【課題を解決するための手段】
【0007】
目的は、特許請求項の独立項の主旨により達成される。本発明の有利な発展形は、従属項の主旨である。
【0008】
本発明による眼科手術システムは、
− 潅流流体を収容した潅流流体容器を受けるコンソールと、
− コンソールに挿入可能な、潅流流体を治療対象眼のための手術器具に誘導するカセットと、
− 潅流流体容器からカセットおよび手術器具までの潅流流体流路と、
− 第一の容積を有する第一のポンプ室と、そこから第一の弾性仕切り要素によって分離され、第二の容積を有する第一の駆動室とを含む第一の流体ポンプであって、第一の弾性仕切り要素はその縁によって第一の流体ポンプ内に永久的に取り付けられており、潅流流体流路からの潅流流体は第一のポンプ室へと供給可能であり、第一の弾性仕切り要素の弾性変形を実現することを可能にする第一の駆動流体は、所定の圧力に基づいて第一の駆動室へと供給可能であり、その結果、第一の容積をより小さくすることができ、それと同時に、第二の容積をより大きくすることが可能である、第一の流体ポンプと、
− 第一の流体ポンプに並列に配置され、第三の容積を有する第二のポンプ室と、そこから第二の弾性仕切り要素により分離され、第四の容積を有する第二の駆動室とを含む第二の流体ポンプであって、第二の弾性仕切り要素はその縁によって第二の流体ポンプ内に永久的に取り付けられており、潅流流体流路からの潅流流体は第二のポンプ室へと供給可能であり、第二の弾性仕切り要素の弾性変形を実現することを可能にする第二の駆動流体は、所定の圧力に基づいて第二の駆動室へと供給可能であり、その結果、第三の容積をより小さくすることができ、それと同時に第四の容積をより大きくすることが可能である、第二の流体ポンプと、
を含み、
第一の容積または第三の容積は、1〜25cm
3の範囲内の大きさを有する。
【0009】
したがって、システムは第一の流体ポンプと、それに並列に接続された第二の流体ポンプとを含む。例えば、第一のポンプの場合、第一のポンプ室がほとんど空になると、第二の流体ポンプを接続できる。第二の流体ポンプがその第二のポンプ室で潅流流体を潅流流体流路に放出している間に、第一の流体ポンプを再充填することができ、したがって、第二のポンプ室が空になったら、第一の流体ポンプを再び接続できる。これは、第一の流体ポンプおよび第二の流体ポンプの交互動作が可能であることを意味する。それによって、手術中に、非常に変動の小さい体積流れを実現できる。これは、事実上一定の眼圧を保持できることを意味する。並列に接続された第一および第二の流体ポンプの交互動作は、潅流流体容器の中に潅流流体がなくなるまで行うことができる。これは、短時間の手術中および長時間の手術中に、潅流流体の流れを中断することなく、システムを動作させることが可能であることを意味する。
【0010】
流体ポンプは各々、その縁によってそれぞれの流体ポンプ内に永久的に取り付けられている弾性仕切り要素を含む。弾性仕切り要素の移動は駆動流体によって実現され、これはそれぞれの流体ポンプの、それに関係する駆動室の中に提供される。したがって、弾性仕切り要素は、ピストンの場合のようにプランジャまたはロッドではなく、駆動流体によって移動される。これによって、ガクンとならない非常に急速な移動が可能となり、すなわち、ピストンの場合のような初期の引っ掛かりとその後の滑り(「スティックスリップ効果」と呼ばれる)がない。このような弾性仕切り要素はまた、小さい質量にも製作でき、この要素により、動的移動、およびしたがって潅流流体流路の中の動的流体変化が可能となる。弾性仕切り要素は特定の流体ポンプの縁に取り付けられているため、良好なシールを実現できる。したがって、流体ポンプの縁では弾性仕切り要素は移動しない。したがって、ピストンポンプの場合に必要となる、良好な滑りのための潤滑剤を省くことができる。これは特に有利であり、それは本発明によるシステムでは、上記のことから潅流流体が汚染されるリスクがないからである。反対に、流体ポンプの作動中に潅流流体を確実に滅菌状態に保つことができる。それに加えて、弾性仕切り要素による良好なシーリング効果により、何れの所望の駆動流体でも使用できる。前記流体が同様に潅流流体であることも想定可能である。しかしながら、定常的に圧縮された空気ラインからの圧縮空気を関係させることも可能である。弾性仕切り要素による良好なシーリング効果によって、ポンプ室の潅流流体と駆動室の駆動流体との間の接触が確実になくなる。
