(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6416096
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】選択触媒還元反応における触媒として使用するためのSTT型ゼオライトの調製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20181022BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20181022BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20181022BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20181022BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20181022BHJP
B01J 37/30 20060101ALI20181022BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20181022BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20181022BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
C01B39/48ZAB
B01J29/70 A
B01J37/02 101C
B01J37/04 102
B01J37/10
B01J37/30
B01D53/94 222
B01D53/94 400
F01N3/08 B
F01N3/28 301P
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-534686(P2015-534686)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公表番号】特表2015-535800(P2015-535800A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】US2013062075
(87)【国際公開番号】WO2014052691
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】61/707,392
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513089291
【氏名又は名称】パシフィック インダストリアル デベロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンカ、マンジョラ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ユンクイ
(72)【発明者】
【氏名】ラチャペル、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ウェイ
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−216914(JP,A)
【文献】
特開2011−079819(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/007874(WO,A1)
【文献】
特表2010−519037(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/128644(WO,A1)
【文献】
特開平07−088379(JP,A)
【文献】
特開平05−212286(JP,A)
【文献】
特開平04−180836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01D 53/94
B01J 21/00ー38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ:アルミナのモル比が10:1〜30:1の比を有する結晶性STT型ゼオライトを調製する方法であって、
前記シリカの供給源;前記アルミナの供給源;アルカリ金属の供給源;N,N,N−トリメチル−1−アダマントアンモニウムヒドロキシドを含む有機構造指向剤を水と混合することによって水性反応混合物のスラリーを生成させるステップと;
前記スラリーを容器に移し、密封してから、この密封容器を4〜7日間、150〜160℃で加熱し、その後冷却し、それによって、8.26、8.58、9.28、9.54、10.58、14.52、15.60、16.43、17.13、17.74、18.08、18.46、19.01、19.70、20.12、20.38、20.68、21.10、21.56、22.20、22.50、22.78、23.36、23.76、23.99、24.54、24.92、25.16、25.58、25.80、26.12、26.94、27.38、27.92、28.30、28.60、29.24、29.48、30.08、30.64、31.20、31.46、31.80、32.02、32.60、33.60及び34.43に2θピークを有するX線回折パターンを有するSTT型ゼオライトの結晶を前記密閉容器中で合成するステップと;
