(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
接着性コポリマーは、a)ペンダントアルコキシシラン基を有する置換イソブチレンコポリマー、b)粘着付与剤、及びc)任意選択の非官能化ポリ(イソブチレン)ポリマーを含む。一態様において、感圧接着剤は、イソブチレンと、ペンダントアルコキシシラン基を有する少なくとも1種のモノマーとの内部重合された反応生成物を含む。
【0023】
ペンダントアルコキシシラン基を有する置換イソブチレンコポリマーは、次の一般式で表すことができる。
【0024】
【化1】
(式中、aは、少なくとも20であり、bは、少なくとも1であり、cは0であってよく、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、任意選択により1つ又は2つ以上の鎖状酸素原子を含有する、1〜10個の炭素原子の多価の飽和若しくは不飽和アルキレン又はアリーレン、好ましくは飽和アルキレンであり、
各R
3は、アルキル基又はアリール基あり、xは1〜3であり、qは1又は2である)。
【0025】
下付き文字のbは、アルコキシシラン基で置換されたイソプレン又はブタジエン繰り返し単位の一部分を表し、下付き文字のcは、非置換イソプレン又はブタジエン単位を表す。
【0026】
更に、式Iに関して、下付き文字「b」及び「c」は、コポリマーが1〜20重量%の各モノマー単位を含むように選択され、例えばb及びcは、シロキサン含有モノマー単位がコポリマーの1〜20重量%を構成するような値である。典型的には、イソブチレンコポリマーの繰り返し単位の1〜5%が、アルコキシシラン基で置換される。
【0027】
sは、大部分のイソブチレンと少量のイソプレンのコポリマーであり、例えば、商品名VISTANEX(Exxon Chemical Co.)及びJSR BUTYL(Japan Butyl Co.,Ltd.)として入手可能なブチルゴムである。いくつかの実施形態において、コポリマーとして、ペンダント不飽和基を含むようにその後変性されてもよい、ブタジエンを有する大部分がイソブチレンのコポリマーも挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、コポリマーの混合物が使用されてもよく、すなわち、第1のポリイソブチレンは、イソブチレンのホモポリマーを含み、第2のポリイソブチレンは、ブチルゴムを含むか、又は第1のポリイソブチレンは、ブチルゴムを含み、第2のポリイソブチレンは、その後変性されるイソブチレンのコポリマーを含む。イソブチレンホモポリマーと変性ポリ(イソブチレン)とのブレンドもまた、企図される。
【0029】
式Iのコポリマーは、一般に、イソブチレン/イソプレン又はイソブチレン/ブタジエンコポリマーへのメルカプトシランのフリーラジカル付加によって調製される。メルカプトシランは、以下の式を有する。
【0030】
【化2】
(式中、
R
2は、q+1の原子価を有する多価の飽和若しくは不飽和アルキレン又はアリーレンであり、各R
3は、アルキル基又はアリール基であり、xは1〜3であり、qは1又は2である)。
【0031】
有用なチオシランとしては、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(メルカプトメチル)メチルジエトキシシランが挙げられる。
【0032】
不飽和ブチレンコポリマーへのメルカプトシラン(III)の付加は、フリーラジカル反応開始剤を使用して達成することができる。有用なフリーラジカル反応開始剤としては、無機及び有機の過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、アゾ化合物、還元系(例えばK
2S
2O
8とNa
2S
2O
5の混合物)、及びフリーラジカル光反応開始剤、例えばK.K.Dietlikerにより、Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings,Inks & Paints,Volume 3,Pages 276〜298,SITA Technology Ltd.,London(1991)に記載されるものが挙げられる。代表的な例としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルベンゾアート、クメンヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、(VAZO 67)及びアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)が挙げられる。当業者は、反応開始剤の選択は、具体的な反応条件、例えば、溶媒の選択に応じて決定されることを理解するだろう。
【0033】
本開示の硬化性組成物は、任意選択により、非官能性イソブチレン(コ)ポリマーを更に含む。非官能化イソブチレン(コ)ポリマー合成ゴムは、一般に、ポリイソブチレン主鎖又は側鎖を有する樹脂である。いくつかの実施形態では、イソブチレン(コ)ポリマーは、イソブチレンの実質的ホモポリマー、例えば、商品名OPPANOL(BASF AG)及びGLISSOPAL(BASF AG)として入手可能なポリ(イソブチレン)樹脂である。いくつかの実施形態において、イソブチレン(コ)ポリマー樹脂は、イソブチレンのコポリマー、例えば、イソブチレンが別のモノマーと共重合している合成ゴムを含む。合成ゴムとしては、大部分のイソブチレンと少量のイソプレンのコポリマーであるブチルゴム、例えば、商品名VISTANEX(Exxon Chemical Co.)及びJSR BUTYL(Japan Butyl Co.,Ltd.)として入手可能なブチルゴムが挙げられる。合成ゴムはまた、大部分のイソブチレンとn−ブテン又はブタジエンとのコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、イソブチレンホモポリマーとブチルゴムとの混合物を用いてもよく、すなわち、第1のポリイソブチレンはイソブチレンのホモポリマーを含み、第2のポリイソブチレンはブチルゴムを含む、又は第1のポリイソブチレンはブチルゴムを含み、第2のポリイソブチレンはイソブチレンのホモポリマーを含む。
【0034】
非官能化イソブチレン(コ)ポリマー合成ゴム(例えば、PIB)材料は、典型的には、シラン官能化(例えば、PIB)合成ゴム材料(以下に更に記載する)よりも実質的に高い分子量を有する。いくつかの実施形態では、非官能化イソブチレン(コ)ポリマー合成ゴム(例えば、PIB)の重量平均分子量(M
w)は、少なくとも35,000グラム/モル、少なくとも100,000グラム/モル、少なくとも250,000グラム/モル、少なくとも500,000グラム/モル、又は更には少なくとも1,000,000グラム/モルである。重量平均分子量は、典型的には、4,000,000g/モル以下である。
【0035】
非官能化イソブチレン(コ)ポリマー合成ゴムは、ホモポリマー、コポリマー、又はこれらの混合物であってよい。コポリマーは、ランダム又はブロックコポリマーであってよい。ブロックコポリマーは、ポリマーの主鎖中、側鎖中、又は主鎖及び側鎖の両方にポリイソブチレン部分を含むことができる。ポリイソブチレン材料は、典型的には、塩化アルミニウム、三塩化ホウ素(共触媒としての四塩化チタンと共に)若しくは三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒の存在下で、イソブチレンを単独で重合させることにより、又は、イソプレン等の追加のエチレン性不飽和モノマーを加えてイソブチレンを重合させることにより調製される。
【0036】
非官能化イソブチレン(コ)ポリマーゴムは、幾つかの製造業者から市販されている。ホモポリマーは、例えば、BASF Corp.(Florham Park,NJ)から商品名OPPANOL(例えば、OPPANOL B10、B15、B30、B50、B80、B100、B150、及びB200)として市販されている。これらのポリマーは、多くの場合、約35,000〜4,000,000グラム/モルの範囲の重量平均分子量(M
w)を有する。更に他の代表的なホモポリマーは、United Chemical Products(UCP)(St.Petersburg,Russia)から、広範な分子量で市販されている。例えば、ホモポリマーは、約35,000〜65,000グラム/モルの範囲の粘度平均分子量(M
v)を有する商品名SDGとしてUCPから市販されている。UCPから商品名EFROLENとして市販されているホモポリマーは、約480,000〜約4,000,000グラム/モルの範囲の粘度平均分子量(M
