特許第6417175号(P6417175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6417175
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】評価装置および評価方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   G05B23/02 V
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-205435(P2014-205435)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-76054(P2016-76054A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 英輔
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−167920(JP,A)
【文献】 特開2007−186289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの指示に従って設定値SPを変更する設定値変更手段と、
前記設定値SPと計測器によって計測される制御量PVとに基づき、フィードバック制御の動作として操作量MVを算出する操作量算出手段と、
前記操作量MVを制御対象に出力する操作量出力手段と、
前記設定値SPの変更に伴って前記制御量PVが前記設定値SPの初期設定値SPIから最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記操作量MVの標準的な時間変化を示す基準変化パターンMVXを予め記憶する基準操作量記憶手段と、
この基準操作量記憶手段に記憶されている基準変化パターンMVXを参照し、前記制御応答中の前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差異を評価指標として算出する評価指標算出手段とを備え
前記評価指標算出手段は、前記設定値SPが変更されたときに前記制御量PVが前記初期設定値SPIから前記最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記評価指標を、この制御応答の前半の評価指標と後半の評価指標とに分けて算出することを特徴とする評価装置。
【請求項2】
請求項1記載の評価装置において、
さらに、前記評価指標算出手段によって算出された評価指標を提示する評価指標提示手段を備えることを特徴とする評価装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の評価装置において、
前記評価指標算出手段は、前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差が正値の評価指標と、前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差が負値の評価指標とに分けて前記評価指標を算出することを特徴とする評価装置。
【請求項4】
外部からの指示に従って設定値SPを変更する設定値変更ステップと、
前記設定値SPと計測器によって計測される制御量PVとに基づき、フィードバック制御の動作として操作量MVを算出する操作量算出ステップと、
前記操作量MVを制御対象に出力する操作量出力ステップと、
前記設定値SPの変更に伴って前記制御量PVが前記設定値SPの初期設定値SPIから最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記操作量MVの標準的な時間変化を示す基準変化パターンMVXを予め記憶する基準操作量記憶手段を参照し、前記制御応答中の前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差異を評価指標として算出する評価指標算出ステップとを含み、
前記評価指標算出ステップは、前記設定値SPが変更されたときに前記制御量PVが前記初期設定値SPIから前記最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記評価指標を、この制御応答の前半の評価指標と後半の評価指標とに分けて算出するステップを含むことを特徴とする評価方法。
【請求項5】
請求項記載の評価方法において、
さらに、前記評価指標算出ステップで算出した評価指標を提示する評価指標提示ステップを含むことを特徴とする評価方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の評価方法において、
