特許第6417512号(P6417512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6417512非水系蓄電素子用結着剤及び非水系蓄電素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6417512
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】非水系蓄電素子用結着剤及び非水系蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20181029BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20181029BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20181029BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20181029BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20181029BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20181029BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20181029BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20181029BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M2/16 L
   H01M4/66 A
   H01G11/28
   H01G11/38
   H01G11/52
   H01G11/68
   C08F8/12
【請求項の数】9
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-529603(P2015-529603)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2014070129
(87)【国際公開番号】WO2015016283
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-160789(P2013-160789)
(32)【優先日】2013年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大山 直人
(72)【発明者】
【氏名】上村 太一
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−089851(JP,A)
【文献】 特開2001−210353(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128182(WO,A1)
【文献】 特開2011−049046(JP,A)
【文献】 特表2010−537387(JP,A)
【文献】 特開2010−218793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/84
H01M 2/14− 2/18
H01G 11/22−11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化3】

(式中、
は、独立して、
(i)−(CH−S−(CH−CH
(ここで、
mは0〜3の任意の整数であり、
nは0〜10の任意の整数である)
で示される基
(ii)−(CH−O−(CH−CH
(ここで、
mは〜3の任意の整数であり
は0〜10の任意の整数である)
で示される基;あるいは、
(iii)−(CH−O−(CH−(CH−(CHCH)−(CH−CH
(ここで、
mは〜3の任意の整数であり
は0〜10の任意の整数であり、
hは0〜10の任意の整数であり、
kは0〜10の任意の整数である)
で示される基であり、
x、y及びzの合計を1とした場合、
0≦x<1、0≦y<1、0<z<1であり、
x、y及びzで括られる単位は、ブロックで存在していても、ランダムで存在していてもよく、
は、独立して、水素原子又はフッ素原子である)
で示される重合体を含む非水系蓄電素子用結着剤。
【請求項2】
ナトリウム、リチウム、カリウム及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種を1〜10000ppm含む、請求項記載の非水系蓄電素子用結着剤。
【請求項3】
カップリング剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の非水系蓄電素子用結着剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成されるコート層を有する非水系蓄電素子用電極。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成される活物質層を有する非水系蓄電素子用電極。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成されるコート層を有する非水系蓄電素子用セパレーター。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成されるコート層を有する非水系蓄電素子用集電体。
【請求項8】
請求項又は記載の非水系蓄電素子用電極、請求項記載の非水系蓄電素子用セパレーター及び請求項記載の非水系蓄素子用集電体の少なくともいずれかを備えた非水系蓄電素子。
【請求項9】
非水系二次電池である、請求項の非水系蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系蓄電素子用結着剤に関し、この結着剤を用いて得られる非水系蓄電素子用電極、セパレーター又は集電体、この非水系蓄電素子用電極、セパレーター及び集電体の少なくともいずれかを備えた非水系蓄電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水系の蓄電素子は水系と比較して高い電圧を取り出すことが可能であるため、高いエネルギー密度でエネルギーを蓄積することができ、モバイル機器や自動車用の電源として利用価値が高い。例えば、リチウムイオン一次電池及び二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の携帯型電子機器の電源として広範に普及しており、電気二重層キャパシタは電動工具の電源や重機のエネルギー回生デバイスとして利用されている。さらに、カルシウムイオン一次電池及び二次電池や、マグネシウムイオン一次電位及び二次電池、ナトリウムイオン一次電池及び二次電池等も高電圧と高エネルギー密度を兼ね備えた蓄電素子として有望である。しかし、これらの非水系蓄電素子は可燃性の物質を電解液として使用するため、正極と負極が短絡することで生じる発熱により発火、爆発に至る危険性を有し、安全性の確保が重要な課題となっている。
【0003】
現状の安全性確保として、蓄電素子が発熱した際にポリオレフィンでできているセパレーターの細孔が閉塞し、イオン伝導を遮断するシャットダウン機能が挙げられる。正負極の短絡等の異常が電池に生じた場合、このシャットダウン機能が働くことで、発熱は抑制され、熱暴走を防ぐことができる。
【0004】
しかしながら、ポリオレフィン製のセパレーターの融点は200℃以下であり、発熱が激しい場合はセパレーターがシュリンクしてしまい、正負極の直接接触を引き起こし、熱暴走に至るという危険性がある。また、ポリオレフィン製のセパレーターは、活物質や金属異物より柔らかく、かつ厚みが10〜30μm程度で非常に薄いため、蓄電素子の製造プロセスにおいて活物質の脱落や金属異物の混入が生じると、セパレーターを突き破って正負極の電気的接触を引き起こすという危険性がある。このように、非水系蓄電素子の安全性は十分ではなく、更なる安全性の向上が要求されている。
【0005】
上記の問題に対する改善策として、集電体に塗布される活物質塗布層に、耐熱性の高い多孔質膜層を形成し、活物質が電極から脱落するのを防ぐ方法が考案されている(特許文献1)。この多孔質膜は無機フィラーを骨格とするため、融点が低いセパレーターが短絡時の温度上昇により溶けてシュリンクした場合も、正負極の接触を防ぎ、熱暴走を抑制することができるため、耐熱コート層としての効果がある。また、活物質や金属異物が混入したとしても剛直な無機フィラーの膜の突き刺し強度は高く、セパレーターを突き破って穴が開くことを防ぐ効果がある。
【0006】
また、このような耐熱コート層はデンドライトの発生を抑えたり、電解液を保持する層としても機能したりする。また、電極表面の不均一さに伴う電極反応の集中に由来する局所的な劣化の加速を耐熱コート層が緩衝均一化することで、長期間使用した場合の活物質層の劣化を防ぐ効果もある。
【0007】
耐熱コート層に、ポリフッ化ビニリデンの他、耐電解液性を有するゴム樹脂が提案されている(特許文献2)。
【0008】
また、耐熱コート層を形成するために親水性基と疎水性基を有する結着剤が提案されており、この結着剤と無機粒子と溶媒を混合し耐熱層を形成する為の組成物の作製に用いられている(特許文献3)。
【0009】
このような結着剤の他にも、活物質の結着剤や集電体の下地処理剤の結着剤も提案されており、前述の耐熱コート層組成物の他に、活物質と結着剤とを含む組成物、下地処理剤組成物等の各組成物が提案されている(特許文献4、5)。
【0010】
また、電池内部に水が入ると充放電特性や電池寿命が悪くなる問題があるため、作製される部材は含水率が低いものが求められている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−220759号公報
【特許文献2】特開2009−54455号公報
【特許文献3】特表2010−520095号公報
【特許文献4】特開平8−157677号公報
【特許文献5】特開2010−146726号公報
【特許文献6】特開2010−232048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記で挙げた従来技術では、耐電解液性を上げるために、結着剤に親水性基を導入すると、結着剤を含む組成物を用いて、電極、セパレーター、集電体といった基材上に層を形成した場合に、層の含水率が高くなる傾向がある。疎水性基を導入すれば、層の含水率を下げることはできるが、耐電解液性が悪くなる傾向がある。さらに、極端に親水性基と疎水性基の極性の差が大きく、また、バランスが悪いと、層が基材から剥離しやすく、含水率も高くなりやすい。
これらの原因としては、以下が考えられる。まず、組成物を基材に適用する際に、基材表面に対するぬれ性が十分確保できないと、基材表面で組成物がはじかれ、形成される層の密着性が不十分となりやすい。
また、結着剤が親水性基と疎水性基の両方を有すると、水分子の周りを親水性基が取り囲み、その周りを疎水性基がさらに取り囲むことで、水が抜けにくくなり、その結果、含水率が高くなりやすい。この水が電極活物質や電解液成分と反応し、非水系蓄電素子の特性を低下させやすいことが挙げられる。
このように、従来の組成物を利用して層を形成した場合、基材と層の密着性が不十分で、層の含水率が高くなりやすく、非水系蓄電素子に用いると、充放電特性の低下を招くばかりでなく、層の脱落によって耐熱性が確保できなくなる問題や水分と反応して非水系蓄電素子の寿命が短くなるといった問題があった。
【0013】
本発明の目的は、電極、セパレーター、集電体といった基材に対して、良好な密着性を有し、含水率が低い層を形成するために用いられる結着剤を提供することであり、好適には耐熱性をも有する層を形成するために用いられる結着剤を提供することである。本発明の結着剤を用いて形成される層は、基材との密着性に優れ、含水率も低いため、非水系蓄電素子の寿命が短くなったり、高速充放電特性が低下するといった事態を回避することができる。
また、本発明の目的は、この結着剤を用いた非水系蓄電素子用電極、セパレーター又は集電体を提供することであり、この非水系蓄電素子用電極、セパレーター及び集電体の少なくともいずれかを備えた非水系蓄電素子を提供することである。
ここで、本発明の結着剤を用いて、電極、セパレーター、集電体といった基材の表面に形成される層を「コート層」ということとする。コート層の少なくとも一部が、基材に入り込んでいてもよい。本発明の結着剤はコート層のみならず、活物質層の形成にも使用することができる。「層」は、「活物質層」及び「コート層」を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、結着剤として、特定の官能基を有する化合物に由来する単位を含む重合体を用いることで、電極、セパレーター、集電体といった基材に対して、良好な密着性を有し、含水率が低い層の形成が可能であることを見出し、さらに層に耐熱性をもたせることも可能であることを見出して、本発明を完成させた。
【0015】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
本発明1は、
式(1):
【化1】

(式中、
は、独立して、非置換であるか、又はハロゲン原子及び/若しくは水酸基で置換されている、炭素原子数1〜40のアルキル基(ここで、該アルキル基中の−CH−は、酸素原子、硫黄原子及びシクロアルカンジイルから選択される基で置き換えられていてもよい);あるいは−OR(ここで、Rは、環員数が3〜10の炭素環又はヘテロ環の1価基である)で示される基であり、
x、y及びzの合計を1とした場合、
0≦x<1、0≦y<1、0<z<1であり、
x、y及びzで括られる単位は、ブロックで存在していても、ランダムで存在していてもよく、
は、独立して、水素原子又はフッ素原子である)
で示される重合体を含む非水系蓄電素子用結着剤に関する。
【0016】
式(1)において、好ましくは0≦x<0.5、0≦y<1、0<z<1であり、より好ましくは0≦x<0.1、0≦y<1、0<z<1である。zは、例えば、0.0001以上とすることができ、好ましくは0.0005以上である。
式(1)の重合体の数平均分子量は、100〜8000000とすることができ、好ましくは300〜7000000であり、より好ましくは500〜5000000である。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求めた値である。
【0017】
本発明2は、式(1)におけるRが、−(CH−O−(CH−CH
(ここで、
mは0〜3の任意の整数であり、
nは0〜10の任意の整数である)
で示される基である、本発明1の非水系蓄電素子用結着剤に関する。