v)を有する。商品名JHYとしてUCPから市販されているホモポリマーは、約3000〜約55,000グラム/モルの範囲の粘度平均分子量を有する。これらのホモポリマーは典型的には、反応性二重結合を有さない。非官能性(例えば、PIB)合成ゴムは、非常に低濃度の反応性二重結合又はその重合の残留物であるその他の官能基を有し得ることが認識されている。このような反応性二重結合又は他の官能基の濃度は、典型的には、5、4、3、又は2モル%未満である。このようなオレフィン性不飽和はまた、典型的には、フリーラジカル重合を介しての共有結合の形成に好適な官能基ではない。
【0037】
感圧接着剤組成物中の非官能化イソブチレン(コ)ポリマー合成ゴム材料の濃度は、典型的には、組成物の総重量に対して50重量%未満であり、好ましくは10重量%より大きい。
【0038】
従来の接着剤は、特定の種類の自動車塗料及び低エネルギー表面等の、特定の基材には良好に接着しない。接着剤の接着性を改善する、すなわち、これらの種類の表面に対するより強力な粘着性を発現させるための努力がなされてきた。基本ポリマーの粘着付与が、一般に実施されている。様々な種類の粘着付与剤としては、フェノール変性テルペン、ポリビニルシクロヘキサン及びポリ(t−ブチルスチレン)等の炭化水素樹脂、及びロジンのグリセロールエステル及びロジンのペンタエリスリトールエステル等のロジンエステルが挙げられる。
【0039】
様々な種類の粘着付与剤としては、商品名Nuroz(商標)、Nutac(商標)(Newport Industries)、Permalyn(商標)、Staybelite(商標)、Foral(商標)(Eastman)として入手可能である、ロジンのグリセロールエステル及びロジンのペンタエリスリトールエステルといった、フェノール変性テルペン及びロジンエステルが挙げられる。ナフサ分解生成物により、典型的にC5及びC9モノマーから得られる炭化水素樹脂粘着付与剤も入手可能であり、商品名Piccotac(商標)、Eastotac(商標)、Regalrez(商標)、Regalite(商標)(Eastman)、Arkon(商標)(Arakawa)、Norsolene(商標)、Wintack(商標)(Cray Valley)、Nevtack、LX(Neville Chemical Co.)、Hikotack(商標)、Hikorez(商標)(Kolon Chemical)、Novares(商標)(Rutgers N.V.)、Quintone(商標)(Zeon)、Escorez(商標)(Exxonmobile Chemical)、Nures(商標)、及びH−Rez(商標)(Newport Industries)で市販されている。
【0040】
従来の粘着付与した感圧接着剤はまた、外見が濁っている可能性があり、多くの従来の感圧接着剤組成物に見出される特徴的な透明性の損失を実証する。この濁りは、粘着付与剤及びポリマーの相溶性が限られたものであること、又は不完全なものであることの指標になる。粘着性が損なわれること、又は剥離接着力が低下することから明らかであるように、相溶性が制限されることで、時間経過に伴い接着剤特性が劣化する恐れがある。場合によっては、接着剤組成物へ添加される粘着付与剤は、透明であり、相溶性であると考えられ得る。しかし、溶媒の除去後に、接着剤の硬化後に、又は時間経過後に、この接着剤は濁り始め、粘着付与剤とアクリル系ポリマーの間で、ある程度の不溶性が示されるようになる場合がある。
【0041】
多くの実施形態では、本開示は、当該技術分野で認識されている課題を克服する、粘着付与された接着剤組成物を提供する。好ましくは、粘着付与剤は、任意のエチレン性又はアセチレン性不飽和結合を本質的に含まない材料から選択される。粘着付与剤としては、これらに限定するものではないが、水素添加ロジン樹脂、水素添加及びエステル化ロジン樹脂、水素添加テルペン樹脂、脂肪族石油系樹脂、芳香族石油系樹脂、芳香族石油系樹脂に水素添加することにより得られる脂環式石油系樹脂等が挙げられる。好ましくは、使用する粘着付与剤は、これらに限定するものではないが、Regalrez(商標)粘着付与剤(Eastman)又はArkon(商標)(Arakawa)粘着付与剤等の水素添加C
9石油系樹脂から選択される。このような「疎水性粘着付与剤」は、組成物の総重量に対してゼロより多くの量、典型的には、50重量%未満、好ましくは1重量%より多くの量で使用され得る。
【0042】
可塑剤もまた、湿潤作用及び/又は粘度制御を与えるために、接着剤製剤において使用してもよい。これらの可塑剤は、当技術分野において周知であり、炭化水素油、液体炭化水素樹脂、液体ポリテルペン、Glissopal(商標)等の液体ポリ(イソブチレン)等を含めた液体又は軟質粘着付与剤、ワックス、及び油の混合物を含み得る。可塑剤は、本発明の感圧接着剤中に、典型的には、組成物の総重量に対して30重量%未満、好ましくは1重量%より多くの量で存在し得る。
【0043】
多くの実施形態において、接着剤組成物は、
a)30重量%より多くの、好ましくは50重量%より多くの、ペンダントアルコキシシラン基を有するイソブチレンコポリマー、
b)0〜50重量%、好ましくは1〜50重量%の粘着付与剤、及び
c)0〜50重量%、好ましくは10〜50重量%の非官能性ポリ(イソブチレン)を含み得る。
【0044】
本発明の接着剤を、従来のコーティング技術を用いて様々な可撓性及び非可撓性裏材上にコーティングして、接着剤でコーティングされた材料を製造することができる。可撓性基材は、本明細書において、テープ裏材として従来利用される任意の材料として定義されるか、又は任意の他の可撓性材料であってよい。例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及びエチルセルロース等のプラスチックフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。発泡体裏材を使用することもできる。非可撓性基材の例としては、金属、金属化ポリマーフィルム、インジウムスズ酸化物でコーティングされたガラス及びポリエステル、PMMAプレート、ポリカーボネートプレート、ガラス、又はセラミックシート材料が挙げられるが、これらに限定されない。接着剤でコーティングされたシート材料は、ラベル、テープ、サイン、カバー、標識インデックス、ディスプレイコンポーネント、タッチパネル等の接着剤組成物と共に利用されることが従来既知である任意の物品の形態を採ってもよい。微小複製された表面を有する可撓性裏材も企図される。
【0045】
水又は湿度に曝露すると、アルコキシシラン基は加水分解されてシラノール基となり、これは、隣接したアルコキシシラン基とシロキサン結合を形成することによってポリマーを架橋する。加水分解及び架橋の結果、接着剤の凝集力特性は経時的に増加する。架橋及びシロキサン基の形成がスキームVに示されており、式中、R
6は、少なくとも20の繰り返し単位を有するポリマーのイソブチレンラジカルを表す。イオン架橋を形成するために、二価アルコール若しくは多価のアルコール又はアミン等の追加の架橋剤は必要ない。シロキサン結合は、水分の存在下で不安定であり、絶えず開裂及び再形成することが理解されよう。
【0046】
【化3】
(式中、
R
2は、多価の飽和若しくは不飽和アルキレン又はアリーレンであり、
R
3は、アルキル基又はアリール基であり、
xは1〜3、好ましくは3であり、
R
6は、式Iのポリマーのイソブチレンコポリマーを表す)。
【0047】
より速い架橋は、シラノール縮合触媒の存在下で達成される。好適な触媒としては、カルボン酸スズ及びチタンエステル又はキレート等の金属有機化合物、例えば、テトラブチルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジ−イソプロピルチタネート;エチルアミン、ヘキシルアミン及びピペリジン等の有機塩基;並びに鉱酸及び脂肪酸等の酸が挙げられる。好ましい触媒は、有機スズ化合物、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、及びジブチル錫ジオクトエートである。典型的には、こうした触媒は、水分−硬化性ポリイソブチレンポリマーの100重量部当たり1重量部〜約3重量部の量で添加される。
【0048】
シラノール縮合触媒が存在しないと、低い相対湿度(50%未満の相対湿度)で加水分解はゆっくりと進むので、コーティングされたテープを高い相対湿度条件(少なくとも50%)及び緩やかに上昇する温度(例えば、30℃〜100℃)に、好ましくはコーティング工程の直後に供するのが望ましい場合がある。代わりに、コーティングに水分を取り込ませることができ(例えば、蒸気に曝露することにより)、水分を含んだテープを巨大なロールに巻きあげることができ(その場合、支持体は、その裏側に剥離コーティングを有し得る)、次に、感圧接着剤コーティングが湿気硬化されるまで、このロールをオーブンの中で加熱する。他の技術は、コーティングの前に、PIBポリマーと、1重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜2重量%の水和塩とをブレンドし、後に、テープがロール状の間又はテープが使用された後のいずれかで、テープを加熱して湿気硬化を生じさせることを伴う。好適な水和塩として、CuSO
