【文献】
Nat. Biotechnol., 1999, 17(8), pp.804-807
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列決定方法または高解像度融解曲線方法を含む、異なる核酸変異体を識別する方法が併用され;代替として、異なる核酸変異体を識別するハイブリダイゼーションプローブ、異なる核酸変異体を識別する加水分解プローブ、異なる核酸変異体を識別するTaqman(商標)プローブ、または異なる核酸変異体を識別する分子ビーコンの方法が併用されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の、標的核酸配列の変異体の選択的増幅方法。
【背景技術】
【0003】
対立遺伝子は通常、一対の相同染色体において同じ場所に位置し、かつ相対的形質を制御する一対の遺伝子を指し、そして対立遺伝子は、多型を有する。対立遺伝子の多型分析が広く用いられており、これには、法医学的同定、薬物属性分析、遺伝子タイピング、臓器移植が挙げられ、そしてまた、腫瘍細胞における、大量の野生型遺伝子を有するバックグラウンド下での遺伝子突然変異の検出が挙げられる。しかしながら、通常、腫瘍細胞は、周囲の正常な組織細胞と比較して、占める割合がかなり低いので、腫瘍細胞を検出することは非常に困難であり、特に、大量の野生型遺伝子を有するバックグラウンド下で腫瘍遺伝子の単一の点突然変異を検出することはとりわけ困難である。標的核酸配列の少量の突然変異型変異体を検出するために、現在、検出は通常、選択的増幅方法および選択的検出方法の組合せによって実行されている。選択的検出方法として、高解像度融解曲線、プローブハイブリダイゼーション、TaqMan(商標)プローブ、および他の方法が挙げられる。米国特許(米国特許第5,210,015号、米国特許第5,538,848号、および米国特許第6,326,145号)に開示されるTaqMan(商標)プローブ方法は、プローブが、検出されるべき核酸フラグメントと特異的にハイブリダイズされてから、5'-エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼによって切断されて生じるシグナルが用いられて、検出されるべき標的フラグメントの存在が示されるプロセスである。しかしながら、突然変異型変異体はごく僅かな割合であるので、そのシグナルは、検出されるべき標的配列の突然変異型変異体から生じる当該シグナルに類似する、野生型変異体から生じるシグナルによって、容易にかき消される;一方で、選択的増幅方法は、高い選択性を有する。
【0004】
したがって、対立遺伝子の選択的増幅により、標的核酸配列の突然変異型変異体の選択的増幅および選択的検出が可能となる。首尾良い選択的増幅系において、標的核酸配列の突然変異型変異体のみが増幅される一方で、標的核酸配列の野生型変異体は増幅されない;すなわち、標的核酸配列の野生型変異体の増幅効率は、標的核酸配列の突然変異型変異体の増幅効率よりもずっと低い。選択的増幅のために種々の方法、例えば、以下に記載されるようなPCRクランピング方法、RFLP-PCR方法、デジタルPCR方法、より低い変性温度での同時増幅PCR方法が開発されてきた。
【0005】
PCRクランピング方法は、標的核酸配列の野生型変異体の増幅を阻害することによって、検出されるべき標的フラグメントの選択的増幅を達成する方法である。ペプチド核酸(PNA)またはロックド核酸(LNA)を用いる方法が、それぞれ文献[Henrikら、Nucleic Acid Research 21:5332〜5336頁(1993)]および[Luoら、Nucleic Acid Research 34巻2号e12頁(2006)]に開示されている。しかしながら、検出されるべき標的フラグメントとは一般的に1つのみ異なる塩基を有する標的核酸配列の野生型変異体および突然変異型変異体とは異なり、当該方法は、非標的フラグメントの増幅を完全に阻害することはできない。
【0006】
RFLP-PCR方法は、PCR反応の前に、またはPCR反応中に、制限酵素を利用して、標的核酸配列の突然変異型変異体に類似する野生型変異体を取り除くことによって、標的核酸フラグメントの突然変異型変異体の増幅および富化を達成する方法である。当該方法に基づく種々の変形があり、制限部位変異-PCR(RSM-PCR)方法、および突然変異部位でのプライマーライゲーションに基づく増幅(APRIL-ATM)等が挙げられる。このような方法は、設計が簡単であり、かつコストが低いという利点があり、そして一部の特定の実験において、選択性が良好である;しかしながら、これらは突然変異部位の近くに制限酵素部位があることに依拠しており、選択性が特定の用途に限られていた。
【0007】
デジタルPCRは、鋳型を希釈し、かつPCR反応数を増大させることによって、標的核酸配列の少量の突然変異型変異体を検出する方法である[Vogelstein B、Kinzler KW. Digital PCR. Proc Natl Acad Sci USA 1999;96:9236〜41頁]。理論的には、各PCR反応において核酸鋳型が希釈されて、1つの核酸鋳型しか存在しない、または核酸鋳型が存在しない場合、当該PCR反応において、何も増幅されない、または野生型鋳型もしくは突然変異型鋳型が増幅される。対応する検出方法と組み合わせることによって、少量の突然変異型変異体の検出が達成され得る。理論的には、そのような方法は、PCR反応数を増大させることによって、選択性が無制限となる。しかしながら、実際の操作において、選択性は、Taq DNAポリメラーゼのフィデリティによって制限されるだけでなく、同時に実行され得るPCR数によっても制限される。デジタルPCRベースの方法は、選択性が高いことが報告されている。例えば、その内容は、[Bielas JH、Loeb LA. Quantification of random genomic mutations. Nat Methods 2005;2:285〜90頁]に開示されている。しかしながら、当該方法は通常、特殊な機器を必要とし、かつチップ技術を用いて実行されるので、プロセスが非常に複雑であり、かつコストが高い。
【0008】
より低い変性温度での同時増幅PCR(Cold-PCR)は、増幅されるべき標的フラグメントを富化するように、PCR反応の熱サイクル条件を調整することによる方法である。より低い変性温度(Tc)にて、標的核酸配列の突然変異型変異体、または突然変異型変異体およびその野生型変異体から形成されるヘテロダイマーが、野生型変異体と比較して、より容易に変性されて、さらに増幅および富化される。そのような方法は、若干の選択性を実現することができるが、そのような選択性は依然として不十分である。例えば、その内容は、[Li J、Wang L、Mamon H、Kulke MH、Berbeco R、Makrigiorgos GM. Replacing PCR with COLD-PCR enriches variant DNA sequences and redefines the sensitivity of genetic testing. Nat Med 2008;14:579〜84頁]に開示されている。
【0009】
