(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器の分野では、高機能化、高密度化およびコンパクト化の進展により、伝送信号が高周波化している。これに伴い、半導体、電源または光源などの部品から発生する熱量が増加しており、機器の安定的な動作のために放熱対策が非常に重要になってきている。このため、放熱対策として、電気・電子機器内の発熱部と、ヒートシンクなどの放熱部の隙間を埋める熱伝導率の高いシートや部材を設置する場合がある。
【0003】
一方、電気・電子機器の放熱用部材は、金属材料から、軽量性および電気絶縁性の面で有利なプラスチック材料に急速に置き換えられようとしている。しかし、プラスチック材料は金属材料などの無機物と比較して熱伝導性が低いため、放熱性が低い問題がある。係る問題を解決するため、成形体中に熱伝導性の無機充填剤を多量に(30質量%以上、ときには50質量%以上)配合することで、その熱伝導性を高める試みがなされている。
【0004】
しかしながら、成形体を構成する樹脂組成物材料に無機充填剤を多量に配合すると、樹脂組成物の溶融粘度が上昇してしまい、その後の工程で成形加工ができない、或いは成形加工性が著しく低下してしまう。また、成形品が得られた場合でも、成形体が非常に脆くなってしまう。また、成形体を構成する樹脂組成物中に無機充填剤や低分子量成分を多く含むと、例えば、射出成型や押出し成形により、高速で溶融物をダイスから吐出して成形する際に、成形体の最表面に無機充填剤(C)が存在しないスキン層又は無機充填剤(C)の含有割合が少ないスキン層が形成され、熱伝導率が大きく損なわれる問題がある。
【0005】
特許文献1では、成形加工性および成形体の脆化対策として、無機充填剤に表面処理をおこなう技術が開示されている。
特許文献2には、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合等の共重合体、熱可塑性エラストマー、パラフィン軟化剤、および熱伝導性無機フィラーを含む樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、所定量のポリアミド樹脂(A)と、マグネシウム化合物(B)と、ガラス繊維(C)と、脂肪族金属塩、アミド基含有化合物および無水マレイン酸基含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の添加剤(D)とを含有する樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、所定量の無機フィラーと、シランカップリング剤と、ポリアミドエラストマーとを含有するポリアミドエラストマー組成物が開示されている。
【0006】
特許文献5には、少なくとも一のポリアミドからなる、マトリックス、少なくとも一のプレポリマーであって、ポリアミドとプレポリマーの合計に対するポリアミドマトリックスの重量の割合とプレポリマーの重量の割合が特定量であるプレポリマー、少なくとも一の耐衝撃性改良剤、添加剤をそれぞれ特定量含む、耐衝撃性、流動性等に優れた成形用樹脂組成物が記載されている。
特許文献6には、熱可塑性ポリアミド、赤リン、ジアルキルホスフィン酸塩、特定の構造を有する耐衝撃性改質剤であるエチレン共重合体、タルク、さらなる添加剤をそれぞれ特定量含む熱可塑性成形材料が提案されている。
特許文献7には、融点が特定範囲にある半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、融解熱量が特定範囲にある半芳香族ポリアミド樹脂(B)と、ヘテロ原子を含む官能基構造単位を含む変性オレフィン重合体(C)と、繊維状充填材(D)と、特定の脂肪酸金属塩(E)とをそれぞれ特定量含む、半芳香族ポリアミド樹脂組成物が開示されている(請求項1)。
特許文献8には、(a)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド;(b)特定の繊維径を有する炭素繊維;(c)少なくとも1種の粒子状鉱物または塩類充填剤;(d)特定のTgを有する少なくとも1種の非晶質ポリマー;(e)カーボンブラック;(f)少なくとも1種のさらなる添加剤および/または付加剤をそれぞれ特定量有する、ポリアミド成形材料が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、本明細書で特定する数値「A〜B」は、数値Aと数値Aより大きい値および数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲をいう。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)および無機充填剤(C)を含む。
【0014】
<ポリアミド樹脂(A)>
ポリアミド樹脂(A)は、アミド結合を有する樹脂であればよく特に限定されない。
ポリアミド樹脂(A)として、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド96、非晶質性ポリアミド、高融点ポリアミド、ポリアミドRIM、ポリアミドMIX6等;前記ポリアミドを構成する単量体を2種類以上含む共重合体、ポリアミド6T、ポリアミド9Tのようなテレフタル酸共重合体、即ち、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/66/610共重合体、ポリアミド6/66/11/12共重合体、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミド共重合体等が挙げられる。ポリアミド樹脂は、1種類単独で又は2種類以上を混合して用いられる。これらのうちでも特に、結晶性が低く、衝撃耐性の高いポリアミド6、ポリアミド12がより好ましい。
