(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水滴接触角が10度以下となる超親水性は、防曇性、帯電防止性、塗料を上塗りする場合の塗料の付着性等、従来の親水性表面よりも高い効果を発現し曇りに対する改善も期待される。本発明は、硬化膜表面が親水性、特に超親水性を示し、防曇性に優れ、且つ十分な表面硬度を有する活性エネルギー線硬化型コーティング樹脂組成物および硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、エチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物と、ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物を含有する樹脂組成物の硬化膜表面は超親水性を示し、かつ十分な膜硬度を有することを見出した。すなわち、本発明は下記項1〜5のコーティング樹脂組成物及び硬化膜に関する。
項1. ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物と、エチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング樹脂組成物であって、ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物が一般式(A)
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R
1、R
2、R
3は夫々独立してH、またはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する炭素数 3〜20の1価の基を表す。ただし、R
1、R
2、R
3が全てHになることはない。ポリグリセリンの平均重合度dは2〜20である。a、b、cは夫々0〜40であり、a+b+cは1〜40の範囲である。)
で表される活性エネルギー線硬化型コーティング樹脂組成物。
項2. エチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物が一般式(B)
【0008】
【化2】
【0009】
(R
4は炭素数2〜20の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基である。該飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基は分岐鎖を有していてよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を有していてもよい。pは2〜20であり、mは1〜3である。nは0〜2である。R
5はアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する1価の有機基である。)
で表される化合物又はその塩である、項1に記載の活性エネルギー線硬化型コーティング樹脂組成物。
項3. さらに硬化性モノマーまたはオリゴマーを含有する項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型コーティング樹脂組成物。
項4. 項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型コーティング樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
項5. 水滴接触角が10度以下である、項4に記載の硬化膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング樹脂組成物によると、この組成物を硬化させた硬化膜表面は水滴接触角が10度以下の超親水性を示し、防曇性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では一般式(A)で表わされる成分、一般式(B)で表わされる成分を用いることを特徴とする。
【0012】
本明細書中、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0013】
ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物とは、ポリグリセリンに対しエチレンオキサイドを付加し変性した化合物の(メタ)アクリレート化物のことであり、下式(A)で表される。
【0015】
式中、R
1、R
2、R
3は夫々独立してH、またはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する炭素数3〜20の1価の基を表す。ただし、R
1、R
2、R
3が全てHになることはない。ポリグリセリンの重合度dは2〜20である。a、b、cは夫々0〜40であり、(a+b+c)は1〜40の範囲である。a、b、cは、ポリグリセリンに対しエチレンオキサイドを付加したときの合計の数値が重要であるので、本明細書では(a+b+c)で表される合計値で規定する。また、合計値(a+b+c)は平均値であるので、整数であってもよく、小数で表されてもよい。
【0016】
一般式(A)で表わされるポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物の構成要素であるポリグリセリンは、水酸基当量で得られる平均重合度(d)が2〜20のポリグリセリンであり、好ましくは平均重合度が2〜10である。平均重合度が2より小さい場合、硬化膜の超親水性が得られず、平均重合度が20より大きい場合、必要な硬度が得られないため不適である。
【0017】
ポリグリセリンに付加するエチレンオキサイドの付加単位数(a+b+c)は、ポリグリセリン1モルに対して1〜40モルであり、好ましくは4〜40モルである。つまり、(a+b+c)は4〜40の範囲にあることが好ましい。付加モル数が少なすぎると硬化膜の超親水性が得られず、付加モル数が多すぎると十分な膜硬度が得られないため、不適である。
【0018】
R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立にH、またはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する炭素数3〜20の1価の基である。1つの1価の基に対しアクリロイル基またはメタクリロイル基は、1〜3個、好ましくは1個又は2個含まれる。ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物1分子中に含まれるR
2の数はポリグリセリンの重合度によって決まるが、各R
2は相互に独立してH、またはアクリロイル基またはメタクリロイル基を含む炭素数3〜20の1価の基を表す。R
1、R
2、R
3として具体的には下記の式を例示できる。
【0020】
上記の基のうち、R
1、R
2、R
3のうちアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する基(a-2〜a-9)は式(A)で表わされるポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物1分子中に好ましくは2〜20個、より好ましくは3〜12個、さらに好ましくは4〜8個含まれる。
【0021】
式(A)で表わされるポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物は、ポリグリセリンにエチレンオキサイドを反応させてポリグリセリンアルキレンオキサイドを得た後、(メタ)アクリル酸、低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物等を反応させて得ることができる。式(A)で表わされるポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物は、ポリグリセリンの水酸基の全てにエチレンオキサイドが付加し、その分子枝の末端の全てまたは一部に(メタ)アクリロイル基が付いた分子構造となる。
【0022】
式(A)で表わされるポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物は上述の反応により製造してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0023】
式(A)で表わされるポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物の市販品としては、新中村化学工業株式会社製NK ECONOMERシリーズ(A−PG5009E、A−PG5027E、A−PG5054E)、東亞合成株式会社製M−460、等を挙げることができる。
【0024】
式(B)で表される化合物は、エチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物又はその塩である。
【0026】
R
4は炭素数2〜20の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基である。該飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基は分岐鎖を有していてよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を有することがある。pは2〜20である。mは1〜3である。nは0〜2である。R
5はアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する1価の有機基である。
【0027】
炭素数2〜20の飽和炭化水素基としては、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イソオクタデシル(イソステアリル)、エイコシルなどの直鎖又は分岐を有する炭素数2〜20、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは炭素数12〜18の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0028】
炭素数2〜20の不飽和炭化水素基としては、ビニル、アリル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル(パルミトオレイル)、オクタデセニル(オレイル)、エイコセニルなどの直鎖又は分岐を有する炭素数2〜20、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは炭素数12〜18の不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0029】
好ましいR
4で表わされる基は、ラウリル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基などの炭素数8〜20、より好ましくは炭素数12〜18の直鎖又は分岐を有する飽和または不飽和炭化水素基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができる。
【0030】
pは2〜20であり、好ましくは3〜10である。
【0031】
mは1〜3であり、好ましくは1である。
【0032】
R
5はアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する1価の有機基であり、ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物や硬化性モノマーやオリゴマー等の他の成分と結合し得る。
【0033】
R
5として具体的には以下の(b−1)〜(b−6)を例示できる。
【0035】
nは0〜2の数、好ましくは0〜1の数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
【0036】
式(B)で表わされるエチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物はR
4またはR
5に(メタ)アクリロイル基を有することがあり、組成物中の他の成分と結合して親水効果をより持続させることができる。
【0037】
式(B)で表されるエチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物又はその塩として、具体的には以下の化合物又はその塩を例示することができる。
【0039】
式(B)で表されるエチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物の市販品としては例えば東邦化学工業株式会社製フォスファノールシリーズ(ML−220、RD−510Y、RB−410、RD−720N、RL−210、RL−310、RS−410、RS−610、RS−710)、ニッコーケミカルズ株式会社製NIKKOL DLP−6、DOP−8NV、DDP−2、DDP−4、DDP−6、DDP−8、DDP−10、共栄社化学株式会社製 ライトアクリレートP−1A、ライトエステルP−1M、ユニケミカル株式会社製 Phosmerシリーズ(M、PE)、等を例示することができる。
【0040】
(3−m−n)が0でない場合、本発明のリン酸エステル化合物は、塩基性金属化合物、アミン化合物、アンモニア等と反応させることによって、金属塩、アミン塩、アンモニウム塩を形成することができる。金属塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等が挙げられ、具体的にはLi、Na、K、Ca、Mg、Cu、Co、Ni、Zn、Mn、Fe、Pb、Hg、Zr等との塩を例示できる。アミン塩、アンモニウム塩としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等の塩を例示できる。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、式(A)の化合物と式(B)の化合物の他に、硬化性モノマーおよびオリゴマー、溶媒、微粒子、フィラー、着色剤、各種添加剤、重合開始剤等をさらに含有することができる。