典型的なポリメラーゼ連鎖反応PCRにおいて、上流プライマーおよび下流プライマーはそれぞれ、標的遺伝子の二本鎖と完全に相補的である。プライマーの3'末端に1つまたは複数の塩基ミスマッチがあれば、増幅効率の相当な低下を引き起こすことが可能である。そのようなミスマッチが大きな影響を及ぼすことがある一方で、小さな影響しか及ぼさないこともある。単一の点突然変異の検出系において、プライマーの3'末端の最後の塩基または最後から2番目の塩基が、突然変異部位と完全に相補的であり、かつ適合するように設計されることによって、突然変異遺伝子が選択的に増幅される一方で、正常な非突然変異遺伝子に対する増幅効率は非常に低くなる。そのような方法は、対立遺伝子特異的増幅方法と呼ばれる(米国特許第5639611号参照)。そのような選択的増幅方法は、系の反応条件の調整によって、より良好な選択性を達成することができる。それにもかかわらず、対立遺伝子特異的PCRの選択性は、種々の用途において十分というにはほど遠い。
【0010】
選択性を高めるための研究に関して、方法の向上として、系の選択性を高めるようにプライマー中に突然変異部位を追加的に導入するものがある(米国特許第5137806号参照);そして別の方法として、対立遺伝子特異的PCR方法の選択性を高めるように化学的に修飾されたプライマーを用いるものがある。例えば、プライマーのあるヌクレオチド上のデオキシリボースの特定の位置での2'-C、4'-C修飾が、選択性を高めることができる[Gaster, J.およびMarx, A Chem. Eur. J. 2005、11:1861〜1870頁]。また、系の選択性を高めるようなプライマーへの特殊な塩基の導入方法(米国特許第7408051号参照)、および系の特定の選択性を高めるようなミスマッチ結合に熱安定タンパク質を用いることによる方法(US5877280参照)がある。
【発明を実施するための形態】
【0030】
検出されるべきでない大量の核酸変異体中に存在する、検出されるべき少量の核酸変異体を検出するために、本発明者は、広範な研究を行なって、本発明の技術的解決策を提案した。本明細書中の開示を鑑みて、当業者であれば、プロセスパラメーターを適切に向上させることができる。特に、本発明に含まれると考えられる全ての類似した置換および変更が、当業者にとって明らかであることが示されるべきである。本発明の用途は、好ましい実施例によって開示されており、そして明らかに、当業者であれば、本発明の内容、精神、および範囲を逸脱することなく、本発明の技術を達成し、かつ応用するように、本明細書中に記載されるような用途に対して、交替または適切な改変および組合せを実行することができる。
【0031】
一態様において、本発明は、少なくともオリゴヌクレオチドフラグメントを用いることによって、検出されるべきサンプルを増幅するステップを含む、標的核酸配列の変異体の選択的増幅方法であって、サンプルは、1つまたは複数の変異体を含み得る、方法を提供する。オリゴヌクレオチドフラグメントは、3'末端にプライマー領域および5'末端に変異体認識領域を含み、これらの領域は共有結合的に連結する。適切な反応系において、プライマー領域は、標的核酸配列とハイブリダイズして、プライマー領域の3'末端は、核酸ポリメラーゼによって伸長される。標的核酸配列の、検出されるべきでない変異体が鋳型として用いられる場合、変異体認識領域は、
図1に示されるように、プライマー領域の伸長から生じる配列と完全に、または部分的に相補的であり、ヘアピン構造を形成する。
【0032】
検出されるべき核酸変異体が鋳型として用いられる場合、変異体認識領域は、プライマー領域の伸長から生じる配列と完全には相補的でなく、安定したヘアピン構造を形成することができない。先に記載されるヘアピン構造は、次のラウンドの増幅用の鋳型として適しておらず、増幅効率を抑制し、そして、検出されるべきでない変異体の増幅は、検出されるべき変異体と比較して、より大きな阻害を受けるので、選択的増幅が達成される。これらは
図2に示される。
【0033】
一部の実施例において、変異体認識領域は、核酸二本鎖安定化因子と共有結合的に連結する。二本鎖安定化因子は、ヘアピン構造の頸部のアニーリング温度を引き上げて、ヘアピン構造を安定化させるように機能することができる。一部の実施例において、変異体認識領域は、塩基類似体への修飾、核酸骨格への修飾、デオキシリボース類似体への修飾が挙げられる、ヌクレアーゼによって加水分解され得ない修飾を含み、当該修飾は、ペプチド核酸、チオホスフェートその他を含むがこれらに限定されない。これらの修飾は、オリゴヌクレオチドフラグメントがヌクレアーゼによって加水分解するのを防止することができ、かつヘアピン構造が損傷を受けることから保護することができる。
【0034】
一部の実施形態において、変異体認識領域に直接的に連結する、または他の基を介して共有結合的に連結する核酸二本鎖安定化因子が、ヌクレオチド上でオリゴヌクレオチドフラグメントの5'末端に連結する。ここで、核酸二本鎖安定化因子は、ロックド核酸、ペプチド核酸、またはDNA副溝バインダー、およびそれらの類似体その他であってよい。
【0035】
一部の実施例において、核酸変異体を識別しない核酸検出方法が挙げられ、そしてまた、異なる核酸変異体を識別する検出方法が挙げられる核酸検出方法が併用される。核酸変異体を識別しない核酸検出方法として、色素方法、ハイブリダイゼーションプローブ検出方法、加水分解プローブ検出方法、Taqmanプローブ方法、または分子ビーコン方法が挙げられる。異なる核酸変異体を識別する検出方法として、配列決定または高解像度融解曲線が挙げられる。代替として、異なる核酸変異体を識別するハイブリダイゼーションプローブ、異なる核酸変異体を識別する加水分解プローブ、異なる核酸変異体を識別するTaqmanプローブ、または異なる核酸変異体を識別する分子ビーコン等の方法が併用される。
【0036】
一部の実施例において、適切な反応系は、温度の上昇によって反応を開始する系である。温度の上昇によって反応を開始する当該系は、反応の特異性を高めることができる。
【0037】
別の態様において、本発明は、互いに共有結合的に連結するプライマー領域および変異体認識領域からなるオリゴヌクレオチドフラグメントを提供する。変異体認識領域は、プライマー領域の伸長から生じる配列と完全に、または部分的に相補的である場合、ヘアピン構造が形成される。変異体認識領域は、核酸二本鎖安定化因子と共有結合的に連結し、またはヌクレアーゼによって加水分解され得ない修飾を含み、当該修飾として、塩基類似体への修飾、核酸骨格への修飾、デオキシリボース類似体への修飾が挙げられ、当該修飾は、ペプチド核酸、チオホスフェートその他を含むがこれらに限定されない。ここで、核酸二本鎖安定化因子は、ロックド核酸、ペプチド核酸、またはDNA副溝バインダー、およびそれらの類似体その他であってよい。オリゴヌクレオチドフラグメントの変異体認識領域に直接的に連結する、または他の基を介して共有結合的に連結する核酸二本鎖安定化因子は、ヌクレオチド上でオリゴヌクレオチドフラグメントの5'末端に連結する。
【0038】
別の態様において、本発明は、核酸変異体の検出用キットであって、当該キットは、先に記載されるオリゴヌクレオチドフラグメントを含み、当該フラグメントは、互いに共有結合的に連結するプライマー領域および変異体認識領域を含む、キットを提供する。変異体認識領域は、プライマー領域の伸長から生じる配列と完全に、または部分的に相補的である場合、ヘアピン構造が形成される。変異体認識領域は、核酸二本鎖安定化因子と共有結合的に連結し、またはヌクレアーゼによって加水分解され得ない修飾を含み、当該修飾として、塩基類似体への修飾、核酸骨格への修飾、デオキシリボース類似体への修飾が挙げられ、当該修飾はペプチド核酸、チオホスフェートその他を含むがこれらに限定されない。ここで、核酸二本鎖安定化因子は、ロックド核酸、ペプチド核酸、またはDNA副溝バインダー、およびそれらの類似体その他であってよい。キットは、適切なキット増幅系、例えば、伸長に必要とされる核酸ポリメラーゼ、二価金属イオン、ヌクレオチド、塩、バッファ、および他の補因子その他を含む系をさらに含む。また、キットは、核酸色素およびプローブその他の1つまたは複数を含むがこれらに限定されない、核酸検出に必要とされる試薬をさらに含む。
