(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6416098
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】触媒化煤フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20181022BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20181022BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20181022BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01J23/44 A
F01N3/035 A
F01N3/08 B
【請求項の数】42
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-538576(P2015-538576)
(86)(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公表番号】特表2016-500566(P2016-500566A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】GB2013052851
(87)【国際公開番号】WO2014068321
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】1219600.2
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/721,713
(32)【優先日】2012年11月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ギャヴィン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チッフィー, アンドリュー フランシス
(72)【発明者】
【氏名】マーヴェル, デーヴィッド
【審査官】
田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−501107(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/104666(WO,A1)
【文献】
特開2008−272659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/00−53/96
B01J21/00−38/74
F01N3/035
F01N3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒化煤フィルタに入る排気ガス中の総NOxのうちのNO2のパーセントに比べて、前記触媒化煤フィルタを出る排気ガス中の総NOxのうちのNO2のパーセントを高めるためのディーゼルエンジンのための触媒化煤フィルタであって、
前記フィルタは、入口端部、出口端部、前記入口端部と前記出口端部との間に延びる基材軸方向長さ、及びウォールフロー基材の内壁によって定められる複数のチャネルを含む前記ウォールフロー基材を含み、
前記複数のチャネルは、開いた入口端部及び閉じた出口端部を有する複数の入口チャネル、並びに閉じた入口端部及び開いた出口端部を有する複数の出口チャネルを含み、
前記複数の入口チャネルの内壁の表面は、少なくとも1つの耐熱金属酸化物、安定化していてもよい希土類金属酸化物、又は少なくとも1つの耐熱金属酸化物と安定化していてもよい希土類金属酸化物の混合物、並びに、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、銀、金及びその任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの触媒活性のある金属を含む少なくとも1つの入口被膜組成物のウォッシュコートを含み、
前記少なくとも1つの入口被膜組成物は、軸方向入口被膜長さにわたって前記開いた入口端部から下流入口被膜端部まで延び、
前記軸方向入口被膜長さは、前記基材軸方向長さよりも短く、
前記複数の出口チャネルの内壁の外面は、少なくとも1つの耐熱金属酸化物、安定化していてもよい希土類金属酸化物、又は少なくとも1つの耐熱金属酸化物と安定化していてもよい希土類金属酸化物の混合物、並びに、白金及びパラジウムの触媒活性のある金属の両方を含む少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物のウォッシュコートを含み、
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物は、4−15μmの間の平均粒径(D50)を有し、且つ、軸方向出口被膜長さにわたって上流出口被膜端部から前記開いた出口端部まで延び、
前記軸方向出口被膜長さは、前記基材軸方向長さの55−90%であり、
前記軸方向出口被膜長さは、前記軸方向入口被膜長さよりも長く、
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物が、白金及びパラジウムの両方を10:1−4:1のPt:Pd重量比で含む、触媒化煤フィルタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物のD90粒径が15μmを超える、請求項1に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物中の少なくとも1つの前記触媒活性のある金属が、前記出口チャネルの内壁の前記外面上に1−150g/ft3の濃度で存在する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物中の前記耐熱金属酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ−ケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、チタニア、チタニア−シリカ及びチタニア−ジルコニアからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物中の前記少なくとも1つの耐熱金属酸化物の添加量が、0.05−1.0g/in3である、請求項4に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物中の前記希土類金属酸化物が、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム又はサマリウムの酸化物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物中の前記希土類金属酸化物の濃度が50−1000g/ft3である、請求項6に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物が、0.1−2.0g/in3のウォッシュコート添加量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物の厚さが5−80μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物が、前記複数の入口チャネルの前記内壁の外面上の少なくとも1つのオン・ウォール入口被膜組成物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのオン・ウォール入口被膜組成物が、4−15μmの間の平均粒径(D50)を有する、請求項10に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項12】
前記少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物が、15μmを超えるD90粒径を有する、請求項11に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物が、少なくとも1つのイン・ウォール被膜組成物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのイン・ウォール入口被膜組成物が、1−3μmの平均粒径(D50)を有する、請求項13に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項15】
