(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先述した先行技術文献が有する課題として、以下のものが例示される。ユーザは、通信可能領域では詳細図を用いて経路を案内され、通信不能領域では急に全領域地図を用いた経路案内をされるので違和感を覚える。別の課題としては、詳細地図だと利用できる各種施設や細い道路を使った案内ができないことが挙げられる。例えば、周辺で食事ができる施設を探して表示したり、渋滞時に抜け道を案内したりといったサービスを提供できない。この他の課題としては、大きな道路以外へのマップマッチングが実行できないので、案内経路から外れた場合に経路の再探索ができないことが挙げられる。さらに別の課題としては、全領域地図データのうち、通信可能領域の地図は使用されないので、その地図のために割いた記憶容量が無駄になることや、サーバが通信状況を的確に把握できず、実態に即した通信状況を記憶できないことが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、先述した課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。
本発明の一形態によれば、
車用のネットワークデータを含む道路地図データと、歩行者用のネットワークデータを含む歩行者用地図データと、を含む地図データを記憶する地図データ記憶部と、前記道路地図データを用いて車両用の経路を示す車両用経路を探索し、前記歩行者用地図データを用いて歩行者用の経路を示す歩行者用経路を探索する経路探索部と、携帯端末の現在位置である自己位置から所定範囲
の前記車両用経路情報を前記携帯端末へ配信する第1の配信部と、前記携帯端末の使用者の目的地の付近が前記携帯端末との通信が不能な通信不能領域である場合、前記携帯端末の自己位置が前記通信不能領域に位置する前に前記目的地を含む領域
の前記歩行者用経路情報
を含む前記歩行者用地図データを、前記目的地を含む領域の前記車両用経路情報と共に前記携帯端末へ配信する第2の配信部とを有することを特徴とするナビゲーションシステムを提供する。
また、本発明の別の一形態によれば、本発明のナビゲーションシステムは、さらに、前記通信不能領域において前記使用者が歩行して経由する経由地を入力する探索条件設定部を備え、前記経路探索部は、前記経由地を経由する前記歩行者用経路を探索することを特徴としている。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、サーバと携帯端末とを備えるナビゲーションシステムが提供される。前記サーバは;地図データを記憶する地図データ記憶部と;前記携帯端末との通信が不能な通信不能領域を前記地図データに関連付けて記憶する通信不能領域記憶部と;前記携帯端末から受信した出発地と目的地とを含む情報に基づいて経路を探索し、該経路を示す経路情報を前記携帯端末に配信する経路探索部と;前記経路を含む地図であって、前記携帯端末の現在位置である自己位置から所定範囲の地図を示す第1の地図データを前記携帯端末へ配信する第1地図データ配信部と;前記経路を含む地図であって、前記通信不能領域に関連付いている地図を示す第2の地図データを前記携帯端末へ配信する第2地図データ配信部とを備え;前記携帯端末は;前記自己位置を測位する自己位置測位部と;前記自己位置と前記出発地と前記目的地とに関する情報を前記サーバに送信する送信部と;前記第1の地図データと前記第2の地図データと前記経路情報とを前記サーバから受信する受信部と;前記受信部によって受信された前記第1の地図データと前記第2の地図データと前記経路情報とを用いて、前記経路を案内する経路案内部とを備え;前記第2地図データ配信部は、前記携帯端末の自己位置が前記通信不能領域に位置する前に前記第2の地図データを配信し;前記送信部は、前記サーバとの通信状況に関する情報を前記自己位置と関連付けて前記サーバに送信し;前記サーバは、前記通信不能領域記憶部の記憶内容を、前記携帯端末から受信した前記通信状況と前記自己位置とに基づき更新する通信不能領域更新部を備える。この形態によれば、通信不能領域においても、詳細な地図を用いた経路案内ができる。また、この形態によれば、サーバは通信状況に関する情報をその位置関係とともに把握できる。また、この形態によれば、サーバは携帯端末から受信した通信状況と携帯端末の自己位置とに基づき、通信不能領域の記憶内容を、実態に即した内容に更新できる。