【0039】
本発明のオリゴヌクレオチドフラグメントは、少なくとも、互いに共有結合的に連結し得るプライマー領域および変異体認識領域を含む。プライマー領域が、これに相補的である標的核酸と完全に相補的である場合、核酸ポリメラーゼによる適切な伸長系において、プライマー領域は、核酸ポリメラーゼによって、原料としてのヌクレオチドにより伸長する。「相補的である」は、水素結合を介してオリゴヌクレオチドフラグメントとその標的核酸との間で塩基対が形成されることを意味し、これには、アデニンAとチミンTまたはウラシルUとの塩基対、シトシンCとグアニンGとの塩基対が挙げられ、そしてまた、一部の天然または非天然のヌクレオチド類似体の関与によって形成される水素結合も挙げられる。例えば、5-ブロモウラシルは、アデニンとの、同様にチミンとの相補的塩基対を形成することができるが、そのエノール形態において、グアニンとの相補的塩基対を形成することができる。本発明において言及される、設計されたオリゴヌクレオチドフラグメント、ならびに他のプライマーおよびプローブは、Table 1(表1)に示される。
【0041】
先のオリゴヌクレオチドフラグメント、ならびに他のプライマーおよびプローブについて、修飾がフラグメントの途中にある場合、それらは、修飾フラグメント、例えばMGB、スペーサC3、FAM、またはQMGBによって、前後の2つのフラグメントと共に表される(配列リスト参照)。配列4は、MGB、配列4a、スペーサC3、および配列4bが連結する配列である;配列8は、MGB、配列8a、スペーサC3、および配列8bが連結する配列である;配列11は、MGB、配列11a、スペーサC3、および配列11bが連結する配列である;そして、配列16は、配列16a、スペーサC3、および配列16bが連結する配列である。
【0042】
適切な条件下で、変異体認識領域は、プライマー領域から伸長されるフラグメントと完全に相補的であり、または完全には相補的でない。変異体認識領域が、プライマー領域の伸長から生じる配列と完全に、または部分的に相補的である場合、ヘアピン構造が形成される。変異体認識領域が、プライマー領域から伸長されるフラグメントと完全には相補的でない場合、安定したヘアピン構造は形成されない。先の形成されたヘアピン構造は、次のラウンドの増幅用の鋳型として適していない。一部の実施例において、変異体認識領域は、核酸二本鎖安定化因子と共有結合的に連結する。二本鎖安定化因子は、ヘアピン構造の頸部のアニーリング温度を引き上げて、ヘアピン構造を安定化させるように機能することができる。一部の実施例において、変異体認識領域は、塩基類似体への修飾、核酸骨格への修飾、デオキシリボース類似体への修飾が挙げられる、ヌクレアーゼによって加水分解され得ない修飾を含み、当該修飾は、ペプチド核酸、チオホスフェートその他を含むがこれらに限定されない。これらの修飾は、オリゴヌクレオチドフラグメントがヌクレアーゼによって加水分解するのを防止することができ、かつヘアピン構造が損傷を受けることから保護することができる。安定したヘアピン構造は、増幅効率を抑制し、そして、野生型変異体の増幅は、突然変異型変異体と比較して、より大きな阻害を受けるので、
図2に示されるように、選択的増幅が達成される。初期の核酸の数が同じである場合には、異なる増幅効率のために、Table 2(表2)に示されるように、いくつかのサイクル後の数について、非常に大きな差も生じることとなる。
【0044】
プライマー領域と変異体認識領域との連結、および核酸ポリメラーゼ伸長インヒビタとオリゴヌクレオチドとの連結は、直接的な共有結合、例えば核酸骨格における3'-5'リン酸ジエステル結合であってよく、また、アルキル基、ヌクレオチドおよびその類似体、炭水化物、窒素含有複素環その他を含むがこれらに限定されない他の化学基を介してもよい。プライマー領域と変異体認識領域との間の連結の長さは、ゼロ(すなわち、直接的な連結)であってもよいし、何十もの塩基対長であっても他の適切な長さであってもよい。
【0045】
特に定義されない限り、本発明における全ての科学的または技術的専門用語は、当業者の殆どが一般的に理解するのと同じである。当該技術における殆どの専門用語は、以下の文献における一般的な意味を有する[Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (第2版 1994)];[The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker編、1988)];[The Glossary of Genetics、第5版、R. Riegerら(編)、Springer Verlag (1991)];[HaleおよびMarham、The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)]。定義されない限り、本発明における全ての専門用語は、上記の文献に記載されるのと同じである。
【0046】
用語「ヌクレオシド」は、糖分子またはその類似体上に共有結合的に連結する塩基または塩基性基を包含する。先に記載されるように、塩基は、天然の塩基であってよく、そしてまた非天然の塩基であってもよい[Seelaら(1999) Helv. Chim. Acta 82:1640頁]。一部の塩基は、核酸の融解温度(Tm)を変更するものであり、例えば、7-アザプリン(例えば7-アザグアニン、7-アザアデニンその他)、または米国特許第5990303号において言及されるものが挙げられる。他の典型的な複素環塩基は、ヒポキサンチン、イノシトール、キサンチン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシトール、キサンチンの誘導体;およびアデニン、グアニン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシトール、キサンチンの7-アジド-8-アゾ誘導体;6-アザシチジン;5-フルオロシトシン;5-クロロシトシン;5-ヨードシトシン;5-ブロモシトシン;5-メチルシトシン;5-プロピニルシトシン;5-ブロモビニルウラシル;5-フルオロウラシル;5-クロロウラシル;5-ヨードウラシル;5-ブロモウラシル;5-トリフルオロメチルウラシル;5-メトキシウラシル;5-エチニルウラシル;5-プロピニルウラシル;その他を含むがこれらに限定されない。典型的なヌクレオシドは、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、ジデオキシリボヌクレオシド、および炭素環ヌクレオシドを含むがこれらに限定されない。
【0047】
用語「ヌクレオチド」は通常、エステル結合を介して酸性分子または酸性基に連結するヌクレオシドから形成される化合物を指し、例えば、ヌクレオシドリン酸は、一般的に、ヌクレオシドにおけるグリコシル基の位置5上に共有結合的に連結する1つ、2つ、または3つのリン酸基を有する。場合によっては、ヌクレオチドの定義はまた、一部の典型的なヌクレオチドの相同体または類似体を包含する。
【0048】