前記少なくとも1つのイン・ウォール入口被膜組成物が、4−6μmのD90粒径を有する、請求項14に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項16】
前記軸方向入口被膜長さが、前記基材軸方向長さの10−45%である、請求項1から15のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項17】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物中の前記少なくとも1つの触媒活性のある金属が、白金、パラジウム、又は白金とパラジウムの両方の混合物である、請求項1から16のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物が、白金とパラジウムの両方を20:1−1:10のPt:Pd重量比で含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの入口被膜中の前記Pt:Pd重量比が、前記出口被膜中の前記Pt:Pd重量比未満である、請求項18に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項20】
前記少なくとも1つの触媒活性のある金属が、チャネル壁上の前記入口被膜組成物中に1−150g/ft3の濃度で存在する、請求項1から19のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項21】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物中の前記少なくとも1つの耐熱金属酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ−ケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、チタニア、チタニア−シリカ及びチタニア−ジルコニアからなる群から選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項22】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物中の前記少なくとも1つの耐熱金属酸化物の添加量が0.05−1.0g/in3である、請求項21に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項23】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物が、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム及びサマリウムの酸化物から選択される希土類金属酸化物を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項24】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物中の前記希土類金属酸化物の濃度が50−1000g/ft3である、請求項23に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項25】
前記少なくとも1つの入口被膜組成物が、0.1−2.0g/in3のウォッシュコート添加量で存在する、請求項1から24のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項26】
前記入口チャネルの内壁の前記表面上の前記被膜組成物が、前記出口チャネルの内壁の前記外面上の前記被膜組成物と同じ原料を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項27】
これらの同じ原料が、前記入口被膜組成物及び前記オン・ウォール出口被膜組成物中に同じウォッシュコート添加量で存在する、請求項26に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項28】
前記軸方向出口被膜長さが、総基材軸方向長さのパーセントで表されるとき、前記軸方向入口被膜長さよりも少なくとも10%長い、請求項1から27のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項29】
前記軸方向入口被膜長さと前記軸方向出口被膜長さを合わせたものが、前記軸方向の基材長さと実質的に等しい、請求項1から27のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項30】
各ウォッシュコートが、0.1−1000μmの平均ボイド径と共に5−80%の平均空隙率を有する、請求項1から29のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項31】
前記ウォールフロー基材が、セラミック又はセラミック様材料である、請求項1から30のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項32】
前記ウォールフロー基材が、4−40μmの平均サイズを有する表面細孔を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項33】
前記ウォールフロー基材が、35−75%の空隙率を有する、請求項1から32のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項34】
前記ウォールフロー基材が、断面1平方センチメートル当たり23.3−62.0チャネルを含み、前記ウォールフロー基材の前記内壁が、1000分の15.2−1000分の55.9センチメートルの肉厚を有する、請求項1から33のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ、及び前記触媒化煤フィルタの下流に配置される選択的触媒還元触媒を含むディーゼルエンジンのための排気システム。
【請求項36】
アンモニアをN2に酸化するための酸化触媒が、前記選択的触媒還元触媒の下流に配置される、請求項35に記載の排気システム。
【請求項37】
請求項1から34のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ、及び前記触媒化煤フィルタの下流に配置されるNOx吸収剤触媒を含むディーゼルエンジンのための排気システム。
【請求項38】
ディーゼル酸化触媒が、前記触媒化煤フィルタの上流に配置される、請求項35から37のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項39】
請求項16に従属するとき、前記触媒化煤フィルタ内の前記軸方向入口被膜長さが、前記基材軸方向長さの10−30%である、請求項38に記載の排気システム。
【請求項40】
前記排気ガスと、請求項1から34のいずれか一項に記載の触媒化煤フィルタ、又は請求項35から39のいずれか一項に記載の排気システムとを接触させることを含む、下流プロセスにNOxを含むディーゼル排気ガス中のNO2/NOx比%を高める方法。
【請求項41】
使用時は、前記触媒化煤フィルタを出る排気ガスの総NOx分中のNO2:NOの比が10:90−90:10の間である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記下流プロセスが、SCR触媒及び含窒素還元剤を用いる窒素の酸化物の前記選択的触媒還元を含む、請求項40又は41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気物質から粒子状物質(PM)、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を除去し、且つ、同時に、ディーゼルエンジンから排出される窒素の酸化物(NO
x)中の二酸化窒素(NO
2)濃度を高めて、このような窒素酸化物のより効率的な処理を可能にするディーゼルエンジン排気物質の処理のための触媒化煤フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
公衆衛生及び自然環境に悪影響がある主要な汚染物質である車両の排気ガスは、一般に、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物(NO
x)及び粒子状物質であると認識されている。
【0003】
ディーゼルエンジンは、燃料が非常に希薄な条件下、高空燃比で動く。このため、ディーゼルエンジンは、気相炭化水素及び一酸化炭素の排出レベルが低いが、その代わり、NO
