特許第6416450号(P6416450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6416450ポリエステル樹脂組成物、接着剤および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6416450
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物、接着剤および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20181022BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20181022BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20181022BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20181022BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20181022BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20181022BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20181022BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08K5/54
   C08K5/29
   C08G18/42
   C09J167/00
   C09J175/06
   B32B27/36
   B32B27/40
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-537681(P2018-537681)
(86)(22)【出願日】2018年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2018003714
【審査請求日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-19649(P2017-19649)
(32)【優先日】2017年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-210873(P2017-210873)
(32)【優先日】2017年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 勝則
(72)【発明者】
【氏名】浅井 文雄
(72)【発明者】
【氏名】奥村 麻子
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−090239(JP,A)
【文献】 特開平02−235978(JP,A)
【文献】 特開平07−011225(JP,A)
【文献】 特開2003−327940(JP,A)
【文献】 特開2004−285183(JP,A)
【文献】 特開2009−025575(JP,A)
【文献】 特開2009−084349(JP,A)
【文献】 特開2013−249474(JP,A)
【文献】 特開2014−074172(JP,A)
【文献】 特開2014−170632(JP,A)
【文献】 特開2016−204567(JP,A)
【文献】 特開2017−007206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C09J 1/00 − 201/10
C08G 18/00 − 18/87
71/00 − 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)100質量部と、シランカップリング剤(B)0.1〜5質量部と、分子内に2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(C)1〜5質量部とを含有し、
ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が−20〜30℃であり、融点が110〜150℃であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)が、酸成分としてテレフタル酸60〜90mol%と、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸10〜50mol%を含有し、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜55mol%を含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
シランカップリング剤(B)が、末端基としてアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基のいずれかを有することを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を含有する層を含むことを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムや金属に対して優れた接着性を有し、フレキシブルフラットケーブル用の接着剤として好適に使用することができるポリエステル樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、電子機器の内部配線等に、断面が扁平状の導電体を電気絶縁性合成樹脂フィルムでサンドイッチ状に被覆したフレキシブルフラットケーブル(以降、FFCと称することがある)が広く用いられており、配線作業の効率化が図られている。
