(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<有機薄膜トランジスタ>
本発明の有機薄膜トランジスタは、基板上に、有機半導体層と、該有機半導体層に接触するソース電極及びドレイン電極と、前記有機半導体層に対して絶縁層を介して位置するゲート電極を備えていることが好ましい。
【0018】
[基板]
基板としては、樹脂基板が挙げられる。樹脂基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなる基板を例示することができ、中でも、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)からなる基板が好ましい。基板の形状は、フィルム状、シート状、板状等どのような形状であってもかまわないが、特にフィルム状であるのが好ましい。
【0019】
基板は、未延伸フィルムからなるものであっても、延伸フィルムからなるものであってもよい。また、単層フィルムであっても、二層以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させた積層フィルムであってもかまわない。
【0020】
基板の厚みは、特に制限されるものではないが、1〜1000μmが好ましく、3〜500μmがより好ましい。
【0021】
[ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極]
ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO、炭素、クロム/金/クロムの積層体が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも有機半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0022】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法が挙げられる。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0023】
このような電極に用いられる金属微粒子分散液の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号公報、同11−80647号公報、同11−319538号公報、特開2000−239853号公報等に示されたコロイド法、特開2001−254185号公報、同2001−53028号公報、同2001−35255号公報、同2000−124157号公報、同2000−123634号公報などに記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子分散物である。これらの金属微粒子分散物を用いて層を成形した後、溶媒を乾燥させ、さらに100〜300℃、好ましくは150〜200℃の範囲で熱処理することにより、金属微粒子を熱融着させることで電極形成する。
【0024】
[絶縁層]
絶縁層は、ゲート絶縁膜として、(A)有機無機複合薄膜からなる。
【0025】
絶縁層を構成する有機無機複合薄膜は、少なくともa)有機ケイ素化合物の縮合物、及び、b)電磁線硬化性化合物の硬化物を含有する。
【0026】
≪a)有機ケイ素化合物の縮合物≫
本発明に用いられる有機ケイ素化合物は、以下の式(I)で表される。
【0028】
式中、RはSiに炭素原子が直接結合した有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき各Rは同一でも異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき各Xは同一でも異なっていてもよい。
【0029】
ここで、Rで表される「Siに炭素原子が直接結合する有機基」としては、置換されていてもよい炭化水素基を挙げることができる。
上記「置換されていてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基等が挙げられる。
【0030】
また、上記「炭化水素基」は、酸素原子、窒素原子、又はケイ素原子を有してもよい。
【0031】
アルキル基として、炭素数1〜10の直鎖又は分岐したアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基等が挙げられる。さらに炭素数10を超える長鎖のアルキル基としては、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0032】
シクロアルキル基として、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0033】
シクロアルキルアルキル基として、炭素数4〜20のシクロアルキルアルキル基が好ましく、例えばシクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロへキシルメチル基、シクロヘプチルエチル基、シクロオクチルエチル基、シクロデシルメチル基、シクロテトラデシルメチル基、シクロオクタデシルメチル基等が挙げられる。
【0034】
アルケニル基として、炭素数2〜10の直鎖又は分岐したアルケニル基が好ましく、それは、いずれか1カ所以上に炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の直鎖又は分岐したアルケニル基を意味し、例えば、エテニル基、1−プロペン−1−イル基、2−プロぺン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、1−ブテン−1−イル基、2−ブテン−1−イル基、3−ブテン−1−イル基、1−ブテン−2−イル基、3−ブテン−2−イル基、1−ペンテン−1−イル基、4−ペンテン−1−イル基、1−ペンテン−2−イル基、4−ペンテン−2−イル基、3−メチル−1−ブテン−1−イル基、1−ヘキセン−1−イル基、5−ヘキセン−1−イル基、1−ヘプテン−1−イル基、6−ヘプテン−1−イル基、1−オクテン−1−イル基、7−オクテン−1−イル基、1,3−ブタジエン−1−イル基等が挙げられる。
