化されうる。
【0150】
特定の実施形態では、本発明は、式Iの化合物又はその塩、アルデヒド結合抗原、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。本発明の複合体は、このような組成物として調製してもよい。本発明に基づく複合体を調製するための特定の実施形態では、式I又はI−Aの化合物若しくはその塩を適当な極性溶媒(例えばDMSO、DMF)に溶解して、アルデヒド結合抗原の適当な緩衝溶液と合わせることができる。Pが酸に対して不安定な保護されたアミノ基であるような式Iの化合物が用いられる場合、例えば、酸性の緩衝溶液(例えばpH 4.7〜6.2の範囲の)によってアミノ基の脱保護を行うと同時にアルデヒド結合抗原と反応させることができる。この反応は通常、室温で行われる。したがって、特定の実施形態では、本発明は、複合体を調製するための方法であって、Pが保護されたアミノ基である式Iの化合物又はその塩、アルデヒド結合抗原、及び担体を、前記保護されたアミノ基が脱保護され、前記複合体が形成されるような条件下で合わせることを含む方法を提供する。
【0151】
アルデヒド結合抗原を調製するために芳香族のアルデヒド結合ヘテロ二官能性連結化合物が用いられる場合(例えば、アミノ官能性抗原をスクシンイミジル4−ホルミルベンゾエート(SFB)と反応させてアミド結合を形成し、抗原と共有結合により結合したアルデヒド官能基を与えるような場合)、芳香族アルデヒド基と式Iの化合物との反応を、紫外線分光光度アッセイを用いて便宜よく観測することができる。形成されるビス芳香族性ヒドラゾン結合によって、最大吸光度が354nmにあり、モル吸光係数が29,000に等しい特徴的なクロモフォアが与えられる。下記実施例において示されるように、抗原に取り込まれる式Iの化合物のモル数は、354nmにおける複合体の測定吸光度を、モル吸光係数29,000で割ることによって計算することができる。
【0152】
本明細書に開示される複合体を得るための反応における溶解度及び安定性を高めるため、選択される抗原又はタンパク質の性質に応じて各種の添加剤が反応混合物中で有用でありうる。例えば、溶解度及び安定性を高めるためにはグリセロール及び/又は界面活性剤(例えばポリソルベート80)が有用でありうる。また、複合体中にポリ(エチレンオキシ)セグメントを与えると、溶解度及び安定性を高めるうえで有用でありうる。これらの実施形態のうちの特定のものでは、Zは、−C(O)−NH−(CH
2CH
2O)
p−CH
2CH
2−である(式中、pは上記の実施形態のいずれかにおいて定義されたものである)。反応効率を高めるためには、触媒(例えばアニリン)を有効量(例えば200mM以下)で加えることができる。触媒は、例えばグリセロール及び/又は界面活性剤が反応混合物に加えられる場合に反応を促進するうえで有用でありうる。
【0153】
特定の実施形態では、抗原はタンパク質である。本発明の複合体における有用な抗原となりうる例示的なタンパク質としては、H1N1 PR8に由来するヘマグルチニン、B型肝炎表面抗原、リーシュマニア抗原、呼吸器合胞体ウイルス分泌タンパク質F、マラリア表面抗原、前立腺アルカリホスファターゼ前立腺癌抗原、及びM期リンタンパク質1膀胱癌抗原が挙げられる。
【0154】
最適な反応条件は、等電点、ハイドロパシーの総平均、不安定性指数(試験管内のタンパク質の安定性の推定値)、球状タンパク質の熱安定性の増大にとっての正因子とみなされる、脂肪族側鎖(アラニン、バリン、イソロイシン、及びロイシン)によって占有される相対体積、アニオン性残基の数、及びカチオン性残基の数などの異なるタンパク質の特性に基づいて異なりうる。こうした特性は、様々なタンパク質について知られている。
【0155】
タンパク質の安定性及びそのネイティブコンフォメーションの維持は、タンパク質の内部ドメイン内における疎水性相互作用と、タンパク質の構造の外表面上における水素結合及び電荷相互作用との組み合わせによって影響される。これらの表面相互作用はアルデヒド結合ヘテロ二官能性化合物及び式Iの化合物などの試薬による修飾によって変化することから、タンパク質のネイティブコンフォメーションを変化させることが可能である。複合体(すなわち、式Iの化合物又はその塩とアルデヒド結合タンパク質との反応生成物)を得るためには、アルデヒド結合タンパク質に対する化合物又はその塩の比を、タンパク質及びそのネイティブコンフォメーションの安定性が維持されるように変化させることができる。特定の実施形態では、アルデヒド結合タンパク質に対する化合物又はその塩の比は、30:1〜1:3の範囲である。特定の実施形態では、アルデヒド結合タンパク質に対する化合物又はその塩の比は、20:1〜1:2の範囲である。特定の実施形態では、アルデヒド結合タンパク質に対する化合物又はその塩の比は、10:1〜1:1の範囲である。式Iの化合物又はその塩の当量数は、例えば、特定の実施形態において使用されるヘテロ二官能性連結化合物の当量数と同じか又は同様であってよい。複合体の特定の実施形態では、アルデヒド結合タンパク質に対する式IIの複合セグメントの比は、30:1〜1:6の範囲である。特定の実施形態では、アルデヒド結合タンパク質に対する式IIの複合セグメントの比は、20:1〜1:5の範囲である。特定の実施形態では、アルデヒド結合タンパク質に対する式IIの複合セグメントの比は、10:1〜1:1の範囲である。
【0156】
医薬組成物及び方法
式I又はI−Aの化合物とアルデヒド結合抗原(特定の実施形態では式IIの複合体)とから調製される複合体は、本明細書に開示される医薬組成物中で、任意の適当な方法(例えば経口又は非経口)で投与することができる。本明細書で用いるところの腸管内とは、経口摂取によるものを含む消化管を経由する投与のことを指す。腸管外とは、経鼻投与(例えば、吸入による経粘膜投与)、局所投与、眼内投与、及び頬側投与を含む、消化管を経由するもの以外の投与法のことを指すが、実際には、例えば従来の針注射、マイクロニードルアレイを使用した注射、又は他の任意の公知の注射法を用いた注射(例えば、静脈内、筋内、皮下、腫瘍内、又は経皮注射)のことを通常は指す。
【0157】
式I又はI−Aの化合物とアルデヒド結合抗原(特定の実施形態では式IIの複合体)とから調製される複合体は、患者への投与に適した任意の医薬組成物中に与えることができ、また、任意の適当な形態(例えば溶液、懸濁液、エマルション、又は任意の形態の混合物)で前記医薬組成物中に存在しうる。医薬組成物は、薬学的に許容される任意の賦形剤、担体、又は分散媒とともに製剤化することができる。医薬組成物は更に、皮膚浸透促進剤、着色剤、香料、香味料、保湿剤、増粘剤、懸濁化剤、界面活性剤、及び分散剤などの1以上の添加剤を含んでもよい。
【0158】