【0007】
(2)上記形態において、前記通信不能領域更新部は、前記通信不能領域記憶部の記憶内容を、複数の前記携帯端末から受信した前記通信状況と前記自己位置との統計に基づき更新する。この形態によれば、複数の携帯端末から受信した情報を統計処理するので、通信不能領域の記憶内容の更新が、より実態に即したものになる。
【0008】
(3)上記形態において、前記携帯端末は、前記受信した第2の地図の記憶を、前記経路案内部による経路案内の終了以降、保持する第2地図データ記憶部を備える。この形態によれば、携帯端末は一度、受信した第2の地図データを、再び受信しなくても経路案内に用いることができる。
【0009】
(4)上記形態において、前記サーバは、前記第2地図データ記憶部に記憶された地図データに基づき前記携帯端末へ配信不要な地図データを特定し、該地図データを前記第2地図データ配信部による配信対象から除外する配信地図データ特定部を備え;前記配信地図データ特定部は、前記第2の地図データのうち、目的地を含む領域に対応する地図データ以外の地図データを、配信不要なものとして特定する。この形態によれば、サーバは、目的地を含む領域の地図データを経路案内に特に重要なので配信する一方、目的地を含まない領域の地図データの配信を省略することによって、携帯端末に記憶させるデータ容量を削減できる。
【0010】
(5)上記形態において、前記第2地図データ配信部は、前記経路探索部によって探索された経路を示す情報を前記携帯端末に配信し;前記携帯端末は、前記送信された経路を示す情報と前記第2地図データ記憶部の記憶内容とに基づき配信不要な地図データを特定すると共に、該特定した情報を前記サーバに送信する配信地図データ特定部を備え;前記第2地図データ配信部は、前記配信不要地図データを特定した情報によって示される地図データを、配信対象から除外する。この形態によれば、探索された経路に即して、配信不要な地図データを特定できる。
【0011】
(6)上記形態において、前記携帯端末は、車載装置に前記第2の地図データを記憶させるために、前記車載装置に前記第2の地図データを送信する。この形態によれば、車載装置に第2の地図データを記憶させることができる。車載装置が第2の地図データを記憶すれば、別個体の携帯端末を用いても、第2の地図データを利用できる。
【0012】
(7)上記形態において、前記第2地図データ配信部は、前記目的地の付近が通信不能領域である場合、前記目的地を含む領域の地図を示す地図データであって、歩行者を案内するための地図データを配信する。この形態によれば、ユーザが目的地付近を歩行する場合に、歩行時に適した地図を表示できる。
【0013】
(8)上記形態において、前記経路案内部は、前記目的地の付近が通信不能領域である場合、前記目的地と前記出発地とを入れ替えた逆行経路を前記目的地に到達後に案内する。この形態によれば、目的地から出発する際に通信不能領域内の場合でも経路案内ができる。
【0014】
(9)上記形態において、前記第2の地図データには、通信設備に関する情報が含まれる。この形態によれば、サーバは通信設備に関する情報をユーザに提供できる。通信設備に関する情報とは、例えば、Wi−Fi(登録商標)等が利用できる無線LANスポットの位置情報である。ユーザは通信不能領域の中で、通信可能な施設の位置を確認できる。
【0015】
(10)上記形態において、前記地図データは、配信単位毎に配信されるようになっていると共に、各配信単位の地図データによって示される領域内において、通信不能領域か否かを示すデータを含む。この形態によれば、サーバは配信単位の地図に含まれる通信不能領域についての詳細な情報をユーザに提供できる。
【0016】
本発明は、上記以外の種々の形態でも実現できる。例えば、ナビゲーションの方法、地図データの配信方法、これらの方法を実現するためのプログラム、これらのプログラムを記憶した記憶媒体、上記ナビゲーションシステムの一部としてのサーバ又は携帯端末などの形態で実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態1を説明する。
