(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6416092
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】改良されたメータゼロに関するコリオリ流量計および方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
G01F1/84
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-527432(P2015-527432)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公表番号】特表2015-524932(P2015-524932A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】US2012051714
(87)【国際公開番号】WO2014031103
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2015年2月12日
【審判番号】不服2016-19384(P2016-19384/J1)
【審判請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラオ, マノージ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダテ, アナンド
(72)【発明者】
【氏名】カニンガム, ティモシー ジェイ.
【合議体】
【審判長】
小林 紀史
【審判官】
中塚 直樹
【審判官】
須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−153121(JP,A)
【文献】
特開平11−125552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のフローチューブ(210)を含む流量計アセンブリ(206)と、
前記流量計アセンブリ(206)に接続され、前記流量計アセンブリ(206)を振動させるように構成されたドライバ(220)と、
前記流量計アセンブリ(206)に接続され、前記流量計アセンブリ(206)から2つ以上の振動信号を生成するように構成された2つ以上のピックオフセンサ(230,231)と、
前記ドライバ(220)および前記2つ以上のピックオフセンサ(230,231)に接続されたメータ電子機器(20)であって、前記ドライバ(220)に駆動信号を供給し、その結果生じた前記2つ以上の振動信号を前記2つ以上のピックオフセンサ(230,231)から受けるように構成されたメータ電子機器(20)と、を備え、
前記2つ以上のピックオフセンサ(230,231)は、前記2つ以上の振動信号の間の全体の時間遅延および全体の位相差のうちの1つにおけるコリオリ流量計(205)のコリオリ振動モード応答を最大にする2つ以上の対応するピックオフセンサ位置に付けられる、コリオリ流量計(205)。
【請求項2】
前記2つ以上のピックオフセンサ位置は、流量ゼロの状態でのメータゼロ安定性を向上する、請求項1に記載のコリオリ流量計(205)。
【請求項3】
前記2つ以上のピックオフセンサ位置は、前記コリオリ流量計(205)の取付状態による影響を最小限にする、請求項1に記載のコリオリ流量計(205)。
【請求項4】
前記コリオリ流量計(205)は、低流量コリオリ流量計(205)を含む、請求項1に記載のコリオリ流量計(205)。
【請求項5】
コリオリ流量計(205)を形成する方法であって、
前記コリオリ流量計(205)の流量計アセンブリ(206)についてのモーダル解析を実行することと、
2つ以上のピックオフセンサの2つ以上の振動信号の間の全体の時間遅延および全体の位相差のうちの1つにおける前記コリオリ流量計(205)のコリオリ振動モード応答を最大にする2つ以上のピックオフセンサ位置を決定することと、
前記2つ以上のピックオフセンサ位置に、前記2つ以上の対応するピックオフセンサ(230,231)を付けることと、を含む、方法。
【請求項6】
