(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6417616
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】ディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/10 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
C03C27/10 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-529718(P2016-529718)
(86)(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公表番号】特表2016-530195(P2016-530195A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】KR2014006858
(87)【国際公開番号】WO2015012658
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0088785
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502411241
【氏名又は名称】コーニング精密素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】Corning Precision Materials Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】コン、 ボ キョン
(72)【発明者】
【氏名】リム、 チャン ムク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ウン ヒ
【審査官】
増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−326358(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0051192(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0102065(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0105203(US,A1)
【文献】
特開2011−048374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00 − 27/12
G02F 1/13 − 1/141
H05B 33/02 − 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超薄板ガラスと前記超薄板ガラスを支持するキャリアガラスとを、相転移物質を介して接合する接合ステップと、
前記超薄板ガラスの表面に対して表面処理を施す表面処理ステップと、及び
前記キャリアガラスから前記超薄板ガラスを分離する分離ステップと、
を含み、
前記相転移物質は電気伝導性を有するものであり、
前記相転移物質としては、ドーパントがドープされたITOを用い、
前記相転移物質としては、Ga2O3が0.5〜7wt%ドープされたITOを用い、
前記接合ステップでは、前記相転移物質のみを前記超薄板ガラスまたはキャリアガラスのいずれかの接合面にコートし、
前記表面処理ステップは、前記相転移物質の相転移温度以上の温度で熱処理する工程を伴うことを特徴とするディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【請求項2】
前記ドーパントは、Ga、Zn、Ce、Mg、Zr、及びNbを含む物質群から選ばれたいずれか一種または二種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【請求項3】
前記相転移物質としては、Ga2O3が2.9wt%ドープされたITOを用いることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【請求項4】
前記超薄板ガラスと前記キャリアガラスとの間に前記相転移物質を100nm以下の厚さで形成することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【請求項5】
前記超薄板ガラスと前記キャリアガラスとの間に前記相転移物質を30〜50nmの厚さで形成することを特徴とする請求項4に記載のディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【請求項6】
前記分離ステップでは、前記キャリアガラスに接合されている前記相転移物質の一方の面と前記超薄板ガラスに接合されている前記相転移物質の他方の面とのうちの、表面粗さが相対的に大きい前記相転移物質の他方の面から前記超薄板ガラスを分離することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【請求項7】
前記分離ステップでは、前記キャリアガラスに接合されている前記相転移物質の一方の面と前記超薄板ガラスに接合されている前記相転移物質の他方の面とのうちの、表面粗さが相対的に大きい前記相転移物質の一方の面から前記キャリアガラスを分離することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【請求項8】
前記超薄板ガラスとしては、厚さ0.3mm以下のガラスを使用することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法に係り、より詳しくは、ディスプレイパネルへの適用のための表面処理工程の前後においてこれを支持するキャリアガラスとの脱着を容易に行えるディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイ産業の最大の話題の一つは薄型化である。その一環として、例えば、LCD工程ではLCDモジュールの厚さを最小化するために、基板ガラスとして厚さ0.3mm以下の超薄板ガラスを使用している。
