(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6416491
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】接触型スマートカード
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20181022BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20181022BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20181022BHJP
C23F 11/00 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
G06K19/077 188
G06K19/077 196
G06K19/077 144
G06K19/02
B42D25/305 100
C23F11/00 D
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-81778(P2014-81778)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206978(P2014-206978A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】201310125487.1
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502458039
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン ダニエル ジャン サール
(72)【発明者】
【氏名】テック デ ロイ
(72)【発明者】
【氏名】アーサー デマソ
【審査官】
甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第00/064229(WO,A1)
【文献】
特開昭61−123990(JP,A)
【文献】
特開昭62−050196(JP,A)
【文献】
特開昭62−059096(JP,A)
【文献】
特開平05−069691(JP,A)
【文献】
特表2004−538588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00 −19/18
B42D 25/00 −25/485
C23F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートカード接触パッド及びICチップを備える、接触型スマートカードであって、前記スマートカード接触パッドが、回路基板と、前記回路基板の第1側の上のカードリーダー接触要素と、前記第1側とは反対の、前記回路基板の第2側上のチップ接触要素とを含み、前記カードリーダー接触要素が、貴金属で作成される貴金属導電表面を有し、前記チップ接触要素が、非貴金属チップ端子接続表面を有し、前記ICチップが、前記回路基板の第2側に取り付けられて、前記非貴金属チップ端子接続表面と電気的に接続され、前記非貴金属チップ端子接続表面の一部が晒されている表面であることを特徴とする、接触型スマートカード。
【請求項2】
前記貴金属が金又は金組成物からなることを特徴とする、請求項1に記載の接触型スマートカード。
【請求項3】
前記非貴金属チップ端子接続表面を覆う腐食防止層をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の接触型スマートカード。
【請求項4】
貴金属導電表面を覆う、追加の腐食防止層をさらに備えることを特徴とする、前記請求項1から請求項3までの何れかに記載の接触型スマートカード。
【請求項5】
前記腐食防止層及び他の腐食防止層の両方、又は、前記腐食防止層及び前記他の腐食防止層の一方が、有機金属導電層であることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の接触型スマートカード。
【請求項6】
前記腐食防止層及び他の腐食防止層の両方、又は、前記腐食防止層及び前記他の腐食防止層の一方が、チオールベースであることを特徴とする、請求項3から請求項5までの何れかに記載の接触型スマートカード。
【請求項7】
前記腐食防止層及び前記他の腐食防止層の両方、又は、前記腐食防止層及び前記他の腐食防止層の一方が、自己組織化した単一層であることを特徴とする、請求項3から請求項6までの何れかに記載の接触型スマートカード。
【請求項8】
前記ICチップが、前記チップ接触要素に取り付けられたフリップチップであることを特徴とする、請求項1から請求項7までの何れかに記載の接触型スマートカード。
【請求項9】
前記ICチップと前記チップ接触要素とを接続する、複数の導電突起を備えることを特徴とする、請求項8に記載の接触型スマートカード。
【請求項10】
前記複数の導電突起が、尖った突起であるか又はメッキされたパッドであることを特徴とする、請求項9に記載の接触型スマートカード。