前記2つ以上のピックオフセンサ位置は、流量ゼロの状態でのメータゼロ安定性を向上する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記2つ以上のピックオフセンサ位置は、前記コリオリ流量計(205)の取付状態による影響を最小限にする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記2つ以上のピックオフセンサ位置を決定することは、前記モーダル解析によって、実質的に最大のコリオリ振動モード応答を生成する前記2つ以上のピックオフセンサ位置を決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記モーダル解析は、各振動モードについてノード位置を決定すること、および、各振動モードによる前記コリオリ振動モードへの振動寄与を決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記コリオリ流量計(205)は、低流量コリオリ流量計(205)を含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリオリ流量計のメータゼロ時間に関し、特に、改良されたメータゼロ時間に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ質量流量計や振動密度計などの振動導管センサは、一般に、流れる物質を含む振動する導管の動きを検出して動作する。質量流量や密度などの導管内の物質に関連した特性は、導管と関連したモーショントランスデューサから受信した計測信号を処理することによって決定できる。振動する物質で満たされたシステムの振動モードは、一般に、収容する導管およびその中に含まれる物質の結合された質量、剛性および減衰の特性によって影響を受ける。
【0003】
典型的なコリオリ質量流量計は、システムにおいて、パイプラインの中で一列に並んで接続され、または、他の輸送システムと接続され、例えば流体、スラリー、乳液などの物質を運ぶ1つ以上の導管を含む。それぞれの導管は、例えば、単純な曲げ、ねじれ、径方向、および結合されたモードを含む、一組の固有振動モードを有するものとして見ることができる。
【0004】
典型的なコリオリ質量流量計測アプリケーションにおいて、物質が導管を流れるとき、導管は1つ以上の振動モードで励振され、導管の動きは、導管に沿って間隔をおいて配置された位置で計測される。励振は、一般に、周期的な方式で導管に摂動を加えるアクチュエータ、例えばボイスコイル型ドライバなどの電気機械装置から与えられる。2つのトランスデューサ(またはピックオフセンサ)が、一般に、流通管の振動応答を計測するために使用されて、一般に、アクチュエータの上流と下流の位置に設置される。質量流量は、間隔をおいて配置されたトランスデューサ位置におけるモーション間の時間遅延または位相差を計測することによって決定できる。ここで、時間遅延または位相差は、流れる物質のコリオリ力によって生じる。コリオリ力は、管の振動に起因する動く流体の方向変化により生じる。これらのコリオリ力は、センサ管に及ぼされて、振動の動きにおける摂動を生み出す。これらの摂動は、フローチューブの一方端をリードさせ、その他方端を遅らせ、リードする振動センサ信号と遅れる振動センサ信号において位相差を生み出す。
【0005】
ピックオフセンサは、とりわけ、ピックオフセンサから信号を受信し、質量流量計測結果を得るために信号を処理するメータ電子機器(または他の器具)に接続される。質量流量計測結果を生成するために、メータ電子機器は、振動の駆動周波数を使って、計測された位相遅延を時間遅延に変換できる。フローチューブを通過する質量流量(mass flow rate)は、
mass flow rate = FCF x Δt (1)
で与えられるように、この時間遅延(Δt)に正比例している。
【0006】
(FCF)は、例えば、メータの剛性、周囲温度、メータの構成、形状などの様々なメータ特性を考慮に入れる流量校正係数である。しかし、流れがない状態での実際の動作では、時間遅延(Δt)は、ゼロでない値を含むこともあり、流量を正確に測定するために、式において補償される必要がある。その結果、質量流量は、以下のように、より良く表すことができる。
mass flow rate = FCF x (Δt - Δt
z) (2)
【0007】
(Δt
z)は、流れがない状態での時間遅延補正値であり、メータゼロ時間(meter zero term)とも呼ばれる。メータゼロ時間(Δt
z)は、ドライバとピックオフセンサとの間の位置、質量および/または減衰の非対称性が原因で、流れのない振動位相シフトを生じさせることがある。メータゼロ時間(Δt
z)はまた、フローチューブの駆動モードを用いたピックオフセンサのモーダル・インタラクションが原因で存在することがある。メータゼロ時間(Δt
z)は、ピックオフセンサおよびドライバ設計が原因で存在することがある。メータゼロ時間(Δt
z)は、環境の温度および温度の変化が原因で存在することがある。
【0008】
メータゼロ時間(Δt
z)やメータゼロ時間(Δt
z)の安定性は、全体におけるフローチューブおよび/または流量計アセンブリの幾何的な非対称性、振動モード間の結合、減衰、およびメータ設置特徴および他の環境条件によって、大きな影響を受けることが当該技術分野においてよく知られている。
【0009】
これらのファクターは、メータゼロ時間(Δt
z)の振幅に寄与するだけではなく、経時的なメータゼロ時間(Δt