【0018】
本発明3は、式(1)におけるRが、−(CH−O−(CH−(CH−(CHCH)−(CH−CH
(ここで、
mは0〜3の任意の整数であり、
nは0〜10の任意の整数であり、
hは0〜10の任意の整数であり、
kは0〜10の任意の整数である)
で示される基である、本発明1の非水系蓄電素子用結着剤に関する。
【0019】
本発明4は、式(1)におけるRが、−(CH−CH (nは0〜10の任意の整数である)
で示される基である、本発明1の非水系蓄電素子用結着剤に関する。
【0020】
本発明5は、式(1)におけるRが、−ORであって、Rは、下記式:
【化2】

(ここで、Xは、−CH−、−NH−、−O−又は−S−である)
で示される基である、本発明1の非水系蓄電素子用結着剤に関する。
【0021】
本発明6は、式(1)におけるRが、−(CH−S−(CH−CH
(ここで、
mは0〜3の任意の整数であり、
nは0〜10の任意の整数である)
で示される基である、本発明1の非水系蓄電素子用結着剤に関する。
【0022】
本発明7は、ナトリウム、リチウム、カリウム及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種を1〜10,000ppm含む、本発明1〜6のいずれかの非水系蓄電素子用結着剤に関する。
【0023】
本発明8は、本発明1〜7のいずれかの非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成されるコート層を有する非水系蓄電素子用電極に関する。
本発明9は、本発明1〜7のいずれかの非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成される活物質層を有する非水系蓄電素子用電極に関する。
本発明10は、本発明1〜7のいずれかの非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成されるコート層を有する非水系蓄電素子用セパレーターに関する。
本発明11は、本発明1〜7のいずれかの非水系蓄電素子用結着剤を用いて形成されるコート層を有する非水系蓄電素子用集電体に関する。
本発明12は、本発明8又は9の非水系蓄電素子用電極、本発明10の非水系蓄電素子用セパレーター及び本発明11の非水系蓄素子用集電体の少なくともいずれかを備えた非水系蓄電素子に関する。
本発明13は、非水系二次電池である、本発明12の非水系蓄電素子に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の非水系蓄電素子用結着剤を用いて、電極、セパレーター、集電体といった基材に対して、良好な密着性を有し、含水率が低い層を形成することができる。本発明の結着剤は、親水性基と疎水性基の極性の差が極端に大きくならない組み合わせを用いており、水分子を取り囲む効果を低減させ、ひいては層から水を抜けやすくすることで含水率の低い層が形成できる。この層を有する電極、セパレーター及び集電体の少なくともいずれかを非水系蓄電素子に用いることで、高速充放電特性の悪化を伴わずに、事故による非水系蓄電素子の圧壊や導電性の異物の混入や熱暴走等によるセパレーターの融解等に伴う正負極のショートを防ぐことができる。好適には、本発明の非水系蓄電素子用結着剤、フィラー及び溶媒を含む組成物を、電極、セパレーター、集電体といった基材に適用し、溶媒を蒸散させることにより、高い耐熱性と共に高いカチオン伝導性を有する層が得られる。
【0025】
上記の組成物はセパレーターに塗工すると、セパレーターを構成する成分のポリエチレンもしくはポリプロピレンと膨潤し、さらに乾燥により溶媒を除去することによって密着性を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】コート層を有する電池用電極の断面図である。
図2】コート層を有するセパレーターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(A)結着剤
本発明の結着剤は、上記式(1)で示される重合体(「特定の官能基を含む結着剤」ということがある)を含むことを特徴とする。特定の官能基を含む結着剤は、特定の官能基を有する重合性化合物とラジカル開始剤を混合し、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれかの手段により作製することができる。
【0028】
[特定の官能基を含む結着剤]
特定の官能基を含む結着剤における、特定の官能基としては、非置換であるか、又はハロゲン原子及び/若しくは水酸基で置換されている、炭素原子数1〜40のアルキル基(ここで、該アルキル基中の−CH−は、酸素原子、硫黄原子及びシクロアルカンジイルから選択される基で置き換えられていてもよい);あるいは−OR(ここで、Rは、環員数が3〜10の炭素環又はヘテロ環の1価基である)で示される基が挙げられる。特定の官能基を有する重合性化合物として、これらの特定の官能基と不飽和二重結合を有する化合物を使用することができる。
【0029】
具体的には、特定の官能基を含む結着剤は、A:任意のオキシアルキル基を有する化合物、B:任意のチオアルキル基を有する化合物及びC:任意のアルキル基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合性化合物、ラジカル開始剤及び場合により他の重合性化合物を混合し、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれかの手段により作製された重合体であることができる。
【0030】
A:任意のオキシアルキル基を有する化合物として、アルキルビニルエーテル誘導体、アルキルアリルエーテル誘導体が挙げられ、B:任意のチオアルキル基を有する化合物として、ビニルスルフィド誘導体、アリルスルフィド誘導体が挙げられ、C:任意のアルキル基を有する化合物として、アルケン誘導体、不飽和二重結合含有シクロアルカン誘導体が挙げられる。これらの誘導体は、各々ラジカル開始剤を混合して重合することにより、不飽和二重結合が付加重合した重合体を生成することができる。
【0031】
アルキルビニルエーテル誘導体は、特に制限されることはなく、例えばエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−メトキシプロペン、2−クロロエチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、2−ブロモテトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテル、2−(ペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、2−(ヘプタフルオロプロポキシ)ヘキサフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、パーフルオロプロポキシエチレン、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、アリルビニルエーテルなどがあり、これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて共重合させてもよい。
【0032】
アルキルビニルエーテル誘導体は、酢酸ビニルと共重合させることもできる。この場合、アルキルビニルエーテル誘導体に酢酸ビニルを任意の割合で混合させた後、ラジカル開始剤を用いることにより共重合させ、ポリ(酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル)を作製することができる。この共重合体は、酸又は塩基の存在下で加水分解させて、全部又は一部の酢酸ビニル由来の単位を水酸基に変えることができる。なお、加水分解した共重合体には酢酸ビニル由来の単位が残っていてもよいし、残らなくてもよい。
【0033】
加水分解した共重合体は結着剤としてそのまま用いてもよいが、精製によりイオン性不純物や未反応のモノマー等を除去して用いることもできる。精製方法としては、イオン交換樹脂によるイオン交換法や、限外ろ過法、透析等があり、これらの手法を単独で用いて精製してもよいし、組み合わせて精製してもよい。
【0034】
アルキルアリルエーテル誘導体は、特に制限されることはなく、例えばアリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルエーテル、アクロレインジメチルアセタール、アリルブチルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパンジアリルエーテル、2H−ヘキサフロオロプロピルアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールα,α’−ジアリルエーテル、アリル−n−オクチルエーテル、アリルトリフルオロアセテート、2,2−ビス(アリルオキシメチル)−1−ブタノール等があり、これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて共重合させてもよい。
【0035】
アルキルアリルエーテル誘導体は、酢酸ビニルと共重合させることもできる。この場合、アルキルアリルエーテル誘導体に酢酸ビニルを任意の割合で混合させた後、ラジカル開始剤を用いることにより共重合させ、ポリ(酢酸ビニル/アルキルアリルエーテル)を作製することができる。この共重合体は、酸又は塩基の存在下で加水分解させることで、全部又は一部の酢酸ビニル由来の単位を水酸基に変えることができる。なお、加水分解した共重合体には酢酸ビニル由来の単位が残っていてもよいし、残らなくてもよい。
【0036】
加水分解した共重合体は結着剤としてそのまま用いてもよいが、精製によりイオン性不純物や未反応のモノマー等を除去して用いることもできる。精製方法としては、イオン交換樹脂によるイオン交換法や、限外ろ過法、透析等があり、これらの手法を単独で用いて精製してもよいし、組み合わせて精製してもよい。
【0037】
ビニル(アリル)スルフィド誘導体としては、特に制限されることはなく、例えばエチルビニルスルフィド、1,1−ビス(メチルチオ)エチレン、アリルメチルスルフィド、アリルプロピルスルフィド、アリルスルフィド等があり、これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて共重合させてもよい。
【0038】
ビニル(アリル)スルフィド誘導体は、酢酸ビニルと共重合させることもできる。この場合、ビニル(アリル)スルフィド誘導体に酢酸ビニルを任意の割合で混合させた後、ラジカル開始剤を用いることにより共重合させ、ポリ(酢酸ビニル/アルキルビニル(アリル)スルフィド)を作製することができる。この共重合体は、酸又は塩基の存在下で加水分解させることで、全部又は一部の酢酸ビニル由来の単位を水酸基に変えることができる。なお、加水分解した共重合体には酢酸ビニル由来の単位が残っていてもよいし、残らなくてもよい。
【0039】
加水分解した共重合体は結着剤としてそのまま用いてもよいが、精製によりイオン性不純物や未反応のモノマー等を除去することもできる。精製は、イオン交換樹脂によるイオン交換法や、限外ろ過法、透析等があり、これらの手法を単独で用いて精製してもよいし、組み合わせて精製してもよい。
【0040】
アルケン誘導体としては、特に制限されることはなく、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン等があり、これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて共重合させてもよい。
【0041】
アルケン誘導体は、酢酸ビニルと共重合させることもできる。この場合、(シクロ)アルケン誘導体に酢酸ビニルを任意の割合で混合させた後、ラジカル開始剤を用いることにより共重合させ、ポリ(酢酸ビニル/(シクロ)アルケン)を作製することができる。この共重合体は、酸又は塩基の存在下で加水分解させることで、全部又は一部の酢酸ビニル由来の単位を水酸基に変えることができる。なお、加水分解した共重合体には酢酸ビニル由来の単位が残っていてもよいし、残らなくてもよい。
【0042】
不飽和二重結合含有シクロアルカン誘導体としては、、特に制限されることはなく、例えばビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、プレゴン等があり、これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて共重合させてもよい。
【0043】
不飽和二重結合含有シクロアルカン誘導体は、酢酸ビニルと共重合させることもできる。この場合、不飽和二重結合含有シクロアルカン誘導体に酢酸ビニルを任意の割合で混合させた後、ラジカル開始剤を用いることにより共重合させ、ポリ(酢酸ビニル/不飽和二重結合含有シクロアルカン誘導体)を作製することができる。この共重合体は、酸又は塩基の存在下で加水分解させることで、全部又は一部の酢酸ビニル由来の単位を水酸基に変えることができる。なお、加水分解した共重合体には酢酸ビニル由来の単位が残っていてもよいし、残らなくてもよい。
【0044】
特定の官能基を含む結着剤の作製においては、他の重合性化合物を使用することができ、具体的には、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、A〜Cの化合物を除く)が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、特に制限されることはなく、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、メチル 3,3−ジメチルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、1,4−ビス(アクリロイルオキシ)ブタン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソアミルアクリレート、メチルアンゲレート、1,6−ビス(アクリロイオキシ)ヘキサン、1,5−ビス(アクリロイオキシ)ペンタン、2−シアノエチルアクリレート、エチル3−メチルクロトネート、メチルチグレート、テトラ(メタ)アクリロキシエタン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート等があり、これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて共重合させてもよい。
【0046】