【0015】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)に他の樹脂を含んでいてもよい。即ち、ポリアミド樹脂(A)と他の樹脂を混合した混合重合体を用いてもよい。そのような混合重合体の例として、ポリアミド/ポリエステル混合重合体、ポリアミド/ポリフェニレンオキシド混合重合体、ポリアミド/ポリカーボネート混合重合体、ポリアミド/ポリオレフィン混合重合体、ポリアミド/スチレン/アクリロニトリル混合重合体、ポリアミド/アクリル酸エステル混合重合体、ポリアミド/シリコーン混合重合体等が挙げられる。
【0016】
樹脂組成物の全体100質量%中、ポリアミド樹脂(A)は10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜38質量%、さらに好ましくは、20〜35質量%である。40質量%以下とすることにより、無機充填剤(C)の量を増やすことが可能となり、熱伝導性を向上させることができる。他の樹脂を含む場合には、樹脂組成物の全体100質量%中、他の樹脂の含有量は20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0017】
<エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)>
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)とは、エチレン由来の構造単位および炭素数が3〜20のα−オレフィン由来の構造単位を含むエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)である。エチレン−α−オレフィン共重合体には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンなどの共役ジエン;1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物の単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。酸変性物(B)中、エチレン由来の構造単位および炭素数が3〜20のα−オレフィン由来の構造単位が50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。また、エチレン由来の構造単位および炭素数が3〜20のα−オレフィン由来の構造単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0018】
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)におけるα−オレフィンの炭素数は3〜20とする。この範囲とすることにより、樹脂組成物の機械物性の向上効果が得られる。より好ましくは6〜20であり、更に好ましくは6〜10である。
【0019】
α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−ペンテン−1、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1-イコセン、スチレン、p−メチルスチレン等を挙げることができる。なかでも、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが好ましく、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが更に好ましい。これらの化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の主鎖の全構造単位中のエチレンの含有量は、30〜99.5mol%であることが好ましく、50〜95mol%であることがより好ましい。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の主鎖の全構造単位中のα−オレフィンの含有量は、0.5〜70mol%であることが好ましく、5〜50mol%であることがより好ましい。当該酸無水物(B)の主鎖の全構造単位中のα−オレフィンの含有量を0.5〜70mol%とすることにより、成形加工性に関わる特性がより優れたものとなる。
【0021】
共重合体を酸変性する酸としては、不飽和カルボン酸含有化合物またはその誘導体が好適に用いられる。例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、アジピン酸、無水アジピン酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水マロン酸、が例示できる。これらの酸は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち特に好ましくは、無水マレイン酸、アジピン酸である。エチレン−α−オレフィン共重合体の酸無水物(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)中の酸付加率は、無機充填剤(C)の分散性の向上の観点から、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。更に好ましくは0.1〜1質量%である。