x及び粒子状物質の排出レベルが、政府間機関によって定められた現行及び合意済みの将来の排出規制に対して比較的高いことが特徴である。粒子状物質の排出の抑制及びNOxの抑制は、逆の関係にあるため、ディーゼルエンジンのメーカーにとって大きな課題となっている。最近の乗用車両には、排気ガス再循環装置が含まれている。エンジンが低温で動作しているとき、エンジンが発生するNO
xは少なくなるが、粒子状物質は多くなり、その反対に高温では、燃焼がより完全になって粒子状物質の発生は少なくなるが、NO
xは多くなる。したがって、エンジン設計の変更では、効果的な捕集方法及び処理方法と組み合わせて、これらの有害な汚染物質の大気への排出を制限する必要がある。
【0004】
欧州における2014年9月1日からの排出規制(Euro6)では、ディーゼル乗用車から排出される粒子状物質の質量が、粒子測定プログラムの手順による測定で4.5mg/kmというEuro5(車両の認可について2009年9月に発効し、新型車の登録及び販売について2011年1月から適用された)で定められた許容限度が維持されている。
【0005】
しかし、Euro6については、ディーゼルエンジンを備えたすべての車両で、Euro6発効後速やかに窒素酸化物の排出を大幅に低減させることが必要になる。例えば、乗用車からの排出量の上限は、Euro5の基準と比べて50%を超える削減となる80mg/kmに設定される。さらに、ディーゼル車両からの炭化水素及び窒素酸化物を合わせた合計の排出量も削減される。例えば、これらの排出量の上限は、乗用車については、170mg/kmに設定される。
【0006】
したがって、新たなEuro6排出基準は、ディーゼル排出基準を満たすための困難な設計課題をいくつか提起している。特に、しかも、許容背圧で、例えば、EUの走行サイクルで、最大のオンサイクル背圧により測定される許容背圧で、PM汚染物質及びCOすべてに関する排出基準を満たしながら、それと同時に、フィルタ、又はフィルタを含む排気システムをどのように設計して、NO
x排出量及びNO
xと炭化水素を合わせた排出量を削減するかということである。
【0007】
雰囲気の粒子状物質は、通常、その空気動力学的粒径に基づいて以下の分類に分けられる(空気動力学的粒径は、空気中での沈降速度が測定粒子と同じ密度1g/cm
3の球体の直径と定義されている)。
(i)空気動力学的粒径が10μm未満の粒子(PM−10)
(ii)直径2.5μm未満の微粒子(PM−2.5)
(iii)直径100nm未満の超微粒子
(iv)直径50nm未満のナノ粒子
【0008】
1990年代中頃より、内燃機関から排気される粒子の粒径分布は、微粒子及び超微粒子の健康への悪影響の可能性から関心が高まってきている。環境大気中のPM−10粒子の濃度は、米国では法律により規制されている。人の死亡率と2.5μm未満の微粒子の濃度との間の強い相関関係を示した健康に関する研究の結果、PM−2.5に関する追加の新しい環境大気質基準が、米国で1997年に導入された。
【0009】
今や関心は、ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンによって発生する超微粒子及びナノ粒子を考慮することに移っており、その理由は、これらの粒子が、さらに大きなサイズの粒子よりも深く人の肺に進入すると理解されており、したがって、さらに大きな粒子よりも有害であると考えられているからである。この考えは、2.5−10.0μmの範囲の粒子を研究した知見から推定されたものである。
【0010】
ディーゼル粒子の粒径分布には、粒子の核生成と凝集機構に対応する十分に確認された双峰形の特徴があり、それぞれ核モードと累積モードと呼ばれる対応する粒子タイプがある。
【0011】
核モードでは、ディーゼル粒子は、質量がごくわずかな多数の小さい粒子から構成される。ほぼすべての核モードのディーゼル粒子は、サイズが1μmを大幅に下回り、すなわち、微粒子、超微粒子及びナノ粒子の混合物を含む。核モードの粒子の大部分が、揮発性の凝縮物(炭化水素、硫酸、硝酸など)から構成され、灰や炭素などの固形物をほとんど含まないと考えられている。
【0012】
累積モードの粒子は、凝縮物及び吸着された物質(重炭化水素、硫黄化学種、窒素酸化物誘導体など)と混合した固体(炭素、金属灰など)を含むと理解されている。粗大モード粒子は、ディーゼル燃焼方法では発生しないと考えられており、堆積、及びその後のエンジンシリンダ、排気システム又は粒子サンプリングシステムの壁からの粒子状物質の再飛散などの機構によって生成されることがある。
【0013】
核生成粒子の組成は、エンジンの運転条件、環境条件(特に温度及び湿度)、希釈条件及びサンプリングシステムの条件に伴って変わることがある。実験室での研究及び理論は、核モードの生成及び成長の大部分が低希釈率の範囲で起きていることを示している。この範囲において、重炭化水素や硫酸など、揮発性の粒子前駆体がガスから粒子へ転換すると、核モードの核生成及び成長、並びに累積モードの既存の粒子への吸着が同時に起こる。実験室での試験(例えば、SAE980525及びSAE2001−01−0201を参照)は、空気希釈温度の低下と共に、核モードの生成が非常に高まることを示しているが、湿度が影響するかどうかに関わらず相反する証拠がある。
【0014】
一般に、低温、低希釈率、多湿及び長い滞留時間が、ナノ粒子の生成及び成長に有利である。研究によれば、ナノ粒子は主に、重炭化水素や硫酸などの揮発性物質からなることが、非常に高負荷の時のみ、わずかに固体があるという証拠と共に示されている。
【0015】
ディーゼル粒子フィルタ内でのディーゼル粒子の集塵は、多孔質隔膜を用いて、ガスで運ばれる粒子を気相から分離する原理に基づいている。ディーゼル粒子フィルタは、ディープベッドフィルタ及び/又は表面型フィルタと定義することができる。ディープベッドフィルタでは、濾材の平均孔径は、捕集される粒子の平均径よりも大きい。粒子は、拡散沈着(ブラウン運動)、慣性沈着(衝突)及び流線の遮断(ブラウン運動又は慣性)を含む深層濾過の機構の組み合わせによって、濾材に堆積させる。
【0016】
表面型フィルタでは、濾材の孔径は粒子状物質の直径よりも小さいため、粒子状物質は、ふるい分けによって分離される。分離は、捕集されたディーゼル粒子状物質自体の堆積によって行われ、一般に、この堆積物は「濾過ケーク」、この方法は「ケーク濾過」と呼ばれる。
【0017】
セラミックウォールフローモノリスなどのディーゼル粒子フィルタは、深層濾過及び表面濾過の組み合わせによって機能することができると理解され、深層濾過能が飽和状態になり、粒子層が濾過表面を覆い始める高煤負荷時に濾過ケークが生じる。深層濾過は、ケーク濾過よりも濾過効率が幾分低く、圧力損失が低いことが特徴である。
【0018】
ディーゼル粒子フィルタは、粒径の範囲全体にわたり、粒子状物質の除去に極めて効果的であることが示されてきた。しかし、これらのフィルタは、圧力損失が過大になる前の粒子状物質を捕集する能力が限られているため、ディーゼル粒子フィルタを定期的に再生する必要がある。保持された粒子状物質の酸素存在下での燃焼は、ディーゼルエンジンの排気によって通常もたらされる温度よりも高い温度が必要になるため、パッシブ再生は容易には行われない。ディーゼル粒子フィルタに捕集された粒子状物質の燃焼温度を下げる効果的な方法の1つは、触媒化ウォッシュコートをフィルタ壁に添加することである。用いられる触媒化ウォッシュコートの組成物は、ディーゼル酸化触媒に用いられる組成物と同様であり、通常、少なくとも1つの白金族金属を含む。触媒化ディーゼル粒子フィルタ上の反応には、粒子状物質の燃焼がはるかに低い温度で酸素の存在下で可能になるCO及びHCの酸化、並びにNOのNO
2への酸化が含まれる。
【0019】