【0003】
FFCを構成する電気絶縁性合成樹脂フィルムには、従来からポリエステルフィルムが利用されており、また、この電気絶縁性合成樹脂フィルムと導電体とを接着するための接着剤として、絶縁性や耐久性、さらには基材である電気絶縁性合成樹脂フィルムとの接着性の点から、ポリエステル系樹脂が使用されている。
【0004】
また、薄い・軽い・誤配線しにくいなどの特徴を有するFFCは、自動車分野において、部品のモジュール化や車内空間の拡大を図れることから、種々の配線や部品などへの採用が増加しており、コクピットやルーフ内部配線などの固定配線や、ステアリング、バックモニタなど可動部配線などへの採用が進んでいる。
【0005】
さらに、FFCは、軽量化と高機能化の要望が高まるに伴い、より過酷な使用環境となるエンジンルームへの展開が期待されている。エンジンルームで使用される部品においては、耐熱性はもちろん、エンジンルームに侵入する水や、沿岸付近を走行した際に侵入する塩分の影響にも耐えうる、耐塩水性が要求される。FFC用の接着剤においても、水や塩分の影響を受けても接着強度の低下が生じにくい、耐塩水性が要求されている。
【0006】
しかしながら、このような耐熱性や耐塩水性に優れた性能を有するポリエステル樹脂組成物からなる接着剤は未だ提案されていない。特許文献1、2に開示されたポリエステル樹脂と硬化剤を含有する接着剤組成物は、接着強度を向上させることを目的としたものであり、耐塩水性については考慮されておらず、塩水噴霧処理後に接着力が大きく低下し、耐塩水性が不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/129278号
【特許文献2】特開2008−150443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、特に、ポリエステルフィルムや金属に対する接着性に優れており、電子機器の内部配線等に用いられるFFC用の接着剤として好適に使用することができ、高温雰囲気下での接着力が高く耐熱性に優れ、塩水噴霧処理後の接着力の低下が小さく、耐塩水性に優れた性能を有するポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の(1)〜()を要旨とするものである。
(1)ポリエステル樹脂(A)100質量部と、シランカップリング剤(B)0.1〜5質量部と、分子内に2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(C)1〜5質量部とを含有し、
ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が−20〜30℃であり、融点が110〜150℃であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
(2)ポリエステル樹脂(A)が、酸成分としてテレフタル酸60〜90mol%と、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸10〜50mol%を含有し、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜55mol%を含有することを特徴とする(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
(3)シランカップリング剤(B)が、末端基としてアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基のいずれかを有することを特徴とする(1)または(2)記載のポリエステル樹脂組成物
(4)上記(1)〜()のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
)上記(1)〜()のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を含有する層を含むことを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、特定のポリエステル樹脂中に、シランカップリング剤とイソシアネート化合物を特定量含有してなるものであるため、特に、ポリエステルフィルムや金属に対する接着性に優れており、また接着後は、高温雰囲気下での接着力が高く耐熱性に優れ、塩水噴霧処理を施しても接着力の低下が小さく、耐塩水性に優れた接着性を有するものである。このため、本発明のポリエステル樹脂組成物を接着層として用いるFFC等の製品は、耐熱性と耐塩水性に優れ、過酷な環境下で使用しても、剥離や接触不良等の問題が生じにくいものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、シランカップリング剤(B)、イソシアネート化合物(C)を含有するものである。
【0012】
まず、本発明におけるポリエステル樹脂(A)について説明する。
ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が−20〜30℃であることが必要であり、中でも−10〜20℃であることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が−20℃未満であると、常温での弾性率が低下するため、ポリエステル樹脂組成物は、金属に対する接着力が不足する。一方、ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が30℃を超えると、室温付近での弾性率が高くなり、樹脂自体が硬くなりすぎて、ポリエステル樹脂組成物は、被着体に対して接着性が発現しない。
