(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6417635
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】車両ドアラッチ装置のスイッチアッセンブリー
(51)【国際特許分類】
E05B 81/66 20140101AFI20181029BHJP
E05B 81/68 20140101ALI20181029BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20181029BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20181029BHJP
【FI】
E05B81/66
E05B81/68
B60J5/00 N
B60J5/00 J
E05B79/08
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-178597(P2014-178597)
(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公開番号】特開2016-53246(P2016-53246A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】平本 茂憲
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−049990(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0151257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉扉時にストライカ(15)が相対的に進入移動する進入通路(16)を備えたラッチボディ(10)の正面側に、前記ストライカ(15)と係合するラッチ(12)をラッチ軸(11)により、また、前記ラッチ(12)と係合して前記ラッチ(12)の逆転を防止するラチェット(14)をラチェット軸(13)によりそれぞれ軸止し、前記ラッチ軸(11)と前記ラチェット軸(13)とは前記ストライカ(15)のストライカ移動軌跡を境にして隔離配置し、前記ラッチボディ(10)の背面側に前記ラッチ(12)の位置を検出するラッチスイッチ(33、34)と、前記ラチェット(14)の位置を検出するラチェットスイッチ(32)とを配置した車両ドアラッチ装置において、前記ラッチスイッチ(33、34)と前記ラチェットスイッチ(32)とは1つの共通のスイッチケース(27)に取り付け、共通の前記スイッチケース(27)は前記ストライカ移動軌跡を境として一方側に配置した車両ドアラッチ装置のスイッチアッセンブリー。
【請求項2】
請求項1において、前記ラッチボディ(10)の背面には、前記ラッチ(12)と連動回転して前記ラッチスイッチ(33、34)の可動端子と当接するカム面(35)を備えたラッチスイッチレバー(20)を配設し、前記可動端子と前記カム面(35)とは、前記進入通路(16)を区画する前記ラッチボディ(10)の背面側膨出部(37)と前後方向で重合する位置で当接する構成とした車両ドアラッチ装置のスイッチアッセンブリー。
【請求項3】
請求項1において、前記スイッチケース(27)は、前記進入通路(16)を区画する前記ラッチボディ(10)の背面側膨出部(37)と前後方向において重合しない構成とした車両ドアラッチ装置のスイッチアッセンブリー。
【請求項4】
請求項2において、前記スイッチケース(27)は、前記背面側膨出部(37)と前後方向において重合しない構成とした車両ドアラッチ装置のスイッチアッセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアラッチ装置に関するものであり、特に、ラッチ装置のラッチおよびラチェットの位置を検出するスイッチアッセンブリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来周知の車両ドアラッチ装置(ラッチユニット)の正面を示しており、ラッチ装置の合成樹脂等で形成されるラッチボディAには、ラッチ軸BによりラッチCが軸止されるとともに、ラチェット軸DによりラチェットEが軸止されている。ドアが閉扉移動すると、車体に固定されたストライカFが相対的にラッチボディAに形成した進入通路G内に進入し、ラッチCの係合溝Hと係合して、アンラッチ位置のラッチCをフルラッチ方向(時計回転方向)に回転させる。ラッチCがハーフラッチ位置になると、ラチェットEはバネ弾力により時計回転してラッチCのハーフラッチ係合部Jと係合可能となり、また、ラッチCがフルラッチ位置になると、ラッチCのフルラッチ係合部Kと係合可能となり、ラチェットEがラッチCのフルラッチ係合部Kと係合すると閉扉動作は完了し、ドアは閉扉状態に維持される。
【0003】