【0035】
シクロアルケニル基として、炭素数3〜8のシクロアルケニル基が好ましく、それは、いずれか1カ所以上に炭素−炭素二重結合を有しかつ環状部分を有する炭素数3〜8のアルケニル基を意味し、例えば、1−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロペンテン−1−イル基、1−シクロヘキセン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基、3−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられる。
【0036】
アルキニル基としては、炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、1−プロピン−1−イル基、2−プロピン−1−イル基、1−ブチン−1−イル基、3−ブチン−1−イル基、1−ペンチン−1−イル基、4−ペンチン−1−イル基、1−ヘキシン−1−イル基、5−ヘキシン−1−イル基、1−ヘプチン−1−イル基、1−オクチン−1−イル基、7−オクチン−1−イル基等が挙げられる。
【0037】
シクロアルキルアルキル基としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基と炭素数1〜10のアルキル基の結合した基が好ましく、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルプロピル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロへキシルエチル基、シクロヘプチルメチル基等が挙げられる。
【0038】
アリール基としては、単環又は多環のアリール基を意味し、多環アリール基の場合は、完全不飽和に加え、部分飽和の基も包含し、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が例示することができ、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
【0039】
アリールアルキル基としては、炭素数6〜10のアリール基と炭素数1〜10のアルキル基が結合した基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニル−n−プロピル基、4−フェニル−n−ブチル基、5−フェニル−n−ペンチル基、8−フェニル−n−オクチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0040】
アリールアルケニル基としては、炭素数6〜10のアリール基と炭素数2〜10のアルケニル基が結合した基が好ましく、例えば、スチリル基、3−フェニル−1−プロペン−1−イル基、3−フェニル−2−プロペン−1−イル基、4−フェニル−1−ブテン−1−イル基、4−フェニル−3−ブテン−1−イル基、5−フェニル−1−ペンテン−1−イル基、5−フェニル−4−ペンテン−1−イル基、8−フェニル−1−オクテン−1−イル基、8−フェニル−7−オクテン−1−イル基、ナフチルエテニル基等が挙げられる。
【0041】
「酸素原子を有する炭化水素基」としては、アルコキシアルキル基、エポキシアルキル基、グリシドキシアルキル基等のオキシラン環(エポキシ基)を有する基、アクリロキシメチル基、メタクリロキシメチル基などが挙げられる。
【0042】
ここで、アルコキシアルキル基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基と炭素数1〜6のアルキル基が結合した基が好ましく、例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、3−エトキシ−n−プロピル基等が挙げられる。
【0043】
エポキシアルキル基としては、炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のエポキシアルキル基が好ましく、例えばグリシジル基、グリシジルメチル基、2−グリシジルエチル基、3−グリシジルプロピル基、4−グリシジルブチル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、5,6−エポキシヘキシル基等の直鎖状のエポキシ基を含むアルキル基;β−メチルグリシジル基、β−エチルグリシジル基、β−プロピルグリシジル基、2−グリシジルプロピル基、2−グリシジルブチル基、3−グリシジルブチル基、2−メチル−3−グリシジルプロピル基、3−メチル−2−グリシジルプロピル基、3−メチル−3,4−エポキシブチル基、3−エチル−3,4−エポキシブチル基、4−メチル−4,5−エポキシペンチル基、5−メチル−5,6−エポキシヘキシル基等の枝分かれ状のエポキシ基を含むアルキル基等が挙げられる。
【0044】
グリシドキシアルキル基としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0045】
「窒素原子を有する炭化水素基」としては−NR’
2(式中、R’は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、各R’は互いに同一でも相異なっていてもよい。)を有する基、又は−N=CR’’
2(式中、R’’は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、各R’’は互いに同一でも相異なっていてもよい。)を有する基が好ましく、アルキル基としては上記と同じものが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アントラセン−1−イル基、フェナントレン−1−イル基等が挙げられる。
【0046】
例えば、−NR’
2を有する基としては、―CH
2NH
2基、−CH
2(CH
2)
2NH
2基、−CH
2NHCH
3基等が挙げられる。−N=CR’’
2を有する基としては、−CH