図1は、ナビゲーションシステム10を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、複数のスマートフォン20と、サーバ50とを備える。ナビゲーションシステム10は、歩行者用の経路案内と、自動車用の経路案内とが可能である。自動車用の経路案内は、車載装置70との連携によって、車載装置70に実行させる態様でも可能であり、また車載装置70と連携しない態様でも可能である。この連携は、車載装置70とスマートフォン20との無線通信または有線通信によって地図データ、経路案内情報および位置情報等を送受信することで実現する。車載装置70は、入出力インターフェース(液晶画面とスピーカ等)と、記憶媒体とを備える。この構成によって、車載装置70は、経路案内情報と、地図データとの記憶ができる。
【0019】
スマートフォン20は、インターネット接続が可能な多機能携帯電話機である。スマートフォン20及びサーバ50は、インターネットINTを介して互いに接続できる。スマートフォン20は、基地局BSを介してインターネットINTに無線接続する。なお、実際には、スマートフォン20は、送受信アンテナ、無線基地局、交換局を介してインターネットINTに接続される。
図1に示す基地局BSは、これらアンテナ、無線基地局、交換局を含むものとする。
【0020】
図1に示すように、サーバ50は、通信部52と、制御部54と、地図データベース56とを備える。制御部54は、通信部52が受信したスマートフォン20からの要求に応じた地図データを、地図データベース56から取得すると共に通信部52がインターネットINTおよび基地局BSを介してスマートフォン20に配信する。さらに制御部54は、通信部52が受信したスマートフォン20からの要求に応じて経路探索を実行し、探索した経路情報を通信部52がインターネットINTおよび基地局BSを介してスマートフォン20に配信する。
【0021】
スマートフォン20は、主制御部22、通信部32、通信制御部34、タッチパネル36、表示部38、音声出力部40及びGPS受信機42を備える。主制御部22は、CPU24と、RAM26と、ROM28とを備える。主制御部22は、スマートフォン20に備えられた他の機器を制御する。RAM26は、サーバ50から配信される地図データおよび経路情報を通信部32が受信し、一時的に記憶する。ROM28は、CPU24が実行するプログラムを記憶する。このプログラムは、出発処理および経路案内処理(後述)等を実現するためのものである。ROM28は、フラッシュROMであり、サーバ50から配信される地図データおよび経路情報を電源オフになっても記憶できる。通信部32は、基地局BSによって、又は無線LAN接続によってデータ通信または音声通信を行うための回路である。通信部32は、インターネットINTおよび基地局BSを介してサーバ50にアクセスし、地図データおよび経路情報を取得するために動作する。また、通信部32は無線または有線接続によって車載装置70と地図データおよび経路情報を通信する。通信制御部34は、音声通話のための着信や呼び出し、音声信号と電気信号との変換などを行う回路である。スマートフォン20は、通信部32と通信制御部34とを備えることによって電話機として機能する。
【0022】
音声出力部40は、音声を出力するスピーカである。GPS受信機42は、GPS衛星と屋内GPS送信機とから送信されるGPS信号を受信することによって、スマートフォン20の自己位置を示す情報を取得するための装置である。タッチパネル36は、液晶画面を用いた入出力インターフェースとして機能する。タッチパネル36は、マルチタッチ入力に対応しており、ユーザの指や専用のペン等が液晶画面に接触した位置座標を、取得すると共に主制御部22に入力する。主制御部22は、入力された位置座標に基づきユーザの指示を判別し、判別した指示に対応する処理を実行する。
【0023】
地図データベース56は、地図データと、無線LANスポット情報と、通信不能領域情報とを記憶する。地図データは、地図の背景となる道路や施設などの地物を表現したデータである地物データとノードやリンクで構成され経路探索に利用されるネットワーク情報と、地図データのバージョンを示すバージョン情報とを含んでいる。無線LANスポット情報は、Wi−Fi等による無線LAN接続が利用できる位置を示す情報である。通信不能領域情報は、スマートフォン20などの携帯端末が基地局BSを用いて通信接続ができない領域を示す情報である。通信不能領域情報は通信キャリア毎に示され、また通信状態の安定性が示されている。通信キャリアとは、スマートフォン20によって利用可能な電気通信サービスを提供する会社のことである。通信状態の安定性とは、通信する際の接続状態を示し、安定状態とは接続が切れない状態を示し、不安定状態とは接続が切れ易い状態を示している。
