特許第6416692号(P6416692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6416692
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】飲料抽出機
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/44 20060101AFI20181022BHJP
   A47J 31/057 20060101ALI20181022BHJP
   A47J 31/42 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   A47J31/44 100
   A47J31/057
   A47J31/42
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-100746(P2015-100746)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-214437(P2016-214437A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高比良 整
(72)【発明者】
【氏名】河野 公博
(72)【発明者】
【氏名】前川 正敏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】森田 真平
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−077530(JP,U)
【文献】 特開平06−343557(JP,A)
【文献】 実開昭55−066625(JP,U)
【文献】 実開昭56−122432(JP,U)
【文献】 実開昭62−120923(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00−31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を粉砕して原料粉を生成するためのミル空間を有するミル部と、給湯管を介して前記ミル部に湯を供給する給湯部と、供給される湯によって原料粉から抽出液を抽出するための抽出空間を有する抽出部と、前記ミル空間と前記抽出空間とを繋ぎ、前記ミル部に供給された湯及び前記ミル空間で生成された原料粉が前記抽出空間へ向けて通過する通路部とを備える飲料抽出機であって、
前記ミル部には前記ミル空間内に向けて外部から前記給湯管が挿入される貫通孔が形成され、
前記給湯管が前記貫通孔に挿入されたときに形成される前記給湯管と前記ミル部との間の隙間を閉塞する閉塞部を備え
前記閉塞部は、前記給湯管の外表面の全周にわたって形成される接当部を有し、
前記給湯管が前記貫通孔に挿入された状態で前記接当部が前記ミル部の外表面に接触することで、前記給湯管と前記ミル部との間の隙間が閉塞される飲料抽出機。
【請求項2】
前記ミル部の外表面上に、前記貫通孔の周囲を取り囲む状態で突出する突起部が形成され、
前記給湯管が前記貫通孔に挿入された状態で前記接当部が前記突起部に接触することで、前記給湯管と前記ミル部との間の隙間が閉塞される請求項に記載の飲料抽出機。
【請求項3】
前記突起部は、断面が三角形であり、三角形の一つの頂点が前記給湯管の前記接当部に当接するように形成されている請求項に記載の飲料抽出機。
【請求項4】
前記給湯管は、別の管が同軸状に内部に差し込まれた状態で、当該別の管によって前記ミル部の外表面に押し当てられている請求項の何れか一項に記載の飲料抽出機。
【請求項5】
前記ミル部は、前記ミル空間を形成するホッパーと、当該ホッパーの前記ミル空間への原料の投入を受け入れる投入口を開閉する蓋部材とを有し、
前記蓋部材が前記ホッパーの前記投入口を閉じた状態で、前記ホッパーと前記蓋部材との間の隙間を閉塞するシール部材を備える請求項1〜の何れか一項に記載の飲料抽出機。
【請求項6】
前記ミル部が有する前記蓋部材は有底筒状に構成され、
前記蓋部材の筒状部分に前記貫通孔が形成され、