前記密閉容器中の内容物をろ過することによって前記STT型ゼオライト結晶を回収し、ろ過された前記STT型ゼオライト結晶を洗浄し、乾燥するステップと;
乾燥された前記STT型ゼオライト結晶を焼成することによって、前記結晶性STT型ゼオライトを調製するステップと
を含む前記方法。
【請求項2】
前記回収されたSTT型ゼオライトがSSZ−23を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶性STT型ゼオライトを硝酸で脱アルミニウム化するステップと;
脱アルミニウム化されたSTT型ゼオライトに金属塩水溶液を含浸させる又は脱アルミニウム化されたSTT型ゼオライトを金属塩水溶液とイオン交換させるステップで、前記金属塩水溶液が、Cu、Fe、Co、Zr、Ti又はその混合物の群からの1つとして選択される金属を含有する前記ステップと;
前記含浸又はイオン交換によって、前記金属塩水溶液中に含まれる前記金属を、脱アルミニウム化されたSTT型ゼオライトの骨格部位中に取り込むことによって、金属含有触媒を形成するステップと、
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属含有触媒が、金属含有SSZ−23ゼオライトと同じ、アンモニア温度脱着及びn−プロピルアミン温度脱着に対する触媒活性を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属含有触媒中に存在する金属が、金属含有触媒の全重量に対して0.3〜10.0%の範囲である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記金属含有触媒が24時間、750℃、10%H2O雰囲気下で水熱熟成され、この水熱熟成された触媒が、アンモニア温度脱着とn−プロピルアミン温度脱着の両方に対して、金属含有SSZ−23ゼオライトと同じ触媒活性を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
脱アルミニウム化されたゼオライトの骨格中に金属を取り込むステップが、Cu、Fe、Co、Zr、又はTi金属でのイオン交換によって遂行される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記含浸又はイオン交換によって、前記金属塩水溶液中に含まれる前記金属を、脱アルミニウム化されたSTT型ゼオライトの骨格部位中に取り込むことによって形成される金属含有触媒を、ハニカム基材、金属基材又は押出基材上に固着させるステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
ハニカム基材が壁流基材を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶性STT型ゼオライトが、0.1〜50ミクロンのD50の粒径を有する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記シリカの供給源が、2wt%の水分含量を有するヒュームドシリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナの供給源が三水酸化アルミニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカリ金属の供給源が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
混合物を155℃の温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項3から6のいずれかに記載の方法にしたがって調製された金属含有触媒を含む排ガス処理システム。
【請求項16】
酸素の存在下でのガスストリーム中に含有される窒素酸化物の還元のためのプロセスであって、ガスストリームを、請求項3から6のいずれかに記載の方法にしたがって調製された金属含有触媒と接触させるステップを含む前記プロセス。
【請求項17】
壁流基材の少なくとも一部が前記金属含有触媒でコーティングされている、請求項15に記載の排ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、STT型ゼオライトを形成させる方法、及び選択触媒還元(SCR)反応において前記ゼオライトを触媒として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本節での記述は、単に本開示に関連する背景情報を提供するだけであり、従来技術を構成するものではない。
【0003】
