(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6416935
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】ヒューマノイドロボットのための衝撃吸収装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20181022BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20181022BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
B25J5/00 E
F16F7/00 F
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-566630(P2016-566630)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公表番号】特表2017-514711(P2017-514711A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】EP2015060046
(87)【国際公開番号】WO2015169894
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】1454161
(32)【優先日】2014年5月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311003754
【氏名又は名称】ソフトバンク・ロボティクス・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】SOFTBANK ROBOTICS EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレール,バンサン
(72)【発明者】
【氏名】テシエ,リュドビク
(72)【発明者】
【氏名】ミュニエ,ファビアン
【審査官】
臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−071758(JP,A)
【文献】
特開2003−266363(JP,A)
【文献】
特開2004−286205(JP,A)
【文献】
特開2007−160434(JP,A)
【文献】
特開2006−136968(JP,A)
【文献】
特開2010−125546(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/006005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00−19/06
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ロボット(1)のための衝撃吸収装置において、
− 前記移動ロボット(1)に連結される剛構造(20)と、
− 変形可能な外殻(21;23)と、
− 緩衝器(22;24)と、
− 前記剛構造(20)に固定される電子モジュール(54)と
を備え、前記緩衝器(22;24)が、主方向(X)に出るセルの組を備える可撓性セル状構造からなり、および第1の端部で前記剛構造(20)に前記主方向(X)に取り付けられ、かつ前記第1の端部と反対の第2の端部で前記変形可能な外殻(21;23)に前記主方向(X)に連結され、
前記緩衝器(24)が、両端で前記主方向(X)に出る排気筒(60)を備え、前記電子モジュール(54)によって放出された熱を前記移動ロボット(1)から排出することを可能にすることを特徴とする、衝撃吸収装置。
【請求項2】
前記外殻(21)が、少なくとも1つのサイレントブロックタイプの吸収性固定部(43)によって、前記剛構造(20)にも直接連結される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記緩衝器(22;24)が、前記主方向(X)に実質的に直角なシール平面を備え、前記緩衝器(22;24)の前記可撓性セル状構造が、前記セルが前記主方向(X)において前記シール平面からの距離を縮めるように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記緩衝器(22;24)が、天然ゴム、4−ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、三元重合体、ポリエーテルブロックアミド、エラストマー熱可塑性樹脂、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性オレフィン、ポリサルファイド、エラスチンタンパク質、シリコーンエラストマー、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エラストマー、エチレン−アクリル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンエラストマーを含むリストから選択される材料からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記緩衝器(24)に固定され、および前記電子モジュール(54)の近くでかつ前記排気筒(60)を通して空気流を発生させることが可能なファン(55)を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記剛構造(20)に連結される少なくとも1つの光源(56;57)を備え、前記緩衝器(22)が、前記光源(56;57)によって前記移動ロボット(1)から放出される光を案内するように構成される突出ダクト(50;51)を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記剛構造(20)に連結される少なくとも1つの音源(58)を備え、前記緩衝器(22)が、前記音源(58)によって前記移動ロボット(1)から放出される音波を案内するように構成される突出ダクト(52)を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記外殻(21)の内壁に固定される少なくとも1つのマイク(53)を備え、前記緩衝器(22)が防音を可能にする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の衝撃吸収装置を備えるヒューマノイドロボット。
【請求項10】
前記剛構造(20)が前記移動ロボット(1)の胴部(2)に連結される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の衝撃吸収装置(11;12)を備えるヒューマノイドロボット(1)の頭部。
【請求項11】
前記頭部(10)の前部に配置される第1の衝撃吸収装置(11)と、前記頭部(10)の後部に配置される第2の衝撃吸収装置(12)とを備え、前記2つの衝撃吸収装置(11、12)が、前記主方向(X)の方向において互いに対向して、かつ両方の衝撃吸収装置(11、12)に共通の剛構造(20)の両側に配置される、請求項10に記載のヒューマノイドロボットの頭部。
【請求項12】
前記ヒューマノイドロボットの前部に配置される第1の衝撃吸収装置と、前記ヒューマノイドロボットの後部に配置される第2の衝撃吸収装置とを備え、前記2つの衝撃吸収装置が、前記主方向(X)の方向において互いに対向して、かつ両方の衝撃吸収装置に共通の剛構造の両側に配置される、請求項9に記載のヒューマノイドロボットの胴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、衝撃吸収装置に関し、特に、電子機器を取り付けて、たとえば、そのような電子機器(基板、構成要素など)を含む機器の転倒に関連する衝撃から電子機器を保護するための衝撃吸収装置に関する。本発明は、ヒューマノイドロボットに組み込まれる電子機器の、これらのロボットの利用の進展に特に不利益な事象である前記ロボットの転倒に対する保護に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、それが人の外観および機能、頭部、胴部、2本の腕、2つの手部、2本の脚、または2つの足部の特定の属性を保有する時点から、ヒューマノイドとして示され得る。ヒューマノイドロボットは、歩行し、四肢または頭部によってジェスチャを行うことが可能である。実行することが可能であるジェスチャの複雑さは、常に向上している。これらの進歩にもかかわらず、ヒューマノイドロボットは、転倒の影響を受けやすいままである。これらの転倒は、ロボットのデバッグテスト中に起こる可能性があるが、回避不能な障害または外部からの介入のために、続くロボットの使用フェーズで起こる可能性もある。消費者による使用を可能にするために、ヒューマノイドロボットは、そのような転倒に繰り返し耐えることができる必要がある。
【0003】