【0011】
第一のポンプ室の第一の容積または第二のポンプ室の第三の容積は、1〜25cm
3の範囲内の大きさ、好ましくは1〜15cm
3の範囲内の大きさ、特に好ましくは1〜10cm
3の範囲内の大きさである。これは比較的小さい容積を表す。しかしながら、流体ポンプの交互動作を提供できることから、長時間の手術が中断せずに可能となる。さらに、小さい第一および第三の容積は有利であり、これは、潅流流体流路の中の体積流れの比較的小さい変化によって、第一および第三の容積がそれに比例して比較的大きく変化するからである。これは、体積流れの変化の記録の感度が比較的高いことを意味する。さらに、小さい第一の容積および/または第三の容積は、小さい質量だけが運ばれ、したがって、システム全体を小さく、コンパクトにし、それゆえ、費用対効果の高い方法で実現できることを意味する。
【0012】
好ましくは、第一の容積は第三の容積と同じ大きさである。これによって、関係する弁と事実上同じ切換え周期の対称の構成を実現することができる。
【0013】
1つの発展形によれば、本発明によるシステムは、
− 治療対象眼から吸引流体回収容器へと吸引流体を供給するための吸引流体流路と、
− 第五の容積を有する第三のポンプ室と、そこから第三の弾性仕切り要素により分離され、第六の容積を有する第三の駆動室とを有する第三の流体ポンプであって、第三の弾性仕切り要素はその縁によって第三の流体ポンプ内に永久的に取り付けられており、吸引流体流路からの吸引流体は第三のポンプ室に供給可能であり、第三の弾性仕切り要素の弾性変形を実現することを可能にする第三の駆動流体は、所定の圧力に基づいて第三の駆動室へと供給可能であり、その結果、第五の容積をより大きくすることができ、それと同時に第六の容積をより小さくすることが可能である、第三の流体ポンプと、
− 第三の流体ポンプに並列に配置され、第七の容積を有する第四のポンプ室と、そこから第四の弾性仕切り要素によって分離され、第八の容積を有する第四の駆動室とを有する第四の流体ポンプであって、第四の弾性仕切り要素はその縁において第四の流体ポンプ内に永久的に取り付けられており、吸引流体流路からの吸引流体は第四のポンプ室に供給可能であり、第四の弾性仕切り要素の弾性変形を実現することを可能にする第四の駆動流体は、所定の圧力に基づいて第四の駆動室へと供給可能であり、その結果、第七の容積をより大きくすることができ、それと同時に第八の容積をより小さくすることが可能である、第四の流体ポンプと、
をさらに含み、
第五の容積または第七の容積は、1〜25cm
3の範囲内の大きさを有する。
【0014】
したがって、吸引流体流路の中で、潅流流体流路と同様の構成が提供される。第三の流体ポンプは第四の流体ポンプに並列に配置されて、吸引流体を眼から吸引流体回収容器へと送出する。ポンプは交互に動作可能であり、各々が弾性仕切り要素を含み、それによってそれぞれのポンプ室とそれに関連する駆動室との間を密閉状態に仕切ることができる。1〜25cm
3の範囲内の大きさ、好ましくは1〜15cm
3の範囲内の大きさ、および特に好ましくは1〜10cm
3の範囲の大きさである比較的小さい第五の容積または第七の容積によって、吸引ライン内の圧力の変化に対する急速で動的な応答が可能となる。例えば、手術器具の針が水晶体小片で詰まる、すなわち閉塞すると、吸引流体は吸引流体流路内に流れ込まなくなる。詰まりが解消されると、この状態は、流体が眼からほとんど突然吸引されることにより、非常に急速に変化する。このことが特定されると、この変化は、非常に動的に動作可能な第三および第四の流体ポンプによって有効に取り扱うことができ、それによって事実上一定の眼圧を実現することが可能となる。
【0015】