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、特に制限されることはなく、例えばN−t−ブチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−エチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、6−アクリルアミドへキサン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−アクリロイルモルホリン等があり、これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて共重合させてもよい。
【0047】
上記の他、クロトン酸ビニル、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、2−アリルオキシベンズアルデヒド、1,1,1−トリメチロールプロパンジアリルエーテル、2,2−ビス(4−アリルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、グリセロールα,α’−ジアリルエーテル、アリルクロロホルメート、アリルクロロアセテート、マレイン酸ジアリル、ジアリルカルボネート、アリルトリフルオロアセテート、2−メチル−2−プロペニルアセテート、2,2−ビス(アリルオキシメチル)−1−ブタノール、3−ブテン−2−イルアセテート、アリルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルシアノアセテート、フェニルビニルスルフィド、4−メチル−5−ビニルチアゾール、アリルジメチルジチオカルバメート、アリルフェニルスルフィド、S−アリルシステイン、アリル1−ピロリジノンカルボジチオエート、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド等を使用することができる。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体等の他の重合性化合物は、A:任意のオキシアルキル基を有する化合物、B:任意のチオアルキル基を有する化合物及びC:任意のアルキル基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合性化合物とともに、酢酸ビニルと共重合させることもできる。この場合、酢酸ビニルと共重合させる場合、他の重合性化合物及びA〜Cの少なくとも1種の重合性化合物に酢酸ビニルを任意の割合で混合させた後、ラジカル開始剤を用いることにより共重合させ、他の重合性化合物由来の単位が導入された共重合体を作製することができる。共重合体は結着剤としてそのまま用いてもよいが、精製により未反応のモノマー等を除去することもできる。精製は、限外ろ過法、透析等があり、これらの手法を単独で用いて精製してもよいし、組み合わせて精製してもよい。
【0049】
ただし、(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の単位、(メタ)アクリルアミド誘導体由来の単位を有する共重合体は、酸又は塩基の存在下で加水分解すると、酢酸ビニル由来の単位が水酸基に変わる反応とともに(メタ)アクリル酸エステル由来の単位、(メタ)アクリルアミド由来の単位の加水分解が同時に起こる場合があり、その反応条件は制限される。
【0050】
酢酸ビニルとともに共重合させる場合、A〜Cの少なくとも1種の重合性化合物と酢酸ビニルは、モル比で、0.001:9.999〜9.999:0.001とすることができ、好ましくは、0.005:9.995〜9.995:0.005である。
【0051】
ラジカル開始剤としては、光ラジカル開始剤と熱ラジカル開始剤が挙げられる。これらのラジカル開始剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
光ラジカル開始剤としては、特に制限されることはなく、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、メチルフェニルグリオキシレート、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4’’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1−[4−(3−メルカプトプロピルチオ)フェニル]−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、1−[4−(10−メルカプトデカニルチオ)フェニル]−2−メチル−2−モルホリン−4−イルプロパン−1−オン、1−(4−{2−[2−(2−メルカプト−エトキシ)エトキシ]エチルチオ}フェニル)−2−メチル−2−モルホリン−4−イルプロパン−1−オン、1−[3−(メルカプトプロピルチオ)フェニル]−2−ジメチルアミノ−2−ベンジルプロパン−1−オン、1−[4−(3−メルカプトプロピルアミノ)フェニル]−2−ジメチルアミノ−2−ベンジルプロパン−1−オン、1−[4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル]−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール1−イル)フェニル]チタニウム、α−アリルベンゾイン、α−アリルベンゾインアリールエーテル、1,2−オクタンジオン、1−4−フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、及び1,3−ビス(p−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン等を例示することができる。
【0053】
光ラジカル開始剤のうち、ベンゾフェノン、ミフィラーケトン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、イソブチルチオキサントンのような分子間水素引き抜き型の光開始剤に対しては、電子供与体(水素供与体)を開始助剤として添加できる。このような電子供与体として、活性水素を有する脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとして、具体的には、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが例示できる。芳香族アミンとして、具体的には、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、及び4−ジメチルアミノ安息香酸エチルが例示できる。
【0054】
熱ラジカル開始剤としては、特に制限されることはなく、4−アジドアニリン塩酸塩、及び4,4’−ジチオビス(1−アジドベンゼン)等のアジ化物;4,4’−ジエチル−1,2−ジチオラン、テトラメチルチウラムジスルフィド、及びテトラエチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド;オクタノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、及びm−トルイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド;ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、及びジ−(2−エトキシエチル)ペルオキシジカーボネートのようなペルオキシジカーボネート;t−ブチルペルオキシイソブチラート、t−ブチルペルオキシピバラート、t−ブチルペルオキシオクタノアート、オクチルペルオキシオクタノアート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、t−ブチルペルオキシネオドデカノアート、オクチルペルオキシネオドデカノアート、t−ブチルペルオキシラウラート、及びt−ブチルペルオキシベンゾアートのようなペルオキシエステル;ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチル)ヘキサンのようなジアルキルペルオキシド;2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及びN−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレートのようなペルオキシケタール;メチルエチルケトンペルオキシドのようなケトンペルオキシド;p−メンタンヒドロペルオキシド、及びクメンヒドロペルオキシド等の過酸化物;2,2’−アゾビス(4−メトキシ2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、及び2−フェニルアゾ−4−メトキシ2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾニトリル類;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(4−フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾアミド類;2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等のアルキルアゾ化合物類;並びに、その他ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、及び2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオネート]等のアゾ化合物;ビピリジン;遷移金属を有する開始剤(例えば、塩化銅(I)及び塩化銅(II));メチル2−ブロモプロピオネート、エチル2−ブロモプロピオネート、エチル2−ブロモイソブチレート等のハロゲン化合物が例示できる。
【0055】
熱ラジカル発生剤に対して、分解促進剤を併用することができる。分解促進剤として、チオ尿素誘導体、有機金属錯体、アミン化合物、ホスフェート化合物、トルイジン誘導体、アニリン誘導体が例示できる。
【0056】
チオ尿素誘導体として、N,N’−ジメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジブチルチオ尿素、ベンゾイルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’−ジエチレンチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素、及びN,N’−ジラウリルチオ尿素が挙げられ、好ましくは、テトラメチルチオ尿素又はベンゾイルチオ尿素である。有機金属錯体として、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉄、ナフテン酸マンガン、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸バナジウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸鉄、及びステアリン酸マンガン等が例示できる。アミン化合物として、アルキル基又はアルキレン基の炭素数が1〜18の整数で表わされる1〜3級のアルキルアミン類又はアルキレンジアミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルベンジルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリスジエチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン,1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、2−メチルイミダゾール、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等が例示できる。ホスフェート化合物として、メタクリルホスフェート、ジメチクリルホスフェート、モノアルキルアシッドホスフェート、ジアルキルホスフェート、トリアルキルホスフェート、ジアルキルホスファイト、及びトリアルキルホスファイト等が例示できる。トルイジン誘導体として、N,N−ジメチル−p−トルイジン、及びN,N−ジエチル−p−トルイジン等が例示できる。アニリン誘導体として、N,N−ジメチルアニリン、及びN,N−ジエチルアニリン等が例示できる。
【0057】
光ラジカル開始剤及び/又は熱ラジカル発生剤は、特定の官能基を有する重合性化合物100質量部に対して、0.01〜50質量部で使用するのが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。光ラジカル開始剤及び熱ラジカル発生剤を併用するときは、上記の量は、光ラジカル開始剤及び熱ラジカル発生剤の合計の含有量である。また、電子供与体の量は、光ラジカル開始剤100質量部に対して、10〜500質量部であるのが好ましい。分解促進剤の量は、熱ラジカル発生剤100質量部に対して、1〜500質量部であるのが好ましい。
【0058】
特定の官能基を含む結着剤は、A:任意のオキシアルキル基を有する化合物、B:任意のチオアルキル基を有する化合物及びC:任意のアルキル基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合性化合物、ラジカル開始剤及び場合により他の重合性化合物を混合し、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれかの手段により作製することができる。
【0059】
[固形の高分子物質を溶媒に溶かした液状の結着剤]
本発明には、特定の官能基を含む結着剤に加え、固形の高分子物質を溶媒に溶かした液状の結着剤を併用することができる。溶媒は、固形の高分子物質を溶かすことができる溶媒から適宜選択することができ、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0060】
固形の高分子物質を溶媒に溶かした液状の結着剤は、溶液であっても、懸濁液であってもよい。
【0061】