特定の困難は、比較的高い位置にあるヒューマノイドロボットの重心のために生じる。たとえば70cmの寸法のロボットが転倒すると、地面に衝突する頭部の構成要素が受ける減速度は、70Gのオーダーの値に到達する可能性がある。これらの好ましくはないが回避不能な転倒は、現在のロボットにおいて可能性があり、電子機器またはセンサおよびアクチュエータなどの脆弱な構成要素に損傷を与える。
【0004】
既知のアプローチにおいて、重心を下げることによってこの困難を回避する試みが行われている。たとえば、スカートの形態の下部に最も重い設備機器を収容するロボットが知られている。しかし、このアプローチは、ロボットの上部、特に腕および頭部の動きおよび機能を制限する欠点を有する。転倒に対するロボットの耐性を改善するために、ロボットの転倒が検出されたときに起動するように構成される保護機構も検討されている。このアプローチも、特に、ロボットが動いている間の保護機構のタイミングの悪い起動という限界を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ヒューマノイドロボットの機械的強度を改善し、ヒューマノイドロボットに対する繰り返しの衝撃に耐えることを可能にする利用可能な解決方法を有することが望まれている。明らかに、そのような解決方法は、ロボットの機能的および構造的環境に適合させることができる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明の主題は、移動ロボットのための衝撃吸収装置であって、
− ヒューマノイドロボットへの連結が意図される剛構造と、
− 変形可能な外殻と、
− 緩衝器と
を備え、緩衝器は、主方向に出るセルの組を備える可撓性セル状構造からなり、および第1の端部で剛構造に主方向に取り付けられ、かつ第1の端部と反対の第2の端部で変形可能な外殻に主方向に連結される、衝撃吸収装置である。
【0007】
有利には、外殻は、少なくとも1つのサイレントブロックタイプの吸収性固定部によって、剛構造にも直接連結される。
【0008】
有利には、緩衝器は、主方向に実質的に直角なシール平面を備え、緩衝器のセル状構造は、セルが主方向においてシール平面からの距離を縮めるように構成される。
【0009】
有利には、緩衝器は、天然ゴム、4−ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、三元重合体、ポリエーテルブロックアミド、エラストマー熱可塑性樹脂、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性オレフィン、ポリサルファイド、エラスチンタンパク質、シリコーンエラストマー、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エラストマー、エチレン−アクリル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンエラストマーを含むリストから選択される材料からなる。
【0010】
有利には、装置は、剛構造に固定される電子モジュールを備え、緩衝器は、両端で主方向に出る排気筒を備え、電子モジュールで放出される熱をロボットから排出することを可能にする。
【0011】
有利には、装置は、緩衝器に固定され、および電子モジュールの近くでかつ排気筒を通して空気流を発生させることが可能なファンを備える。
【0012】
有利には、装置は、剛構造に連結される少なくとも1つの光源を備え、緩衝器は、光源によってロボットから放出される光を案内するように構成される突出ダクトを備える。
【0013】
有利には、装置は、剛構造に連結される少なくとも1つの音源を備え、緩衝器は、音源によってロボットから放出される音波を案内するように構成される突出ダクトを備える。
【0014】
有利には、装置は、外殻の内壁に固定される少なくとも1つのマイクを備え、緩衝器は防音を可能にする。
【0015】
本発明はまた、前述の特徴を有する衝撃吸収装置を備えるヒューマノイドロボットに関する。
【0016】
本発明はまた、剛構造がロボットの胴部に連結される、衝撃吸収装置を備えるヒューマノイドロボットの頭部に関する。有利には、頭部は、頭部の前部に配置される第1の衝撃吸収装置と、頭部の後部に配置される第2の衝撃吸収装置とを備え、2つの衝撃吸収装置は、主方向の方向において互いに対向して、かつ両方の衝撃吸収装置に共通の剛構造の両側に配置される。
【0017】
本発明は最後に、ヒューマノイドロボットの前部に配置される第1の衝撃吸収装置と、ロボットの後部に配置される第2の衝撃吸収装置とを備え、2つの衝撃吸収装置は、主方向の方向において互いに対向して、かつ両方の衝撃吸収装置に共通の剛構造の両側に配置される、ヒューマノイドロボットの胴に関する。