国際公開第2006/031600号には、ディーゼル排気ガス中のCO及びHCガス成分並びに粒子状物質を同時に処理する触媒化煤フィルタが開示されている。触媒化煤フィルタは、入口端部、出口端部、入口端部と出口端部との間に延びる基材軸方向長さ、及びウォールフロー基材の内壁によって定められる複数の流路を含むウォールフロー基材を含み、複数の流路は、開いた入口端部及び閉じた出口端部を有する入口流路、並びに閉じた入口端部及び開いた出口端部を有する出口流路を含み、入口流路の内壁は、入口端部から第1の入口被膜端部に延び、それによって第1の入口被膜長さが定まる第1の入口被膜を含み、第1の入口被膜長さは、基材軸方向長さよりも短く、出口流路の内壁は、出口端部から出口被膜端部に延び、それによって出口被膜長さが定まる出口被膜を含み、出口被膜長さは、基材軸方向長さよりも短く、第1の入口被膜長さ及び出口被膜長さの合計は、基材軸方向長さと実質的に等しく、第1の入口被膜長さによって上流ゾーンが定まり、出口被膜長さによって下流ゾーンが定まり、第1の入口被膜は、少なくとも1つの第1の入口白金族金属成分を含み、少なくとも50%の白金族金属成分は、上流ゾーン内に存在する。実施態様において、触媒化煤フィルタの入口被膜及び出口被膜のいずれも、耐熱金属酸化物、例えば、アルミナを白金族金属成分の担体として含む。入口及び出口被膜に用いられる耐熱金属酸化物の担体は、95%の粒子が、5マイクロメートル未満、好ましくは3マイクロメートル未満の直径を有するように粉砕されている。ウォールフロー基材は、60%の空隙率及び約15−25マイクロメートルの平均孔径を有することができる。また、被膜は、ウォールフロー基材の内壁の表面に薄い被膜として配置されてもよく、且つ/又は、多孔質壁にある程度浸透してもよいことも開示されている。しかし、開示されているCSFを得るためのいかなる被膜方法も開示されていない。
【0020】
国際公開第00/29726号には、寸法が直径11.25インチ×長さ14.0インチのコーニング(Corning)コーディエライトウォールフロー基材に基づき、セル密度が1平方インチ当たり100セルのCSF#6煤フィルタが開示されている。CSF#6煤フィルタは、5.0g/ft
3のPt、500g/ft
3のCeO
2及び150g/ft
3のZrO
2を用いて触媒化された。これらの成分は、可溶な前駆体を用いて、溶液含浸により煤フィルタ基材に施された。さらに、煤フィルタ基材の一端に、基材の一面から内部へ約4インチの深さ(長さ)までウォッシュコートスラリーが施された。このウォッシュコートは、Pt添加量が60.6g/ft
3相当になるように、12.4重量%のPtをγ−アルミナに含み、フィルタ基材の一端に堆積させた。したがって、CSFへの総Pt添加量は、65.6g/ft
3であった。
【0021】
ディーゼル排気システムから排出されるNO
xを、大気への放出が環境上許容される窒素へ還元するために、様々な技術が探究されてきた。HC及びNO
xから、CO
2、H
2O及びN
2への酸化を選択的に触媒する、車載ディーゼル燃料又は派生物を用いる選択的なNO
xの還元(リーンNO
x触媒)は、広範に調査され、2つの主要な候補材料が選択的な触媒として明らかにされた。しかし、文献には、このシステムが、Euro6の厳しい要件を満たすのに十分ではないであろうと考えられることが報告されている。
【0022】
リーンNO
xトラップ(NO
x吸着触媒としても知られる)では、動作がリーンモードの間、塩基性金属酸化物を用いてNO
xを吸着する。NOに富んだ排気ガスは、白金族金属含有触媒上でNO
2に転換され、NO
2は、例えば、白金族金属含有触媒内に取り込まれたアルカリ金属酸化物上で捕集及び貯蔵される。次いで、NO
2は、豊富な条件下で脱着され、同様に触媒上に取り込まれたロジウムを用いて還元される。
【0023】
SCRでは、適した触媒の存在下でアンモニアを使用し、アンモニアは、NO
xの選択的な還元剤として作用する。通常、尿素がアンモニアの供給源であり、排気システム内で約200℃で加水分解する。適した触媒には、金属交換ゼオライト、及びバナジウムと二酸化チタンの混合触媒が含まれる。この技術は、潜在的に90%を超えるNO
xを還元できる可能性があり、ディーゼルエンジンの新たな厳しいNO
x要件を満たす好適な候補と見られている。しかし、SCRは、その有効性を低減させるHC、CO及び粒子による汚染を受けやすい。さらに、多くのディーゼルエンジンでは、排気システムから排出されるNO
xの大部分がNOの形態であり、その一方で、より速いSCR反応は、NOとNO
2の混合物によって起こる。NO
2は、NOよりも反応性の高い化合物であり、より速いSCR反応により、SCRプロセスの運転温度がさらに低温に及ぶ可能性がある。しかし、NO
2の還元自体は、NO自体よりもゆっくりと起きる。したがって、NO:NO
2の混合物、特にNO:NO
2が1:1の混合物が、効率的なNO
xの還元には最も望ましい。
【0024】
国際公開第02/14657号には、SCR触媒単独よりもはるかに優れたNO
x転換性能を生み出すための、ゼオライトSCR上流の触媒化煤フィルタで構成された希薄燃焼ディーゼル用途向けの後処理システムが開示されている。触媒化煤フィルタは、フィルタ基材の内壁が、溶液含浸によって施される触媒で覆われている。本出願の技術は、触媒によって引き起こされる排気ガスの背圧の上昇を可能な限り最小限に抑えるために、基材の内壁の細孔内に触媒がかなり存在することを示唆している。触媒は、フィルタ基材の入口チャネル内壁及び出口チャネル内壁の両方の全長に沿って施されている。31ページの28−29行目には、チャネルの一部を選択的に覆うことができる場合があると述べられているが、それ以上の例示は記載されていない。
【0025】
英国特許出願公開第2481057(A)号には、酸化マンガンと少なくとも1つの白金族金属とを含む触媒組成物を用いて、触媒作用によって一酸化窒素NOを二酸化窒素NO
2に転換する工程と、NOとNO
2の混合物を、選択的触媒還元SCR触媒の存在下で含窒素還元剤と接触させることによりNOxを窒素N
2に転換する工程と、PMを濾過してNO
2中で燃焼する工程とを含む窒素酸化物NOx及び粒子状物質PMを処理する方法が開示されている。また、排気システムは、基材の一部が触媒化され、その下流にSCRを有する触媒化煤フィルタCSFを含み、基材上の触媒は、酸化マンガンと少なくとも1つの白金族金属とを含むことも特許請求の範囲に記載されている。SCR触媒がCSFから下流の基材上に配置される場合、CSFの出口ゾーンは、フィルタ基材の総軸方向長さの45%未満である。
【発明の概要】
【0026】
今回、本発明者らは、排気物質からPM、HC及びCOを除去し、且つ、同時に、ディーゼルエンジンから排出されるNO
x中のNO
2濃度を高め、例えば、下流でSCR触媒を用いて、NO
xのより効率的な処理を可能にするディーゼルエンジン排気物質の処理のための新しい触媒化煤フィルタを設計した。触媒化煤フィルタは、ウォールフロー基材に基づいており、且つ、少なくとも下流チャネルの触媒がフィルタ基材の内壁内ではなく、内壁上に十分に被膜されており、入口チャネル及び出口チャネル上の軸方向被膜長さが異なるように設計されており、その配置は、被膜添加量及び煤捕集に対して許容排気ガス背圧を維持することが明らかになっており、また、再生は、本明細書で先に議論した先行技術の触媒化フィルタなど、十分又は部分的に「イン・ウォール(in−wall)」の被膜を備えるフィルタと比べてNO
2富化が高められることも明らかになっている。
【0027】
第1の態様によれば、本発明は、触媒化煤フィルタに入る排気ガス中の総NO
xのうちのNO
2のパーセントに比べて、触媒化煤フィルタを出る排気ガス中の総NO
xのうちのNO
2のパーセントを高めるためのディーゼルエンジンのための触媒化煤フィルタを提供し、このフィルタは、入口端部、出口端部、入口端部と出口端部との間に延びる基材軸方向長さ、及びウォールフロー基材の内壁によって定められる複数のチャネルを含むウォールフロー基材を含み、複数のチャネルは、開いた入口端部及び閉じた出口端部を有する複数の入口チャネル、並びに閉じた入口端部及び開いた出口端部を有する複数の出口チャネルを含み、複数の入口チャネルの内壁の表面は、少なくとも1つの耐熱金属酸化物、安定化していてもよい希土類金属酸化物、又は少なくとも1つの耐熱金属酸化物と安定化していてもよい希土類金属酸化物の混合物、並びに、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、銀、金及びその任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの触媒活性のある金属を含む少なくとも1つの入口被膜組成物のウォッシュコートを含み、この少なくとも1つの入口被膜組成物は、軸方向入口被膜長さにわたって開いた入口端部から下流入口被膜端部まで延び、軸方向入口被膜長さは、基材軸方向長さよりも短く、複数の出口チャネルの内壁の外面は、少なくとも1つの耐熱金属酸化物、安定化していてもよい希土類金属酸化物、又は少なくとも1つの耐熱金属酸化物と安定化していてもよい希土類金属酸化物の混合物、並びに、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、銀、金及びその任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの触媒活性のある金属を含む少なくとも1つのオン・ウォール(on−wall)出口被膜組成物のウォッシュコートを含み、この少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物は、7−12μm又は8−10μmなど、4−15μmの間の平均粒径(D50)を有し、且つ、軸方向出口被膜長さにわたって上流出口端部から開いた出口端部まで延び、軸方向出口被膜長さは、基材軸方向長さの55−90%であり、軸方向出口被膜長さは、軸方向入口被膜長さよりも長い。