ゼオライトは、酸素イオンの広範な三次元ネットワークをもとにした骨格を有する結晶性アルミノシリケートである。すべてのゼオライトの基本的な構成要素は、小さなケイ素又はアルミニウムイオンを取り囲む4つの酸素アニオンの4面体である。これらの4面体は、4つの酸素アニオンのそれぞれが順に、別のシリカ又はアルミナの4面体を共有するように配置されている。結晶格子は三次元で拡がっており、各酸素アニオンの−2の電荷、すなわち酸化状態からなっている。各ケイ素イオンは、4つの4面体酸素アニオンによってバランスされる+4の電荷を有しており、したがってシリカ4面体は電気的に中性である。三価アルミニウムが4つの酸素アニオンと結合しているので、各アルミニウム4面体は−1の残留電荷を有する。この残留電荷は、以下の概略図及びR.Szostak著のモレキュラーシーブ:合成及び特定の原理(Molecular Sieves:Principles of Synthesis and Identification)、第2版、Blackie Academic and Professional、London、1998年においてさらに説明されているように、非骨格位置を占めており、強い酸供与ブレンステッド部位として作用するカチオンによってバランスされる。
【数1】
【0004】
高度にシリカを含有するゼオライト又はモレキュラーシーブは、一般に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属酸化物の供給源;ケイ素の酸化物の供給源;任意選択の酸化アルミニウムの供給源;及び1−アダマントアミン、その誘導体のN,N,N−トリメチル−1−アダマントアンモニウムヒドロキシドから誘導されるカチオン並びにその混合物を含む水性反応混合物から調製される。ヒュームドシリカは酸化ケイ素の典型的な供給源として使用され、水酸化アルミニウムは酸化アルミニウムの典型的な供給源として使用される。次いで、結晶化によって形成される「合成されたままの」結晶性ゼオライトを、さらなる処理にかけることができる。例えば、構造指向剤(SDA)を、熱処理(すなわち、焼成)によって除去することができる。そうしたさらなる処理は、希釈された酸溶液又は硝酸アンモニウム溶液を使用するなどの公知の方法を用いたイオン交換による金属カチオンの除去を含む。
【0005】
Microporous and Mesoporous Materials、22(1998)、69〜85頁において、Y.Nakagawaらは、N,N,N−トリメチル−1−アダマントアンモニウムカチオンを用いて作製できる5つの異なるゼオライトをコンピュータ的に決定している。彼らの分子モデル計算は、彼らの実験データと一致している。彼らは、このテンプレートが、SSZ−13、SSZ−23、SSZ−24、SSZ−25及びSSZ−31型のゼオライトを結晶化させることを報告している。彼らは、5つのゼオライトのための結晶化域境界が一般に2つのSDAによって作られることを示している。N,N,N−トリメチル−1−アダマントアンモニウムSDA分子は、SAR10〜40で菱沸石(チャバザイト)相を結晶化させ、SAR50〜70でSTT相を結晶化させる。
【0006】
SSZ−23型ゼオライトの有機テンプレートと類似した構造を生み出す有機テンプレートはほとんどない。米国特許第4,859,442号は、テンプレートとしてアダマンチン四級アンモニウムイオンを用いた結晶性SSZ−23ゼオライトの調製を開示している。そのようにして調製されたSSZ−23ゼオライトは、約50:1超の酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム及びその混合物から選択される酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化ホウ素及びその混合物から選択される酸化物とのモル比を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一般に、SSZ−23ゼオライトと類似した構造を有するゼオライトを形成する能力を拡大する選択された合成反応を提供する。SSZ−23ゼオライトと類似した構造が、本明細書で説明する反応のタイプ及び特定の一連の合成条件のもとで、生成物(SST型ゼオライト)として出現することは驚くべきことである。本開示の教示にしたがって調製されたSTT型ゼオライトは、約15:1超の四価元素の酸化物と三価元素の酸化物のモル比を有する。或いは、四価元素の酸化物が酸化ケイ素であり、三価元素の酸化物は10:1〜30:1の比を有する酸化アルミニウムである。
【0008】
結晶性STT型ゼオライトを調製する方法は一般に、四価元素の酸化物の供給源、三価元素の酸化物の供給源、アルカリ金属の供給源及びN,N,N−トリメチル−1−アダマントアンモニウムヒドロキシドを含む有機構造指向剤を含む水性反応混合物を生成させるステップと;その水性混合物をSTT型ゼオライトの結晶を結晶化させるのに十分な結晶化条件下で保持するステップと;STT型ゼオライト結晶を回収するステップを含む。STT型ゼオライト結晶は、8.26、8.58、9.28、9.54、10.58、14.52、15.60、16.43、17.13、17.74、18.08、18.46、19.01、19.70、20.12、20.38、20.68、21.10、21.56、22.20、22.50、22.78、23.36、23.76、23.99、24.54、24.92、25.16、25.58、25.80、26.12、26.94、27.38、27.92、28.30、28.60、29.24、29.48、30.08、30.64、31.20、31.46、31.80、32.02、32.60、33.60及び34.43にピークを有するX線回折パターン(2θ°)を示す。
