(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定部材が、前記一対のトロリー線のうちの第1のトロリー線の端部を挟持する第1の固定部材と、前記一対のトロリー線のうちの第2のトロリー線の端部を挟持する第2の固定部材とを備え、
前記第1の固定部材および前記第2の固定部材が、前記一対のトロリー線を互いに絶縁する絶縁部材を介して連結される請求項1または2記載の連結装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のセクションインシュレータ100では、トロリー線103がトロリー線接続金具102に締着保持される際、トロリー線103の底面とトロリー線接続金具102の底面とが一致するようにトロリー線接続金具102に沿ってトロリー線103が折り曲げられることを前提にしている(
図8の実線で示されたトロリー線103を参照)。しかし、実際の取り付けにおいては、剛性を有するトロリー線103をそのように正確に折り曲げることは難しく、トロリー線103の底面がトロリー線接続金具102の底面から突出するようにトロリー線103が折り曲げられ、トロリー線103に湾曲部104が形成される(
図8の点線で示されたトロリー線103’を参照)。トロリー線103に湾曲部104が形成されると、湾曲部104とトロリー線接続金具102との間に段差が生じる。この段差をパンタグラフ(図示せず)が摺接しながら通過する際に、パンタグラフから湾曲部104が局所的に衝撃を受けるので、湾曲部104の摩耗が早くなり、トロリー線103の寿命が短くなる。また、セクションインシュレータ100では、トロリー線103をトロリー線接続金具102に締着保持させる際、トロリー線103を折り曲げて、トロリー線接続金具102の挿入孔に挿入しなければならず、その作業工程が複雑で、作業に長時間を要してしまう。
【0006】
一方、トロリー線の連結部分で段差が生じないように、トロリー線を単に直線状に固定しても、特許文献1に開示されような、トロリー線をフック状に折り曲げて固定することにより得られる連結強度を得ることができず、トロリー線の自重やパンタグラフの摺接による引っ張りに耐え得る連結強度を得ることが難しい。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、2本のトロリー線を連結する際にトロリー線を折り曲げることなく、また連結部分に段差を生じさせることなくトロリー線を直線状に連結することが可能であり、トロリー線の自重やパンタグラフの摺接によりトロリー線が受ける引っ張りに耐え得る連結強度を有し、しかも連結作業が容易な連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の連結装置は、長さ方向に延びる溝を有する一対のトロリー線を連結するための連結装置であって、前記連結装置が、前記一対のトロリー線が略直線状になるように、前記一対のトロリー線のそれぞれの端部を挟持する固定部材と、前記一対のトロリー線のそれぞれの端部を挟持するために、前記固定部材を締め付ける締結部材とを備え、前記固定部材が、略直線状に挟持される前記一対のトロリー線のそれぞれの溝に、前記溝の長さ方向に沿って係合する、略直線状に形成された係合部を有し、略直線状に配置された前記係合部が、前記係合部の長さ方向の少なくとも一部に切込部を有し、前記締結部材により前記固定部材を締め付けた際に、前記係合部と、前記一対のトロリー線のそれぞれの溝の内面とが面接触するように構成され、前記切込部に隣接する前記係合部の長さ方向における端部が、前記溝に噛み込むように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記係合部が、前記係合部の長さ方向に沿って尖端が形成されたテーパー状に形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記切込部が、前記係合部の長さ方向に沿って、複数設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記固定部材が、前記一対のトロリー線のうちの第1のトロリー線の端部を挟持する第1の固定部材と、前記一対のトロリー線のうちの第2のトロリー線の端部を挟持する第2の固定部材とを備え、前記第1の固定部材および前記第2の固定部材が、前記一対のトロリー線を互いに絶縁する絶縁部材を介して連結されることが好ましい。
【0012】