2N=CHCH
3基、−C
2N=C(CH
3)
2基、−CH
2CH
2N=CHCH
3基、−CH
2N=CHPh基、−CH
2N=C(Ph)CH
3基等が挙げられる。
【0047】
上記「置換されていてもよい」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、メタクリロキシ基等を挙げることができる。アルキル基、アルケニル基、アリール基としては、Rにおけるものと同じものを例示することができる。
【0048】
上記のうち、ビニル基、オキシラン環を有する基、−NR’
2を有する基、又は−N=CR’’
2を有する基は、有機無機複合薄膜の表面の無機化の観点からは、好ましい基である。
【0049】
また、式(I)中、nは、1又は2を表し、n=1のものが特に好ましい。nが2のとき、各Rは同一でも相異なっていてもよい。また、これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
式(I)において、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。式(I)の(4−n)が2以上のとき、各Xは同一でも相異なっていてもよい。加水分解性基とは、例えば、無触媒、過剰の水の共存下、25℃〜100℃で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基や、シロキサン縮合物を形成することができる基を意味し、具体的には、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基原子、イソシアネート基、無置換または置換アミノ基等を挙げることができ、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアシルオキシ基が好ましい。
【0051】
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられ、炭素数1〜6のアシルオキシ基(ただし、炭素数にはカルボニル基の炭素を含まない)としては、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0052】
なお、(A)有機無機複合薄膜に含まれる有機ケイ素化合物の縮合物は、これらの有機ケイ素化合物の縮合物及び/又は有機ケイ素化合物の縮合物のさらなる縮合物を意味する。
有機ケイ素化合物の縮合物の配合割合は、(A)有機無機複合薄膜全体の固形分に対して2〜98質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。
【0053】
本発明において使用される有機ケイ素化合物の好ましい態様として、具体的には、下記a−1)、a−2)、及びa−3)の混合物を例示することができる。
a−1) 式(I−1)で表される化合物。
【0055】
式中、nは1又は2を表し、nが2のときR
1は同一であっても相異なってもよく、R
1は有機基であって、R
1のうち1以上はビニル基含有炭化水素基を表す。Xは水酸基又は加水分解性基を表し、互いに同一であっても相異なってもよい。ここで、有機基、加水分解性基としては、式(I)に記載のものが好ましく例示される。ビニル基含有炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、4−ヘキセニル基等のアルケニル基(好ましくは、C2−C8アルケニル基)等が例示される。
【0056】
a−2) 式(I−2)で表される化合物。
【0058】
式中、nは1又は2を表しnが2のときR
2は同一であっても相異なってもよく、R
2は式中のSiに炭素原子が直接結合した、ビニル基含有炭化水素基以外の有機基を表す。Xは水酸基又は加水分解性基を表し、互いに同一であっても相異なってもよい。ここで、ビニル基含有炭化水素基以外の有機基としては、式(I)に記載のものから、アルケニル基やアリールアルケニル等のビニル基含有有機基を除くものを例示することができる。加水分解性基としては式(I)に記載のものが例示される。
【0059】
a−3) 存在するならば、それらの加水分解縮合物。
式(I−2)で表される化合物及びそれを単位として含有する加水分解縮合物は必ずしも存在しなくてもよい。加水分解縮合物とは、化合物同士が加水分解縮合してシロキサン結合を形成した2量体等であって、式(I−1)又は式(I−2)の化合物のみが加水分解縮合した物であってもよく、式(I−1)の化合物と式(I−2)の化合物とが加水分解縮合した物であってもよく、これらの2種以上が混在していてもよい。
【0060】
{〔式(I−1)の化合物〕+〔存在するならば、加水分解縮合物中の式(I−1)の化合物由来の単位〕}/{〔式(I−1)の化合物〕+〔式(I−2)の化合物〕+〔存在するならば、加水分解縮合物中の式(I−1)の化合物由来の単位〕+〔存在するならば、加水分解縮合物中の式(I−2)の化合物由来の単位〕}×100は、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは30〜95モル%である。
一方、{〔式(I−2)の化合物〕+〔存在するならば、加水分解縮合物中の式(I−2)の化合物由来の単位〕}/{〔式(I−1)の化合物〕+〔式(I−2)の化合物〕+〔存在するならば、加水分解縮合物中の式(I−1)の化合物由来の単位〕+〔存在するならば、加水分解縮合物中の式(I−2)の化合物由来の単位〕}×100は、好ましくは0〜70モル%であり、より好ましくは5〜70モル%である。
また、加水分解縮合物の平均粒子径は2nm〜100nmが好ましく、5nm〜30nmであることがより好ましい。平均粒子径が100nmより大きいと膜が白濁し、溶液が不安定となりゲル化し易くなる。平均粒子径が2nmより小さいと塗膜性に影響が出る場合がある。
【0061】
これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機ケイ素化合物を組み合わせて使用する場合、例えば、ビニルトリメトキシシランと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの組み合わせ、ビニルトリメトキシシランと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの組み合わせを好ましく例示できる。