上記及び下記に具体的に述べた抗原以外に、本開示の医薬組成物及び方法は、例えば混合物として、又は別々に投与される他の更なる活性物質を含みうる。このような更なる物質としては、化学療法剤、細胞毒性物質、抗体、抗ウイルス剤、サイトカイン、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)アゴニスト、又は更なる免疫反応調節物質が含まれる。本発明の複合体(特定の実施形態では、式IIの複合体)と組み合わせて投与することが可能なTNFRアゴニストには、米国特許出願公開第2004/0141950号(ノエル(Noelle)ら)に開示されるようなCD40受容体アゴニストが含まれる。本発明のIRM調製物と組み合わせて使用するための他の活性成分としては、米国特許出願公開第2003/0139364号(クリーグ(Krieg)ら)に開示されるものが挙げられる。
【0159】
式I又はI−Aの化合物とアルデヒド結合抗原(特定の実施形態では、式IIの複合体)とから調製される複合体は、下記実施例に述べられるようにヒト細胞においてINF−α及びTNF−αの産生を誘導することが示されている。INF−α及びTNF−αの産生を誘導するこのような性質は、本発明の化合物及び複合体が多くの異なる態様で免疫反応を調節しうることを示すものであり、このため、本発明の化合物及び複合体は広範な疾患の治療において有用である。本明細書に開示される化合物及び複合体の投与によってその産生が誘導されうる他のサイトカインとしては、一般的に、I型インターフェロン(例えばINF−α)、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、MIP−1、MCP−1、及び各種の他のサイトカインが挙げられる。他の作用の中でもとりわけ、これら及び他のサイトカインはウイルスの産生及び腫瘍細胞の増殖を阻害するものであるため、式Iの化合物及びこれから調製される複合体はウイルス性疾患及び腫瘍性疾患の治療に有用である。例えば腫瘍壊死因子、インターフェロン、又はインターロイキンは、特定の単球/マクロファージ由来のサイトカインの速やかな放出を刺激することが示されており、また、B細胞を刺激して、抗ウイルス及び抗腫瘍活性における重要な役割を担う抗体を分泌させることが可能である。
【0160】
サイトカインの産生を誘導する性質以外に、本明細書に述べられる複合体は自然免疫反応の他の側面にも影響しうる。例えば、ナチュラルキラー細胞の活性が刺激されうるが、これはサイトカイン誘導による作用と考えられる。本明細書の複合体のIRM活性にはマクロファージの活性化も含まれうるが、これにより一酸化窒素の分泌及び更なるサイトカインの産生が刺激される。本発明の複合体のIRM活性には、T細胞によるサイトカイン産生の誘導、特定の抗原に特異的なT細胞の活性化、及び/又は樹状細胞の活性化も含まれうる。更に、本複合体のIRM活性には、Bリンパ球の増殖及び分化が含まれうる。本複合体のIRM活性は獲得免疫反応にも影響を与えうる。例えばIRM活性には、1型Tヘルパー(T
H1)によるサイトカインIFN−γの産生の誘導、及び/又は2型Tヘルパー(T
H2)によるサイトカインIL−4、IL−5及び/又はIL−13の産生の阻害が含まれうる。
【0161】
下記の実施形態では、式Iの化合物とヘマグルチニン1(HA)とから調製された複合体が、HA特異的IgG1抗体に対するHA特異的IgG2a抗体の比の増大によって示される、T
H1に偏った強力な免疫反応による強力なワクチンアジュバント作用を示している。このような反応は、T細胞によるインターフェロンγの産生のHAによる刺激、及び、HA発現細胞及び他のワクチン抗原に対する、細胞により媒介される細胞毒性T細胞免疫の出現を通常ともなう。こうした抗原は、ウイルス性及び細菌性の感染症、並びに各種の癌の治療に関連し、その治療を目的としたものであってよい。
【0162】
したがって、本発明は、動物におけるサイトカイン生合成を誘導するための方法であって、式I又はI−Aの化合物とアルデヒド結合抗原(特定の実施形態では、式IIの複合体)とから調製される複合体の有効量を(例えば医薬組成物中で)前記動物に投与することを含む方法を提供する。
【0163】
式I又はI−Aの化合物とアルデヒド結合抗原(特定の実施形態では、式IIの複合体)とから調製される複合体の特定の実施形態では、抗原はワクチンであり、本発明に基づく方法は、式Iの化合物と抗原(特定の実施形態では、式IIの複合体)とから調製される複合体を動物に投与することを含む、動物にワクチン接種するための方法を含む。ワクチンには、生の又は弱毒化されたウイルス性及び細菌性免疫原、並びに不活化されたウイルス性、腫瘍由来、原生動物、生物由来、真菌性、及び細菌性免疫原、トキソイド、毒素、多糖類、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、細胞ワクチン(例えば、樹状細胞を使用したもの)、DNAワクチン、組換えタンパク質、糖タンパク質、及びペプチドなどの、体液性及び/又は細胞性免疫反応を引き起こすために投与される任意の物質が含まれる。代表的なワクチンとしては、癌、BCG、コレラ、伝染病、チフス、A、B及びC型肝炎、A及びB型インフルエンザ、パラインフルエンザ、ポリオ、狂犬病、はしか、流行性耳下腺炎、風疹、黄熱病、破傷風、ジフテリア、ヘモフィルス−インフルエンザb型、結核、髄膜炎菌及び肺炎球菌ワクチン、アデノウイルス、HIV、水痘、サイトメガロウイルス、デング熱、ネコ白血病、家禽ペスト、HSV−1及びHSV−2、豚コレラ、日本脳炎、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、パピローマウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、炭疽病、及び黄熱病に対するワクチンが挙げられる。例えば、国際特許出願公開第02/24225号(トムセン(Thomsen)ら)に開示されるワクチンを参照されたい。
【0164】
本発明の方法は、任意の適当な患者に対して行うことができる。適当な患者としては、ヒト、ヒト以外の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、又はウシなどの動物が挙げられる。
【0165】
サイトカイン生合成を誘導する目的、又はワクチン接種の目的で本複合体が投与される動物は疾患(例えば、ウイルス性疾患又は腫瘍性疾患)を有していてもよく、本化合物の投与によって治療法を与えることができる。また、本複合体は、本複合体の投与によって予防的治療が与えられるように、動物が疾患を得る前に動物に投与することもできる。例えば、複合体は、式I又はI−Aの化合物とHIV抗原とから調製することが可能であり、HIVに対する治療及び/又は予防的治療を与えることができる。別の例では、複合体は、式I又はI−Aの化合物と腫瘍関連抗原とから調製することが可能であり、その抗原に関連した腫瘍に対する治療及び/又は予防的治療を与えることができる。
【0166】
IRM複合体の投与により治療可能な例示的な状態としては、