また、前記絶縁部材の少なくとも一部が、前記一対のトロリー線の端部間に配置され、前記絶縁部材が、前記一対のトロリー線に摺接する摺接体が前記一対のトロリー線に摺接するトロリー線側摺接面と、前記摺接体が前記絶縁部材と摺接する絶縁体側摺接面とが、長さ方向で段差を生じないように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2本のトロリー線を連結する際にトロリー線を折り曲げることなく、また連結部分に段差を生じさせることなくトロリー線を直線状に連結することが可能であり、トロリー線の自重やパンタグラフの摺接によりトロリー線が受ける引っ張りに耐え得る連結強度を有し、しかも連結作業が容易な連結装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の連結装置を説明する。なお、本明細書において、「上」、「下」、「上端」、「下端」という場合、連結装置が設置された状態での上、下、上端、下端を意味する。
【0016】
図1は、一例として、建屋内を移動する移動体Cに電力が供給される電力供給システムSを概略的に示している。本発明の連結装置1、11は、一対のトロリー線T、Tを連結するために用いられ、たとえば、トロリー線Tから給電される移動体C、たとえば、電動走行クレーンや、電車などの電動走行車両などに電力を供給する電力供給システムSにおいて用いられる。移動体Cはパンタグラフ等の摺接体Pを有し、図示しない電源に接続されたトロリー線Tに摺接体Pが摺接することにより、トロリー線Tから給電される。複数のトロリー線Tが、移動体Cの移動範囲内において、たとえば移動体Cの上方に架設され、連結装置1、11は、その複数のトロリー線Tを互いに連結する。連結装置1、11により、複数のトロリー線Tが連結されることにより、移動体Cは、移動体Cの移動範囲内において、連続して電力を供給されて移動し続けることが可能となる。
【0017】
連結装置1、11は、
図1では、連結装置1、11に設けられた取付部22cおよび碍子Iを介して建屋の天井Rに取り付けられているが、一対のトロリー線T、Tを連結することができれば取り付けられる位置や取り付けられる方法は特に限定されることはない。たとえば、連結装置1、11は、建屋の壁などに取り付けられてもよく、また碍子Iを介さずに電源などに直接取り付けられてもよく、さらには天井Rなどに取り付けられずに一対のトロリー線T、Tの張力によって宙吊りの状態とされてもよい。
【0018】
図1中、右側に示される連結装置1は、一対のトロリー線T、Tが絶縁部材を介して電気的に絶縁された状態で互いに連結することが可能な第1の実施形態の連結装置を示し、
図1中、左側に示される連結装置11は、一対のトロリー線T、Tを導通可能に互いに連結することが可能な第2の実施形態の連結装置を示している。以下、第1の実施形態および第2の実施形態の連結装置1、11について、それぞれ説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
本実施形態の連結装置1は、
図2および
図3に示されるように、一対のトロリー線T1、T2のそれぞれの端部Teを挟持する固定部材2と、固定部材2を締め付ける締結部材3とを備えている。
【0020】
固定部材2に挟持されるトロリー線T1、T2は、長尺の導電体である。トロリー線T1、T2は、電源からトロリー線T1、T2を介して、たとえば電動走行クレーンなどの移動体Cに電力を供給する。
図2に示されるように、トロリー線T1、T2は、長さ方向に延びる溝Tgを有した略円柱状を呈している。本実施形態では、溝Tgはトロリー線T1、T2の断面において、略V字状断面の溝が2つ対称に形成されており(
図2および
図3等参照)、略V字状断面の溝Tgがトロリー線T1、T2の長さ方向に沿って形成されている(
図2参照)。トロリー線T1、T2の材質は、導電体であれば特に限定されないが、電気伝導度や強度の観点からたとえば銅などが採用される。
【0021】
固定部材2は、一対のトロリー線T1、T2が略直線状になるように、一対のトロリー線T1、T2のそれぞれの端部Teを挟持する部材である。固定部材2は、
図2および
図3に示されるように、略直線状に挟持される一対のトロリー線T1、T2のそれぞれの溝Tgに、溝Tgの長さ方向に沿って係合する、略直線状に形成された係合部23を有している。本実施形態では、固定部材2は、
図2に示されるように、第1の固定部材2Aと、第2の固定部材2Bとの2つの固定部材を備えている。第1の固定部材2Aは、一対のトロリー線T1、T2のうちの第1のトロリー線T1の端部Teを挟持する。第2の固定部材2Bは、一対のトロリー線T1、T2のうちの第2のトロリー線T2の端部Teを挟持する。
【0022】
第1の固定部材2Aは、
図2および