【請求項11】
前記複数の導電突起が、チップ接触要素の第1の層上に位置することを特徴とする、請求項10に記載の接触型スマートカード。
【請求項12】
キャリア基板と、請求項1から請求項11までの何れかに記載され、前記キャリア基板によって支持された接触型スマートカードとを備えることを特徴とするSIMカード。
【請求項13】
キャリア基板と、請求項1から請求項11までの何れかに記載され、前記キャリア基板によって支持された接触型スマートカードとを備えることを特徴とするバンクカード。
【請求項14】
スマートカード接触パッドの非貴金属チップ端子接続表面の酸化を防止又は制限する方法であって、ICチップをフリップチップ取付け技術によって取り付ける前に、有機金属導電腐食防止層を、非貴金属チップ端子接続表面全体に取り付ける段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
途切れのない被覆バリア表面を形成するよう、前記有機金属導電腐食防止層を前記非貴金属チップ端子接続表面全体に接触して施工することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
回路基板と、
前記回路基板によって支持された電気回路であって、該回路基板の第1側上のカードリーダー接触要素及び前記第1側とは反対の前記回路基板の第2側上のチップ接触要素とを備える電気回路と、
貴金属の導電表面を有する前記カードリーダー接触要素と、
非貴金属のチップ端子接続表面を有する前記チップ接触要素とを含み、
前記チップ端子接続表面の一部が最も外側の表面を形成する導電性腐食防止層を少なくとも一つ含む晒された導電性表面であることを特徴とする、スマートカード接触パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートカード接触パッド及びICチップを有する接触型スマートカードと、そのような接触型スマートカードを有するSIMカード及び/又はバンクカードと、該スマートカード接触パッドを形成する方法と、そのようなスマートカード接触パッドにおける非貴金属フリップチップ端子接触層の酸化を防止又は制限する方法と、スマートカード接触パッドとに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートカード接触パッドは、よく知られており、とりわけ携帯型電気通信機器及びバンクカードに用いられる。既知のパッドは、両面、すなわちカードリーダーに接触する側と、チップを取り付ける側に金が積層されている。金は腐食及び酸化に対する耐性を与え、加えて、チップ取付け側と、取り付けられるICチップとの間のワイヤボンド接続を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スマートカード接触パッドの両面に貴金属を用いると、製造費用が増加し、加えて、貴重な天然資源の消費が加速される。
【0004】
従って、本発明は、この問題の解決手法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、第1の態様において、本発明は、スマートカード接触パッドとICチップとを備え、該スマートカード接触パッドが、回路基板と、該回路基板の第1側上のカードリーダー接触要素と、該回路基板の第1側とは反対側の第2側上のチップ接続要素とを備えており、該カードリーダー接触要素が、貴金属の導電表面を有し、該チップ接続要素が、非貴金属のチップ端子接続表面を有し、該ICチップが、回路基板の第2側に取り付けられ、チップ端子接続表面と電気的に接続されている、接触型スマートカードを提供する。
【0006】
回路基板は、イメージ形成可能な回路基板であることが好ましい。本明細書全体を通して用いられる用語「イメージ形成可能な回路基板」は、限定されるものではないが、印刷のような、イメージ形成技術を用いる種々の回路形成技術の何れかによって形成された電気回路を、その上に支持することができるか又はそのように適合される、又は有することができるか又はそのように適合される、あらゆる適切な回路基板を意味することを意図するものである。すなわち、例示的には、印刷された又は印刷可能な回路基板がよく知られているが、エッチング、電気メッキ、乾式又は湿式イメージ形成、及び/又はスクリーン方式イメージ形成のような、他の回路イメージ形成方法も知られている。
【0007】
同様に、電気回路をその上に形成することのできる、如何なる適切な回路基板も利用できる。
【0008】
貴金属は、金であるか、又は金を含むものであることが好ましい。
【0009】
カードリーダー接触要素及びチップ接続要素のチップ端子接続表面における貴金属の導電表面の少なくとも一つが、電着層であることが好ましい。
【0010】
少なくとも一つの腐食防止層が、少なくとも一つのチップ端子接続表面及び貴金属導電表面を覆うように形成されることが好ましい。
【0011】
腐食防止層は、有機金属導電層であることが好ましい。
【0012】
腐食防止層は、チオールベースのものであることが好ましい。
【0013】