【0024】
図2は、経路案内のための地図表示の例を示す。無線LANスポットの位置は、星印で示されている。先述した通信不能領域は、ドットで示されている。
図2に示された通信不能領域は、表示された地図領域の一部を占める。このような表示が可能なように、地図データベース56は、各配信単位の地図データの領域全体が通信可能か通信不能かという構造ではなく、配信単位の地図データ内における何れの領域が通信不能であるかが特定できるような構造のデータを記憶している。具体的には、配信単位の地図データの各頂点には絶対または相対座標が付与されている。通信不能領域はこの配信単位の地図データに紐付いて記憶されており、その形状は通信不能領域のポリゴンを構成する点情報で構成される。また、通信不能領域のポリゴンを構成する点情報の位置は配信単位の地図データの各頂点に対する相対座標で示される。
【0025】
図3は、出発処理を示すシーケンス図である。
図4は、スマートフォン20が出発処理を実行する際に発揮する機能を示すブロック図である。
図5は、サーバ50が出発処理を実行する際に発揮する機能を示すブロック図である。各機能は、
図1を用いて説明したスマートフォン20及びサーバ50に備えられた何れか1つの構成要素によって、又は複数の構成要素が協働することによって発揮される。各機能の説明は、
図3のシーケンス図の説明と共に行う。
【0026】
出発処理の開始の契機は、自動車用の経路案内の開始指示がスマートフォン20のタッチパネル36を介して入力されることである。経路案内の開始指示には、少なくとも目的地を示す情報の入力が含まれる。目的地に加え、経路探索の条件を示す情報の入力が含まれても良い。経路探索の条件とは、例えば、距離優先、高速優先といった優先的に探索する経路の条件や、経由地を示す情報である。経路案内の開始指示が入力された後、スマートフォン20の送信部220は、経路探索用情報と、配信不要地図データ情報とをサーバ50に送信する(ステップS112)。経路探索用情報とは、出発地や目的地、上記の経路探索の条件などを示す情報である。出発地は、例えば、スマートフォン20の自己位置である。この自己位置は、自己位置測位部210によって取得される。自己位置測位部210は、GPS受信機42が受信したGPS信号等から、スマートフォン20の現在位置を測位する。配信不要地図データ情報は、実施形態1においては、スマートフォン20の第2地図データ記憶部250と車載装置70との少なくとも一方に記憶されている記憶済み地図データ情報と、この記憶済み地図データのバージョン情報と、通信キャリアを特定するための情報とを含む。なお、記憶済み地図データが第2地図データ記憶部250と車載装置70との何れにも記憶されていない場合、バージョン情報は配信不要地図データ情報に含まれない。記憶済み地図データが第2地図データ記憶部250と車載装置70との何れもが記憶している場合に、それらのバージョン情報が互いに異なるときは、新しい方のバージョン情報が配信不要地図データ情報に採用される。
【0027】
サーバ50の経路探索部520は、経路探索用情報を受信すると、その経路探索用情報を用いて経路探索を実行する(ステップS125)。具体的には、経路探索部520は地図データ記憶部530のネットワーク情報を用いて出発地から目的地までの経路を探索する。なお、地図データ記憶部530には主に車の経路案内に用いられる道路地図データ、主に歩行者の経路案内に用いられる歩行者用地図データ、通信強度情報を含む通信不能領域および無線LANスポット情報が記憶されている。道路地図データは車の移動の案内に適した地物データ、車用のネットワークデータ、およびバージョン情報を含んでいる。歩行者用地図データは、歩行者の移動の案内に適した地物データ、歩行者用のネットワークデータ、およびバージョン情報を含んでいる。
【0028】
次に、第2地図データ配信部510は、地図データの配信が必要な場合(ステップS130)、その地図データを地図データ記憶部530から受信し、第2の地図データとしてスマートフォン20に配信すると共に、探索された経路情報を配信する(ステップS135)。第2の地図データとは、通信不能領域における経路案内に用いられる予定の地図データであって、スマートフォン20の自己位置が通信不能領域に位置する前に配信される地図データのことである。
【0029】