【0013】
また、ポリエステル樹脂(A)の融点は、110〜150℃であることが必要であり、中でも120〜140℃であることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の融点が110℃未満であったり、融点を有していない場合、ポリエステル樹脂組成物は、高温雰囲気下での接着力が低下する。一方、ポリエステル樹脂(A)の融点が150℃を超えると、ポリエステル樹脂組成物は、ラミネート時の流動性が低下し、接着力が低下する。
【0014】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度と融点を上記の範囲とするには、ポリエステル樹脂(A)の組成を以下のようにすることが好ましい。
まず、グリコール成分は、グリコール成分の合計量を100mol%とするとき、1,4−シクロヘキサンジメタノールを25〜55mol%含有することが好ましく、中でも35〜45mol%含有することがより好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量が25mol%未満では、ポリエステル樹脂(A)は、融点が低下し、上の段落で説明したように、ポリエステル樹脂組成物は、高温雰囲気下での接着力が低下することがある。一方、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量が55mol%を超えると、ポリエステル樹脂(A)は、融点は高くなるが、上の段落で説明したように、ポリエステル樹脂組成物は、ラミネート時の樹脂の流動性が低下し、接着力が低下することがある。
【0015】
ポリエステル樹脂(A)における、1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の他のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの脂肪族グリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ヒドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコールなどの芳香族グリコールが挙げられる。中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
グリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0016】
ポリエステル樹脂(A)の酸成分は、酸成分の合計量を100mol%とするとき、テレフタル酸を60〜90mol%含有することが好ましく、中でも70〜80mol%含有することがより好ましい。テレフタル酸の含有量が90mol%を超えると、ポリエステル樹脂(A)は、溶解性が低下することある。一方、テレフタル酸の含有量が60mol%未満では、ポリエステル樹脂(A)は、結晶性が下がり融点が低下するため、ポリエステル樹脂組成物は、高温雰囲気下での接着力が低下することがある。
【0017】
また、ポリエステル樹脂(A)の酸成分は、酸成分の合計量を100mol%とするとき、炭素数が4〜15の脂肪族ジカルボン酸を10〜50mol%含有することが好ましく、中でも20〜40mol%含有することが好ましい。炭素数が4〜15の脂肪族ジカルボン酸の含有量が50mol%を超えると、ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が低くなり、高温下での弾性率が低下するため、ポリエステル樹脂組成物は、接着力が不足することがある。一方、炭素数が4〜15の脂肪族ジカルボン酸の含有量が10mol%未満では、ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が高くなり、室温付近での弾性率が高くなるため、ポリエステル樹脂組成物は、接着力が低下することがある。
【0018】
炭素数が4〜15の脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸等が挙げられ、この中から単独で、あるいは2種以上を併用して使用される。中でも、アジピン酸とセバシン酸が好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂(A)における、テレフタル酸、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸以外の他の酸成分としては、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0020】
また、本発明のポリエステル樹脂(A)は後述するような水酸基価と酸価を有していることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は、3〜20mgKOH/gが好ましく、中でも5〜11mgKOH/gが好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、水酸基価が3mgKOH/g未満では、イソシアネート化合物(C)との反応が十分に進まないため、ポリエステル樹脂組成物は、接着力や耐熱性に劣ることがある。一方、ポリエステル樹脂(A)は、水酸基価が20mgKOH/gを超えると、硬化収縮が大きくなるため、ポリエステル樹脂組成物は、接着力が低下することがある。
【0021】
また、ポリエステル樹脂(A)の酸価は、5mgKOH/g以下が好ましく、中でも3mgKOH/g以下が好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、酸価が5mgKOH/gを超えると、イソシアネート化合物との反応が速くなり、溶液安定性が低下することがある。