前記蓋部材の前記筒状部分の外表面上に、前記貫通孔の周囲を取り囲む状態で突出する突起部が形成され、
前記ホッパーには、前記投入口の縁部の一部が切り欠かれた形状の切欠部が形成され、
前記ホッパーの外表面には、前記切欠部よりも前記投入口の縁部から離れた位置に前記シール部材の一部が嵌まり込む形状の溝が全周にわたって形成され、
前記給湯管が前記貫通孔に挿入された状態の前記蓋部材が前記ホッパーに対して前記投入口を閉じるように装着されたとき、前記給湯管は前記ホッパーの前記切欠部に嵌まり込んだ状態で位置するように構成されている請求項に記載の飲料抽出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料を粉砕して原料粉を生成するためのミル空間を有するミル部と、給湯管を介してミル部に湯を供給する給湯部と、供給される湯によって原料粉から抽出液を抽出するための抽出空間を有する抽出部と、ミル空間と抽出空間とを繋ぎ、ミル部に供給された湯及びミル空間で生成された原料粉が抽出空間へ向けて通過する通路部とを備える飲料抽出機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な飲料抽出機の技術を開示するものとして、例えば下記特許文献1が知られている。この特許文献1に記載のコーヒーメーカ(電気コーヒー沸し器)は、コーヒー豆(原料)を粉砕してコーヒー粉(原料粉)を生成するためのミル空間を有するミル部(5)と、供給される湯によってコーヒー粉からコーヒー液(抽出液)を抽出するための抽出空間を有する抽出部(26)とを備える。また、ミル空間と抽出空間とは繋がれており、ミル空間で生成されたコーヒー粉を抽出空間へ向けて排出する。湯は、ミル部の側面に形成された吐出口(7)からミル部のミル空間へ供給され、更にミル空間から抽出空間へと流入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−77542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、コーヒーは周囲の環境を高温に維持しながら抽出されることによって、美味しく抽出することができるとされている。したがって、ハンドドリップでコーヒーを抽出する場合、ドリッパを予め温めておくことによって、コーヒーを抽出する際の環境を可及的に高温に維持することが従来より行われている。また、コーヒーメーカにおいても、美味しいコーヒーを抽出することは同様に求められることである。
【0005】
しかしながら、コーヒーメーカは、コーヒーを簡便に抽出することがハンドドリップとは一線を画する大きな利点の一つである。したがって、抽出部(ドリッパ)をコーヒーメーカ本体から取外して予め温めておく等、美味しいコーヒーの抽出のためにユーザの作業工程を増やすことは決して好ましいものとは言い難い。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ユーザの作業工程を増やすことなく、原料粉から抽出液を抽出する際の環境を可及的に高温に維持することができる飲料抽出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る飲料抽出機の特徴構成は、原料を粉砕して原料粉を生成するためのミル空間を有するミル部と、給湯管を介して前記ミル部に湯を供給する給湯部と、供給される湯によって原料粉から抽出液を抽出するための抽出空間を有する抽出部と、前記ミル空間と前記抽出空間とを繋ぎ、前記ミル部に供給された湯及び前記ミル空間で生成された原料粉が前記抽出空間へ向けて通過する通路部とを備える飲料抽出機であって、
前記ミル部には前記ミル空間内に向けて外部から前記給湯管が挿入される貫通孔が形成され、
前記給湯管が前記貫通孔に挿入されたときに形成される前記給湯管と前記ミル部との間の隙間を閉塞する閉塞部を備える点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、給湯管がミル部の貫通孔に挿入された状態で、給湯管とミル部との間の隙間は閉塞部によって閉塞されるように構成されている。つまり、給湯管と貫通孔との間の隙間から蒸気などの気体がミル空間の外部に漏れ出すことを抑制できる。このように、本特徴構成の飲料抽出機では、蒸気などの気体が意図せずに漏れ出すことを抑制できるので、ユーザの手を煩わすような作業工程を増やすことなく、原料粉から抽出液を抽出する際の環境を可及的に高温に維持することができる。よって、飲料抽出機としてのコーヒーメーカでも、美味しいコーヒー液(抽出液)を抽出することが可能となる。
