(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記フィルム空気供給口を備え、該フィルム空気供給口はそれぞれ、前記淀み排除ブロックの下流側端部における径方向外側の端部を含む領域、及び径方向内側の端部を含む領域に設けられている請求項2又は3に記載の燃焼器。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン等に用いられる燃焼器では、圧縮機から送られた圧縮空気(燃焼用空気)に予め燃料を混合して混合気を生成して、この混合気を燃焼させる予混合燃焼方式が広く用いられている。
この種の燃焼器としては、燃焼器の軸線上に設けられたパイロットバーナと、このパイロットバーナに平行に配置された複数の予混合バーナとを有するものが知られている。そして、パイロットバーナと予混合バーナとは、これらの径に対応する支持開孔が形成された基板に支持されることで、燃焼器の本体に対して固定されている。さらに、この基板には、予混合ノズルを径方向外側から覆うようにして配置された楕円筒状のスワラ―筒が設けられている。
このような構造の予混合バーナは、その内部で燃料と空気とを混合して予混合ガスを生成し、この予混合ガスを燃焼することでスワラ―筒の先端から下流側に延びる火炎を形成する。
【0003】
ここで、予混合燃焼方式を採用したガスタービン燃焼器では、隣り合う複数のスワラ―筒同士の間の領域で、燃焼ガスの流れに淀みを生じる可能性がある。このような領域で燃焼ガスの淀みが発生すると、燃焼筒内における燃焼ガスの濃度分布に偏りが生じる。これにより、燃焼効率の低下や、排出ガス中の窒素酸化物(NOx)の増加を招いてしまう。
【0004】
そこで、このような淀みの発生を回避するための技術として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、スワラ―筒同士の間を埋める淀み排除構造物を備えた燃焼器が記載されている。この淀み排除構造物は、基板から下流側に向かうに従って幅が小さくなるように形成された略三角柱状の部材である。この淀み排除構造物がスワラ―筒同士の間の領域を埋めることで、スワラ―筒から流れ出る燃焼ガスによる淀みが発生しにくくなるとされている。
【0005】
この淀み排除構造物は予混合ガス流路出口に相当するため火炎に近く、特に、淀み排除構造物の下流側の端部は、火炎に最も近接する部位である。このため、スワラー筒間のガスの淀みが発生した場合などに、逆火現象が生じるリスクがあり、逆火現象が発生すると、スワラー筒や予混合ノズルを焼損する恐れがある。
【0006】
このように下流側の端部で生じる焼損に対して、同じく特許文献1では、淀み排除構造物に複数の中空孔を設けることも提案している。これら複数の中空孔は、淀み排除構造物の上流側から下流側にかけて設けられている。中空孔の上流側は開口している一方で、下流側は閉塞されている。火炎に曝されて焼損が生じると、下流側の閉塞が開通し、上流側開口からの空気が当該焼損部位に供給されて、さらなる焼損を抑制するものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、焼損被害の抑制であり、焼損原因である逆火現象の積極的な回避を目指すものではない。淀み排除構造物にひとたび焼損が生じると、燃焼ガスの淀みがただちに生じることから、急激な燃焼効率の低下を招くとともに、燃焼場に乱れが生じることでNOx生成の増大を招く可能性がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、燃焼効率の低下と、NOx生成を抑制することが可能な燃焼器、及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の燃焼器、及びガスタービンは、以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る燃焼器は、軸線に沿って配置されたパイロットバーナと、予混合スワラ筒、及び、該予混合スワラ筒内に配置された予混合ノズルを有し、該パイロットバーナの周囲を囲むように、前記軸線回りの周方向に沿って複数が配置された予混合バーナと、前記パイロットバーナ及び前記予混合スワラ筒がそれぞれ挿通されてこれらを支持する基板と、該基板の下流側の面における前記予混合スワラ筒の間の領域を埋めるように設けられた淀み排除ブロックと、を備え、該淀み排除ブロックに、この淀み排除ブロックの表面にフィルム空気を形成するフィルム空気供給口が形成されている。