【0022】
ポリエステル樹脂(A)の重合方法、重合時間等を変更することにより、ポリエステル樹脂(A)の水酸基価と酸価を上記の範囲とすることが可能である。そして、ポリエステル樹脂(A)のインヘレント粘度を0.52〜1.00とすることが好ましい。
【0023】
本発明において、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲で、酸化防止剤を含有してもよい。例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3−トリ(4−ヒドロキシ−2−メチル−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパノイック酸、ペンタエリトリチルテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−メチル−ベンゼンプロパノイック酸、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。リン系酸化防止剤として、3,9−ビス(p−ノニルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリ(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリフェノキシフォスフィン、イソデシルフォスファイト、イソデシルフェニルフォスファイト、ジフェニル2−エチルヘキシルフォスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)エステルフォスフォラス酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ペンタエリスリトールビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルフォスファイト)、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。チオエーテル系酸化防止剤として、4,4′−チオビス[2−t−ブチル−5−メチルフェノール]ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオネート]、チオビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−4,1−フェニレン]ビス[3−(テトラデシルチオ)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3−n−ドデシルチオプロピオネート)、ビス(トリデシル)チオジプロピオネートが挙げられる。酸化防止剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、従来公知のポリエステルの合成方法によって合成することができる。例えば、前記のような酸成分とグリコール成分を原料とし、常法によって、220〜280℃の温度でエステル化またはエステル交換反応を行った後、重縮合触媒を添加し、5hPa以下の減圧下、230〜280℃、好ましくは240〜260℃の温度で重縮合反応を行うことで得ることができる。さらに目的や用途によっては重縮合反応により得られたポリマーに、酸成分またはグリコール成分を添加して、220〜280℃の温度で解重合反応を行う方法で得ることもできる。また、後述する難燃剤や充填材は、重縮合反応時に添加することもできる。
【0025】
次に、シランカップリング剤(B)について説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、シランカップリング剤(B)を、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部含有することが必要であり、中でも0.3〜3.5質量部含有することが好ましい。
シランカップリング剤(B)を上記範囲で含有することにより、ポリエステル樹脂組成物は、特に、金属表面との密着性が向上し、金属に対する接着性が向上するとともに、塩水噴霧処理後の接着力の低下が小さく、耐塩水性に優れた性能を有するものとなる。
シランカップリング剤(B)の含有量が0.1質量部未満では、ポリエステル樹脂組成物は、金属に対する接着性の向上効果が不十分となり、塩水噴霧処理後の接着力も大きく低下する。一方、シランカップリング剤(B)の含有量が5質量部を超えると、ポリエステル樹脂組成物は、金属に対する接着性の向上効果が不十分となり、塩水噴霧処理後の接着力も大きく低下する。また、ポリエステル樹脂組成物は、高温雰囲気下での接着力に劣るものとなる。さらには、後述するポリエステル樹脂組成物の溶液は、安定性が低下する。
【0026】
シランカップリング剤(B)は、一般式:Y−R−Si−X3で示される加水分解性のシラン化合物が好ましい。Yとしては、例えば、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基が挙げられる。Rは、直鎖状、分岐状のアルキレン基である。Xとしては、例えば、メトキシ基またはエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基、オキシム基、イソプロペノキシ基が挙げられる。複数のXは、互いに同一であっても異なってもよい。ポリエステル樹脂組成物に優れた耐塩水性を付与できる点から、Yは、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基が好ましく、中でも、耐塩水性の向上効果が高いアミノ基がより好ましい。
【0027】
シランカップリング剤(B)の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