【0009】
本開示の方法にしたがって調製されるSTT型ゼオライトは、SCR用途などにおける触媒として使用することができる。本開示の教示にしたがって調製されたSTT型ゼオライトを用いた、アンモニアとn−プロピルアミンの両方についての温度プログラム化した脱着(TPD)試験の比較は、これらのゼオライトが、SSZ−23ゼオライトと類似した構造を有することを実証している。TPDの測定において、合成ゼオライトの酸強度を、アンモニア及びn−プロピルアミンなどの塩基性の特徴を有するプローブ分子を用い、それらが脱着する温度を測定することによってモニターする。
【0010】
適用可能な他の分野は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。説明及び具体的な例は、例示を目的とするためだけであり、本開示の範囲を限定しようとするものではないことを理解すべきである。
【0011】
本明細書で説明する図面は、例示を目的とするためだけであり、本開示の範囲を限定しようとするものでは全くない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の教示によるSTT型ゼオライトの調製の概略図を示す図である。
【0013】
【
図2】例1にしたがって調製されたSTT型ゼオライトの粉末X線回折分析スペクトルを示す図である。
【0014】
【
図3】例1にしたがって調製された焼成STT型ゼオライトの粉末X線回折分析スペクトルを示す図である。
【0015】
【
図4】10重量/重量%の水の存在下、750℃で24時間熟成した後、例2にしたがって調製されたSTT型ゼオライトの粉末X線回折分析スペクトルを示す図である。
【0016】
【0017】
【
図6】本開示にしたがって調製されたフレッシュ(fresh)なゼオライトサンプルによって示されるアンモニアの脱着プロファイルのグラフ表示を示す図である。
【0018】
【
図7】水熱熟成された(24時間750℃、10%H
2O)ゼオライトサンプルによって示されるアンモニア脱着プロファイルのグラフ表示を示す図である。
【0019】
【
図8】本開示の教示にしたがって調製されたフレッシュなゼオライトサンプルによって示されるn−プロピルアミンの脱着プロファイルのグラフ表示を示す図である。
【0020】
【
図9】水熱熟成された(24時間750℃、10%水蒸気)ゼオライトサンプルによって示されるn−プロピルアミンの脱着プロファイルのグラフ表示を示す図である。
【0021】
【
図10】本開示の教示にしたがって得たSTT型ゼオライトの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0022】
【
図11】本開示の教示にしたがって調製された新鮮なSTT型ゼオライト、及び24時間750℃、10%H
2Oで水熱熟成されたゼオライトサンプルについての200℃でのNO
x転換率のグラフ表示である。
【0023】
【
図12】本開示の教示にしたがって調製された新鮮なSTT型ゼオライト、及び24時間750℃、10%H
2Oで水熱熟成されたゼオライトサンプルについての500℃でのNO
x転換率のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明は本来単なる例示に過ぎず、本開示又はその適用若しくは使用を限定しようとするものでは全くない。この説明を通して、対応する参照数字は、類似又は対応する部分及び特徴を示すことを理解すべきである。
【0025】
本開示は一般に、SSZ−23ゼオライトのそれと類似したSTT型の構造又は骨格を有する結晶性ゼオライトを調製する方法を提供する。本明細書で調製されるSTT型ゼオライトは、アンモニア及びN−プロピルアミン温度脱着試験によって実証されるように、SSZ−23ゼオライトによって示される活性と類似した、選択触媒還元(SCR)反応についての触媒活性を示す。SSZ−23ゼオライトの実証的ゲル組成(empirical gel)は:
5.577 NaOH:4.428 RNOH:Al
2O
3:28 SiO
2:1219.7 H
2O
で表される。
【0026】
以下の具体的な実施形態を、本開示の教示にしたがって調製されたSTT型ゼオライトの調製、特定及び使用を例示するために示すが、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本開示に照らして、当業者は、本明細書で開示される具体的な実施形態において多くの変更を加えることができ、それでも、本開示の趣旨又は範囲を逸脱する又はそれを超えることなく、同様の又は類似した結果を得ることができることを理解されよう。当業者はさらに、本明細書で報告される任意の特性が、慣行的に測定され、複数の異なる方法で得ることができる特性を表すことを理解されよう。本明細書で説明する方法はそうした1つの方法を代表しており、本開示の範囲を超えることなく、他の方法を使用することができる。