【0028】
本発明によるウォールフローフィルタ基材の被膜方法は、出願人の国際公開第99/47260号に開示されている方法、すなわち、(a)封じ込め手段を担体の上部に置く工程と、(b)所定の量の液体成分を上記封じ込め手段の中に、(a)の次に(b)又は(b)の次に(a)のいずれかの順序で投入する工程と、(c)圧力又は真空をかけることにより、上記液体成分を少なくとも担体の一部に引き込み、実質的にすべての上記量を担体内に保持する工程とを含むモノリシック担体の被膜方法、及び国際公開第2011/080525号に開示されている方法、すなわち、(i)ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に保持する工程と、(ii)所定の体積の液体を基材の下端でチャネルの開いた端部を介して基材に導入する工程と、(iii)導入された液体を基材内に密封しながら保持する工程と、(iv)保持された液体を含む基材を反転する工程と、(v)反転された基材の下端で基材のチャネルの開いた端部に真空をかけて、基材のチャネルに沿って液体を引き込む工程とを含む複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体で被膜する方法を含む。
【0029】
モノリス基材におけるウォッシュコートの位置は、いくつかの要素の影響を受ける可能性がある。このような要素の1つは、ウォッシュコートの水分である。ごく一般的には、ウォッシュコート中の固形分が多いほど、固体の輸送に利用できるキャリア媒体は少なくなり、ウォッシュコートは、横に、すなわち、多孔質壁内に移動するよりも、直線的に、すなわち、基材モノリスの壁面上及び壁面に沿って被膜される可能性が高い。
【0030】
同様の理由により、モノリス基材の空隙率の選択も、ウォッシュコートの位置に影響を与える可能性がある。一般に、所与のウォッシュコートに対して、基材モノリスの空隙率が大きいほど、液体キャリアが動く空間は大きくなるため、液体キャリアは、ウォッシュコート中の固体からより容易に除去されることがあり、固体は、優先的に壁面に位置することがある。
【0031】
また、ウォッシュコート中のキャリア媒体が、ウォッシュコートの固体の多孔質壁内への輸送に利用できるかは、レオロジー改質剤の影響も受ける可能性がある。レオロジー改質剤、すなわち、キサンタンガムなどの増粘剤は、被膜の間にキャリア媒体がどれほど動きやすいかに影響を与える。レオロジー改質剤の添加により粘度が上昇した、比較的より粘性のあるウォッシュコートは、モノリス基材の壁面に留まる可能性が高く、その理由は、キャリア媒体はウォッシュコート中に優先的に縛られ、ウォッシュコートの固体の多孔質壁内への輸送に利用されにくいためである。
【0032】
また、ウォッシュコートの固体の位置は、平均粒径(体積)(D50としても知られる)により、又はD90(ウォッシュコート中の90%の粒子が下回る粒径)により表されるウォッシュコートの粒径の影響も受ける可能性がある。一般に空隙率「x」及び平均孔径「y」を有する所与のフィルタにおいて、ウォッシュコートの粒径が小さいほど、ウォッシュコートの固体が多孔質壁内に輸送される可能性が高くなる。
【0033】
また、フィルタ特性の選択も位置に影響を与える可能性がある。したがって、前述のように、空隙率が低下すると、一般に、イン・ウォールの被膜よりもオン・ウォールに傾く。また、前述のように、所与の固形分「a」、平均体積粒径「b」、体積D90「c」及びレオロジー「d」を有するウォッシュコートについては、モノリス基材の平均孔径を大きくすることにより、ウォッシュコートがこれらの多孔質壁に入り込む可能性が高くなる。
【0034】
本明細書において、「D50」又は「D90」、あるいは粒子ウォッシュコート成分の粒径への同様の言及は、マルバーン製Mastersizer2000を用いるレーザー回折粒径分析に関し、これは、体積に基づく手法(すなわち、D50及びD90は、D
V50及びD
V90(又はD(v,0.50)及びD(v,0.90)とも呼ばれることがある)であり、数学的なMie理論モデルを適用して粒径分布を求める。希釈ウォッシュコートサンプルは、超音波処理により、界面活性剤なしで蒸留水中、30秒間、35ワットで調製すべきである。
【0035】
出口チャネルの内壁面は、出口端部から出口被膜端部に延びる少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物を含み、軸方向出口被膜長さは、基材軸方向長さよりも短い。「オン・ウォール」により、被膜組成物が内壁の表面を十分に被膜しており、内壁の細孔には十分に浸透していないことが意味される。先の議論に加えて、オン・ウォール被膜多孔質フィルタ基材の製造方法は、ポリマーを多孔質構造に導入する工程と、ウォッシュコートを基材及びポリマーに施す工程と、続いて、被膜した基材を乾燥及びか焼してポリマーを完全に燃焼させる工程とを含む。また、方法には、ウォッシュコート粒子の粒径が基材の孔径に近くなるように、又は基材の孔径よりも大きくなるように制御する工程も含む。このような方法には、粉砕、及び化学添加剤の添加による粒子凝集が含まれる。したがって、実施態様において、少なくとも1つの出口被膜組成物のウォッシュコート添加のD50は、5−12μm又は7−10μmなど、4−15μmの間である。更なる実施態様において、少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物のD90粒径は、18−40μmなど、15μmを超え、例えば、20−35μm又は25−30μmである。特定の実施態様において、D50粒径は5μmであり、対応するD90は約15μmである。別の実施態様において、D50粒径が7−10μm、例えば、7−8μmである場合、D90粒径は約20μmである。
【0036】
軸方向出口被膜長さは、基材軸方向長さよりも短く、基材軸方向長さの55−90%であり、より好ましくは基材軸方向長さの60−85%である。軸方向出口被膜長さは、軸方向入口被膜長さよりも長い。例えば、軸方向出口被膜長さは、総基材軸方向長さのパーセントで表されるとき、軸方向入口被膜長さよりも少なくとも10%長くすることができる。実施態様において、軸方向入口被膜長さと軸方向出口被膜長さを合わせたものは、軸方向基材長さと等しい。
【0037】
少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物は、少なくとも1つの触媒活性のある金属を触媒として含む。少なくとも1つの触媒活性のある金属は、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、銀、金及びその任意の2つ以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、白金、パラジウム又はこれらの混合物である。特に好ましいのは、白金とパラジウムの混合物であり、その理由は、パラジウムは、白金の焼結を防止又は低減するためである。NOからNO
2への酸化を促進し、それによってNO
2:NO
x比を高めるために、Ptに富んだ20:1−1:1などのPt:Pd重量比、任意選択的には15:1−2:1が非常に好ましく、10:1−4:1が最も好ましい。
【0038】
少なくとも1つの触媒活性のある金属は、出口壁上に1−150g/ft
3、より好ましくは5−100g/ft
3の濃度で存在することができる。少なくとも1つの出口被膜組成物は、耐熱金属酸化物を含むことができ、これは、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ−ケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、チタニア、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア及びチタニア−アルミナからなる群から選択することができる。このような耐熱金属酸化物の濃度は、0.05−1.0g/in
3、より好ましくは0.1−0.8g/in
3の範囲が可能である。本発明における使用のための耐熱金属酸化物は、少なくとも20m
