【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、これら課題は、原子時計のための装置を用いて解決され、この装置は、
−隙間を含み、セルを収容するために及び該セルに少なくとも一点で直接接触するよう配置された、前記原子時計のセル内への気体の応答要求及び気体の加熱のための導電部材を含むプリント回路基板と、
−前記導電部材に接続するように配置された、熱を発生させるための熱源と、
−前記セル内の気体の原子に応答要求するためのマイクロ波信号を前記導電部材へ送信するために該導電部材に接続されるように配置されたマイクロ波伝達手段と
を含んでいる。
【0018】
このような配置では、このマイクロ波信号によって生成される磁場(H−フィールド)の向きは、コイルによって生成されるC−フィールドと同じ方向を有している。
【0019】
本発明の文脈では、「プリント回路基板」(PCB)という表現は、電子部品が配置された非導電性基板を指している。導電性の手段、例えば導電性トラック又は導電性パッドなどがプリント回路基板上に例えばエッチングによって形成される。これら導電性の手段は、PCB上に配置された電子部品を接続する。
【0020】
好ましい一実施例では、熱源は、プリント回路基板上に配置された電子部品、例えばトランジスタ又は抵抗器である。第1のバリエーションでは、熱源がPCB上の導電トレースによって装置の導電部材に接続される。この導電部材は、導電性であり、セルを包囲するとともに、少なくとも一点でセルに直接接触し、セルを加熱する。本発明による導電部材は、加熱装置として作用する。好ましい実施例では、導電部材の厚さは2mmより大きく、この場合、導電部材は、セルを効率的かつ均等に加熱するためにその質量を利用する。この場合、導電部材の厚さは、共振周波数によって規定される必要はなく、その加熱機能によって規定される。そして、本発明による装置の導電部材を用いたセルの加熱は、公知の二本巻きらせんによって生成される加熱よりも均等である。
【0021】
第2のバリエーションでは、熱源は、後述のように、セルを包囲する導電トレース上に溶接されている。
【0022】
他の実施例では、熱源が導電部材の外面におけるバンド及び/又はワイヤである。このバンド又はワイヤは、バンド又はワイヤにおける循環電流がセルにおいて長手方向の磁場を誘導しないように配置されている。この実施例では、熱源が導電部材上にある。
【0023】
他の実施例では、熱源が導電部材上のバイファイラ(2本線)巻きを含んでおり、このバイファイラ巻きは、第1のワイヤ及び第2のワイヤを含んでいるとともに、セルにおける磁場の誘導を回避するために、同時に、第1のワイヤにおいて第1の方向に第1の電流を導き、第2のワイヤにおいて第1の方向とは反対の第2の方向に第1の電流と同じ大きさの第2の電流を導く。
【0024】
1つの好ましい実施例では、例えば熱伝達トレースなどのようなプリント回路基板上の他の導電トレースに導電部材を接続するために、プリント回路基板が、導電部材の周りに配置され、導電部材に接続された部材導電トレースを含んでいる。好ましい実施例では、部材導電トレースの形状が導電部材の区域(セクション)に対応している。他の好ましい実施例では、部材導電トレースの寸法は、導電部材の区域(セクション)の寸法よりも大きい(例えば、導電部材が円形状の区域(セクション)及び5mmの直径を有する中空円筒であれば、部材導電トレースは、5mmより大きな直径、例えば6mmの直径を有するリングである)。そして、導電部材は、プリント回路基板の部材導電トレース上に配置されている。
【0025】
他の実施例では、トランジスタ、抵抗器などの電子部品は、部材導電トレース上に直接溶接されている。
【0026】
1つのバリエーションでは、本発明による装置のプリント回路基板は、
−導電部材の温度を感知するための温度センサと、
−温度センサを導電部材へ接続するためのセンサ導電トレースと
を含んでいる。
【0027】