(a)アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、HSV−I、HSV−II、CMV、又はVZV)、ポックスウイルス(例えば、天然痘若しくはワクシニアなどのオルソポックスウイルス、又は伝染性軟属腫)、ピコルナウイルス(例えば、ライノウイルス又はエンテロウイルス)、オルソミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、コロナウイルス(例えばSARS)、パポバウイルス(例えば、性器疣贅、尋常性疣贅、又は足底疣贅を引き起こすものなどのパピローマウイルス)、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス又はデングウイルス)、又はレトロウイルス(例えば、HIVなどのレンチウイルス)による感染によって引き起こされる疾患などのウイルス性疾患;
(b)例えば、エシェリキア属、エンテロバクター属、サルモネラ属、スタフィロコッカス属、シゲラ属、リステリア属、エアロバクター属、ヘリコバクター属、クレブシラ属、プロテウス属、シュードモナス属、ストレプ卜コッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属、ニューモコッカス属、ナイセリア属、クロストリジウム属、バチルス属、コリネバクテリウム属、マイコバクテリウム属、カンピロバクター属、ビブリオ属、セラチア属、プロビデンシア属、クロモバクテリウム属、ブルセラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、又はボルデテラ属の細菌による感染によって引き起こされる疾患などの細菌性疾患;
(c)クラミジア、真菌性疾患(例えば、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラスマ症、又はクリプトコッカス髄膜炎)、又は寄生虫疾患(例えば、マラリア、ニューモシスチスカリニ肺炎、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、及びトリパノソーマ感染)などの他の感染症;
(d)上皮内腫瘍、子宮頚部異形成、日光角化症、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、腎細胞癌、カポジ肉腫、メラノーマ、白血病(例えば、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、及びヘアリーセル白血病)、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、及び他の癌などの腫瘍性疾患;
(e)アトピー性皮膚炎又は湿疹、好酸球増加、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、オメン症候群などのT
H2媒介性アトピー性疾患;
(f)全身性エリテマトーデス、原発性血小板血症、多発性硬化症,円板状エリテマトーデス、及び円形脱毛症などの特定の自己免疫疾患;並びに、
(g)ケロイド形成及び他の種類の瘢痕化の阻害などの創傷修復に関連する疾患(例えば、慢性創傷を含む創傷治癒の促進)が挙げられる。
【0167】
IRM複合体は、免疫機能不全の患者にも有用でありうる。例えば、特定の複合体は、例えば臓器移植患者、癌患者、及びHIV患者における細胞性免疫の抑制後に発症する日和見感染症及び腫瘍の治療において有用でありうる。
【0168】
上記に述べた疾患の治療においては、本明細書に開示される複合体は、例えば、上記に述べた活性物質のような他の治療法及び他の手術(例えば、ケモアブレーション、レーザーアブレーション、クライオセラピー、及び外科的切除)と組み合わせて使用することができる点は理解されるであろう。
【0169】
サイトカイン生合成を誘導するうえで有効な複合体の量とは、単球、マクロファージ、樹状細胞及びB細胞などの1以上の細胞の種類に、例えば、IFN−α、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−10及びIL−12などの1以上のサイトカインを、これらのサイトカインのバックグラウンドレベルよりも高い量で産生させるのに充分な量である。正確な量は、当該技術分野では周知の因子によって異なりうるが、約100ナノグラム/キログラム(ng/kg)〜約50ミリグラム/キログラム(mg/kg)、実施形態によっては約10マイクログラム/キログラム(μg/kg)〜約5mg/kg、約100μg/kg〜約1mg/kg、又は約0.01mg/m
2〜約10mg/m
2の用量であると予想される。また、用量は、治療計画の開始の直前に得られた実際の体重を用いて計算してもよい。このようにして計算された用量では、体表面積(m
2)を、下記のデュボイ法を用いて治療計画を開始する前に計算する。すなわち、m
2=(体重(kg)
0.425×身長(cm)
0.725)×0.007184ウイルス感染を治療又は阻害するうえでの有効量とは、例えば、治療を行わないコントロール動物と比較した場合にウイルス病変、ウイルス量、ウイルス産生の速度、及び死亡率などのウイルス感染の発現の1以上を低減させる量のことであり、上記の量のいずれのものも含みうる。腫瘍性疾患を治療するうえでの化合物又は医薬組成物の有効量とは、腫瘍のサイズ又は腫瘍病巣の数を低減させる量のことであり、上記の量のいずれのものも含みうる。
【0170】
例えば、本発明の実施に適した製剤の組成、本発明に基づく方法において有効な複合体の正確な量、及び投与レジメンは、担体の性質、患者の免疫系の状態(例えば、抑制されている、不全である、刺激されているなど)、複合体の投与方法、及び製剤が投与される種などの当該技術分野では周知の因子によって異なりうる。したがって、すべての可能な応用例について、式I又はI−Aの化合物から調製される複合体を含む製剤の組成、有効量を構成する複合体の量、又は有効な投与レジメンを一般的に記載することは現実的ではない。しかしながら、当業者であれば、こうした因子を充分に考慮することで、適切な製剤、複合体の量、及び投与レジメンを容易に決定することが可能である。
【0171】
特定の実施形態では、本発明の方法は、本複合体を、例えば約0.0001%〜約20%(特に断らないかぎり、本明細書に示されるすべての比率(%)は、全製剤に対する重量/重量比率である)の化合物の濃度を有する製剤として患者に投与することを含むが、実施形態によっては、本複合体は、この範囲の外側の濃度で化合物を与える製剤を用いて投与される場合もある。特定の実施形態では、本方法は、約0.01%〜約1%の本複合体を含む製剤、例えば約0.1%〜約0.5%の化合物を含む製剤を患者に投与することを含む。
【0172】
本明細書に開示される方法の特定の実施形態では、本複合体は例えば週1回〜複数回投与することができるが、実施形態によっては、本発明の方法は、本複合体をこの範囲の外側の頻度で投与することによって行うこともできる。特定の実施形態では、本複合体は、月約1回〜週約5回投与することができる。特定の実施形態では、本複合体は週1回投与される。
