特許第6417668号(P6417668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6417668
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】バッテリの車載構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20060101AFI20181029BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   B60K1/04 Z
   B62D25/20 G
   B62D25/20 F
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-24224(P2014-24224)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-150927(P2015-150927A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】橿村 友晃
(72)【発明者】
【氏名】轟木 直人
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡部 寛人
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/063393(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/007515(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/086297(WO,A1)
【文献】 特開2008−174181(JP,A)
【文献】 特開平7−81625(JP,A)
【文献】 特開2010−163039(JP,A)
【文献】 特開2011−168242(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073464(WO,A1)
【文献】 特開2012−176751(JP,A)
【文献】 特開2011−6052(JP,A)
【文献】 特開平6−115357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両床下の骨格部材に取り付けられるバッテリケースと、
前記バッテリケース内に配置されるバッテリと、を備え、
前記バッテリケースは、
車幅方向両側に設けられて車体前後方向に延び、前記骨格部材に取り付けられる側部部材と、
前記車幅方向両側の各側部部材相互を接続する接続部材と、
前記側部部材及び接続部材の下に取り付けられた底板と、を有し、
前記バッテリは、前記車幅方向両側の各側部部材相互間において、該側部部材から離間して前記底板上に固定され、
前記接続部材は、高強度部と、該高強度部よりも強度が低い低強度部と、を備え、これら高強度部と低強度部とが車幅方向に沿って設けられていることを特徴とするバッテリの車載構造。
【請求項2】
前記高強度部は、前記バッテリよりも車幅方向の長さが長く、かつ車幅方向の端部が、前記バッテリの車幅方向の端部よりも車幅方向外側に位置し、
前記高強度部の車幅方向の端部に前記低強度部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリの車載構造。
【請求項3】
前記バッテリは、前記接続部材の高強度部に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のバッテリの車載構造。
【請求項4】
前記接続部材は、前記バッテリに対して車体前後方向両側に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバッテリの車載構造。
【請求項5】
前記接続部材の高強度部は、車幅方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバッテリの車載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載したバッテリに対する保護機能を備えるバッテリの車載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