前記評価指標算出ステップは、前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差が正値の評価指標と、前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差が負値の評価指標とに分けて前記評価指標を算出するステップを含むことを特徴とする評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過渡状態における制御応答の特徴が現れ易くなるように操作量MVを処理した評価指標を算出する評価装置および評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置では、EES(Equipment Engineering System)が実用段階へと移行してきている。EESは、半導体製造装置が正常に機能しているかどうかをデータでチェックし、装置の信頼性や生産性を向上させるシステムである。EESの主な目的は、装置自体を対象とする不具合検知(FD:Fault Detection)、不具合予知(FP:Fault Prediction)である(非特許文献1参照)。
【0003】
FD/FPには、装置コントロールレベル、モジュールレベル、サブシステムレベル、I/Oデバイスレベルという階層化の捉え方がある。装置コントロールレベルのFD/FPは、ホストまたはオペレータから指示された処理条件の基で装置機能が装置スペックの許容範囲内で動作しているかを監視/検知するFD/FPである。モジュールレベルのFD/FPは、デバイスもしくはサブシステムから構成されるモジュールが、指示値どおりに処理を行うことができるかを監視/検知するFD/FPである。サブシステムレベルのFD/FPは、フィードバック制御を行うような複数のデバイスからなる複合システムが、いくつかのパラメータ設定の基で安定して動作しているかを監視/検知するFD/FPである。I/OデバイスレベルのFD/FPは、装置を構成するセンサやアクチュエータが設計値どおりに安定して動作しているかを監視/検知するFD/FPである。このように、I/Oデバイスレベルの主体は、センサやアクチュエータである。
【0004】
アクチュエータのFD/FPに関しては、(0,1)のビット列のデータ(アクチュエータデータ)で済むシーケンス制御的な動作については、特に実用段階にあると言える。
一方で、センサのFD/FPに関しては、温度、圧力、流量などのプロセス量が対象データになる。これらのデータについては、msec.レベルで全てのデータを保存するのが合理的とは言えない。そこで、センサのデータを装置が管理する処理単位毎に、あるいは一定の期間毎に代表値化して、代表値化した値をチェックするEES対応の基板処理装置(特許文献1参照)などが提案されている。代表値とは、最大値、最小値、平均値などである。これらの代表値によりFD/FPが実現できれば、全てのデータを監視する場合と比較して通信量、必要メモリ量などを大幅に削減できるので効率的である。
【0005】
代表値を利用したFD/FPとしては、劣化によるヒータ断線のFPや、過電流によるヒータ断線のFDなどが知られている。ヒータが劣化する場合、ヒータの抵抗値(非プロセス量)の平均値が徐々に上昇していくので、ヒータの抵抗値の平均値を代表値としてチェックすれば、劣化によるヒータの断線を予知することができる。また、過電流によってヒータが断線した場合、ヒータの抵抗値の最大値が突発的に上昇するので、ヒータの抵抗値の最大値を代表値としてチェックすれば、過電流によるヒータの断線を検知することができる。
【0006】
ここで、サブシステムに相当する制御ループ(PID制御などを実行するコントローラレベル)については、特許文献2のような加熱装置の温度制御応答の特徴(代表値に相当するもので、設定値SPに対する制御量PVのオーバーシュート量など)を算出し保持する制御機器が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に開示された技術は、制御の不具合状態を把握するために、制御結果をEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)に保存するための技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−219460号公報
【特許文献2】特開2009−217439号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「装置レベルでの装置機能の性能確認に関する解説書」,社団法人電子情報技術産業協会,2005年3月23日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように非プロセス量であれば、FD/FPの実用化は可能である。しかしながら、プロセス量に関しては、単純な代表値のみで非プロセス量の場合のようなFD/FPを実現できるものが少なく、FD/FP機能を十分に実現できていないという問題点があった。EESの装置内分散配置は、EESの全体効率を高めるために有効な実装方法であるので、コントローラレベルで最も重要な制御状態自体を直接的に扱うFD/FP機能をさらに強化することが求められている。