【0018】
以下の図で一例として与えられる実施形態の詳細な記述を読みとることにより、本発明はよりよく理解され、他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】本出願人によって開発されたヒューマノイドロボットの2つの例を示す。
【
図1b】本出願人によって開発されたヒューマノイドロボットの2つの例を示す。
【
図2a】それぞれ斜視図および平面図における、本発明による衝撃吸収装置を備えるヒューマノイドロボットの頭部の例を示す。
【
図2b】それぞれ斜視図および平面図における、本発明による衝撃吸収装置を備えるヒューマノイドロボットの頭部の例を示す。
【
図3】ヒューマノイドロボットの頭部を支持する支柱に連結される前部衝撃吸収装置および後部衝撃吸収装置の分解図を示す。
【
図4】3つの表示における前部装置の緩衝器および後部装置の緩衝器を示す。
【
図5a】3つの表示におけるそれぞれ前部装置および後部装置の緩衝器を示す。
【
図5b】3つの表示におけるそれぞれ前部装置および後部装置の緩衝器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
明瞭にするために、同じ要素はそれぞれの図において同じ参照記号を有する。
【0021】
図1aおよび1bは、ALDEBARAN ROBOTIC(商標)によって開発されたヒューマノイドロボットの2つの例を示す。
図1aに示されるヒューマノイドロボット1は、頭部10と、胴部2と、2本の腕3と、2つの手部4と、2本の脚5と、2つの足部6とを備える。
図1bに示されるヒューマノイドロボット1’は、頭部10と、胴部2と、2本の腕3と、2つの手部4と、スカート7とを備える。本発明による衝撃吸収装置は、特にロボットが転倒した場合の衝撃からヒューマノイドロボットのこのような例を保護することが意図される。
【0022】
本発明による衝撃吸収装置は、ヒューマノイドロボットの頭部に収容されてもよい脆弱な構成要素の保護に特に適している。以下に記載される実施形態は、2つの衝撃吸収装置が設けられるヒューマノイドロボットの頭部に関する。この実施形態は、たとえば70cm以上のオーダーの大きい寸法のロボットの頭部を転倒から保護することを有効に可能にする。しかし、本発明が、2つの衝撃吸収装置が設けられるヒューマノイドロボットの頭部のこの特定の実施形態に限定されないことは明らかである。逆に、本発明は一般に、単独でまたは組み合わせて実装することができる衝撃吸収装置に関し、ヒューマノイドロボットの頭部またはヒューマノイドロボットの任意の他の構成要素の保護を保証することが理解される。より一般的には、装置は、地面と接触し、ロボットの転倒のリスクにつながる少なくとも1つの関節でつながれた下肢を備える移動ロボットに適用することができる。本明細書において、呼称「移動ロボット」は、少なくとも1つの下肢を備え、少なくとも1つの回転の自由度についてロボットの胴部に対して関節でつながれるロボットを意味する。
【0023】
図2aおよび2bは、それぞれ斜視図および平面図における、本発明による衝撃吸収装置を備えるヒューマノイドロボットの頭部の例を示す。例において、ヒューマノイドロボットの頭部10は、前部衝撃吸収装置11と、後部衝撃吸収装置12と、頂部キャップ13とを備える。前部衝撃吸収装置11において、2つの側方オリフィス14および15が形成されてロボットの目を表し、中央オリフィス16が形成されてロボットの口を表す。前部11および後部12の衝撃吸収装置は、ロボットの前部と後部との間で分かれる2つの共通の側方縁辺を備える。17で参照される右側の共通の縁辺が
図2aおよび2bに示される。前部11および後部12の各衝撃吸収装置において、略半円形の開口が、2つの側方縁辺のそれぞれに沿って形成される。前部衝撃吸収装置の半円の開口は、後部衝撃吸収装置の半円の開口に面し、したがって、2つの共通の側方縁辺に沿って、ロボットの耳を表している略円形の開口18を形成する。
【0024】
図2bにおいて、ロボットの頭部10の内部の構成要素を見ることができるように、頂部キャップ13は示されていない。ロボットの頭部10は、堅固な支持柱20によってロボットの胴部2に連結される。支持柱は、
図3に記載されているように、一緒に取り付けられるいくつかの構造的構成要素の組立体からなることができる。これらの構成要素は、堅固なプラスチック材料とすることができる。電子モジュール、センサ、および/またはアクチュエータなどの機器のさまざまなアイテムは、支持柱に固定することができる。