用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドから形成されるマルチマーであって、ヌクレオチド同士が共有結合を介して連結するマルチマーを指す。オリゴヌクレオチドは通常、少なくとも3つのヌクレオチドを含む。場合によっては、オリゴヌクレオチドは、ホスファミド[Beaucageら(1993) Tetrahedron 49(10):1925頁]、チオホスフェート[Magら(1991) Nucleic Acids Res. 19:1437頁;および米国特許第5644048号]、ジチオホスフェート[Briuら(1989) J. Am. Chem. Soc. 111:2321頁]、O-メチルホスファミド[Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Press (1992)]、またはペプチド核酸骨格連結[Egholm (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:1895頁]の連結を含むことが可能である。他のオリゴヌクレオチドとしてさらに、正に帯電した骨格[Denpcyら(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6097頁]、非イオン型骨格(米国特許第5386023号、米国特許第5637684号、米国特許第5602240号、米国特許第5216141号、および米国特許第4469863号)、および非リボース骨格(米国特許第5235033号および米国特許第5034506号)が挙げられる。1つまたは複数の炭素環糖を含むオリゴヌクレオチドもまた、核酸の定義に入る[Jenkinsら(1995) Chem. Soc. Rev. 169〜176頁]。特定の条件下で分子の安定性を向上させる目的で、またはオリゴヌクレオチドにタグ付けする目的で、リボース-リン酸骨格上に修飾が実行される状況もまた、オリゴヌクレオチドの定義範囲内に包含される。オリゴヌクレオチドはまた、種々のスペーサ修飾、例えばスペーサC3、スペーサC9、スペーサC18その他を含んでもよい。
【0049】
用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNA-RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド核酸(PNA)、PNA-DNAハイブリッド、およびPNA-RNAハイブリッド等を含む。直鎖状形態(一本鎖または二本鎖)または分枝状形態の全ての共有結合的に連結ヌクレオチドが含まれる。典型的な核酸は通常、一本鎖または二本鎖であり、リン酸ジエステル結合を含む。
【0050】
用語「ヘアピン構造」は、核酸中の配列の、それ自体の別の配列とのハイブリダイゼーションから形成される構造を指す。典型的なヘアピン構造が、
図1に示される。
【0051】
用語「標的核酸配列」は、増幅されるべき核酸配列を指し、これは、核酸増幅用の鋳型として用いられる。
【0052】
用語「核酸配列の変異体」、「核酸変異体」は、異なる変異体間で差がある特定の核酸配列を指し、当該差は、単一塩基の差であっても複数塩基の差であってもよく、挿入、欠失、転座、または上記の全タイプの組合せであってよい。
【0053】
用語「野生型変異体」は、天然の「正常な」遺伝子配列を指し、これは、大半の集団において、同じ遺伝子配列中に最も高い頻度で存在する配列である。
【0054】
用語「突然変異型変異体」は、「野生型変異体」と異なる核酸配列を指す。そのような差は、単一塩基の差であっても複数塩基の差であってもよく、そして挿入であっても欠失であっても、上記の全タイプの組合せであってもよく、例えば、腫瘍細胞中の突然変異核酸配列である。一部の実施例において、野生型変異体と比較して、突然変異型変異体は、占めるパーセンテージが非常に低い。
【0055】
用語「プライマー領域」は、標的核酸配列の一本鎖と相補的であるオリゴヌクレオチド配列を指し、これは通常、核酸ポリメラーゼによる伸長の出発部位として用いられる。
【0056】
用語「変異体認識領域」は、核酸変異体との差を有する配列と多くの場合対形成されるオリゴヌクレオチド配列を指し、異なる核酸変異体が、変化に富む対形成程度に応じて識別され得る。
【0057】
用語「核酸ポリメラーゼ」は、生体触媒反応を通してヌクレオチドを核酸中に組み込むことができる酵素を指し、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ターミナルトランスフェラーゼその他を含むがこれらに限定されない。
【0058】
用語「伸長」は、核酸ポリメラーゼを用いることによって、オリゴヌクレオチドフラグメントが、新たに組み込まれたヌクレオチドと共有結合的に連結して、新しいオリゴヌクレオチドを形成するプロセスを指す。
【0059】
用語「増幅」は、標的核酸フラグメントの数が、核酸ポリメラーゼの作用下で増大するプロセスを指し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、転写介在増幅(TMA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)その他を含むがこれらに限定されない。
【0060】
本発明の実施例において、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を指す。鋳型の変性および融解の後、オリゴヌクレオチドプライマーが鋳型とアニーリングかつハイブリダイズし、ヌクレオチドの添加による伸長を伴い、あるラウンドのそのような繰返しサイクルを通して、標的ヌクレオチドフラグメントの増幅が達成される。場合によっては、アニーリングおよび伸長は、同じ温度で実行される。
【0061】
本発明においてオリゴヌクレオチド鎖の記載に用いられる場合の用語「完全に相補的である」は、オリゴヌクレオチド鎖の各塩基が、二本鎖核酸中の別のオリゴヌクレオチド鎖または核酸鎖中の塩基と、Watson-Crick塩基対または同様の水素結合対を形成することを指す。本発明においてオリゴヌクレオチド鎖の記載に用いられる場合の「部分的に相補的である」は、オリゴヌクレオチド鎖中の、1つ超だが全てではない塩基が、核酸中の別のオリゴヌクレオチド鎖または塩基とWatson-Crick塩基対または同様の水素結合対を形成することを指す。
【0062】
用語「ミスマッチの」核酸は、1つまたは1つ超のミスマッチの塩基対を含む核酸を指す。ミスマッチの塩基対は、二本鎖核酸中の2つの対応する塩基が、Watson-Crick塩基対または同様の水素結合対を形成することができないことを指す。
【0063】
本発明における用語「核酸二本鎖安定化因子」は、核酸の二本鎖構造を安定化させるのを容易にすることができる化合物または基を指す。それは、ロックド核酸であってよく、そしてまた、ペプチド核酸またはDNA副溝バインダーであってもよい。好ましくは、修飾は、DNA副溝バインダーである。以前に、文献において、DNA副溝バインダー分子は、ハイブリッド核酸ダイマーのアニーリング温度をかなり引き上げ得、そして一般的に、DNA副溝バインダーは、オリゴヌクレオチドフラグメントの3'末端に連結することが報告された。連結したDNA副溝バインダーは、ハイブリッド核酸ダイマーのアニーリング温度をかなり引き上げ得るので、異なる核酸変異体と修飾オリゴヌクレオチドフラグメントとの間の相補性が異なることで、アニーリング温度の大きな差が生じる。ゆえに、核酸ポリメラーゼによる伸長に異なる阻害効果が及ぶ。本発明において、好ましくは、DNA副溝バインダーは、オリゴヌクレオチドの5'末端に接続する。