【0173】
本複合体は、同じ抗原の全体又は一部をコードしたDNA又はRNAワクチンによる最初の免疫化の後の追加免疫として使用することもできる。
【0174】
本発明の特定の実施形態
第1の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物:
【0175】
【化17】
[式中、
Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、アルキルアミノアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルであり、
Pは、アミノ基、保護されたアミノ基、又はNH
3+Y
−(式中、Y
−は、対アニオンである)であり、
Aは、CH又はNであり、
Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、又はアルコキシであり、
nは、0〜4の整数である。]
又は、薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0176】
第2の実施形態では、本発明は、Pがアミノ基(すなわち、−NH
2)である前記化合物又はその塩を提供する。
【0177】
第3の実施形態では、本発明は、式(I−A)の化合物:
【0178】
【化18】
[式中、
Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、アルキルアミノアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルであり、
Aは、CH又はNであり、
Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、又はアルコキシであり、
nは、0〜4の整数である。]
又は、薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0179】
第4の実施形態では、本発明は、nが0である、第1〜第3の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩を提供する。
【0180】
第5の実施形態では、本発明は、R
2が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、エチルアミノメチル、又は2−メトキシエチルである、第1〜第4の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩を提供する。これらの実施形態の特定のものでは、R
2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、又は2−メトキシエチルである。
【0181】
第6の実施形態では、本発明は、Xが−O−C
3〜8アルキレンである、第1〜第5の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩を提供する。
【0182】
第7の実施形態では、本発明は、Xが−O−C
3〜5アルキレンである、第1〜第5の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩を提供する。
【0183】
第8の実施形態では、本発明は、下式を有する第2又は第3の実施形態の化合物又はその塩:
【0184】
【化19】
又は、薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0185】
第9の実施形態では、本発明は、下式を有する第1の実施形態の化合物又はその塩:
【0186】
【化20】
又は、薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0187】
第10の実施形態では、本発明は、Xが−C
3〜8アルキレンである、第1〜第5の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩を提供する。
【0188】
第11の実施形態では、本発明は、Xが−C
3〜5アルキレンである、第1〜第5の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩を提供する。
【0189】
第12の実施形態では、本発明は、第1〜第11の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩とアルデヒド結合抗原との反応生成物を含む複合体を提供する。
【0190】
第13の実施形態では、本発明は、第1〜第11の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩とアルデヒド結合抗原との反応によって生成するヒドラゾノベンズアミド1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン又はヒドラゾノニコチンアミド1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを含む複合体を提供する。
【0191】
第14の実施形態では、本発明は、前記アルデヒド結合抗原がアルデヒド結合タンパク質である、第12又は第13の実施形態の複合体を提供する。
【0192】
第15の実施形態では、本発明は、前記反応生成物を与えるために、前記アルデヒド結合タンパク質に対する前記化合物又はその塩の比が、30:1〜1:3の範囲である、第14の実施形態の複合体を提供する。
【0193】
第16の実施形態では、本発明は、前記アルデヒド結合抗原がアルデヒド結合脂質である、第12又は第13の実施形態の複合体を提供する。
【0194】
第17の実施形態では、本発明は、下式:
【0195】
【化21】
[式中、
Xは、場合により−O−によって分断されるか又は終端する8個以下の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
2は、水素、アルキル、アルコキシアルキレニル、アルキルアミノアルキレニル、又はヒドロキシアルキレニルであり、
Aは、CH又はNであり、
Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、又はアルコキシであり、
nは、0〜4の整数であり、
Zは、結合又は−C(O)−NH−(CH
2CH
2O)
p−CH
2CH
2−(式中、pは1〜50の範囲である)であり、
N
*により示される窒素原子は、抗原と共有結合する。]により表される少なくとも1つのセグメントを有する、抗原の複合体、
又は、薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0196】