【0023】
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の製造方法は特に限定されないが、メタロセン触媒と有機アルミニウム化合物を触媒成分とした重合触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸含有化合物またはその誘導体の存在下で共重合する方法がある。また、エチレンとα−オレフィンとを共重合した後に不飽和カルボン酸含有化合物またはその誘導体を加えて、有機過酸化物や熱分解法等によって発生させたラジカルを開始剤として、不飽和カルボン酸含有化合物またはその誘導体をα−オレフィンにグラフトさせる方法が例示できる。重合方法として、例えば、連続スラリー重合法、連続バルク重合法が挙げられ、連続スラリー重合法が好ましい。
【0024】
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の重量平均分子量は、70,000〜500,000が好ましく、100,000〜200,000がさらに好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の重量平均分子量が70,000以上になると、以下のような効果が得られる。第一に、成形体の熱伝導率と表面平滑性と機械物性がより向上する。また、成形の際、樹脂組成物がドローダウンし難いなど成形性がより良好となるために好ましい。更に、混練の際に適切なせん断力が加わりやすいので、無機充填剤(C)が適度に解れ、成形体を平滑にすることができる。
また、重量平均分子量が500,000未満であると、混練機械への過負荷や材料との粘度差が大きくなりすぎず、無機充填剤(C)の分散が容易となる。
【0025】
ポリアミド樹脂(A)に対して、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の含有量(質量)比は、ポリアミド樹脂(A)/エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)=70/30〜95/5とする。この範囲にあることで、無機充填剤の分散性向上と機械物性向上の効果が期待できる。より好ましくは、80/20〜90/10である。この範囲にすることで、ポリアミド樹脂本来の耐熱性を保持しながら、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物によるフィラーの分散性向上と機械物性の向上が期待できる。
即ち、ポリアミド樹脂(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の合計100質量%中、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の含有量は、5〜30質量%であり、好ましくは10〜20質量%である。
【0026】
樹脂組成物の全体100質量%中、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)は0.6〜17質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜17質量%、さらに好ましくは2〜12質量%である。0.6〜17質量%の範囲にあることにより、樹脂組成物の耐熱性を損なわずに樹脂組成物を作製できる。
【0027】
<無機充填剤(C)>
本実施形態で用いる無機充填剤(C)は、無機物を核とする粒子である。そのため、無機物単独のみならず、無機物の核を覆う被覆層が有機物(例えば、配位子、表面処理剤)であるコアシェル型粒子であっても無機充填剤(C)である。また、核のみの粒子であってもよい。
【0028】
無機充填剤は、セラミックス、炭素材料といった無機粒子を指す。また、熱伝導率は一般に5W/mK以上であるものが好ましい。無機充填剤の粒子表面に被覆層の無い単一物質として、炭素材料では、例えばグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、フラーレン等が挙げられる。セラミックスでは、例えば酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カオリンクレー、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム等の金属酸化物や窒化物やホウ化物、炭酸塩、リン酸塩が挙げられる。コアシェル型粒子の無機充填剤(C)の場合には、これらに被覆層を形成すればよい。
【0029】
無機充填剤(C)の熱伝導率が5W/mK以上であることにより、熱導電性に優れた電気・電子機器等の発熱の除去に好適に使用できる樹脂組成物とすることが可能となる。また、核のみでなく、被覆層を有する無機充填剤(C)も、熱伝導率が5W/mK以上であることが好ましい。
【0030】
無機充填剤(C)の熱伝導率の測定方法は、定常法、ホットディスク法、周期加熱法、熱線法、レーザーフラッシュ法が挙げられる。どの方法を用いてもよい。
無機充填剤(C)の熱伝導率の測定方法として具体的には、例えばホットディスク法を用い、熱物性測定装置TPS―500、直径7mmφのセンサーを用いて、23℃の雰囲気で測定して求めることができる。
【0031】
無機充填剤(C)の平均粒子径は0.1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。平均粒子径の測定は、電子顕微鏡を用いて測定できる。
測定方法として具体的には、例えば電子顕微鏡(走査電子顕微鏡S−4300、日立製作所製)を用いて、拡大画像(3千倍〜1万倍程度)で観察される各粒子径の最大値と最小値の中間値を求め、さらに20個〜50個程度の粒子の平均値が本実施形態における粒子径である。平均粒子径が前記範囲内にあることで、熱伝導性粒子自体が凝集しにくく、分散性が良好で充分な熱伝導性が得られ、成形加工性や機械物性が向上する。
【0032】
無機充填剤(C)が、粒子表面に被覆層を有する場合、分散性向上等の点で好ましい。被覆層としては、例えばリン酸エステル、シランカップリング剤等で形成された有機処理、例えば酸化アルミや酸化ケイ素等で形成された無機処理が挙げられる。被覆層としては有機処理および無機処理は、単独または併用されてもよい。
【0033】
表面処理剤として具体的には、例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシラン、オクチルトリエトキシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールなどにより表面処理が施されていてもよい。これらの表面処理剤は、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
前記表面処理剤は、アルコキシシリル基以外の反応性官能基を有しないアルキルアルコキシシラン化合物が好ましい。アルコキシシリル基以外の反応性官能基、つまり親水性基を持たないので、表面処理後の熱伝導性粒子の疎水性が高くなり、ポリアミド樹脂中での分散性がより向上する。
【0034】
無機充填剤(C)100質量部に対して、前記表面処理剤で形成した被覆層が0.05〜5質量部であることが好ましい。被覆層が前記範囲であることで、被覆層を有する無機充填剤(C)は、ポリアミド樹脂との分散性がより向上する。
【0035】
無機充填剤(C)の表面処理剤における被覆層の形成には、直接処理法(例えば乾式法、スラリー法、スプレー法等)、インテグラルブレンド法(例えば直接法、マスターバッチ法等)、ドライコンセントレート法等の公知の方法を使用できる。このうち簡易的に処理ができる方法として、直接処理法、中でも乾式法が好ましい。
【0036】
前記乾式法を行う場合は、例えば無機充填剤をヘンシェルミキサー等で撹拌・混合しながら表面処理剤を滴下あるいは噴霧しながら混合し、必要に応じて加熱処理する方法が挙げられる。被覆層形成後の熱伝導性粒子は、凝集する場合があるためボールミル等で粉砕することが好ましい。なお、表面処理剤の滴下や噴霧を行う際にアルコール等の有機溶剤で希釈してから被覆層を形成することも好ましい。
【0037】
<酸化防止剤>
本実施形態に用いる酸化防止剤は、樹脂組成物及び成形体製造時にポリアミド樹脂(A)の熱劣化を抑制できる。酸化防止剤は、公知の化合物を使用できる。酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アミド系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0038】
酸化防止剤は、分散不良が生じない限度で使用すればよく、例えば樹脂組成物100質量%中に0.01〜5質量%含むことが好ましく、0.1〜3質量%含むことがより好ましい。
【0039】
<他の任意成分>
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて他の任意成分を配合できる。他の任意成分は、例えば着色剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、離型剤、難燃剤が挙げられる。他の任意成分の選択およびその使用量は、本実施形態の課題を解決できる範囲内であれば特に限定されず使用できる。
【0040】
前記着色剤は、公知の染料、有機顔料および無機顔料を使用できる。前記染料は、例えば構造的分類によるとスチリル染料、ピリドンアゾ染料、ピラゾールアゾ染料、アントラキノン染料、ヘテロアゾ染料、ベンゼンアゾ染料、ナフトキノン染料、インドアニリン染料、シアニン染料等が挙げられる。また、用途的分類によれば分散染料、建染染料、油溶性染料等が挙げられる。
【0041】
前記有機顔料は、例えばアゾレーキ、ハンザ、ベンズイミダゾロン、ジアリライド、ピラゾロン、ベンジジンイエロー、ジスアゾのアゾ顔料;、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジオキサジン、アントラキノン、イソインドリノン等の縮合多環系顔料およびアニリンブラックが挙げられる。