【0042】
硬化性モノマー等としては、例えば、各種アクリレートやアクリルウレタン等のアクリル系モノマー、ウレタン系モノマー、エポキシ系モノマー、シリコーン系モノマー、およびそれらのオリゴマー等の反応性化合物が挙げられ、好ましくはアクリル系モノマーおよび/またはそれらのオリゴマーが用いられる。特に、本実施態様の組成物は、硬化膜の製造に用いられることが有用なため、2官能以上の反応性官能基を有する硬化性モノマー等を用いることが好ましい。
【0043】
2官能以上の反応性官能基を有する好ましい硬化性モノマー等は、例えば、多官能アクリレート系モノマーおよび多官能アクリルウレタン系モノマーならびにそれらのオリゴマーである。
【0044】
多官能アクリレート系モノマーは、一分子中、2個以上のアクリロイルオキシ基を有する有機化合物である。多官能アクリレート系モノマーおよびオリゴマーの具体例として、例えば、以下の化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレートおよびそれらのオリゴマー。多官能アクリレート系モノマーおよびオリゴマーは、通常、用途に併せて取捨選択し、単一または複数の組合せで使用するものである。
【0045】
多官能アクリレート系モノマーおよびオリゴマーは市販品として入手可能である。例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート等は、東亞合成(株)製 アロニックスシリーズ、新中村化学工業(株)製 Aシリーズ、大阪有機化学工業(株)製 ビスコートシリーズ、日立化成工業(株)製 ファンクリルシリーズとして市販されている。
【0046】
多官能アクリルウレタン系モノマーは、一分子中、2個以上のアクリロイルオキシ基を有する有機化合物である。多官能アクリルウレタン系モノマーおよびオリゴマーの具体例として、例えば、以下の化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない:フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等。
【0047】
多官能アクリルウレタン系モノマーおよびオリゴマーは市販品として入手可能である。例えば、東亞合成(株)製 アロニックスシリーズ、新中村化学工業(株)製 NKシリーズ、共栄社化学(株)製 UA・A・UFシリーズ、日本合成化学工業(株)製 紫光シリーズ、根上工業(株)製 アートレジンシリーズ、荒川化学工業(株)製 ビームセットシリーズとして市販されている。
【0048】
硬化性モノマー等は1種類でも使用できるが、構造の異なる2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0049】
本実施態様の組成物に含有させてもよい重合開始剤は、従来公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤を使用することができる。
【0050】
光重合開始剤としては、多種多様なものが知られており、適宜選択して使用すればよい。例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ベンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、アントラキノン、アントロン、ジベンゾスベロン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、P−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、2−(P−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、3,3−カルボニルービス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−フェニル−5−ベンゾイルチオ−テトラゾール等が挙げられる。
【0051】
樹脂モノマー、樹脂オリゴマーを硬化させる活性エネルギー線としては、放射線、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。放射線、電子線による硬化では電磁波のエネルギーが高いため、重合性二重結合のみで重合が可能である。紫外線、可視光線をエネルギー源とする場合には、重合開始剤成分を配合することが好ましい。
【0052】
重合開始剤を使用する場合、1種類単独での使用も可能であるが、2種以上を任意に配合して使用してもよい。重合開始剤の添加量は、硬化性モノマー等の合計量100重量部に対して、通常0.1〜50重量部程度、好ましくは0.5〜40重量部程度、より好ましくは1〜30重量部程度とすればよい。
【0053】
溶媒としては、ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物、リン酸エステル化合物および硬化性モノマー等を溶解する限り特に限定されず、従来公知の溶媒を使用すればよい。 例えば、親水撥油性付与剤の前記した有機溶媒が使用できる。好ましい溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、1−メトキシ―2−プロパノールアセタート等のエステル等が挙げられる。溶媒は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0054】
溶媒を使用する場合、本実施態様の組成物中の溶媒の使用量は、硬化性モノマー等の合計量100重量部に対して、通常25〜5000重量部程度、好ましくは40〜2000重量部程度、より好ましくは60〜1000重量部程度とすればよい。
【0055】
微粒子としては、カーボンナノチューブ、ナノシリカ粒子、金属粒子、セラミックス粒子、無機粒子等が挙げられる。
【0056】
フィラーとしては、各種顔料、カーボンブラック、各種合成樹脂、有機無機複合体等が挙げられる。
【0057】
着色剤としては、塗料の分野で使用される公知の顔料が挙げられる。
【0058】
本発明においては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗液とし、該塗液を基材に塗布した後、光照射等を行うことにより硬化膜とすることができる。
【0059】
本発明の硬化膜を得るための手順としては、エチレンオキサイド基を有するリン酸エステル化合物と、ポリグリセリンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物、樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー、さらに、必要に応じて、重合開始剤成分、溶剤成分、微粒子、フィラー等を適当な配合比で混合溶解させて、本発明の硬化性樹脂組成物を塗液として調製する。ついで、基材上に塗液を一定の膜厚となるよう塗布し、温風乾燥、真空乾燥等により溶媒成分を除去した後、放射線、電子線、紫外線、可視光線等のエネルギー線を照射することにより硬化膜を得ることができる。