腐食防止層は、自己組織化した単一層であることが好ましい。
【0014】
ICチップは、チップ接続要素に取り付けられたフリップチップであることが好ましい。
【0015】
複数の導電突起が、ICチップとチップ接続要素とを相互接続することが好ましい。
【0016】
この突起は、先端の尖ったスタッド又はメッキされたパッドであることが好ましい。
【0017】
この突起は、チップ接続要素の第1層上に位置することが好ましい。
【0018】
第2の態様において、本発明は、支持基板と、該支持基板によって支持された前述の接触型スマートカードとを備えた、SIMカードを提供する。
【0019】
第3の態様において、本発明は、支持基板と、該支持基板によって支持された前述の接触型スマートカードとを備えたバンクカードを提供する。
【0020】
さらに他の態様によれば、本発明は、スマートカード接触パッドを形成する方法を提供し、該方法は、a)ロールツーロール移送システムを通して可撓性支持ストリップを供給する段階と、b)少なくとも一つの貴金属カードリーダー層を、該可撓性支持ストリップの第1側に施工する段階と、c)非金属チップ端子接続層を、該可撓性支持ストリップの第1側とは反対側の第2側に施工する段階とを含む。
【0021】
本方法は、段階b)に続いて、d)腐食防止層をチップ端子接続層及び貴金属カードリーダー層の少なくとも一つに施工する段階を含むことが好ましい。
【0022】
腐食防止層は、有機金属導電層であることが好ましい。
【0023】
他の態様によると、本発明は、スマートカード接触パッドの非金属チップ端子接続表面の酸化を防止するか又は制限する方法を提供するものであり、該方法は、フリップチップ取付け手段を用いてICカードを取り付けることに先立って、有機金属導電腐食防止層を、非貴金属チップ端子接続表面の全体に施工する段階を含む。
【0024】
腐食防止層は、非金属チップ端子接触表面の全体に連続的に施工され、途切れのない、被覆バリア表面を形成することが好ましい。
【0025】
他の態様によると、本発明は、スマートカード接触パッドを提供し、該スマートカード接触パッドは、回路基板と、該回路基板によって支持され、回路基板の第1側上にカードリーダー接触要素を有する電気回路と、該第1側とは反対側の、回路基板の第2側上のチップ端子接触要素と、非貴金属のチップ端子接続表面を有するカードリーダー接触要素とを備える。
【0026】
接触パッドは、チップ接続要素に施工された、チオールベースの有機金属導電性の自己組織化単一層であることが好ましい。
【0027】
以下に本発明の好ましい実施形態が例示的に添付の図面を参照して説明される。図において、2つ以上の図に現れる同一の構造、要素又は部品には、現れるすべての図において全て同じ参照番号が付される。図に示された部品及び形状の寸法は、全て説明の便宜上、又は正確さのために選ばれており、必ずしも縮尺通りとは限らない。図面は以下に列挙される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】フレキシブル回路基板を用いて形成された本発明によるスマートカード接触パッドの第1の実施形態を示す図であり、明確にするために、カードリーダー接触側と、その反対側のブリップチップ取付け側の両方が示されている。
【
図2】
図1に示すスマートカード接触パッドのカードリーダー接触側を示す図である。
【
図3】
図1に示すスマートカード接触パッドのフリップチップ取付け側を示す図である。
【
図4】
図2に示すスマートカード接触パッドの線A−Aに沿って切った概略断面図である。
【
図5】
図4と類似した本発明によるスマートカード接触パッドの第2の実施形態の概略断面図である。
【
図6】スマートカード接触パッドのロールツーロール製造過程の、一般的な概略流れ図である。
【
図7】
図5に示すスマートカード接触パッドを第1のICチップと組み合わせた状態で示す概略断面図である。
【
図8】
図5に示すスマートカード接触パッドを別の第2のICチップと組み合わせた状態で示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に
図1から4を参照すると、スマートカード接触パッド10の第1の実施形態が示されており、スマートカード接触パッドは、電子回路が印刷されているか又は印刷可能であるか、或いは他の手法で電子回路が取り付けられるか又はその上に形成可能な、好ましくは可撓性のある及び/又はイメージ形成可能な回路基板12と、該回路基板12のカードリーダー接触側16上のカードリーダー接触要素14と、回路基板12のチップ取付け側20でカードリーダー接触側16とは反対側にあるチップ接続要素、好ましくはフリップチップ接続要素18とを備える。
【0030】
回路基板12は、好ましくは可撓性のあるプラスチック、例えばPETによって形成されたキャリアストリップ22であり、55ミクロンから95ミクロンの範囲の厚さであり、より好ましくは約75ミクロンの厚さである。可撓性プラスチックのキャリアストリップ22は、光透過性とすることができ、本実施形態においては透明である。
【0031】