【0010】
特許文献2に開示された技術では、過渡状態における制御応答の特徴量として制御量PV(加熱温度制御ならば昇温時の温度)を記録対象とする。しかし、制御のFD/FPとしては操作量MVも重要である。この場合、制御量PVのように特定の目標値(設定値SP)を基準にすると評価指標を与えやすくなるが、操作量MVはその点が単純ではない。操作量MVを評価指標として取り込むための改善が必要である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、過渡状態における制御応答(例えば昇温時)の特徴が現れ易くなるように操作量MVを処理した評価指標を算出することにより、操作量MVの挙動の再現性を定量的に提示することができる評価装置および評価方法を提供することを目的とする。換言するならば、本発明は、特に簡易型のコントローラレベルで内蔵も外付けも可能な簡易型のFD/FP関連機能を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の評価装置は、外部からの指示に従って設定値SPを変更する設定値変更手段と、前記設定値SPと計測器によって計測される制御量PVとに基づき、フィードバック制御の動作として操作量MVを算出する操作量算出手段と、前記操作量MVを制御対象に出力する操作量出力手段と、前記設定値SPの変更に伴って前記制御量PVが前記設定値SPの初期設定値SPIから最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記操作量MVの標準的な時間変化を示す基準変化パターンMVXを予め記憶する基準操作量記憶手段と、この基準操作量記憶手段に記憶されている基準変化パターンMVXを参照し、前記制御応答中の前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差異を評価指標として算出する評価指標算出手段とを備え、前記評価指標算出手段は、前記設定値SPが変更されたときに前記制御量PVが前記初期設定値SPIから前記最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記評価指標を、この制御応答の前半の評価指標と後半の評価指標とに分けて算出することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の評価装置の1構成例は、さらに、前記評価指標算出手段によって算出された評価指標を提示する評価指標提示手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の評価装置の1構成例において、前記評価指標算出手段は、前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差が正値の評価指標と、前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差が負値の評価指標とに分けて前記評価指標を算出することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の評価方法は、外部からの指示に従って設定値SPを変更する設定値変更ステップと、前記設定値SPと計測器によって計測される制御量PVとに基づき、フィードバック制御の動作として操作量MVを算出する操作量算出ステップと、前記操作量MVを制御対象に出力する操作量出力ステップと、前記設定値SPの変更に伴って前記制御量PVが前記設定値SPの初期設定値SPIから最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記操作量MVの標準的な時間変化を示す基準変化パターンMVXを予め記憶する基準操作量記憶手段を参照し、前記制御応答中の前記操作量MVと前記基準変化パターンMVXとの差異を評価指標として算出する評価指標算出ステップとを含み、前記評価指標算出ステップは、前記設定値SPが変更されたときに前記制御量PVが前記初期設定値SPIから前記最終目標設定値SPLへと追従する制御応答における前記評価指標を、この制御応答の前半の評価指標と後半の評価指標とに分けて算出するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設定値SPの変更に伴う制御応答中の操作量MVと基準変化パターンMVXとの差異を評価指標として算出することにより、過渡状態における制御応答の特徴が現れ易くなるように操作量MVを処理して取り込むことができ、基準変化パターンMVXに対する操作量MVの挙動の再現性を定量的に提示することができる。本発明では、制御量PVに設定値SPとの差異が現れ難い場合でも、制御対象の装置に劣化が発生していたり、操作量算出手段の制御パラメータ(PIDパラメータ)が不適切に設定されていたりすれば、操作量MVと基準変化パターンMVXとの差異が現れ易くなるので、オペレータは差異の特徴を認識することができ、差異が生じた原因を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の原理2を説明する図である。