【0064】
用語「副溝バインダー」は、DNA副溝に結合することができる化合物を指す。DNA二重らせんは、その表面上に2本の溝を有しており、それぞれ主溝および副溝と命名されている。DNA主溝は、DNA副溝と比較して、水素結合ドナー、アクセプタ、電荷その他に関する詳細な情報を有しており、細胞内タンパク質は、主溝内の部位を認識して、遺伝子発現を制御する、または他の細胞内機能を発揮することを選好する。
【0065】
DNA副溝は、自然界にある一部の抗生物質、例えばネトロプシン、ジスタマイシンの標的である。双方の化合物は、DNAと結合する場合、解離定数が10
-5Mの規模であり、DNAのAT-リッチ領域に対する選好性を示す。2つの化合物は双方とも、選択性、毒性等の態様に関して、いくつかの制限がある:ゆえに、これらの制限を克服するために、多くの類似の化合物が研究によって見出されてきた。例えば、化合物が、以下の総説において言及されている:[Sondhiら(Curr. Med. Chem. 4、313頁(1997))]、[Reddyら(Pharmacology & Therapeutics 84、1頁(1999))]、[Wemmer (Biopolymers 52、197頁(2001))]、[Dervan (Bioorg. Med. Chem. 9、2215頁(2001))]。
【0066】
DNA中のGC塩基対領域に結合することを選好する化合物もいくつかあるといわれており、例えば、化合物が、以下の文献において言及されている:[Anti-Cancer Drug Design 5、3頁(1990)]、[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89、7586頁(1992)]、[Biochemistry 32、4237頁(1993)]、[Science 266、647頁(1994)]、[Anti-Cancer Drug Design 10、155頁(1995)]、[Bioorg Med. Chem. 8、985頁(2000)]、[Mol. Biol. 34、357頁(2000)]。ネトロプシンおよびジスタマイシンの様々な類似体が見出されており、例えば、[J Am. Chem. Soc. 114(15)、5911頁(1992)]、[Biochemistry 31、8349頁(1992)]、[Bioconjugate Chem. 5、475頁(1994)]、[Biochem. Biophys. Res. Commun. 222、764頁(1996)]、[J Med. Chem. 43、3257頁(2000)]、[Tetrahedron 56、5225頁(2000)]、[Molecular Pharmacology 54、280頁(1998)]、[Bioorg Med. Chem. Lett. 6(18)、2169頁(1996)]、[J. Med. Chem. 45、805頁(2002)]、[Bioorg. Med. Chem. Lett. 12、2007頁(2002)]、(国際特許出願WO97/28123、WO98/21202、WO01/74898、およびWO02/00650、米国特許第4,912,199号、米国特許第5,273,991号、米国特許第5,637,621号、米国特許第5,698,674号、および米国特許第5,753,629号)である。WO2003/059881はさらに、ネトロプシンおよびジスタマイシンのポリペプチド相同体を開示している。
【0067】
用語「配列決定」は、特定の核酸フラグメントについての塩基の配列、すなわち、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、およびグアニン(G)の配置の分析を指す。サンガー方法は、ヌクレオチドに基づいてある固定部位から始めて、特定の塩基でランダムに終了して、各塩基の後ろに蛍光標識を付けて、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、およびグアニン(G)で終わる、異なる長さの一連のヌクレオチドの4つの群を生じさせてから、尿素変性PAGEゲル上での電気泳動を介して検出することで、DNA塩基の可視配列が得られる方法である。合成によるサイクリックアレイ配列決定法において、DNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼによってDNA鎖上に塩基を連結するプロセスにおいて放出される光シグナルを、蛍光材料または化学発光材料を用いて読むことによって、全配列が間接的に判定される。新規のナノポア配列決定法は、電気泳動技術を用いる配列決定方法であり、電気泳動によって順々に単一分子をナノポアに通させるものである。ナノポアの非常に小さな直径のために、単一の核酸ポリマーのみが通過することができ、異なる塩基が異なる帯電特性を有することで、通過した塩基のタイプを、電気シグナルの差によって検出することが可能となるので、配列決定が達成される。核酸配列決定のための種々の方法があり、新たな方法が継続的に開発されている。
【0068】
用語「色素方法」は、核酸と相互作用する色素を用いてシグナルを得る核酸検出方法を指す。
【0069】
用語「高解像度融解曲線方法」は、核酸中に蛍光色素が組み込まれた異なる核酸の融解プロセスにおける蛍光シグナルの変化のリアルタイム検出を指し、これは、異なるプロフィールの融解曲線を作成して、異なる核酸中に存在する差を一目でわかるように表示することができる。
【0070】
用語「ハイブリダイゼーションプローブ検出方法」は、検出され得るシグナル分子を有する核酸の小さな断片と、検出されるべき核酸との間で相補的な塩基対形成を形成して、シグナル変化を生じさせることによって、核酸を検出する方法を指す。プローブは、異なる核酸変異体を識別するプローブであってよく、そしてまた、異なる核酸変異体を識別しないプローブであってもよい。
【0071】
用語「加水分解プローブ検出方法」は、検出されるべき核酸の存在下で、検出され得るシグナル分子を有する核酸の小さな断片が、ヌクレアーゼによって加水分解されて、核酸を検出するためのシグナル変化が生じる方法を指す。プローブは、異なる核酸変異体を識別するプローブであってよく、そしてまた、異なる核酸変異体を識別しないプローブであってもよい。
【0072】
用語「Taqmanプローブ方法」は、米国特許(米国特許第5,210,015号、米国特許第5,538,848号、および米国特許第6,326,145号)において開示されるTaqman(商標)プローブ方法であり、検出されるべき核酸フラグメントへのプローブの特異的ハイブリダイゼーションによって、そして5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼによる切断によって生じたシグナルが用いられて、検出されるべき標的フラグメントの存在が示される。プローブは、異なる核酸変異体を識別するプローブであってよく、そして、異なる核酸変異体を識別しないプローブであってもよい。
【0073】
用語「分子ビーコン方法」は、検出されるべき核酸を、分子ビーコンによって検出する方法を指す。分子ビーコンは、二重標識化頸部ループオリゴヌクレオチドプローブであり、これは、核酸配列が2つの末端にて互いに相補的であることで、約8塩基のヘアピン構造が、それ自体によってその5'末端および3'末端にて形成される。ゆえに、1つの末端にて標識付けされた蛍光基が、別の末端にて標識付けされたクエンチング基に非常に接近するので、蛍光が生じない。検出されるべき核酸の存在下で、分子ビーコンは、検出されるべき核酸にハイブリダイズするので、クエンチング基から遠く離れた蛍光基に、検出されるべき核酸を検出するための蛍光シグナルの増強がもたらされる。分子ビーコンは、異なる核酸変異体を識別するオリゴヌクレオチドプローブであってよく、そしてまた、異なる核酸変異体を識別しないオリゴヌクレオチドプローブであってもよい。