また、従来のラッチユニットには、モータ動力によりハーフラッチ位置のラッチCをフルラッチ位置に向けて回転させるオートクローザー機能、および、モータ動力によりラチェットEを開扉方向に回転させて、ラチェットEを前記ラッチCのフルラッチ係合部Kから離脱させて、ドアを開扉可能状態にするオートリリース機能が付設されることがある。この場合、ラッチユニットには、ラッチCの位置を検出するラッチスイッチLと、ラチェットEの位置を検出するラチェットスイッチMとが設けられ、これらのスイッチからの信号を使用してオートクローザー機構およびオートリリース機能は制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−9477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示したラッチユニットでは、ラッチC(ラッチ軸B)とラチェットE(ラチェット軸D)とは、ラッチボディAの背面側において、ストライカの進入通路G(ストライカ移動軌跡)を境として、図面において、上方側(ラッチ側)と下方側(ラチェット側)とに離れて配置されている。このような配置関係では、ストライカFからラッチCに加えられる外力は、上下の2軸B、Dにより分散して支受されることから、業界ではこの配置構造を「反力2分構造」と称していて、ラッチ・ラチェットの配置関係の主流となっている。
【0006】
「反力2分構造」を採用したラッチユニットでは、ラッチスイッチLとラチェットスイッチMも、ラッチボディAの背面側で進入通路Gにより区分されたラッチ側とラチェット側とに離れて配置されており、このため、スイッチアッセンブリーは2個別々に用意され、取付作業も複数回となって、コスト増加の要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、本発明は、閉扉時にストライカ15が相対的に進入移動する進入通路16を備えたラッチボディ10の正面側に、前記ストライカ15と係合するラッチ12をラッチ軸11により、また、前記ラッチ12と係合して前記ラッチ12の逆転を防止するラチェット14をラチェット軸13によりそれぞれ軸止し、前記ラッチ軸11と前記ラチェット軸13とは前記ストライカ15のストライカ移動軌跡を境にして隔離配置し、前記ラッチボディ10の背面側に前記ラッチ12の位置を検出するラッチスイッチ33、34と、前記ラチェット14の位置を検出するラチェットスイッチ32とを配置した車両ドアラッチ装置において、前記ラッチスイッチ33、34と前記ラチェットスイッチ32とは1つの共通
のスイッチケース27に取り付け、
共通の前記スイッチケース27は前記ストライカ移動軌跡を境として一方側に配置した車両ドアラッチ装置のスイッチアッセンブリーとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチアッセンブリー26は、ストライカ移動軌跡を境としてラチェット側のみに配置する思想を採用したので、ラチェットスイッチ32、ハーフラッチスイッチ33、およびフルラッチスイッチ34を、1個の共通のスイッチケース27に予め取り付けて製造することができて、ラッチボディ10への組み付け作業も低減でき、よって、製造コストの抑制が期待できる。
また、ハーフラッチスイッチ33、フルラッチスイッチ34の可動端子が、ラッチスイッチレバー20のカム面35と背面側膨出部37と重なる位置で接触するようにしたことで、スイッチケース27にハーフラッチスイッチ33およびフルラッチスイッチ34を取付けるためのスペースを合理的に確保でき、スイッチアッセンブリー26を、ストライカ移動軌跡を境とした一方側(ラチェット側)のみに配置するとの思想を円滑に実施化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明によるドアラッチ装置のラッチユニットの正面図。
【
図3】前記ラッチユニットのラッチボディとスイッチケースとの配置関係を示す背面図。
【
図4】前記スイッチケースに取り付けられる3個のスイッチと前記ラッチボディとの関係を示す背面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を説明する。本発明の要旨は、ラッチスイッチとラチェットスイッチを備えたスイッチアッセンブリーにあり、ラッチユニット自体の構成は従来と同一でよく、
図1のように、ラッチユニット(ラッチ装置)の合成樹脂等で形成されるラッチボディ10には、ラッチ軸11によりラッチ12が軸止されるとともに、ラチェット軸13によりラチェット14が軸止される。ドアが閉扉移動すると、車体に固定されたストライカ15が相対的にラッチボディ10に形成した進入通路16内に進入し、ラッチ12の係合溝17と係合して、アンラッチ位置のラッチ12をフルラッチ方向(時計回転方向)に回転させる。ラッチ12がハーフラッチ位置になると、ラチェット14はバネ弾力により時計回転してラッチ12のハーフラッチ係合部18と係合可能となり、また、ラッチ12がフルラッチ位置になると、ラッチ12のフルラッチ係合部19と係合可能となり、ラチェット14がラッチ12のフルラッチ係合部19と係合すると閉扉動作は完了し、ドアは閉扉状態に維持される。
【0011】
上記ラッチユニットは、
図7に示した従来例と同様に「反力2分構造」と称される配置構造を備え、前記ラッチ12(ラッチ軸11)と前記ラチェット14(ラチェット軸13)とは、ストライカ15の進入通路16を挟んで対峙し、進入通路16により区分された上方側(ラッチ側)と下方側(ラチェット側)とに離れて配置されている。