シランカップリング剤(B)の市販品としては、例えば、信越化学社製の「KBE−903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、「KBM−403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、「KBE−9007」(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)が挙げられる。
【0028】
次にイソシアネート化合物(C)について説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、イソシアネート化合物(C)を、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、1〜5質量部含有することが必要であり、中でも1.5〜3.5質量部であることが好ましい。
イソシアネート化合物(C)は、含有量が1質量部未満では、ポリエステル樹脂組成物を硬化させる働きが不足するため、ポリエステル樹脂組成物は、金属に対する接着力や塩水噴霧処理後の接着力に劣るとともに、耐熱性が低下する。一方、イソシアネート化合物(C)の含有量が5質量部を超えると、ポリエステル樹脂組成物は、ゲル化し、流動性が低下し、これにより、接着時の作業性が低下するとともに、接着性に劣るものとなる。
【0029】
本発明においてイソシアネート化合物(C)は、分子内に2以上のイソシアネート基を有することが好ましく、中でも、耐熱性の観点から3以上のイソシアネート基を有することが好ましい。
イソシアネート化合物(C)の具体例としては、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネートなどから選ばれるイソシアネート化合物の単体、あるいは一種以上から選択される上記イソシアネート化合物からなるアダクト体、イソシアヌレート体、ビューレット体、イソシアイソシアヌレート体が挙げられる。中でも、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート体、または芳香環を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0030】
分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート体であるイソシアネート化合物(C)の市販品としては、旭化成社製の「TPA−100」(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)が好ましく、芳香環を有するポリイソシアネートであるイソシアネート化合物(C)の市販品としては、コベストロ社製のデスモジュールRFE(トリス(フェニルイソシアネート)チオフォスフェート)が好ましい。
【0031】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述のように、特定のポリエステル樹脂中に、シランカップリング剤と硬化剤を特定量含有してなるものであるため、特に、ポリエステルフィルムや金属に対する接着性に優れており、また接着後は、高温雰囲気下での接着力が高く耐熱性に優れ、塩水噴霧処理を施しても接着力の低下が小さく、耐塩水性に優れた接着性を有するものである。このため、本発明のポリエステル樹脂組成物を接着層として用いるFFC等の製品は、耐熱性と耐塩水性に優れ、過酷な環境下で使用しても、剥離や接触不良等の問題が生じにくいものとなる。
【0032】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、難燃剤(D)や充填材(E)を含有することが好ましい。
難燃剤(D)は、ポリエステル樹脂組成物に難燃性を付与することができるものであって、ハロゲン系難燃剤、窒素系難燃剤、リン系難燃剤が好ましく、中でもハロゲン系難燃剤がより好ましい。
【0033】
ハロゲン系難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモ−ビスフェノールA、ビス((ジブロモプロピル)テトラブロモ−ビスフェノールS、トリス(ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、デカブロモジフェニレンオキサイド、臭素化エポキシ樹脂、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、エチレンビス(テトラブロモフタル)イミド、エチレンビスペンタブロモフェニル、ポリブロモフェニルインダン、臭素化ポリスチレン、TBBAポリカーボネート、臭素化ポリフェニレンオキシド、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等の臭素系化合物や、[2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−プロパンジイル]ビスオキシビスホスホン酸テトラキス(2−クロロエチル)、リン酸トリス(1−メチル−2−クロロエチル)、リン酸2,2−ビス(ブロモメチル)−3−クロロプロピル=ビス[2−クロロ−1−(クロロエチル)エチル]等の塩素系化合物が挙げられる。
【0034】
窒素系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸等の含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。
【0035】
リン系難燃剤としては、ポリリン酸塩系、ホスフィン酸塩系、リン酸エステル系、縮合リン酸エステル系、ホスファゼン系などの難燃剤が挙げられる。