図2】本発明の原理2を説明する図である。
図3】本発明の原理2を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態に係る評価装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態に係る評価装置の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態に係る評価指標の表示例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係る評価指標の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の原理1]
フィードバック制御の特に設定値SPランプ入力の場合(設定値SPを一定の変化率ΔSPで徐々に変化させる場合)、制御量PVは設定値SPに追従する制御動作になる。すなわち、制御量PVは高い再現性をもって補償される。したがって、制御可能な程度の装置劣化(例えば少しずつの経年変化など)が発生していたとしても、制御量PVには差異が現れ難い。このように制御量PVに差異が現れ難いという点は、特許文献2のように設定値SPステップ入力を扱う場合と大きく異なる部分である。
【0018】
一方で、制御量PVを設定値SPに追従させるための操作量MVは、制御量PVに差異が現れないように補償するためのものであるから、装置劣化が発生している場合、操作量MVには相当の差異が現れざるを得ない。そこで、発明者は、基準SP変更パターンに伴う制御応答という過渡状態に対して、操作量MVの評価に焦点を合わせることに着眼した。
【0019】
ただし、操作量MVの数値自体の累積は絶対値が大きくなるので、経年変化的な微小な差異は定量化しにくい。そこで、PID演算によるフィードバック制御で制御量PVがほぼ再現されている状態を想定すると、まず操作量MVの基準変化パターンMVXを規定することに想到した。そして、基準変化パターンMVXと、実際に得られた制御応答時操作量MVとの差異に基づいて評価指標を定量化すれば、操作量MVの挙動の再現性を定量的に(数値化して)提示できる。
【0020】
[発明の原理2]
制御応答全般について考えた場合、(A)前半の正側(MV−MVX>0)の総和、(B)前半の負側(MV−MVX<0)の総和、(C)後半の正側(MV−MVX>0)の総和、(D)後半の負側(MV−MVX<0)の総和の4つに評価指標を分けることで、制御応答全般で正側と負側の差異が相殺されることも起こり難くできるので好適である。
【0021】
図1(A)、図1(B)、図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)は発明の原理2を説明する図であり、図1(A)、図2(A)、図3(A)は制御量PVの変化を示す図、図1(B)、図2(B)、図3(B)はそれぞれ図1(A)、図2(A)、図3(A)に対応する操作量MVの変化を示す図である。図1(A)、図1(B)は制御応答の前半に(MV−MVX)の正値の総和が大きくなるパターンを示し、図2(A)、図2(B)は制御応答の前半に(MV−MVX)の負値の総和が大きくなるパターンを示し、図3(A)、図3(B)は制御応答全般にわたって(MV−MVX)の総和が大きくなるパターンを示している。
【0022】
例えば、何らかの一時的な外乱により、図1(B)のように制御応答の前半に基準変化パターンMVXよりも多めに操作量MVが出力され、これに伴い制御応答が標準的なケースよりも即応的に進行したとする。この場合、PID演算によるフィードバック制御ゆえに、制御応答の後半で基準変化パターンMVXよりも少なめに操作量MVが出力される補償動作になる。すなわち、制御応答の前半に(MV−MVX)の正値の総和が大きくなり、制御応答の後半に(MV−MVX)の負値の総和が大きくなるというように定量化される。
【0023】
また、何らかの一時的な外乱により、図2(B)のように制御応答の前半に基準変化パターンMVXよりも少なめに操作量MVが出力され、これに伴い制御応答が標準的なケースよりも遅れて進行したとする。この場合、PID演算によるフィードバック制御ゆえに、制御応答の後半で基準変化パターンMVXよりも多めに操作量MVが出力される補償動作になる。すなわち、制御応答の前半に(MV−MVX)の負値の総和が大きくなり、制御応答の後半に(MV−MVX)の正値の総和が大きくなるというように定量化される。
【0024】
制御応答が振動的にならないように、PIDパラメータが適切に調整されていれば、上記のように制御応答前半の正側と負側のいずれかと、制御応答後半の正側と負側のいずれかに操作量MVと基準変化パターンMVXとの差異が現れるので、オペレータは差異の特徴を認識できる。