この実施形態の別の利点は、手術時間中ずっと、脈動しない吸引が可能となる点である。これは、蠕動ポンプによって吸引流体を搬送するシステムと比較して顕著な改善を示す。脈動しない動作は有利であり、これは、上記のことから治療対象眼が手術終了するまで動かないようにすることができ、顕微鏡で観察中の外科医に安定した画像が提示されるからである。
【0016】
好ましくは、第五の容積は第七の容積と同じ大きさである。これによって、関係する弁と事実上同じ切換え周期の対称の構造を実現できる。
【0017】
別の実施形態によれば、第一の弾性仕切り要素および第二の弾性仕切り要素のそれぞれの位置は、それぞれ第一および第二のセンサによって非接触式に検出可能である。第一および第二の弾性仕切り要素の位置が分かっていることによって、潅流流体用流路内の体積流れを間接的に確立できる。したがって、第一および第二の駆動流体によって、潅流流体流路内の体積流れに直接影響を与えることが可能となる。これは、閉塞の打開が起こり、潅流流体の体積流の急速で動的な変化が事実上一定の眼圧を達成するために必要である場合に特に重要である。
【0018】
別の利点は、このように体積流れを間接的に確立する場合、潅流流体中の気泡がわずかであることである。しかしながら、先行技術による眼科手術システムにおいて慣例的に行われる圧力測定または体積流れ測定においては、気泡、特に泡が測定結果に大きな障害となる影響を及ぼし、それを大幅に歪める可能性がある。それゆえ、潅流流体中の気泡が避けられない場合でも、この実施形態によれば、潅流流体流路内の体積流れの正確な調整と、それゆえ、その後に発生する眼内の圧力調整を実現できる。
【0019】
さらに、第三の弾性仕切り要素および第四の弾性仕切り要素のそれぞれの位置を、それぞれ第三および第四のセンサによって非接触式に検出可能とすることができる。これは、第一の弾性仕切り要素および第二の弾性仕切り要素の位置を記録することに関する上述の利点をはるかによく実現できることを意味する。したがって、吸引流体流路の中に体積流れを間接的に確立することも可能であり、それによって、吸引流体流路内の体積流れの急速で動的な調整を実現できる。
【0020】
別の実施形態によれば、潅流流体は、第一および第二のポンプ室から同時に第一の圧力で潅流流体流路へと手術器具の方向に供給できる。例えば、第一のポンプ室がほとんど空であるとき、第一のポンプ室が空の状態になる直前に、潅流流体を第二のポンプ室から潅流流体流路へと供給することが可能となる。2つのポンプ室が相互に並列に接続されているため、2つのポンプ室のそれぞれの出口には同じ圧力がある。このような実施形態は有利であり、それは、上記のことから、供給された潅流流体の連続的な通常の動作を実現でき、ポンプ室が交互動作する場合に、潅流流体流路内の体積流れおよび圧力の変動が起こらないからである。
【0021】
さらに、吸引流体を第三および第四のポンプ室に同時に第二の圧力で供給できる。これは、上述の実施形態の場合と同じ利点を、吸引流体流路の中でも実現できることを意味する。
【0022】
別の実施形態において、潅流流体のための第一および第二のポンプ室および/または吸引流体のための第三および第四のポンプ室は、各々の場合で、入口弁と出口弁を有し、特定の出口弁は特定の入口弁の上方に空間的に配置される。これは、潅流流体または吸引流体内に存在しうる気泡が急速に上方に漏出でき、ポンプ室の一方に比較的大量に堆積しえないため、有利である。
【0023】
好ましくは、第一および第二のポンプ室はカセット内に配置され、第一および第二の駆動室はコンソール内に配置される。第一の容積を有する第一のポンプ室および第三の容積を有する第二のポンプ室は各々、比較的小さい容積を有し、そのため、カセットを小さく、コンパクトな設計にすることができる。カセットは使い捨ての物品であるため、消費コストも削減できる。それゆえ、本発明によるシステムのこのような実施形態により、費用対効果の高い動作が可能となる。
【0024】
それに加えて、またはその代わりに、第三および第四のポンプ室はカセット内に配置でき、第三および第四の駆動室はコンソール内に配置できる。これは、小さくコンパクトなカセットの構成と、それゆえ費用対効果の高い構成が同様に可能であることを意味する。
【0025】
本発明の別の利点および特徴を、下記のような図面を参照しながら説明する。