【0062】
また、式(I−1)で表される有機ケイ素化合物として、R
1の炭素数が3以下である有機ケイ素化合物が、30モル%以上、より好ましくは50〜100モル%配合され、R
1の炭素数が4以上である有機ケイ素化合物が、70モル%以下、より好ましくは0〜50モル%配合されることがより好ましい。
【0063】
本発明において使用される有機ケイ素化合物の好ましい別の態様として、具体的には、Fedorsの推算法により求められた前記Rの溶解パラメータSP1が、Fedorsの推算法により求められた電磁線硬化性化合物の溶解パラメータSP2よりも、1.6以上、好ましくは1.6〜8.5、より更に好ましくは1.6〜7.2小さい有機ケイ素化合物Si1と、前記溶解パラメータSP1が、前記溶解パラメータSP2より1.6未満小さい又は前記溶解パラメータSP2と等しいか大きい有機ケイ素化合物Si2からなり、前記有機ケイ素化合物Si1と前記有機ケイ素化合物Si2のモル比Si1:Si2が、5:5〜10:0、より好ましくは9:1〜10:0である。
【0064】
有機ケイ素化合物は、使用する電磁線硬化性化合物の種類に応じて異なる。有機ケイ素化合物及び電磁線硬化性化合物の溶解パラメータ(SP値)はFedorsの推算法に基づき計算することができるから、あらかじめ計算されたSP値を基に、有機ケイ素化合物と電磁線硬化性化合物の組み合わせを決定することができる。
前記式(I)において、nが2であり、かつ、Rが異なる場合、数値が大きい方のSP値を前記SP1として、電磁線硬化性化合物との組み合わせを決定する。
【0065】
本発明に用いることができる有機ケイ素化合物の一例をSP値と共に以下の第1表に列記する。なお、化合物No.1〜No.15が、上記式(I−1)の化合物に相当する。
【0068】
≪b)電磁線硬化性化合物の硬化物≫
本発明に用いられる電磁線硬化性化合物とは、必要に応じて添加される重合開始剤の存在下、電磁線の照射により重合反応を起こす官能基を有する化合物あるいは樹脂のことであり、用いられる電磁線としては、紫外線、X線、放射線、イオン化放射線、電離性放射線(α、β、γ線、中性子線、電子線)を用いることができ、350nm以下の波長を含む光が好ましい。
電磁線の照射には、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ等の公知の装置を用いて行うことができ、照射する光源としては、150〜350nmの範囲のいずれかの波長の光を含む光源であることが好ましく、250〜310nmの範囲のいずれかの波長の光を含む光源であることがより好ましい。
また、有機無機複合薄膜形成用組成物を十分に硬化させるために照射する光の照射光量としては、例えば、0.1〜100J/cm
2程度が挙げられ、膜硬化効率(照射エネルギーと膜硬化程度の関係)を考慮すると、1〜10J/cm
2程度であることが好ましく、1〜5J/cm
2程度であることがより好ましい。
【0069】
電磁線硬化性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ系化合物、アクリレート系化合物を除くビニル化合物等を例示することができる。官能基の数は、1個以上であれば特に限定はない。本発明に用いることができる電磁線硬化性化合物の一例を以下の第2表にSP値と共に列記する。
【0071】
また、上記の化合物以外にも、前記アクリレート系化合物として、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジアクリレート等を用いることができる。これらの化合物のSP値は、含有する官能基の種類にもよるが、9〜11の範囲内である。
【0072】
エポキシポリ(メタ)アクリレートは、例えば、低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環とアクリル酸とのエステル化反応により得ることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる、両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基をアクリル酸でエステル化することにより得られる。または、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することにより得られる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有するアクリレートモノマーとの反応生成物であり、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0073】
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、荒川化学工業(株)製商品名:ビームセット(登録商標)102、502H、505A−6、510、550B、551B、575、575CB、EM−90、EM92、サンノプコ(株)製商品名:フォトマー(登録商標)6008、6210、新中村化学工業(株)製商品名:NKオリゴU−2PPA、U−4HA、U−6HA、H−15HA、UA−32PA、U−324A、U−4H、U−6H、東亜合成(株)製商品名:アロニックス(登録商標)M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960、共栄社化学(株)製商品名:AH−600、AT606、UA−306H、日本化薬(株)製商品名:カヤラッド(登録商標)UX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、日本合成化学工業(株)製商品名:紫光(登録商標)UV−1700B、UV−3000B、UV−6100B、UV−6300B、UV−7000、UV−7600B、UV−2010B、根上工業(株)製商品名:アートレジン(登録商標)UN−1255、UN−5200、HDP−4T、HMP−2、UN−901T、UN−3320HA、UN−3320HB、UN−3320HC、UN−3320HS、H−61、HDP−M20、ダイセルユーシービー(株)製商品名:Ebecryl(登録商標)I 6700、204、205、220、254、1259、1290K、1748、2002、2220、4833、4842、4866、5129、6602、8301等を挙げることができる。