第18の実施形態では、本発明は、nが0である、第17の実施形態の複合体を提供する。
【0197】
第19の実施形態では、本発明は、R
2が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、エチルアミノメチル、又は2−メトキシエチルである、第17又は第18の実施形態の複合体を提供する。これらの実施形態の特定のものでは、R
2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エトキシメチル、メトキシメチル、又は2−メトキシエチルである。
【0198】
第20の実施形態では、本発明は、Xが−O−C
3〜8アルキレンである、第17〜第19の実施形態のいずれか1つの複合体を提供する。
【0199】
第21の実施形態では、本発明は、Xが−O−C
3〜5アルキレンである、第20の実施形態の複合体を提供する。
【0200】
第22の実施形態では、本発明は、XがC
3〜8アルキレンである、第17〜第19の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩を提供する。
【0201】
第23の実施形態では、本発明は、XがC
3〜5アルキレンである、第22の実施形態の化合物又はその塩を提供する。
【0202】
第24の実施形態では、本発明は、前記抗原がタンパク質である、第17〜第23の実施形態のいずれか1つの複合体を提供する。
【0203】
第25の実施形態では、本発明は、Zが結合である、第17〜第24の実施形態のいずれか1つの複合体を提供する。
【0204】
第26の実施形態では、本発明は、Zが、−C(O)−NH−(CH
2CH
2O)
p−CH
2CH
2−(式中、pは1〜50の範囲である)である、第17〜第24の実施形態のいずれか1つの複合体を提供する。
【0205】
第27の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体と、第12〜第26の実施形態のいずれか1つの複合体の有効量とを含む医薬組成物を提供する。
【0206】
第28の実施形態では、本発明は、動物にワクチン接種するための方法であって、第12〜第26の実施形態のいずれか1つの複合体、又は第27の実施形態の医薬組成物の有効量を前記動物に投与することを含む方法を提供する。
【0207】
第29の実施形態では、本発明は、動物において抗原特異的反応を刺激するための方法であって、第12〜第26の実施形態のいずれか1つの複合体、又は第27の実施形態の医薬組成物の有効量を前記動物に投与することを含む方法を提供する。
【0208】
第30の実施形態では、本発明は、動物においてサイトカイン生合成を誘導するための方法であって、第12〜第26の実施形態のいずれか1つの複合体、又は第27の実施形態の医薬組成物の有効量を前記動物に投与することを含む方法を提供する。
【0209】
第31の実施形態では、本発明は、第12〜第26の実施形態のいずれか1つの複合体、又は第27の実施形態の医薬組成物の有効量を動物に投与することによる動物のワクチン接種において使用するための複合体又は医薬組成物を提供する。
【0210】
第32の実施形態では、本発明は、第12〜第26の実施形態のいずれか1つの複合体、又は第27の実施形態の医薬組成物の有効量を動物に投与することにより動物において抗原特異的反応を刺激するために使用される複合体又は医薬組成物を提供する。
【0211】
第33の実施形態では、本発明は、第12〜第26の実施形態のいずれか1つの複合体、又は第27の実施形態の医薬組成物の有効量を動物に投与することにより動物においてサイトカイン生合成を誘導するために使用される複合体又は医薬組成物を提供する。
【0212】
第34の実施形態では、本発明は、第1〜第11の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩、アルデヒド結合抗原、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0213】
第35の実施形態では、本発明は、複合体を調製するための方法であって、
Pが保護されたアミノ基である、第1の実施形態、又は第2若しくは第3の実施形態に従属している場合を除き第4〜第7又は第10の実施形態のいずれか1つの化合物又はその塩、アルデヒド結合抗原、及び担体を、前記保護されたアミノ基が脱保護され、複合体が形成されるような条件下で合わせることを含む方法を提供する。
【0214】
本発明の実施形態を以下の非限定的な実施例によって更に説明するが、これらの実施例に記載される特定の物質及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0215】
(実施例1)
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ニコチンアミド(化合物1)及び
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−ヒドラジノニコチンアミド(化合物2)
【0216】
【化22】
【0217】
パートA
吉草酸無水物(6.03g)及び塩酸ピリジン(0.198g)をピリジン(8.28g)に加えた溶液を、3−アミノ−4−クロロキノリン(2.94g)をピリジン(5.0g)に加えた溶液に加え、反応液を室温で16時間攪拌した後、60℃で3時間加熱した。反応液を減圧下濃縮し、炭酸ナトリウム(15mLの10%水溶液)を加えた。反応液を30分間攪拌してから濾過した。得られた固体を水(60mL)で洗浄し、真空下で4時間乾燥して4.59gのN−(4−クロロキノリン−3−イル)バレルアミドの粗生成物を褐色のフレークとして得た。この粗生成物をヘプタン(10mL)から再結晶化し、回収された生成物をソックスレー抽出によりヘプタンを16時間還流して更に精製した。ソックスレー抽出装置からの回収フラスコをフリーザー内で2時間冷却した。得られた固体を濾過により回収し、真空下で乾燥して2.00gのN−(4−クロロキノリン−3−イル)バレルアミドを白色の固体として得た。
【0218】
パートB
4−アミノ−1−ブタノール(7.68g)及びピリジン(7.00g)をジクロロメタン(100mL)に加えた溶液を氷浴中で冷やし、クロロギ酸ベンジル(14.37g)をジクロロメタン(100mL)に加えた溶液を攪拌しながら30分間かけて徐々に加えた。氷浴を外し、反応液を更に16時間攪拌した。塩酸(1.2M、200mL)を加え、各相を分離した。有機相を乾燥(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をトルエンから再結晶化し、真空下で乾燥して5.15gのベンジル(4−ヒドロキシブチル)カルバメートを得た。
【0219】