【0009】
本発明に係る飲料抽出機の別の特徴構成は、前記閉塞部は、前記給湯管の外表面の全周にわたって形成される接当部を有し、
前記給湯管が前記貫通孔に挿入された状態で前記接当部が前記ミル部の外表面に接触することで、前記給湯管と前記ミル部との間の隙間が閉塞される点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、給湯管がミル部の貫通孔に挿入されると、その給湯管の外表面の全周にわたって形成される接当部がミル部の外表面に接触するように構成されている。つまり、給湯管とその外周に形成される接当部とが一体となってミル部の貫通孔を覆い塞ぐことになる。その結果、給湯管とミル部との間の隙間から蒸気などの気体がミル空間の外部に漏れ出すことを確実に抑制できる。
【0011】
本発明に係る飲料抽出機の更に別の特徴構成は、前記ミル部の外表面上に、前記貫通孔の周囲を取り囲む状態で突出する突起部が形成され、
前記給湯管が前記貫通孔に挿入された状態で前記接当部が前記突起部に接触することで、前記給湯管と前記ミル部との間の隙間が閉塞される点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、給湯管がミル部の貫通孔に挿入されると、その給湯管の外表面の全周にわたって形成される接当部がミル部の外表面上の突起部に接触するように構成されている。つまり、給湯管に形成される接当部がミル部の突起部に対して特に強く押し当てられて密着することになるため、給湯管とミル部との間の隙間から蒸気などの気体がミル空間の外部に漏れ出すことをより確実に抑制できる。
【0013】
本発明に係る飲料抽出機の更に別の特徴構成は、前記突起部は、断面が三角形であり、三角形の一つの頂点が前記給湯管の前記接当部に当接するように形成されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、給湯管の接当部には、ミル部の外表面に形成される突起部の頂点部分が特に強く押し当たることになる。つまり、給湯管の接当部がミル部に対して貫通孔の周囲を囲む態様で線接触するため、ミル部に対する接当部の気密性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る飲料抽出機の更に別の特徴構成は、前記給湯管は、別の管が同軸状に内部に差し込まれた状態で、当該別の管によって前記ミル部の外表面に押し当てられている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、ミル部に対する接当部の気密性をより向上させることができる。
【0017】
本発明に係る飲料抽出機の更に別の特徴構成は、前記ミル部は、前記ミル空間を形成するホッパーと、当該ホッパーの前記ミル空間への原料の投入を受け入れる投入口を開閉する蓋部材とを有し、
前記蓋部材が前記ホッパーの前記投入口を閉じた状態で、前記ホッパーと前記蓋部材との間の隙間を閉塞するシール部材を備える点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、蒸気の漏れ出しの抑制箇所が増えるため、原料粉から抽出液を抽出する際の環境をさらに可及的に高温に維持することができる。
【0019】