【0042】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、例えばポリアミド樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)および無機充填剤(C)を加工機に投入し、溶融混練を行うことで製造できる。溶融混練温度は、200〜300℃が好ましい。加工機は、例えばニーダー,ロールミル,スーパーミキサー,ヘンシェルミキサー,シュギミキサー,バーティカルグラニュレーター,ハイスピードミキサー,ファーマトリックス,ボールミル,スチールミル,サンドミル,振動ミル,アトライター,バンバリーミキサー等の回分式混練機;二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等が挙げられる。樹脂組成物の形状は、例えば、ペレット状、粉末状および顆粒状の形状が好ましく、これらの中でもペレット状がより好ましい。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物が含む無機充填剤(C)の割合は、樹脂組成物100質量%中、40〜80質量%が好ましく、60〜70質量%がより好ましい。無機充填剤(C)を40質量%以上含むことで熱伝導性がより向上する。また無機充填剤(C)を80質量%以下含むことで、成形加工性および機械物性がより向上する。
【0044】
本実施形態の成形品は、前記樹脂組成物を溶融・混練し、成形機を使用して得ることができる。成形方法は、公知の方法が使用できる。例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、圧縮成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、および真空成形などが挙げられる。この中でも溶融物が高速で吐出される押出成形、射出成形が好ましく、射出成形がもっとも好ましい。
【0045】
本実施形態の成形品は、例えば、容器および包装材[食料品(生鮮食料品、加工食料品、清涼飲料等)用容器および包装材、雑貨(食器、玩具、文房具、電気部品、家電品、家具、嗜好品等)用容器および包装材、繊維製品(衣料品、靴、寝具、カーペット、マット、ちり紙、新聞、ハンカチ、タオル等)用容器および包装材、薬品(工業用薬品、医薬品等)用容器および包装材、各種産業用被覆材(農業用温室ハウス被覆材、自動車用表面保護被覆シート等)、その他用途(レジ袋、買い物袋、ゴミ袋等)用容器および包装材]、自動車用部品[インスツルメントパネル、ドアトリム、ピラー等の内装材、バンパー等の外装材、ガソリンタンク、バルブ等の内部部品等]、家電製品[テレビ、録画再生機(ビデオ、ハードディスク、DVD、BD等)、チューナー、パラボラアンテナ、アイロン、ヘアードライヤー、シェーバー、電動歯ブラシ、ヘアアイロン、フェイスケア機器、ヘルスメーター、布団乾燥機、洗濯機、冷蔵庫、ワインセラー、炊飯器、電子レンジ、電子天秤、食器乾燥機、フードプロセッサー、ホットプレート、電気ポット、コーヒーメーカー、IH調理器、生ゴミ処理機、掃除機、時計、電話機、照明機器、換気扇、エアコン、扇風機、温風器、除湿器、加湿器、空気清浄機、マイナスイオン発生器、マッサージチェア、フットマッサージャー、健康器具、電動工具、家庭用ゲーム機およびゲームソフト、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ機器、電子楽器、リモコン、充電器などの]の筐体および内部部品等、パソコン機器[パソコン本体、ディスプレー(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクターおよび有機EL等)、ノートパソコン、プリンター、記録媒体ドライブ(ハードディスク、MO、メモリーカード、CD、DVD、BD、フレキシブルディスク等)、記録媒体(USBメモリー、ICカード等)筐体、マウスなどの筐体および内部部品]の筐体および内部部品等、小型携帯機器[無線機、携帯電話、PHS、PDA、スマートフォン、携帯ゲーム機およびゲームソフト、テレビ、ナビゲーション機器、GPS機器、ヘッドホンステレオ、光学カメラ、デジタルカメラ電子辞書および計算機などの筐体および内部部品等]の筐体および内部部品等、事務用機器[コピー、ファクシミリ、スキャナおよびそれらの複合機、シュレッダー、紙折機、電子黒板、タイムレコーダー、ネットワークカメラ、喫煙カウンター、ラベルライター、電子レジスタ、電子チェックライター、ラミネーターおよび製本機など]の筐体および内部部品等、遊技機[アーケード型ゲーム機、パチンコ、スロットマシーンなど]の筐体および内部部品等、医療機器[ドライイメージャー、メディカルプリンター、メディカルレコーダー、メディカルカメラ、X線テレビシステム、CTスキャナシステム、マンモグラフシステム、血管撮影システムおよび超音波診断システムなどの筐体および内部部品等]、電子部品[各種ケース、各種ホルダー、カバー、冷却ファン、ギヤー、センサー、バルブ、コネクター、ソケット、トランスボビン、抵抗器、ボタン、スイッチ、ハンドル、分電盤、ブレーカー、コンデンサー、コンセント、モーター、トランス、チューナー、電磁開閉器、光ピックアップ、発振子、端子板、変成器、プラグ、タイマーおよびプリント配線板等]、搬送材[コンテナ、フレキシブルコンテナ、台車、トレー、キャリアテープ、パレット、シートスキッド(自動車シート搬送用)、ストレッチフィルム(荷崩れ防止用)、結束バンド、発泡緩衝材、エアーキャップ(緩衝材)など]、生活資材用成形品[家具(椅子、机、ハンガー等)、住宅等の建材(玄関・室内等の各種ドア、内・外壁材、天井材、屋根材、タイル、断熱・遮熱材等)、趣味用品[スポーツ用品(ラケット、スキー板、スノーボード等)、園芸用品(プランター等)、アウトドア用品(釣り竿等)等]、およびその他の日用品[食器、玩具、文具、オーラルケア用品、トイレタリー用品(バスユニット、便器等)、健康器具等]などの用途で使用することができる。
【0046】