【0011】
上述のような構成によれば、淀み排除ブロックの表面に、フィルム空気供給口からフィルム空気を供給することができる。これにより、スワラ筒の間の領域におけるガスの淀みの発生を抑制することができるとともに、フィルム空気が淀み排除ブロックの表面を熱から保護することができる。
【0012】
さらに、本発明の一態様に係る燃焼器では、前記フィルム空気供給口は、前記基板に設けられた空気導入口と連通されることで、基板空気を前記フィルム空気供給口から噴出するように構成されていてもよい。
【0013】
上述の構成によれば、基板の上流側を流通する基板空気を、空気導入口に導いてフィルム空気供給口から噴出することができる。すなわち、基板空気をフィルム空気として活用することができる。
【0014】
さらに、本発明の一態様に係る燃焼器では、前記フィルム空気供給口は、前記淀み排除ブロックの径方向外側の面に設けられた空気導入口と連通されていてもよい。
【0015】
上述のような構成によれば、基板空気を燃焼用に供することができる一方で、外部から供給される空気をフィルム空気として空気導入口から導入することができる。
【0016】
さらに、本発明の一態様に係る燃焼器では、複数の前記フィルム空気供給口を備え、該フィルム空気供給口はそれぞれ、前記淀み排除ブロックの下流側端部における径方向外側の端部を含む領域、及び径方向内側の端部を含む領域に設けられていてもよい。
【0017】
ここで、淀み排除ブロックの下流側端部における径方向外側の端部を含む領域、及び径方向内側の端部を含む領域では、淀みが発生する可能性が特に高いことが知られている。しかしながら、上述のような構成によれば、当該領域にそれぞれフィルム空気供給口が設けられていることから、そのような可能性を低減することができる。
【0018】
さらに、本発明の一態様に係る燃焼器では、前記淀み排除ブロックは、上流側から下流側に向かうに従って、周方向の寸法が減少するように形成され、複数の前記フィルム空気供給口は、前記淀み排除ブロックの周方向一方側の面、及び前記淀み排除ブロックの周方向他方側の面に設けられていてもよい。
【0019】
上述のような構成によれば、上流側から下流側に向かうに従って淀み排除ブロックの周方向の寸法が減少するように形成されていることで、燃焼ガスをより円滑に下流側に導くことができる。加えて、フィルム空気供給口から、この燃焼ガスの流れに沿うようにフィルム空気を供給することができる。
【0020】
さらに、本発明の一態様に係るガスタービンは、上述の各態様に係る燃焼器と、該燃焼器に圧縮空気を供給する圧縮機と、前記燃焼器で生成される燃焼ガスが供給されるタービンと、を備える。
【0021】
上述のような構成によれば、燃焼効率を向上するとともに、NOx生成を抑制したガスタービンを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の燃焼器、及びガスタービンによれば、燃焼効率を向上するとともに、NOxの生成をさらに抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン1は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機2と、この圧縮機2にて圧縮された圧縮空気Aに燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3から導入された燃焼ガスGの熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン4とを備えている。
【0025】
圧縮機2及びタービン4は、互いに一体で回転するように連結されたロータ5と、ロータ5の外周側を囲うステータ6とを備えている。ロータ5は、回転軸7と、軸線O方向に間隔を空けて固定されている複数の環状動翼群8と、を有している。各々の環状動翼群8は、回転軸7の外周に、周方向に互いの間隔を空けて固定されている複数の動翼を有して構成されている。
【0026】
ステータ6は、それぞれケーシング9と、ケーシング9によって画成される車室11内において軸線O方向に間隔をあけて固定された複数の環状静翼群10とを備えている。環状静翼群10は、各々のケーシング9内面に、軸線Oの周方向に互いの間隔をあけて固定されている複数の静翼を有している。環状静翼群10は、それぞれ、複数の環状動翼群8と、軸線O方向に交互に配置されている。
【0027】
さらに、このケーシング9の内部(車室11)には、燃焼器3が設けられている。燃焼器3は、軸線Pに沿って配置されたパイロットバーナ15と、このパイロットバーナ15の周方向に沿って配置された複数の予混合バーナ16と、これらパイロットバーナ15、及び予混合バーナ16が挿通された基板23と、この基板23に一体に設けられた淀み排除ブロック27と、を有している。
【0028】
燃焼器3は、燃料及び燃焼用空気が燃焼する燃焼場を内部に有する略筒状の燃焼筒12と、この燃焼筒12の内周側に収容された略筒状のスワラ支持筒13と、を備えている。燃焼筒12は、スワラ支持筒13よりも大きな径寸法を有する大径部12Aと、この大径部12Aよりも小さな径寸法を有する小径部12Bと、を備えている。大径部12Aと小径部12Bとの間には、急激に径方向の寸法が減少するようにして形成された略円環状の段差部12Cが設けられている。この段差部12Cと、スワラ支持筒13の端部とは、軸線P方向で対向している。すなわち、小径部12Bにおける燃焼筒12の内径寸法は、スワラ支持筒13の径寸法よりも小さく設定されている。
【0029】
これら燃焼筒12と、スワラ支持筒13とは、ともに同じ軸線P上に沿って配置されている。スワラ支持筒13は、燃焼筒12に対して固定部材14によって固定されている。固定部材14は、例えばスワラ支持筒13の外周側で、周方向に間隔を開けて設けられる。さらに、燃焼筒12の内周面と、スワラ支持筒13の外周面との間には一定の間隙が形成されて、圧縮空気Aが流通する空気流路とされている。
【0030】
スワラ支持筒13の内周側には、パイロットバーナ15と、予混合バーナ16とが設けられている。パイロットバーナ15は、軸線Pに沿って延びるように配置されている。予混合バーナ16は、このパイロットバーナ15の周囲を囲むように、周方向に沿って複数が配置されている。本実施形態に係る燃焼器3では、パイロットバーナ15の周囲に、8つの予混合バーナ16が燃焼器3の周方向に沿って間隔を開けて配列されている。以下の説明では、パイロットバーナ15、及び予混合バーナ16が位置する側を上流側と呼び、軸線P方向に沿って上流側と反対側に位置する側を下流側と呼ぶ。
【0031】
パイロットバーナ15は、不図示のパイロットノズル17を内部に有している。さらに、パイロットノズル17の外周には、パイロットコーン18が設けられている。パイロットコーン18の下流側の端部には、上流側から下流側に向かうに従って径方向の寸法が漸次拡大するように形成されたテーパコーン部18Cが設けられている。テーパコーン部18Cの下流側の端部は、燃焼筒12の内部に向かって開口されている。このように構成されたパイロットバーナ15では、パイロットノズル17に対して外部から燃料が供給される。パイロットノズル17からはこの燃料が噴射される。
【0032】
さらに、それぞれの予混合バーナ16は、略筒状の予混合スワラ筒19と、この予混合スワラ筒19内に配置された予混合ノズル20と、を有している。
予混合スワラ筒19と予混合ノズル20とは、同心上に配置される。予混合スワラ筒19は、上流側から下流側に向かうに従って次第に断面の形状が変化するように形成されている。
図3の破線で示すように、軸線P方向から見た断面形状は、上流側においては概ね円形をなしている。一方で、下流側の端部では、予混合スワラ筒19の断面形状は、燃焼筒12の内周に沿って湾曲した略矩形状をなしている。より詳細には、予混合スワラ筒19の下流側端部における断面形状は、同図中の実線で示すように、軸線Pに交差する方向に沿っておおむね直線状に延びる一対の短辺部19Aと、これら短辺部19Aの両端部をそれぞれつなぐとともに、燃焼器3の周方向に沿って円弧状に湾曲する一対の長辺部19Bとによって画成される略矩形状をなしている。また、互いに隣り合う予混合スワラ筒19同士の間には、一定の間隙が形成されている。
【0033】