図3に示されるように、トロリー線T1を挟み込む、第1挟持部材21および第2挟持部材22を備えている。第1および第2挟持部材21、22は、それぞれが係合部23を有している。第1および第2挟持部材21、22は、締結部材3により締め付けられることによって、それぞれの係合部23が互いに近づけられる。締結部材3をそのまま締め付けていくと、第1のトロリー線T1の端部Teは、第1および第2挟持部材21、22の係合部23がトロリー線T1の溝Tgに係合するとともに、トロリー線T1が挟み込まれ、第1および第2挟持部材21、22によって挟持される。逆に、締結部材3が緩められると、第1および第2挟持部材21、22の係合部23が互いに離れる方向に移動し、トロリー線T1の挟持が解除される。
【0023】
第1挟持部材21および第2挟持部材22の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第1挟持部材21は、挟持されるトロリー線T1の軸方向に細長い略矩形平板状の基部21aと、基部21aの下端部から突出する係合部23とを備えている。係合部23は、基部21aの下端側から、第2挟持部材22側に向かって突出している。第2挟持部材22は、第1挟持部材21の基部21aに対向して配置される略矩形平板状の基部22aと、基部22aの下端側から、第1挟持部材21側に向かって突出する係合部23とを備えている。また、第2挟持部材22の基部22aは、基部22aに対して略垂直に、第1挟持部材21の上端側に向かって延びる延設部22bを有し、第1挟持部材21と第2挟持部材22とが、断面略C字状になるように配置されている。本実施形態では、延設部22bの上部に取付部22cが設けられ、第2挟持部材22を建屋の天井R(
図1参照)に取り付けることが可能となっている。第2の固定部材2Bは、第1の固定部材2Aと同様の構造であるため、説明は省略する。なお、第1および第2の固定部材2A、2Bの材質は、一対のトロリー線T1、T2が略直線状になるように、一対のトロリー線T1、T2のそれぞれの端部Teを挟持することができればいかなるものであってもよいが、強度や耐食性などの要求される特性の観点から、ステンレスなどの鋼材が好適に採用される。
【0024】
締結部材3は、本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、ボルト31およびナット32とから構成されている。ボルト31を締め付けることにより、第1挟持部材21が、対向して配置された第2挟持部材22の基部22a側に近付くように移動して、トロリー線T1が第1挟持部材21および第2挟持部材22により挟持される。本実施形態では、
図3に示されるように、第1挟持部材21の基部21aには、ボルト31のネジ孔21bが形成され、第2挟持部材22Aの基部22aには、ボルト31を挿通する挿通孔22dが形成されている。
【0025】
本実施形態では、第1の固定部材2Aおよび第2の固定部材2Bの係合部23が略直線状に配置され、この係合部23と係合する一対のトロリー線T1、T2が略直線状に配置される。具体的には、
図2に示されるように、一対のトロリー線T1、T2の端面が軸方向で離間して、同軸状に配置される。この一対のトロリー線T1、T2を電気的に分断するために、本実施形態では、絶縁部材4が設けられている。
【0026】
絶縁部材4は、
図2に示されるように、挟持される一対のトロリー線T1、T2の長さ方向に離間して設けられた第1および第2の固定部材2A、2Bを互いに絶縁する絶縁本体部41と、絶縁本体部41のトロリー線T1、T2の長さ方向における絶縁本体部41の両側に第1の絶縁接続部42および第2の絶縁接続部43を備えている。
【0027】
本実施形態では、絶縁部材4は、第1および第2の固定部材2A、2Bの第1挟持部材21および第2挟持部材22に挟み込まれ、絶縁本体部41が、第1固定部材2Aおよび第2固定部材2Bの間(トロリー線T1、T2の長さ方向における間)に配置されている。これにより、第1固定部材2Aと第2固定部材2Bとの間、および、トロリー線T1およびトロリー線T2との間が絶縁される。第1の絶縁接続部42および第2の絶縁接続部43は、第1固定部材2Aおよび第2固定部材2Bのそれぞれの第1挟持部材21および第2挟持部材22の間に配置される。第1および第2の絶縁接続部42、43には、挿通孔45、46(
図3参照)が設けられており、これらの挿通孔45、46にボルト44、31がそれぞれ挿通されて、第1の絶縁接続部42は、第1の固定部材2Aに固定され、第2の絶縁接続部43は、第2の固定部材2Bに固定される。また、絶縁本体部41は、本実施形態では、