【0025】
一方、制御応答が振動的になってしまうような、PIDパラメータの不適切な設定がなされている場合、図3(B)のように制御応答前半の正側、負側や制御応答後半の正側、負側にそれぞれ操作量MVと基準変化パターンMVXとの差異が現れ易くなるので、オペレータは差異の特徴を認識できる。
【0026】
以上のように、(A)制御応答前半の(MV−MVX)の正値の総和、(B)制御応答前半の(MV−MVX)の負値の総和、(C)制御応答後半の(MV−MVX)の正値の総和、(D)制御応答後半の(MV−MVX)の負値の総和に分けて評価指標にすることは、PID演算によるフィードバック制御系において、極めて合理的である。
【0027】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図4は本発明の実施の形態に係る評価装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、上記発明の原理1、発明の原理2に対応する例である。ここでは、評価装置を簡易型のコントローラ(温調計)で実現する例として説明する。本実施の形態の評価装置は、従来から温調計に設けられている一般的構成である温調計制御機能部1と、本実施の形態の特徴的構成である評価機能部2とから構成される。
【0028】
温調計制御機能部1は、温調計外部からの指示に従って設定値SPを変更する設定値変更部10と、制御量PVを計測器から入力する制御量入力部11と、設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを算出する操作量算出部12と、操作量MVを温調計外部に出力する操作量出力部13とを備えている。
【0029】
評価機能部2は、設定値SPの変更に伴う制御応答中の操作量MVの標準的な時間変化を示す基準変化パターンMVXを予め記憶する基準操作量記憶部20と、設定値SPの変更に伴う制御応答前半の(MV−MVX)の正値の総和を評価指標Aとして算出する評価指標算出部21と、制御応答前半の(MV−MVX)の負値の総和を評価指標Bとして算出する評価指標算出部22と、設定値SPの変更に伴う制御応答後半の(MV−MVX)の正値の総和を評価指標Cとして算出する評価指標算出部23と、制御応答後半の(MV−MVX)の負値の総和を評価指標Dとして算出する評価指標算出部24と、算出された評価指標A、評価指標B、評価指標C、評価指標Dを提示(表示)する評価指標提示部25とを備えている。
【0030】
図4の全ての構成は上記発明の原理1に対応し、評価指標算出部21〜24と評価指標提示部25とは上記発明の原理2に対応している。
図5は本実施の形態の適用対象となる加熱装置の構成を示すブロック図である。加熱装置は、処理対象の被加熱物を加熱する加熱処理炉100と、電気ヒータ101と、加熱処理炉100内の温度を計測する温度センサ102と、加熱処理炉100内の温度を制御する温調計103と、電力調整器104と、電力供給回路105と、加熱装置全体を制御するPLC(Programmable Logic Controller)106とから構成される。
【0031】
温調計103は、温度センサ102が計測した制御量PV(温度)が設定値SPと一致するように操作量MVを算出する。設定値SPは例えばオペレータによって設定される。電力調整器104は、操作量MVに応じた電力を決定し、この決定した電力を電力供給回路105を通じて電気ヒータ101に供給する。こうして、温調計103は、加熱処理炉100内の被加熱物の温度を制御する。図4の温調計制御機能部1と評価機能部2とは温調計103に実装される。
【0032】
以下、本実施の形態の評価装置の動作を図6を参照して説明する。図6は評価装置の動作を示すフローチャートである。ここでは、設定値SPを温度設定値、制御量PVを温度計測値とし、例えば図5に示した加熱装置の温度制御中の操作量MVのデータを収集して評価する場合について説明する。
【0033】
初めに、オペレータは、設定値SPの変更内容を指定する変更情報を設定値変更部10に予め設定すると共に(図6ステップS1)、変更情報に基づく設定値SPの変更に伴う制御応答中の操作量MVの標準的な時間変化を示す基準変化パターンMVXを基準操作量記憶部20に予め設定する(図6ステップS2)。
【0034】
変更情報としては、例えば最終目標設定値SPL[%]と、変化率ΔSP[%/sec.]とがある。
基準変化パターンMVXは、制御対象の装置(本実施の形態の例では加熱装置)に劣化がないときの制御応答中の標準的な操作量MVを、設定値SPの変更開始時点以後の各時間毎に定めたものである。基準変化パターンMVXは、例えば変更情報の内容で設定値SPを変更する試験を予め実施して確認しておけばよい。
【0035】
設定値変更部10は、設定値SPを変更しないときは(図6ステップS3においてNO)、設定値SPとして初期設定値SPIを操作量算出部12と評価指標算出部21〜24とに入力する(図6ステップS4)。