好ましい一実施例では、温度センサは、PCB上に配置され、PCB上の導電トレースによって導電部材に接続された例えば負温度係数(NTC)サーミスタ又は正温度係数(PTC)サーミスタである、サーミスタとしての電子部品である。好ましい実施例では、センサ導電トレースは、部材導電トレースを介して導電部材に接続されている。
【0028】
好ましい実施例では、本発明による装置の導電部材は、例えば円形状又はだ円形状の円筒である中空円筒である。他の実施例では、中空の角柱、例えば平行六面体である。
【0029】
1つの実施例では、導電部材の高さは、10mmより小さく、例えば6mmより小さく、例えば2mmである。他の実施例では、導電部材の幅又は直径は、10mmより小さく、例えば6mmより小さく、例えば2mmである。
【0030】
1つの実施例では、導電部材は、この導電部材の内面がセルを収容するために配置された形状を有するように配置されている。1つの実施例では、セルは、球状の形状を有している。このような場合には、導電部材の内面で規定された空間又は空洞も球状の形状を有する。
【0031】
他の実施例では、PCBの区域(セクション)は、正方形(n×n)又は長方形(n×m)であり、ここで、n及び/又はmは、2〜10mmである。
【0032】
本発明による装置の導電部材はLCギャップエキサイタではなく、すなわち共振において動作する必要がないと理解されるべきである。実際には、導電部材へ送信されるマイクロ波信号の周波数は、導電部材の共振振動数と同じである必要はなく、共振周波数は1/(LC)と定義され、ここで、Cは導電部材のギャップにより与えられるキャパシティであり、Lは導電部材のインダクタンスである。換言すれば、導電部材の形状及びサイズは、所望の共振周波数によってあらかじめ規定される必要がなく、その結果、導電部材の製造者は、導電部材の設計に対するより高い自由度を有する。
【0033】
本発明による装置は、セルを加熱するだけではなく、セル内の気体の原子に応答要求するものでもある。実際には、マイクロ波伝達手段は、セル内の気体の原子に応答要求するための長手方向のマイクロ波磁場信号を導電部材へ送信するために、マイクロ波信号生成器に導電部材を接続するものである。1つの実施例では、マイクロ波伝達手段は、1つ又は複数のボンディングワイヤを含んでいる。他の実施例では、マイクロ波伝達手段は、本発明による装置のPCB上の1つ又は複数の導電トレースを含んでいる。
【0034】
本発明による装置は、セル内の原子の加熱及び応答要求を行うだけではなく、容易に製造されるものである。その製造は、以下のステップを含んでいる:
−プリント回路基板上に導電部材を配置すること、
−少なくとも一点で導電部材がセルに直接接触するようセルを配置すること。
【0035】
そして、セルは、例えば接着によってプリント回路基板上に固定されることができる。導電部材も、例えば接着又は軟ろう付けによってプリント回路基板上に固定されることができる。
【0036】
好ましい実施例では、セルを収容する装置の導電部材の空洞に対応しているプリント回路基板の一部が孔を有する。実際、セルが一般に透明な材料、すなわち光が透過するように適合された材料で作られているため、光は、セル及びPCBの孔を通って光検出器へ向けて通過できる。他の実施形態では、セルを含むための装置の導電部材の空洞に対応するプリント回路基板の一部は、孔を含んでいないとともに、透明な材料で作られている。
【0037】
そして、装置の作動にとって有用な全ての要素及び電子部品は、例えばピックアンドプレイス技術によって容易にプリント回路基板上へ配置されることができる。
【0038】
「PCB上に配置」という表現は「本発明による導電部材を含むPCB表面上」という意味である必要はないと理解されるべきである。実際、知られているように、電子部品は、導電部材を含む側とは反対側の表面にも配置され得るとともに、PCBの導電性の孔(バイアス)を介して導電部材に接続されることが可能である。
【0039】
このような電子部品は、プリント回路基板上に配置された、熱源として作用するトランジスタを含むことができる。プリント回路基板上の導電トレースは、トランジスタを導電部材に接続することが可能である。