パイロットバーナ15は、パイロットノズル17の周囲を囲むように設けられたパイロットスワラ20Pを備えている。パイロットスワラ20Pは、複数のスワラベーン(図示略)を有している。これら複数のスワラベーンは、いずれも軸線Pに対して一定の角度θをなして配置されている。これにより、パイロットスワラ20Pを通過した圧縮空気Aには旋回成分が付与されて旋回流となる。
【0034】
同様にして、予混合バーナ16は、予混合ノズル20の上流側に設けられた予混合スワラ20Mを有している。予混合スワラ20Mは、複数のスワラベーンを備えており、予混合スワラ筒19内を流通する圧縮空気Aに対して旋回成分を付与する。
さらに、予混合スワラ20Mのスワラベーンには、複数の燃料噴射孔22が設けられている。この燃料噴射孔からは、外部から供給される燃料、及び空気を混合してなる燃料ガスGが下流側に向かって噴射される。
【0035】
これらのパイロットバーナ15、及び予混合バーナ16は、ともに基板23によって保持されている。
図3に示すように、基板23には、パイロットバーナ15、及び予混合バーナ16の外径寸法に対応する複数の支持開口24が設けられている。これら複数の支持開口24に対して、パイロットバーナ15と、予混合バーナ16とがそれぞれ挿通されることで固定支持されている。また、基板23の径方向内側の端縁は、下流側から上流側に向かって傾斜するように設けられることで、上述のパイロットコーン18との干渉が回避されている。
【0036】
さらに、
図3に示すように、基板23上における予混合バーナ16の支持開口24同士の間の領域には、2つの基板スリット部25が周方向に沿って並設されている。これらの基板スリット部25は、それぞれ後述の空気導入口26と対応するように径方向に延びる略長方形状をなすとともに、基板23を軸線方向に貫通する貫通口である。2つの基板スリット部25は、互いの長辺が周方向に沿って隣り合うようにして間隔を開けて配列されている。
【0037】
基板23の下流側の面には、複数の淀み排除ブロック27が一体に設けられている。これら淀み排除ブロック27は、上述のように周方向に沿って間隔を開けて配列された複数の予混合スワラ筒19の間の領域を埋めるようにして配置されている。具体的には、淀み排除ブロック27は、互いに隣り合う予混合スワラ筒19におけるそれぞれの短辺部19A同士の間の領域に配置されている。
【0038】
本実施形態に係る淀み排除ブロック27の詳細な構成について、
図2から
図5を参照して説明する。
図2に示すように、周方向から見た淀み排除ブロック27は、基板23に連続して設けられたブロック基部28と、このブロック基部28から下流側に向かって突出する尖頭状の内側突出部29と、外側突出部30と、を有している。
【0039】
ブロック基部28における基板23側の面(上流側の面)は、燃焼器3の径方向に沿って延びる略長方形状に形成されることでブロック基板面31をなしている。このブロック基板面31における周方向両側の辺部は、上述の予混合スワラ筒19の短辺部19Aの形状に対応するように湾曲して形成されている。言い換えると、ブロック基板面31における周方向の両辺は、周方向に沿って内側に凹没するように形成されている。一方で、ブロック基板面31における径方向の両辺は、周方向に沿って円弧状に湾曲して形成されている。すなわち、径方向の両辺はいずれも、径方向内側から径方向外側に向かって突出するように湾曲して形成されている。
【0040】
淀み排除ブロック27は、上記のように形成されたブロック基板面31から下流側に向かって延びている。具体的には
図5に示すように、径方向から見た場合の淀み排除ブロック27は、ブロック基板面31を底辺として、下流側に向かう方向を高さとする二等辺三角形状をなしている。言い換えると、淀み排除ブロック27は、上流側から下流側に向かうに従って、周方向の寸法が減少するように形成されている。
【0041】
淀み排除ブロック27の径方向外側の面をなすブロック外周面32は、ブロック基板面31と概ね直交する方向に沿って下流側に延びている。さらに、ブロック外周面32は、燃焼器3の内周形状に沿うように、径方向外側に向かって円弧状に突出している。