固形の高分子物質として、各種公知の結着剤を用いることができる。具体的には、完全ケン化ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA-124、日本酢ビ・ポバール株式会社製;JC-25等)、部分ケン化ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA-235、日本酢ビ・ポバール株式会社製;JP-33等)、変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレKポリマーKL-118、クラレCポリマーCM-318、クラレRポリマーR-1130、クラレLMポリマーLM-10HD、日本酢ビ・ポバール株式会社製;DポリマーDF-20、アニオン変性PVA AF-17、アルキル変性PVA ZF-15、カルボキシメチルセルロース(ダイセル工業株式会社製;H-CMC、DN-100L、1120、2200、日本製紙ケミカル株式会社製;MAC200HC等)、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル工業株式会社製;SP-400等)、ポリアクリルアミド(MTアクアポリマー株式会社製;アコフロックA-102)、ポリオキシエチレン(明成化学工業株式会社製;アルコックスE-300)、エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製;EX-614、ジャパンケムテック株式会社製;エピコート5003-W55等)、ポリエチレンイミン(日本触媒株式会社製;エポミンP-1000)、ポリアクリル酸エステル(MTアクアポリマー株式会社製;アコフロックC-502等)、並びに糖類及びその誘導体(和光純薬工業株式会社;キトサン5、日澱化学株式会社製;エステル化澱粉乳華、グリコ株式会社製;クラスタ-デキストリン)、ポリスチレンスルホン酸(東ソー有機化学株式会社製;ボリナスPS-100等)等が挙げられ、これらの水溶性高分子を水に溶かした状態で用いることができる。
【0062】
固形の高分子物質として、アクリル酸エステル重合エマルジョン(昭和電工株式会社製;ポリゾールF-361、F-417、S-65、SH-502)、及びエチレン・酢酸ビニル共重合エマルジョン(株式会社クラレ製;パンフレックスOM-4000NT、OM-4200NT、OM-28NT、OM-5010NT)等のエマルジョンを挙げることもでき、これらは水に懸濁させた状態で用いることができる。また、固形の高分子物質として、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製;クレハKF重合体#1120)、変性ポリビニルアルコール(信越化学工業株式会社製;シアノレジンCR-V)、変性プルラン(信越化学工業株式会社製;シアノレジンCR-S)等の高分子も挙げることができ、これらをN−メチルピロリドンに溶かした状態で用いることができる。
【0063】
固形の高分子物質を溶媒に溶かした液状の結着剤として、水溶性高分子を水に溶かした液状の結着剤、及びエマルジョンを水に懸濁させた結着剤が好ましい。
【0064】
固形の高分子物質を溶媒に溶かした液状の結着剤は、加熱及び/又は減圧することで溶媒を除去し固化させることができる。このような結着剤は、層中に電解液を含浸しゲル電解層を形成することができ、層のイオン伝導性を高めることもできる。
【0065】
本発明の結着剤に占める、特定の官能基を含む結着剤の割合は、結着剤100質量%中、0.01〜99.99質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜99.9%である。特定の官能基を含む結着剤のみを使用してもよい。ここで、固形の高分子物質を溶媒に溶かした液状の結着剤については、固形の高分子物質の量に基づく。
【0066】
本発明の結着剤は、溶媒、フィラー、活物質、コアシェル型の発泡剤、塩、イオン性を有する液体、カップリング剤、安定剤、防腐剤及び界面活性剤等と組み合わせた組成物とし、非水系蓄電素子の電極、セパレーター、集電体といった基材に適用することができる。
【0067】
(B)溶媒
組成物は、本発明の結着剤に加えて、溶媒を含むことができる。溶媒は、固形の高分子物質を溶媒に溶かした液状の結着剤に含まれる溶媒、無機フィラーがゾル等の形態の場合の媒体としての溶媒も包含する。
【0068】
溶媒は、塗工装置に合わせて粘度調整等の目的を行なうために、任意の比率で配合することできる。溶媒としては、特に制限されることなく、炭化水素(プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、テレビン油、ピネン等)、ハロゲン系炭化水素(塩化メチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、臭化メチル、臭化エチル、クロロベンゼン、クロロブロモメタン、ブロモベンゼン、フルオロジクロロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジフルオロクロロエタン等)、アルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、1−ドデカノール、ノナノール、シクロヘキサノール、グリシドール等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジクロロジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル)、フラン(テトラヒドロフラン、フルフラール、2−メチルフラン、シネオール、メチラール)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチル−N−プロピルケトン、メチル−N−アミルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等)、エステル(ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−n−アミル、シクロヘキサン酢酸メチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、ステアリン酸ブチル、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等)、多価アルコールとその誘導体(エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等)、脂肪酸及びフェノール(ギ酸、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、フェノール、クレゾール、o−クレゾール、キシレノール等)、窒素化合物(ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジアミルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、o−トルイジン、o−クロロアニリン、ジクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル、ピリジン、α−ピコリン、2,4−ルチジン、キノリン、モルホリン等)、硫黄、リン、その他化合物(二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、4,4−ジエチル−1,2−ジチオラン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メタンチオール、プロパンスルトン、リン酸トリエチル、リン酸トフェニル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、ホウ酸アミル等)、無機溶媒(液体アンモニア、シリコーンオイル等)、水等の液体が例示できる。
【0069】
溶媒は、塗工性の観点から、1〜10,000mPa・sの粘度となる量が好ましい。粘度としては2〜5000mPa・sがより好ましく、3〜1,000mPa・sがさらに好ましい。このような粘度とするための溶媒の種類及び含有量は適宜決定できる。本発明において、粘度は、コーンプレート型回転粘度計(回転数50rpm)で、25℃にて測定した値である。
【0070】
(C)フィラー
組成物は、本発明の結着剤に加えて、フィラーを含むことができる。フィラーは単独で用いてもよいし、複数を組み合わせてもよい。
【0071】
特に、耐熱コート層を形成するために組成物を用いる場合は、多孔質膜であるコート層が生成するので、フィラーを組成物に含有させることが好ましい。この場合、耐熱性の点から、無機フィラーが好ましい。組成物における結着剤の量は、フィラー間に発生する空隙を埋めず、さらに実用上十分な量の添加量であるのが好ましい。この場合、結着剤の量は、フィラー100質量部に対して、0.01〜49質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜30質量部、さらに好ましくは0.1〜20質量部である。
【0072】
また、集電体の表面処理のために組成物を用いる場合は、炭素系フィラーのような導電性のフィラーを組成物に含有させることが好ましい。この場合、結着剤の量は、フィラー100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜80質量部、さらに好ましくは1〜70質量部である。
【0073】
無機フィラーとして、アルミナを用いることができる。アルミナの製造方法としては、溶媒に溶解させたアルミニウムアルコキシドを加水分解する手法、硝酸アルミニウム等の塩を熱分解し、粉砕する手法等が挙げられるが、本発明におけるアルミナの手法は、特に制限されることなく、どのような手法で製造したものも使用することができる。アルミナは単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
他の無機フィラーとしては、特に制限されることなく、シリカ、ジルコニア、ベリリア、酸化マグネシウム、チタニア、及び酸化鉄等の金属酸化物の粉末;コロイダルシリカやチタニアゾル、アルミナゾル等のゾル、タルク、カオリナイト、及びスメクタイト等の粘土鉱物;炭化ケイ素、及び炭化チタン等の炭化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び窒化チタン等の窒化物;窒化ホウ素、ホウ化チタン、及び酸化ホウ素等のホウ化物;ムライト等の複合酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化鉄等の水酸化物;チタン酸バリウム、炭酸ストロンチウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びガラス等が挙げられる。
【0075】
これらの無機フィラーは、粉体で使用してもよいし、シリカゾルやアルミゾルのような水分散コロイドの形やオルガノゾルのような有機溶媒に分散した状態で使用してもよい。
【0076】
無機フィラーの粒子の大きさは、0.001〜100μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.005〜10μmの範囲である。平均粒子径で、0.005〜50μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜8μmの範囲である。平均粒子径及び粒度分布は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定でき、具体的には株式会社堀場製作所製LA-920等を用いることができる。
【0077】
無機フィラーは、アルミナを含むことが好ましく、無機フィラー中、アルミナが50質量%以上であることが好ましく、アルミナ100質量%であってもよい。他の無機フィラーを併用する場合、他の無機フィラーの量は、アルミナと他の無機フィラーを合わせた全無機成分100質量%のうち、0.1〜49.9質量%とすることができ、好ましくは0.5〜49.5質量%、より好ましくは1〜49質量%である。
【0078】
有機フィラーとしては、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド等の高分子のうち三次元的に架橋して実質塑性変形しない高分子やセルロースの粒子やファイバー、フレーク等が挙げられる。有機フィラーは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
フィラーは、導電性であっても、非導電性であってもよい。集電体の表面処理のための組成物の用いる場合は、導電性フィラーが好ましい。耐熱コート層の形成に組成物を用いる場合は、導電性フィラーを絶縁性が損なわれない程度に添加できる。
【0080】
導電性フィラーとしては、Ag、Cu、Au、Al、Mg、Rh、W、Mo、Co、Ni、Pt、Pd、Cr、Ta、Pb、V、Zr、Ti、In、Fe、Zn等の金属フィラー(形状は限定されず、球状、フレーク状粒子又はコロイド等が挙げられる);Sn−Pb系、Sn−In系、Sn−Bi系、Sn−Ag系、Sn−Zn系等の合金フィラー(球状粒子、フレーク状粒子);アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、グラファイト、グラファイト繊維、グラファイトフィブリル、カーボンファイバー、活性炭、木炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系フィラー;酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタン等)等のうち格子欠陥の存在により余剰電子が生成し導電性を示す金属酸化物フィラーが挙げられる。導電性フィラーの表面は、カップリング剤等で処理されていてもよい。
【0081】
導電性フィラーは、導電性、液性の観点から、0.001〜100μmの範囲が好ましく、更に好ましくは0.01〜10μmの範囲である。導電性フィラーを含む組成物により、形成される導電性のコート層に凹凸を付け、アンカー効果で活物質層との密着性を上げるために、上述の範囲よりも大きい導電性フィラーを用いることもできる。その場合は、上記範囲の導電性フィラーに対し、1〜50重量%、より好ましくは5〜10重量%の量で、大きい導電性の粒子を複合することができる。このような導電性フィラーとして、例えば炭素繊維(帝人株式会社製;ラヒーマR−A101=繊維径8μm、繊維長30μm)等が挙げられる。導電性フィラーは、平均粒子径で、0.005〜50μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜8μmの範囲である。
【0082】
耐熱コート層の組成物には、無機フィラーを使用することが好ましく、その他のフィラーと無機フィラーを併用する場合、無機フィラー100質量部に対して、50質量部以下で含むことができ、30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。集電体処理用の組成物には、導電フィラーを使用することが好ましい。
【0083】
(D)その他の成分
組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、活物質、コアシェル型の発泡剤、塩、イオン性を有する液体、カップリング剤、安定剤、防腐剤、及び界面活性剤等を含むことができる。
【0084】
[活物質]