本発明に係る飲料抽出機の更に別の特徴構成は、前記ミル部が有する前記蓋部材は有底筒状に構成され、前記蓋部材の筒状部分に前記貫通孔が形成され、前記蓋部材の前記筒状部分の外表面上に、前記貫通孔の周囲を取り囲む状態で突出する突起部が形成され、前記ホッパーには、前記投入口の縁部の一部が切り欠かれた形状の切欠部が形成され、前記ホッパーの外表面には、前記切欠部よりも前記投入口の縁部から離れた位置に前記シール部材の一部が嵌まり込む形状の溝が全周にわたって形成され、前記給湯管が前記貫通孔に挿入された状態の前記蓋部材が前記ホッパーに対して前記投入口を閉じるように装着されたとき、前記給湯管は前記ホッパーの前記切欠部に嵌まり込んだ状態で位置するように構成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、蓋部材とホッパーとは、蓋部材の貫通孔に挿入された給湯管が、ホッパーの投入口の縁部に形成された切欠部に嵌まり込んだ状態(即ち、蓋部材に挿入された状態の給湯管が、ホッパーの切欠部に押し当てられた状態)で組み付けられることになる。その結果、給湯管とホッパーとの間の隙間が小さくなる。
加えて、蓋部材とホッパーとの間の隙間は、ホッパーの切欠部よりも投入口の縁部から離れた位置に設けられるシール部材によって確実に塞がれる。つまり、給湯管とホッパーの切欠部との間の隙間から、ホッパー内に存在する蒸気などの気体が漏れ出したとしても、その切欠部における隙間よりも投入口の縁部から離れた位置に設けられるシール部材によって、その蒸気などの気体が外部に漏れ出すことは確実に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】飲料抽出機の全体像を示す斜視図である。
図2】飲料抽出機の断面図である。
図3】ミル部の分解斜視図である。
図4】ミル部の断面図である。
図5】ミル部のホッパーを側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係る飲料抽出機について説明する。
図1は、焙煎したコーヒー豆を原料としてコーヒー液を抽出する、飲料抽出機としてのコーヒーメーカEの全体像を示す斜視図である。図2は、コーヒーメーカEの断面図である。図1及び図2に示すように、コーヒーメーカEは、コーヒー豆等の原料を粉砕してコーヒー粉(原料粉)を生成するためのミル空間Maを有するミル部Mと、給湯管3を介してミル部Mに湯を供給する給湯部Suと、供給される湯によってコーヒー粉からコーヒー液(抽出液)を抽出するための抽出空間Daを有する抽出部Dと、ミル空間Maと抽出空間Daとを繋ぎ、ミル部Mに供給された湯及びミル空間Maで生成されたコーヒー粉が抽出空間Daへ向けて通過する通路部25とを備える。このコーヒーメーカEでは、底部1aとその底部1aから上方に延びる支柱部1bとを有する本体1を備え、ミル部Mは支柱部1bに設けられ、抽出部Dはミル部Mよりも下方で支柱部1bに設けられる。図1では、抽出されたコーヒー液を貯える付属サーバ19がコーヒーメーカEから取り外された状態を示している。
【0023】
本体1の底部1aに形成される載置部18に付属サーバ19が設置されたとき、その付属サーバ19の上方には抽出部Dが位置し、その抽出部Dの上方にはミル部Mが位置する。その結果、ミル部Mで粉砕されたコーヒー粉が抽出部Dへと下方に移送され、そのコーヒー粉から抽出されたコーヒー液が付属サーバ19へと下方に移送されることになる。そして、付属サーバ19にコーヒー液が貯えられる。また、付属サーバ19とは別の容器を載置部18に設置して、抽出されたコーヒー液をその容器で受けることもできる。
【0024】
抽出部Dは、フィルターやコーヒー粉が収容される抽出空間Daを形成するドリッパ24と、ドリッパ24の外側を覆うインナーバスケット23と、ドリッパ24の上方を覆うバスケットカバー4と、それらドリッパ24及びインナーバスケット23及びバスケットカバー4を保持するホルダ20を有する。ホルダ20は、上方及び下方に突出したピン22によって本体1の支柱部1bに装着されている。そして、ホルダ20は、ピン22を回転軸にして、本体1の支柱部1bに対して水平方向に回転可能になっている。
【0025】
抽出部Dに供給されるコーヒー粉は、ミル部Mでコーヒー豆を粉砕することで生成されたコーヒー粉でもよいが、予め粉砕されたコーヒー粉を使用者が抽出部Dに投入することもできる。例えば、使用者は、抽出部Dを構成するホルダ20の外側に形成されたつまみ部21を持って本体1からホルダ20を水平方向に移動させるような操作を行うと、ホルダ20で保持された抽出部Dの全体が、ピン22を回転軸にして移動する。そして、使用者が抽出部Dを構成するバスケットカバー4を空けると、抽出空間Daが現れて、フィルターの交換や、コーヒー粉の投入を行えるようになっている。