2/g、例えば、少なくとも50m
2/gのBET表面積を有することができる。
【0039】
実施態様において、少なくとも1つの出口被膜組成物は、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム及びサマリウムの酸化物から選択される安定化していてもよい希土類金属酸化物を含んでもよい。セリウムの酸化物が特に好ましい。好ましい希土類金属酸化物安定剤には、ジルコニウムが含まれる。このような希土類金属酸化物が存在する場合、濃度は、50−1000g/ft
3、より好ましくは100−600g/ft
3の範囲を取る。本発明における使用のためのこのような希土類金属酸化物が存在する場合、これは、少なくとも20m
2/g、例えば、少なくとも50m
2/gのBET表面積を有することができる。
【0040】
別の実施態様において、少なくとも1つの出口被膜組成物は、少なくとも1つの耐熱金属酸化物と安定化していてもよい希土類金属酸化物との組み合わせを含んでもよい。
【0041】
少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物は、好ましくは、0.1−2.0g/in
3、より好ましくは0.2−1.0g/in
3のウォッシュコート添加量で存在する。
【0042】
実施態様において、少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物の厚さは、5−80μm、好ましくは10−50μmである。
【0043】
実施態様において、少なくとも1つの入口被膜組成物は、複数の入口チャネルの内壁の外面の少なくとも1つのオン・ウォール入口被膜組成物にすることができ、又は、少なくとも1つのイン・ウォール被膜組成物にすることができる。
【0044】
少なくとも1つの入口被膜組成物が、複数の入口チャネルの内壁の外面の少なくとも1つのオン・ウォール入口被膜組成物である実施態様において、少なくとも1つのオン・ウォール入口被膜組成物は、5−12μm又は7−10μmなど、4−15μmの間の平均粒径(D50)を有することができる。実施態様において、少なくとも1つのオン・ウォール出口被膜組成物は、18−40μmなど、15μmを超えるD90粒径を有し、例えば、20−35μm又は25−30μmである。特定の実施態様において、D50粒径は5μmであり、対応するD90は約15μmである。別の実施態様において、D50粒径が7−10μm、例えば、7−8μmである場合、D90粒径は約20μmである。
【0045】
あるいは、少なくとも1つの入口被膜組成物が、少なくとも1つのイン・ウォール被膜組成物である実施態様において、少なくとも1つのイン・ウォール入口被膜組成物は、1−3μmの平均粒径(D50)を有する。このような実施態様において、少なくとも1つのイン・ウォール入口被膜組成物は、4−6μmのD90粒径を有する。
【0046】
軸方向入口被膜長さは、基材軸方向長さと軸方向出口被膜長さのどちらよりも短い。好ましくは、軸方向入口被膜長さは、基材軸方向長さの10−45%であり、より好ましくは基材軸方向長さの15−40%である。実施態様において、軸方向入口被膜長さは、基材軸方向長さの10−30%である。
【0047】
少なくとも1つの入口被膜組成物は、少なくとも1つの触媒活性のある金属を含む。少なくとも1つの触媒活性のある金属は、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、金、銀及びその任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される。少なくとも1つの触媒活性のある金属は、より好ましくは、白金、パラジウム、又は、最も好ましくは、白金とパラジウム両方の混合物である。パラジウムの存在により、白金成分の焼結を低減することができる。本発明によれば、入口被膜組成物がNOをNO
2に酸化することはあまり重要ではなく、その理由は、出口被膜組成物が、この目的のために設計されているためである。したがって、煤の燃焼に寄与する触媒組成物は、入口被膜組成物、例えば、ジルコニウムを用いて安定化した酸化セリウムなど、安定化していてもよい希土類金属酸化物を含む組成物に好ましいが、入口被膜組成物上で生成されるNO
2の一部は、入口チャネル内で捕集された煤をパッシブ燃焼した後に、NOに逆に還元されてもよい(NO
2+C→NO+CO)。しかし、入口被膜組成物中のNO酸化に寄与する触媒組成物は、出口被膜組成物中のPt:Pd重量比を低減することができる。したがって、入口被膜組成物に適したPt:Pd重量比は、15:1−1:2のような、20:1−1:10のPt:Pd重量比など、出口被膜組成物のものよりも小さく、最も好ましくは10:1−2:1である。
【0048】
少なくとも1つの触媒活性のある金属は、入口壁上に1−150g/ft
3、より好ましくは5−100g/ft
3の濃度で存在することができる。
【0049】
少なくとも1つの入口被膜組成物は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ−ケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、チタニア、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア及びチタニア−アルミナからなる群から選択される耐熱金属酸化物を含んでもよい。このような耐熱金属酸化物が存在する場合、濃度は、0.05−1.0g/in
3、より好ましくは0.1−0.8g/in
3の範囲を取る。このような耐熱金属酸化物が存在する場合、これは、少なくとも20m
2/g、例えば、少なくとも50m
2/gのBET表面積を有する。
【0050】
代替の実施態様において、少なくとも1つの入口被膜組成物は、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム及びサマリウムの酸化物から選択される安定化していてもよい希土類金属酸化物を含んでもよい。セリウムの酸化物が特に好ましい。好ましい希土類金属酸化物安定剤には、ジルコニウムが含まれる。このような希土類金属酸化物が存在する場合、濃度は、50−1000g/ft
3、より好ましくは100−600g/ft
3の範囲を取ることができ、これらは、少なくとも20m
2/g、例えば、少なくとも50m
2/gのBET表面積を有する。
【0051】
別の実施態様において、少なくとも1つの入口被膜組成物は、少なくとも1つの耐熱金属酸化物と安定化していてもよい希土類金属酸化物の両方の組み合わせを含んでもよい。
【0052】
少なくとも1つのオン・ウォール入口被膜組成物は、好ましくは0.1−2.0g/in
3、より好ましくは0.2−1.0g/in
3のウォッシュコート添加量で存在する。
【0053】
1つの実施態様において、入口壁上の被膜組成物は、出口壁上の被膜組成物として、同じ原料を含む。1つのシナリオにおいて、これらの同じ原料は、各被膜組成物中に同じ濃度で存在する。
【0054】
すべての実施態様において、ウォッシュコートの表面空隙率は、その中にボイドを含むことによって大きくすることができる。本明細書において、「ボイド」により、固形ウォッシュコート材料によって定められる層内に存在する空間を意味する。ボイドには、どのような空孔(vacancy)、微孔(fine pore)、トンネル状態(tunnel−state)、スリットも含まれ、多孔質基材上の被膜のためのウォッシュコート組成物中に、被膜した多孔質フィルタ基材のか焼中に燃焼される材料、例えば、細断した綿、あるいは、分解又は燃焼時にガスが生成することにより作られる細孔を生じさせる材料を含むことにより導入することができる。ウォッシュコートの平均的なボイドは、5−80%で、0.1−1000μmの平均ボイド径を備えることができる。ボイドの含有は、被膜がオン・ウォールであるときに、背圧が上昇すると補正するよう利用される。
【0055】
本発明における使用のためのウォールフロー基材は、好ましくは、セラミック又はセラミック様材料から、あるいは耐熱金属から構成される。セラミック又はセラミック様材料の例には、コーディエライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア又はケイ酸ジルコニウムが含まれる。耐熱金属の例には、ステンレス鋼が含まれる。最も好ましくは、ウォールフロー基材は、セラミック又はセラミック様材料、特にコーディエライト及び炭化ケイ素から構成される。
【0056】