【0036】
充填材(E)として添加するものは、上記の難燃剤の難燃性を向上させるための難燃助剤や、酸化防止剤、熱安定剤、顔料等の各種添加剤等も含むものである。難燃助剤としては、例えば、三酸化アンチモンや、錫酸亜鉛、ホウ酸亜鉛が挙げられる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物やリン系酸化防止剤が好ましい。熱安定剤としては、リン酸等が挙げられる。顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。その他の充填材としては、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ等が挙げられる。
充填材(E)はそれぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
充填材(E)は、ポリエステル樹脂組成物中においてフィラーとして作用することにより、本発明のポリエステル樹脂組成物のポリエステルフィルムや金属に対する接着力を向上させることができるものである。
したがって、難燃剤(D)を用いる場合においても、このような作用を有するもの、もしくは阻害しないものを選択することが好ましく、中でもハロゲン系難燃剤を用いることが好ましい。
【0038】
本発明のポリエステル樹脂組成物中に難燃剤(D)や充填材(E)を含む場合、これらの合計量は、ポリエステル樹脂組成物中の20〜80質量%であることが好ましく、中でも30〜75質量%であることが好ましい。
これらは、含有量が20質量%未満であると、フィラーとしての作用が不十分となり、ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステルフィルムや金属に対する接着力が低下する傾向がある。一方、これらの含有量が80質量%を超える場合は、ポリエステル樹脂組成物は、樹脂の含有割合が少なくなることから、ポリエステルフィルムや金属に対する接着力が低下する傾向がある。
【0039】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、接着剤として使用することができる。接着剤として使用する際には、本発明のポリエステル樹脂組成物を有機溶剤に溶解して使用することが好ましい。有機溶剤は、本発明のポリエステル樹脂組成物を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤、酢酸エチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤等が挙げられ、中でも、塩化メチレン、トルエン、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、単独で使用しても、あるいは複数種を混合して使用してもよい。
【0040】
ポリエステル樹脂組成物を有機溶剤に溶解させた接着剤において、ポリエステル樹脂組成物の含有量(固形分濃度)は、10〜40質量%であることが好ましく、中でも20〜30質量%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂組成物の固形分濃度が40質量%より高いと、接着剤は、溶液安定性が低下することがあり、一方、固形分濃度が10質量%未満である接着剤は、接着層の厚みを高める際には、塗布量や塗布回数を増やすことが必要となり、作業効率が劣り生産性が低下することがある。
【0041】
次に、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、本発明のポリエステル樹脂組成物を含有する層(以下、接着層と称することがある)を含むものである。中でも、フィルム層/接着層/金属層の順で積層された積層体であることが好ましく、さらには、フィルム層/接着層/金属層/接着層/フィルム層の順で積層された積層体であることが好ましい。
フィルム層を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが好ましく、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリスチレン、メタアクリル等の樹脂でもよい。
金属層は、導電体となる金属線が複数配置された層であることが好ましく、導電体を構成する金属としては、銅、鉄、アルミニウム等が挙げられ、導電体は、これらにスズ、亜鉛などをメッキしたもの、たとえばブリキ、あるいはリン酸亜鉛、クロメートなどの化成処理品等でもよい。
【0042】
本発明の積層体を作製する方法としては、本発明のポリエステル樹脂組成物を含有する接着剤をフィルム層と金属層の間に塗布し、次に、ヒートシール、ロール接着、加熱圧着等の従来公知の方法によって、溶剤を除去して接着させる方法が好適である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例中の各特性値の測定、評価方法は以下のように行った。
(1)ポリエステル樹脂の組成
日本電子社製ECZ400R型NMR装置にて、H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピーク積分強度比から求めた。
【0044】
(2)ポリエステル樹脂のインヘレント粘度(ηinh)
ウベローデ型粘度管を使用し、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合液を溶媒として、濃度0.5g/dl、温度25℃において測定した相対粘度(ηrel)をもとに下記式により算出し、dl/g単位で表した。
インヘレント粘度(ηinh)=ln(ηrel)/c
ηrel:相対粘度、c:濃度(g/dl)
【0045】
(3)ポリエステル樹脂の酸価