z)の不安定さを生じさせうる。このことは、振り返って、特に高ターンダウンで、流量計の精度に影響する。メータターンダウンは、計測信号がノイズと区別できない、すなわち、あまりにも低流量であるので正確に計測できない、ゼロ流量のすぐ上の低流量帯を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの理由のために、メータゼロ時間(Δt
z)をできる限り小さく保つことが望まれる。大きなメータゼロ時間(Δt
z)は、振動式の流量計において問題を示しうる。大きな振幅のメータゼロ時間(Δt
z)は、小さな振幅のメータゼロ時間(Δt
z)よりも不安定となりうる。大きな振幅のメータゼロ時間(Δt
z)は、再ゼロ設定(re-zeroing)操作をより頻繁に必要としうる。
【0011】
再ゼロ設定操作は、振動式流量計を非作動にすることを必要とする。再ゼロ設定操作は、技術者による手動で且つ時間がかかる診断/調整を必要としうる。例えば、20度より大きく温度が変化した時に、流量計のユーザは、一般に、流量計を再ゼロ設定することを求められる。
【0012】
メータゼロ時間(Δt
z)への温度の影響は、工場校正処理おいて補償されるが、一般に、メータゼロ時間(Δt
z)は調整可能ではない。メータゼロ時間(Δt
z)の安定性は、調整または補償することができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様において、コリオリ流量計は、1つ以上のフローチューブを含む流量計アセンブリと、流量計アセンブリに接続され、流量計アセンブリを振動させるように構成されたドライバと、流量計アセンブリに接続され、流量計アセンブリから2つ以上の振動信号を生成するように構成された2つ以上のピックオフセンサと、ドライバおよび2つ以上のピックオフセンサに接続されたメータ電子機器であって、ドライバに駆動信号を供給し、その結果生じた2つ以上の振動信号を2つ以上のピックオフセンサから受けるように構成されたメータ電子機器とを備え、2つ以上のピックオフセンサは、コリオリ流量計のコリオリ振動モードを最大にする2つ以上の対応するピックオフセンサ位置に付けられる。
【0014】
好ましくは、2つ以上のピックオフセンサ位置は、流量ゼロの状態でのメータゼロ安定性を向上する。
【0015】
好ましくは、2つ以上のピックオフセンサ位置は、コリオリ流量計の取付状態による影響を最小限にする。
【0016】
好ましくは、2つ以上のピックオフセンサ位置を決定する際、モーダル解析によって、実質的に最大のコリオリ振動モード応答を生成する2つ以上のピックオフセンサ位置を決定する。
【0017】
好ましくは、モーダル解析は、各振動モードについてノード位置を決定すること、および、各振動モードによるコリオリ振動モードへの振動寄与を決定することを含む。
【0018】
好ましくは、コリオリ流量計は、低流量コリオリ流量計を含む。
【0019】
本発明の一態様において、コリオリ流量計を形成する方法は、コリオリ流量計の流量計アセンブリについてのモーダル解析を実行することと、2つ以上の振動信号におけるコリオリ流量計のコリオリ振動モードを最大にする2つ以上のピックオフセンサ位置を決定することと、2つ以上のピックオフセンサ位置に、2つ以上の対応するピックオフセンサを付けることとを含む。
【0020】
好ましくは、2つ以上のピックオフセンサ位置は、流量ゼロの状態でのメータゼロ安定性を向上する。
【0021】
好ましくは、2つ以上のピックオフセンサ位置は、コリオリ流量計の取付状態による影響を最小限にする。
【0022】
好ましくは、2つ以上のピックオフセンサ位置を決定することは、モーダル解析によって、実質的に最大のコリオリ振動モード応答を生成する2つ以上のピックオフセンサ位置を決定することを含む。
【0023】
好ましくは、モーダル解析は、各振動モードについてノード位置を決定すること、および、各振動モードによるコリオリ振動モードへの振動寄与を決定することを含む。
【0024】
好ましくは、コリオリ流量計は、低流量コリオリ流量計を含む。
【0025】
同じ参照番号は、全ての図面における同じ要素を示す。図面は、必ずしも拡大縮小していない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明に係るシングルカーブチューブのコリオリ流量計を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るドライバおよび2つ以上のピックオフセンサの相対位置を示す。
【
図3】
図3は、コリオリ流量計の様々なフローチューブ振動または通常モードの例を示す。
【
図4】
図4は、コリオリ流量計の様々なフローチューブ振動または通常モードの例を示す。
【
図5】
図5は、コリオリ流量計の様々なフローチューブ振動または通常モードの例を示す。
【
図6】