45H
2O、MgSO
47H
2O、BaSO
42H
2O、BaCl
22H
2O、CaSO
42H
2Oが挙げられる。
【0049】
上記組成物は、特定の基材に適するように調節された従来のコーティング技術を使用して基材にコーティングされる。例えば、これらの組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティング等の方法によって、様々な固体基材に適用することができる。これらの種々のコーティング方法は、基材上に厚さを変えて組成物を定置することを可能にするものであり、これにより組成物のより広範な使用を可能にする。コーティング厚さは変更することができるが、2〜500ミクロン(乾燥厚さ)、好ましくは約25〜250ミクロンのコーティング厚さが企図される。
【0050】
一実施形態において、接着剤組成物は、基材上に直接コーティングされ(溶液、エマルション又は100%固体から)、加水分解するために高湿度環境に曝露されてもよい。別の実施形態では、接着剤組成物は前述同様にコーティングされるが、周囲湿度に曝露することよって受動的に加水分解されてもよい。いずれの方法においても、イソブチレンポリマーは、架橋の程度に応じて、アルコキシシラン基及びシロキサン結合の両方を含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物、特に感圧接着剤組成物は、溶媒溶液又は分散液として塗布され、溶媒は蒸発され、接着剤組成物は水分で架橋される。かかる溶媒系組成物の架橋は、コーティング及び溶媒の除去前に行われてもよいが、好ましくはその後に行われる。アルカン、酢酸エチル、トルエン、及びテトラヒドロフラン等の好適な溶媒は、コポリマーの構成要素の官能基と非反応性である。
【0052】
本開示の接着剤は、低表面エネルギー(LSE)基材への強力な結合を形成するために特に有用である。本明細書で使用される場合、低表面エネルギー基材とは、1センチメートルあたり約45ダイン未満の表面エネルギーを有するものであり、より典型的には、1センチメートルあたり約40ダイン未満、最も典型的には、1センチメートルあたり約35ダイン未満の表面エネルギーを有するものである。かかる材料の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン又はHDPE)、ポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)が挙げられる。他の基材もまた、基材の表面上に存在する、油残渣等の残渣又は塗装等のフィルムにより、低表面エネルギーの特性を有し得る。しかし、本接着剤が表面エネルギーの低い表面に良好に結合したとしても、本発明は、本発明の接着剤が、例えば、他のプラスチック、セラミック、ガラス、及び金属等の表面エネルギーの高い基材にも良好に結合することができることが見出されているように、表面エネルギーの低い基材に結合されることに限定されない。
【0053】
基材は、使用される具体的な用途に応じて選択される。例えば、接着剤は、シート製品(例えば、装飾用の図柄及び反射製品)、ラベルストック、及びテープ裏材に適用することができる。加えて、接着剤は、別の基材又は物体をパネル又は窓に取設することができるように、自動車用パネル、又はガラス窓等の基材上に直接適用されてもよい。
【0054】
接着剤はまた、後に永久基材への適用のために、少なくとも1つの接着剤の層が剥離ライナー上に配設される、感圧接着剤転写テープの形態で提供することもできる。接着剤は、接着剤が永久裏材上に配設されている、片面コーティング又は両面コーティングされたテープとして提供することもできる。裏材は、プラスチック(例えば、二軸延伸ポリプロピレン等のポリプロピレン、ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート)、不織布(例えば、紙、布、不織布スクリム)、金属箔、発泡体(例えば、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリウレタン、ネオプレン)等から作製することができる。発泡体は、3M Co.,Voltek,Sekisui、及び他の様々な供給元から市販されている。発泡体は、発泡体の片面又は両面に接着剤を備える共押出シートとして形成され得るか、又は接着剤は、積層され得る。接着剤が発泡体に積層されるとき、発泡体又は他の種類の裏材のうちのいずれかに対する接着剤の接着性を改善させるために、表面を処理することが望ましい場合もある。かかる処理は、典型的には、接着剤、及び発泡体又は裏材の材料の性質に基づいて選択され、プライマー及び表面改質剤(例えば、コロナ処理、表面磨耗)が含まれる。更なるテープ構成としては、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,602,221号(Bennettら)に説明に記載されるものが挙げられる。また、当業者は、充填剤、抗酸化剤、安定剤、及び着色剤等の他の添加剤を、有益な特性のために接着剤とブレンドしてもよいことを理解している。
【0055】
片面テープの場合、典型的には、接着剤が配設されている面とは反対側の裏材表面側の面が、好適な剥離材によりコーティングされる。剥離材は既知であり、例えば、シリコーン、ポリエチレン、ポリカルバメート、ポリアクリル等の材料が挙げられる。両面コーティングテープの場合、本発明の接着剤が配設されている面とは反対側の裏材表面上に、別の接着剤層が配設される。他方の接着剤層は、本発明の接着剤とは異なっていてもよく(例えば、従来のアクリル系PSA)、あるいは、同一の処方又は異なる処方を有する、本発明の接着剤と同様の接着剤であってもよい。典型的には、両面コーティングテープは、剥離ライナー上に適用される。
【0056】
本開示は、光学物品を結合する上で有用な、接着剤、例えば感圧接着剤を提供する。典型的には、接着剤は、任意選択により透明な接着剤(OCA)である。OCAは、光学ディスプレイに広い用途を見出している。このような用途としては、偏光器を液晶ディスプレイ(LCD)のモジュールに結合させること、及び様々な光学フィルムを携帯ハンドヘルドデバイス(MHH)のガラスレンズへ付着させることが挙げられるが、これらに限定されない。偏光器は、直接的又は間接的にOCAと接触してよい。
【0057】
特に、接着剤は、透過率、透明度、低誘電性、高屈折率、及び水分に対する低感受性等、光学物品を結合する上で有用な所望の特性を有し、電子又は電気部品に対する腐食性がない。特に、接着剤は、静電容量タッチ部品を結合する上で有用である。
【0058】
一態様において、少なくとも1つの主表面を有する第1の基材、少なくとも1つの主表面を有する第2の基材、及び前記第1の基材の少なくとも1つの主表面と前記第2の基材の少なくとも1つの主表面との間に位置し、かつこれらと接触している、光学的に透明な接着剤組成物の層を含む、光学的に透明な積層体を提供する。別の態様において、少なくとも1つの主表面を有する第1の基材、少なくとも1つの主表面を有する第2の基材、及び前記第1の基材の少なくとも1つの主表面と前記第2の基材の少なくとも1つの主表面との間に位置し、かつこれらと接触している、光学的に透明な接着剤組成物の層を含む、光学的に透明な積層体を提供する。
【0059】
感圧接着剤層は、光学的に透明であってよい。本明細書で使用する場合、用語「光学的に透明」は、波長範囲400〜700nmにおいて、約90パーセントより大きい視感透過率、約2パーセント未満の曇度、及び約1パーセント未満の不透明度を有する材料を指す。視感透過率及び曇度の両方は、例えば、ASTM−D 1003−95を使用して決定することができる。典型的に、光学的に透明な接着剤は、目視で気泡を含まなくてよい。望ましくは、接着剤は無色であり、0.25未満、好ましくは0.20未満のCielab b
*値を有する。
【0060】
望ましくは、本開示の接着剤は、1.50より大きい屈折率を有し、他の光学部品の屈折率とより良好に一致し、光錯乱を減少する。特に静電容量タッチスクリーンの適用例における主要の問題は、インジウムスズ酸化物(ITO)、基材、及びOCA(使用する場合)間の屈折率の不整合が原因で、ITOパターンが目立ったままになることが多いことである。ITOトレースは、反射率が高いため、周囲部分よりも目立ってしまう。とりわけ、一部の視野角で及び/又は特定の光条件下で、パターンは明瞭に目視でき、これは、装置の製造業者及びその顧客に嫌がられる。本発明の接着剤は、容易に目視できる導電性トレース、特にITOトレースの問題を減少又は最小化する。2014年5月22日に公開され、参照により本明細書に組み込まれる、出願者による米国出願特許第2014−0138131号に記載の通り、必要に応じて、接着剤の屈折率は、無機ナノ粒子を取り入れることによって更に上昇させることができる。