図2に示されるように、端部間絶縁部41aおよび固定部材間絶縁部41bを備え、端部間絶縁部41aは、一対のトロリー線T1、T2の端部Te間に配置され、一対のトロリー線T1、T2間同士を電気的に絶縁し、固定部材間絶縁部41bは、第1および第2の固定部材2A、2B同士の間に配置されて、第1および第2の固定部材2A、2B同士を電気的に絶縁する。これにより、トロリー線T1、T2が電気的に分断されて連結され、トロリー線T1側およびトロリー線T2側のいずれか一方のみの給電を停止することが可能になり、電動走行クレーン等の移動体Cの保守作業が容易になる。
【0028】
また、絶縁部材4は、
図2に示されるように、一対のトロリー線T1、T2に摺接する摺接体P(
図1参照)が一対のトロリー線T1、T2に摺接するトロリー線側摺接面Tfと、摺接体Pが絶縁部材4と摺接する絶縁体側摺接面41fとが、長さ方向で段差を生じないように構成されている。本実施形態では、端部間絶縁部41aが、
図2に示されるように、固定部材2に挟持されるトロリー線T1、T2の長さ方向に延び、一対のトロリー線T1、T2の半径と略同一の曲率半径を有する略半円柱状に形成されている。そして、端部間絶縁部41aの中心軸(略半円柱状の端部間絶縁部41aの円弧の中心となる軸)と、一対のトロリー線T1、T2の中心軸が略同軸になるように配置されている。このように、トロリー線側摺接面Tfと絶縁体側摺接面41fとが長さ方向で段差を生じないように構成されているので、摺接体Pが一対のトロリー線T1、T2と絶縁部材4の境界をまたいで摺接するときに、その境界部分で摺接体Pが衝撃を受けるのを抑制することができる。
【0029】
つぎに、係合部23について説明する。
【0030】
係合部23は、トロリー線T1、T2の溝Tgと係合して、トロリー線T1、T2を固定部材2により連結する。係合部23は、略直線状にトロリー線T1、T2の端部Teを挟持できるように、トロリー線T1、T2の溝Tgに沿う略直線状の突条として形成されている。係合部23の横断面形状は、トロリー線T1、T2の溝Tgと係合可能なように、溝Tgの横断面形状に対応した形状であればよい。本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、係合部23の横断面形状は、鋭角な尖端23tとして示され、係合部23全体としては、係合部23の長さ方向に沿って尖端23tが形成されたテーパー状に形成されている。
【0031】
係合部23は、
図2に示されるように、係合部23の長さ方向の少なくとも一部に切込部23cを有している。切込部23cは、係合部23の突出した部位よりも幅方向で(突出方向で)凹んだ部位であり、係合部23との間に段差を生じる部位である。切込部23cが形成されることにより、切込部23cと係合部23の長さ方向の端部23e(係合部23のうち、トロリー線T1、T2の長さ方向における端縁)との間に、エッジが形成される。本実施形態では、切込部23cは、係合部23が略矩形状にカットされ、係合部23の端部23eが、係合部23の長さ方向に延びる尖端23tに対して略垂直なエッジを形成している。しかしながら、たとえば係合部23の長さ方向に延びる尖端23tに対して鋭角なエッジを係合部23の端部23eが形成するように切込部23cが形成されていてもよい。係合部23は、切込部23cを有することにより、後に詳しく述べるように、締結部材3で固定部材2が締め付けられて、トロリー線T1、T2の溝Tgに係合したときに、トロリー線T1、T2の長さ方向の移動を強固に規制することができる。したがって、連結装置1は、一対のトロリー線T1、T2を強固に連結することができる。ここで、切込部23cは、
図2に示されるように、係合部23の長さ方向に沿って、距離をおいて複数設けられていることが好ましい。切込部23cが複数設けられることにより、トロリー線T1、T2の長さ方向の移動をより強固に規制することができ、一対のトロリー線T1、T2をより強固に連結することができる。また、上述したように、係合部23に尖端23tが形成されることにより、後に詳しく述べるように、係合部23の端部23eがトロリー線T1、T2の溝Tgに噛み込みやすくなるため、トロリー線T1、T2の長さ方向の移動をより強固に規制することができ、一対のトロリー線T1、T2をより強固に連結することができる。切込部23cは、本実施形態では、長さ方向に連続的に延びる係合部23の一部に切り込みを入れることによって形成されているが、長さ方向に延びる複数の係合部23の間の間隙として形成することもできる。
【0032】
また、係合部23は、後述するように、締結部材3により固定部材2を締め付けた際に、一対のトロリー線T1、T2のそれぞれの溝Tgの内面Tiに面接触するように構成されている。本実施形態では、
図4に示されるように、溝Tgの内面Tiと2つの溝Tgの対称軸Xとの間の角度と、溝Tgの内面Tiに係合時に対向する係合部23の対向面23fと対称軸Xとの間の角度とが、略同一であることが好ましい。これにより、係合部23が溝Tgの内面Tiと面接触しやすくなる。本実施形態では、