【0074】
本発明の実施例において、増幅反応は、ホットスタートプロセスを含む。本発明における選択的増幅の選択性は、ホットスタートにより高まり得る。当該技術において種々のホットスタート法があり、例えば、反応においてワックスを用いて、重要な成分を、残存する成分から分離して、温度の上昇と共にワックスが融解すると、重要な成分が、残存する成分と合わさって、反応が起こり得るもの(米国特許第5411876号);抗体を用いて、核酸ポリメラーゼの可逆的不活化を可能にするもの(米国特許第5338671号)、または核酸ポリメラーゼに結合するオリゴヌクレオチドを用いて、核酸ポリメラーゼを不活化するもの(米国特許第5840867号)がある。代替として、可逆的化学修飾のある核酸ポリメラーゼを用いて、ホットスタートの効果を達成するものがある(米国特許第5677152号、米国特許第5773528号)。
【0075】
本発明の実施例において、核酸増幅試験は、蛍光定量PCR試験である。蛍光定量PCR反応において、増幅を測定するパラメーターはCt値であり、より早いCt値は、シグナルが閾値により迅速に達することを示す。増幅サンプル中の異なる核酸変異体間のCt差は、通常、異なる核酸変異体についての増幅系の増幅効率の差を反映し、これはさらに、増幅系の選択性を反映する。
【0076】
また、当該技術において、増幅産物の種々の検出方法もある。これらの方法として、蛍光標識プローブ、または核酸に結合する種々の色素の使用が挙げられる。そのような検出は、1つまたは複数の核酸変異体の特異的検出であってよく、そしてまた、核酸の全シグナルの非特異的検出であってもよい。増幅産物の検出は、増幅反応の完了後、例えばゲル電気泳動方法または核酸染色方法によって実行されてよい。また、増幅産物の検出は、増幅反応中に実行されてもよい。本発明の方法の選択性は、異なる核酸変異体を識別する選択的検出方法と組み合わせた本発明の選択的増幅方法によって、さらに向上し得る。
【実施例1】
【0077】
本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた、EGFR G719Sの選択的増幅
本実施例において、標的核酸配列の2つの変異体を、それぞれ104コピーおよび105コピーの量で加えた。ここで、一方の変異体は、EGFR G719S突然変異型配列(配列番号1)を挿入したプラスミドDNAであり、他方の変異体は、EGFR野生型配列(配列番号2)を挿入した同じプラスミドであった。
【0078】
(EGFR G719S突然変異型配列フラグメント):配列番号1
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGaGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0079】
(EGFR G719S野生型配列フラグメント):配列番号2
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGGGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0080】
フォワードプライマーの配列は、配列10であり、リバースプライマーとして、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた。この配列は配列4であった(Table 1(表1)参照)。
【0081】
PCR反応系は25μlの容量を有し、各反応系は、2%グリセリン、およびdATP、dCTP、dGTP、dTTP(それぞれ200μMの濃度)を含んだ。フォワードプライマー(配列10)、およびリバースプライマー(配列4)として本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントは双方とも、濃度が200nMであり、SYBR Greenは濃度が0.4*であり、5ユニットのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを有した。
【0082】
Roche LightCycle 480蛍光定量PCR機器を、PCR反応および以降のデータ分析に用いた。PCRの熱サイクル条件は、以下の通りであった:95℃10分;45サイクル(95℃15秒、60℃40秒、単回);融解(95℃1分、40℃2分、99℃継続);冷却(37℃30秒)。
【0083】
実験結果を
図3に示す。ここでは、実験結果を、465nM〜510nMでの蛍光変化によって具体化する一方で、系の選択性を、異なる変異体鋳型の増幅について、Ct値の差によって具体化し、デルタCt値を
図3に示す。これらの実験結果は、EGFR G719Sの選択的増幅が、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた異なる変異体鋳型の増幅によって達成されたことを示す。
【実施例2】
【0084】
本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた、EGFR T790Mの選択的増幅
本実施例において、標的核酸配列の2つの変異体を、それぞれ104コピーおよび105コピーの量で加えた。ここで、一方の変異体は、EGFR T790M突然変異型配列(配列番号5)を挿入したプラスミドDNAであり、他方の変異体は、EGFR野生型配列(配列番号6)を挿入した同じプラスミドであった。
【0085】
(EGFR T790M突然変異型配列フラグメント):配列番号5
CTGGCCACCATGCGAAGCCACACTGACGTGCCTCTCCCTCCCTCCAGGAAGCCTACGTGATGGCCAGCGTGGACAACCCCCACGTGTGCCGCCTGCTGGGCATCTGCCTCACCTCCACCGTGCAGCTCATCATGCAGCTCATGCCCTTCGGCTGCCTCCTGGACTATGTCCGGGAACACAAAGACAATATTGGCTCCCAGTACCTGCTCAACTGGTGTGTGCAGATCGCAAAGGTAATCAGGGAAGGGAGATACGGGGAGGGGAGATAAGGAGCCAGGATCCT
【0086】
(EGFR T790M野生型配列フラグメント):配列番号6
CTGGCCACCATGCGAAGCCACACTGACGTGCCTCTCCCTCCCTCCAGGAAGCCTACGTGATGGCCAGCGTGGACAACCCCCACGTGTGCCGCCTGCTGGGCATCTGCCTCACCTCCACCGTGCAGCTCATCACGCAGCTCATGCCCTTCGGCTGCCTCCTGGACTATGTCCGGGAACACAAAGACAATATTGGCTCCCAGTACCTGCTCAACTGGTGTGTGCAGATCGCAAAGGTAATCAGGGAAGGGAGATACGGGGAGGGGAGATAAGGAGCCAGGATCCT
【0087】
フォワードプライマーの配列は、配列7であり、リバースプライマーとして、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた。この配列は配列8であった(Table 1(表1)参照)。
【0088】