【0003】
従来は、厚さ0.5mmのガラスをエッチング処理して、前記のような厚さ0.1mmの超薄板ガラスを作製していた。しかし、このような従来の方法ではコスト面での負担が相当に大きいため、別の改善案が求められていた。
【0004】
近年、超薄板ガラスが開発され、それに伴い、それを活用できる種々の方法が講じられてきている。例えば、従来では、キャリアガラスに超薄板ガラスを貼り付けた後、ディスプレイパネルへの適用のために該超薄板ガラスを表面処理し、次いで、表面処理済みの超薄板ガラスをキャリアガラスから分離していた。しかし、超薄板ガラスはフレキシブルなものであるため、工程途中やキャリアガラスからの分離時にスクラッチや反り、あるいは割れなどが頻繁に生じるという問題、すなわち、その取り扱いに困難があった。
【0005】
つまり、従来の方法では超薄板ガラスをハンドリングする上で相当な困難があり、それにより、不良の発生率が増加し、これは結局、製造コストの増大につながっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0590724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ディスプレイパネルへの適用のための表面処理工程の前後においてこれを支持するキャリアガラスとの脱着を容易に行えるディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、超薄板ガラスと前記超薄板ガラスを支持するキャリアガラスとを、相転移物質を介して接合する接合ステップと、前記超薄板ガラスの表面に対して表面処理を施す表面処理ステップ、及び前記キャリアガラスから前記超薄板ガラスを分離する分離ステップと、を含むことを特徴とするディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を提供する。
【0009】
ここで、前記相転移物質は電気伝導性を有するものであってよい。
【0010】
このとき、前記相転移物質としては、ドーパントがドープされたITOを用いていてよい。
【0011】
また、前記ドーパントは、Ga、Zn、Ce、Mg、Zr、及びNbを含む物質群から選ばれたいずれか一種または二種以上の組み合わせであってよい。
【0012】
そして、前記相転移物質としては、Ga
2O
3が0.5〜7wt%ドープされたITOを用いていてよい。
【0013】
好ましくは、前記相転移物質としては、Ga
2O
3が2.9wt%ドープされたITOを用いていてよい。
【0014】
そして、前記超薄板ガラスと前記キャリアガラスとの間に前記相転移物質を100nm以下の厚さで形成していてよい。
【0015】
このとき、前記超薄板ガラスと前記キャリアガラスとの間に前記相転移物質を30〜50nmの厚さで形成していてよい。
【0016】
さらには、前記接合ステップでは、前記相転移物質を前記キャリアガラスの接合面にコートしていてよい。
【0017】
このとき、前記分離ステップでは、前記キャリアガラスに接合されている前記相転移物質の一方の面と前記超薄板ガラスに接合されている前記相転移物質の他方の面とのうちの、表面粗さが相対的に大きい前記相転移物質の他方の面から前記超薄板ガラスを分離していてよい。
【0018】
また、前記接合ステップでは、前記相転移物質を前記超薄板ガラスの接合面にコートしていてよい。
【0019】
このとき、前記分離ステップでは、前記キャリアガラスに接合されている前記相転移物質の一方の面と前記超薄板ガラスに接合されている前記相転移物質の他方の面とのうちの、表面粗さが相対的に大きい前記相転移物質の一方の面から前記キャリアガラスを分離していてよい。
【0020】
さらに、前記表面処理ステップは、前記相転移物質の相転移温度以上の温度で熱処理する工程を伴うものであってよい。
【0021】
また、前記超薄板ガラスとしては、厚さ0.3mm以下のガラスを使用していてよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ディスプレイパネルへの適用のための超薄板ガラスの表面処理工程の際、超薄板ガラスのハンドリングのために、超薄板ガラスにキャリアガラスを接合する場合、相転移物質を挟んで超薄板ガラスとキャリアガラスとを接合することで、表面処理工程の最中に超薄板ガラスとキャリアガラスとの間の優れた貼合力を確保することができ、また、表面処理工程中に伴われる熱処理により相転移物質が結晶化して、超薄板ガラスに対する表面処理工程後におけるキャリアガラスからの超薄板ガラスの分離を容易に行うことができる。
【0023】
また、本発明によれば、キャリアガラスからの超薄板ガラスの分離を容易に行うことができることで、キャリアガラスの損傷を抑えることができ、その結果、分離した後のキャリアガラスを別の超薄板ガラスのハンドリングに再使用することができ、これはコストの削減にもつながる。
【0024】
さらには、本発明によれば、電気伝導性のある相転移物質を超薄板ガラスにコートした後、これにキャリアガラスを貼り合せることで、静電気防止機能を持つ超薄板ガラスをキャリアガラスから分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を工程順に示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を示す工程模式図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を示す工程模式図である。
【
図4】本発明の一実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を示す工程模式図である。
【
図5】本発明の一実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を示す工程模式図である。
【