【0027】
図1を参照して、本開示のSTT型ゼオライトは、一般に、反応物を均一な白濁溶液が得られるまで撹拌することによって調製される。ゼオライト結晶の合成は、2.0L Parrオートクレーブ中、150℃〜160℃で4〜7日間、或いは約155℃で約6日間実施する。冷却されたら、反応容器の内容物をろ過器に注加し、結晶を蒸留水で洗浄し、約120℃で終夜乾燥する。合成後、ゼオライト骨格構造指向剤を除去するために、イオン交換の前にゼオライトを焼成する。得られるゼオライトは、約15:1超の四価元素の酸化物と三価元素の酸化物のモル比を示す。或いは、ゼオライトは約10:1〜30:1;或いは約28:1のシリカ:アルミナのモル比を示す。得られる生成物は、XRDによって特徴付けられる。そのパターンは、0.02° 2θのステップサイズを用いて、5〜35° 2θスキャンで得られる。Carl−Zeiss顕微鏡を用いて、走査電子顕微鏡(SEM)画像及びエネルギー分散型X線分光(EDAX)化学分析が得られる。温度脱着試験を、MKS Cirrus質量分析計と一体となった2920Micromeritics装置で実施する。合成されたすべての材料は白色粉末である。
【0028】
本開示の1つの態様によれば、STT型ゼオライトは、約0.1〜50ミクロンのD50での粒径を有する。四価元素の供給源は約2wt%の水分含量を有するヒュームドシリカであってよく、三価元素の供給源は三水酸化アルミニウム(aluminum tri−hydroxide)である。アルカリ金属カチオンは、結晶性STT型ゼオライト中の原子価電子電荷をバランスさせる。アルカリ金属カチオンは、水酸化ナトリウムから誘導されるナトリウムであっても水酸化カリウムから誘導されるカリウムであってもよい。
【0029】
本開示の他の態様によれば、金属含有触媒を調製する方法であって;STT型ゼオライトを硝酸で脱アルミニウム化するステップと;得られる脱アルミニウム化されたゼオライトに、その金属がCu、Fe、Co、Zr、Ti又はその混合物の群からの1つとして選択される金属塩の水溶液を含浸させるステップを含む方法が提供される。その金属を、脱アルミニウム化されたゼオライトの骨格部位に取り込む。
【0030】
金属含有触媒は、金属含有SSZ−23ゼオライトと同等の触媒活性を示すアンモニア温度脱着及びn−プロピルアミン温度脱着によって特徴付けられる。金属含有触媒は水熱熟成されており、その水熱熟成された触媒はアンモニア温度脱着とn−プロピルアミン温度脱着の両方が可能である。その金属を脱アルミニウム化されたゼオライトの骨格中に取り込むステップは、窒素酸化物を含有する排ガスストリーム中でのNO
x転換性能を維持するのに十分な量のCu、Fe、Co、Zr、Ti金属とイオン交換することによって遂行される。この金属含有触媒中に存在する金属の量は、金属含有触媒の全重量に対して、0.3〜10.0%、或いは約0.3〜約5.0%の範囲であってよい。
【0031】
フレッシュに調製された金属含有触媒の約200℃でのNO
x転換性能は72%、或いは約65%である。フレッシュに調製された金属含有触媒の約500℃でのNO
x転換性能は約45%、或いは約30%である。
【0032】
さらに
図1を参照すると、本開示の教示にしたがって調製されたゼオライト材料は、SCR用途などにおける触媒として使用することができる。合成ゼオライトサンプルの酸強度を、アンモニア及びn−プロピルアミンなどの塩基性の特徴を有するプローブ分子を用いて、それらが脱着される温度を測定(温度プログラムした脱着測定)することによってモニターする。サンプルの酸性度を、アンモニアの温度をプログラムした脱着及びn−プロピルアミン−TPD技術によって測定する。このSTT型ゼオライトは、600℃の温度まで安定な強酸部位を有する。
【0033】
本開示の1つの態様によれば、SCR触媒は、個々の触媒粒子の形態であってもハニカムモノリス構造としてであってもよい。ハニカム構造物は、触媒組成物の形態か、又はその上に触媒組成物がウォッシュコート又はウォッシュコート類の組合せとして塗布されているセラミック又は金属性の基材、或いは押出基材であってよい。本明細書で用いる「SCR」触媒という用語は、これに限定されないが、窒素酸化物が還元剤(reductant)又は還元性試薬(reducing agent)と反応する選択触媒還元反応を含むと期待される。その還元剤又は還元性試薬は、高温でNO
xを還元することができる任意の化学薬品又は化合物を指す。還元性試薬はアンモニアであっても、尿素などのアンモニア前駆体であってもよい。還元剤は、ディーゼル燃料及びその留分などの燃料であってもよく、また、他の任意の炭化水素又は酸素化された炭化水素であってもよい。
【0034】