【0074】
これらの中でも、好ましくはポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、ポリウレタン(メタ)アクリレートである。
分子量は、有機無機複合薄膜形成用組成物中に溶解する限り限度はないが、質量平均分子量として500〜50,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。
【0075】
前記有機無機複合薄膜中の前記電磁線硬化性化合物の硬化物の配合量は、前記有機無機複合薄膜全体の固形分(有機ケイ素化合物の縮合物、電磁線硬化性化合物の硬化物及び必要に応じて配合される他の成分の全質量)に対して、2〜98質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、70〜95質量%が更に好ましい。
本発明においては、重合開始剤を混合することができ、そのような開始剤としては、電磁線照射によりカチオン種を発生させる化合物及び電磁線照射により活性ラジカル種を発生させる化合物等の公知の開始剤を挙げることができる。
【0076】
<(A)有機無機複合薄膜の製造法>
[有機無機複合薄膜形成用溶液の調製]
本発明における(A)有機無機複合薄膜の形成用溶液は、有機ケイ素化合物、電磁線硬化性化合物のほか、適宜、重合開始剤、シラノール縮合触媒能等を有する金属化合物、水及び/又は溶媒等を混合して調製される。
なお、シラノール縮合触媒として作用する金属化合物としては、具体的には、金属アルコキシド、金属キレート化合物、有機酸金属塩またはそれらの加水分解縮合物等を例示することができ、さらに具体的には、テトライソプロポキシチタン、ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン、またはその加水分解縮合物等を例示することができる。
【0077】
調製方法は、特に制限はされないが、具体的には、金属キレート化合物等の金属化合物を溶媒に混合し、所定量の水を加え、(部分)加水分解を行い、続いて、有機ケイ素化合物を添加して(部分)加水分解させ、一方、熱または電磁線硬化性化合物を溶媒に溶解して必要に応じて重合開始剤または硬化剤を添加し、その後、両溶液を混合する等の調製方法を例示することができる。これら4成分は、同時に混合することもでき、また、有機ケイ素化合物と金属化合物の混合方法については、有機ケイ素化合物と金属化合物を混合した後に、水を加えて(部分)加水分解する方法や、有機ケイ素化合物及び金属化合物を別々に(部分)加水分解したものを混合する方法を挙げることができる。水や溶媒を加える必要は必ずしもないが、水を加えて(部分)加水分解物としておくことが好ましい。所定量の水の量としては、金属化合物の種類にもよるが、例えば、金属化合物が2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物の場合、金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いることが好ましく、0.5〜2モルの水を用いることがより好ましい。また、金属化合物が金属キレート化合物又は有機酸金属塩の場合、金属キレート化合物又は有機酸金属塩1モルに対して、5〜100モルの水を用いることが好ましく、5〜20モルの水を用いることがより好ましい。
【0078】
a)有機ケイ素化合物の縮合物としては、有機ケイ素化合物を、公知のシラノール縮合触媒を用いて(部分)加水分解させたものを用いても良い。
【0079】
有機無機複合薄膜形成用組成物としては、上記の各成分に加え、水及び/又は溶媒等を含有することが好ましい。
用いる溶媒としては、特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
シラノール縮合触媒としては、前記金属化合物のほか、酸、塩基等が挙げられる。
酸としては、有機酸、鉱酸が挙げられ、具体的には例えば、有機酸としては酢酸、ギ酸、シュウ酸、炭酸、フタル酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等、鉱酸としては、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸等が挙げられる。
ここで、光照射によって酸を発生する光酸発生剤、具体的には、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等も包含される。
塩基としては、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等の強塩基類;有機アミン類、有機アミンのカルボン酸中和塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0081】
本発明における有機無機複合薄膜形成用溶液中の固形分としては、1〜98質量%が好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、15〜45質量%であることが更に好ましい。
【0082】
[(A)有機無機複合薄膜の製造]
(A)有機無機複合薄膜は、上述した有機無機複合薄膜形成用溶液を樹脂基板上に塗布し、乾燥及び/又は加熱する工程、プラズマ処理もしくはUVオゾン処理を施す工程を経ることにより製造できる。
【0083】
(A)有機無機複合薄膜は、ESCA分析によって測定された、表面から10nmの深さの炭素原子の濃度が、表面から100nmの深さの炭素原子の濃度より20%以上少ない膜であることが好ましい。