図6は、コリオリ流量計の様々なフローチューブ振動または通常モードの例を示す。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るコリオリ流量計を形成する方法のフローチャートである。
【
図8】
図8は、図の左側に一連の可能なピックオフ位置が示される、実質的に直角をなすチューブ形を有する本発明に係るシングルチューブのコリオリ流量計の図である。
【
図9】
図9は、
図8のピックオフ位置に対する正規化されたΔt寄与のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜9および以下の説明は、本発明のベストモードを製造し、使用できる方法を当業者に教示するために、具体的な例を示す。発明の原理を教示するために、いくつかの従来の態様が、簡素化又は省略されている。当業者は、本発明の範囲に入るこれらの例からバリエーションを認識するだろう。当業者は、下に説明された機能が、本発明の複数のバリエーションを形成するための様々な方法で組み合わせることができることを認識するだろう。結果として、本発明は、下で説明された具体的な例に制限されず、特許請求の範囲およびそれらの同等物にのみ制限される。
【0028】
図1は、本発明に係るコリオリ流量計205を示す。本発明の実施形態のいずれかに係るコリオリ流量計205は、改良されたメータゼロ時間を有する。本発明の実施形態のいずれかに係るコリオリ流量計205は、メータゼロが改良された安定性を有する改良されたメータゼロ時間を有する。
【0029】
示された実施形態のコリオリ流量計205は、単一の湾曲したフローチューブ210、バランス構造物208、およびメータ電子機器20を含む、流量計アセンブリ206を含むことができる。メータ電子機器20は、例えば密度、質量流量、容積流量、合計された質量流量、温度、他の情報などの流れる物質の特徴を計測するために、リード線110,111,111’を介して流量計アセンブリ206に接続される。メータ電子機器20は、通信パス26を通じて情報をユーザまたは他のプロセッサに送ることができる。通信パス26は、メータ電子機器20がオペレータまたは他の電子システムとインタフェースすることを可能にする入力および出力手段を提供する。
図1の説明は、単にコリオリ流量計の操作の例として与えられ、本発明の教示を制限することを意図していない。
【0030】
ドライバ、ピックオフセンサ、流通管、または振動の作動モードの数に関係なく、コリオリ流量計205がどのような態様の振動式流量計も含むことができることは、当業者にとって明白である。コリオリ流量計205が、真っ直ぐなフローチューブ、わずかに湾曲したフローチューブ、U字形のフローチューブ、デルタ形のフローチューブ、または他のどのような形のフローチューブパスも含むどのような幾何形状も有することができることは、理解される。いくつかの実施形態では、コリオリ流量計205は、コリオリ質量流量計として操作されうる。さらに、コリオリ流量計205が、代わりに、振動式の密度計として操作されうることは認識されるべきである。
【0031】
流量計アセンブリ206は、流れる物質を受けるための流路を定めるフローチューブ210を含む。フローチューブ210は、図示されるように、曲げられていてもよいし、あるいは、真っ直ぐな構造や不規則な構造などの他のどのような形で与えられてもよい。更なる流量計の形状および/または構造を使うことができ、それらは、明細書および特許請求の範囲の範囲内にある。
【0032】
流量計アセンブリ206が流れる物質を運ぶパイプラインシステムにインサートされるとき、その物質は、入口フランジ(図示せず)を通って流量計アセンブリ206に入り、それから、流れる物質の特徴が計測されるフローチューブ210を流れる。これに続き、流れる物質は、フローチューブ210を出て、出口フランジ(図示せず)を通過する。当業者は、フローチューブ210が適当な機器および/または構造を介してフランジと接続できることを理解する。示された実施形態において、フローチューブ210には、一般に、コネクタ270および271から延び、それらの外の先端でフランジに接続する端部分211と212が設けられる。
【0033】
流体は、液体を含むことができる。流体は、ガスを含むことができる。流体は、混入されたガスおよび/または混入された固体を含む液体などの多相流体を含むことができる。
【0034】
この例の流量計アセンブリ206は、少なくとも1つのドライバ220を含む。ドライバ220は、例えば、限定されないが、圧電要素、静電容量要素または電磁気のコイル/磁石装置を含む多くのよく知られる装置のうちの1つを含みうる。示された実施形態では、ドライバ220は、バランス構造物208の被駆動部材250に接続された第1部分と、フローチューブ210に接続された第2部分を含む。例えば、第1部分および第2部分は、ドライブコイルとドライブ磁石に相当しうる。この実施形態において、ドライバ220は、好ましくは、逆位相で被駆動部材250とフローチューブ210を動かす。デュアルフローチューブ実施形態では、ドライバ220は、2つのフローチューブを反対に振動させうる。