また、非水系蓄電素子の電極の活物質層を形成するために組成物を用いる場合は、結着剤及び活物質を組成物に含有させることが好ましい。この場合、結着剤の量は、活物質100質量部に対して、0.01〜500質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜200質量部、さらに好ましくは0.5〜100質量部である。
【0085】
活物質は、所望の非水系蓄電素子により、適宜、選択することができる。非水系蓄電素子が電池の場合、充放電をつかさどるアルカリ金属イオンを授受する活物質が挙げられ、リチウム二次電池の正極活物質層の形成には、リチウム塩(例えば、コバルト酸リチウム、オリビン型リン酸鉄リチウム等)が挙げられ、電気二重層キャパシタの電極活物質層の形成には、活性炭等が挙げられる。活物質の形状、量は、所望の活物質層に応じて、適宜、選択することができる。例えば、粒子状の活物質を使用する場合、その大きさは0.001〜100μmの範囲とすることができ、さらに好ましくは0.005〜10μmの範囲である。平均粒子径で、0.005〜50μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜8μmの範囲である。
【0086】
[コアシェル型の発泡剤]
組成物は、コアシェル型の発泡剤を含むことができる。このような発泡剤として、EXPANCEL(日本フィライト株式会社製)等が挙げられる。一般に、コアシェル型の発泡剤のシェルは有機物であるから、電解液に対する長期信頼性が乏しく、そのため、この発泡剤をさらに無機物で被覆したものを用いることもできる。このような無機物として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ベリリア、酸化マグネシウム、チタニア、及び酸化鉄等の金属酸化物;コロイダルシリカやチタニアゾル、アルミナゾル等のゾル;シリカゲル、及び活性アルミナ等のゲル;ムライト等の複合酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の水酸化物:並びに、チタン酸バリウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属を例示できる。
【0087】
一定の温度になると軟化するシェルと、加熱による蒸発等によって体積が膨張する材料からなるコアを組み合わせたコアシェル型発泡剤を用いることによって、電池が熱暴走した際に、発泡剤が発泡することで、電極間距離を広げることができ、これによりシャットダウン機能を発揮することができる。さらに、シェル部が大きく膨張することで、電極間距離を広げることができ、これによりショート等を防ぐことができる。また、発熱が収まっても膨張したシェル部がその形状を維持するため、再び電極間が狭まり再ショートを防ぐこともできる。また、コアシェル型発泡剤を無機物で被覆することで、充放電時の電気分解の影響を低減でき、さらに無機物表面の活性水素基がイオン伝導する際のカウンターイオンとなることで、イオン伝導性を効率よく高めることもできる。
【0088】
組成物は、コアシェル型発泡剤を、結着剤100質量部に対して、1〜99質量部で含むことができ、10〜98質量部が好ましい。上記コアシェル型発泡剤と上記無機フィラーを併用する場合、コアシェル型発泡剤は、無機フィラー及び結着剤の合計100質量部に対して、99質量部以下で含むことができ、1〜99質量部が好ましく、より好ましくは10〜98質量部、さらに好ましくは20〜97質量部である。
【0089】
[塩]
組成物は、各種イオン源となる塩を含むことができる。これにより、イオン伝導性を向上させることができる。使用する電池の電解質を加えることもできる。リチウムイオン電池の場合は、電解質として、水酸化リチウム、ケイ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウム等を例示でき、ナトリウムイオン電池の場合は、水酸化ナトリウム、及び過塩素酸ナトリウム等を例示できる。カルシウムイオン電池の場合は、電解質として、水酸化カルシウム、及び過塩素酸カルシウム等を例示できる。マグネシウムイオン電池の場合は、電解質として、過塩素酸マグネシウム等を例示できる。電気二重層キャパシタの場合は、電解質として、四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びテトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等を例示できる。
【0090】
組成物は、上記塩を、無機フィラー及び結着剤の合計100質量部に対して、300質量部以下で含むことができ、0.1〜300質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜200質量部であり、さらに好ましくは1〜100質量部である。上記塩は、粉体で添加したり、多孔質にして添加したり、配合成分に溶解させて用いても良い。
【0091】
[イオン性を有する液体]
組成物は、イオン性を有する液体を含むことができる。イオン性を有する液体は、上記塩が溶媒に溶解した溶液又はイオン性液体であり得る。塩が溶媒に溶解した溶液として、六フッ化リン酸リチウム又はホウフッ化テトラエチルアンモニウム等の塩をジメチルカーボネート等の溶媒に溶解した溶液が例示できる。
【0092】
イオン性液体としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド等のイミダゾリウム塩誘導体;3−メチル−1−プロピルピリジミウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド等のピリジニウム塩誘導体;テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、テトラフェニルアンモニウムメタンスルホネート等のアルキルアンモニウム誘導体;テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート等のホスホニウム塩誘導体;ポリアルキレングリコールと過塩素酸リチウムの複合体等の複合化導電性付与剤等が例示できる。
【0093】
組成物は、イオン性を有する液体を、結着剤100質量部に対して、0.01〜40質量部で含むことができ、0.1〜40質量部が好ましい。上記イオン性を有する液体と無機フィラーを併用する場合、イオン性を有する液体を、無機フィラー100質量部に対して、40質量部以下で含むことができ、0.01〜40質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部であり、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。
【0094】
[カップリング剤]
組成物は、カップリング剤を含むことができる。シラン系カップリング剤としては、フッ素系のシランカップリング剤として、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、臭素系のシランカップリン剤として、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシプロピルトリエトキシシラン、オキセタン変性シランカップリング剤として、東亞合成株式会社製カップリング剤(商品名:TESOX)、あるいは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(市販品として、KBM−403(信越化学工業株式会社製))、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、シアノヒドリンシリルエーテル等のシランカップリング剤が挙げられ、これらシランカップリング剤が予め加水分解され−SiOHを有するものを用いることもできる。
【0095】
チタン系カップリング剤として、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、チタニウムラクテートアンモニウム塩、テトラステアリルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、イソプロピルトリオクタノルチタネート、イソプロピルジメタクリイソステアロイルチタネート、チタニウムラクテートエチルエステル、オクチレングリコールチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、トリイソステアリルイソプロピルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等を挙げることができる。
【0096】
カップリング剤として、チタン系カップリング剤、及び、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びシアノヒドリンシリルエーテルが好ましい。シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤は、1種類、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
このようなカップリング剤は、電池電極表面やセパレーター表面と相互作用を起こすことで、密着力を向上させることができる。また、フィラーの表面をこれらカップリング剤で被覆することで、カップリング剤分子による排斥効果でフィラーの間に隙間ができ、その間をイオンが伝導することでイオン伝導性を向上させることもできる。また、無機フィラー、シリコーン粒子やポリオレフィン粒子などのフィラーの表面をカップリング剤で被覆することで、これらのフィラーを疎水化させることができるため、消泡性をより向上させることができる。また、フィラーの表面の活性水素をシランカップリング剤で置換することで表面吸着水の量を減らすことができるため、非水系蓄電素子の特性低下の原因になる水分の量を減らすことができる。
【0098】
組成物は、カップリング剤を、結着剤100質量部に対して、0.01〜500質量部で含むことができ、0.1〜100質量部が好ましい。
【0099】
[安定剤]
組成物は、安定剤を含むことができる。このような安定剤としては、特に制限されることなく、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ビス−(N−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のフェノール系酸化防止剤;アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン系酸化防止剤;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ビス[2−メチル−4−{3−N−アルキルチオプロピオニルオキシ}−5−t−ブチルフェニル]スルフィド、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール等によって例示されるサルファイド系ヒドロペルオキシド分解剤;トリス(イソデシル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスファートジエチルエステル、ナトリウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスファート等のリン系ヒドロペルオキシド分解剤;フェニルサリチラート、4−t−オクチルフェニルサリチラート等のサリチレート系光安定剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン系光安定剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾールー2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系光安定剤;フェニル−4−ピペリジニルカーボネート、セバシン酸ビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]等のヒンダードアミン系光安定剤;[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル(II)等のNi系光安定剤;シアノアクリレート系光安定剤;シュウ酸アニリド系光安定剤;フラーレン、水添フラーレン、水酸化フラーレン等のフラーレン系光安定剤等を挙げることができる。これらの安定剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
組成物は、安定剤を、結着剤100質量部に対して、0.01〜10質量部で含むことができ、0.05〜5質量部が好ましい。上記安定剤と無機フィラーを併用する場合、安定剤を、無機フィラー100質量部に対して、10質量部以下で含むことができ、0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
【0101】
[防腐剤]
組成物は、防腐剤を含むことができる。これにより、組成物の保存安定性を調節できる。
【0102】
防腐剤としては、安息香酸、サリチル酸、デヒドロ酢酸、ソルビン酸のような酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びソルビン酸カリウムのような塩、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、及び1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのようなイソチアゾリン系防腐剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びエチレングリコール等のアルコール類、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0103】
これらの防腐剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
組成物は、防腐剤を、結着剤100質量部に対して、0.0001〜1質量部で含むことができる。上記防腐剤と無機フィラーを併用する場合、防腐剤を、無機フィラー100質量部に対して、1質量部以下で含むことができ、0.0001〜1質量部が好ましく、より好ましくは0.0005〜0.5質量部である。
【0105】
[界面活性剤]
組成物は、組成物のぬれ性や消泡性を調節する目的で、界面活性剤を含むことができる。また、組成物は、イオン伝導性を向上する目的で、イオン性の界面活性剤を含むことができる。
【0106】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、両面界面活性剤、非イオン(ノニオン)界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0107】