【0025】
各衝撃吸収装置は、変形可能な外殻と緩衝器とを備える。前部衝撃吸収装置11は、外殻21と緩衝器22とを備える。後部衝撃吸収装置12は、外殻23と緩衝器24とを備える。これらの要素は、以下で詳細に記載される。
【0026】
図3は、前部衝撃吸収装置、後部衝撃吸収装置、および支持柱の分解図を示す。支持柱20は、ここで分解図に示される構造的構成要素20a、20b、および20cの組立体からなる。組立後、これらの構成要素は、ロボットの胴部に連結される支持柱20を形成する。示される例において、ロボットの頭部には、互いに対向して、かつ支持柱の両側に配置される2つの衝撃吸収装置が設けられる。一般に、本発明による衝撃吸収装置は、変形可能な外殻と、緩衝器と、剛構造とを備える。衝撃吸収装置の目的は、剛構造に固定してもよい脆弱な構成要素を保護するように、衝撃によって発生するエネルギーを吸収して、放散させることである。示される例において、支持柱20は、2つの衝撃吸収装置11および12に共通の剛構造を構成する。または換言すれば、衝撃吸収装置のそれぞれの剛構造は、ロボットの頭部がその胴部に対して保持されることを保証する支持柱に取り付けられる。
【0027】
図4は、3つの表示による前部11および後部12の衝撃吸収装置の緩衝器22および24を示す。それぞれ前部緩衝器22および後部緩衝器24のこれらの2つの緩衝器はまた、それぞれ
図5aおよび
図5bで3つの表示によって示される。
【0028】
示される例において、ヒューマノイドロボットの頭部は、2つの衝撃吸収装置を備える。本発明による衝撃吸収装置は、ヒューマノイドロボットに連結される剛構造20と、変形可能な外殻と、主方向Xに出るセルの組を備える可撓性セル状構造からなる緩衝器とを備えることを特徴とする。さらにまた、緩衝器は、第1の端部で剛構造に主方向Xに取り付けられて保持され、かつ第1の端部と反対の第2の端部で変形可能な外殻に主方向Xに連結される。
【0029】
さまざまな材料は、変形可能な外殻の製造のために考慮される。たとえば、ポリスチレンを実装することができる。また、その外観を改善または補修するために、コーティングまたは表面処理を変形可能な外殻の外壁に適用することが想定される。
【0030】
緩衝器は、主方向Xに出るセルの組を備える可撓性セル状構造からなる。特に、前部緩衝器22のセル状構造が
図5aに示される。セル状構造は、主方向に実質的に平行な複数の壁30を備える。壁は、主方向に出るセル31の組を画定する。弾性変形が可能なさまざまな材料が緩衝器の製造のために想定される。シリコーン、ポリウレタン、またはスポンジタイプの植物物質が特に想定される。優先的に、緩衝器は、天然ゴム、4−ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、三元重合体、ポリエーテルブロックアミド、エラストマー熱可塑性樹脂、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性オレフィン、ポリサルファイド、エラスチンタンパク質、シリコーンエラストマー、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エラストマー、エチレン−アクリル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンエラストマーを含むリストから選択される材料からなる。
【0031】
緩衝器は、第1の端部で支持柱20に主方向に取り付けられ、かつ第1の端部の反対の第2の端部で変形可能な外殻に主方向に連結される。
図4は、前部衝撃吸収装置11に関して、支持柱に取り付けられる第1の端部40と、変形可能な外殻21に連結される第2の端部41とを示す。第1の端部は、さまざまな固定手段、特に接着によって支持柱に取り付けることができる。同様に、第2の端部は、さまざまな連結手段によって変形可能な外殻に連結することができる。それは特に、接着によって外殻に固定することができる。
【0032】
特定の実装形態において、緩衝器は、簡単な取付けによって支持柱上に保持され、簡単な取付けによって外殻の保持も保証する。この実装形態において、前部および後部衝撃吸収装置の外殻は、それらの共通の側方縁辺17で一緒に連結することができる。外殻が緩衝器上に単純に取り付けられ、緩衝器が支持柱上に取り付けられることによって、殻は支持柱に対して浮遊している。
【0033】