淀み排除ブロック27の径方向内側の面をなすブロック内周面33は、ブロック基板面31を基準として、径方向外側に向かってわずかに傾斜して延びている。より詳細には、ブロック内周面33は、径方向内側から外側に向かって徐々に湾曲するように傾斜して延びている。さらに、ブロック内周面33は、燃焼器3の内周形状に沿うように、径方向外側に向かって円弧状に凹没している。
【0042】
加えて、径方向から見た場合における淀み排除ブロック27の中央部は、上記のブロック外周面32、及びブロック内周面33のそれぞれと相似をなすとともに、ブロック外周面32、及びブロック内周面33よりも面積の小さな二等辺三角形状に形成されている。
【0043】
さらに、ブロック外周面32から中央部に向かうに従って、径方向から見た場合における淀み排除ブロック27の断面積は、連続的に減少するように形成されている。
一方で、径方向から見た場合における淀み排除ブロック27の断面積は、この中央部からブロック内周面33に向かうに従って連続的に増大するように形成されている。言い換えると、淀み排除ブロック27は、径方向(高さ方向)における中央部にくびれが形成された、略三角柱状を呈している。さらに、淀み排除ブロック27の下流側における径方向内側の部分は、下流側に向かって突出することで、内側突出部29とされている。同様にして、下流側における径方向外側の部分は、下流側に向かって突出することで、外側突出部30とされている。外側突出部30は、内側突出部29に比して、軸線方向の寸法が大きく設定されている。
【0044】
これにより、淀み排除ブロック27の下流側の端縁は、外側突出部30の頂部から径方向内側に向かって湾曲しながら上流側に延びる外側湾曲部34と、内側突出部29の頂部から径方向外側に向かって湾曲しながら上流側に延びる内側湾曲部35と、これら外側湾曲部34、及び内側湾曲部35を直線状に接続する直線部36と、によって構成される。
【0045】
また、淀み排除ブロック27の周方向における一方側と他方側をなす一対の面は、それぞれブロック側面37とされている。これら一対のブロック側面37には、フィルム空気を流すためのフィルム空気供給口38が形成されている。本実施形態に係る淀み排除ブロック27では、フィルム空気供給口38は
図4に示すように、それぞれのブロック側面37上に1つずつ設けられている。具体的には、それぞれのフィルム空気供給口38は、径方向に沿って延びる略長方形のスリット状に形成されている。
ブロック基板面31には、上記のフィルム空気供給口38と連通する空気導入口26が設けられている。
図5に示すように、空気導入口26はブロック基板面31上で、周方向に間隔を開けて2つ設けられている。
【0046】
これら空気導入口26とフィルム空気供給口38とは、径方向から見て直線状に連通されている。さらに、空気導入口26と、基板スリット部25とは互いに連通されている。これにより、基板スリット部25と、フィルム空気供給口38とは、空気導入口26を介して連通されることで、フィルム空気流路39とされている。
【0047】
なお、このフィルム空気流路39の延びる方向と、ブロック側面37とがなす角度θは、設計に応じて適宜に決定される。すなわち、フィルム空気流路39とブロック側面37とがなす角度θを調節することで、ブロック側面37に対するフィルム空気の追従性を自在に制御することができる。例えば、この角度θが鋭角となるように調節した場合には、フィルム空気がブロック側面37の近傍を流れるようにすることができる。このようなフィルム空気の流れと、淀み排除ブロック27の構造強度等の諸条件とを勘案することで、最適なフィルム空気流路39の延びる方向が決定される。
【0048】
以上のように構成された燃焼器3を備えるガスタービン1は、以下のように稼働する。
まず、燃焼器3のパイロットノズル17から供給される燃料に対して、不図示の着火器によって着火することで、パイロットバーナ15内部にパイロット火炎が形成される。次に、このパイロット火炎が、予混合ノズル20から供給された予混合ガスFに着火することで、予混合火炎が形成される。この予混合火炎は、燃焼筒12の内部で保炎されて、高温の燃焼ガスGを生成する。燃焼筒12で生成された燃焼ガスGは、後続のタービン4に向かって流通し、これを回転駆動する。
【0049】
ここで、
図1に示すように燃焼器3には圧縮機2から圧縮空気Aが供給されている。この圧縮空気Aは、燃焼器3の内部を上流側から下流側に向かって流通する。より詳細には、