【0035】
被駆動部材250とフローチューブ210は、好ましくは、曲げ軸Wを中心に駆動される。その軸は、コネクタ270と271によってある程度定められうる。本発明の実施形態によれば、曲げ軸Wは、入口―出口チューブ軸と一致する。被駆動部材250は、ベース260から曲がる。当業者であれば、メータが、他のモードで、または、複数のモードで同時に、駆動されうることが分かる。ピックオフセンサ位置の最適化は、他のどのモードにも適用されうるが、ここでは曲げモードで説明される。
【0036】
図に示すように、流量計アセンブリ206は、少なくとも1つのピックオフを含む。示された実施形態には、一対のピックオフ230および231が設けられている。この実施形態の一態様によれば、ピックオフ230および231は、フローチューブ210の動きを計測する。この実施形態において、ピックオフ230および231は、個々のピックオフアーム280および281に位置付けられた第1部分と、フローチューブ210に位置付けられた第2部分を含む。ピックオフは、例えば、限定されないが、圧電要素、静電容量要素または電磁気のコイル/磁石装置を含む多くのよく知られる装置のうちの1つを含みうる。従って、ドライバ220のように、ピックオフの第1部分がピックオフコイルを含みうり、一方、ピックオフの第2部分がピックオフ磁石を含みうる。当業者であれば、フローチューブ210の動きが、流れる物質の特定の特性、例えば、フローチューブ210を流れる物質の質量流量または密度と関連することが分かる。
【0037】
当業者は、メータ電子機器20がピックオフ230および231からピックオフ信号を受信し、ドライバ220に駆動信号を供給することが分かる。メータ電子機器20は、例えば、密度、質量流量、容積流量、合計された質量流量、温度、他の情報などの流れる物質の特性を計測するために、ピックオフ信号を処理することができる。メータ電子機器20は、振動応答を処理し、一般に、信号の応答周波数および/または信号間の位相差を決定する。メータ電子機器20はまた、例えば1つ以上温度センサ(図示せず)や1つ以上圧力センサ(図示せず)から1つ以上の他の信号を受信して、流れる物質の特性を計測するために、この情報を使用することができる。他の振動応答特性および/または流量計測も考えられ、明細書および特許請求の範囲の範囲内にある。当業者であれば、センサの数や型式は、特定の計測される特性によることを理解するだろう。
【0038】
流量計アセンブリ206はまた、ケース300並びにケースコネクタ590および591も含みうる。ケースコネクタ590および591は、フローチューブ210に接続された第1部分595およびケース300に接続された第2部分596を含みうる。図に示すように、ケースコネクタ590および591は、好ましくは、フランジとコネクタ270,271間に位置付けられた導管を支持している唯一の構造物である。
【0039】
コリオリ流量計は、1つ又は複数のフローチューブを含みうる。コリオリ流量計は、真っ直ぐ又は曲がっているフローチューブを含みうる。コリオリ流量計は、いかなる形状のフローチューブも含みうり、いかなる形状のいかなる関連構造物も含みうる。コリオリ流量計は、液体、ガス、または、液体、ガスおよび/または固体の混合物を含むいかなる流れる物質用にも設計されうる。コリオリ流量計は、高流量若しくは低流量用に、または、いかなる密度も有する流れる物質用に設計されうる。
【0040】
作動時、ドライバ220は、フローチューブ210における振動を引き起こし、2つ以上のピックオフセンサ230,231は、対応する振動信号を生成する。振動信号は、2つ以上のピックオフセンサ230,231で計測された複数の重ね合わされた振動の特性を示しうる。これらの振動のモードのうちの1つ又は複数は、コリオリ振動モードに寄与する。
【0041】
従来技術のデュアルチューブのコリオリ流量計において、最適なピックオフセンサ位置は、振動の二次曲げモードを定める節点にピックオフセンサを位置づけることによって試みられていた。この例は、ケージ(Cage)らに米国特許番号5301557号で提供される。デュアルチューブのコリオリ流量計のピックオフセンサを二次曲げモードを定めるノードに位置付けることは、二次曲げモードとコリオリモード振動の可能な重ね合わせからコリオリモード振動(すなわち、リードし、遅れる態様)を切り離すために機能する。それは、コリオリ振動モードが他の振動モードと結合するシングルチューブのコリオリ流量計の欠点でもある。
【0042】