【0061】
静電容量タッチセンサーをディスプレイに直接結合する上で接着剤を使用する場合、接着剤の誘電率が重要である。ディスプレイは、静電容量タッチセンサーに伝送できるノイズを発生することができる。更に、ディスプレイ産業は、更により薄い装置を作る傾向にあり、実際のタッチセンサーを移動してディスプレイに更に近づけることを意味する。設計者は典型的には、このディスプレイノイズの問題を2つの方法で対処する:(1)誘電率がおよそ1の、最小誘電率の媒体、空気を選択する。この手法は、ディスプレイノイズの問題に対処する上で最善であるが、ディスプレイの輝度及びコントラストの低減には費用がかかるため、日光可読性及びディスプレイがオフのときの所望の「黒色」外見を妥協によって解決する。ウィンドウとのタッチ一体型及びディスプレイとのタッチ一体型の場合、ウィンドウとディスプレイは光学的に接続されていなければならないことから空隙は選択肢にならない。(2)ディスプレイノイズを解消できる、内蔵ファームウェアを設計する。この手法は、より高価なディスプレイの費用で効果が出るため、ほとんどの顧客にとって選択肢にならない。
【0062】
本開示は、最善のディスプレイコントラストの光学的利点を維持し、より静かなディスプレイを実現する、低誘電率のOCAを提供する。典型的なアクリル系OCAは、100KHz、室温で、3〜5の誘電率を有してよい。望ましくは、本開示の接着剤は、100KH及び室温で2.5より小さい誘電率を有する。
【0063】
光学フィルム又は光学的に透明な基材と、光学フィルム又は基材のうちの少なくとも1つの主表面に隣接した光学的に透明な感圧接着剤層とを含む積層体又は多層物品を提供する。物品は更に、別の基材(例えば、感圧接着剤層に永続的に又は一時的に付着する)、別の接着剤層、又はこれらの組み合わせを更に含んでもよい。本明細書で使用する場合、用語「隣接した」は、直接接触している、又はプライマー若しくはハードコーティング等の1つ以上の薄層で分離されている2層を指すのに使用され得る。多くの場合、隣接する層は直接接触している。更に、基材のうちの少なくとも1つが光学フィルムである2つの基材間に配置された感圧接着剤層を含む積層体を提供する。
【0064】
光学フィルムは、フィルムの表面に突き当たる光を故意に強化、操作、制御、維持、透過、反射、屈折、吸収、遅延、減衰又はその他の方法で変化させる。積層体に含まれるフィルムとしては、偏光器、干渉偏光器、反射偏光器、拡散体、有色の光学フィルム、鏡、ルーバー付き光学フィルム、光制御フィルム、透明シート、輝度向上フィルム、防眩フィルム、及び反射防止フィルム等の、光学的機能を有する多種の材料が挙げられる。また、提供される積層体用のフィルムは、四分の一波長及び半波長位相遅延光学素子等のリターダプレートを含んでよい。他の光学的に透明なフィルムとしては、抗破片フィルム及び電磁干渉フィルタが挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、得られる積層体は光学素子であってもよく、又は光学素子を調製するのに使用することもできる。本明細書で使用する場合、用語「光学素子」は、光学的効果又は光学的用途を有する物品を指す。光学素子は、例えば、電子機器ディスプレイ、建築用途、交通用途、投影用途、光通信用途、及びグラフィックス用途に使用することができる。好適な光学素子としては、グレージング(例えば、窓及びフロントガラス)、スクリーン又はディスプレイ、陰極線管、及び反射器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
代表的な光学的に透明な基材としては、ディスプレイパネル、例えば、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、タッチパネル、エレクトロウェッティング方式ディスプレイ又は陰極線管、窓又はグレージング、光学部品、例えば反射器、偏光器、回折格子、鏡、又はカバーレンズ、別のフィルム、例えば、装飾フィルム又は別の光学フィルムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
光学的に透明な基材の代表例としては、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート)、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びセルローストリアセテート)を含有するものを含む、ガラス及びポリマー基材が挙げられる。典型的に、カバーレンズは、ガラス、ポリメチルメタクリレート、又はポリカーボネートで作製することができる。
【0068】
他の実施形態では、基材は剥離ライナーであってよい。任意の好適な剥離ライナーを用いてよい。代表的な剥離ライナーには、紙(例えば、クラフト紙)又はポリマー材料(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等)から製造されるものが挙げられる。少なくとも一部の剥離ライナーは、シリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料等の剥離剤の層でコーティングされている。代表的な剥離ライナーとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にシリコーン剥離コーティングを有する、CP Film(Martinsville,VA)から商品名「T−30」及び「T−10」として市販されているライナーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
剥離ライナーは、光学フィルムを別の基材に接着させるために除去することができる(すなわち、剥離ライナーの除去により接着剤層の表面が露出し、続いて別の基材表面に結合されることができる)。接着剤層は、この他の基材に永続的に結合されることが多いが、場合によっては、接着はディスプレイの再加工を可能にすることに限定されることがある。
【0070】
積層体は、次の特性:感圧接着剤層が、物品の有用寿命が終わるまで光透過率を有することと、感圧接着剤が、物品の層間で十分な結合力を維持することができることと、感圧接着剤が、層間剥離に抵抗するか又は層間剥離を回避することができることと、感圧接着剤が、有用寿命が終わるまで接着剤層の発泡に抵抗することができることとのうち少なくとも1つを有する。気泡形成への耐性及び光学透過率の維持は、促進老化試験を利用して評価することができる。積層体は、多くの場合、高温(例えば、60〜90℃)に、任意選択により高湿条件下で(例えば、相対湿度80〜90パーセント)曝されても、暫くの間(例えば、1日〜1ヶ月)持ちこたえることができる。特に、本開示の積層体は、高温高湿(例えば、60〜90℃及び相対湿度80〜90パーセント)に長く曝され、引き続いて周囲条件に急速冷却(例えば、高熱高湿に曝された後、数分以内に室温に冷却)された後でも、低曇度及び高透過率を維持する。
【0071】
本開示の接着剤組成物を、偏光器等の光学素子の片側又は両側に直接適用してよい。偏光器は、防眩層、保護層、反射層、位相遅延層、広角補償層、及び輝度向上層等の追加層を含んでよい。いくつかの実施形態では、本開示の感圧接着剤を、液晶セルの片側又は両側に適用してよい。本開示の感圧接着剤は、偏光器を液晶セルに接着するのに使用してもよい。光学積層体の更に別の代表的なセットとしては、カバーレンズのLCDパネルへの適用、タッチパネルのLCDパネルへの適用、カバーレンズのタッチパネルへの適用、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
図1は、提供される光学的に透明な積層体の一実施形態の断面図である。積層体100は、基材12にコーティングされた瞬間接着剤組成物14を有する。光学フィルム16は、接着剤組成物14に接触している。積層体は、光学的に透明な光学素子を提供する。これらの光学物品に関する更なる詳細は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第8361633号(Everaertsら)に見出すことができる。
【0073】
静電容量タッチ式技術は、手持ち式の携帯、ネットブック、及びラップトップコンピューター等、様々な用途においての有用性が増大していることがわかっている。その他のタッチ式技術と比較して、静電容量タッチ式技術は、非常に敏感な応答並びにマルチタッチ等の特徴を可能にする。光学的に透明な接着剤(OCA)は、多くの場合、静電容量タッチ式パネルアセンブリにおける接着の目的(例えば、異なるディスプレイ構成要素の層の付着)に使用される。
【0074】