ステップS130における、第2の地図データの配信が必要か否かの判定は、サーバ50のサーバ側配信地図データ特定部550が、スマートフォン20から送信される配信不要地図データ情報に基づき行う。サーバ側配信地図データ特定部550は、地図データ記憶部530を参照し、経路探索部520が探索した経路が通信不能領域に含まれる地図データを特定する(ステップ127)。そしてこの特定した地図データからスマートフォン20より受信した配信不要地図データを除いた地図データを配信地図データとして特定する。なお、サーバ側配信地図データ特定部550は、経路探索部520が探索した経路が通信不能領域に含まれる地図データと配信不要地図データ情報の地図データとが同じ場所を示す場合には、互いのバージョン情報を参照し、配信不要地図データのバージョンが古い場合にこの地図データを配信が必要な配信地図データであると判定する。
【0030】
第2地図データ配信部510は、目的地を含む領域が通信不能領域である場合、地図データ記憶部530を参照し、該当する領域の道路地図データとともに歩行者用地図データを第2の地図データとしてスマートフォン20に配信する(ステップS145)。目的地を含む領域が通信不能領域であるか否かの判定は、サーバ側配信地図データ特定部550が行う。この判定の基準は、原則は必要であり、特定の場合のみ不要というものである。ユーザは、自動車を降りた後、通常は歩行して目的地まで移動するからである。たとえば自動車を停めた駐車場から目的地である施設までの歩行や目的地周辺の観光で徘徊する歩行などが考えられる。特定の場合としては、ユーザが歩行はするが、経路案内が不要な場合(目的地が自宅などの場合)、目的地に到着後にユーザが歩行しない場合(目的地が、ドライブスルーによって買い物をするための施設などの場合)が挙げられる。なお、第2地図データ配信部510は目的地を含む領域が通信不能領域である場合、該当する領域について歩行者用地図データのみを第2の地図データとしてスマートフォン20へ配信しても良い。 また、第2地図データ配信部510は、目的地を含む領域が通信不能領域である場合、該当する領域には第2の地図データを配信し、その他の領域には第2の地図データの配信を省略しても良い。詳細な地図データによる案内が必要となる領域は目的地周辺が多く、その他の領域の地図配信を省略することで、スマートフォン20における第2の地図データの記憶容量を削減できる。
【0031】
サーバ50から配信される第2の地図データをスマートフォン20の受信部230が受信すると、スマートフォン20の第2地図データ更新部240が、その第2の地図データを用いて、第2地図データ記憶部250と車載装置70との記憶内容を更新する(ステップS152)。車載装置70にも第2の地図データを記憶させる理由は、経路案内処理を実行するスマートフォン20が常に同じ個体であるとは限らないからである。スマートフォン20は、経路案内の度に出発処理を実行することによって、第2の地図データを蓄積できる。しかし、別個体のスマートフォン20が出発処理を実行する際、そのスマートフォン20が第2の地図データを記憶しているとは限らない。そこで、車載装置70に第2の地図データを記憶させれば、別個体のスマートフォン20でも、車載装置70に蓄積された第2の地図データを利用できる。また、スマートフォン20の第2地図データ更新部240は、サーバ50から配信される第2の地図データを車載装置70のみに記憶させても良い。これにより例えば車載装置70に比べて記憶容量の少ないスマートフォン20の第2地図データ記憶部250の記憶容量を削減できる。
【0032】
目的地を含む領域が通信不能領域の場合、スマートフォン20の希望取得部260は復路の案内経路の希望について、ユーザに選択可能に出力する(ステップS160)。ここで言う復路とは、往路における目的地を新たな出発地とする経路のことであり、これ以外の条件について(目的地など)は、どのようなものであっても良い。希望取得部260は、復路の案内経路の希望として往路を逆行する逆行経路と、往路とは異なる地点を経由する経由経路とを出力する。逆行経路はタッチパネル36にサーバ50から取得した探索経路を表示しても良い。希望取得部260は、ユーザがタッチパネル36を介して逆行経路を選択すると、サーバ50から受信した第2の地図データおよび経路情報を第2地図データ記憶部250に記憶する。一方、希望取得部260は、ユーザがタッチパネル36を介して経由経路を選択したと認識すると、タッチパネル36に復路用の経路探索の条件を入力する画面を出力する。経路探索の条件として入力されるのは、出発日時や経由地点などの情報である。希望取得部260は、ユーザがタッチパネル36を介して入力した出発日時や経由地点などの情報を復路用の経路探索用情報として特定する。送信部220は、希望取得部260が特定した復路用の経路探索用情報をサーバ50に送信する(ステップS162)。