変形可能な殻および緩衝器からなる衝撃吸収装置のこの構成は、剛構造上に固定される繊細な構成要素を保護するために特に好適である。たとえば、ロボットの前方または後方への転倒時、頭部は、主方向に近い方向で地面に衝突する。外殻は、変形することによって衝撃を部分的に吸収し、衝撃を緩衝器に部分的に伝達する。次いで、これらの衝撃は、緩衝器によって2つの段階で吸収される。まず、それは、セル状構造の壁の座屈変形を引き起こす。主方向に対する適切な角度での壁のこの変形時、比較的弱い応力は対抗される。次いで、第2段階において、壁の座屈が衝撃のすべてを吸収するのに十分でない場合、それは緩衝器を形成する弾性材料の弾性変形によって吸収される。より詳細には、それぞれの壁が座屈後に互いを支えあい、次いで、緩衝器が実質的に均等に弾性変形によって作動する。
【0034】
したがって、ロボットの頭部に収容されて、支持柱上に固定される繊細な構成要素は、より段階的な減速を受ける。外殻から支持柱まで伝達される衝撃波は、殻および緩衝器の連続変形によって実質的に軽減される。
【0035】
本発明の好適な実装形態において、衝撃吸収装置の外殻はまた、少なくとも1つのサイレントブロックタイプの吸収性固定部によって、支持柱に直接連結することができる。
図3に示されるように、複数のサイレントブロックタイプの吸収性固定部43によって前部衝撃吸収装置11の外殻21を固定することが想定される。吸収性固定部43は、これらの2つの要素の間の衝撃および振動を吸収することが可能な弾性材料のいくつかのブロックによって、支持柱を外殻に連結する。したがって、衝撃を受けた場合、これらの吸収性固定部は、緩衝器と同時に変形し、外殻に対する衝撃の吸収にも寄与する。したがって、この構成は、ロボットの外面、たとえば、ロボットの顔の線などから突出する要素が、外殻の変形および緩衝器の壁の座屈によって、支持柱への衝撃波の伝播に寄与することなく、変形することを可能にする。衝撃は、この最初の変形後、吸収性固定部によって、かつ緩衝器の弾性変形によって吸収および放散される。
【0036】
緩衝器のセル状構造は、設計の大きい柔軟性を提供し、衝撃吸収装置をロボットの構造的かつ機能的な環境に有利に適合させることを可能にする。たとえば、ロボットの頭部は、支持柱に連結される1つまたは複数の光源を備えて、ロボットの目を表すことができる。次いで、前部衝撃吸収装置の緩衝器は、
図5aにおいて50および51で参照される1つまたは複数の突出ダクトを備えて、ロボットの頭部から光源によって放出される光を、たとえば、
図2aおよび2bに示されるオリフィス14および15を通して案内することを可能にする。突出ダクト50および51は、一端で支持柱に、かつ第2の端部で外殻の内壁に取り付けられる。それらは光ガイド機能を保証する。有利には、それらは、光源によって放出される光を1点に集めること、および衝撃を受けた場合にこの光源を保護することの両方を可能にする。
【0037】
ロボットの頭部はまた、支持柱に連結される1つまたは複数の音源58を備えることができる。次いで、同じ原理によって、衝撃吸収装置の緩衝器は、1つまたは複数の突出ダクト52を備えて、ロボットの頭部から音源によって放出される音波を案内することを可能にする。前述のように、これらの突出ダクト52は、一端で支持柱に、かつ第2の端部で外殻の内壁に取り付けられることができ、頭部からの音波を案内すること、および衝撃を受けた場合に音源を保護することの両方を可能にする。
【0038】
衝撃吸収装置の外殻の内壁にマイク53を固定することも本発明によって想定される。殻は、緩衝器、場合によっては吸収性固定部によって支持柱に連結され、衝撃および振動の吸収が可能である。変形可能な外殻へのマイクの固定は、有利には、たとえばロボットの動きに関連する振動から生じる騒音を制限することを可能にする。
【0039】
図に示されるように、セル状構造は、ロボットの頭部の冷却を保証するように構成することもできる。ロボットの頭部の電子部品によって放出される熱、またはより一般的には、衝撃吸収装置の剛構造に固定される電子モジュール54で放出される熱を排出するために、緩衝器のセル状構造は、両端で主方向に出る排気筒60を画定するように構成され、電子モジュールで放出される熱をロボットから排出することを可能にする。換言すれば、セル状構造のセルの1つは、排気筒60を形成する。通常作動において、セル状構造は、熱を排出することを可能にする。衝撃を受けた場合、セル状構造の座屈のために、熱の伝達が中断される可能性がある。この中断は瞬間的なものである。実質的に、衝撃時にその弾性領域で作用するセル状構造は、衝撃が終わると直ちにその元の形態に戻り、排気筒60を通した熱の伝達の機能も再開する。
【0040】