OCAは機械的結合をもたらすだけでなく、輝度及びコントラストを低減させる空隙を排除することによってディスプレイの光学的品質を大幅に高めることもできる。ディスプレイの光学的性能は、内部反射面の数量を最小限にすることにより改善することができ、それと共に、ディスプレイの光学素子間の空隙の数をなくすか、又は少なくとも最小限にすることが望ましいことがある。
【0075】
ディスプレイアセンブリにおいて、タッチパネル又はディスプレイパネル(液晶ディスプレイ(LCD)パネル等)を光学的に透明な接着剤によって三次元(3D)のカバーガラスに接着させることは、困難であり得る場合がある。実際に、新しい設計では、カバーガラスの周囲、すなわち枠の周囲に厚い(約50マイクロメートル)インク段差を有するカバーガラスを使用して、もはや平らではなく3Dレンズである基材を生成する。インク段差で包囲される領域は多くの場合、空隙と呼ばれる。大きなインク段差に加えて、ディスプレイ構成要素のうちのいずれかに良好な接着剤の湿潤を必要とし得る他の3D特徴部としては、フレックスコネクタ、構成要素のわずかな曲線、厚いITOパターン、タッチパネル上における隆起した集積回路等の存在等が挙げられる。
【0076】
光学材料は、光学アセンブリの光学部品間又は光学基材間の空隙を充填するのに使用され得る。光学基材に結合されたディスプレイパネルを含む光学アセンブリは、2つのものの間の空隙が、パネル及び基材の屈折率に適合するか、又はほぼ適合する光学材料で充填された場合、利益を得る場合がある。例えば、日光、及びディスプレイパネルと外側カバーシートとの間に固有の周囲光の反射は低減される場合がある。ディスプレイパネルの色域及びコントラストは、周囲条件下で改善され得る。空隙が充填された光学アセンブリは、空隙を有する同様のアセンブリと比較して、改善された衝撃耐性を呈することもできる。
【0077】
大きな寸法、すなわち面積を有する光学アセンブリは、効率及び厳しい光学品質が望まれるならば、製造するのが難しい場合がある。光学部品間の空隙は、空隙内に硬化性組成物を注ぐか、又は注入することによって、続いて組成物を硬化させて部品を一緒に結合することによって充填され得る。しかし、これらの一般に使用される組成物は長い流出時間を有し、これは大きな光学アセンブリには非効率的な製造方法の一因となる。
【0078】
光学的に透明な接着剤は、転写テープ形式で使用して、ディスプレイ基材の間の空隙を充填し得る。このプロセスにおいて、本発明の液体接着剤組成物は、少なくとも1つが紫外線に対して透明である、2つのシリコーン処理した剥離ライナーの間に適用することができ、硬化に有用である。次いで、接着剤組成物は、その中に含有される光開始剤によって少なくとも部分的に吸収される波長の化学線への曝露によって、硬化(重合)され得る。あるいは、熱活性化フリーラジカル開始剤が使用されてもよく、その場合、本発明の液体接着剤組成物を2つのシリコーン処理した剥離ライナーの間にコーティングし、熱に曝して、組成物の重合を完成させることができる。したがって、感圧接着剤を含む転写テープを形成することができる。転写テープの形成は、積層する前に、硬化した接着剤を弛緩させることによって、接着剤の応力を低減することができる。例えば、典型的なアセンブリプロセスでは、転写テープの剥離ライナーの1つをはがして、接着剤をディスプレイアセンブリに適用することができる。次いで、2つ目の剥離ライナーをはがして、基材への積層を完了させることができる。基材及びディスプレイパネルが剛性であるとき、接着剤結合は、真空積層装置によって補助されて、接着剤中、又は接着剤と基材若しくはディスプレイパネルとの間の界面において気泡が形成されないことを確実にすることができる。最後に、組み立てられたディスプレイ構成要素は、オートクレーブ工程に送って結合を終了し、積層欠陥のない光学アセンブリを作製することができる。
【0079】
硬化した接着剤転写テープが、プリントレンズと第2のディスプレイ基材との間に積層されるとき、完全に硬化した接着剤を時には大きいインク段差(すなわち、50〜70μm)に適合させる必要があり、ディスプレイに許容され得る全接着剤厚さは、わずか150〜250μmであり得るため、光学的欠陥の防止は、より一層困難であり得る。任意の捕捉された気泡を後次ディスプレイ組立工程で除去することが極めて困難になり得るため、初期アセンブリ中(例えば、プリントレンズが、本発明の光学的に透明な接着剤転写テープと共に第2の基材に積層されるとき)に、この大きいインク段差を完全に濡らすことが非常に重要である。光学的に透明な接着剤転写テープは、良好なインクの濡れを可能にするために、速やかに変形できることによって、十分なコンプライアンス(例えば、1Hzの周波数で測定されるとき、典型的に25℃の積層温度で10e
5パスカル(Pa)未満の低剪断貯蔵弾性率、G’)を有し、インク段差輪郭の鋭角に適合する必要がある。転写テープ上の接着剤はまた、インク段差に適合するだけでなく、インク表面をより完全に濡らすためにも十分な流量を有する必要がある。接着剤の流量は、広範囲の温度にわたって材料の高いタンデルタ値に反映され得る(すなわち、接着剤のガラス転移温度(Tg)(DMAにより測定)と約50℃又はそれよりわずかに高い温度との間でタンδは0.5より大きい)。インク段差による光学的に透明な接着剤テープの急速変形によって引き起こされる応力は、応力が数秒以内ではなく数時間かけて緩和され得る偏光器付属品の用途において等、接着剤が熱膨張係数の不一致によって引き起こされる共通応力よりもはるかに速く応答することを必要とする。しかし、この初期インク段差の濡れを達成することができるそのような接着剤であっても、依然としてバルクレオロジーから過度の弾性寄与を有し、これによって結合した構成要素の許容されない変形を引き起こし得る。これらのディスプレイ構成要素は、寸法的に安定しているとしても、貯蔵された弾性エネルギー(インク段差上の接着剤の急速変形に起因する)は、接着剤に応力を絶えず適用することによって、それ自体を緩和する方法を見出し、最終的には、故障の原因になり得る。したがって、ディスプレイ構成要素の液体結合の場合と同様に、転写テープがディスプレイ構成要素に良好に結合するための設計は、接着、光学、落下試験耐久性の微妙な均衡を要すると同時に、インク段差がその厚さの30%以上まで接着剤層を押し入れるときであっても、高いインク段差への適合及び良好な流量を必要とする。
【0080】
剛性材料同士(例えば、電話又はタブレット型デバイスで使用する、カバーガラスとタッチセンサーガラスとの積層)の積層のための接着剤組成物の典型的な適用では、積層はまず、室温又は高温のいずれかで行われる。一実施形態において、積層は、約20℃〜約60℃で実行される。積層温度において、接着剤組成物は、約0.5〜約1.0のタンデルタ値を有する。タンデルタ値が低すぎると(すなわち、0.5未満)、接着剤の初期湿潤は困難となり得、良好に湿潤させるためには、より高い積層圧力及び/又はより長い押圧時間を必要とし得る。これは、周期時間をより長くし、場合によってはディスプレイ基材の1つ以上を変形させる恐れがある。同様に、タンデルタ値が高すぎると(すなわち1.0より大きい)、接着剤組成物は柔らかすぎて、積層圧力に耐えられない可能性があり、また接着剤の搾出及び滲出が起こり得る。そのような高いタンデルタ値は更に、そのような接着剤から得られる任意のダイカットの貯蔵不安定性をもたらし得る。例えば、室温で保管されると、滲出が起こる可能性がある。
【0081】
それに続く工程では、この積層体は、次いでオートクレーブ処理を受けるが、そこでは圧力及び温度(例えば、5大気圧及び60〜100℃)を適用して、剛性材料同士の積層プロセス中に閉じ込められた気泡を取り除く。接着剤の流動特性が良好であるほど、接着剤は、厚いインク段差をより簡単に覆うことができる。更に、良好な接着剤の流動により、積層工程で閉じ込められた気泡が接着剤マトリックスから簡単に出ることができ、その結果、オートクレーブ処理後に気泡のない積層体がもたらされる。オートクレーブ温度下で、接着剤組成物は、約0.6〜約1.0のタンデルタ値を有する。特に、接着剤組成物は、約0.7〜約1.0のタンデルタ値を有する。典型的なオートクレーブ温度でのタンデルタ値が0.6未満に下がると、接着剤は、基材を更に濡らし、かつ積層工程で閉じ込められた気泡を逃すのに十分速く軟化しない可能性がある。同様に、タンデルタ値が約1.0を超えると、接着剤の粘性の性質が高くなりすぎる可能性があり、また接着剤の搾出及び滲出が起こり得る。したがって、良好な基材湿潤及び簡単な気泡除去の併せた効用により、大幅に短縮されたサイクル時間の効率的な積層ディスプレイアセンブリプロセスが可能となる。一実施形態では、真空積層のサイクル時間は約15秒未満であり、オートクレーブ処理に関しては約30分未満である。
【0082】
接着剤の流動性は、動的機械分析(DMA)を使用して測定することができる。感圧接着剤(PSA)は、粘弾性物質である。DMA測定によるタンデルタ値は、PSAの粘性成分(剪断損失弾性率G’’)とPSAの弾性成分(剪断貯蔵弾性率G’)との比である。PSAのガラス転移温度を超える温度では、タンデルタ値が高いほど、接着剤の流動が良好であることを示す。