回路基板12は、イメージ形成可能であり、つまり、回路基板12の表面上に又は回路基板の本体と一体に、電気回路イメージを支持すること又はその上に有することができる。特に、回路基板12は、印刷回路フィルムであることが好ましいが、前述のように、回路イメージを形成するための他の如何なる適切な方法を用いることもできる。
【0032】
可撓性であることが好ましいが、非可撓性の回路基板を用いることもできる。
【0033】
カードリーダー接触要素14は、好ましくは電着法を用いて施工された複数の導電被覆層を備える。回路基板のカードリーダー接触側には、基板側の導電層24が施工され、この場合、導電層24は、銅製であるか又は銅を含む。この基板側の導電層24は、5ミクロンから25ミクロンの範囲であることが好ましく、10ミクロン又は約10ミクロンであることがさらに好ましい。
【0034】
次に、この場合はニッケル製であるか又はニッケルを含む導電中間層26が基板側の導電層24を覆うように施工される。導電中間層26は、途切れることなく基板側の導電層24と連続的に接触しており、1.0ミクロンから4ミクロンの範囲の厚さを有することが好ましく、2.5ミクロン又は約2.5ミクロンの厚さを有することがさらに好ましい。
【0035】
次に、この場合は金であるか又は金を含む外側導電層28が導電中間層26を覆うように施工され、結果的にカードリーダー接触表面30を形成する。同様に、この外側導電層28は、導電層24と途切れることなく連続的に接触しおり、0.02ミクロンから0.08ミクロンの範囲の厚さを有することが好ましく、0.045ミクロン又は約0.045ミクロンの厚さを有することがより好ましい。
【0036】
本実施形態において、カードリーダー接触要素14の各層は、全て金属製であることが好ましく、追加的な中間層を必要に応じて用いることができる。
【0037】
コンタクトC1からC8は、好ましくはエッチングによって、カードリーダー接触要素14に形成されるが、この場合は、湿式エッチング法を好都合に用いることができる。8つのコンタクトが設けられるが、必要に応じて8つよりも多いか又は少ないコンタクトを用いることができる。
【0038】
本実施形態において、コンタクトC1からC8は、以下のようなものである。VCCとして知られる第1のコンタクトC1は、カード内のマイクロプロセッサーチップに動作電力を供給する電力接続部として利用され、RSTとして知られる第2のコンタクトC2は、リセット線として利用され、インターフェース機器が、該リセット線を通してスマートカードのマイクロプロセッサーチップに信号を送り、リセット命令シーケンスを開始することができ、CLKとして知られる第3のコンタクトC3は、クロック信号線であり、クロック信号が該クロック信号線を通してマイクロプロセッサーチップに供給されて、インターフェース機器と集積回路カードとの間のデータ通信のために、作動速度を制御して共通フレームワークを提供し、RFUとして知られる第4のコンタクトC4は、将来の使用のために現在は未使用であり、GNDとして知られる第5のコンタクトC5は、インターフェース機器と集積回路板との間の共通の電気接地を提供する接地線であり、VPPとしても知られる第6のコンタクトC6は、第1世代の集積回路カードのEEPROMをプログラムするために用いられる、プログラム用電力接続を提供するものであり、I/Oとしても表される第7のコンタクトC7は、リーダーとスマートカードとの間の半二重通信チャネルを提供する入力/出力線であり、RFUとしても表される第8のコンタクトC8は、将来的に使用するために未使用である。コンタクト1からコンタクト8は、別の機能を提供するために再構成することができ、又は機能は必要に応じて入れ替えることができる。
【0039】
また、チップ接続要素18は、複数の導電被覆層を備えており、該導電被覆層は、一又はそれ以上のICチップ端子21から、一又はそれ以上の接触パッド端子23へ延びる導電トレース19を形成し、該接触パッド端子23は、プラスチック製キャリアストリップ22を通して、コンタクトC1からコンタクトC8のそれぞれまで延び、これらは、同様に電着法を好都合に利用して施工することができる。この場合は銅製であるか又は銅を含む追加の基板側導電層32が、基板本体12のチップ取付け側20に施工される。この追加の基板側導電層32も同様に、5ミクロンから25ミクロンの間の範囲の厚さであることが好ましく、10ミクロン又は約10ミクロンであることがさらに好ましい。
【0040】
次に、この場合は金又は金の組成物の代わりにニッケル製又はニッケルを含む、別の追加の外側導電層34が、追加の基板側導電層32を覆うよう施工されてチップ端子接続表面36を形成している。この別の追加の外側導電層34は、追加の基板側導電層32と途切れなく連続的に接触しており、1ミクロンから4ミクロンの範囲の厚さを有することができ、2.5ミクロン又は約2.5ミクロンの厚さを有することがより好ましい。
【0041】
カードリーダー接触表面30は、金又は金を含むが、主に、環境因子に対する低反応性及び審美的な理由から、他の適当な貴金属の何れか、好ましくはプラチナのような希少金属の使用を考慮することができる。同様に、ICチップの端子が取り付けられるチップ端子接続表面36には、ニッケル又はニッケル合金を使用することが推奨される。しかしながら、酸化及び腐食に耐性のある導電性非貴金属のいずれも使用することができる。