図5bは、後部衝撃吸収装置12の緩衝器24に形成される排気筒60を示す。衝撃吸収装置は、緩衝器に固定されるファンを備えることができ、電子モジュールの近くで、排気筒60を通る空気流を生成することを可能にする。このために、緩衝器24は、ファンおよびファンの基部の4つの角の固定手段を受けるように構成される印61を備える。支持柱上に固定される構成要素に伝達される可能性があるファンのブレードの回転に関連する騒音および振動をなくすことを可能にするため、ファンの緩衝器への固定も非常に好適である。
【0041】
図に示される例において、排気筒およびファンは、同じ衝撃吸収装置である後部衝撃吸収装置上に形成される。2つの別の衝撃吸収装置上に排気筒およびファンを形成することも想定される。
【0042】
排気筒60は、緩衝器の突出セルの組のセルを構成する。排気筒は、他のセルよりも非常に大きい主方向の長さを有する。略円筒形の排気筒は、支持柱の円形断面を貫通する。それは、
図4に示されるように、主方向のその端部の1つで、前部衝撃吸収装置の緩衝器と接触している。支持柱を通して取り付けられる排気筒は、重力によって支持柱上で緩衝器を支持することを可能にする。重力によるこの支持は、接着による支持柱上へ緩衝器の固定を補う。
【0043】
衝撃吸収装置の緩衝器は、有利には、一体成形される。緩衝器は、金型スライドのない造型法で製造することができる。このために、緩衝器は、有利には、主方向に実質的に直角なシール平面を備え、セル状構造は、セルが主方向でシール平面からの距離を縮めるように構成される。緩衝器は、可撓性でありかつ極めて変形可能な材料からなり、型抜きステップで緩衝器を変形させることが可能であることにも留意すべきである。したがって、主方向への型抜きに対抗する小さい寸法の壁の存在を許容することができる。
【0044】
図によって示される例において、頭部は2つの衝撃吸収装置を備える。本発明のこの好ましい実装形態において、ヒューマノイドロボットは、頭部と体とを備えることが想定され、その頭部は、
− ロボットの体に連結される支持柱20と、
− 前部衝撃吸収装置11および後部衝撃吸収装置12と
を備え、各衝撃吸収装置は、それぞれ21および23である変形可能な外殻と、それぞれ22および24である緩衝器と、支持柱20に取り付けられる剛構造とを備える。
【0045】
2つの衝撃吸収装置は、主方向において互いに対向して、かつ支持柱20の両側に配置される。2つの衝撃吸収装置11および12の緩衝器は、主方向に出るセルの組を備える可撓性セル状構造からなり、および第1の端部で支持柱20に主方向に取り付けられ、かつ第1の端部の反対の第2の端部で、それぞれ21および23である変形可能な外殻に主方向に連結される。前部衝撃吸収装置11の外殻21はまた、少なくとも1つのサイレントブロックタイプの吸収性固定部によって、支持柱20に直接連結される。
【0046】
後部衝撃吸収装置12の緩衝器24は、2つの端部で主方向に出る排気筒60を備え、頭部から支持柱20に固定される電子モジュールによって放出される熱を排出することを可能にする。後部衝撃吸収装置12はまた、緩衝器24上に固定されるファンを備え、電子モジュールの近くでかつ後部衝撃吸収装置12の排気筒60を通して空気流を生成することが可能である。
【0047】
前部衝撃吸収装置11の緩衝器22は、2つの突出ダクト50および51を備え、支持柱20上に固定される2つの光源56および57によってそれぞれ放出される光を頭部から案内することを可能にする。緩衝器22はまた、少なくとも1つの突出ダクトを備え、支持柱20上に固定される音源58によって放出される音波を案内することを可能にする。最後に、前部衝撃吸収装置11は、外殻21の内壁に固定される少なくとも1つのマイクも備える。
【0048】
本発明は一般に、衝撃吸収装置に関する。衝撃吸収装置は、たとえばヒューマノイドロボットなどの移動ロボットに特に適している。したがって、本発明はまた、前述の特徴を有する緩衝器が設けられるヒューマノイドロボットに関する。頭部が、頭部の前部に配置される第1の衝撃吸収装置と、頭部の後部に配置される第2の衝撃吸収装置とを備え、2つの衝撃吸収装置は主方向の方向において互いに対向して、かつ両方の衝撃吸収装置に共通の剛構造の両側に配置されるロボットが想定される。
【0049】
胴が、ヒューマノイドロボットの前部に配置される第1の衝撃吸収装置と、ロボットの後部に配置される第2の衝撃吸収装置とを備え、2つの衝撃吸収装置は主方向の方向において互いに対向して、かつ両方の衝撃吸収装置に共通の剛構造の両側に配置される、ヒューマノイドの性質のロボットも想定される。