N−ヒドロキシフタルイミド(3.36g)、ベンジル(4−ヒドロキシブチル)カルバメート(4.18g)及びトリフェニルホスフィン(7.41g)をジクロロメタン(100mL)に加えた溶液を氷浴中で冷やし、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD、5.68g)をジクロロメタン(50mL)に加えた溶液の約2/3を攪拌しながら徐々に加えた。反応液の内部温度を監視し、発熱が検出されなくなった時点でDIAD溶液の添加を止めた。氷浴を外し、反応液を室温にまで昇温させた。反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をエタノール(200プルーフ、100mL)に溶解した。ヒドラジン(1.98g、35%水溶液)を加え、反応液を6時間攪拌した。反応液をフリーザー内で冷却し、得られた固体を濾去した。固体をエタノール(50mL)で洗浄した。合わせた濾液を減圧下で濃縮し、ジエチルエーテル(100mL)を加えた。不溶性の不純物を濾去し、2.0MのHClのエーテル溶液(10mL)を溶液に加えた。沈殿物が直ちに生成した。この粗生成物をトルエン(100mL)に加え、環流温度で1時間加熱した。室温にまで冷却した後、固体生成物を濾過により回収し、トルエンで洗い、真空下で乾燥して3.76gのベンジル(4−アミノオキチブチル)カルバメートを得た。
【0220】
パートC
N−(4−クロロキノリン−3−イル)バレルアミド(1.97g)、ベンジル(4−アミノオキシブチル)カルバメート(2.99g)、トリエチルアミン(0.89g)、及び2−プロパノール(40.69g)を加え合わせて、80℃で3.5時間加熱した。反応液を室温にまで冷却し、濾過してから、濾液を減圧下で濃縮した。得られた固体にジクロロメタン(20mL)を加え、混合物を20分間攪拌した。溶解しなかった固体を濾去し、20滴の塩酸(1.2M)を加えることによって弱酸性とした水を10mLずつ2回使用して濾液を洗浄した。有機画分を乾燥し、減圧下で濃縮した。この固体粗生成物をテトラヒドロフランから再結晶化して、2.56gのベンジル4−{[2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチルカルバメートを得た。
【0221】
パートD
ベンジル4−{[2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチルカーバメート塩酸塩(10.05g)をジクロロメタン(80mL)に溶解し、炭酸ナトリウム(2.02g)を30mLのH
2Oに加えた溶液で抽出した。有機層を氷浴中で冷却し、m−クロロ過安息香酸(5.93g,1.24当量)をジクロロメタン(30mL)に溶解した溶液を徐々に加えた。6時間後、水酸化アンモニウム(10mLの28〜30%水溶液)を反応液に加えた。ベンゼンスルホニルクロリド(6.96g)を10mLのジクロロメタンに加えた溶液を、激しく攪拌しながら徐々に加えた。冷却浴を外し、反応液を更に12時間攪拌した。反応液を水(100mL)で希釈し、有機画分と水性画分とを分離した。水性画分をジクロロメタン(30mL)で抽出した。合わせた有機画分を、5%炭酸ナトリウムを90mLずつ2回使用して洗浄した。
【0222】
このジクロロメタン溶液を蒸留装置に移し、1−ペンタノール(50mL)を加えた。これを40℃に昇温し、ジクロロメタンを減圧下で除去した。次いで濃塩酸(50mL)を加え、反応液を撹拌して80℃に加熱した。11時間後、この溶液を室温に冷却し、水(100mL)で希釈した。水性画分を1−ペンタノールから分離し、この1−ペンタノールを水(25mL)で抽出した。これらの水性画分を加え合わせた。合わせた水性画分に1−ペンタノール(50mL)を加え、これを氷浴中で冷却した。激しく攪拌しながら固体炭酸ナトリウムを加えて、pHを9〜10とした。この混合物を分液漏斗に移し、各画分を分離した。水性画分を、1−ペンタノールを25mLずつ2回使用して抽出した。合わせた1−ペンタノール画分を硫酸ナトリウム上で乾燥後、濾過して、1−ペンタノールに溶解した1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを得た。
【0223】
1−ペンタノール(50mL)にマレイン酸(4.83g)を溶解し、これを攪拌しながら1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンの1−ペンタノール溶液に加えることによって、1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンのマレイン酸塩を調製した。得られた沈殿物を濾過により回収し、乾燥して、7.69gの1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンのビスマレイン酸塩を得た。
1H−NMR(DMSO−d6):δ 0.96(t,3H),1.44(m,2H),1.7〜1.95(m,4H),2.02(m,2H),2.8〜3.1(m,4H),δ 4.43(t,2H),6.07(s,4H),7.57(t,1H),7.73(t,1H),7.80(d,1H),8.16(d,1H)。アンモニウムプロトンのブロードピークが、δ 7.8及びδ 8.7の付近に見られる。
【0224】
パートE
1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンビスマレエート塩(0.2g)を1−ブタノール(5mL)に懸濁し、2×5mL量の5%炭酸ナトリウム溶液で順次洗浄した後、5mLの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。イリノイ州ロックフォード所在のサーモ・サイエンティフィック社(Thermo Scientific)より販売されるスクシンイミジル4−ヒドラジノニコチネートアセトンヒドラゾン(SANH,0.0216g)を加え、この溶液を室温で17.5時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、メチル−tert−ブチルエーテル:エタノール=1:1の溶離液)により反応液を分析したところ、1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(R
f<0.05)及び所望の生成物であるN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ニコチンアミド(R
f0.30)の存在のみが示された。反応液を減圧下で濃縮し、5mLのジクロロメタンを残渣に加えた。少量の不溶性物質を濾去し、試料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、メチル−tert−ブチルエーテル:エタノール=1:1の溶離液)により精製した。生成物を含む各画分を加え合わせ、減圧下で溶媒を除去してN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ニコチンアミドを淡黄色固体として得た(化合物1)。