アニオン界面活性剤としては、石ケン、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、メチルタウリン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ペンタフルオロエタンスルホン酸塩、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸塩、及びノナフルオロブタンスルホン酸塩等が挙げられ、カウンターカチオンとしてはナトリウムイオンやリチウムイオン等を用いることができる。リチウムイオン電池においてはリチウムイオンタイプの界面活性剤がより好ましく、ナトリウムイオン電池においてはナトリウムイオンタイプの界面活性剤がより好ましい。
【0108】
両性界面活性剤としては、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸アルキルベタイン、スルホベタイン、アミンオキシド等が挙げられる。
【0109】
非イオン(ノニオン)界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル型化合物、ポリオキシソルビタンエステル等のエステル型化合物、アルキルフェノール型化合物、アセチレン骨格型化合物、フッ素型化合物、シリコーン型化合物等が挙げられる。
【0110】
界面活性剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
組成物は、界面活性剤を、結着剤100質量部に対して、0.01〜50質量部で含むことができ、0.05〜20質量部が好ましい。上記界面活性剤を無機フィラーと併用する場合、無機フィラー100質量部に対して、50質量部以下で含むことができ、0.01〜50質量部であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。
【0112】
組成物は、非水系蓄電素子用であり、具体的には、電極又はセパレーターを保護するために用いることができる。本発明の組成物を用いて、電極又はセパレーターの少なくとも表面にコート層に形成することができるが、その一部が電極又はセパレーター内部に入り込んでいてもよい。
【0113】
[組成物の製造方法]
組成物は、上記成分を混合し撹拌することによって作製することができ、下記3つの組成物を例に説明する。
(1)耐熱コート層を形成するための組成物(耐熱コート層用組成物)
(2)活物質を形成するための組成物(活物質層用組成物)
(3)集電体の表面処理ための組成物(集電体表面処理用組成物)
【0114】
(1)耐熱コート層組成物は、耐熱性を有する層をセパレーター、電極、集電体上に形成するのに使用することができる。特に、セパレーターや電極表面にイオン伝導性はあるが、電気絶縁性のコート層を形成し、絶縁性を高めることで電池の安全性を高めることができる。耐熱コート層組成物は、耐熱性の高い有機フィラーや無機フィラーをさらに含むことができる、無機フィラーとして例えばアルミナを使用する場合、アルミナは溶媒に分散させた状態で混合してもよい。具体的には、無機フィラー、本発明の結着剤、溶媒を含む組成物が挙げられる。これらの成分の好適な量に関しては、上述のとおりである。
(2)活物質層用組成物は、非水系蓄電素子の電極の活物質層を形成するのに使用することができる。活物質層用組成物は、所望の非水系蓄電素子により、適宜、活物質を選択して配合物することができる。非水系蓄電素子が電池の場合、電池の充放電をつかさどるアルカリ金属イオンを授受する活物質が挙げられ、例えば、正極ではコバルト酸リチウムやオリビン型リン酸鉄リチウムなどのリチウム塩の粒子、負極ではグラファイトや珪素合金粒子などを用いることができ、電子伝導性を高めるために前述の炭素系フィラーをさらに用いることもできる。具体的には、活物質、本発明の結着剤、溶媒を含む組成物が挙げられる。これらの成分の好適な量に関しては、上述のとおりである。
(3)集電体表面処理用組成物は、集電体表面に塗工することで、抵抗を下げ、電気分解に対する耐性を高めるために使用することができる。その結果、非水系蓄電素子の特性の向上と寿命の延長を達成することができる。集電体表面処理用組成物には、炭素系フィラーをはじめとする導電性フィラーを導電助剤として配合することができる。具体的には、導電性フィラー(例えば、炭素系フィラー)、本発明の結着剤、溶媒を含む組成物が挙げられる。これらの成分の好適な量に関しては、上述のとおりである。
【0115】
これら組成物を撹拌する場合、プロペラ式ミキサー、プラネタリーミキサー、ハイブリッドミキサー、ニーダー、乳化用ホモジナイザー、及び超音波ホモジナイザー等の撹拌装置を用いて行うことができる。また、必要に応じて加熱又は冷却しながら撹拌することもできる。なお、本結着剤はこれらの例だけではなく、電解液に接する部分に用いられる部材に適応可能で、ラミネートフィルムタイプの電池では密着性向上剤、シール剤、タブの密着向上剤などにも用いることができる。
【0116】
[組成物による各組成物層の形成方法]
組成物は、非水系蓄電素子用であり、具体的には、非水系蓄電素子の電極、セパレーター又は集電体表面に塗布し、溶媒を蒸散させることで層を形成することができる。このようにして形成される層は、基材との密着性に優れ、かつ含水率が低い。また、耐電解液性や耐熱性に優れた層を形成することができ、さらに、層の形成により、電極又はセパレーターの表面保護を行なうことができる。
【0117】
本発明は、本発明の組成物を用いて得られる各種層を包含する。すなわち、本発明の組成物を用いた各種層の形成方法は、結着剤が溶媒に溶解した状態である場合、電極、セパレーター又は集電体表面に、組成物の組成物層を少なくとも1層以上形成する工程、及び溶媒を蒸散させる工程を含む。また、結着剤が溶媒に溶解しない固体の場合は、電極、セパレーター又は集電体表面に、組成物の組成物層を少なくとも1層以上形成する工程、溶媒を蒸散させる工程、及び前記溶媒を蒸散させる温度条件で固体の結着剤が熱融着しない場合は、前記固体の結着剤を加熱融着する工程を含む。
【0118】
(組成物層の形成方法)
電極、セパレーター又は集電体への組成物層の形成は、その表面にグラビアコーターやスリットダイコーター、スプレーコーター、ディッピング等を利用することにより、組成物を適用することにより行うことができる。
(1)耐熱コート層用組成物の場合、適用した組成物の厚みは0.01〜100μmの範囲が好ましく、電気特性及び密着性の観点から0.05〜50μmの範囲がさらに好ましい。本発明においては、組成物層を乾燥させた後の厚み、つまりコート層の厚みが、0.01〜100μmの範囲が好ましく、0.05〜50μmの範囲がさらに好ましい。コート層の厚みが、この範囲であれば、電気伝導に対する絶縁性が充分で、ショートの危険性を十分に減らすことができる。また、コート層の厚みが増すと、抵抗が厚みに比例して上がるが、この範囲であれば、イオン伝導に対する抵抗が高くなりすぎて、非水系蓄電素子の充放電特性が低下するといった事態を回避しやすい。
(2)活物質層用組成物の場合、非水系蓄電素子の設計により、層の厚みを変化させることができるが、適用した組成物の厚みは0.01〜1000μmの範囲が好ましく、電気特性及び密着性の観点から1〜500μmの範囲がさらに好ましい。本発明においては、組成物層を乾燥させた後の厚み、つまり活物質層の厚みが、2〜300μmの範囲が好ましく、10〜200μmの範囲がさらに好ましい。この範囲であれば、活物質層の厚みが薄すぎて、電池容量が小さくなったり、厚すぎて、イオン伝導に対する抵抗が高くなり、非水系蓄電素子の充放電特性が低下するといった事態を回避しやすい。
(3)集電体表面処理用組成物の場合、適用した組成物の厚みは0.01〜100μmの範囲が好ましく、電気特性及び密着性の観点から0.05〜50μmの範囲がさらに好ましい。本発明においては、塗布後を乾燥させた後の厚み、つまり表面処理層の厚みが、0.01〜100μmの範囲が好ましく、0.05〜50μmの範囲がさらに好ましい。この範囲であれば、表面処理層の厚みが薄くなりすぎて、密着性が低下して剥離し易くなったり、厚すぎて、電気伝導に対する抵抗が高くなり、非水系蓄電素子の充放電特性が低下するといった事態を回避しやすい。
【0119】
(溶媒の蒸散方法)
組成物が溶媒を含む場合、各層の形成において、加熱したり真空にしたりすることで溶媒を蒸散させることができる。加熱法としては、熱風炉や赤外線ヒーター、ヒートロール等を用いることができ、真空乾燥はチャンバ−内に組成物の組成物層を導入し、真空にすることで乾燥できる。また、昇華性がある溶媒を用いる場合、凍結乾燥させることで溶媒を蒸散させることもできる。加熱法における加熱温度及び加熱時間は、溶媒が蒸散する温度及び時間であれば、特に制限されることなく、例えば80〜120℃で、0.1〜2時間とすることができる。溶媒を蒸散させることにより、各組成物の溶媒を除いた成分が、電極、セパレーター、集電体と密着し、結着剤がホットメルト型の場合は熱融着することができる。組成物が、フィラーを含む場合、これにより、多孔質膜が形成され、耐熱コート層用組成物の場合は、耐熱性多孔質膜が形成される。
【0120】
(加熱方法)
各層の形成において、結着剤が粒子状である場合、結着剤同士を熱融着させて固化させることができる。その場合、粒子が完全に溶融する温度で熱融着させて固化させることもできるし、表面だけが熱溶解して溶着し相互に密着した状態で冷却することで粒子同士が点で密着し隙間が開いた状態で固化させることもできる。前者の熱融着固化によれば、連続相になっている部分が多く、イオン伝導性や機械的強度及び耐熱性が高い。後者の熱融着固化によれば、連続相になっている部分が少ない分、融着した有機物粒子を通じたイオン伝導性や機械的強度及び耐熱性には劣るが、粒子間の空隙に電解液が含浸することでイオン伝導性を向上させることができる。また、後者はランダムに隙間が開いた構造になるため、デントライトが発生した場合、その直線的な成長を妨げることでショートを防ぐ効果を高めることもできる。ホットメルトの際の加熱融着方法は、熱風やホットプレート、オーブン、赤外線、超音波融着等各種公知の方法を用いることができ、加熱時にプレスすることで保護剤層の密度を高めることもできる。また、冷却は自然冷却の他、冷却ガス、放熱板への押し付け等各種公知の方法を用いることができる。また、結着剤が溶融する温度まで加熱する場合は、結着剤が溶融する温度で、0.1〜1000秒加熱することができる。
【0121】
上記の工程を含む形成方法により、各組成物に対応した層を有する電極、セパレーター、集電体が得られる。すなわち、耐熱コート層用組成物を使用した場合は、耐熱コート層が形成され、活物質層用組成物を使用した場合は、活物質層が形成され、集電体表面処理用組成物を使用した場合は、表面処理層が形成される。耐熱コート層や表面処理層については、その少なくとも一部が、電極、セパレーター及び集電体が多孔質体の場合、内部入り込んで形成されていてもよい。これらの層の空隙率は、10%以上であり、15〜90%であるのが好ましく、より好ましくは20〜80%である。空隙率は、密度測定から算出することができる。前記孔の中に電解液が含浸することで蓄電素子といった電池の充放電特性が向上する。集電体が多孔質体である場合、耐熱コート層や表面処理層が多孔質体であることが好ましく、集電体の単位面積当たりの表面積を増やしイオン伝導性を向上させることができる。このような集電対は、電気二重層型キャパシタに好ましく適応できる。
【0122】
[電極及び/又はセパレーター及び/又は集電体]
本発明は、上記の層を有する電極、セパレーター又は集電体に関する。電極、セパレーター又は集電体が設けられる非水系蓄電素子は、特に制限されることなく、公知の各種電池(一次電池であっても、二次電池であってもよい。たとえば、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池。カルシウムイオン電池、マグネシウムイオン電池等)、キャパシタ(電機二重層型キャパシタ等)が挙げられる。よって、電極としては、特に制限されることなく、公知の各種電池、キャパシタの正極又は負極を例示できる。これらの少なくとも一面に組成物を塗布又は含浸させ、溶媒を蒸発させることによりコート層を形成することができる。正極又は負極のいずれか一方、あるいは両方に、組成物を適用することができる。セパレーターとしては、ポリプロピレンやポリエチレン製の多孔質材料やセルロース製やポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル製の不織布等を例示でき、これらの両面又は片面に塗布又は含浸させ、溶媒を蒸発させることによりコート層を形成することができる。本発明のコート層は、対向するセパレーターや電極に密着させた状態で用いることができ、溶媒が蒸散しないうちにセパレーターと電極とを密着させてから乾燥させたり、電池組み立て後にホットプレスを行ったりすることでこれら部材を密着させることもできる。
【0123】
[電池]
本発明は、本発明の結着剤を含む組成物を用いて形成したコート層をその表面に有する電極及び/又はセパレーター及び/又は集電体を含む非水系蓄電素子に関する。また、本発明は、本発明の結着剤を含む組成物を用いて形成した活物質層を有する電極を含む非水系蓄電素子に関する。非水系蓄電素子の製造は、公知の方法によって行うことができる。また、非水系蓄電素子は電解液をコート層に含浸させてイオン伝導性を付与したり、コート層自体にイオン伝導性を持たせ固体電解質膜として電池に組み込みこんだりすることもできる。
【実施例】
【0124】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。部、%の表示は、断りが無い場合は質量部又は質量%である。
【0125】
[重合体の作製]
[実施例1]
(ブチルビニルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、ブチルビニルエーテル(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤としてAIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでビニル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/ブチルビニルエーテル)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0126】
(ブチルビニルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の加水分解)