図6】本発明の他の実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を示す工程模式図である。
【
図7】本発明の他の実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスハンドリング方法を示す工程模式図である。
【
図8】本発明の他の実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を示す工程模式図である。
【
図9】本発明の他の実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法を示す工程模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法について詳述する。
【0027】
なお、本発明を説明するにあたって、関連公知機能あるいは構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にし得ると判断された場合、その詳細な説明は省略することにする。
【0028】
図1に示すように、本発明の実施例に係るディスプレイパネル用超薄板ガラスのハンドリング方法は、超薄板ガラス110をディスプレイパネル、例えば、LCDパネルにおける互いに向き合う上・下部基板として使用するために、その表面に対して表面処理を施す過程で、表面にスクラッチが発生したり、反り或いは割れ現象が発生したりすることを防止することができるハンドリング方法であって、接合ステップ(S1)、表面処理ステップ(S2)、及び分離ステップ(S3)を含む。
【0029】
先ず、
図2及び
図3に示すように、接合ステップ(S1)は、超薄板ガラス110と該超薄板ガラス110を支持するキャリアガラス120とを接合するステップである。ここで、LCDパネルの基板ガラスとして使用する超薄板ガラス110としては、厚さ0.3mm以下の珪酸塩ガラス、シリカガラス、硼珪酸ガラス、無アルカリガラスなどを使用していてよい。また、キャリアガラス120としては、超薄板ガラス110と同じガラスを使用していてよい。このとき、キャリアガラス120は、超薄板ガラス110に対する表面処理を施す際にこれを支持する役割をするものであるため、工程途中の安定した支持のために、超薄板ガラス110よりは相対的に厚めのガラスをキャリアガラス120として使用することが好ましい。
【0030】
一方、本発明の実施例に係る接合ステップ(S1)では、相転移物質130を介して超薄板ガラス110とキャリアガラス120とを接合する。ここで、本発明の実施例では、電気伝導性を持つ相転移物質130を用いていてよい。例えば、相転移物質130としては、ドーパントがドープされたITO(indium tin oxide)を用いていてよい。このとき、ドーパントは、Ga、Zn、Ce、Mg、Zr、及びNbを含む物質群から選ばれたいずれか一種または二種以上の組み合わせであってよい。一例として、Ga
2O
3が0.5〜7wt%、好ましくは、2.9wt%添加された相転移ITOを相転移物質130として用いていてよい。
【0031】
このように、相転移物質130は、その成膜厚さが数十nmであっても相転移温度の以下では非晶質状態を保つことから、両側の超薄板ガラス110とキャリアガラス120とに貼り付きやすい特性を持つ。また、このような相転移物質130は、後続の表面処理ステップ(S2)の際に伴われる熱処理工程により結晶化すると、逆に両側の超薄板ガラス110とキャリアガラス120とから剥離されやすくなる特性を持つ。
【0032】
このような相転移物質130の特性により、後続工程で行われる超薄板ガラス110の表面に対する表面処理ステップ(S2)の前では、これを安定して支持するためのキャリアガラス120との貼り合わせの際に優れた貼合力を確保することができ、また、表面処理ステップ(S2)の途中では、超薄板ガラス110がキャリアガラス120から脱離して損傷されることを防止することができ、さらに、表面処理ステップ(S2)の後では、キャリアガラス120からの超薄板ガラス110の分離を容易に行うことができる。
【0033】
本発明の実施例では、このような相転移物質130を超薄板ガラス110とキャリアガラス120との間に100nm以下の厚さ、好ましくは30〜50nmの厚さで形成していてよい。
【0034】
図2に示すように、本発明の一実施例では、超薄板ガラス110とキャリアガラス120との貼り合わせの前に、相転移物質130をキャリアガラス120の表面、すなわち、超薄板ガラス110と接合されるキャリアガラス120の接合面にコートしていてよい。本発明の一実施例では、スパッタリング、蒸着、CVD、及びゾルゲル法などのようなコーティング方法にて相転移物質130をキャリアガラス120の接合面にコートしていてよい。
【0035】
次いで、
図3に示すように、接合ステップ(S1)を行うと、相転移物質130を介して超薄板ガラス110とキャリアガラス120との積層体が作製される。このような積層構造は、後続工程として施される表面処理ステップ(S2)が完了するまでの一時的な構造である。
【0036】
次いで、表面処理ステップ(S2)は、超薄板ガラス110の表面に対して表面処理を施すステップである。表面処理ステップ(S2)は、超薄板ガラス110が例えば、LCDパネルにおける基板ガラスとして使用されることから、その光学的特性を向上させるための工程である。このような表面処理ステップ(S2)は、エッチング工程及び洗浄工程を含んでいてよい。ここで、接合ステップ(S1)により、超薄板ガラス110が相転移物質130を介してキャリアガラス120に安定して支持されることから、超薄板ガラス110に対する表面処理の途中で超薄板ガラス110がキャリアガラス120から離脱することを防止し、安定して超薄板ガラス110に対する表面処理を施すことができる。
【0037】
ここで、このような表面処理ステップ(S2)は、相転移物質130の相転移温度以上の温度での熱処理工程を伴う。通常、超薄板ガラス110に対する表面処理の際に伴われる熱処理温度は約370℃である。このとき、相転移物質130としてGaがドープされたITOが用いられた場合、ITOの結晶化温度が200〜220℃であるため、表面処理ステップ(S2)の実施に伴い、相転移物質130が非晶質状態に結晶化する相転移が生じるようになる。