制御量PVは、計測器(図5の例では温度センサ102)によって計測され、制御量入力部11を介して操作量算出部12と評価指標算出部21〜24とに入力される(図6ステップS5)。
【0036】
操作量算出部12は、周知のPID制御演算により設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを算出する(図6ステップS6)。
操作量出力部13は、操作量算出部12によって算出された操作量MVを制御対象に出力する(図6ステップS7)。図5の例では、電力調整器104が操作量MVの実際の出力先となる。
【0037】
以上のようなステップS4〜S7の処理が、設定値SPが変更されるか、あるいはオペレータからの指令によって制御が終了するまで(図6ステップS8においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0038】
次に、設定値変更部10は、予め定められた設定値変更開始時刻になるか、あるいはオペレータから設定値SPの変更指示を受けると、変更情報で指定された仕様で設定値SPを変更する(図6ステップS9)。具体的には、図1(A)、図2(A)、図3(A)に示したように設定値SPを初期設定値SPIからランプ状に変化させる。このときの設定値SPの変化を規定するのが、変更情報に含まれる変化率ΔSPである。また、設定値変更部10は、設定値SPの変更を開始したことを評価指標算出部21〜24に対して通知する。
【0039】
図6のステップS10,S11,S12の処理は、それぞれステップS5,S6,S7と同じである。こうして、設定値SPの変更に伴う制御応答が開始される。
次に、評価指標算出部21は、設定値SPの変更が開始されると、基準操作量記憶部20に記憶されている基準変化パターンMVXを参照し、(MVi−MVXi)の正値の積算値Aを次式のように算出する(図6ステップS13)。
A=Σ(MVi−MVXi) ・・・(1)
【0040】
MViは積算値Aおよび後述する積算値Bを算出しようとする現在の制御時点iにおいて操作量算出部12が算出した操作量MV、MVXiは基準変化パターンMVXで定められた、制御時点iの操作量MVである。評価指標算出部21は、制御応答前半において(MVi−MVXi)>0の場合に限り、式(1)の計算を行う。
【0041】
なお、基準変化パターンMVXでは、設定値SPの変更開始時点を時刻0として、以後の操作量MVの変化を時刻毎に定めている。したがって、設定値変更部10が実際に設定値SPの変更を開始した時刻をSTとすれば、時刻(i−ST)の操作量MVを基準変化パターンMVXから取得して、これを基準変化パターンMVXで定められた、制御時点iの操作量MVとすればよい。
【0042】
評価指標算出部22は、設定値SPの変更が開始されると、基準操作量記憶部20に記憶されている基準変化パターンMVXを参照し、(MVi−MVXi)の負値の積算値Bを次式のように算出する(図6ステップS14)。
B=Σ(MVi−MVXi) ・・・(2)
評価指標算出部22は、制御応答前半において(MVi−MVXi)<0の場合に限り、式(2)の計算を行う。
【0043】
評価指標算出部23は、制御応答の後半になると、基準操作量記憶部20に記憶されている基準変化パターンMVXを参照し、(MVj−MVXj)の正値の積算値Cを次式のように算出する(図6ステップS15)。
C=Σ(MVj−MVXj) ・・・(3)
【0044】
MVjは積算値Cおよび後述する積算値Dを算出しようとする現在の制御時点jにおいて操作量算出部12が算出した操作量MV、MVXjは基準変化パターンMVXで定められた、制御時点jの操作量MVである。評価指標算出部23は、制御応答後半において(MVj−MVXj)>0の場合に限り、式(3)の計算を行う。上記と同様に、設定値変更部10が実際に設定値SPの変更を開始した時刻をSTとすれば、時刻(j−ST)の操作量MVを基準変化パターンMVXから取得して、これを基準変化パターンMVXで定められた、制御時点jの操作量MVとすればよい。
【0045】
評価指標算出部24は、制御応答の後半になると、基準操作量記憶部20に記憶されている基準変化パターンMVXを参照し、(MVj−MVXj)の負値の積算値Dを次式のように算出する(図6ステップS16)。
D=Σ(MVj−MVXj) ・・・(4)
評価指標算出部24は、制御応答後半において(MVj−MVXj)<0の場合に限り、式(4)の計算を行う。
【0046】
こうして、ステップS9〜S16の処理が、設定値SPの変更に伴う制御応答が終了するまで(図6ステップS17においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