【0225】
1H NMR(クロロホルム−d)δ:8.59(d,J=2.2Hz,1H),7.81〜8.15(m,3H),7.75(d,J=8.1Hz,1H),7.48(t,J=7.6Hz,1H),7.28(t,J=7.5Hz,1H),7.20(d,J=8.7Hz,1H),6.57(t,J=5.6Hz,1H),5.61(br.s.,2H),4.24(t,J=6.1Hz,2H),3.55(q,J=6.3Hz,2H),2.88(t,J=7.6Hz,2H),1.93〜2.12(m,5H),1.74〜1.93(m,7H),1.37〜1.54(m,2H),0.96(t,J=7.2Hz,3H)。
【0226】
パートF
パートEで得たN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ニコチンアミドを、1mLの塩酸(0.6M)に懸濁し、60℃に90分間加熱した。得られた均質な溶液を室温にまで冷却し、反応液を減圧下で濃縮した。得られた残渣を水に溶解してから凍結乾燥して43.6mgのN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−ヒドラジノニコチンアミド塩酸塩を黄色の固体として得た(化合物2)。MS(ESI)m/z 463.25661(C
24H
31N
8O
2に対する計算値463.25645,M+H
+)。
【0227】
(実施例2)
H1N1 PR8由来の組換えヘマグルチニン1(HA)をクローニングし、大腸菌で発現させ、標準的な方法により精製した。分子量が32083.11ダルトンであり、C末端に6個のヒスチジンを有するこのHAを、0.15MのNaClを含むpH 7.5、0.1Mのリン酸緩衝溶液に入れた。HAの分子量及びタンパク質の質量に基づいて、HA溶液のモル濃度を確立した。ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したスクシンイミジル4−ホルミルベンゾエート(SFB)(サーモ・サイエンティフィック社(Thermo Scientific)、イリノイ州ロックフォード)を10倍のモル過剰量でHAに加えた。次いでこの溶液を室温で2時間インキュベートした。HAのコントロール試料を同じ体積のDMSOと同様にしてインキュベートした。SFB修飾HA(HA−SFBとして表される)を、0.15MのNaClを含むpH 6.0、0.1Mのリン酸緩衝溶液で予め平衡化したZEBAスピンカラム(サーモ・サイエンティフィック社(Thermo Scientific)、イリノイ州ロックフォード)を使用して遊離SFBから分離した。この工程により、複合化反応に備えてHA−SFB溶液をpH 6.0に変化させた。
【0228】
共有結合による複合体化の効率を測定するため、N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ニコチンアミド(実施例1の化合物1)をDMSOに溶解し、30、10、3及び1倍のモル過剰量で緩衝したHA−SFB溶液に加えた。反応媒質の酸性条件により、化合物1のアセトイミン保護基が脱保護され、その場で化合物2が生成された。4つの試験試料のそれぞれを、室温で2時間インキュベートした。コントロールのHA−SFB試料を同じ体積のDMSOと同様にしてインキュベートした。実施例1の化合物2と共有結合により複合体化したHA−SFB(HA−SFB−化合物2として表される)を、ダルベッコリン酸緩衝溶液(PBS)(シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)ミズーリ州セントルイス)で予め平衡化したZEBAスピンカラムを使用して複合化していない成分から分離した。
【0229】
共有結合による複合体化によるHAへの化合物2の取り込みの効率を、紫外線分光光度アッセイにより測定し、結果を表1に記録した。HA−SFBと化合物2との共有結合による複合体化によって形成されるビス芳香族ヒドラゾン結合により、特徴的なクロモフォアが与えられる。このクロモフォアは、最大吸光度が354nmにあり、モル吸光係数が29,000に等しい。HAタンパク質に取り込まれた化合物1のモル数は、354nmにおける複合体化したHA−SFP−化合物2の吸光度の測定値をモル吸光係数29,000で割ることによって計算した。結果を下記表1に示す。
【0230】
【表1】
【0231】
(実施例3)
実施例2に述べた手順にしたがって10倍のモル過剰量の化合物1をHA−SFBに加えることによって、共有結合により複合体化した生成物(HA−SFB−化合物2)を調製した。複合体化生成物による、ヒト末梢血単核球(PBMC)におけるインターフェロン−α(IFN)及び腫瘍壊死因子(TNF)の産生のインビトロでの誘導を測定した。PBMCをヒト提供者より調製し、96穴マイクロタイタープレートに播種した。HA、HA−SFB、及びHA−SFB−化合物2複合体を、1μMタンパク質の最終濃度で各ウェルにそれぞれ加えた。この後、細胞を37℃で一晩インキュベートした。培地を除去し、IFN濃度(pg/mL)及びTNF濃度(ng/mL)をELISAアッセイにより測定した。アッセイの結果を下記表2に示す。
【0232】
【表2】
【0233】
(実施例4)
組換えヘマグルチニン1(HA)と共有結合により複合体化した化合物2(HA−SFB−化合物2)のワクチンアジュバント活性を、Balb/C雄性マウス(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ・インターナショナル社(Charles River Laboratories, International)マサチューセッツ週ウィルミントン)において評価した。各群5匹のマウスを、PBSに加えたHA抗原10μg(コントロール)、SFBと複合体化したHA抗原10μg(コントロール)、又はSFBで修飾してから実施例1の化合物2と複合体化したHA抗原を皮下注射することにより免疫化した。共有結合により複合体化した生成物は、実施例2に述べた手順にしたがって10倍のモル過剰量の化合物1をHA−SFBに加えることによって調製した。最初の免疫化の2週間後及び4週間後に、同じ組み合わせによってマウスを追加免疫した。最後の追加免疫の3週間後及び12週間後に再び、マウスから採血してHA特異的抗体の抗体価を測定した。この測定は、HAをコーティングしたマイクロタイタープレート中で標準的な血清ELISAにより、血清試料を連続希釈することにより行った。抗体のデータは、エンドポイント(ベースラインの2倍)が得られた血清の希釈度として示したものであり、1群当たり5匹のマウスについての幾何平均である。免疫反応のTH1への偏りの指数として、HA特異的な全IgG以外に、HA特異的なIgG1及びIgG2aのサブタイプを測定した。実験結果を表3に示す。
【0234】