攪拌機、窒素風船を備えた500mlの三ツ口フラスコを用意し、ポリ(酢酸ビニル/ブチルビニルエーテル)共重合体メタノール溶液を入れた。3ツ口フラスコ内に純度99.99%の窒素ガスを30分吹き込み、三ツ口フラスコ系内を窒素雰囲気にした。そこに28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(和光純薬製)を10質量部加え、室温で12h攪拌した。反応進行はFT−IRでアセチル基(1730cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後、イオン交換水を100ml加えて均一に攪拌した。
その後、予めイオン交換水で十分に洗浄したイオン交換樹脂(製品名:SK−1BH、三菱樹脂製)30mlとイオン交換樹脂(製品名:SA-10AOH、三菱樹脂製)60mlを加え、室温で2時間攪拌した。
その後、ナイロンメッシュ(製品名:ナイロンメッシュ200、東京スクリーン製)を用いてイオン交換樹脂を取り除き、ろ液を500mlナスフラスコに移し変え、ロータリーエバポレーターで溶媒のメタノールとイオン交換水を減圧留去することにより、目的物であるポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)の共重合体を得た。共重合体のビニルアルコール単位数とブチルビニルエーテル単位数の比率は、10:1であり、数平均分子量は50000であった。
【0127】
[実施例2]
(ブチルアリルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、ブチルアリルエーテル(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤としてAIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでアリル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/ブチルアリルエーテル)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0128】
(ブチルアリルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の加水分解)
実施例1のブチルビニルエーテルを出発物質とした重合体の加水分解と同様にして反応を行うことにより、目的物であるポリ(ビニルアルコール/ブチルアリルエーテル)の共重合体を得た。共重合体のビニルアルコール単位とブチルアリルエーテル単位の比率は、10:1であり、数平均分子量は50000であった。
【0129】
[実施例3]
(2−エチルヘキシルビニルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、2−エチルヘキシルビニルエーテル(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤としてAIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでビニル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/2−エチルヘキシルビニルエーテル)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0130】
(2−エチルヘキシルビニルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の加水分解)
実施例1のブチルビニルエーテルを出発物質とした重合体の加水分解と同様にして反応を行うことにより、目的物であるポリ(ビニルアルコール/2−エチルヘキシルビニルエーテル)の共重合体を得た。共重合体のビニルアルコール単位と2−エチルヘキシルビニルエーテル単位の比率は、10:1であり、数平均分子量は40000であった。
【0131】
[実施例4]
(1−ヘキセンを出発物質としたアルキル基含有重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、1−ヘキセン(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤としてAIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでアルケン基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/ヘキセン)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0132】
(1−ヘキセンを出発物質としたアルキル基含有重合体の加水分解)
実施例1のブチルビニルエーテルを出発物質とした重合体の加水分解と同様にして反応を行うことにより、目的物であるポリ(ビニルアルコール/ヘキセン)の共重合体を得た。共重合体のビニルアルコール単位とヘキセン単位の比率は、10:1であり、数平均分子量は40000であった。
【0133】
[実施例5]
(シクロヘキシルビニルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、シクロヘキシルビニルエーテル(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤としてAIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでビニル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/シクロヘキシルビニルエーテル)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0134】
(シクロヘキシルビニルエーテルを出発物質としたオキシアルキル基含有重合体の加水分解)
実施例1のブチルビニルエーテルを出発物質とした重合体の加水分解と同様にして反応を行うことにより、目的物であるポリ(ビニルアルコール/シクロヘキシルビニルエーテル)の共重合体を得た。共重合体のビニルアルコール単位とシクロヘキシルビニルエーテル単位の比率は、10:1であり、数平均分子量は40000であった。
【0135】
[実施例6]
(エチルビニルスルフィドを出発物質としたチオアルキル基含有重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして、酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、エチルビニルスルフィド(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤として、AIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでビニル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/エチルビニルスルフィド)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0136】
(エチルビニルスルフィドを出発物質としたチオアルキル基含有重合体の加水分解)
実施例1のブチルビニルエーテルを出発物質とした重合体の加水分解と同様にして反応を行うことにより、目的物であるポリ(ビニルアルコール/エチルビニルスルフィド)の共重合体を得た。共重合体のビニルアルコール単位とエチルビニルスルフィド単位の比率は、10:1であり、数平均分子量は50000であった。
【0137】
[参考例7]
(n−ブチルアクリレートを出発物質とした重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして、酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、n−ブチルアクリレート(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤として、AIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでビニル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/n−ブチルアクリレート)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0138】
(n−ブチルアクリレートを出発物質とした重合体の加水分解)
実施例1の溶液重合による重合体の加水分解と同様にして反応を行ったが、酢酸ビニル単位のアセチル基が脱離するとともに、n−ブチルアクリレート単位のn−ブチル基も脱離し、目的とするポリ(ビニルアルコール/n−ブチルアクリレート)を得ることができなかった。
【0139】
[参考例8]
(N−n−ブチルアクリルアミドを出発物質とした重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、共重合体のモノマーとして、酢酸ビニル(関東化学製)10質量部、N−n−ブチルアクリルアミド(東京化成製)1質量部、熱ラジカル開始剤として、AIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでビニル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ(酢酸ビニル/N−n−ブチルアクリルアミド)の共重合体メタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0140】
(N−n−ブチルアクリルアミドを出発物質とした重合体の加水分解)
実施例1の溶液重合による重合体の加水分解と同様にして反応を行ったが、酢酸ビニル単位のアセチル基が脱離するとともに、n−ブチルアクリルアミド単位のn−ブチル基が一部脱離し、目的とするポリ(ビニルアルコール/n−ブチルアクリルアミド)を得ることができなかった。
【0141】
[比較例1]
(酢酸ビニルを出発物質とした重合体の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた500mlのガラス製三ツ口フラスコを用意し、酢酸ビニル(関東化学製)11質量部、熱ラジカル開始剤として、AIBN(試薬名:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬製)0.01質量部、溶媒としてメタノール1.3mlを三ツ口フラスコにいれ、室温で10分攪拌することにより均一に混合した。その後、70℃で2時間加熱攪拌した。反応進行はFT−IRでビニル基(1400cm−1)を追跡することによって確認した。反応終了後冷却し、メタノールを100ml加えて反応物を溶解することにより、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。この溶液はそのまま次の反応に用いた。
【0142】
(酢酸ビニルを出発物質とした重合体の加水分解)
実施例1のブチルビニルエーテルを出発物質とした重合体の加水分解と同様にして反応を行うことにより、目的物であるポリビニルアルコールを得た。
【0143】
[耐熱コート層用組成物の作製]
実施例9〜14、参考例15〜17、比較例2〜3では、重合体を含有した耐熱コート層用組成物の作製方法について示す。
【0144】
[実施例9]
100Lポリプロピレン製タンクにイオン交換水10Lとアルミナ粒子10kgを加え、12時間攪拌して50%分散液を作製した。分散液を目開き20μmのナイロンメッシュでフィルタリングし、工程で抜けた水を加えてアルミナ粒子(平均粒子径0.5μm)を50%含む分散液を作製した。
【0145】
前記分散液50kgに水を20kg加え、ここに実施例1で作製した、ポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)を200g加え6時間攪拌して溶解させて、組成物1を得た。なお、組成物において、溶媒を除いた成分のうちアルミナの含有量は、96.1質量%であった。
【0146】
[実施例10〜14]
ポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)200gの代わりに、表1に示す重合体200gを使用した他は、実施例9と同様にして、実施例10〜14として組成物2〜6を得た。組成物において、溶媒を除いた成分のうちアルミナの含有量は、いずれも96.1質量%であった。
【0147】
[参考例15〜16]
ポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)200gの代わりに、表1に示す重合体200gを使用した他は、実施例9と同様にして、組成物を調製しようとしたが、重合体が溶液内で凝集し、一部がダマとなったため、組成物を調製できなかった。
【0148】
[参考例17]
(アルミナスラリー9の作製)
実施例9と同様にして、アルミナ粒子(平均粒子径0.5μm)を50%含む分散液を作製した。
【0149】
(組成物9の配合)
前記分散液50kgに水を20kg加え、ここに参考例7で得られた、ポリ(ビニルアルコール/ブチルアクリル酸)を200g加え6時間攪拌したところ、凝集が生じ、一部がダマとなったため、組成物を調製できなかった。
【0150】
[比較例2]
ポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)200gの代わりに、表1に示す重合体200gを使用した他は、実施例9と同様にして、比較例2として組成物10を得た。
【0151】
[比較例3]
100Lポリプロピレン製タンクにN−メチルピロリドン10Lとアルミナ粒子(平均粒子径0.5μm)10kgを加え、12時間攪拌して50%分散液を作製した。分散液を目開き20μmのナイロンメッシュでフィルタリングし、工程で抜けたN−メチルピロリドンを加えてアルミナ粒子を50%含む分散液を作製した。
【0152】
前記分散液50kgにN−メチルピロリドンを20kg加え、ここに、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製)を200g加え6時間攪拌して溶解させて、比較例3として、組成物11を得た。なお、組成物において、溶媒を除いた成分のうちアルミナの含有量は、96.1質量%であった。
【0153】
【表1】
【0154】
次に、組成物1〜6、10及び11を用いた、リチウムイオン二次電池を製造する方法を説明する。
【0155】
[リチウム二次電池の作製(負極にコート層を形成)]
実施例18〜23と、比較例4〜5は、組成物を用いて負極にコート層を形成し、この負極と正極とセパレーターを用いたリチウムイオン二次電池である。
【0156】
[実施例18]
(正極の製造)