ここで、制御応答全般とは、設定値SPの変更に伴って制御量PVが初期設定値SPIから最終目標設定値SPLに追従する制御応答期間全体を指すものとする。設定値変更部10は、設定値SPを初期設定値SPIから一定の変化率ΔSPでランプ状に変化させるので、設定値SPが最終目標設定値SPLにいつ達するかを予め計算することができ、設定値SPが最終目標設定値SPLに達する時刻に所定時間Tを足した時刻を、設定値SPの変更に伴う制御応答の終了時刻として予め計算することができる。終了時刻を決める所定時間Tをどのような値に設定すべきかは、設定値SPを変更する試験を予め実施して確認しておけばよい。
【0047】
そして、制御応答前半とは、設定値SPの変更に伴って制御量PVが初期設定値SPIから最終目標設定値SPLの中間まで追従する制御応答期間である。したがって、設定値変更部10は、上記のように制御応答の終了時刻を計算できれば、制御応答の開始時刻(設定値SPの変更開始時刻)から制御応答の終了時刻までの中間の時刻も予め計算できることになる。設定値変更部10は、制御応答の中間の時刻に達したときに中間の時刻に達したことを評価指標算出部21〜24に対して通知する。
【0048】
また、制御応答後半とは、制御量PVが前半終了時点(中間時点)から最終目標設定値SPLまで追従する制御応答期間を指すものとする。設定値変更部10は、制御応答の終了時刻に達したときに終了時刻に達したことを評価指標算出部21〜24に対して通知する。
【0049】
評価指標算出部21は、制御応答の開始時刻(設定値SPの変更開始時刻)から制御応答の中間時刻までの制御応答前半において(MVi−MVXi)>0の場合に限り、式(1)の計算を行えばよい。式(1)の積算を繰り返すことにより、積算値Aは制御応答前半の(MVi−MVXi)の正値の総和である評価指標Aとなる。同様に、評価指標算出部22は、制御応答前半において(MVi−MVXi)<0の場合に限り、式(2)の計算を行えばよい。式(2)の積算を繰り返すことにより、積算値Bは制御応答前半の(MVi−MVXi)の負値の総和である評価指標Bとなる。
【0050】
評価指標算出部23は、制御応答の前半終了時刻(制御応答の中間の時刻)から制御応答の終了時刻までの制御応答後半において(MVj−MVXj)>0の場合に限り、式(3)の計算を行えばよい。式(3)の積算を繰り返すことにより、積算値Cは制御応答後半の(MVj−MVXj)の正値の総和である評価指標Cとなる。同様に、評価指標算出部24は、制御応答後半において(MVj−MVXj)<0の場合に限り、式(4)の計算を行えばよい。式(4)の積算を繰り返すことにより、積算値Dは制御応答後半の(MVj−MVXj)の負値の総和である評価指標Dとなる。
【0051】
評価指標提示部25は、設定値SPの変更に伴う制御応答の終了後、評価指標算出部21〜24によって算出された評価指標A、評価指標B、評価指標C、評価指標Dをオペレータに対して提示(表示)する(図6ステップS18)。
設定値SPの変更に伴う制御応答の終了後は、設定値SP=SPLに基づく制御がステップS4〜S7の処理によって継続されることになる。
【0052】
図7図8は評価指標A〜Dの表示例を示す図である。図7は制御応答の前半に(MV−MVX)の正値の総和が大きくなるパターンの表示例を示し、図8は制御応答の前半に(MV−MVX)の負値の総和が大きくなるパターンの表示例を示している。
【0053】
こうして、本実施の形態では、評価指標A〜Dを算出して提示することにより、基準変化パターンMVXに対する操作量MVの挙動の再現性を定量的に(数値化して)提示することができる。本実施の形態では、図1(A)、図1(B)、図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)で説明したように制御量PVに設定値SPとの差異が現れ難い場合でも、制御対象の装置に劣化が発生していたり、操作量算出部12のPIDパラメータが不適切に設定されていたりすれば、操作量MVと基準変化パターンMVXとの差異が現れ易くなるので、オペレータは差異の特徴を認識することができ、差異が生じた原因を推定することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、算出した評価指標A〜Dを提示しているが、これに限るものではなく、評価指標A〜DをEEPROM等の記憶手段に記録するようにしてもよい。
【0055】
本実施の形態で説明した評価装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、過渡状態における制御応答の特徴量として操作量MVを取り込む技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…温調計制御機能部、2…評価機能部、10…設定値変更部、11…制御量入力部、12…操作量算出部、13…操作量出力部、20…基準操作量記憶部、21,22,23,24…評価指標算出部、25…評価指標提示部。
図1
図2
図3
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図7
図8