走行駆動源となる電気モータを備える電動車両は、電気モータの電源として大型で大容量のバッテリが必要となる。このようなバッテリは、車体の床下に搭載されることがある(下記特許文献1)。特許文献1に記載されたバッテリの車載構造は、車幅方向両側で車体前後方向に延びる側部部材と、車幅方向両側の側部部材相互を連結する複数の接続部材とを備え、車幅方向両側の側部部材相互間にバッテリが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−131486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来のバッテリの車載構造は、車両が側方から衝撃荷重を受けると、一方の側部部材が受ける荷重を接続部材に伝達する。ところが、この場合、荷重が伝達された接続部材が、たわみ、もしくは、屈曲するなどして変形する場合があり、変形した接続部材は、バッテリに干渉して損傷を及ぼす恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、側部部材が受ける荷重が接続部材に伝達されても、バッテリの損傷を抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車幅方向両側の各側部部材相互を接続する接続部材は、高強度部と、該高強度部よりも強度が低い低強度部と、を備え、これら高強度部と低強度部とが車幅方向に沿って設けられていることを特徴とする。
本発明は、車両床下の骨格部材に取り付けられるバッテリケースが、車幅方向両側に設けられて車体前後方向に延び、骨格部材に取り付けられる側部部材と、車幅方向両側の各側部部材相互を接続する接続部材と、側部部材及び接続部材の下縁に取り付けられた底板と、を有する。バッテリケース内に配置されるバッテリは、車幅方向両側の各側部部材相互間において、側部部材から離間して底板上に固定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両が側方から衝撃荷重を受け、この衝撃荷重が側部部材から接続部材に伝達されると、接続部材は、低強度部が破壊されることで衝撃を吸収する。これにより、接続部材の高強度部は、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制されてバッテリに対する干渉が抑制され、バッテリの損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係わるバッテリケースの一部を示す平面図である。
図2図2は、図1のバッテリケースを有するバッテリの車載構造を備える電気自動車の側面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係わるバッテリケースの一部を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第3の実施形態に係わるバッテリケースの一部を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第4の実施形態に係わるバッテリケースの一部を示す平面図である。
図6図6は、本発明の第5の実施形態に係わるバッテリケースの一部を示す平面図である。
図7図7は、本発明の第6の実施形態に係わるバッテリケースの一部を示す平面図である。
図8図8は、図7の第6の実施形態による作用説明図である。
図9図9は、バッテリケースのより具体的な例を示す平面図である。
図10図10は、図9のバッテリケースの斜視図である。
図11図11は、図9のA部を拡大して示す斜視図である。
図12図12(a)は図11のA−A断面図、図12(b)は図11のB−B断面図である。
図13図13は、図9図12に示した例における低強度部の別の例を示すクロスフレームの斜視図である。
図14図14(a)は図13のD−D断面図、図14(b)は図13のE−E断面図である。
図15図15は、図13の変形例を示すクロスフレームの斜視図である。
図16図16(a)、(b)は、図13の別の変形例を示すクロスフレームの斜視図である。
図17図17(a)、(b)は、図13のさらに別の変形例を示すクロスフレームにおける低強度部、高強度部の、図14(a)、(b)に対応する断面図である。
図18図18は、図17とはさらに別の変形例を示すクロスフレームの図11に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係わるバッテリケース1を示している。このバッテリケース1を備えるバッテリの車載構造が、図2に示す電動車両である電気自動車2に設けられている。電気自動車2は、前輪3と後輪5との間の床下にバッテリケース1を搭載している。なお、図1及びその他の図において、図中のFRで示す方向が車両前方である。
【0010】
図1のバッテリケース1はその一部を示しており、図1中で上下方向に対応する車幅方向両側に、図1中で左右方向に対応する車体前後方向に沿って延びるサイドフレーム7,9を備えている。車幅方向両側のサイドフレーム7,9は、車幅方向に延びるクロスフレーム11により互いに接続されて連結されている。
【0011】
サイドフレーム7,9及びクロスフレーム11の下部には、底板13を溶接あるいはボルト締結によって取り付け、底板13上には、図示しないボルト、ナットなどの締結具を用いてバッテリ15を固定している。バッテリ15は、車幅方向長さが、サイドフレーム7,9相互の間隔よりも短く、かつサイドフレーム7,9相互間のほぼ中央に位置している。したがって、バッテリ15はサイドフレーム7,9から離間して配置されていることになる。また、バッテリ15はクロスフレーム11に対しても離間して配置している。