これらの中でも、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品等の成形品に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、発熱部で生じた熱を放熱部へと効率よく伝達する。熱を効果的に放散させるための放熱シート、さらには発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するための外装材料として用いることができる。このため、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ等の小型あるいは携帯型電子機器類、LEDランプや電池周り部品等の熱源の周りで高放熱が必要とされる部品などに用いられる熱伝導部材に好適である。なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、熱伝導性に優れるものであるが、熱伝導性が要求されない樹脂組成物および成形体として用いてもよいことは言うまでもない。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物によれば、熱伝導率、機械物性、表面平滑性およびリサイクル性に優れた樹脂組成物を得ることができる。また、本実施形態の樹脂組成物によれば、特定量のポリアミド樹脂(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)を配合することにより、無機充填剤(C)の分散性を向上させ、成形物の表面平滑性と熱伝導率に富んだ樹脂組成物が得られる。また、多量の無機充填剤(C)を配合する際に軟化剤を使用しないために、耐熱性や機械物性に富んだ樹脂組成物が得られる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。
【0049】
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の重量平均分子量の測定方法と、無機充填剤(C)の熱伝導率の測定方法は以下の通りである。
<エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物の重量平均分子量>
島津製作所製ProminenceGPCシステムを用いて、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)法により、分子量分布曲線を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を、ポリスチレン換算の値から算出した。分子量分布(Mw/Mn)は、得られた重量平均分子量及び数平均分子量の値から算出した。ポリスチレン換算に使用した標準ポリスチレンには、VARIAN社製ポリスチレンを用い、カラムは東ソー社製TSKgelGMH−HTを用い、測定時のキャリアにはオルトジクロロベンゼンを用いた。カラム温度は140℃、キャリア流速は1.0mLでおこなった。
【0050】
<無機充填剤(C)の熱伝導率の測定方法>
プレス機を用いて、無機充填剤(C)を100MPaで圧縮した板状の試料を用意した。そして、この試料を、京都電子工業社製ホットディスク法熱物性測定装置TPS―500、直径7mmφのセンサーを用いて、23℃の雰囲気で測定した。
【0051】
以下の実施例及び比較例で用いた組成物の原料成分を示す。
【0052】
<ポリアミド樹脂(A)>
A−1:ポリアミド6(密度1.13g/cm
3、融点225℃)
A−2:ポリアミド66(密度1.20g/cm
3、融点265℃)
【0053】
<エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)>
B−1:エチレン−オクテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=1×10
5)
B−2:エチレン−オクテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=3×10
5)
B−3:エチレン−オクテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=2×10
5)
B−4:エチレン−オクテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=4×10
4)
B−5:エチレン−オクテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=8×10
4)
B−6:エチレン−ブテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=2×10
5)
B−7:エチレン−ブテン共重合体のアジピン酸変性物(Mw=2×10
5)
B−8:エチレン−ブテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=1×10
5)
B−9:エチレン−ブテン共重合体のアジピン酸変性物(Mw=1×10
5)
B−10:エチレン−ヘキセン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=2×10
5)
B−11:エチレン−ヘキセン共重合体のアジピン酸変性物(Mw=2×10
5)
B−12:エチレン−ヘキセン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=1×10