【0026】
本体1には、水を貯留するタンク16が設置される。タンク16に貯えられている水は、パイプ5及びL字型管7及び給湯管3を経由してミル部Mに供給される。パイプ5の途中には、加熱部としてのヒーター6が設けられ、水はヒーター6によって加熱された後でミル部Mに供給される。このように、ミル部Mに湯を供給する給湯部Suは、上記タンク16とパイプ5とL字型管7と給湯管3とヒーター6とを有して構成される。ミル部Mに供給された湯は、通路部25を通って抽出部Dに供給される。抽出部Dの抽出空間Daでは、その湯とコーヒー粉とを用いてコーヒー液の抽出が行われ、ドリッパ24の最下部にある抽出口29を経由して外部(付属サーバ19等)に排出される。
【0027】
ミル部Mは、ミル空間Maを形成するホッパー12と、そのホッパー12のミル空間Maへのコーヒー豆の投入を受け入れる投入口12aを開閉する蓋部材2を有する蓋ユニットU1とを備える。蓋ユニットU1は、蓋部材2及び給湯管3及びL字型管7及び押しスイッチ15などが一体として組み付けられた構造になっている。使用者が蓋ユニットU1の押しスイッチ15を押し操作すると、蓋ユニットU1がホッパー12の投入口12aを開いた状態になる。使用者が蓋ユニットU1を下方に押さえると、蓋ユニットU1がホッパー12の投入口12aを閉じた状態になる。具体的には、蓋ユニットU1は、L字型管7の回転軸C1を軸心として一体で揺動しながら、ホッパー12の投入口12aを開閉可能になっている。
【0028】
加えて、ミル部Mは、コーヒー豆を粉砕するためのミル刃28とそのミル刃28を回転駆動するためのモーター27を備えている。ミル刃28によって粉砕されることで生成されたコーヒー粉は、通路部25を通って抽出部Dの抽出空間Daに排出される。
【0029】
コーヒーメーカEは、使用者が動作を指示するときに用いる操作部17を備える。使用者は、操作部17に設けられた各種スイッチを操作することで、ミル部Mでのコーヒー豆の粉砕運転、抽出部Dでのコーヒー液の抽出運転を指示することができる。そして、コーヒーメーカEが備える制御部(図示せず)は、操作部17を用いて行われた使用者からの指示に応じて、ミル部M及び抽出部Dの動作を制御する。
【0030】
次に、ミル部Mの構成について具体的に説明する。
図3はミル部Mの分解斜視図である。図4は、ミル部Mの断面図である。図5は、ミル部Mのホッパー12を側方から見た図である。
上述した蓋ユニットU1の一部である蓋部材2は、上方に底部分が位置するような有底筒状に構成される。例えば、蓋部材2は、環状に形成された筒状部分2aと、その筒状部分2aの一方の開口端側を閉じる板状部分(底部分)2bとで構成される。尚、図4に示すように、本実施形態の蓋部材2は、筒状部分2aと板状部分2bとが直接接合された形状とはなっておらず、部分的に湾曲した形状を含んでいる。また、蓋部材2は、筒状部分2aよりも内周側に、環状に形成された内側リブ2dを有している。蓋部材2の筒状部分2aには、ミル空間Maに湯を供給するための給湯管3が挿入される貫通孔2cが形成される。つまり、ミル部Mにはミル空間Ma内に向けて外部から給湯管3が挿入される貫通孔2cが形成される。給湯管3は、例えば弾性変形可能な材料で形成される。
【0031】
蓋部材2には、ミル空間Maを外部に開放することで、蒸気などの気体をミル空間Maから外部に対して、意図した程度に逃がすことができる蒸気孔12hも形成されている。筒状部分2aの外表面上には、貫通孔2cの周囲を取り囲む状態で筒状部分2aの外表面から突出する突起部2eが形成されている。そして、給湯管3が貫通孔2cに対して外側から挿入されると、給湯管3の外表面の全周にわたって形成される接当部3aが筒状部分2aに形成される突起部2eに接触する。図中では、接当部3aの側面部分が筒状部分2aの外表面に接触する状態を描いている。
【0032】