【0033】
サーバ50の経路探索部520は、スマートフォン20から復路用の経路探索用情報を受信すると、その情報を用いて経路探索をする(ステップS175)。第2地図データ配信部510は、その探索された探索経路をスマートフォン20に配信する(ステップS185)。復路の案内経路を出発の段階で探索する理由は、目的地が通信不能領域なので、目的地で出発処理が実行できないからである。この配信を契機にして、サーバ50は、出発処理を終了し、次の経路案内処理に移行する。サーバ50は、ステップS130において目的地を含む領域の地図データの配信が不要であるという判定した場合、ステップS135以降を実行せずに出発処理を終了し、次の経路案内処理に移行する。
【0034】
図6は、経路案内処理を示すシーケンス図である。
図7は、スマートフォン20とサーバ50とが経路案内処理を実行する際に発揮する機能を示すブロック図である。経路案内処理が開始されると、サーバ50の第1地図データ配信部560は、第1の地図データと、この地図データの領域における経路情報とをスマートフォン20に配信する(ステップS315)。第1の地図データとは、出発地から目的地までの探索経路を含み、かつこの探索経路が通信不能領域に含まれない地図データであって、スマートフォン20の自己位置を含む領域の地図データのことである。出発処理を終了した直後は、スマートフォン20の自己位置は出発地であるので、第1の地図データは出発地を含む領域の地図データである。サーバ50が配信する経路情報は、出発処理において経路探索部520によって探索された経路情報の一部である。以下、第1の地図データと、その領域における経路情報とを合わせて「案内地図情報」と言う。
【0035】
スマートフォン20の受信部230がサーバ50から案内地図情報を受信すると、スマートフォン20の経路案内部270は、案内地図情報を用いた経路案内を実行する(ステップS322)。なお、本実施形態では、スマートフォン20の経路案内部270が車載装置70に案内地図情報と自己位置を示す情報とを送信することによって、車載装置70に経路案内を実行させる。サーバ50との通信が可能な場合(ステップS330、YES)、スマートフォン20の送信部220は、自己位置を示す情報と、通信状況を示す情報と、通信キャリアを特定するための情報とをサーバ50に送信する(ステップS332)。通信状況とは、地点毎の通信の可否および安定性等のことである。通信状況を示す情報としては、例えば、地点毎の電波の強度値が挙げられる。なお、通信不能である最中に通信不能であることを示す情報を送信することはできないので、通信可能になった後に、通信不能であった旨と、通信不能だった地点を示す情報とを送信する。
【0036】
サーバ50の第1地図データ配信部560は、スマートフォン20から自己位置を示す情報を受信すると、スマートフォン20の自己位置に対応する地図データを地図データ記憶部530から取得し、案内地図情報をスマートフォン20に配信する(ステップS345)。案内地図情報に含まれる第1の地図データは、サーバ50の第1地図データ配信部560が、スマートフォン20の自己位置を示す情報に応じて、地図データ記憶部530から取得する。スマートフォン20の受信部230が案内地図情報を受信すると、経路案内部270は、ステップS322と同様に経路案内を実行する(ステップS352)。
【0037】
一方で、サーバ50の通信不能領域更新部570は、スマートフォン20から送信される通信状況に関する情報に基づき、地図データ記憶部530の通信不能領域の記憶内容を更新する(ステップS365)。記憶内容の更新とは、通信不能領域更新部570が各領域に対応付けられた通信可能を通信不能に、又は通信不能を通信可能に入れ替えることである。通信不能領域更新部570による更新は、複数のスマートフォン20から収集した通信状況に関する情報の統計処理に基づいて行われる。統計処理に基づく理由は、通信不能領域情報が、個々のスマートフォン毎ではなく、通信キャリア毎に整理された構造を有しており、1つのスマートフォン20から収集した情報だけで決定するのは妥当でないからである。統計処理の具体的手法としては、通信不能領域更新部570は、配信単位の地図データよりも細かく分割された領域毎に通信可能または通信不能を割り当てるために、各分割領域に属する地点から通信不能という情報を送信してきたスマートフォン20の割合が所定値以上(例えば30%)であれば通信不能であり、所定値未満であれば通信可能であるという分類する手法が挙げられる。さらに、通信キャリアや電波の強度を加味しても良い。