【0012】
なお、ここでのバッテリ15は、以後に説明するバッテリも同様であるが、例えば薄型電池を複数積層して、これら複数の薄型電池を直列または並列に接続したバッテリモジュールを、複数備える組電池である。薄型電池は、例えばリチウムイオン二次電池のように、自動車用の二次電池として利用される。但し、本実施形態においては電池を薄型電池としているが、電池の形状はこれに限定されず、例えば直方体等の他の形状の電池であってもよい。
【0013】
上記したサイドフレーム7,9は、図2に示す電気自動車の車幅方向両側にて車体前後方向に延在するサイドシル17、あるいは図示しないサイドメンバに取り付けられている。これらサイドシル17やサイドメンバは、車体の高剛性部材あるいは強度部材に相当する。サイドフレーム7,9は、車幅方向両側に設けられて車体前後方向に延びる側部部材を構成し、クロスフレーム11は、車幅方向両側の各側部部材相互を接続する接続部材を構成している。
【0014】
上記した接続部材としてのクロスフレーム11は、車幅方向両側の高強度部19,21と、これら高強度部19,21相互間に位置して高強度部19,21よりも強度が低い低強度部23とを備えている。低強度部23は、車幅方向長さが、高強度部19,21及びバッテリ15の車幅方向長さよりも短く、バッテリ15の車幅方向ほぼ中央位置に対応するよう配置している。
【0015】
高強度部19,21の車幅方向内側の端部19a,21aは、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向内側に位置して、低強度部23の車幅方向両側の端部23a,23bにそれぞれ溶接固定されている。また、高強度部19,21の車幅方向外側の端部19b,21bは、サイドフレーム7,9の車幅方向内側の端面7a,9aにそれぞれ溶接固定されている。したがって、クロスフレーム11は、高強度部19,21と低強度部23とが車幅方向に沿って設けられている。
【0016】
このような構成のバッテリの車載構造において、図2に示す電気自動車2が図2中の紙面に直交する方向の車両側方から衝撃荷重を受けると、この衝撃荷重は、図1に示すバッテリケース1の例えば下部に位置する一方のサイドフレーム9に、荷重Fとしてサイドシル17あるいはサイドメンバを介して入力される。なお、以下の説明では、サイドフレーム9に、荷重Fが作用した場合を示しているが、サイドフレーム7に荷重Fが作用した場合も同様である。
【0017】
サイドフレーム9に入力された荷重Fは、サイドフレーム9に接続されているクロスフレーム11に伝達される。ここで、本実施形態では、クロスフレーム11が、高強度部19,21と、高強度部19,21よりも強度が低い低強度部23と、を備え、これら高強度部19,21と低強度部23とが車幅方向に沿って設けられている。
【0018】
このため、車体側方から軸方向に荷重Fが入力されたクロスフレーム11は、両側の高強度部19,21に挟まれた状態にある低強度部23が潰れるようにして変形し、この低強度部23の変形によって荷重Fの衝撃を吸収する。
【0019】
このように、低強度部23が衝撃を吸収するので、高強度部19,21は、クロスフレーム11が軸方向に荷重Fを受けても、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。高強度部19,21は、変形が抑制されることでバッテリ15への接触が抑制され、バッテリ15の損傷を抑えることができる。
【0020】
第2の実施形態に係わるバッテリケース1Aの一部を図3に平面図として示す。このバッテリケース1Aは、図1に示したバッテリケース1のクロスフレーム11に代えて、クロスフレーム11Aを使用している。クロスフレーム11Aは、車幅方向中央の中央高強度部25と、車幅方向両側端部に位置する両端高強度部27,29と、中央高強度部25と両端高強度部27,29との間に位置する低強度部31,33とを備えている。
【0021】
中央高強度部25は、車幅方向長さが、バッテリ15の車幅方向長さよりも長く、車幅方向両側の端部25a,25bが、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置している。また、中央高強度部25とバッテリ15とは、車幅方向の中心がほぼ一致している。両端高強度部27,29の車幅方向長さは互いにほぼ同等であり、低強度部31,33の車幅方向長さも互いにほぼ同等である。
【0022】
したがって、低強度部31,33は、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりも車幅方向外側に位置し、その車幅方向内側の端部31a,33aが中央高強度部25の車幅方向両側の端部25a,25bにそれぞれ溶接固定される。低強度部31,33の車幅方向外側の端部31b,33bは、両端高強度部27,29の車幅方向内側の端部27a,29aにそれぞれ溶接固定される。また、両端高強度部27,29の車幅方向外側の端部27b,29bは、サイドフレーム7,9の車幅方向内側の端面7a,9aにそれぞれ溶接固定される。