コーヒーメーカEは、給湯管3が貫通孔2cに挿入されたときに形成される給湯管3とミル部Mとの間の隙間を閉塞する閉塞部Seを備え、本実施形態において閉塞部Seは上記接当部3aを有する。具体的に説明すると、給湯管3が貫通孔2cに挿入された状態で接当部3a(閉塞部Se)がミル部Mの外表面に接触することで、給湯管3とミル部Mとの間の隙間が閉塞される。
このように、コーヒーメーカEは、給湯管3がミル部Mの貫通孔2cに挿入された状態で、給湯管3とミル部Mとの間の隙間は接当部3a(閉塞部Se)によって閉塞されるように構成されている。つまり、給湯管3と貫通孔2cとの間の隙間から蒸気などの気体がミル空間Maの外部に漏れ出すことを抑制できる。特に、給湯管3の外表面の全周にわたって一体形成される接当部3aがミル部Mの外表面に接触するように構成されているため、給湯管3とその外周に形成される接当部3aとが一体となってミル部Mの貫通孔2cを覆い塞ぐことになる。このように、本実施形態のコーヒーメーカEでは、蒸気などの気体が意図せずに漏れ出すことを抑制できるので、抽出部D(ドリッパ24)をコーヒーメーカEから取外して予め温めておく工程等のユーザの手を煩わす作業工程を増やすことなく、コーヒー液を抽出する際の環境を可及的に高温に維持することができる。
【0033】
また、ミル部Mの筒状部分2aの外表面上に、貫通孔2cの周囲を取り囲む状態で突出する突起部2eが形成されているため、給湯管3が貫通孔2cに挿入された状態で、その給湯管3の外表面の全周にわたって形成される接当部3a(閉塞部Se)が突起部2eにも接触する。つまり、給湯管3に形成される接当部3aが突起部2eに対して特に強く押し当てられて密着することになるため、給湯管3とミル部Mとの間の隙間から蒸気などの気体がミル空間Maの外部に漏れ出すことをより確実に抑制できる。
【0034】
更に、図4に示すように、筒状部分2aの外表面に形成される環状の突起部2eは、断面が三角形であり、三角形の一つの頂点が給湯管3に当接するように形成されている。つまり、給湯管3の接当部3aには、ミル部Mの外表面に形成される突起部2eの頂点部分が特に強く押し当たることになる。つまり、給湯管3の接当部3aがミル部Mに対して貫通孔2cの周囲を囲む態様で線接触するため、ミル部Mに対する接当部3aの気密性を向上させることができる。
【0035】
給湯管3は、別の管(即ち、L字型管7)が同軸状に内部に差し込まれた状態で、そのL字型管7によって筒状部分2aの外表面に押し当てられた状態で組み付けられる。具体的には、給湯管3の内面には、給湯管3の軸方向に対して垂直な面を有する段部30が形成されており、その段部30を境にして先端側(ミル空間Ma側)が相対的に小径となり、後端側(L字型管7側)が相対的に大径となっている。そして、給湯管3の内面の段部30の段差に対してL字型管7の先端が接当した状態で、給湯管3及びL字型管7が一体で蓋部材2に対して組み付けられる。このような構成を採用することで、L字型管7は給湯管3を軸方向に押すことになり、給湯管3の接当部3aが筒状部分2aの外表面に対してより一層確実に接触し、結果として、ミル部Mに対する接当部3aの気密性をより向上させることができる。そして、蓋部材2を有する蓋ユニットU1は、L字型管7の回転軸C1を中心に回転しながら、開閉するように構成されている。
【0036】
コーヒーメーカEは、蓋部材2がホッパー12の投入口12aを閉じた状態で、ホッパー12と蓋部材2との間の隙間を閉塞するシール部材26を備える。シール部材26は、例えば弾性変形可能な材料で形成され、ホッパー12の本体部12dの外表面の全周にわたって装着される。シール部材26は、円環状のシール本体26aと、そのシール本体26aから外周方向に突出したシールリブ26bとを有する。このように、給湯管3によって湯が供給されるミル部Mのホッパー12と、そのホッパー12の投入口12aを開閉する蓋部材2との隙間はシール部材26によって塞がれる。つまり、ホッパー12と蓋部材2との両方に対してシール部材26が密着した状態で、両者の隙間が塞がれることになる。その結果、ホッパー12と蓋部材2との間の隙間から蒸気などの気体が漏れ出すことを確実に抑制できる。そして、蒸気の漏れ出しの抑制箇所が増えるため、コーヒー粉からコーヒー液を抽出する際の環境をさらに可及的に高温に維持することができる
【0037】