PCR反応系は25μlの容量を有し、各反応系は、2%グリセリン、およびdATP、dCTP、dGTP、dTTP(それぞれ200μMの濃度)を含んだ。フォワードプライマー(配列7)、およびリバースプライマー(配列8)として本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントは双方とも、濃度が200nMであり、SYBR Greenは濃度が0.4*であり、5ユニットのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを有した。
【0089】
Roche LightCycle 480蛍光定量PCR機器を、PCR反応および以降のデータ分析に用いた。PCRの熱サイクル条件は、以下の通りであった:95℃10分;45サイクル(95℃15秒、60℃40秒、単回);融解(95℃1分、40℃2分、99℃継続);冷却(37℃30秒)。
【0090】
実験結果を
図4に示す。ここでは、実験結果を、465nM〜510nMでの蛍光変化によって具体化する一方で、系の選択性を、異なる変異体鋳型の増幅について、Ct値の差によって具体化し、デルタCt値を
図4に示す。これらの実験結果は、EGFR T790Mの選択的増幅が、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いて達成されたことを示す。
【実施例3】
【0091】
本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた、混合鋳型の選択的増幅
本実施例において、標的核酸配列の2つの変異体を、それぞれ104コピーおよび105コピーの量で加えた。ここで、一方の変異体は、EGFR G719S突然変異型配列(配列番号1)を挿入したプラスミドDNAであり、他方の変異体は、EGFR野生型配列(配列番号2)を挿入した同じプラスミドであった。
【0092】
(EGFR G719S突然変異型配列フラグメント):配列番号1
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGaGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0093】
(EGFR G719S野生型配列フラグメント):配列番号2
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGGGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0094】
フォワードプライマーの配列は、配列10であり、リバースプライマーとして、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた。この配列は配列4であった(Table 1(表1)参照)。
【0095】
PCR反応系は25μlの容量を有し、各反応系は、2%グリセリン、およびdATP、dCTP、dGTP、dTTP(それぞれ200μMの濃度)を含んだ。フォワードプライマー(配列10)、およびリバースプライマー(配列4)として本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントは双方とも、濃度が200nMであり、SYBR Greenは濃度が0.4*であり、5ユニットのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを有した。
【0096】
Roche LightCycle 480蛍光定量PCR機器を、PCR反応および以降のデータ分析に用いた。PCRの熱サイクル条件は、以下の通りであった:95℃10分;45サイクル(95℃15秒、60℃40秒、単回);融解(95℃1分、40℃2分、99℃継続);冷却(37℃30秒)。
【0097】
実験結果を
図5に示す。ここでは、実験結果を、465nM〜510nMでの蛍光変化によって具体化する一方で、系の選択性を、異なる変異体鋳型の増幅について、Ct値の差によって具体化し、デルタCt値を
図5に示す。これらの実験結果は、混合鋳型の選択的増幅が、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いて達成されたことを示す。
【実施例4】
【0098】
本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを、MGBプローブと併用した、選択的増幅および選択的検出
本実施例において、標的核酸配列の2つの変異体を、それぞれ100コピーおよび104コピーの量で加えた。ここで、一方の変異体は、EGFR G719S突然変異型配列(配列番号1)を挿入したプラスミドDNAであり、他方の変異体は、EGFR野生型配列(配列番号2)を挿入した同じプラスミドであった。
【0099】
(EGFR G719S突然変異型配列フラグメント):配列番号1
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGaGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0100】
(EGFR G719S野生型配列フラグメント):配列番号2
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGGGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0101】
フォワードプライマーの配列は、配列10であり、リバースプライマーとして、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた。この配列は配列4であった。MGBプローブの配列は、配列番号9であった(Table 1(表1)参照)。
【0102】
PCR反応系は25μlの容量を有し、各反応系は、2%グリセリン、およびdATP、dCTP、dGTP、dTTP(それぞれ200μMの濃度)を含んだ。フォワードプライマー(配列10)、およびリバースプライマー(配列4)として本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメント、ならびにプローブ(配列9)は全て、濃度が200nMであり、1ユニットのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを有した。
【0103】
Roche LightCycle 480蛍光定量PCR機器を、PCR反応および以降のデータ分析に用いた。PCRの熱サイクル条件は、以下の通りであった:95℃10分;45サイクル(95℃15秒、60℃40秒、単回)。
【0104】
実験結果を
図6に示す。ここでは、実験結果を、465nM〜510nMでの蛍光変化によって具体化する一方で、系の選択性を、異なる変異体鋳型の増幅について、Ct値の差によって具体化し、デルタCt値を
図6に示す。これらの実験結果は、選択的増幅および選択的検出が、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを、MGBプローブと併用して達成されたことを示す。
【実施例5】
【0105】
本発明において言及される、核酸二本鎖安定化因子を含むオリゴヌクレオチドフラグメントと、本発明において言及される、核酸二本鎖安定化因子を含まないオリゴヌクレオチドフラグメントとの比較