【0040】
このような電子部品は、プリント回路基板上に配置された、熱源として作用する抵抗器を含むことができる。プリント回路基板上の導電トレースは、同様に、抵抗器を導電部材に接続することが可能である。
【0041】
このような電子部品は、プリント回路基板上に配置され、プリント回路基板の他の導電トレースによって導電部材に接続された、導電部材の温度を感知するための温度センサを含むことができる。
【0042】
このような電子部品は、専用の集積回路統合加熱測定部と、プリント回路基板上に配置され、プリント回路基板の他の導電トレースによって導電部材に接続されたコントロールモジュールとを含むことができる。
【0043】
本発明は、
−本発明による装置と、
−装置の導電部材内のセルと、
−セルへ光を送るための例えばVCSELである光源を含んだ第1のプリント回路基板と、
−セル内にC−フィールドを発生させるためのコイルの少なくとも一部を含む第2のプリント回路基板と、
−光源によって生成され、セルを通過する光を感知するための光センサを含む第3のプリント回路基板と、
−支持部と
を含んだ原子時計に関するものでもある。
【0044】
有利には、支持部が導電性、例えば金属製であり、この支持部は、本発明による装置のPCB、第1のプリント回路基板、第2のプリント回路基板及び第3のプリント回路基板が当該支持部上で整列するように配置されている。
【0045】
本発明の文脈では、「整列されている」という表現は、本発明による装置のPCB、第1のプリント回路基板、第2のプリント回路基板及び第3のプリント回路基板が直線上に配置されていることを示している。
【0046】
1つの好ましい実施例では、この直線は、水平、すなわち原子時計を支持する平面に対してほぼ平行である。このような場合には、支持部は、各PCBとの電気的及び機械的な接続を形成するためにPCBごとに1つ又は複数の導電ピンを含んでいる。そして、PCBは、支持部上に垂直に配置されているとともにピンによって支持部に電気的及び機械的に接続されている。2つの連続したPCBの間の間隔は1〜5mmである。
【0047】
他の実施例では、PCBが支持部上に積層されるように、この直線は、垂直、すなわち原子時計を支持する平面に対してほぼ垂直である。
【0048】
好ましい実施例では、原子時計の全てのPCBは同一の形状及びサイズを有している。これらの区域(セクション)は、正方形(n×n)又は長方形(n×m)であり、n及び/又はmは2〜10mmである。
【0049】
他の好ましい実施例では、原子時計は、支持部と協働し、支持部上のPCBを密封して閉鎖するキャップを更に含んでいる。
【0050】
1つの好ましい実施例では、支持部の区域(セクション)は長方形(p×q)であり、ここで、pは3cmより小さく、qは2cmより小さい。1つの好ましい実施例では、支持部の区域(セクション)は、2cm×1cmの長方形である。
【0051】
本発明による原子時計の光源も、加熱され、所定の温度に維持される必要がある。本発明の独立した態様によれば、セル内へ光を送るための例えばVCSELである光源を含む第1のプリント回路基板は、この第1のPCB上に配置されたトランジスタとしての導電源によって加熱され、導電トレース又はボンディングを介してレーザに接続されている。第1のPCBは、レーザがその上に配置されている導電トレースを含むことが可能である。導電トレースは、レーザの区域(セクション)に対応する形状を有することができる。
【0052】
本発明は、
−本発明による装置を支持部上に配置すること、
−第1のプリント回路基板を支持部上に配置すること、
−第2のプリント回路基板を支持部上に配置すること、
−第3のプリント回路基板を支持部上に配置すること
を含む原子時計の製造のための方法に関するものでもあり、装置のPCB、第1のプリント回路基板、第2のプリント回路基板及び第3のプリント回路基板は、支持部上に整列されている。
【0053】
本発明は、例示によって与えられ、各図によって図示された実施例の説明を用いてより良好に理解される。