【0023】
このように、第2の実施形態では、中央高強度部25と、低強度部31,33と、両端高強度部27,29と、が車幅方向に沿って設けられている。したがって、本実施形態においても、車両が側方から衝撃荷重を受け、これに伴って車体側方から軸方向に荷重Fが入力されたクロスフレーム11Aは、中央高強度部25と両端高強度部27,29とに挟まれた状態にある低強度部31,33が潰れるようにして変形する。低強度部31,33が変形するときに荷重Fの衝撃を吸収する。
【0024】
したがって、第2の実施形態においても、低強度部31,33が衝撃を吸収するので、中央高強度部25及び両端高強度部27,29は、クロスフレーム11Aが軸方向に荷重Fを受けても、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。特に、バッテリ15に隣接している中央高強度部25の変形が抑制されることで、中央高強度部25のバッテリ15への接触が抑制され、バッテリ15の損傷を抑えることができる。
【0025】
また、第2の実施形態では、中央高強度部25は、バッテリ15よりも車幅方向の長さが長く、かつ車幅方向外側の端部25a,25bが、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置している。このため、中央高強度部25に接続される低強度部31,33もバッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置することになり、低強度部31,33が変形しても、その破片がバッテリ15に干渉にしにくくなってバッテリ15の損傷を抑えることができる。
【0026】
第3の実施形態に係わるバッテリケース1Bの一部を図4に平面図として示す。このバッテリケース1Bは、図1に示したバッテリケース1のクロスフレーム11に代えて、クロスフレーム11Bを使用している。クロスフレーム11Bは、車幅方向中央の中央高強度部35と、車幅方向外側に位置する低強度部37,39とを備えている。
【0027】
中央高強度部35は、車幅方向長さが、バッテリ15の車幅方向長さよりも長く、車幅方向両側の端部35a,35bが、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向外側で、サイドフレーム7,9の近傍に位置している。また、中央高強度部35とバッテリ15とは、車幅方向の中心がほぼ一致している。
【0028】
したがって、低強度部37,39は、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置し、その車幅方向内側の端部37a,39aが中央高強度部35の車幅方向両側の端部35a,35bにそれぞれ溶接固定される。低強度部37,39の車幅方向外側の端部37b,39bは、サイドフレーム7,9の車幅方向内側の端面7a,9aにそれぞれ溶接固定される。
【0029】
このように、第3の実施形態においても、中央高強度部35と低強度部37,39とが車幅方向に沿って設けられている。したがって、本実施形態においても、車両が側方から衝撃荷重を受け、これに伴って車体側方から軸方向に荷重Fが入力されたクロスフレーム11Bは、低強度部37,39が、サイドフレーム7,9と中央高強度部35とに挟まれた状態で潰れるようにして変形する。低強度部37,39が変形するときに荷重Fの衝撃を吸収する。
【0030】
したがって、第3の実施形態においても、低強度部37,39が衝撃を吸収するので、中央高強度部35は、クロスフレーム11Bが軸方向に荷重Fを受けても、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。特に、バッテリ15に隣接している中央高強度部35の変形が抑制されることで、中央高強度部35のバッテリ15への接触が抑制され、バッテリ15の損傷を抑えることができる。
【0031】
また、第3の実施形態では、中央高強度部35は、バッテリ15よりも車幅方向の長さが長く、かつ車幅方向外側の端部35a,35bが、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置している。このため、中央高強度部35に接続される低強度部37,39も、バッテリ15の車幅方向両側の端部15a,15bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置することになる。したがって、低強度部37,39の変形によって衝撃を吸収し切れない場合であっても、サイドフレーム7,9がバッテリ15に干渉しにくくなって、バッテリ15の損傷を抑えることができる。
【0032】