本実施例において、標的核酸配列の2つの変異体を、同じ量にした。ここで、一方の変異体は、EGFR G719S突然変異型配列(配列番号1)を挿入したプラスミドDNAであり、他方の変異体は、EGFR野生型配列(配列番号2)を挿入した同じプラスミドであった。
【0106】
(EGFR G719S突然変異型配列フラグメント):配列番号1
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGaGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0107】
(EGFR G719S野生型配列フラグメント):配列番号2
TTTCCAGCATGGTGAGGGCTGAGGTGACCCTTGTCTCTGTGTTCTTGTCCCCCCCAGCTTGTGGAGCCTCTTACACCCAGTGGAGAAGCTCCCAACCAAGCTCTCTTGAGGATCTTGAAGGAAACTGAATTCAAAAAGATCAAAGTGCTGGGCTCCGGTGCGTTCGGCACGGTGTATAAGGTAAGGTCCCTGGCACAGGCCTCTGGGCTGGGCCGCAGGGCCTCTCATGGTCTGGTGGGGAGCCCAGAGTCCTTGCAAGCTGTATATTTCCATCATCTACTTTACTCTTTGTTTCACTGAGT
【0108】
フォワードプライマーの配列は、配列3であった。一部の実験群において、リバースプライマーとしてのオリゴヌクレオチドを、5'末端にて二本鎖安定化因子で修飾した。この配列は配列11であった;一方、一部の実験群において、リバースプライマーとしてのオリゴヌクレオチドを、二本鎖安定化因子で修飾しなかった。この配列は配列16であった(Table 1(表1)参照)。
【0109】
PCR反応系は25μlの容量を有し、各反応系は、2%グリセリン、およびdATP、dCTP、dGTP、dTTP(それぞれ200μMの濃度)を含んだ。フォワードプライマー(配列3)、およびリバースプライマー(配列11および配列16)として本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントは双方とも、濃度が200nMであり、SYBR Greenは濃度が0.4*であり、5ユニットのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを有した。
【0110】
Roche LightCycle 480蛍光定量PCR機器を、PCR反応および以降のデータ分析に用いた。PCRの熱サイクル条件は、以下の通りであった:95℃10分;45サイクル(95℃15秒、60℃40秒、単回);融解(95℃1分、40℃2分、99℃継続);冷却(37℃30秒)。
【0111】
実験結果を
図7および
図8に示す。ここでは、実験結果を、465nM〜510nMでの蛍光変化によって具体化する一方で、系の選択性を、異なる変異体鋳型の増幅について、Ct値の差によって具体化し、デルタCt値を
図7および
図8に示す。これらの実験結果は、核酸二本鎖安定化因子を含む本発明のオリゴヌクレオチドフラグメントが、核酸二本鎖安定化因子を含まない本発明のオリゴヌクレオチドフラグメントよりも選択的であることを示す。
【実施例6】
【0112】
本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた、欠失突然変異の選択的増幅
本実施例において、標的核酸配列の2つの変異体を、同じ量にした。ここで、一方の変異体は、エキソン19欠失を有するEGFR突然変異型配列(配列番号12)を挿入したプラスミドDNAであり、他方の変異体は、エキソン19を有するEGFR野生型配列(配列番号13)を挿入した同じプラスミドであった。
【0113】
EGFR 19エキソン欠失突然変異型配列(配列番号12)
TTCGGGGTGCATCGCTGGTAACATCCACCCAGATCACTGGGCAGCATGTGGCACCATCTCACAATTGCCAGTTAACGTCTTCCTTCTCTCTCTGTCATAGGGACTCTGGATCCCAGAAGGTGAGAAAGTTAAAATTCCCGTCGCTATCAAGACATCTCCGAAAGCCAACAAGGAAATCCTCGATGTGAGTTTCTGCTTTGCTGTGTGGGGGTCCATGGCTCTGAACCTCAGGCCCACCTTTTCTCATGTCTGGCAGCTGCTCTGCTCTAGACCCTGCTCATCTCCACATCCTAAATGTTCACTTTC
【0114】
EGFR 19エキソン野生型配列(配列番号13)
TTCGGGGTGCATCGCTGGTAACATCCACCCAGATCACTGGGCAGCATGTGGCACCATCTCACAATTGCCAGTTAACGTCTTCCTTCTCTCTCTGTCATAGGGACTCTGGATCCCAGAAGGTGAGAAAGTTAAAATTCCCGTCGCTATCAAGGAATTAAGAGAAGCAACATCTCCGAAAGCCAACAAGGAAATCCTCGATGTGAGTTTCTGCTTTGCTGTGTGGGGGTCCATGGCTCTGAACCTCAGGCCCACCTTTTCTCATGTCTGGCAGCTGCTCTGCTCTAGACCCTGCTCATCTCCACATCCTAAATGTTCACTTTC
【0115】
フォワードプライマーの配列は、配列14であり、リバースプライマーとして、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いた。この配列は配列15であった。
【0116】
PCR反応系は25μlの容量を有し、各反応系は、2%グリセリン、およびdATP、dCTP、dGTP、dTTP(それぞれ200μMの濃度)を含んだ。フォワードプライマー(配列14)、およびリバースプライマー(配列15)として本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントは双方とも、濃度が200nMであり、SYBR Greenは濃度が0.4*であり、5ユニットのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを有した。
【0117】
Roche LightCycle 480蛍光定量PCR機器を、PCR反応および以降のデータ分析に用いた。PCRの熱サイクル条件は、以下の通りであった:95℃10分;45サイクル(95℃15秒、60℃40秒、単回);融解(95℃1分、40℃2分、99℃継続);冷却(37℃30秒)。
【0118】
実験結果を
図9に示す。ここでは、実験結果を、465nM〜510nMでの蛍光変化によって具体化する一方で、系の選択性を、異なる変異体鋳型の増幅について、Ct値の差によって具体化し、デルタCt値を
図9に示す。これらの実験結果は、欠失突然変異の選択的増幅が、本発明において提供されるオリゴヌクレオチドフラグメントを用いて達成されたことを示す。
【0119】
上記の修飾フラグメント、スペーサC3、MGB、Q-MGB、およびFAMの構造は、以下の通りである:
【0120】
【化1】
【0121】
開示される実施例の先の説明により、当業者は、本発明を達成または応用することができる。これらの実施例に対する種々の改変が、当業者に明らかであろうし、本明細書中で定義される一般的な原理は、他の実施例において、本発明の精神および範囲から逸脱することなく達成され得る。したがって、本発明は、本明細書中に示される実施例によって制限されることはない;その代わりに、本明細書中に開示される原理および新規性に矛盾しない最も広い範囲を有することとなる。