【0083】
光学アセンブリで使用される場合、接着剤組成物は、光学用途に好適である必要がある。例えば、接着剤組成物は、460〜720nmの範囲にわたって少なくとも85%の透過率を有し得る。接着剤組成物は、厚さ1ミリメートル当たり、460nmで約85%より高い透過率、530nmで約90%より高い透過率、及び670nmで約90%より高い透過率を有し得る。これらの透過特性は、電磁スペクトルの可視領域にわたって均一な光透過率をもたらし、これは、フルカラーディスプレイで色点を維持するのに重要である。
【0084】
特に静電容量タッチスクリーンの適用例における主要の問題は、ITO、基材、及びOCA(使用する場合)間の屈折率の不整合が原因で、ITOパターンが目立ったままになることが多いことである。ITOトレースは、反射率が高いため、周囲部分よりも目立ってしまう。とりわけ、一部の視野角で及び/又は特定の光条件下で、パターンは明瞭に目視でき、これは、装置の製造業者及びその顧客に嫌がられる。この問題の解決への以前の様々な試みを考慮して、例えば、高屈折率のOCAを使用してITOトレースの屈折率を整合させることによる試みを考慮して、ITOトレース及びその他の導電性トレースを隠すには、大きな技術的困難が依然として存在する。
【0085】
瞬間接着剤は、典型的なアクリル系OCAよりも高い屈折率を有する。典型的なアクリル系OCAは、632.8nmで1.47〜1.48の屈折率を有するが、瞬間接着剤は、632.8nmで1.52の屈折率を有する。瞬間接着剤を他の材料と併用して、ITOトレースを隠すために、更に高い屈折率のOCAを生成してもよい。
【0086】
一部のディスプレイでは、水分及び空気の浸透が、別の課題である。例えば、水分及び空気が有機発光デバイス(OLED)及び電気泳動装置に浸透すると、ディスプレイの寿命を著しく制限する恐れがある。水分及び空気のディスプレイへの浸透を防止するために効果的なカプセル化が、許容できる寿命を有する装置を製造するために必要である。瞬間OCAは、バリア特性を与えることができ、防湿性能が非常に低いバリアフィルムと併用することができる。
【0087】
開示の物品中の接着剤層の厚さは、約5マイクロメートルより大きく、約10マイクロメートルより大きく、約15マイクロメートルより大きく、又は更に約20マイクロメートルより大きい傾向がある。厚さは、しばしば、約1000マイクロメートル未満、約250マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、又は更に約175マイクロメートル未満である。例えば、厚さは、約5〜約1000マイクロメートル、約10〜約500マイクロメートル、約25〜約250マイクロメートル、又は約50〜約175マイクロメートルであり得る。
【0088】
一実施形態では、接着剤組成物は、ディスプレイパネルを含む光学アセンブリに使用される。ディスプレイパネルは、液晶ディスプレイパネル等の任意のタイプのパネルを含むことができる。液晶ディスプレイパネルは周知であり、典型的には、ガラス又はポリマー基材等の、2つの実質的に透明な基材間に配設された液晶材料を含む。本明細書で使用する場合、「実質的に透明である」は、光学用途(例えば460〜720nmの範囲にわたって少なくとも85%の透過率を有する)に好適である基材を指す。光学基材は、厚さ1ミリメートル当たり、460nmで約85%より大きい透過率、530nmで約90%より大きい透過率、及び670nmで約90%より大きい透過率を有することができる。実質的に透明な基材の内側面には、電極として機能する透明な導電材料が存在し得る。場合によっては、実質的に透明な基材の外側面には、基本的に、ただ1つの偏光状態の光だけを通すことができる偏光フィルムがあってよい。電圧が電極に対して選択的に印加されると、液晶材料は再配向して光の偏光状態を変えることができ、それにより、画像が形成され得る。液晶ディスプレイパネルはまた、マトリクスパターンで配置された複数の薄膜トランジスタを有する薄膜トランジスタアレイパネルと、共通電極を有する共通電極パネルとの間に配設された液晶材料を含むことができる。
【0089】
いくつかの他の実施形態において、ディスプレイパネルは、プラズマディスプレイパネルを含むことができる。プラズマディスプレイパネルは周知であり、典型的には、2つのガラスパネル間に位置する小セル内に配設されたネオン及びキセノン等の希ガスからなる不活性混合物を含む。パネル内の制御回路帯電電極によって、気体をイオン化し、プラズマを形成した後、その中に含有される蛍光体を励起させて発光させることができる。
【0090】
他の実施形態において、ディスプレイパネルは、発光ダイオード(LED)ディスプレイパネルを備えてもよい。発光ダイオードは、有機又は無機のエレクトロルミネセント材料を使用して作製することができ、当業者によく知られている。これらのパネルは、本質的に、2つの導電性ガラスパネルの間に配設されたエレクトロルミネセント材料の層である。有機エレクトロルミネセント材料は、有機発光ダイオード(OLED)又はポリマー発光ダイオード(PLED)を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、ディスプレイパネルは、電気泳動ディスプレイを備えてもよい。電気泳動ディスプレイは周知であり、電子ペーパー、すなわちe−ペーパーと呼ばれるディスプレイ技術に典型的に使用される。電気泳動ディスプレイは、2つの透明な電極パネルの間に配設された液体の帯電材料を含み得る。液体の帯電材料は、ナノ粒子、染料、及び非極性炭化水素中に浮遊する帯電剤、炭化水素材料中に浮遊する、帯電した粒子で充填されたマイクロカプセルを含む。マイクロカプセルはまた、液体ポリマーの層に浮遊してもよい。いくつかの実施形態において、ディスプレイパネルは、陰極線管ディスプレイを含み得る。
【0092】
提供される光学アセンブリは、実質的に透明な基材を含む。実質的に透明な基材は、ガラス又はポリマーを含み得る。有用なガラスには、ホウケイ酸、ソーダ石灰、及び保護カバーとしてディスプレイ用途での使用に適した他のガラスを挙げることができる。使用され得る1つの特定のガラスは、Corning Inc.,Corning NYから入手可能なEAGLE XG及びJADEガラス基材を含む。有用なポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートフィルム若しくはプレート、アクリルフィルム、例えばポリメチルメタクリレートフィルム、及びシクロオレフィンポリマーフィルム、例えばZeon Chemicals(Louisville,KY)から入手可能なZEONOX及びZEONORが挙げられる。実質的に透明な基材は、典型的には、ディスプレイパネル及び/又は接着剤層に近い屈折率、例えば約1.4〜約1.7の屈折率を有する。実質的に透明な基材は、典型的には、約0.5mm〜約5mmの厚さを有する。
【0093】
提供される光学アセンブリは、タッチセンシティブであり得る。タッチセンシティブ光学アセンブリ(タッチセンシティブパネル)には、容量センサー、抵抗センサー、及び予想容量センサーを挙げることができる。そのようなセンサーは、ディスプレイを覆う実質的に透明な基材上に透明な導電素子を含む。ディスプレイの近く又はディスプレイと接触している物体の位置を決定するために、電気信号を使用して導電素子を調べることができる電子部品と導電素子を組み合わせることができる。タッチセンシティブ光学アセンブリは周知であり、例えば、米国特許出願公開第2009/0073135号(Linら)、同第2009/0219257号(Freyら)、及びPCT公開WO第2009/154812号(Freyら)に開示されている。
【0094】
力センサーを含む位置タッチセンシティブタッチパネルもまた周知であり、例えば、力測定を含むタッチスクリーンディスプレイセンサーにおいて開示されており、歪みゲージに基づく例、例えば米国特許第5,541,371号(Ballerら)において開示されているもの、材料及び空気を含む誘電体又は誘電体構造によって分離された、センサー内の異なる層に存在する導電性トレース又は電極間の容量変化に基づく例、例えば米国特許第7,148,882号(Kamrathら)及び同第7,538,760号(Hotellingら)において開示されているもの、ピエゾ抵抗複合材料によって分離された、センサー内の異なる層に存在する導電性トレース間の抵抗変化に基づく例、例えば米国特許公開第2009/0237374号(Liら)において開示されるもの、及びピエゾ抵抗材料によって分離された、センサー内の異なる層に存在する導電性トレース間の偏光発生に基づく例、例えば米国特許公開第2009/0309616号(Klinghultら)が挙げられる。位置タッチスクリーンは、例えば米国特許公開第2013/0082970号(Freyら)にも開示されている。
【0095】