【0042】
従って、ICチップの端子は、好ましくは従来のフリップチップ取付け方法を利用してチップ端子接続表面36に取り付けることができる。典型的には、ICチップ本体は、基板本体12に接着される。フリップチップ取付け技術又は手法が好ましいが、他の取り付け手段を検討すること及び/又は利用することも可能である。
【0043】
図5を参照すると、スマートカード接触パッド10の第2の実施形態が示されており、スマートカード接触パッドは、同様に、好ましくは可撓性及び/又はイメージ形成可能な回路基板12と、該回路基板12のカードリーダー接触側16上のカードリーダー接触要素14と、カードリーダー接触側16とは反対側の、該回路基板12のチップ取付け側20上のチップ接続要素18とを備える。従って、第1の実施形態と類似するか又は同一である部品には同様の参照符号が用いられ、詳細な説明は省略される。
【0044】
チップ接続要素18は、好ましくは銅又は銅組成物である基板側導電層24を含む。しかしながら、好ましくはニッケル又はニッケル組成物である導電層は、ここでは追加の導電中間層126を形成しており、外側導電層128は腐食防止層138であり、この場合、外側導電層128は無孔の有機金属材料、好ましくは、チオールベース材料140であり、前述の追加の導電中間層126の外向き表面142の全体を覆うように連続的に形成される。好都合には、腐食防止層138はチップ接続要素18の一部を形成でき、又は腐食防止層は別個のもので結果的にチップ接続要素18を覆うように形成することができる。
【0045】
好都合には、腐食防止層138は自己組織化単一層144とすることができ、これにより、途切れのない被覆バリア表面をもたらすことができる。腐食防止層は、好ましくは導電性であるが、必要に応じて導電性でなくてもよい。
【0046】
無孔の有機チオールベース材料140は、導電性で、好ましくは透明である光透過性であり、更に人の接触に対して抗アレルギー性であるという理由から推奨される。従って、このような腐食防止層138は、該腐食防止層138が上を覆っている前述の追加の中間導電層126との導電性を維持する。さらに、この有機金属の腐食防止層138の化学量論は、自己組織化単一層144を施工の間の酸化ニッケルの生成を軽減する。クリープ腐食はよく知られた現象であり、硫黄分を含む大気環境の増加によって、電子部品の早期の故障の原因となるが、本発明の腐食防止層138は、このような有害な影響に対するバリアを形成する。腐食防止層に適当な材料は、米国マサチューセッツ州01844MethuenのOne Parlx Place所在の、Parlex USA, Inc.から商品番号N019292として入手可能である。
【0047】
しかしながら、他の適切な導電性腐食防止層を、必要に応じて検討することができる。
【0048】
必ずしも必須ではないが、カードリーダー接触要素14の金又は金組成物の導電層28を覆う追加の腐食防止層を設けることも有益である。このことは、外側の美的外観を維持しながら、金又は金組成物の導電層28の厚さを低減できるので好都合である。さらに、このような追加の腐食防止層148を利用することは、硫黄を含む環境からの腐食の影響に、貴金属導電層28が曝されることを低減できるので好都合である。この場合、追加の腐食防止層148は導電性があるので、最初の腐食防止層を参照し前述したものと同じ要素を有する。しかしながら、この追加の腐食防止層は必ずしも有機金属である必要はない。
【0049】
さらに、この追加の腐食防止層148を用いると、基板側導電層24及び中間導電層26の非貴金属が半電池反応を伴うガルバニ電池をもたらすことに起因する、カードリーダー接触要素14のガルバニック特性が減少する。
【0050】
図6を参照すると、スマートカード接触パッド10を、キャリアストリップ22上のスマートカード接触パッドとして、ロールツーロール手法を用いて製造することが好都合である。可撓性キャリアストリップ22は、ロールツーロール移送システム150を通り、カードリーダー接触要素14及びチップ接続要素18は、段階的プロセスによって施工される。参照符号152を参照すると、カードリーダー接触要素14及びチップ接続要素18の一方が最初に施工され、参照符号54を参照すると、その後、もう一方に施工される。しかしながら、カードリーダー接触要素14及びチップ接続要素18は、キャリアストリップ22がロールツーロール移送システム150を通って移送される間に同時に施工することができる。
【0051】
例えば、打ち抜き加工によってキャリアストリップ22から取り外されると、スマートカード接触パッド10の各々は、個別に適当なキャリアに取り付けられ、例えば、電話通信用SIMカード又はバンクカードのような所要のスマートカードを形成することができる。
【0052】
図7及び
図8の各々には、スマートカード接触パッドの第2の実施形態が、関連するICチップの第1の実施例及び第2に実施例と組み合わせて示されており、この場合、ICチップは、フリップチップ取付け技術を用いて取り付けられたフリップチップである。