5)
B−13:エチレン−ヘキセン共重合体のアジピン酸変性物(Mw=1×10
5)
B−14:エチレン−4メチルペンテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=2×10
5)
B−15:エチレン−4メチルペンテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=2×10
5)
B−16:エチレン−4メチルペンテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=1×10
5)
B−17:エチレン−4メチルペンテン共重合体の無水マレイン酸変性物(Mw=1×10
5)
【0054】
<エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B−1)の合成>
冷却管を備えた1000mLのフラスコに溶媒としてキシレン400mL、基材樹脂(X)(以下、単に(X)ともいう)としてエチレン−オクテン共重合体(プライムポリマー社製、モアテック0138N)60g、不飽和カルボン酸およびその誘導体(Y)(以下、単に(Y)ともいう)として無水マレイン酸1.0gを入れ140℃に加熱、撹拌し、エチレン−オクテン共重合体を溶解させた後、40mLのキシレンにジクミルパーオキサイド4.0gを溶解させたキシレン溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間、140℃を保持し、反応を行った。なお、加熱はオイルバスを用いた。反応終了後、内容物を室温まで下げ、アセトンに投入して、目的のエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物を析出させ、濾過した。
得られたエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物から未反応の無水マレイン酸を除去するために、500mLのメチルエチルケトンに入れ、10分間撹拌し、その後、ろ過した。この操作を2回繰り返した後、120℃、10mmHg以下で2時間、真空乾燥を行い、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B−1)を得た。
【0055】
<(B−2〜B−5)の合成>
(B−1)の合成について、(Y)の無水マレイン酸の量と反応温度を変更することで、B−2〜B−5を得た。
<(B−6〜B−9)の合成>
(B−1)の合成について、(X)としてエチレン‐ブテン共重合体(プライムポリマー社製、ネオゼックス20201J)を使用し、(Y)として無水マレイン酸もしくはアジピン酸の量と反応温度を変更することで、B−6〜B−9を得た。
<(B−10〜B−13)の合成>
(B−1)の合成について、(X)としてエチレン‐ヘキセン共重合体(プライムポリマー社製、エボリューSP3010)を使用し、(Y)として無水マレイン酸もしくはアジピン酸の量と反応温度を変更することで、B−10〜B−13を得た。
<(B−14〜B−17)の合成>
(B−1)の合成について、(X)としてエチレン‐
4メチルペンテン共重合体(プライムポリマー社製、ウルトゼックス2022N)を使用し、(Y)として無水マレイン酸もしくはアジピン酸の量と反応温度を変更することで、B−14〜B−17を得た。
【0056】
<無機充填剤(C)>
無機充填剤(C−1);平均粒径:1μm、熱伝導率15W/mK
無機充填剤(C−2);平均粒径:20μm、熱伝導率15W/mK
無機充填剤(C−3);平均粒径:50μm、熱伝導率15W/mK
無機充填剤(C−4);平均粒径:13μm、熱伝導率35W/mK
無機充填剤(C−5);平均粒径:1μm、熱伝導率15W/mK
無機充填剤(C−6);平均粒径:1μm、熱伝導率15W/mK
無機充填剤(C−7);合成無水炭酸マグネシウム平均粒径:1μm、熱伝導率15W/mK
【0057】
<無機充填剤(C−1)の製造方法>
合成無水炭酸マグネシウムが99質量%、n−ドデシルトリメトキシシランが1質量%となるように、平均粒径1μmの合成無水炭酸マグネシウムにn−ドデシルトリメトキシシランを加え、ヘンシェルシェルミキサーで30Hzの速度で80℃に加熱しながら10分間撹拌して無機充填剤(C−1)を得た。
【0058】
<無機充填剤(C−2)の製造方法>
平均粒径1μmの合成無水炭酸マグネシウムに代えて、平均粒径20μmの合成無水炭酸マグネシウムを用いた以外は、無機充填剤(C−1)と同様の方法により、無機充填剤(C−2)を得た。
【0059】
<無機充填剤(C−3)の製造方法>
平均粒径1μmの合成無水炭酸マグネシウムに代えて、平均粒径50μmの合成無水炭酸マグネシウムを用いた以外は、無機充填剤(C−1)と同様の方法により、無機充填剤(C−3)を得た。
【0060】
<無機充填剤(C−4)の製造方法>
窒化ホウ素が97質量%、n−ドデシルトリメトキシシランが3質量%となるように、平均粒径13μmの窒化ホウ素(電気化学工業社製、MGP)にn−ドデシルトリメトキシシランを加え、ヘンシェルシェルミキサーで30Hzの速度で80℃に加熱しながら10分間撹拌して無機充填剤(C−4)を得た。
【0061】
<無機充填剤(C−5)の製造方法>
合成無水炭酸マグネシウムが99質量%、アミノトリメトキシシランが1質量%となるように、平均粒径1μmの合成無水炭酸マグネシウムにアミノトリメトキシシランを加え、ヘンシェルシェルミキサーで30Hzの速度で80℃に加熱しながら10分間撹拌して無機充填剤(C−5)を得た。