ウォールフロー基材は、平均孔径の表面細孔を有する多孔質基材である。平均孔径は、水銀ポロシメトリーにより測定することができる。平均孔径は、4−40μm、例えば、6−35μm、7−30μm又は9−25μmである。空隙率は、多孔質基材におけるボイド空間のパーセントの単位であり、排気システムにおいて背圧に関係する。一般に、空隙率が低いほど、背圧が高くなる。本発明のセラミック又はセラミック様材料は、35−75%、好ましくは38−70%、特に40−65%の空隙率を有する。
【0057】
ウォールフロー基材は、基材の長軸に沿って延びる複数の実質的に平行な細いガス流チャネルを有する。各チャネルは、基材の一端がふさがれており、チャネルは一つおきに、基材の反対側の端がふさがれている。ウォールフロー基材は、断面で1平方インチ当たり最大500チャネル(セル)(cpsi)含んでもよい。好ましくは、基材は、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形又は六角形にすることができる断面で150−400cpsiを有する。好ましくは、断面は正方形である。基材は、6−22ミル(1インチの1000分の1)、好ましくは8−18ミルの肉厚を有することができる。
【0058】
触媒化煤フィルタを出るNO
x排気ガスは、触媒化煤フィルタに入るNO
xガスと比べて、NO
2のパーセントが高くなる。触媒化煤フィルタに入るときのNO
2:NOの比は、通常、ディーゼルエンジンからの排気物質については、5:95−40:60の間である。触媒化煤フィルタを出るときのNO
2:NOの比は、入口に入る比に比べて高く、好ましくは10:90−90:10、30:70−70:30など、最も好ましくは40:60−60:40の間である。これは、先に記述した速いNOx還元反応を促進するために、NO
2:NOは1:1の比が好ましいためである。
【0059】
理論によって制限されることは本意ではないが、入口被膜及び出口オン・ウォール被膜を注意深く選び、且つ配置することにより、ディーゼルエンジンから排出される実質的にすべての煤/PMが、入口壁上のウォールフローフィルタ基材とオン・ウォール入口被膜の両方により捕集されることになると考えられる。入口壁上の触媒被膜組成物は、ディーゼルエンジンから排出されるNOの一部をNO
2に酸化する。フィルタのパッシブ再生は、NO
2の存在下で行われる。再生プロセスの間、粒子状物質は酸化され、NO
2は逆にNOに転換される。このNO及びあらゆる残留NO
2は、多孔質基材を通過し、NOの一部がNO
2に酸化される出口壁被膜を通過する。出口壁上には無視できるPMがあるため、このNO
2は、いかなるそれ以上のパッシブ再生のためにも必要とされず、残留NOと共に出口壁を通過する。したがって、システムを出るNO
xは、システムに入るNO
xよりも、NO
2のパーセントが高い。また、被膜組成物は、排気から放出される少量のCO及びHCも酸化する。CO及びHCは、NOよりも優先的に酸化される。したがって、出口被膜組成物に入口被膜組成物よりも高いPt:Pd重量比を適用することにより、NO酸化はより効率的に起こるが、その理由は、ずっと少ないHC、CO及びPMが、触媒化煤フィルタの出口チャネル中に存在する排気ガス中に存在するためである。入口被膜組成物上で、より高いPt:Pd重量比でNO酸化活性を促進することは、白金及びパラジウムなどの高価な貴金属の効率の悪い使い方である。
【0060】
先に議論した通り、SCRでは、適した触媒の存在下でNO
xの選択的な還元剤として作用するアンモニアを使用する。処理としてSCRは、その有効性を低減させるHC、CO及びPMによる汚染を受けやすい。しばしば、排気システムから排出されるNO
xの大部分はNOであるが、一方で、SCR反応の速い反応速度は、50:50の比のNOとNO
2の組み合わせによることが過去に示されている。NO
2は、NO
xからの反応性の高い化合物であり、したがって、NO
2が存在すると、SCRの運転温度がさらに低温に及ぶ可能性がある。
【0061】
本発明の触媒煤フィルタによるディーゼルエンジンからの排気ガスの処理は、PM、HC及びCOを除去し、且つ、エンジンから排出されるNO
x中のNOの一部をNO
2に転換することができる。したがって、触媒煤フィルタから排出される排気ガスは、SCR反応を促進し、それによって、NO
xを低減し、且つ、より厳しいEuro6のNO
x排出規制を満たすことができる。
【0062】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の触媒化煤フィルタ、及び触媒化煤フィルタの下流に配置される選択的触媒還元触媒を含むディーゼルエンジンのための排気システムを提供する。
【0063】
アンモニアは、通常、SCR反応において還元剤として用いられる。第2の態様による排気システムは、好ましくは、SCR触媒の上流で排気ガスに還元剤前駆体を導入するための手段を使用時は含む。例えば、尿素水は通常、還元剤前駆体として用いられ、SCR触媒の上流でノズルを介して排気ガスに噴霧されてもよい。次いで、尿素水は、熱的又は加水分解的に分解され、アンモニアを遊離する。好ましい実施態様において、還元剤前駆体をSCR触媒の上流で排気ガスに導入するための手段には、尿素の入ったタンクなど、アンモニアの供給源が含まれる。
【0064】
好ましい実施態様において、SCR触媒は、フロースルー基材上に被膜される。本発明におけるSCR触媒と共に使用するためのフロースルー基材は、好ましくは、セラミック又はセラミック様材料から、あるいは耐熱金属から構成される。セラミック又はセラミック様材料の例には、コーディエライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア又はケイ酸ジルコニウムが含まれる。耐熱金属の例には、ステンレス鋼が含まれる。最も好ましくは、フロースルー基材は、セラミック又はセラミック様材料、特にコーディエライト及び炭化ケイ素から構成される。
【0065】
フロースルー基材は、好ましくは、基材を軸方向に通り、且つ、基材全体にわたり、すなわち、開いた入口端部から開いた出口端部まで延びる小さくて肉厚の薄い平行なチャネルを複数備えるハニカム構造を有するフロースルーモノリスである。基材のチャネル断面は、どのような形状でもよいが、好ましくは、正方形、正弦曲線、三角形、長方形、六角形、台形、円形又は楕円形である。
【0066】
SCR触媒は、好ましくは、二酸化チタン、五酸化バナジウム、三酸化タングステン、三酸化モリブデン、二酸化ケイ素、ゼオライト、Fe又は好ましくはCuなどのベース金属成分と組み合わせた、例えば、イオン交換されたゼオライト、及びその組み合わせを含む。特に好ましいSCR触媒には、銅交換CHAゼオライトが含まれる。
【0067】
SCR触媒組成物は、少なくとも0.5g/in
3、好ましくは1.0−3.0g/in
3の濃度で被膜することができる。
【0068】
SCR触媒は、排気ガス中に含まれるNO
xを選択的に低減及びパージし、窒素と水に変えるが、これらは環境への影響が少ない。
【0069】
本発明による排気システムの更なる実施態様において、酸化触媒は、SCR触媒の下流に配置され、アンモニアが通過しないようにする。「下流」により、酸化触媒が、SCR触媒のフロースルー基材の後縁上に被膜されているか、又は、酸化触媒が、SCR触媒から分離した基材モノリス上に被膜されていることを本発明者らは意味する。
【0070】
代替の実施態様において、本発明の第2の態様は、本発明の触媒化煤フィルタ、及び触媒化煤フィルタの下流に配置されるリーンNO
xトラップ(LNT)触媒を含むディーゼルエンジンのための排気処理システムを提供する。
【0071】
典型的なLNT触媒は、フロースルーモノリス基材上に被膜される。LNT触媒は、通常、NO
xの貯蔵/捕集のためのNO
x吸着剤、通常はアルカリ土類金属酸化物、及び酸化/還元触媒を含む。酸化/還元触媒は、一般に、1つ以上の貴金属、好ましくは白金、パラジウム及び/又はロジウムを含む。通常、白金は酸化機能を果たすために含まれ、ロジウムは還元機能を果たすために含まれる。
【0072】
本発明の更なる実施態様において、ディーゼル酸化触媒(DOC)は、本発明の第1の態様の触媒煤フィルタの上流に配置される。
【0073】
DOC組成物は、通常、耐熱金属酸化物上に分散させた少なくとも1つの白金族金属、還元可能な金属酸化物、又は担体としてその2つ以上の任意の組み合わせを含む。このようなDOCは、帯状配置、すなわち、第1のDOC触媒組成物の第1の上流ゾーン及び第2のDOC触媒組成物の第2の下流ゾーン、又は層状配置のいずれかに、1つ以上の触媒被膜組成物を上に堆積させてもよいセラミック又は金属モノリス基材上に生成される。