図2は、本発明の実施形態に係るドライバ220および2つ以上のピックオフセンサ230および231の相対位置を示す。2つ以上のピックオフセンサ230および231が、曲げ軸Wとドライバ220との間に位置付けられることが図から分かる。2つ以上のピックオフセンサ230および231は、ある実施形態では、ドライバ220から実質的に等距離でありうる。しかしながら、本願明細書および特許請求の範囲によって決定されるピックオフセンサ位置は、ピックオフセンサの対称な又は規則的な配置に制限されないことが理解されるべきである。
【0043】
曲げ軸Wは、ドライバ220により生み出された振動力によって摂動を受けたときに周期的に曲がる振動可能なスパンをつくりだすように位置づけられうる。曲げ軸Wは、ブレースバー、バランスビーム、ケーシング、または他の構造物により、つくり出されうる。
【0044】
ドライバ220からの(および/または曲げ軸Wからの)2つ以上のピックオフセンサ230および231の距離は、どのような方法ででも計測できる。その距離は、図における2つ以上のピックオフセンサ230,231と曲げ軸Wとの間の高さH
1や2つ以上のピックオフセンサ230,231とドライバ220との間の高さH
2などの垂直な高さを含みうる。その距離は、図におけるスパンS
1やS
2などの実際のフローチューブスパンを含みうる。その距離は、角度変位計測(図示せず)を含みうる。その距離は、更に、2つ以上のピックオフセンサ230,231とドライバ220との間の距離に対する、曲げ軸Wと2つ以上のピックオフセンサ230,231との間の距離の比率またはパーセンテージとして特徴づけられうる。2つ以上のピックオフセンサ230,231、ドライバ220、および曲げ軸W間の他の距離定量化が考えられ、明細書および特許請求の範囲の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0045】
最適なピックオフセンサ位置は、様々なファクターによって変動しうる。最適なピックオフセンサ位置は、フローチューブの材質、フローチューブの肉厚、フローチューブの直径、フローチューブの断面形状、(真っ直ぐ又はある方法で曲げられた)全体のフローチューブ形状、振動可能な部分の有効長さ、ピックオフ質量、および関連構造物(すなわち、ブレースバー、バランス構造物、フランジ、ケーシングなど)の存在/型式により影響を受けうる。最適なピックオフセンサ位置はまた、ピックオフセンサ設計パラメータ、例えばピックオフセンサの質量または慣性によって変動しうる。
【0046】
図3〜6は、コリオリ流量計の様々なフローチューブ振動または通常モードの例を示す。振動モードは、センサの幾何形状、フローチューブの形状および材質、並びに関連構造物の存在に依存する。
図3〜6の振動モードは、あらゆるセンサ幾何形状に類似点を有する。
図3〜6において示された様々な振動モードが必ずしもスケールする必要がなく、説明のために誇張されているだろうことは理解されるべきである。また、明瞭さのために例が簡素化されており、実際の動作では、フローチューブの振動の動きは、複数の振動モードの重ね合わせを含みうることが理解されるべきである。
【0047】
図3は、一次曲げモードで振動するフローチューブの例を示す。一次曲げモードにおいて、フローチューブの上部は、z方向に動かされ、曲げ軸Wより上のフローチューブの部分は、その後、−z方向および+z方向に曲がり、振動する。一次曲げモードの2つのノードN1及びN2は、曲げ軸W上にある。
【0048】
図4は、一次ねじりモードで振動するフローチューブの例を示す。一次ねじりモードにおいて、上部の2つの端は、−z方向および+z方向に、反対に動かされる。従って、一次ねじりモードは、3つのノード、すなわち、曲げ軸W上の2つのノードN1及びN2並びに上部の中心周りのノードN3を有する。
【0049】
図5は、二次曲げモードで振動するフローチューブの例を示す。二次曲げモードにおいて、フローチューブの上部は、z方向に動かされるが、フローチューブの垂直な脚も曲がり、垂直な脚の中心部分が上部とは反対に動く。従って、二次曲げモードは、4つのノード、すなわち、曲げ軸W上の2つのノードN1及びN2並びに曲げ軸Wとフローチューブの上部との間に位置付けられた2つの上部ノードN3及びN4を有する。
【0050】
図6は、二次ねじりモードで振動するフローチューブの例を示す。二次ねじりモードにおいて、上部の2つの端は、共通のz方向に動かされ、一方、上部の中心部は、垂直な脚および上部の2つの端とは反対に動く。従って、二次ねじりモードは、4つのノード、すなわち、曲げ軸W上の2つのノードN1及びN2並びに上部上であって上部の2つの端間に位置付けられた2つの上部ノードN3及びN4を有する。
【0051】
図7は、本発明の一実施形態に係るコリオリ流量計を形成する方法のフローチャート700である。ステップ701において、有限要素(FE)モデルは、流量計アセンブリ206で構成される。例えば、FEモデルは、フローチューブの数、フローチューブ形状/幾何形状、および/または、フローチューブ構成の特徴を与えることを含む、流量計アセンブリ206の特徴を与えることができる。モデル化された有限要素が、メータモデルを流れる代表的な流れに関する複素モードまたは強制応答解析のために準備される。