【0060】
塗液の塗工方法は特に限定されないが、例えば、ウェットコーティングにより塗布され、その方式として例えばグラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式等が挙げられる。
【0061】
硬化膜を作製する基材としては、硬化膜の支持が可能であれば特に限定されないが、例えば、光学用途向けハードコートとして利用する場合には透明性を有するシートが望ましい。透明性シートの材質としては、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特にプラスチックシートが好ましい。プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらのシートは必要に応じて、バインダー処理、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の易着処理を行ってもよい。
【0062】
本発明の硬化膜の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。通常は、100nm〜30μm程度とすることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
【0064】
(製造例1)
ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(付加モル数8モル)15重量部、2−(イソシアネートエチル)アクリレート(昭和電工(株)製 カレンズAOI)16.4重量部、メチルエチルケトン24重量部をフラスコに入れ、50℃で反応溶液の撹拌を5時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。a+b+c=8、d=2、1分子あたりアクリレート4モル。
【0065】
(製造例2)
ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(付加モル数22モル)15重量部、2−(イソシアネートエチル)アクリレート(昭和電工(株)製 カレンズAOI)7.5重量部、メチルエチルケトン24重量部をフラスコに入れ、50℃で反応溶液の撹拌を5時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。a+b+c=22、d=2、1分子あたりアクリレート4モル。
【0066】
(製造例3)
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩(丸菱油化工業(株)製 エリミナ208)15重量部、2−(イソシアネートエチル)アクリレート(昭和電工(株)製 カレンズAOI)1.5重量部、メチルエチルケトン35重量部をフラスコに入れ、50℃で反応溶液の撹拌を5時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。
【0067】
(製造例4)
ジ(C12〜15)パレス‐6リン酸 (日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL DDP-6)15重量部、2−(イソシアネートエチル)アクリレート(昭和電工(株)製 カレンズAOI)2重量部、メチルエチルケトン30重量部をフラスコに入れ、50℃で反応溶液の撹拌を6時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。p=6。
【0068】
(製造例5)
(C12〜C15)パレス‐3リン酸 (東邦化学工業(株)製 フォスファノールRS-410)
15重量部、2−(イソシアネートエチル)アクリレート(昭和電工(株)製 カレンズAOI)2.7重量部、メチルエチルケトン30重量部をフラスコに入れ、50℃で反応溶液の撹拌を6時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。p=3。
【0069】
(実施例1〜19、比較例1〜14)
樹脂組成物は表1、表2に示す配合で全量を10gとなるように調液した。
【0070】
樹脂組成物を、PETフィルム(100μm厚)にバーコーター(No.5)によりコーティング処理を施した。その後、100℃で1分間乾燥させた。その後、UV照射装置を用いて塗膜を十分に硬化させた。硬化後の塗膜を試験片として用い、評価を実施した。評価結果を表3に示す。硬化後の塗膜の膜厚は4〜5μmであった。
【0071】
[評価方法]
<防曇性>
(i) 呼気防曇性
常温で呼気を吹きかけ、曇りの有無を目視で評価した。曇りが認められないものを○、曇りが認められたものを×とした。
(ii) 蒸気防曇性
塗膜表面に50℃蒸気を1分間当てながら曇りの有無を目視で評価した。曇りが認められないものを○、曇りが認められたものを×とした。
【0072】
<親水性>
水の接触角を協和界面科学社製DropMaster700を用いて25℃で測定した。水の接触角が10度以下のものを○、水の接触角が10度超えのものを×とした。
<耐スチールウール性(耐SW性)>
スチールウール(#0000)を用い、500g/cm
2荷重をかけ、塗膜を10往復擦った。試験後の塗膜を観察し、以下の基準に基づき評価した。
傷の本数が0本=◎
傷の本数が1〜10本=○
傷の本数が11〜30本=△
傷の本数が30本より多い=×
<塗液外観>
透明ガラス瓶に入れた塗液の外観を目視で観察し、以下の基準に基づき評価した。
塗液が均一で透明=○
塗液が微濁=△
塗液が相分離し、凝集物がある=×
<塗膜外観>
硬化後の塗膜の外観を目視で観察し、以下の基準に基づき評価した。
塗膜表面が平滑でブツが認められない=◎
塗膜表面にごくわずかにブツが認められる=○
塗膜表面にブツが認められる=△
塗膜表面に顕著なブツがあり凹凸が発生している=×
<ヘイズ値>
ヘイズメーター(日本電色(株)製 NDH-5000)を用いて塗膜のヘイズ値を測定した。ヘイズ値が1未満を○、1以上5未満を△、5以上を×とした。
【0073】
表3より、本発明の樹脂組成物より得られる硬化膜は、優れた親水性を示し、また十分な塗膜硬度・塗膜外観が得られていることが分かる。一方、比較例5〜9よりポリグリセリン構造を有さないエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化物を用いると、親水性が劣った。また、比較例12〜14よりリン酸エステル以外の親水化剤を用いると、塗膜に凹凸が発生し、外観がひどく不良となった。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】