図4に示されるように、溝Tgの2つの内面のうちの一方の内面Ti(
図4中、上下の内面のうちの下側の面)の対称軸Xに対する角度が、係合部23の対向面23fと対称軸Xに対する角度と略同一に形成されている。また、本実施形態では、尖端23tとして形成された係合部23の横断面での角度は、
図4に示されるように、略V字状断面の溝Tgの角度よりも小さくなるように形成されている。これにより、係合部23が溝Tgに係合しやすく、噛み込みやすくなる。
【0033】
以下、
図5および
図6を参照して、本実施形態の連結装置1の作用効果を説明する。
図5は、第1のトロリー線T1を第1の固定部材2Aに配置した状態を模式的に示しており、
図6は、第1のトロリー線T1を第1の固定部材2Aが挟持した状態を模式的に示している。
【0034】
第1のトロリー線T1は、第1の固定部材2Aに取り付けられる際、
図5(a)および
図5(b)に示されるように、第1のトロリー線T1の端部Teの溝Tgに第1の固定部材2Aの係合部23が係合するように、第1および第2挟持部材21、22の間に配置される。このとき、溝Tgと対向する係合部23の対向面23fの一部が、溝Tgの内面Tiに当接している。
【0035】
次に、締結部材3(
図2および
図3参照)によって第1の固定部材2Aを締め付けると、
図6(a)および
図6(b)に示されるように、第1および第2挟持部材21、22は互いに近づく方向に移動する。それによって、第1のトロリー線T1の溝Tgに係合する係合部23が、溝Tgに奥深く侵入していく。このとき、
図6(a)に示されるように、溝Tgと対向する係合部23の対向面23fと、第1のトロリー線T1の溝Tgの内面Tiとが面接触する。それと同時に、銅などの比較的軟らかい材料で形成されるトロリー線T1、T2に、ステンレスなどの比較的硬い材料で形成される係合部23が係合すると、
図6(b)に示されるように、切込部23cに隣接する係合部23の端部23eが、溝Tgに噛み込む。係合部23の対向面23fが溝Tgの内面Tiと面接触することによって、対向面23fと内面Tiとの間の静摩擦力が増加するので、第1のトロリー線T1の軸方向の移動が規制されることになる。そして、切込部23cにトロリー線T1、T2の長さ方向で隣接する係合部23の端部23eが溝Tgに噛み込むことによって、溝Tgの内面Tiには、端部23eが噛み込んだ部分と、切込部23cの存在により噛み込まれていない部分との間に段差Tsが生じて、端部23eとこの段差Tsとが掛合することで、第1のトロリー線T1の軸方向の移動が規制されることになる。対向面23fと内面Tiとの面接触と、端部23eの溝Tgへの噛み込みとが相乗的に作用することにより、第1のトロリー線T1の軸方向の移動が強固に規制されることになる。
【0036】
このように、連結装置1が、締結部材3により固定部材2を締め付けた際に、溝Tgと対向する係合部23の対向面23fと、一対のトロリー線T1、T2のそれぞれの溝Tgの内面Tiとが面接触するように構成され、切込部23cに隣接する係合部23の端部23eが、溝Tgに噛み込むように構成されていることにより、トロリー線T1、T2の軸方向の移動が強固に規制されるので、トロリー線T1、T2に、その軸方向の互いに引き離す向きに引っ張る力が加わっても、連結装置1からトロリー線T1、T2が抜け出すことが抑制される。また、切込部23cが、係合部23の長さ方向に沿って、複数設けられていることにより、上述した端部23eと段差Tsとの掛合箇所が複数生じることになり、トロリー線T1、T2の軸方向の移動がより強固に規制されることになる。また、係合部23が、係合部23の長さ方向に沿って尖端23tが形成されたテーパー状に形成されていることにより、端部23eが溝Tgに噛み込み易くなり、段差Tsがより深く形成される。したがって、端部23eと段差Tsとがより強固に掛合することになり、トロリー線T1、T2の軸方向の移動がより強固に規制されることになる。
【0037】
以上に示してきたように、本実施形態の連結装置によれば、一対のトロリー線を略直線状に連結しても、トロリー線の自重やパンタグラフの摺接によりトロリー線が受ける引っ張りに耐え得る連結強度を得ることができる。したがって、2本のトロリー線を連結する際にトロリー線を折り曲げる必要がなくなるので、一対のトロリー線を直線的に連結することができる。そして、直線的なトロリー線の連結が可能になったことにより、トロリー線の連結作業が容易になるだけでなく、連結部分に段差を生じさせることなくトロリー線を連結することが可能になる。したがって、連結部分の段差によるトロリー線および連結装置の摩耗を抑制することができるうえ、段差によるパンタグラフ等の摺動体のチャタリングによる火花等の発生を防ぐことができる。