【0074】
この実施態様において、DOCは、排気物質が触媒化煤フィルタに入る前に、ディーゼルエンジンから排出されるNO
x中に存在するNOをNO
2に酸化することができる。したがって、この実施態様において、入口被膜長さは、触媒煤フィルタ内で、例えば、基材軸方向被膜長さの10−30%に大幅に減らすことができる。
【0075】
別の態様によれば、本発明は、下流プロセスにNO
xを含むディーゼル排気ガス中のNO
2/NO
x比%を高める方法を提供し、この方法は、排気ガスと、本発明の第1の態様による触媒化煤フィルタ、又は本発明の第2の態様による排気システムとを接触させる工程を含む。
【0076】
好ましい実施態様において、下流プロセスは、SCR触媒及び含窒素還元剤を用いる窒素の酸化物の選択的触媒還元を含む。
【0077】
本発明がより十分に理解されるために、これから以下の実施態様及び実施例を、例示のみのために以下の添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】触媒煤フィルタへの煤添加量を増やしたときに、本発明の触媒煤フィルタ(触媒被膜組成物の大部分が出口壁上にある)及び比較例の触媒煤フィルタ(触媒被膜の大部分が入口壁上にある)から排出されるNO
x中のNO
2のパーセントを経時的に示すグラフである。
【
図2】触媒被膜組成物がオン・ウォールである本発明による触媒煤フィルタ(CSF)、及び触媒被膜組成物がイン・ウォールである比較例の触媒煤フィルタから排出されるNO
x中のNO
2のパーセントを示すグラフである。いずれの場合も、触媒煤フィルタの上流に配置される分離したモノリス基材にDOCが被膜されている。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図3を参照すると、開いた入口チャネル端部から総軸方向基材長さの35%にわたって軸方向に延びるPt/Pd入口チャネル被膜、及び開いた出口チャネル端部から65%にわたって延びる、入口チャネルと同じPt/Pd被膜の軸方向出口チャネル被膜を有する本発明による触媒化煤フィルタ8を含む本発明によるディーゼルエンジンのための排気システム40が示されている。触媒化煤フィルタの出口端部の下流は、含窒素還元剤(アンモニアの化学命名法、すなわち、NH
3で表されている)、例えば、アンモニア前駆体尿素を、SCR触媒6の上流で排気ガスに注入するための手段である。SCR触媒6は、CuCHA SCR触媒であり、フロースルー基材モノリス上に被膜されている。SCR触媒を含むフロースルー基材モノリスの出口表面は、CuCHA触媒の下の層に配置される3g/ft
3のPt/アルミナ触媒など、SCR触媒を通過するNH
3をN
2に酸化するための触媒を含むことができる。SCRフロースルー基材モノリスの下流端部から排出される排気ガスは、テールパイプ5で大気に排出される。
【実施例】
【0080】
実施例1
本発明による触媒化煤フィルタを、1平方インチ当たり300セル(cpsi)、空隙率58%、孔径22μmの直径5.66インチ(14.38cm)、長さ8インチ(20.32cm)の炭化ケイ素ウォールフロー基材を被膜することにより調製した。確立されたCSF被膜技術を用いて、被膜の80%を出口チャネルの出口端部から基材の軸方向長さの80%にわたって施し、被膜の20%は、入口チャネルの入口端部から基材の軸方向長さの20%にわたっていた。被膜スラリーは、アルミナキャリア上に担持された白金及びパラジウムを10:1の重量比で含んでいた。次いで、フィルタを空気中、750℃で5時間、オーブン老化させた。
【0081】
白金/パラジウムは、10g/ft
3の濃度で存在しており、オン・ウォール被膜組成物は、入口と出口の両方について、0.55g/in
3のウォッシュコート添加量、10μm以下のD50を有する。
【0082】
実施例2
比較例の触媒化煤フィルタを、実施例1で用いた同じ炭化ケイ素ウォールフロー基材を実施例1に記載の同じ被膜を用いて被膜することにより調製した。ただし、被膜の80%を入口チャネルの入口端部から入口チャネルの基材の軸方向長さの80%にわたって施し、被膜の20%を出口チャネルの出口端部から基材の軸方向長さの20%にわたって施したという点を除く。
【0083】
実施例3
硫黄分50ppmのディーゼル燃料を用いて、10時間にわたり過渡的な周期(transient cycle)を繰り返して動作させながら、触媒化煤フィルタの最高入口温度は約310−315℃で、2.0リットルターボチャージャー付きディーゼルベンチエンジンからの排気物質に、実施例1及び実施例2の両方の触媒化煤フィルタを暴露した。
【0084】
図1は、実施例1及び実施例2の触媒化煤フィルタから排出されるNO
x中のNO
2のパーセントを示している。実施例1について示されている結果から、被膜組成物がほとんど出口壁上に存在するとき、触媒化煤フィルタを出るNO
x中のNO
2のパーセントがより高くなることが明らかである。さらに、触媒化煤フィルタを出るNO
2のパーセントは、被膜組成物がほとんど入口壁上に存在しているときよりもはるかに安定している。
【0085】
図1は明らかに、本発明の触媒化煤フィルタを出るディーゼル排気ガスは、例えば、下流SCR触媒によるNO
x排気ガスの効果的な処理にとって、総NO
xのうち、NO
2/NOが好ましい組成になっていることを示している。
【0086】
実施例4
本発明による触媒化煤フィルタを、300cpsi、空隙率42%、孔径14μm、体積3.0リットルの炭化ケイ素ウォールフロー基材を、アルミナ被膜組成物上に担持された重量比10:1の白金/パラジウムで被膜することにより調製した。次いで、フィルタを空気中、750℃で10時間、オーブン老化させた。
【0087】
白金/パラジウムは、入口端部から入口チャネル壁の軸方向長さの30%に、50g/ft
3の濃度で存在しており、0.35g/in
3のウォッシュコート添加量、7−8μmの間のD50を有する。出口チャネル壁は、出口端部からそれらの軸方向長さの70%に沿って、50g/ft
3の濃度の白金/パラジウム被膜組成物で被膜されており、0.20g/in
3のウォッシュコート添加量、7−8μmの間のD50を有する。
【0088】
実施例5
ディーゼル酸化触媒を、直径4.66インチ(11.84cm)、長さ5.7インチ(14.48cm)のセラミックフロースルー基材を、アルミナ被膜組成物上に担持された重量比2:1の白金/パラジウムで被膜することにより調製した。次いで、ディーゼル酸化触媒を空気中、750℃で25時間、オーブン老化させた。
【0089】
白金/パラジウムは、60g/ft
3の濃度で存在しており、3.1g/in
3のウォッシュコート添加量を有する。
【0090】
実施例6
比較例の触媒化煤フィルタを、実施例1の炭化ケイ素ウォールフロー基材を、アルミナ被膜組成物上に担持された重量比10:1の白金/パラジウムで被膜することにより調製した。入口チャネルを、被膜組成物の80%で、入口チャネルの入口端部から基材の軸方向長さの80%にわたって被膜し、被膜組成物の20%を、出口端部から基材の軸方向長さの20%にわたって被膜した。次いで、フィルタを750℃で10時間、オーブン老化させた。
【0091】
白金/パラジウムは、入口及び出口被膜組成物の両方について、50g/ft
3の濃度で存在しており、0.35g/in
3のウォッシュコート添加量、約2.5μmのD50を有していた。2.5μmのD50は、イン・ウォール被膜であることを示している。
【0092】
実施例7
実施例4及び実施例6の両方の触媒化煤フィルタを、2.4リットルターボチャージャー付きディーゼルベンチエンジン試験からの排気物質に暴露した。両方の場合において、実施例5のDOCを触媒煤フィルタの上流に配置した。エンジンを、25℃の間隔で225℃から400℃まで温度を連続して上昇させるように動作させ、各温度に上昇した後、各工程で10分間温度を保持した。排気ガス測定値をCSFの下流で温度の各点で記録した。結果を
図2に示す。
【0093】
図2では、比較例の実施例6(図中、「参照」と表示)の触媒化煤フィルタを含む排気システムは、実施例4の本発明による触媒化煤フィルタを含む排気システムと比較して、約350℃までNO
2/NO
x比%が低いことを示している。約350℃以上では、NOのNO
2への酸化は、当分野において周知の通り、熱力学的に制限されている。高いNO
2/NO
x比%が必要な用途には、実施例6の煤フィルタを含む排気システムが好ましいということになる。
【0094】
どのような誤解も避けるために、本明細書において引用したあらゆるすべての先行技術文書の内容の全体が、出典明示により本明細書に援用される。