第4の実施形態に係わるバッテリケース1Cの一部を図5に平面図として示す。このバッテリケース1Cは、図1に示したバッテリケース1のクロスフレーム11に代えて、クロスフレーム11Cを使用している。このクロスフレーム11Cは、図4に示したクロスフレーム11Bの中央高強度部35を、車幅方向に沿って3つにほぼ等分割した構成の高強度部41,43,45を備えている。高強度部41,43は、車幅方向の端部41a,43a同士を溶接固定し、高強度部43,45は、車幅方向の端部43b,45a同士を溶接固定している。
【0033】
低強度部37,39の車幅方向内側の端部37a,39aは、高強度部41,45の車幅方向外側の端部41b,45bにそれぞれ溶接固定される。低強度部37,39の車幅方向外側の端部37b,39bは、サイドフレーム7,9の車幅方向内側の端面7a,9aにそれぞれ溶接固定される。底板13上には、2つのバッテリ47,49を図示しないボルト、ナットなどの締結具を用いて固定している。
【0034】
そして、車幅方向外側に位置する高強度部41の車幅方向外側の端部41bは、バッテリ47の車幅方向外側の端部47aよりも車幅方向外側に位置している。同様に、車幅方向外側に位置する高強度部45の車幅方向外側の端部45bは、バッテリ49の車幅方向外側の端部49aよりも車幅方向外側に位置している。すなわち、低強度部37,39は、バッテリ47,49よりもそれぞれ車幅方向外側に位置している。
【0035】
したがって、第4の実施形態においても、第3の実施形態と同様に、サイドフレーム9が側方から荷重Fを受けたときに、低強度部37,39が潰れるようにして変形し、その変形によって荷重Fの衝撃を吸収する。また、この変形する低強度部37,39は、バッテリ47,49よりも車幅方向外側に位置しているので、低強度部37,39の変形によって衝撃を吸収し切れない場合であっても、サイドフレーム7,9がバッテリ47,49に干渉しにくくなってバッテリ47,49の損傷を抑えることができる。
【0036】
また、第4の実施形態は、3つの高強度部41,43,45を車幅方向に連続して接続する構成としてある。このため、図4に示した第3の実施形態のように1本の長尺の中央高強度部35を使用する場合に比較して、軸方向(車幅方向)の長さ寸法の精度を出しやすく、精度バラツキを抑制でき、組み付け作業性が向上する。
【0037】
第5の実施形態に係わるバッテリケース1Dの一部を図6に平面図として示す。このバッテリケース1Dは、図4に示したクロスフレーム11Bを、バッテリ59の車体前後方向両側に、バッテリ59から離間した状態で配置している。ここでのバッテリ59は、図4におけるバッテリ15よりも、配置スペースの関係で小さくしている。クロスフレーム11Bの中央高強度部35の車幅方向の両端部35a,35bは、バッテリ59の車幅方向の両端部59a,59bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置している。
【0038】
第5の実施形態では、第4の実施形態と同様に、サイドフレーム9が側方から荷重Fを受けたときに、低強度部37,39が潰れるようにして変形し、その変形によって荷重Fの衝撃を吸収する。また、この変形する低強度部37,39は、バッテリ59よりも車幅方向外側に位置しているので、低強度部37,39の変形によって衝撃を吸収し切れない場合であっても、サイドフレーム7,9がバッテリ59に干渉しにくくなってバッテリ59の損傷を抑えることができる。
【0039】
このとき、第5の実施形態では、バッテリ59の両側にクロスフレーム11Bを配置している。このため、サイドフレーム9が側方から荷重Fを受けて低強度部37,39が変形するに際し、荷重Fを受ける領域がより広くなる。すなわち、クロスフレーム11Bを2本備える第5の実施形態では、クロスフレーム11Bが1本だけの図4に示した第3の実施形態に比較して、低強度部37,39が変形するときに、サイドフレーム9がより広い範囲で荷重Fを受けることができる。このため、バッテリ59の損傷に対する保護機能がより高まるものとなる。
【0040】
第6の実施形態に係わるバッテリケース1Eの一部を図7に平面図として示す。このバッテリケース1Eは、図4に示したものと同様のクロスフレーム11Bに、バッテリ61をバッテリ取付プレート63を介して取り付けている。バッテリ取付プレート63は、矩形状であってその車体前方側の縁部をクロスフレーム11B上に載置した状態で、複数のボルト65によって締結固定する。
【0041】
この際、バッテリ取付プレート63は、底板13に対して上方に離間した状態であるが、例えばスペーサなどをこれら相互間に介在させた状態で、両者を互いにボルト結合することができる。また、バッテリ61は、中央高強度部35に対して車体後方側に離間した状態で、バッテリ取付プレート63内に収まるようにしてバッテリ取付プレート63にボルトなどを用いて締結固定する。中央高強度部35の車幅方向の長さは、バッテリ61の車幅方向の長さよりも長く、中央高強度部35の車幅方向外側の端部35a,35bは、バッテリ61の車幅方向両側の端部61a,61bよりもそれぞれ車幅方向外側に位置している。