ここで、「炭素原子の濃度」とは、(全金属原子+酸素原子+炭素原子)を100%としたときの炭素原子のモル濃度を意味する。他の元素の濃度も同様である。
【0084】
有機無機複合薄膜形成用溶液の塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法等を挙げることができる。また、形成する膜厚としては、特に制限されるものではなく、例えば、0.1〜20μm程度である。
【0085】
有機無機複合薄膜形成用溶液を塗布して形成した膜の乾燥・加熱処理としては、例えば、40〜200℃で、0.5〜120分程度行うことが好ましく、60〜160℃で、1〜60分程度行うことがより好ましく、60〜120℃で1〜60分程度行うことが更に好ましい。
【0086】
絶縁層は、ゲート絶縁膜として、上記構成からなる。そのため、有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁層と有機半導体層との親和性が向上し、リーク電流の抑制が可能となる。有機薄膜トランジスタは、実用的なキャリア移動度を有する。
【0087】
[有機半導体層]
有機薄膜トランジスタを構成する有機半導体層の材料としては、π共役系材料が用いられ、例えばポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)などのポリピロール類;ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリイソチアナフテンなどのポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレンなどのポリチェニレンビニレン類;ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−置換アニリン)などのポリアニリン類、ポリアセチレンなどのポリアセチレン類;ポリジアセチレンなどのポリジアセチレン類、ポリアズレンなどのポリアズレン類、ポリピレンなどのポリピレン類、ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)などのポリカルバゾール類、ポリセレノフェンなどのポリセレノフェン類;ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類;ポリ(p−フェニレン)などのポリ(p−フェニレン)類;ポリインドールなどのポリインドール類、ポリピリダジンなどのポリピリダジン類;ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのポリアセン類;ポリアセン類の炭素の一部をN、S、Oなどの原子、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノンなど);ポリビニルカルバゾール、ポリフエニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマー;特開平11−195790号公報に記載された多環縮合体などを用いることができる。
【0088】
また、これらのポリマーと同じ繰返し単位を有するたとえばチオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、スチリルベンゼン誘導体などのオリゴマーも好適に用いることができる。
【0089】
さらに銅フタロシアニンや特開平11−251601号公報に記載のフッ素置換銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類;ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドとともに、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)及びN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、及びアントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;C60、C70、C76、C78、C84等フラーレン類;SWNTなどのカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などがあげられる。
【0090】
これらのπ共役系材料のうちでも、チオフェン、ビニレン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、これらの置換体またはこれらの2種以上を繰返し単位とし、かつ該繰返し単位の数nが4〜10であるオリゴマーもしくは該繰返し単位の数nが20以上であるポリマー、ペンタセンなどの縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0091】
また、その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体も用いることができる。さらにポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系ポリマーや特開2000−260999号公報に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0092】
有機半導体層の作製法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、プラズマ重合法、電解重合法、化学重合法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、又はLB法等が挙げられ、材料に応じて使用できる。ただし、この中で生産性の点で、有機半導体の溶液を用いて簡単かつ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、又はキャスト法等が好ましい。さらに、有機半導体層を構成する分子化合物の配向性を制御する上で、特殊なキャスト法であるギャップキャスト法、又はエッジキャスト法が好ましい。
【0093】