【0039】
前記表1は、超薄板ガラス110に対する表面処理の際に伴われる熱処理による相転移物質130の成膜厚さごとに貼合力をテストした結果を表すものであって、相転移物質130の成膜厚さが薄いほど熱処理前の貼合力に優れていることが確認された。ところが、こうした相転移物質130の特性は、熱処理後でもそのまま保たれることが確認された。すなわち、相転移物質130の厚さが10nm、20nmである場合は、熱処理の後の貼合力が3N以上に増大して永久接合状態となり、これは、熱処理の後では相転移物質130の結晶化を用いた超薄板ガラス110とキャリアガラス120との分離が不可能であることを意味する。ここで、表1の「破損」とは、相転移物質130の貼合力が大きすぎて、テストの際に力を加え続けたとき、超薄板ガラス110とキャリアガラス120とが分離することなく、終局は破損されてしまったことを意味する。
【0040】
これに対し、相転移物質130の成膜厚さが30nmである場合、熱処理の前よりも熱処理の後の貼合力が増大したが、熱処理の後の貼合力が1.25Nと測定されたということは、超薄板ガラス110とキャリアガラス120とが破損に至ることなく、分離されたということを意味する。
【0041】
図4に示すように、最初の非晶質状態の相転移物質130が相転移して結晶質状態になると、コーティングの際にキャリアガラス120と接合されている一方の面とは反対側の他方の面、すなわち、超薄板ガラス110と接合されている面の表面粗さが増大する。言い換えれば、相転移物質130が結晶化すると、最初の相転移物質130がコートされたキャリアガラス120側の相転移物質130の表面状態には変化がなく、キャリアガラス120との優れた貼合力は保ち続けられ、また、キャリアガラス120にコートされている相転移物質130上に貼り付けられた超薄板ガラス110側の相転移物質130の表面はその粗さが増大する特性を示すようになる。このように、表面粗さが増大した超薄板ガラス110側の相転移物質130の表面は、後続の分離ステップ(S3)において分離境界面として働くようになる。
【0042】
最後に、
図5に示すように、分離ステップ(S3)は、キャリアガラス120から超薄板ガラス110を分離するステップである。すなわち、分離ステップ(S3)では、表面処理が施されて光学的特性が向上した超薄板ガラス110をLCDパネルにおける基板ガラスとして適用するために、表面処理ステップ(S2)の実施時に超薄板ガラス110を安定して支持していたキャリアガラス120を超薄板ガラス110から分離する。
【0043】
具体的に、分離ステップ(S3)では、表面処理ステップ(S2)の際に伴われる熱処理によって結晶化した相転移物質130の両側の表面のうちの、表面粗さが増大した超薄板ガラス110側の表面を分離境界面として超薄板ガラス110が分離される。ここで、表面粗さが増大した相転移物質130の表面が分離境界面になる理由は、ガラスとの接触面積が相対的に小さいからである。
【0044】
このように、相転移物質130の特性を用いてキャリアガラス120からの超薄板ガラス110の分離を容易に行えるようにすると、分離過程でキャリアガラス120が損傷することを防止することができる。このように、キャリアガラス120からの超薄板ガラス110の分離過程でキャリアガラス120が損傷したりすることがないと、当該キャリアガラスを別の超薄板ガラスのハンドリングの際に再使用することができ、これはコストの削減につながるようになる。
【0045】
このように、本発明の一実施例では、相転移物質130を介して超薄板ガラス110とキャリアガラス120とを接合することで、LCDパネルにおける基板ガラスとしての適用のための超薄板ガラス110への表面処理の際に安定して超薄板ガラス110をハンドリングすることができるようになる。
【0046】
一方、
図6に示すように、本発明の他の実施例では、超薄板ガラス110とキャリアガラス120との貼り合わせの前において、相転移物質130を超薄板ガラス110の表面、すなわち、キャリアガラス120と接合される超薄板ガラス110の接合面にコートしていてよい。このような相転移物質130は、本発明の一実施例と同法にてコートすることができる。
【0047】
次いで、
図7に示すように、接合ステップ(S1)を施すと、相転移物質130を介しての超薄板ガラス110とキャリアガラス120との積層体が作製される。
【0048】
このとき、
図8に示すように、本発明の他の実施例に従って超薄板ガラス110の表面に相転移物質130をコートすると、表面処理ステップ(S2)の際に伴われる熱処理によって相転移物質130の結晶化が生じる。ここで、本発明の他の実施例は、本発明の一実施例とは異なり、キャリアガラス120側の相転移物質130の表面の粗さが増大し、このように、表面粗さが増大した相転移物質130の表面が後続の分離ステップ(S3)の際に分離境界面として働くようになる。
【0049】
すなわち、
図9に示すように、分離ステップ(S3)では、表面粗さが増大したキャリアガラス120側の相転移物質130の表面を分離境界面としてキャリアガラス120が分離される。
【0050】
この場合、同図に示すように、キャリアガラス120の分離後にも超薄板ガラス110の表面には相転移物質130が薄膜の形態で付着されている。このとき、相転移物質130は電気伝導性を持っていることから、薄膜状の相転移物質130を備える超薄板ガラス110をLCDパネルにおける基板ガラスとして適用した場合、超薄板ガラス110は静電気防止機能を実現することができるようになる。
【0051】
以上、本発明を限定された実施例や図面に基づいて説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、かかる記載から種々の修正及び変形が可能である。
【0052】
したがって、本発明の範囲は説明された実施例に局限されて決められてはならず、特許請求の範囲及びその特許請求の範囲と均等なものなどによって決められるべきである。