【0042】
第6の実施形態によれば、図4に示して第3の実施形態と同様に、サイドフレーム9が側方から荷重Fを受けたときに、図8に示すように、低強度部37,39が潰れるようにして変形し、その変形によって荷重Fの衝撃を吸収する。また、この変形する低強度部37,39は、バッテリ61よりも車幅方向外側に位置しているので、低強度部37,39の変形によって衝撃を吸収し切れない場合であっても、サイドフレーム7,9がバッテリ61に干渉にしにくくなってバッテリ61の損傷を抑えることができる。
【0043】
また、第6の実施形態では、図8に示すように、低強度部37,39が潰れるようにして変形するに伴って、バッテリ61が、バッテリ取付プレート63を介して取り付けられている中央高強度部35とともに、荷重Fを受けた側と反対の図8中で上部側に移動する。このため、バッテリ61は、荷重Fを受ける側から離れることになり、バッテリ61の損傷をより確実に抑えることができる。
【0044】
なお、バッテリ取付プレート63を底板13にボルトなどにより締結する場合には、バッテリ61が中央高強度部35とともに移動可能なように、バッテリ取付プレート63と底板13との少なくとも一方のボルト挿入孔を車幅方向に長い長孔とする。これにより、荷重Fを受けたときに、ボルトが長孔内を車幅方向に移動して、バッテリ61が中央高強度部35とともに移動するのが許容される。
【0045】
図9図10は、バッテリケース10のより具体的な例を示しており、このバッテリケース10は、平面視で全体として車体前後方向に長いほぼ長方形となっている。ほぼ長方形のバッテリケース10は、車幅方向両側に位置するサイドフレーム70,90と、サイドフレーム70,90の車体前後方向両側に位置してサイドフレーム70,90相互を連結するフロントフレーム67及びリアフレーム69とを備えている。サイドフレーム70,90は側部部材を構成している。
【0046】
サイドフレーム70,90は、車体前後方向(図9中で左右方向)に沿って延び、フロントフレーム67及びリアフレーム69は車幅方向(図9中で上下方向)沿って延びている。サイドフレーム70,90は、車体後方側の端部付近に、車体後方側が車体前方側よりも車幅方向中央側に位置するよう傾斜する傾斜部70a,90aを備えている。また、サイドフレーム70,90は、図10に示すように、車体前後方向中央部が、車体前後方向両側よりも下方に位置する凹部70b,90bが形成されている。
【0047】
上記したサイドフレーム70,90は、図10に示すように、底板130に下縁が接続する側壁70c,90cと、側壁70c,90cの上端から車幅方向外側に向けて突出する上壁70d,90dとを備えている。同様にしてフロント、リアフレーム67,69は、底板130に下縁が接続する側壁67a,69aと、側壁67a,69aの上端から車体前方及び後方に向けてそれぞれ突出する上壁67b,69bとを備えている。
【0048】
このサイドフレーム70,90を、図2に示してある電気自動車2のサイドシル17や図示しないサイドメンバに取り付けることで、バッテリケース10は電気自動車2の床下に搭載される。サイドシル17やサイドメンバには、サイドフレーム70,90の上壁67b,69bが図示しないボルトなどの締結具によって固定される。
【0049】
前方のフロントフレーム67と後方のリアフレーム69との間におけるサイドフレーム70,90相互は、車幅方向に延びる2本のクロスフレーム110により連結している。そして、この2本のクロスフレーム110相互間の底板130上には、2つのバッテリ150をボルト、ナットなどの締結具を用いて固定している。各バッテリ150は、サイドフレーム70,90から離間して配置するとともに、クロスフレーム110に対しても離間して配置している。クロスフレーム110は、車幅方向両側の各側部部材相互を接続する接続部材を構成している。
【0050】
クロスフレーム110は、図9のA部を拡大した斜視図である図11にも示すように、ハット形断面に形成されている。すなわち、クロスフレーム110は、上壁部110aと、上壁部110aの車体前後方向両端から下方に向けて延びる前後の側壁部110b,110cと、側壁部110b,110cの下端から車体前後方向にそれぞれ延びるフランジ部110d,110eとを備えている。フランジ部110d,110eは、底板130にスポット溶接により接合固定される。
【0051】
また、クロスフレーム110の車幅方向両端部付近は、側壁部110b,110cの上部を除く下部及び、フランジ部110d,110eが削除されて切欠部110fが形成されている。これにより、クロスフレーム110の車幅方向両端部付近は、上壁部110aと、側壁部110b,110cの上部側の一部110b1,110c1とを有する構造となっている。これら上壁部110aと、側壁部110b,110cの上部側の一部110b1,110c1の端部には、車体前後方向及び上方に延びる端部フランジ110gを形成し、この端部フランジ110gを側壁70c,90cにスポット溶接により接合固定している。