なおAdvanced Material誌 1999年 第6号、p480〜483に記載の様に、ペンタセン等前駆体が溶媒に可溶であるものは、塗布により形成した前駆体の膜を熱処理して目的とする有機材料の薄膜を形成しても良い。
【0094】
有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、得られた素子の特性は、有機半導体からなる活性層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、有機半導体により異なるが、1μm以下が好ましく、10〜300nmが特に好ましい。
【0095】
[ドーパント層]
本発明の有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極と、有機半導体層との間にドーパント層を備えていることが好ましい。ドーパント層としては、たとえば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレンおよびテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、たとえばアミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾールおよびその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、いわゆるドーピング処理を施してもよい。
【0096】
前記ドーピング処理とは電子授与性分子(アクセプター)または電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして該有機半導体層に導入することを意味する。従って,ドーピングが施された有機半導体層は、前記の縮合多環芳香族化合物とドーパントを含有する薄膜である。本発明に用いるドーパントとしては公知のものを採用することができる。
ドーパント層に用いられる材料としては、更に、塩化第二鉄、TCNQ、F4TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)、フラーレンとその誘導体等が挙げられ、F4TCNQが好ましい。
【0097】
[自己組織化単分子膜]
また、絶縁層と有機半導体層の間に有機半導体層の電荷移動度を高めるために、自己組織化単分子膜(SAM)を備えていることが好ましい。またSAMを備えることで、閾値電圧の制御を行うことも可能である。SAMを形成させるための成分として、具体的には、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、β−フェネチルトリクロロシラン、β−フェネチルトリメトキシシラン(β−PTS)、トリクロロメチルシラザンや、アルカン燐酸、アルカンホスホン酸、アルカンスルホン酸、アルカンカルボン酸等を例示することができる。
【0098】
本発明の有機薄膜トランジスタは、様々な電子装置に組み込んで用いることができる。例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパー等の各種表示装置においてアクティブ駆動させる駆動素子として、各種センサにおいて用いられるトランジスタ素子として、また、電子タグ(ICタグ)においてキャパシタと共にメモリを構成するとして素子として用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
[製造例1](有機無機複合薄膜形成用溶液の調製)
ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン(日本曹達株式会社製、T−50、酸化チタン換算固形分量:16.5重量%)30.3gをソルミックス(登録商標)AP−7(日本アルコール販売(株)社製)58.4gに溶解後、攪拌しながらイオン交換水11.3g(チタンに対して10倍モル)をゆっくり滴下し、加水分解させた。1日後に溶液を濾過し、黄色透明な酸化チタン換算濃度5重量%の酸化チタンナノ分散液[A−1]を得た。酸化チタンの平均粒径は4.1nmで単分散性であった。
有機ケイ素化合物として、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−1003)(SP値:7.00)と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)(SP値:9.48)を7/3(=ビニルトリメトキシシラン/3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)のモル比で混合した液[B−1]を使用した。
元素比(Ti/Si=1/9)になるように上記[A−1]と[B−1]を混合し、12時間攪拌した液[C−1]を作製した。[C−1]の固形分は29.2重量%であった。
電磁線硬化性化合物として、ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製、紫光UV1700B)(SP値:10〜11)を40重量%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解させた。この溶液に光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬工業株式会社製)をウレタンアクリレートオリゴマーの固形分に対して4重量%となるように溶解させ、溶液[D−1]を作製した。
固形分の割合が10重量%/90重量%=[C−1]/[D−1]となるように、上記[C−1]液と[D−1]溶液を混合させ、有機無機複合薄膜形成用溶液[E−1]を作製した。
【0101】
[実施例1]
基板としてポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用いた。該PENフィルム上に、アルバック社製真空蒸着機「EX−400」(真空度:1.3×10
−4Pa)を用いて、厚さ3nmのクロム(Cr)層、厚さ20nmの金(Au)層、及び厚さ5nmのクロム(Cr)層をこの順で積層して、ゲート電極を形成した。