本開示は、ITO、金、銀、アルミニウム、銅等を含有する導電性トレースと適合するOCAに対する必要性を提起する。OCAは、例えばタッチパネル内のトレースと直接接触している。トレース整合性OCAは、非腐食性の感圧接着剤(PSA)で構成される。
【0096】
一態様において、本開示は、(a)インジウムスズ酸化物を含む導電性トレースを有する光学的に透明な第1の基材、(b)第1の基材上に配設され、かつトレースと接触している、光学的に透明な高感度接着剤(本開示の接着剤)を含む物品に関する。別の態様において、本開示は、(a)インジウムスズ酸化物を含む導電性トレースを有する光学的に透明な第1の基材を準備する工程と、(b)主表面を有する光学的に透明な第2の基材及び第2の基材の主表面上に配設された光学的に透明な接着剤を含む感圧接着剤を準備する工程と、(c)光学的に透明な接着愛が導電性トレースと接触するように、感圧接着剤を第1の基材に積層する工程とを含む物品を作製する方法に関する。一例示的適用においては、本開示に記載されている物品及びその作製方法は、これらに限定されないが、LCDパネル、携帯電話、ハンドヘルドデバイス、及びラップトップコンピューター等の電子機器へと組み込むことができる。
【0097】
図に戻り、
図2は、第1の基材22を有する代表的物品200の断面図を示す。インジウムスズ酸化物を含有する導電性トレース24を、基材の第1の表面22a上に配設する。トレースは、第1の表面22a上にグリッドを形成する。トレース端は、電気コネクタパッド26で終わる。光学的に透明な接着剤28が、トレース上に配設される。トレースがグリッド形式であるために、接着剤28の一部は、第1の基材22の第1の表面22aと直接接触し得る。任意選択により、実施形態は、接着剤28上に配設された第2の基材21を含む。第1の基材及び第2の基材は、使用される場合、光学的に透明である。いくつかの代表的実施形態では、それらは、プラスチックスラブ等のプラスチック、ポリマーフィルム、又はガラスであり得る。
【0098】
図3は、
図2の物品の代表的製造プロセスの概略図を示す。前記プロセスは、第1の表面32aを有する第1の基材32を準備する工程を含む。電気コネクタパッド36を備えた導電性トレース34は、第1の表面32a上に配設される。転写テープ300のロールが設けられる。テープのロールは、ライナー31上にコーティングされた光学的に透明な感圧接着剤38を含む。任意選択により、ライナーは、テープのロールをほどくことができる剥離コーティングを含む。転写テープは、接着剤38がトレース34と接触するように、第1の基材32の第1の表面32aへと積層される。一方法では、ライナー31は第2の基材として機能し、かつ物品の一部となる。別の方法では、ライナーは除去しかつ廃棄することができ、第2の基材は接着剤38上に積層し得る。
図3に転写テープの使用を示すが、転写テープのカットシートを使用して本方法を実施することもできる。本物品及び方法に関する更なる詳細は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第2009/0087629号(Everaertsら)に見出すことができる。
【実施例】
【0099】
本発明の目的及び利点が以下の実施例によって更に例証されるが、これらの実施例において記載される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に例示のみを目的とし、添付の請求項の範囲を限定する意図はない。
【0100】
実施例で用いる場合、「pph」は、ポリマー100部当たりの部を指す。ポリマー100部には、アルコキシシラン変性ポリイソブチレンポリマー及び任意の非官能化ポリイソブチレン、例えば、MWPIBの総量を含む。
【0101】
材料
「BUTYL RUBBER B268」は、ExxonMobil Corporation,Baytown,TXから商品名「Exxon(商標)Butyl Rubber B268」で入手したイソブチレンとイソプレンのコポリマーだった。
【0102】
「TACKIFIER」は、ExxonMobil Corporation,Baytown,TXから商品名「Escorez(商標)5340」で入手した、脂環式炭化水素系粘着付与剤だった。
【0103】
「MWPIB」は、BASF,Florham Park,NJから商品名「Oppanol(登録商標)B15」で入手した、中間分子量(80,000g/mol)の非官能化ポリイソブチレンだった。
【0104】
「PET−1」は、Mitsubishi Polyester Film,Greer,SCから商品名「Hostaphan(登録商標)3SAB」で入手した、厚さが約50マイクロメートルのプライム化ポリエステルフィルムだった。
【0105】
「PET−2」は、Siliconature,Chicago,ILから商品名「SILPHAN S 36M」で入手した、ポリエステル剥離ライナーだった。
【0106】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(湿気硬化型機能性化学物質)は、Gelest Inc.,Morrisville,PAから入手した。
【0107】
「IRGACURE 651」は、BASF(Florham Park,NJ)から商品名「Ciba(登録商標)IRGACURE(登録商標)651」で入手した、光ラジカル発生剤だった。
【0108】
トルエンは、EMD,Billerica MAから入手した。
【0109】
「SANTOPRENE」は、ExxonMobil Corporation,Baytown,TXから商品名「SANTOPRENE(商標)」から入手可能な熱可塑性エラストマーだった。
【0110】
試験方法:
90°角度剥離接着強度試験
90°の角度の剥離接着強度を、IMASS SP−200滑り/剥離試験機(IMASS,Inc.,Accord,MAより販売)を使用し、ASTM国際規格D3330の方法Fに記載の手順を用いて305mm/分(12インチ/分)の剥離速度で測定した。溶媒で濡らしたティッシュでパネルを拭くが、締め付け圧でパネルを8〜10回拭くことによって試験パネルを調製した。この手順を、溶媒で濡らした清潔なティッシュで、更に2回繰り返した。使用した試験パネルは高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ステンレス鋼(SS)、又はソーダ石灰ガラスだった。次の2つのタイプの熱可塑性エラストマー:エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)及びポリプロピレンをベースとするTPE−1又はSANTOPRENEをベースとするTPE−2を使用した。洗浄するために使用した溶媒は、HDPE、PP、TPE−1及びTPE−2パネルではイソプロピルアルコールであり、SS及びガラスパネルではヘプタンだった。次いで、洗浄したパネルを乾燥させた。接着剤テープを1.27cm×20cm(1/2インチ×8インチ)を測定して細片に切断し、細片を、2つのパスを使用して、2.0kg(4.5lb.)ゴムローラーで、洗浄したパネル上へ圧延した。調製したサンプルは、試験に先立って23℃、相対湿度50%で24時間保管した。2つのサンプルを、各実施例で試験し、平均値をN/dmで表した。破損モードを確認し、粘着性(COH)として、すなわち接着剤が分かれてテープと試験面の両方に残留したままになったとして、接着性(ADH)として、すなわち接着剤が試験面からきれいに剥がれたとして、又はCOH及びADH故障の混合(MIX)、すなわち接着剤が一部の面からきれいに剥がれ、別の箇所の面に接着したとして記録した。
【0111】
静的剪断強度
静的剪断強度を、23℃/50% RH(相対湿度)で1000gの荷重を用い、ASTM国際規格D3654の手順Aに記載されている通りに評価した。1.27cm×15.24cm(1/2inch×6inch)のテープ試験サンプルを、剥離接着力試験で説明されるパネルの洗浄及びテープの接着方法を使用して、3.8cm×5cm(1.5inch×2inch)のステンレス鋼(SS)パネルに接着させた。テープはパネルと1.27cm×2.5cmの部分で重なり合っており、この細片を接着剤側でそれ自体の上に折り畳んでからもう一度折り畳んだ。フックを第2の折り畳みに掛け、フックの上にテープをホチキスで留めることによって固定した。重りをフックに取り付け、パネルを23℃/50% RHで室内に吊持した。破損するまでの時間を分で記録した。10,000分後に破損が観察されなかった場合、試験を停止し、10,000分の値を記録した。剥離接着試験において説明される破損モードも指摘した。
【0112】
光学特性測定