【0052】
ステップ702において、モーダル解析がコリオリ流量計について実行される。モーダル解析において、モーダル領域複素モードまたはモーダル領域周波数強制応答ソリューションが実行される。複素モードについての正確な結果を確実にするために、十分に正常なモードが複素モードソリューションに含められるべきである。
【0053】
ステップ703において、モーダル解析により、コリオリ流量計の全体の振動応答へのコリオリモード振動寄与が計算される。さらに、モーダル解析は、フローチューブの複数の可能なピックオフセンサ位置についてのコリオリモード振動寄与を計算するように設定されうる。例えば、フローチューブにおけるピックオフセンサ位置の範囲は、ポスト処理のために選択されうる。選択されたピックオフセンサ位置間の時間遅延Δtは、寄与するモードのそれぞれについて計算される。
【0054】
ステップ704において、最適なピックオフセンサ位置は、解析されたピックオフセンサ位置の範囲についてのコリオリモード寄与から決定される。これは、例えば、ピックオフ位置に対する正規化された時間遅延Δtをプロットすることを含みうる。時間遅延Δtは、全体の時間遅延Δtで割ることによって正規化される。最適なピックオフ位置は、全体の時間遅延Δtへの支配的な寄与が、要求されたコリオリモードからである位置をセレクトすることによって選ばれる。
【0055】
しかしながら、解析された可能なピックオフセンサ位置の範囲から最適なピックオフセンサ位置を見つけるために、他の方法が使用されてもよいことは理解されるべきである。さらに、解析により、解析されたピックオフセンサ位置のセットの中の選択されたピックオフセンサ位置の間に位置付けられる最適なピックオフセンサ位置が補間されてもよい。
【0056】
図8は、図の左側に一連の可能なピックオフ位置が示される、実質的に直角をなすチューブ形を有するシングルチューブのコリオリ流量計の図である。一連の可能なピックオフセンサ位置1〜12は、最適なピックオフセンサ位置を決定するために選ばれうる。通常、チューブの右脚上の対応するピックオフセンサ位置は、対称であるピックオフセンサ(PO)位置を比べるために用いられる。図面がスケールする必要がなく、検査位置が図とは異なった間隔をあけて配置されうることが理解されるべきである。一連の可能なピックオフセンサ位置1〜12は、等間隔または不規則な間隔を含みうる。
【0057】
図9は、
図8のピックオフ位置1〜12に対する振動のコリオリモードからの正規化されたΔt寄与のグラフである。位置4で、コリオリ振動モードが、計測された時間遅延(Δt)の100パーセントに相当することがグラフから分かる。これが、コリオリ振動モードのみから導き出される時間遅延計測であって、コリオリ振動モードと結合される他の振動モードを含まない時間遅延計測結果を得るために、望ましい目標である。
【0058】
ピックオフセンサ位置が位置1から位置12に、すなわちドライバからベースへと動くにつれて、全体の時間遅延Δtへのコリオリ振動モードの寄与が減少することが分かる。位置4がこのコリオリ流量計(またはコリオリ流量計モデル)のための理想的なピックオフセンサ位置であることが分かる。というのも、全体の時間遅延Δtが、コリオリ振動モードにのみ起因している、すなわち、コリオリ振動モードによる寄与が単一であるからである。
【0059】
本方法は、メータゼロ時間(Δt
z)の振幅を有利に低減する。本方法は、メータゼロ時間(Δt
z)の安定性を有利に向上させる。本方法は、これを、フローチューブにおけるピックオフセンサ位置と、コリオリモードの計測結果の強さへのピックオフ位置の寄与とを互いに関係づけることによって行う。この関係づけと、それに続く、最大コリオリモード計測結果を生成する位置へのピックオフセンサの位置決めによって、最適(および最大)時間遅延(Δt)計測結果やできるだけ大きい信号対雑音(S/N)比がもたらされる。結果として、質量流量計測の精度および信頼性が高められる。
【0060】
上記実施形態の詳細な説明は、発明の範囲内にあると発明者により予想される全ての実施形態の包括的な説明ではない。実際、当業者であれば、上で説明された実施形態の特定の要素が、別の実施形態をつくりだすために様々に組み合わされる又は取り除かれることがあり、このような別の実施形態が、本発明の範囲と教示に含まれうることが分かるだろう。本発明の範囲と教示内の追加の実施形態を生み出すために、上で説明された実施形態は、全体または部分で組み合わされうることも、当業者にとって明白だろう。従って、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。