図2に示すように圧縮空気Aは、燃焼筒12とスワラ支持筒13との間の空気流路と、パイロットバーナ15の内部と、予混合バーナ16の内部と、スワラ支持筒13の外周面とパイロットコーン18の外周面とで画成される領域とをそれぞれ流通している。
【0050】
これにより、パイロットバーナ15の内部では、パイロットノズル17の下流で形成されたパイロット火炎に対して、圧縮空気Aが供給されることで安定的に保炎される。
予混合バーナ16の内部では、予混合スワラ20Mに設けられた燃料噴射孔22から噴射される燃料に対して圧縮空気Aが混合される。これにより、燃料と空気との予混合ガスFが生成される。この予混合ガスFは、スワラ支持筒13から下流側に向かって噴射された後、上述のパイロット火炎によって着火されて、予混合火炎を形成する。
【0051】
このとき、上述したように、スワラ支持筒13の外周面とパイロットコーン18の外周面とで画成される領域にも圧縮空気Aが流通している。この圧縮空気Aは、下流側に設けられた基板23に向かって流通した後、基板23に設けられた基板スリット部25を通じて、基板23の下流側に向かって流れる。圧縮空気Aのうち、このように基板スリット部25を通過する成分を基板空気Aと呼ぶ。
【0052】
基板スリット部25から下流側に向かって流通した基板空気Aは、淀み排除ブロック27に設けられたフィルム空気流路39を通じて、フィルム空気供給口38から噴射される。より詳細には、
図4と
図5に示すように、一対のフィルム空気供給口38から噴射されるとともに、淀み排除ブロック27のブロック側面37に沿って下流側に向かって流れる。これにより、淀み排除ブロック27の表面(ブロック側面37)には、フィルム空気の層が形成される。
【0053】
このように、淀み排除ブロック27の表面にフィルム空気の層が形成されることによって、淀み排除ブロック27を燃焼器3の火炎による輻射熱などから保護することができる。すなわち、淀み排除ブロック27に焼損が生じる可能性を低減することができる。
一方で、淀み排除構造物にひとたび焼損が生じると、燃焼ガスGの淀みがただちに生じることから、急激な燃焼効率の低下を招くとともに、燃焼場に乱れが生じることでNOx生成の増大を招く可能性がある。しかしながら、上述のような構成によればそのような可能性を低減し、燃焼器3の燃焼効率を向上させるとともに、排出ガスに含まれるNOx濃度の低減を図ることができる。
【0054】
さらに、上述のような構成では、基板23の上流側を流通する基板空気Aを、空気導入口26に導いてフィルム空気供給口38から噴出することができる。すなわち、基板空気Aをフィルム空気として有効に活用することができる。言い換えると、フィルム空気供給源を別個に設けることなく、フィルム空気を生成することができる。
【0055】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態について、
図6と
図7を参照して説明する。
本実施形態に係る燃焼器3は、以下の点で上述の第一実施形態とは異なっている。すなわち、本実施形態に係る燃焼器3では、淀み排除ブロック27に形成されたフィルム空気供給口38は、周方向における一対のブロック側面37に2つずつ設けられた開口として形成されている。本実施形態では、このフィルム空気供給口38はいずれも略円形の開口形状を有している。
【0056】
これら2つのフィルム空気供給口38はそれぞれ、ブロック側面37における径方向内側の領域に設けられた第一供給口42、及び径方向外側の領域に設けられた第二供給口43とされている。より詳細には、
図6に示すように、第一供給口42は、淀み排除ブロック27の下流側に設けられた内側突出部29における内側湾曲部35と軸線P方向で対応する位置に設けられている。第二供給口43は、外側突出部30における外側湾曲と軸線P方向で対応する位置に設けられている。
【0057】
このように構成された淀み排除ブロック27では、第一供給口42と第二供給口43とから構成されるフィルム空気供給口38からそれぞれフィルム空気が噴射される。このフィルム空気は、上述の第一実施形態と同様に、淀み排除ブロック27のブロック側面37に沿って下流側に向かって流通する。これにより、ブロック側面37における径方向内外の各領域にフィルム空気の層を形成する。
【0058】