【0062】
<無機充填剤(C−6)の製造方法>
アミノトリメトキシシランに代えてエポキシトリメトキシシランを用いた以外は、無機充填剤(C−5)の製造方法と同様にして、無機充填剤(C−6)を得た。
【0063】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂(1):エチレン−α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン社製、カーネルKF283、Mw=7×10
4)
【0064】
[実施例1]
〔樹脂組成物の製造〕
ポリアミド樹脂(A−1)38質量%とエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B−1)2質量%と無機充填剤(C−1)60質量%とを、ヘンシェルミキサーに投入し、温度20℃、時間3分の条件でプレミックスした後、スクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=38〜42の押出機に供給し、回転数250rpm、設定温度250℃の条件で溶融混練、押し出したものを、ペレタイザーを使用してペレット状の樹脂組成物を得た。
【0065】
[実施例2〜37、比較例1〜6]
表1、2、3記載の材料の種類、および配合量(質量%)とした以外は、実施例1の樹脂組成物と同様にペレット状の樹脂組成物を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
〔評価方法〕
表1〜3の配合で得られた樹脂組成物を使用して下記の評価項目について試験を行った。その結果を表4に示す。
【0070】
<熱伝導率>
樹脂組成物を射出成形機(東芝機械社製)に投入し250℃に加熱して、射出圧力50MPa、金型温度40℃にて、縦および横50mm・厚み2mmのプレートを6個作成し、ホットディスク法熱物性測定装置(TPS−500 京都電子工業社製)を使用して、直径7mmφのセンサーを用いて、熱伝導率(単位:W/m・K)を測定した。
【0071】
<引張破壊点強度測定>
樹脂組成物を射出成形機(東芝機械社製)に投入し、射出圧力50MPa、金型温度40℃にて、ダンベル試験片(JIS K 7139、タイプA1、厚さ4mm)を作製した。この試験片に対し、ストログラフVE10D(東洋精機社製)を用いて、JIS K 7161に準拠し、引張破壊点強度測定をおこなった。引張破壊点強度の数値が低いほど試験片の機械強度が不足している。樹脂組成物を製造する際、熱可塑性樹脂が酸化、加水分解することによる劣化、堆積物または目ヤニの発生による異物多く含まれる場合、引張破壊点強度が低下する。
【0072】
<スキン層評価>
樹脂組成物を射出成形機(東芝機械社製)に投入し、射出温度250℃、射出圧力50MPa、金型温度40℃にて、縦及び横50mm、厚みが2mmの金型を用いて、プレート状の成形品を作製した。得られた成形品を切削し、ビデオマイクロスコープ「VHX−900」(キーエンス社製)を用いて倍率1000倍にてスキン層の表面観察を行なった。スキン層が薄い方が、熱伝導を阻害する事が無く、熱伝導率の高い成形品が得られる。
A:スキン層の厚さが3μm未満。
B:スキン層の厚さが3μm以上。
【0073】
<表面平滑性>
熱伝導性樹脂組成物をT−ダイフィルム成形機(東洋精機社製)に投入し、成形温度250℃、スクリュー回転数80rpmで溶融し押出成形することで、幅100mm、厚さ100μmのフィルム状の成形品を得た。得られたフィルム1mについて、目視による表面平滑性の評価をおこなった。凝集物がフィルム表面に突起物として存在するか否かを評価した。
A:突起物が無く、平滑。
B:突起物が1個以上10個以下、または突起は無いが平滑では無い。
C:突起物が11個以上存在。
【0074】
【表4】
【0075】
表4から明らかなように、本実施例の熱伝導性樹脂組成物の使用により、良好な熱伝導性、成形加工性を有し、機械強度が良好な成形体が得られることが確認できた。このように、本実施例の熱伝導性樹脂組成物は、無機充填剤(C)を高濃度に配合した場合でも、成形加工性に優れている。
一方、比較例の熱伝導性樹脂組成物を使用した成形品では、熱伝導性、平滑性、機械強度の低下が顕著であり、本実施例の成形品よりも劣っていた。
【解決手段】本発明に係る熱伝導性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)、エチレン由来の構造単位および炭素数が3〜20のα−オレフィン由来の構造単位を含むエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)および無機充填剤(C)を含む。そして、ポリアミド樹脂(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)の含有量比が、ポリアミド樹脂(A)/エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)=70/30〜95/5であり、樹脂組成物の全体100質量%中、ポリアミド樹脂(A)は10〜40質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物(B)は0.6〜17質量%、無機充填剤(C)は40〜80質量%である。