【0038】
一方、通信不能の場合(ステップS330、NO)、スマートフォン20の第2地図データ記憶部250又は車載装置70が自己位置を含む領域の地図データを記憶しているときは(ステップS370、YES)、その地図データを用いて経路案内部270が経路案内を実行し(ステップS372)、スマートフォン20の第2地図データ記憶部と車載装置70との何れもが記憶していないときは(ステップS370、NO)、経路案内を中断する(ステップS382)。スマートフォン20及びサーバ50は、経路案内を終了するまで、ステップS330〜ステップS382を繰り返す。
【0039】
実施形態1のナビゲーションシステム10によれば、少なくとも以下の効果を得ることができる。(a)目的地付近が通信不能領域の場合でも、目的地付近において、詳細な地図を用いた経路案内ができる。これによって、各種施設や細い道路を使った案内ができるようになったり、大きな道路以外へのマップマッチングによる再探索ができるようになったりする。(b)サーバ50は、スマートフォン20からの情報に基づき、通信不能領域の情報を更新できる。スマートフォン20は多数、存在するので、この更新は集合知を利用したものであり、実態に即した有用な情報を反映させたものであると言える。(c)スマートフォン20は一度受信した第2の地図データを記憶するので、サーバ50は再び同じ地図データを配信する必要は無い。但し、地図データの最新バージョンが変更された場合は配信するので、スマートフォン20が古い地図データを使い続けることを防止できる。(d)目的地以外については、詳細な地図による案内でなくても構わないというユーザが多いと考えられるので、目的地を含まない第2の地図データの配信を省略し、出発処理に要する時間や通信データ量を節約している。これによって、さらに、スマートフォン20の記憶領域も節約できる。
【0040】
(e)目的地付近が通信不能領域の場合、目的地付近における歩行者用の地図データを配信してもよい。これによって、降車後に例えば目的地付近を歩いて観光する場合などに、分かりやすい案内を実行できる。(f)目的地付近が通信不能領域の場合、ユーザの希望に応じて、復路の経路案内として、逆行経路または他の経路を配信してもよい。これによって、復路の出発地から経路案内ができる。(g)配信する地図データに無線LAN接続ができる地点を示すことにしてもよい。これによって、通信不能領域でもインターネット接続ができる地点を、ユーザに通知できる。(h)車載装置70に第2の地図データを記憶させることによって、スマートフォン20の個体が入れ替わっても、第2の地図データを引き続き活用できる。これは、自動車は複数の人が代わる代わる使用することが多いのに対して、個々のスマートフォン20は常に同一人物によって使用されることが多いことに着目した工夫である。(i)経路案内処理によって蓄積される通信不能領域の情報は、通信キャリアの電波状況の把握や改善に利用することができる。
【0041】
各機能ブロックに対応する主なハードウェア構成を示す。自己位置測位部210はCPU24及びGPS受信機42が、送信部220及び受信部230はCPU24及び通信部32が、第2地図データ更新部240、経路案内部270及び端末側配信地図データ特定部280はCPU24が、第2地図データ記憶部250はRAM26が、第2地図データ配信部510及び第1地図データ配信部560は通信部52及び制御部54が、経路探索部520、サーバ側配信地図データ特定部550及び通信不能領域更新部570は制御部54が、地図データ記憶部530及び通信不能領域記憶部540は地図データベース56がそれぞれ対応する。
【0042】
実施形態2を説明する。実施形態2は、ハードウェア構成と経路案内処理とが実施形態1と同じであるのに対し、出発処理が実施形態1のものと異なる。以下、特に説明が無い事項については、実施形態1と同じであるものとする。
【0043】