ここで、淀み排除ブロック27の下流側端部における径方向外側の端部を含む領域、及び径方向内側の端部を含む領域では、淀みが発生する可能性が特に高いことが知られている。これにより、淀み排除ブロック27に焼損を生じる可能性が高まってしまう。しかしながら、上述のような構成によれば、当該領域にそれぞれフィルム空気供給口38が設けられていることから、重点的にフィルム空気を供給することができる。
【0059】
具体的には、第一供給口42から供給されるフィルム空気は、淀み排除ブロック27の内側湾曲部35の表面を流れることでフィルム空気の層を形成する。第二供給口43から供給されるフィルム空気は、淀み排除ブロック27の外側湾曲部34の表面を流れることでフィルム空気の層を形成する。これにより、内側湾曲部35、及び外側湾曲部34で焼損を生じる可能性を低減することができる。
【0060】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について、
図8から
図10を参照して説明する。本実施形態に係る燃焼器3は、以下の点で上述の各実施形態と異なっている。すなわち、
図8に示すように、本実施形態に係る燃焼器3では、燃焼筒12の表面を貫通する車室空気取入口44が設けられている。この車室空気取入口44は、燃焼筒12の表面における、スワラ支持筒13の下流側の端部と軸線O方向で対応する位置に設けられている。
【0061】
さらに、
図9と
図10に示すように、本実施形態に係る燃焼器3では、淀み排除ブロック27における空気導入口26が、淀み排除ブロック27の径方向外側の面であるブロック外周面32に設けられている。具体的には、空気導入口26はブロック外周面32における上流側の領域において、周方向に間隔をあけて2つ配列されている。
さらに、淀み排除ブロック27の内部には、空気導入口26から径方向に沿って内側に延びるフィルム空気流路39が形成されている。空気導入口26は、このフィルム空気流路39を介して、ブロック側面37に設けられたフィルム空気供給口38と連通されている。
【0062】
より詳細には、本実施形態に係るフィルム空気流路39は、径方向に沿って延びる主流路39Aと、この主流路39Aの中途から下流側に向かって延びるように形成された2つの支流路39B,39Cと、を有している。支流路39Bは径方向内側に設けられて、支流路39Cは径方向外側に設けられている。
【0063】
上述のような構成では、車室空気取入口44によって、燃焼筒12の外側の空間(車室11)を流通する空気(車室空気A´)を、燃焼筒12の内部に取り入れることができる。車室空気A´は、上述した基板空気Aと同様に、圧縮空気Aの一部として圧縮機2から供給される。基板空気Aには燃料成分がわずかながら含まれる一方で、車室空気A´には燃料成分が含まれていない。したがって、燃料成分に着火することで逆火が生じてしまう可能性を低減することができる。
【0064】
さらに、上述のような構成では、基板空気Aをフィルム空気として用いずに、スワラ支持筒13内における予混合火炎の燃焼用空気として用いることができる。これにより、燃焼効率を向上させることができるとともに、燃焼器3で生成される燃焼ガスG、すなわちガスタービン1の排出ガスをより清浄な状態に保つことができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0066】
例えば上述の第三実施形態では、
図9に示すようにフィルム空気供給口38はブロック側面37における開口として形成されている例について説明した。しかしながら、フィルム空気供給口38の形状はこれに限定されず、上述の第一実施形態と同様に、ブロック側面37上で径方向に沿って延びる略長方形のスリット状に形成されていてもよい。
【0067】
さらに、第三実施形態では、ブロック側面37におけるそれぞれのフィルム空気供給口38に対応するように、2つの空気導入口26が設けられる構成について説明した。しかしながら、空気導入口26の態様はこれに限定されず、例えば
図11に示すように、径方向から見て長円形状の断面形状を有する貫通口を空気導入口26としてもよい。このような構成によれば、空気導入口26の断面積を増加させることができるため、車室11空気をより効率的にフィルム空気流路39に向かって取り込むことができる。