JIS K−0070に準拠して、試料0.5gを25mlのジオキサンに溶解し、クレゾールレッドを指示薬として0.1N−KOHで滴定した。その滴定した値を用いて、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1g当たりに換算し、酸価を求めた。
【0046】
(4)ポリエステル樹脂の水酸基価
JIS K−0070に準拠して、試料3gをピリジン50mlに加熱還流溶解し、無水酢酸をアセチル化溶液、クレゾールレッド−チモールブルーを指示薬として、0.5Nの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定した。その滴定した値を用いて、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とするKOHのmg数をポリエステル樹脂1g当たりに換算し、水酸基価を求めた。
【0047】
(5)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)
パーキンエルマー社製、示差走査熱量計(Diamond DSC)を用いて、昇温速度20℃/minで測定した。
【0048】
(6)溶液安定性
得られた接着剤の溶液粘度を、B型回転粘度計を用いて測定し、経時変化で安定性を評価した。調製後、1時間静置したときの接着剤の溶液粘度を溶解直後の粘度1とした。その後、接着剤を23℃で24時間密閉保管し、同様にB型回転粘度計を用いて接着剤の溶液粘度2を測定した。溶解直後の粘度1に対する粘度2の比率を下記判定基準に従って、2段階で評価した。
○:粘度2が粘度1の1.0倍以上、1.3倍未満
×:粘度2が粘度1の1.3倍以上
【0049】
(7)ニッケルメッキ銅との接着性(導線との接着力)
得られた接着剤を、PETフィルム(厚さ30μm)の上に塗布(塗布厚み100μm)し、150℃で3分間乾燥し、さらに50℃で72時間処理を行い、PETフィルム上に、ポリエステル樹脂組成物からなる厚み30μmの接着層が積層された積層体1を作製した。
得られた積層体1の接着層面に、ニッケルメッキ銅線(厚さ0.035mm、幅0.3mm、長さ150mm)5本を、1〜2mm間隔で、ラミネーター(テスター産業社製 SA−1010)を用いて、温度180℃、線圧40N/cm、速度1.0m/minの条件にて貼り合わせ、PETフィルム/接着層/ニッケルメッキ銅線の順に積層された積層体2を得た。
得られた積層体2を、島津製作所社製オートグラフAG−2を用いて、23℃雰囲気下で、300mm/minの引張速度で試験を行い、180°剥離接着力(剥離接着力1)を測定した。
【0050】
(8)塩水噴霧処理後のニッケルメッキ銅との接着力
上記(7)と同様にして作製した積層体2を、JIS Z2371に規定の方法に従って、72時間塩水噴霧処理を行い、24時間乾燥し、積層体3を得た。積層体3について(7)と同様にして180°剥離接着力(剥離接着力2)を測定した。
【0051】
(9)塩水噴霧処理後の剥離接着力の保持率
塩水噴霧処理後の剥離接着力の保持率を下記式で算出した。なお、剥離接着力2が0.01N/0.3mm未満の積層体については、剥離接着力の保持率は算出せず、表において「−」と記載した。
剥離接着力の保持率(%)=〔(剥離接着力2)/(剥離接着力1)〕×100
【0052】
(10)ニッケルメッキ銅との接着性(高温雰囲気下(85℃))
上記(7)と同様にして作製した積層体2について、島津製作所社製オートグラフAG−2を用いて、85℃雰囲気下で、300mm/minの引張速度で試験を行い、180°剥離接着力を測定した。
【0053】
(11)ポリエステルフィルムとの接着性
上記(7)と同様にして作製した積層体1の接着層面に、PETフィルム(厚さ30μm)を、ラミネーター(テスター産業社製 SA−1010)を用いて、温度180℃、線圧40N/cm、速度1.0m/minの条件にて貼り合わせ、PETフィルム/接着層/PETフィルムの順に積層された積層体4を得た。
得られた積層体4から25mm幅の試験片を作製し、島津製作所社製オートグラフAG−2を用いて、23℃雰囲気下で、50mm/minの引張速度で試験を行い、T型剥離接着力を測定した。なお、剥離試験において材料破壊になった試験片を合格とした。
【0054】
ポリエステル樹脂組成物の原料として、下記のものを使用した。
〔ポリエステル樹脂(A−1)〕
エステル化反応器に、ポリブチレンテレフタレートを60.4質量部、テレフタル酸を17.5質量部、アジピン酸を29.9質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールを33.6質量部、トリエチレングリコールを42.0質量部、イルガノックス1010(BASF社製)を0.12質量部となる量で仕込み、温度215℃で4時間エステル化反応を行った。得られたエステル化物を重縮合反応槽に移送した後、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを0.03質量部添加した。次いで、90分間で反応系内を0.4hPaとなるまで徐々に減圧し、245℃で7時間重縮合反応を行い、ガラス転移温度が−5℃、融点140℃のポリエステル樹脂(A−1)を得た。
【0055】
〔ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−17)の合成〕
表1に示す組成のポリエステル樹脂となるように、エステル化反応器に仕込む成分の量を変更した以外は、ポリエステル樹脂(A−1)と同様の方法でポリエステル樹脂を得た。
【0056】
得られたポリエステル樹脂(A−1)〜(A−17)の組成と特性値を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