給湯管3が貫通孔2cに挿入された状態の蓋部材2がホッパー12に対して投入口12aを閉じるように装着されたとき、本体部12dの投入口12aの縁部12fの近傍の外表面が蓋部材2の筒状部分2aによって外側から取り囲まれた状態で、蓋部材2の筒状部分2aとホッパー12の本体部12dとの間の隙間がシール部材26によって塞がれる。具体的には、ホッパー12の本体部12dには、投入口12aの縁部12fの一部が切り欠かれた形状の切欠部12eが形成される。本体部12dの外表面には、切欠部12eよりも投入口12aの縁部12fから離れた位置にシール部材26の一部が嵌まり込む形状の溝12gが全周にわたって形成される。給湯管3が貫通孔2cに挿入された状態の蓋部材2がホッパー12に対して投入口12aを閉じるように装着されたとき、給湯管3は本体部12dの切欠部12eに嵌まり込んだ状態で位置するように構成されている。
【0038】
このように、蓋部材2と本体部12dとは、蓋部材2の貫通孔2cに挿入された給湯管3が、本体部12dの投入口12aの縁部12fに形成された切欠部12eに嵌まり込んだ状態((即ち、蓋部材2の貫通孔2cに挿入された状態の給湯管3が切欠部12eに押し当てられた状態)で組み付けられることになる。その結果、給湯管3と本体部12dとの間の隙間が小さくなる。
加えて、蓋部材2と本体部12dとの間の隙間は、本体部12dの切欠部12eよりも投入口12aの縁部12fから離れた位置に設けられるシール部材26によって確実に塞がれる。つまり、給湯管3と本体部12dとの間の切欠部12eにおける隙間から、本体部12d内に存在する蒸気などの気体が漏れ出したとしても、その切欠部12eにおける隙間よりも投入口12aの縁部12fから離れた位置に設けられるシール部材26によって、その蒸気などの気体が外部に漏れ出すことは抑制される。
【0039】
<別実施形態>
上記実施形態では、飲料抽出機としてのコーヒーメーカEの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成や各部品の形状や寸法などは例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。
上記実施形態では、接当部3aの側面部分が筒状部分2aの外表面に接触する場合を説明したが、接当部3aの外周面が貫通孔2cの内周面に接触することで給湯管3とミル部Mとの間の隙間が閉塞されるような構成を採用してもよい。
上記実施形態では、給湯管3と一体に形成された接当部3aによって閉塞部Seが実現される例を説明したが、他の構成の部材によって閉塞部Seが実現されてもよい。例えば、所謂O型リングのような環状部材によって閉塞部Seを構成してもよい。この場合、給湯管3が貫通孔2cに挿入されたときに形成される給湯管3とミル部Mとの間の隙間をその環状部材によって閉塞させればよい。このとき、閉塞部Seとしての環状部材は、ミル部Mの外表面及び給湯管3の外周面の双方に接触する状態でそれらの隙間を閉塞してもよいし、貫通孔2cの内周面及び給湯管3の外周面の双方に接触する状態でそれらの隙間を閉塞してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、高温下でより美味しい抽出液を抽出できる飲料抽出機に利用できる。尚、本実施形態では、コーヒーメーカEを飲料抽出機として例示しているが、コーヒーメーカEとは別の飲料抽出機に本発明を適用することもできる。例えば、茶葉或いは焙煎した大豆や植物の根などを原料とし、その原料の粉砕及び抽出液の抽出などを行うような飲料抽出機に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
2 蓋部材(ミル部)
2a 筒状部分
2c 貫通孔
2e 突起部
3 給湯管(給湯部)
3a 接当部(閉塞部)
7 L字型管(給湯部)
12 ホッパー(ミル部)
12a 投入口
12e 切欠部
12d 本体部
12f 縁部
12g 溝
25 通路部
26 シール部材
E コーヒーメーカ(飲料抽出機)
M ミル部
Ma ミル空間
D 抽出部
Da 抽出空間
Se 閉塞部
Su 給湯部
図1
図2
図3
図4
図5