【0053】
図7に100として全体が示されるスマートカード接触パッドは、第1のフリップチップ200を有し、該フリップチップは、複数のチップパッド202を含み、該チップパッドの各々は、導電スタッド突起204に取り付けられる。このスタッド突起204は、チップコンタクト要素18と点接触してその間に電気接触を形成するように、尖っているか又は鋭利な形状であることが好ましい。滑りを防止又は制限するために、フリップチップ200は、接着剤160によって接触パッドに固定されることが好ましい。好ましくは、接着剤は、ペースト又はフィルムの形態であることが好ましい。接着剤は、費用の関係から導電性でないものが好ましい。しかしながら、異方性(z軸)の導電性接着剤は、より高価ではあるが使用することができる。接着剤は、突起をチップコンタクト要素と接触状態に保持する。
【0054】
代替的に、
図8に101として全体が示されたスマートカード接触パッドを使用することができる。第2のフリップチップ300が取り付けられており、フリップチップはさらに、複数のチップパッド302を含み、チップパッドの各々は、導電メッキされた突起又は突出部304に取り付けられており、この場合、突起は細い線であり、前述のスタッド突起204と比べて薄型である。このメッキ突起304は、チップコンタクト要素18の外側導電層128上に当接するか又は位置するので、最外層と面接触又は面積接触して、チップをチップコンタクト要素18に電気接続する。この場合でも、フリップチップ300は、メッキ突起304をチップコンタクト要素と接触した状態に保持するように、接着剤160を用いて接着されることが好ましい。
【0055】
本実施形態において、カードリーダー接触側16は、フレキシブル回路基板本体12の表面上に、4つの層、即ち、基板側導電層24と、非貴金属中間導電層26と、貴金属外側導電層28と、前述の追加の腐食防止層148とを備えることが好ましい。
【0056】
しかしながら、本実施形態では追加の腐食防止層148が存在するので、非貴金属中間導電層26を設ける必要がなく、フリップチップ300をカードリーダー接触要素14に効率的に電気接続することができる。非貴金属中間導電層26を排除することによって、スマートカード接触パッド10の費用を削減することができる。
【0057】
接触パッド10の形成時にフリップチップ200及び300が回路基板12に取り付けられる場合には、取付け用接着剤160は、腐食防止層138の代わりに追加の中間導電層126のための酸化及び腐食に対するバリアとして使用でき、接触型スマートカードを形成するために必要な部品の数を低減できることが分かるであろう。取付け用接着剤160がこの目的で使用される場合、貴金属の外側導電層28は、別個の追加の腐食防止層148を依然として必要とする。
【0058】
このように、ICチップをチップ接続要素に取り付けるために用いられる接着剤又はボンディング剤は、前述した要求事項を満たす場合には、適当な腐食防止層となることが可能である。
【0059】
このように、必要とされる貴金属が少ないスマートカード接触パッドを提供することができる。さらに、貴金属は、カードリーダー接触表面上のみに利用される。また、非貴金属チップ端子接続表面を有するスマートカード接触パッドを提供することが可能であり、チップ端子接続表面は、ICチップを取り付ける前に、腐食又は酸化に曝されることがないか又は殆どない。
【0060】
本発明を参照して本明細書で用いる場合、用語「備える/備えている」及び用語「有する/含む」は、規定された特徴部、完全なもの、ステップ、又は構成要素の存在を明示するために用いられるが、一又はそれ以上の他の特徴部、完全なもの、ステップ、構成要素、又はこれらのグループの存在又は追加を除外するものではない。
【0061】
本発明の特定の実施形態は、説明を明確にするために、別々の実施形態の文脈で説明されているが、それらを組み合わせることにより単一の実施形態を構成することができる。対照的に、簡潔に示すために単一の実施形態の文脈において説明される、本発明の種々の特徴部は、別々に、又は他の適当な部分的組み合わせとして提供することができる。
【0062】
前記において説明された実施形態は、例示的なものであり、当業者であれば、請求項によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく別の変更例を理解できるはずである。
【符号の説明】
【0063】
12 回路基板
14 カードリーダー接触要素
16 カードリーダー接触側面
18 フリップチップ接続要素
20 チップ取り付け側面
21 ICチップ端子
22 プラスチック製キャリアストリップ
23 接触パッド端子
24 導電層
26 導電中間層
28 外側導電層
30 カードリーダー接触表面
32 基板側の導電層
34 外部導電層
36 チップ端子接続表面
100 スマートカード接触パッド
126 導電中間層
128 外側導電層
138、148 腐食防止層
160 接着剤
200 第1フリップチップ