〔シランカップリング剤〕
B−1:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBE−903)
B−2:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−403)
B−3:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE−9007)
【0059】
〔イソシアネート化合物〕
C−1:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート体(旭化成社製 TPA−100)
C−2:4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(関東化学社製)
C−3:2,4−/2,6−トルエンジイソシアネート[80/20混合物](東ソー社製 コロネートT−80)
C−4:トリス(フェニルイソシアネート)チオフォスフェート(コベストロ社製 デスモジュールRFE)
【0060】
難燃剤:ビス(ペンタブロモフェニル)エタン(アルベマール社製 SAYTEX8010)
難燃助剤:三酸化アンチモン(山中産業社製)
顔料:酸化チタン(富士チタン工業社製)
充填材:シリカ(日本アエロジル社製 アエロジルR972)
【0061】
実施例1
ポリエステル樹脂(A−1)を20質量部、ジクロロメタンを48質量部、トルエンを9.6質量部、メチルエチルケトン2.4質量部を、直径2mmのガラスビーズを入れた100mLのガラス瓶に仕込み、金属キャップで密閉した後、セイワ技研製高速ボールミル(ロッキングミルRM−50)で、23℃で1時間かけて完全に溶解させた。
次に、上記溶液80質量部に、難燃剤としてビス(ペンタブロモフェニル)エタンを10質量部、難燃助剤として三酸化アンチモンを7.2質量部、顔料として酸化チタンを2質量部、充填材としてシリカを0.8質量部仕込み、同ボールミルで、23℃で1時間かけて分散させた。
さらに、シランカップリング剤(B−1)0.2質量部、イソシアネート化合物(C−1)0.62質量部を、上記溶液に添加して、同ボールミルにて、23℃で30分攪拌混合して、ポリエステル樹脂とシランカップリング剤とイソシアネート化合物とを含有するポリエステル樹脂組成物の溶液である接着剤を得た。
【0062】
実施例2〜29、比較例1〜14
ポリエステル樹脂の種類、またシランカップリング剤、イソシアネート化合物の種類およびポリエステル樹脂100質量部に対する質量部、また難燃剤と充填材の質量部が表2〜3に示すものになるように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物の溶液である接着剤を作製した。
【0063】
実施例1〜29、比較例1〜14で得られたポリエステル樹脂組成物の組成および評価結果を表2〜3に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表2〜3から明らかなように、実施例1〜29で得られたポリエステル樹脂組成物を用いた接着剤は、金属との接着力に優れ、かつ塩水噴霧処理を行った後の接着力保持率が高く、耐塩水性に優れるものであった。
【0067】
一方、比較例1〜3のポリエステル樹脂組成物は、シランカップリング剤の含有量がポリエステル樹脂100質量部に対して0.1質量部未満であるため、得られた接着剤は、金属との接着力に劣るものであり、かつ塩水噴霧処理後の接着力保持率に劣るものであった。比較例4のポリエステル樹脂組成物は、シランカップリング剤の含有量がポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部を超えるため、得られた接着剤は、金属との接着力に劣るとともに、溶液安定性に劣るものであった。
比較例5のポリエステル樹脂組成物は、イソシアネート化合物の含有量がポリエステル樹脂100質量部に対して1質量部未満であるため、得られた接着剤は、硬化不足となり、高温雰囲気下での接着力が低く耐熱性に劣り、金属との接着力に劣るものであった。比較例6〜7のポリエステル樹脂組成物は、イソシアネート化合物の含有量がポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部を超えており、ゲル化したため、ラミネート時の流動性が低下し、金属との接着力に劣るものであった。
比較例8のポリエステル樹脂組成物は、樹脂のガラス転移温度が−20℃未満であるため、得られた接着剤は、常温での弾性率が低下し、金属との接着力に劣るものであった。比較例9のポリエステル樹脂組成物は、樹脂のガラス転移温度が30℃を超えるため、常温での弾性率が高くなり、金属との接着力に劣るものであった。
比較例10のポリエステル樹脂組成物は、樹脂の融点が存在せず、非晶性であるため、また、比較例11のポリエステル樹脂組成物は、樹脂の融点が110℃未満であるため、得られた接着剤は、いずれも、高温雰囲気下での接着力が低く、耐熱性に劣るものであった。
比較例12〜14のポリエステル樹脂組成物は、いずれも樹脂の融点が高過ぎたため、比較例12では、ラミネート時の樹脂の流動性が低下し、接着力に劣るものであり、比較例13〜14では、溶剤に溶解せず、接着剤を得ることができなかった。
【要約】
ポリエステル樹脂(A)100質量部と、シランカップリング剤(B)0.1〜5質量部と、イソシアネート化合物(C)1〜5質量部とを含有し、ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が−20℃〜30℃であり、融点が110〜150℃であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。