接着剤の光学特性は、乾燥テープを、1.0mm厚さの5cm×7.5cm(2inch×3inch)のスライドガラス(VWR International Radnor,PA、Micro Slides、カタログ番号48382−179)に挟んで測定した。光学的に透明な接着剤(OCA)の曇度、透過率及び色を、HunterLab UltraScan PRO(Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,Virginiaより販売)を使用して測定した。
【0113】
調製例1(PE1)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラングラフト化PIB(ポリマー1)の調製
メカニカルスターラー、温度計、及び窒素入口を具備する3口丸底フラスコに、BUTYL RUBBER B268(30.0g)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(1.76g)、IRGACURE 651(0.46g)、及びトルエン(170.0g)を入れた。フラスコの内容物を、窒素雰囲気下、高温(例えば、40〜50℃)にて電磁攪拌棒で攪拌した。全ての構成成分が完全に溶解した時点で、フラスコを室温まで冷却した。次いで、紫外線バルブ(Sylvania Blacklight Blue F15T8/BLB,15,Osram Sylvania,Danvers,MAより販売)で6分間、混合物を紫外線照射した。紫外線照射の間、溶液はメカニカルスターラーで攪拌した。溶液は、精製せずに、更なる処方のために使用した。
【0114】
実施例1〜2(EX1〜EX2)及び比較例1〜2(CE1〜CE2)
EX1の接着剤組成物は、上記のPE1で調製した100部のポリマー1と、20部のESCOREZ 5340を、400部のトルエンを含有する100mLビンの中で混合し、次いで混合物をローラーミルで終夜ミリングすることによって調製した。EX2の接着剤組成物は、70部のポリマー1、30部のMWPIB及び20部のESCOREZ 5340を、400部のトルエンを含有する100mLビンの中で混合することによる以外は、EX1と同じやり方で調製した。CE1及びCE2の接着剤組成物は、ポリマー1をBUTYL RUBBER B268と置き換えた以外は、EX1及びEX2それぞれと同じやり方で調製した。
【0115】
得られたEX1〜EX2及びCE1〜CE2の接着剤組成物を、プライム化側面が15cm×63.5cm(6inch×25inch)のPET−1フィルム細片上にナイフコーティングして、約381μm(15ミル)の湿潤厚さにした。コーティングされたフィルムを、70℃に設定されたオーブンで60分間乾燥させて、50μm(2ミル)の接着剤コーティング厚さを有するテープを生成した。室温(RTせん断)での90°剥離接着及び剪断強度の試験に先立って、テープを23℃、50% RHで24時間調整した。結果を、以下の表1に示す。
【0116】
【表1】
N/F=破損せず
【0117】
実施例3〜6(EX3〜EX6)
EX3及びEX4の接着剤組成物及びテープは、接着剤厚さが変化し(すなわち、EX3及びEX4それぞれで、50及び100μm厚さ)、コーティング基材がPET−2(剥離ライナー)だった以外は、EX1に記載の通りに調製した。EX5及びEX6の接着剤組成物及びテープは、接着剤厚さが変化し(すなわち、EX3及びEX4それぞれで、50及び100μm厚さ)、コーティング基材がPET−2(剥離ライナー)だった以外は、EX2に記載の通りに調製した。PET−2(剥離ライナー)上のEX3〜EX6の乾燥接着剤を、1.0mm厚さの5cm×7.5cm(2inch×3inch)のマイクロスライドガラス(VWR International,Radnor,PAより入手、Micro Slides、カタログ番号48382−179)の上に移し、積層し、その光学特性を上記の通りに測定した。以下の表2に、EX3〜EX6の接着剤組成物の光学特性の結果をまとめた。
【0118】
【表2】
【0119】
本開示は、以下の実施形態を提供する:
1.次式の置換イソブチレンコポリマー:
【0120】
【化4】
(式中、
aは、少なくとも20であり、bは、少なくとも1であり、cは、0であってよく、
R
2は、多価の飽和若しくは不飽和アルキレン又はアリーレンであり、各R
3は、アルキル基又はアリール基であり、xは1〜3であり、qは1又は2である)及び
粘着付与剤
を含む、硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
2.イソブチレンコポリマーの繰り返し単位の1〜5%が、アルコキシシラン基によって置換される、実施形態1に記載の硬化性イソブチレンコポリマー。
3.ペンダントアルコキシシラン基を有する重合されたモノマー単位を0重量%より多く20重量%未満含む、先行する実施形態のいずれかに記載の硬化性イソブチレンコポリマー。
4.ペンダントアルコキシシラン基を有する重合されたモノマー単位が、イソプレンモノマー単位である、実施形態3に記載の硬化性イソブチレンコポリマー。
5.組成物の総重量に対して1〜50重量%の粘着付与剤を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
6.R1が二価のアルキレン又はアリーレンであり、R2が二価のアルキレンである、実施形態1に記載の硬化性イソブチレンコポリマー。
7.非官能化ポリ(イソブチレン)ポリマーを更に含む、先行する実施形態のいずれかに記載の硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
8.
a)30重量%より多くの、ペンダントアルコキシシラン基を有するイソブチレンコポリマー、
b)1〜50重量%の粘着付与剤、及び
c)10〜50重量%の非官能性イソブチレン(コ)ポリマー
を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
9.先行する実施形態のいずれかに記載の架橋された硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
10.シロキサン架橋を有する、実施形態9に記載の架橋された組成物。
11.裏材上に、実施形態9又は10の硬化性イソブチレンコポリマーの架橋されたコーティングを含む、接着剤物品。
12.組成物の総重量に対して10〜50重量%の前述の粘着付与剤を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
13.コポリマーが、50,000〜5,000,000の分子量(Mw)を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
14.ペンダントアルコキシシラン基を有するイソブチレンコポリマーが、イソブチレンコポリマーへのメルカプトシラン化合物のフリーラジカル付加によって調製される、先行する実施形態のいずれかに記載の硬化性イソブチレンコポリマー組成物。
15.置換イソブチレンコポリマーが、イソブチレンコポリマーへのメルカプトシランのフリーラジカル付加によって調製される、実施形態1に記載の硬化性組成物。
16.メルカプトシランが、次式のものである
【0121】
【化5】
(式中、
R
2は、多価の飽和若しくは不飽和アルキレン又はアリーレンであり、各R
3は、アルキル基又はアリール基であり、xは1〜3であり、qは1又は2である)、実施形態15に記載の硬化性組成物。
17.少なくとも1つの主表面を有する第1の基材、
少なくとも1つの主表面を有する第2の基材、及び
第1の基材の少なくとも1つの主表面と第2の基材の少なくとも1つの主表面との間に配設され、これらと接触している、実施形態1に記載の接着剤組成物
を含む、光学的に透明な積層体。
18.積層体が、450ナノメートルから650ナノメートルで約85%より大きい平均透過率を有する、実施形態17に記載の光学的に透明な積層体。
19.導電性トレースを有する光学的に透明な第1の基材と、
第1の基材上に配設され、かつトレースと接触している、実施形態1に記載の光学的に透明な感圧接着剤と、
を含む、物品。
20.接着剤上に配設されている光学的に透明な第2の基材を更に含む、実施形態19に記載の物品。
21.第1及び第2の基材が、プラスチック、ポリマーフィルム、及びガラスからなる群から選択される、実施形態20に記載の物品。
22.LCDパネル、携帯電話、ハンドヘルドデバイス、及びラップトップコンピューターからなる群から選択される電子機器に組み込まれている、実施形態19に記載の物品。
23.導電性トレースが、インジウムスズ酸化物、金、銀、銅又はアルミニウムから選択される、実施形態19に記載の物品。
24.導電性トレースを有する光学的に透明な第1の基材を準備する工程と、
実施形態1に記載の感圧接着剤を準備する工程と、
感圧接着剤を第1の基材へ積層させて、光学的に透明な接着剤が導電性トレースと接触するようにする工程と、を含む、物品を作製する方法。
25.導電性トレースが、インジウムスズ酸化物、金、銀、銅又はアルミニウムから選択される、実施形態24に記載の方法。