冷却ジャケット付きの10Lプラネタリーミキサーに、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)の15%NMP溶液(株式会社クレハ製;クレハKFポリマー#1120)520部、コバルト酸リチウム(略称=LCO)(日本化学工業株式会社製;セルシードC-5H)1140部、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製;デンカブラックHS-100)120部、NMP5400部を加え液温が30℃を超えないように冷却しながら均一になるまで攪拌した(活物質層用組成物1)。これを、圧延アルミ集電体(日本製箔株式会社製;幅300mm、厚さ20μm)に幅180mm、厚さ200μmで塗工し、130℃温風炉で30秒乾燥させた。これを線圧530kgf/cmでロールプレスした。プレス後の正極活物質層の厚みは22μmであった。
【0157】
(負極の製造)
冷却ジャケットつきの10Lプラネタリーミキサーに、PVdFの15%NMP溶液(株式会社クレハ製;クレハKFポリマー#9130)530部、グラファイト(日本黒鉛株式会社製;GR-15)1180部、NMP4100部を加え液温が30℃を超えないように冷却しながら均一になるまで攪拌した。これを、圧延銅箔集電体(日本製箔株式会社製;幅300mm、厚さ20μm)に幅180mm、厚さ200μmで塗工し、100℃温風炉で2分間乾燥させた。これを線圧360kgf/cmでロールプレスした。プレス後の負極活物質層の厚みは28μmであった。
【0158】
(コート層を有する負極の製造)
前記負極に前記組成物1を乾燥厚みが5μmになるようにグラビアコーターを用いて塗工し、100℃×60秒加熱し、電池電極又は微多孔膜セパレーターコート層の厚みが5μmである、コート層を有する負極を製造した。
【0159】
(リチウムイオン二次電池の製造)
正極及びコート層を有する負極を短辺に10mmの幅で両端に活物質層が塗工されていない領域が含まれるように40mm×50mmでカットし、金属がむき出しになっている部分に正極はアルミのタブを、負極にニッケルのタブを抵抗溶接で接合した。微多孔膜セパレーター(セルガード株式会社製;#2400)を幅45mm、長さ120mmにカットし、3つに折り返してその間に正極及び負極が対向するように挟み込み、これを幅50mm長さ100mmのアルミラミネートセルを二つ折りにしたもので挟み、タブが当タール部分にシーラントを挟み込んだ上でシーラント部分とそれに直行する辺を熱ラミネートして袋状にした。これを100℃の真空オーブンに24時間入れて真空乾燥させ、次いでドライブロ−ブボックス中で6フッ化リン酸リチウム/(EC:DEC=1:1、容量比)1M電解液(キシダ化学株式会社製;LBG-96533)を注入し、真空含浸した後、余った電解液を扱き出し、真空シーラーで接合密封して、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0160】
[実施例19〜23、比較例4〜5]
組成物1の代わりに、表2に示す組成物を使用した他は、実施例18と同様にして、実施例19〜23、比較例4〜5として、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0161】
[リチウム二次電池の作製(正極にコート層を形成)]
実施例24〜29、比較例6〜7では、組成物を用いて正極にコート層を形成し、この正極と負極とセパレーターを用いたリチウムイオン二次電池の作製方法を示す。
【0162】
[実施例24]
(負極の製造)
実施例18の方法で負極(コート層を有しない)を作製した。
【0163】
(コート層を有する正極の製造)
実施例18の方法で正極を作製し、次いで、実施例18で負極にコート層を形成したのと同様の方法で、組成物1を用いてコート層を有する正極を製造した。
【0164】
(リチウムイオン二次電池の製造)
正極としてコート層を有する正極を用い、負極としてコート層を有しない負極を用いた他は、実施例18と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0165】
[実施例25〜29、比較例6〜7]
組成物1の代わりに、表2に示す組成物を使用した他は、実施例24と同様にして、実施例25〜29、比較例6〜7として、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0166】
[リチウム二次電池の作製(セパレータにコート層を形成)]
実施例30〜35、比較例8〜9では、組成物を用いてセパレーターにコート層を形成し、このセパレーターと正極と負極を用いたリチウムイオン二次電池を製造する方法を説明する。
【0167】
[実施例30]
(負極及び正極の製造)
実施例18の方法で負極(コート層を有しない)及び正極(コート層を有しない)を作製した。
【0168】
(コート層を有するセパレーターの製造)
微多孔膜セパレーター(セルガード株式会社製;#2400)に組成物1を乾燥厚みが5μmになるようにグラビアコーターを用いて塗工し、60℃×60秒加熱し、コート層の厚みが2μmである、コート層を有するセパレーターを製造した。
【0169】
(リチウムイオン二次電池の製造)
微多孔膜セパレーターとしてコート層を有する微多孔膜セパレーターを用い、負極としてコート層を有しない負極を用いた他は、実施例18と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0170】
[実施例31〜35、比較例8〜9]
組成物1の代わりに、表2に示す組成物を使用した他は、実施例30と同様にして、実施例31〜35、比較例8〜9として、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0171】
[リチウム二次電池の作製(負極にコート層を形成)/実施例36及び比較例10]
実施例36及び比較例10は、組成物を用いて負極にコート層を形成し、この負極と正極とセパレーターを用いたリチウムイオン二次電池である。表2に示す組成物を使用し、多孔質膜セパレーターの代わりに、不織布セパレーターを使用した他は、実施例18と同様にして、実施例36及び比較例10として、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0172】
[リチウム二次電池の作製(正極にコート層を形成)/実施例37及び比較例11]
実施例37及び比較例11は、組成物を用いて正極にコート層を形成し、この正極と負極とセパレーターを用いたリチウムイオン二次電池である。表2に示す組成物を使用し、多孔質膜セパレーターの代わりに、不織布セパレーターを使用した他は、実施例24と同様にして、実施例37及び比較例11として、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0173】
[リチウム二次電池の作製(セパレーターにコート層を形成)/実施例38及び比較例12]
実施例38及び比較例12は、組成物を用いてセパレーターにコート層を形成し、このセパレーターと正極と負極を用いたリチウムイオン二次電池である。表2に示す組成物を使用し、多孔質膜セパレーターの代わりに、不織布セパレーターを使用した他は、実施例30と同様にして、実施例38及び比較例12として、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0174】
[比較例13]
負極としてコート層を有しない負極を用いた他は、実施例18と同様にして、比較例13として、リチウムイオン二次電池を製造した。比較例13は、組成物を使用せず、正極・負極・微多孔膜セパレーターのいずれもコート層を有しないリチウムイオン二次電池の例である。
【0175】
[比較例14]
セパレーターとして微多孔膜セパレーターの代わりに不織布セパレーターを用いた他は、比較例13と同様にして、比較例14として、リチウムイオン二次電池を製造した。比較例14は、組成物を使用せず、正極・負極・不織布セパレーターのいずれもコート層を有しないリチウムイオン二次電池の例である。
【0176】
[リチウム二次電池の作製(結着剤を用いて正極活物質層を形成)/実施例39]
[実施例39]
正極活物質のバインダーであるPVdFの15%NMP溶液(株式会社クレハ製;クレハKFポリマー#1120)520部の代わりに実施例1のポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)の共重合体78部を用いて活物質層用組成物2を作製したこと以外は比較例13と同様に作製したリチウムイオン二次電池の例である。
【0177】
[リチウム二次電池の作製(結着剤を用いて集電体上を表面処理)/実施例40、比較例15]
[実施例40]
10Lポリプロピレン製タンクにイオン交換水1Lをいれ、攪拌しながら実施例1のポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)の共重合体50gを加え12時間攪拌して溶解させた。そこに、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製;デンカブラックHS-100)65gを加えさらに12時間攪拌し集電体表面処理用組成物1を作製した。この導電性組成物1をアルミニウム集電体箔に乾燥後厚み0.5μmになるように塗工し120℃×10分乾燥させた。この集電体を用いたこと以外は比較例13と同様に作製したリチウムイオン二次電池の例である。
【0178】
[比較例15]
実施例40のポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)の共重合体の変わりに比較例4のポリビニルアルコールを用いて集電体表面処理用組成物2を作製したこと以外は同様に作製したリチウムイオン二次電池の例である。
【0179】
[リチウム二次電池の作製(セパレータにコート層を形成)/実施例41、42、比較例16]
[実施例41]
100Lポリプロピレン製タンクにイオン交換水10Lに加えてシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM−403)を0.1kg加え10分攪拌してからアルミナを加えたこと以外は、実施例9の組成物1と同様にして、組成物12を得た。組成物12を用いたこと以外は実施例30と同様に作製したリチウムイオン二次電池の例である。
【0180】
[実施例42]
100Lポリプロピレン製タンクにイオン交換水10Lとシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM403)を0.1kg加え、次いでアルミナ粒子10kgを加え、12時間攪拌して50%分散液を作製した後、150℃オーブンにて24時間加熱乾燥させ、次いで得られた乾燥物を攪拌ライカイ機(株式会社石川工場製、第6R号B型)で12時間攪拌して表面処理アルミナを得た。この表面処理アルミナをアルミナ粒子として用いたこと以外は、実施例9の組成物1と同様にして、組成物13を得た。組成物13を用いたこと以外は実施例30と同様に作製したリチウムイオン二次電池の例である。
【0181】
[比較例16]
実施例35のポリ(ビニルアルコール/ブチルビニルエーテル)の共重合体の変わりにアクリル系共重合体(大同化成工業株式会社製、POVACOAT TypeF)を用いて、組成物14を作製したこと以外は、実施例30と同様に作製したリチウムイオン二次電池の例である。
【0182】
実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池について、下記の特性を測定した。
【0183】
(初期容量測定)
初期容量を出すために0.01mAの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、次いで4.2Vの定電圧で2時間充電した。その後、0.01mAの定電流で電圧が3.5Vになるまで放電した。これを3回繰り返し、3回目の放電容量を初期容量とした。
【0184】
(レート特性)
初期容量から放電レートを求めて、放電レート別の放電容量を測定した。充電は毎回10時間かけて定電流で4.2Vまで電圧を上げた後、4.2V定電圧で2時間充電した。その後、10時間かけて定電流で3.5Vになるまで放電し、このときの放電容量を0.1Cの放電容量とした。次に同様に充電した後0.1Cで求めた放電容量から1時間で放電が完了する電流値で放電しそのときの放電容量を求め1Cのときの放電容量とした。同様に3C、5C、10Cのときの放電用量を求め、0.1Cの時の放電容量を100%としたときの容量維持率を算出した。
【0185】
(サイクル寿命)
1Cで4.2Vまで充電し、4.2Vの定電圧で2時間充電したあと1Cで3.5Vまで放電する充電及び放電試験を実施した。このとき、放電容量が最初の1回目の放電に対して500サイクル後に何%になるかを計算した。
【0186】
(剥離性)
試験法は、試験後の電池を分解して内部の様子を確認した。評価基準は以下の通りであった。
◎:全く脱離は見られない
○:一部脱離は見られるが、集電体(セパレーター塗工の場合はセパレーター)はむき出しになっていない。
△:脱離が進行し、集電体(セパレーター塗工の場合はセパレーター)の一部がむき出しになっている
×:集電体が接触しショートしている状態
【0187】
(含水率)
試験法は、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に各組成物を乾燥後の膜厚が50μmになるようにキャストし、これを60℃×1h乾燥させた後、一片10mmに切り出し、この試験片20個の含水率を求めた。含水率は、加熱気化させた水分を電量式のカールフィッシャーで測定した。加熱条件は、150℃×10分で、カールフィッシャーは三菱アナリテック製CA−200型を用いた。表中の実施例18〜38、実施例41〜42と比較例4〜12及び15〜16に記載された含水率は、組成物1〜6、10〜14について、上記の方法により測定した含水率に相当する。実施例39に記載された含水率は、活物質層用組成物2を用いた場合の含水率に相当する。実施例40と比較例15は、それぞれ集電体表面処理用組成物1及び2を用いた場合の含水率に相当する。なお、比較例13〜14に記載された含水率は、活物質層用組成物1(正極活物質層の作製に使用。実施例18参照)を用いた場合の含水率に相当する。
【0188】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明によれば、電極、セパレーター、集電体といった基材に対する密着性を向上させつつ、含水率が低く、非水系蓄電素子の高速充放電特性を低下させない層を形成することができる結着剤が提供されるため、産業上の有用性が高い。
【符号の説明】
【0190】
1 コート層
2 活物質層
3 集電体
4 コート層
5 セパレーター
図1
図2