次いで、ゲート電極上に、スピンコーター(2000rpm)を用いて、製造例1で調製した有機無機複合薄膜形成溶液[E−1]を希釈液で4倍に希釈して20秒間で塗工、乾燥(温風乾燥、80℃、3分間)、紫外線照射(集光型高圧水銀灯、160W/cm、ランプ高9.8cm、積算照射量約500mJ/cm
2)して膜厚650nmの絶縁層を得た。
次いで、ゲート電極上に絶縁層を形成したPENフィルムを2.5×2.5cm
2に切り出した。
次に、本発明者らが開発した塗布法(エッジキャスト:Appl. Phys. Exp. 2, 111501 (2009))に準拠し、有機半導体層を形成した。すなわち、前記切り出したPENフィルム上に、溶液保持用のシリコン基板の欠片(以下「溶液保持構造」ともいう。)を置いた。基板を傾けながら、有機半導体溶液(パイクリスタル社製、C10−DNBDT)を、75℃で溶液保持構造のエッジに垂らした。溶媒の蒸発とともに結晶が成長しながら基板に貼り付き、数分で結晶成長が完了した。この状態で減圧下、室温で1時間、さらに、減圧下100℃で8時間放置し、結晶膜を完全に乾燥した(膜厚:10〜100nm)。
この有機半導体層上にソース・ドレイン電極を作製するため、チャネル(L:100μm,W:2000μm)のシャドーマスクを用いて、F4−TCNQからなる厚さ1nmのドーパント層を形成した後、金を40nmの厚さで蒸着し、ボトムゲート・トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタを作製した。
【0102】
作製した有機薄膜トランジスタについて、半導体パラメータアナライザー(型番「keithley 4200」、ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、輸送特性を測定した。
図1Aは、実施例1の有機薄膜トランジスタの飽和領域の結果を示すものであり、
図1Bは、実施例1の有機薄膜トランジスタの線形領域の結果を示すものである。
図1Aの結果から、下記式(1)を用いて、実施例1の有機薄膜トランジスタの飽和領域におけるキャリア移動度及び閾値電圧を算出した。
【0103】
【数1】
【0104】
ここで、I
Dはドレイン電流、Wはチャネルの幅、Lはチャネルの長さ、μはキャリア移動度、C
OXはゲート絶縁膜の単位面積当たりのキャパシタンス、V
Gはゲート電圧、V
Tは閾値電圧である。
ドレイン電圧(V
D)は−30Vとし、ゲート電圧(V
G)を20V〜−30Vに変化させて移動度を測定した。飽和領域において5.2cm
2/Vsのキャリア移動度を得ることができた。閾値電圧は、1.9Vであった。
図1Bの結果から、下記式(2)を用いて、実施例1の有機薄膜トランジスタの線形領域におけるキャリア移動度及び閾値電圧を算出した。
【0105】
【数2】
【0106】
ドレイン電圧(V
D)は−1Vとし、ゲート電圧(V
G)を20V〜−30Vに変化させて移動度を測定した。線形領域では4.5cm
2/Vsのキャリア移動度を得ることができた。閾値電圧は、−4.3Vであった。
【0107】
また上記式(1)及び(2)から求めたゲート電圧に対するキャリア移動度の変化を
図2A及び
図2Bに示す。
図2Aは、実施例1の有機薄膜トランジスタの飽和領域におけるキャリア移動度(電界効果移動度)であり、
図2Bは、実施例1の有機薄膜トランジスタの線形領域でのキャリア移動度(実効移動度)である。
図2A及び
図2Bから、ゲート電圧に対し実効的なキャリア移動度を示すことが確認された。
【0108】
また、
図3は実施例1の有機薄膜トランジスタの出力特性を示す。ドレイン電流(I
D)とゲート電圧(V
G)、ドレイン電流(I
D)とドレイン電圧(V
D)は、いずれも明瞭な相関関係を示し、実施例1の有機トランジスタは、優れた特性を示すことが確認された。
【0109】
[実施例2]
実施例2は、ゲート電極と絶縁層を形成したPENフィルム上に有機半導体層を形成する前に、絶縁層上にβ−フェネチルトリクロロシラン(β−PTS)(信越化学製LP−1990)の自己組織化単分子膜を形成した点が実施例1と異なる。自己組織化単分子膜は、ゲート電極と絶縁層を形成したPENフィルムを、UVオゾン洗浄装置(セン特殊光源社製)を用いて10分間UVオゾン洗浄を行い、さらにβ−フェネチルトリクロロシラン中に18時間浸漬し、絶縁層上に形成した。
【0110】
実施例2においても、実施例1と同様の方法で、輸送特性を測定した。
図4Aは、実施例2の有機薄膜トランジスタの飽和領域の結果を示すものであり、
図4Bは、実施例2の有機薄膜トランジスタの線形領域の結果を示すものである。
図4Aの結果から、飽和領域におけるキャリア移動度及び閾値電圧を算出した。実施例1と同様に、ドレイン電圧(V
D)は−30Vとし、ゲート電圧(V
G)を20V〜−30Vに変化させて移動度を測定した。飽和領域において4.5cm
2/Vsのキャリア移動度を得ることができた。閾値電圧は、16Vであった。
また、
図4Bの結果から、線形領域におけるキャリア移動度及び閾値電圧を算出した。実施例1と同様に、ドレイン電圧(V
D)は−1Vとし、ゲート電圧(V
G)を20V〜−30Vに変化させて移動度を測定した。線形領域では4.0cm
2/Vsのキャリア移動度を得ることができた。閾値電圧は、29Vであった。自己組織化単分子膜を形成することで、キャリア移動度を大きく変更することなく、閾値電圧を制御することができていることが確認できる。
【0111】
また実施例1と同様に、上記式(1)及び(2)から求めたゲート電圧に対するキャリア移動度の変化を
図5A及び
図5Bに示す。
図5Aは、実施例2の有機薄膜トランジスタの飽和領域におけるキャリア移動度(電界効果移動度)であり、実施例2の有機薄膜トランジスタの
図5Bは、線形領域でのキャリア移動度(実効移動度)である。
【0112】
また、
図6は実施例2の有機薄膜トランジスタの出力特性を示す。ドレイン電流(I
D)とゲート電圧(V
G)、ドレイン電流(I
D)とドレイン電圧(V
D)は、いずれも明瞭な相関関係を示し、実施例2の有機トランジスタは、優れた特性を示すことが確認された。