【0038】
<第2の実施形態>
第1の実施形態の連結装置1は、一対のトロリー線T1、T2が絶縁部材4を介して電気的に絶縁された状態で互いに連結することが可能であったのに対し、第2の実施形態の連結装置11は、一対のトロリー線T1、T2を導通可能に互いに連結することが可能である点で異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と共通する点についての説明は省略する。なお、第1の実施形態において説明した点については、本実施形態においても適用可能である。
【0039】
本実施形態の連結装置11は、
図7および
図8に示されているように、絶縁部材4が設けられていた第1の実施形態の連結装置1とは異なり、絶縁部材4が設けられていない。そして、トロリー線T1とトロリー線T2とを導通可能に互いに連結するため、トロリー線T1およびトロリー線T2の端面が互いに接触するように構成されている。トロリー線T1およびトロリー線T2は略直線状に配置され、端面において接触して段差のない連結部を形成している。ただし、トロリー線T1およびトロリー線T2は、導通可能で、かつ段差がない状態で連結されればよく、端面同士が厳密に接触していなくてもよい。たとえば、トロリー線T1およびトロリー線T2の端面の間に段差が生じないような空隙があったとしても、トロリー線T1およびトロリー線T2を連結する固定部材2によって導通可能となるので、トロリー線T1およびトロリー線T2を導通可能に連結するという目的は達成される。
【0040】
本実施形態の連結装置11も、締結部材3により固定部材2を締め付けた際に、溝Tgと対向する係合部23の対向面23fと、一対のトロリー線T1、T2のそれぞれの溝Tgの内面Tiとが面接触するように構成され、切込部23cに隣接する係合部23の端部23eが、溝Tgに噛み込むように構成されている。これにより、本実施形態の連結装置11によれば、第1の実施形態と同様に、一対のトロリー線を略直線状に連結しても、トロリー線の自重やパンタグラフの摺接によりトロリー線が受ける引っ張りに耐え得る連結強度を得ることができる。したがって、2本のトロリー線を連結する際にトロリー線を折り曲げる必要がなくなるので、一対のトロリー線を直線的に連結することができる。そして、直線的なトロリー線の連結が可能になったことにより、トロリー線の連結作業が容易になるだけでなく、連結部分に段差を生じさせることなくトロリー線を連結することが可能になる。したがって、連結部分の段差によるトロリー線および連結装置の摩耗を抑制することができるうえ、段差によるパンタグラフ等の摺動体のチャタリングによる火花等の発生を防ぐことができる。
【0041】
また、第1の実施形態では、固定部材2は、第1の固定部材2Aと、第2の固定部材2Bとが、トロリー線T1、T2の長さ方向で分離して設けられていたのに対し、本実施形態では、トロリー線T1側とトロリー線T2側とを1つの同じ固定部材により挟持している。トロリー線T1とトロリー線T2とを、2つ以上の異なる固定部材により挟持しても構わないが、本実施形態のように、トロリー線T1側とトロリー線T2側とを1つの同じ固定部材により挟持することにより、部品点数を減らすことができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、トロリー線として、2つの略V字状の溝が形成されたものを例示して説明したが、トロリー線は、長さ方向に延びる溝を有していれば、その形状は特に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で、図示した形状とは異なるトロリー線の形状としてもよい。また、トロリー線に形成される溝の形状や個数等も、本発明の目的を達成できる範囲で、図示した形状、個数とは異なるものとしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、固定部材として、板状の第1および第2挟持部材を用いたものを例示して説明したが、固定部材は、締結部材により締め付け可能であり、係合部によりトロリー線を挟持することができれば、任意の形状の固定部材を用いることができる。また、上記実施形態では、1つまたは2つの固定部材を用いて、トロリー線を挟持するものを例示して説明したが、固定部材の数は特に限定されず、3つ以上であっても構わない。
【0044】
また、上記実施形態では、締結部材としてボルトおよびナットを用いたものを例示して説明したが、固定部材を締結することができるものであれば、任意の締結部材を用いることができる。