ヒドラゾン連結基を介してHAと共有結合により複合体化された化合物2は、HA特異的IgG1抗体に対するHA特異的IgG2aの比の増大によって示される、TH1に偏った強力な免疫反応による強力なワクチンアジュバント作用を示した。
【0235】
【表3】
【0236】
【化23】
の調製
【0237】
パートA
乾燥ジクロロメタン(0.5mL)に溶解したCA(PEG)12((式H
2N−CH
2CH
2−(OCH
2CH
2)
12−CO
2H)MW=617.7、サーモ・サイエンティフィック社(Thermo Scientific)(イリノイ州ロックフォード)より販売されるもの、115mg)、N−スクシンイミジル−4−ホルミルベンゾエート(乾燥ジクロロメタン(0.5mL)に52mgを溶解したもの;イー・エム・ディー・ケミカルズ社(EMD Chemicals)(ニュージャージー州ギブスタウン)より販売されるもの)、乾燥トリエチルアミン(52μL)、及び触媒量のDMAPを窒素雰囲気下で加え合わせた。反応液を3時間撹拌した後、ジクロロメタン(25mL)で希釈した。有機画分を0.1Mリン酸ナトリウム(2×10mL)、次いで食塩水で洗浄した。有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過してから減圧下で濃縮した。水性洗浄画分を加え合わせ、ジクロロメタンで数回に分けて抽出した。次いで、水性画分を希塩酸により約pH 2まで酸性化し、ジクロロメタンで更に2回抽出した。有機抽出液を加え合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた物質を、最初の抽出から得られた物質と加え合わせ、シリカゲルの細いカラムを使用して精製した。水で飽和させた10〜25%メタノール/クロロホルムで溶出し、58mgのアミド生成物を無色の固体として得た。
1H NMR(クロロホルム−d,500MHz)δ 10.08(s,1H),8.00(d,J=8.2Hz,2H),7.95(d,J=8.4Hz,2H),7.19(m,1H),3.77(t,J=6.1Hz,2H),3.70−3.60(m,48H),2.60(t,J=6.1Hz,2H)。
【0238】
パートB
パートAで得られた物質を、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)及び乾燥ピリジン(0.5mL)に溶解した。O−(N−スクシンイミジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU;46mg;シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(ミズーリ州セントルイス)より販売されるもの)を加え、反応液を窒素雰囲気下で3時間撹拌した。溶媒の大部分を減圧下で除去した。得られた物質をクロロホルム(25mL)及びメタノール(5mL)に溶解し、分液漏斗に入れた。緩衝溶液(水酸化ナトリウムによりpH 7.5に調整した0.10M塩化ナトリウム、0.05Mリン酸ナトリウム、1.0mM EDTAの溶液10mL)を加え、混合物を2時間振盪した。有機画分を回収し、更なる量の緩衝溶液(10mL)、水(3×10mL)、及び食塩水で順次洗浄した。有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過してから、減圧下で濃縮して55mgの化合物3を無色のシロップ状物として得た。
1H NMR(クロロホルム−d,500MHz)δ 10.08(s,1H),7.99(d,J=8.2Hz,2H),7.95(d,J=8.1Hz,2H),7.10(m,1H),3.85(t,J=6.5Hz,2H),3.70−3.60(m,48H),2.90(t,J=6.9Hz,2H)2.84(brs,4H)。
【0239】
(実施例5)
実施例5は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した化合物3を10倍のモル過剰量でHAに加える改変を行って実施例2の方法にしたがって調製し、化合物3で修飾されたHA(HA−化合物3として表される)を得た。
【0240】
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)−6−(N’−イソプロピリデンヒドラジノ)ニコチンアミド(実施例1の化合物1)をDMSOに溶解し、緩衝したHA−化合物3の溶液に10倍のモル過剰量で加えた。反応媒質の酸性条件により、化合物1のアセトイミン保護基が脱保護され、その場で化合物2が生成された。試料を、室温で2時間インキュベートした。実施例1の化合物2と共有結合により複合体化したHA−化合物3(HA−化合物3−化合物2として表される)を、ダルベッコリン酸緩衝溶液(PBS)(シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)ミズーリ州セントルイス)で予め平衡化したZEBAスピンカラムを使用して複合化していない成分から分離した。
【0241】
化合物1をDMSOに溶解し、実施例2に述べられる手順にしたがって、緩衝されたHA−SFB溶液に10倍のモル過剰量で加えることにより、実施例1の化合物2と共有結合により複合体化したHA−SFBを得た(HA−SFB−化合物2として表される)。
【0242】
SFBと比較した、最終的なタンパク質溶解度及び回収率(%)に対する、共有結合により複合体化した生成物に化合物3を使用した効果を、表4に示す。可溶性タンパク質の測定値を、100,000×Gで遠心分離した試料の上清中に回収されたHA−SFB−化合物2又はHA−化合物3−化合物2の量として求めた。全タンパク質の測定値を、遠心分離を行う前の試料中のHA−SFB−化合物2又はHA−化合物3−化合物2の量として求めた。可溶性タンパク質及び全タンパク質の測定は、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(サーモ・サイエンティフィック社(Thermo Scientific)(イリノイ州ロックフォード)より入手したもの)を使用して行った。
【0243】
【表4】
【0244】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容を、恰もそれぞれが個々に援用されたのと同様にしてそれらの全容を援用するものである。当業者にとって、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な改変及び変更が明らかとなろう。本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではない点、及び、こうした実施例及び実施形態はあくまで例示を目的として示されるものにすぎないのであって、本発明の範囲は本明細書において以下に記載される特許請求の範囲によってのみ限定されるものである点は理解されるはずである。