図8は、実施形態2の出発処理を示すシーケンス図である。
図9は、スマートフォン20が実施形態2の出発処理を実行する際に発揮する機能を示すブロック図である。
図10は、サーバ50が実施形態2の出発処理を実行する際に発揮する機能を示すブロック図である。
【0044】
経路案内の指示が入力された後、スマートフォン20の送信部220は、経路探索用情報(出発地、目的地など)をサーバ50に送信する(ステップS612)。サーバ50の経路探索部520は、経路探索用情報を受信すると、その経路探索用情報を用いて経路探索を実行する(ステップS625)。次に、第2地図データ配信部510は、探索された経路情報をスマートフォン20に配信する(ステップS635)。端末側配信地図データ特定部280は、サーバ50から経路情報を受信すると、配信不要地図データを特定する(ステップS642)。具体的には、第2地図データ記憶部250に記憶された地図データのうち、探索された経路を含む領域の地図データが、配信不要地図データとして特定される。続いて、端末側配信地図データ特定部280は、配信不要地図データ情報をサーバ50に送信する(ステップS652)。配信不要地図データ情報とは、配信不要地図データを特定するための情報である。この情報は、例えば、配信不要地図データに対応する領域の四隅の緯度・経度と縮尺とを示す。ステップS642において配信不要地図データが特定されなかった場合は、その旨を配信不要地図データ情報の代わりにサーバ50に送信する。
【0045】
第2地図データ配信部510は、配信不要地図データ情報を受信すると、配信が必要な第2の地図データがある場合は(ステップS660)、第2の地図データをスマートフォン20に配信する(ステップS665)。配信が必要な地図データがある場合とは、配信不要地図データ情報によって、何れかの地図データが特定される場合である。
【0046】
第2地図データ配信部510は、ステップS665を実行した場合に、目的地を含む領域の歩行者用地図データの配信が必要なときは(ステップS670)、そのデータをスマートフォン20に配信する(ステップS675)。サーバ50から配信される第2の地図データをスマートフォン20の受信部230が受信すると、その第2の地図データを用いて、スマートフォン20の第2地図データ更新部240が、第2地図データ記憶部250と車載装置70との記憶内容を更新する(ステップS682)。
【0047】
次に、目的地付近が通信不能領域の場合に、復路の案内経路として、経由経路(逆行経路以外の経路)をユーザが希望するとき(ステップS690)、送信部220は復路用の経路探索用情報をサーバ50に送信する(ステップS692)。経路探索部520は、スマートフォン20から復路用の経路探索用情報が送信されると、その情報を用いて経路探索をする(ステップS705)。第2地図データ配信部510は、その探索された経路を第2地図データ配信部510がスマートフォン20に配信して(ステップS715)、出発処理を終了し、経路案内処理を実行する。一方、配信が必要な第2の地図データが無い場合は、ステップS652の後、出発処理を終了し、経路案内処理を実行する。
【0048】
実施形態2によれば、目的地付近以外の通信不能領域においても、詳細な地図による案内ができる。しかも、探索経路を利用して配信不要な地図データを判定するので、無駄に地図データを配信することを防止できる。
【0049】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことができる。その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することできる。
【0050】
例えば、ナビゲーションが対象とする移動手段は、自動車でなくても、歩行、自転車、公共交通機関などでも良い。携帯端末は、スマートフォンでなくても、スマートフォンでない携帯電話、タブレット型コンピュータ等でも良い。出発時に第2の地図データを配信しなくても良い。例えば、携帯端末が通信不能領域に近づいた時に、その通信不能領域の地図データを配信しても良い。通信不能領域の特定は、プローブ情報に基づかなくとも良く、例えば通信キャリアから情報の提供を受けても良い。
【0051】
また、上記実施形態において、第2の地図データの配信は出発処理において行ったが、配信のタイミングは出発処理に限らない。例えば出発地から通信不能領域に到達するまでの間に適時配信する形態としても良い。