触媒組成物は、モノシリック構造で作製されるか、又は触媒調製のために当業者によって通常用いられる任意の基材上に配置された自己支持性微粒子であってよい。この基材又はモノシリック構造は、それを通して延びる1つ又は複数のガス流路を有する任意のセラミック又は金属ハニカム構造物を含むことができる。触媒組成物は、それを通るガスが触媒組成物と接触するように前記流路を画定する構造物壁の一部に塗布することができる。その流路は、これらに限定されないが、台形、長方形、正方形、楕円形及び円形などを含む所望の任意の断面形状又はサイズを有する薄肉チャネルである。当業者は、その基材が、ガスが概ね一方向だけに流れることができるようにその流路が交互に遮断されている壁流ろ過器基材であってもよいことを理解する。したがって、壁流基材の使用は、微粒子状物質を、ガス状汚染物質と一緒に流動ガスから除去できるという付加的な利益を提供する。壁流ろ過器基材は、若干挙げるとすると、コージライト、チタン酸アルミニウム又は炭化ケイ素などの当業界で一般に公知の材料から作製することができる。壁流基材に塗布される触媒組成物の量は、空隙率及び壁の厚さなどの基材の特性に依存することになる。
【0035】
本開示の他の態様によれば、SCR触媒組成物は、アンモニア酸化(AMOX)触媒と一緒に使用することもできる。AMOX触媒は、排ガス処理システムにおいて、SCR触媒に加えて、酸素、窒素酸化物及びアンモニアのガス状ストリームと相互作用する触媒として有用である。アンモニアは、アンモニアでの窒素酸化物の触媒化還元によってエンジンから発生する窒素酸化物の排出を削減するために、一般に煙道又は排気管中を流れるガス状ストリームに添加される。SCR触媒は、窒素酸化物の削減に好都合な傾向があり、AMOX触媒は、過剰なアンモニアの分解に好都合である。本開示の範囲を超えることなく、本開示の教示にしたがって調製された触媒組成物の様々な他の使用が可能であると予想される。例えば、金属含有SSZ−23ゼオライトに関連する様々な使用の追加的な説明は、米国公開第2008/0226545号に提供されている。この全内容を参照により本明細書に組み込む。
【実施例】
【0036】
(例1)
PIDC−120602STT型ゼオライトの合成。
【0037】
水酸化ナトリウム溶液とN,N,N−トリメチル−1−アダマントアンモニウムヒドロキシドを混合する。水酸化アルミニウムを加え、続いてシリカAerosil 200を加える。得られた混合物に脱イオン水を加える。反応物を、均一な白濁溶液が得られるまで撹拌する。得られたスラリーを2.0L Parrステンレス製容器に移し、容器を密封する。反応容器を160℃で6日間加熱する。冷却したら、反応容器の内容物をろ過器に注加し、結晶を蒸留水で洗浄し、120℃で終夜乾燥する。合成した後、ゼオライト骨格構造指向剤を除去するために、イオン交換の前に、ゼオライト粉末を焼成する。
【0038】
この手順で得られたSSZ−23ゼオライト生成物のX線回折パターンを、以下の表1にまとめ、また
図2に示す。このXRDパターンは、高い結晶化度を有する純粋なSSZ−23相の存在を実証している。焼成後、SSZ−23ゼオライトは、そのX線回折パターンが
図3に示されている、結晶構造を有する。焼成サンプルのXRDスペクトルは依然としてSSZ−23相の存在を示している。2θ°が8.16、8.52、9.46、10.62、13.31、13.90、14.10、14.50、15.57、16.32、17.22、17.80、18.60、18.99、19.66、20.08、20.49、20.78、21.21、21.58、22.18、22.56、22.97、23.40、23.78、23.98、24.64、24.94、25.47、25.96、26.64、27.04、27.35、28.06、28.56、29.44、29.73、30.09、30.44、30.60、30.99、31.40、31.94、32.67、33.78及び34.48のときのXRDスペクトルにおける主ピークは、SSZ−23相に帰する。ここで説明する方法で得られたSSZ−23ゼオライトは、約358m
2/gのBET表面積及び約0.18cm
3/gの細孔容積を有する。
【0039】
SSZ−23ゼオライトに施される熟成処理は、10%のH
2Oを含む空気流中、750℃、24時間で選択される。この水熱処理されたサンプルのX線回折(XRD)スペクトルを
図4に示す。このXRDスペクトルは、SSZ−23型ゼオライトについて特徴的な線を示す。2θ°が8.16、8.50、9.40、10.52、11.27、11.76、12.79、13.26、13.88、14.08、14.46、15.54、16.12、17.10、17.72、18.09、18.50、18.80、19.60、20.04、20.38、20.64、21.48、22.07、22.50、22.79、23.34、23.60、23.80、24.57、24.76、25.34、25.83、26.52、26.94、27.33、27.92、28.45、29.30、29.62、30.46、31.38、31.96、32.75及び33.66のときの主ピークは、SSZ−23相に帰する。
【0040】
【表1】
【0041】
(例2)
温度プログラムした脱着
【0042】