【0012】
図2は、ラッチユニットの背面を示しており、前記ラッチ軸11の端部にはラッチスイッチレバー20およびオートクローズレバー21が取り付けられる。ラッチスイッチレバー20およびオートクローズレバー21は前記ラッチ12と一体的に連動回転するもので、実施例においては、ラッチボディ10を貫通する連結ピン22により互いに連結されて、ラッチ軸11を中心に連動回転する。
【0013】
前記オートクローズレバー21には従来周知のモータ式オートクローズ機構23が関連的に連結され、オートクローズ機構23のモータ動力によりオートクローズレバー21が回転すると、ハーフラッチ位置のラッチ12がフルラッチ位置に電動回転する。
【0014】
前記ラチェット軸13の端部には、前記ラチェット14と連動回転するラチェットレバー24が設けられる。ラチェットレバー24は好適には金属板製で、その一部を屈曲させてラチェット14に係合させ、連動可能としている。ラチェットレバー24はドアのオープンハンドル(図示なし)に関連的に連結され、オープンハンドルの開扉操作で回転すると、ラチェット14は開扉方向に回転して、前記ラッチ12との係合から解放され、ドアは開扉可能状態となる。
【0015】
また、ラチェットレバー24には従来周知のモータ式オートリリース機構25が関連的に連結され、モータ動力によってもラチェット14を前記ラッチ12から解放させて、開扉可能状態にできる。以上の構成は、従来のラッチユニットと同様である。
【0016】
26は、本願発明の要旨となるスイッチアッセンブリーであり、その合成樹脂製のスイッチケース27はねじ等の止着手段28によりラッチボディ10に固定される。スイッチケース27には、3個のスイッチ収納部29、30、31が一体的に形成され、スイッチ収納部29にはラチェットスイッチ32が、スイッチ収納部30にはハーフラッチスイッチ33が、スイッチ収納部31にはフルラッチスイッチ34が、それぞれ予め収納され、各スイッチ32〜34が取り付けられた状態でスイッチケース27は、ラッチボディ10に止着手段28で固定される。
【0017】
前記ハーフラッチスイッチ33およびフルラッチスイッチ34は、前記ラッチ12と共に連動回転する前記ラッチスイッチレバー20のカム面35との当接によりON/OFFする。また、ラチェットスイッチ32は、前記ラチェットレバー24と一体回転するラチェットスイッチレバー36との当接によりON/OFFする。
【0018】
しかして、スイッチケース27は、ストライカ移動軌跡を境として、前記ラッチボディ10のラチェット側の背面に配置され、より好適には、前記進入通路16を区画するラッチボディ10の背面側膨出部37と前後方向において重合しないように配置する。このため、スイッチケース27は背面側膨出部37の下面に当接するように配置するのが好ましく、全体のコンパクト
化がもたらされる。また、ラッチ12のハーフラッチ状態を検出するハーフラッチスイッチ33およびラッチ12のフルラッチ状態を検出するフルラッチスイッチ34の先端の可動端子のみが背面側膨出部37と前後方向において重合し、ラッチスイッチレバー20のカム面35と背面側膨出部37と重なる位置で接触するように配置することが好ましい。
【0019】
以上のように、本発明では、そのスイッチアッセンブリー26は、ストライカ移動軌跡を境として一方側(ラチェット側)のみに配置する思想を採用したので、ラチェットスイッチ32、ハーフラッチスイッチ33、およびフルラッチスイッチ34を、1個の共通のスイッチケース27に予め取り付けて製造することができ、もって、ラッチボディ10への組み付け作業コストを低減し、製造コストの抑制を期待できる。
【0020】
また、ハーフラッチスイッチ33、フルラッチスイッチ34の可動端子が、ラッチスイッチレバー20のカム面35と背面側膨出部37と重なる位置で接触するようにしたことで、スイッチケース27にハーフラッチスイッチ33およびフルラッチスイッチ34を取付けるためのスペース(スイッチ収納部30、31)を合理的に確保でき、スイッチアッセンブリー26を、ストライカ移動軌跡を境としてラチェット側のみに配置するとの思想を良好に実施できる。
【0021】
上記説明においては、スイッチケース27は、ストライカ移動軌跡を境としてラチェット側に配置する構成に変えて、ラッチ側に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
10…ラッチボディ、11…ラッチ軸、12…ラッチ、13…ラチェット軸、14…ラチェット、15…ストライカ、16…進入通路、17…係合溝、18…ハーフラッチ係合部、19…フルラッチ係合部、20…ラッチスイッチレバー、21…オートクローズレバー、22…連結ピン、23…オートクローズ機構、24…ラチェットレバー、25…オートリリース機構、26…スイッチアッセンブリー、27…スイッチケース、28…止着手段、29〜31…スイッチ収納部、32…ラチェットスイッチ、33…ハーフラッチスイッチ、34…フルラッチスイッチ、35…カム面、36…ラチェットスイッチレバー、37…背面側膨出部。