塩基性の分子、NH
3及びn−プロピルアミンの温度プログラムした脱着は、本明細書で調製したSSZ−23ゼオライト上での酸部位の全体的な性質及び分布を試験するために適用される。TPDスペクトルを、MKS Cirrus質量スペクトル装置(Mass Spec equipment)において熱伝導度検出器(TCD)と連結された2920Micromeritic装置で記録する。概略ダイアグラムを
図5に示す。
【0043】
NH
3−TPDについて、典型的には、0.1g触媒を、25mLmin
−1のヘリウム流のもと20℃/minの速度で、500℃で30分間前処理し、次いで、100℃の吸着温度に冷却する。触媒を、希釈アンモニア(10%アンモニア/90%アルゴン)で、100℃で30分間飽和させる。飽和させた後、サンプルを25mL/minのヘリウムで20分間パージして、ゼオライトの表面上の弱く吸着したアンモニアを除去する。次いで、ヘリウム流を25mL/minに保持しながら、サンプルの温度を20℃/minの加熱速度で100℃から650℃まで上昇させ、次いで、最終的に650℃で40分間保持する。質量分析計を用いて脱着NH
3をモニターする。
【0044】
n−プロピルアミン−TPDについて、典型的には、0.1g触媒を、25mLmin
−1のヘリウム流のもと、500℃で30分間前処理し、次いで、100℃の吸着温度に冷却する。n−プロピルアミンを入れたフラスコを60℃で加熱してn−プロピルアミン蒸気を発生させる。触媒を希釈n−プロピルアミンと一緒に添加する。サンプルが飽和されるまで添加を繰り返す。これは、等しい高さの5つのピークの存在によって証明される。飽和させた後、サンプルを25mLmin
−1のヘリウムで20分間パージして、ゼオライトの表面上の弱く吸着したアンモニアを除去する。次いで、ヘリウム流を25mLmin
−1で、サンプルの温度を20℃/minの加熱速度で100℃から650℃まで上昇させる。質量分析計を用いて脱着n−プロピルアミンをモニターする。
【0045】
NO
x転換率を、マイクロ流通反応器として働くMicromeritics2920及びサンプルを通過した後のガス濃度の分析を行うMKS残留ガス分析器を用いてテストする。サンプルを、以下のガス濃度:NO=175ppm;N0
2=175ppm;NH
3=350ppm;及び0
2=175ppmでテストする。サンプルを50,000
−1/hrの空間速度下でテストする。MKS残留ガス分析器を通して45分間一定圧力にした後、NO
x転換率数を定常状態条件から計算する。
【0046】
3つのサンプルからの脱着したアンモニアの量をそれらのTPDピーク面積により評価する(
図6)。3つのNH
3脱着ピークが存在する。約160℃でのNH
3脱着ピークは弱酸部位と関連しており、340℃での第2のピーク及び600℃超での別のピークは強酸部位と関連しており、これは、STT型ゼオライト材料のPIDC−120602の高い触媒活性を実証している。
【0047】
高温での触媒安定性及びH
2Oに対する耐性がSCR反応のための非常に重要な課題であるので、触媒性能に対する水熱熟成の効果を検討する。この熟成処理は、10重量%のH
2Oを含有する空気流中、750℃、24時間で選択される。水熱熟成されたゼオライトサンプルのアンモニア脱着プロファイルを
図7に示す。SSZ−23ゼオライトは、低い温度から中程度の温度範囲で非常に安定な活性を示し、600℃までの非常に高温での活性は著しく低下していることがわかる。
【0048】
n−プロピルアミンTPDプロファイルの結果を、それぞれ、フレッシュなサンプルについて
図8に、熟成されたサンプルについて
図9に示す。フレッシュなサンプルは160℃、360℃及び600℃で3つの脱着ピークを示しており、これは、このサンプル上のn−プロピルアミンについての3つのエネルギー的に活性なタイプの吸着部位の存在を示唆している。より高い温度脱着ピークは、n−プロピルアミンとゼオライトサンプルの表面上に存在するシラノール基とのより強い相互作用に帰する。
【0049】
NO
x転換率の結果を、それぞれ、フレッシュなサンプルについて
図11に、熟成されたサンプルについて
図12に示す。200℃と550℃の両方の温度で熟成後、NO
x転換率は低下する。このNO
x転換率における低下は、水熱熟成条件にかけられた後のサンプルの酸性度の減少に起因する活性の損失を表している。
【0050】
本発明の種々の形態の上記説明を、例示及び説明の目的で提供してきた。包括的なものにしようとするものでも、また本発明を開示される正確な形態に限定しようとするものでもない。上記教示に照らして、多くの改変形態又は変更形態が可能である。考察した形態は、本発明の原理の最高の例示及びその実際的な応用を提供し、それによって当業者が本発明を、種々の形態で、種々の改変形態を用いて、考えられる具体的な使用に適したものとして利用できるようにするために選択し、説明したものである。そうしたすべての改変形態及び変更形態は、それらが適正に、合法的に且つ公正に資格を与えられている幅にしたがって解釈した場合に、添付の特許請求の範囲によって決定されるような本発明の範囲内にある。