【0052】
切欠部110fは、端部フランジ110g側の下縁110f1と、下縁110f1の端部フランジ110gと反対側の端部から下方に延びる縦縁110f2とを備えている。縦縁110f2は、上端がフランジ部110d,110e側の下端よりも車幅方向外側に位置するよう傾斜している。
【0053】
上記したクロスフレーム110の切欠部110fを有する部分は、低強度部71を構成し、低強度部71の内側の車幅方向中央部分は、高強度部73を構成する。すなわち、接続部材であるクロスフレーム110は、高強度部73と、高強度部73よりも強度が低い低強度部71と備え、これら高強度部73と低強度部71とが車幅方向に沿って設けられている。低強度部71は、図12に示すように、高強度部73に対して部材の断面積が小さく、その分強度が低くなっている。
【0054】
この場合、前記図4図7に示した各実施形態と同様に、高強度部73は、車幅方向外側の端部73aが、バッテリ150の車幅方向両側の端部150aよりも、車幅方向外側に位置している。すなわち、低強度部71は、バッテリ150の車幅方向外側の端部150aよりも車幅方向外側に位置している。
【0055】
したがって、図9図11に示した例においても、車両が側方から衝撃荷重を受け、これに伴って車体側方から軸方向に荷重Fが入力されたクロスフレーム110は、低強度部71が、サイドフレーム70,90と高強度部73とに挟まれた状態で潰れるようにして変形する。低強度部71が変形するときに荷重Fの衝撃を吸収するので、高強度部73は、クロスフレーム110が軸方向に荷重Fを受けても、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。高強度部73の変形が抑制されることで、高強度部73のバッテリ150への接触が抑制され、バッテリ150の損傷を抑えることができる。
【0056】
図13は、図9図12に示した例における低強度部71の別の例を示すクロスフレーム110Aの斜視図である。このクロスフレーム110Aは、図13のD−D断面図、E−E断面図である図14(a)、(b)に示すように、フランジ部110d,110eから上壁部110aまでの高さについて、低強度部71Aのほうが高強度部73Aよりも低くなっている。これにより、側壁部110b,110cのフランジ部110d,110eから上壁部110aまでの長さについて、低強度部71Aのほうが高強度部73Aよりもく、部材の断面積については、低強度部71Aのほうが高強度部73Aよりも小さくなっている。
【0057】
図15は、図13の変形例を示すクロスフレーム110Bの斜視図である。このクロスフレーム110Bは、フランジ部110d,110eから上壁部110aまでの高さについて、低強度部71を高強度部73よりも低くするにあたり、低強度部71Bの上壁部110aを傾斜面としている。この上壁部110a傾斜面は、高強度部73B側から車幅方向外側に向けて徐々に高さが低くなるよう傾斜している。
【0058】
したがって、図13図15の例においても、クロスフレーム110A、110Bが軸方向に荷重Fを受けても、低強度部71A、71Bが潰れるようにして変形するので、高強度部73A、73Bは、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。高強度部73A、73Bの変形が抑制されることで、高強度部73A、73Bのバッテリ150への接触が抑制され、バッテリ150の損傷を抑えることができる。
【0059】
図16(a)、(b)は、別の変形例を示すクロスフレーム110C、110Dの斜視図である。図16(a)のクロスフレーム110Cは、フランジ部110d,110eから上壁部110aまでの高さを、低強度部71Cと高強度部73Cとで変化させずに同等としている。そして、低強度部71Cの上壁部110aに、複数の円形もしくは楕円形の貫通孔71Chを形成している。
【0060】
図16(b)のクロスフレーム110Dは、図16(a)のクロスフレーム110Cの貫通孔71Chに代えて、車幅方向に延びるスリット71Dsを車体前後方向に複数設けている。
【0061】
図16(a)、(b)のクロスフレーム110C、110Dは、低強度部71C,71Dに貫通孔71Chやスリット71Dsを設けることで、低強度部71C,71Dは、部材の断面積が高強度部73C,73Dよりも小さくなる。これにより、低強度部71C,71Dは、高強度部73C,73Dよりも強度が低くなる。
【0062】
したがって、図16(a)、(b)の例においても、クロスフレーム110C、110Dが軸方向に荷重Fを受けても、低強度部71C,71Dが潰れるようにして変形するので、高強度部73C,73Dは、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。高強度部73C,73Dの変形が抑制されることで、高強度部73C,73Dのバッテリ150への接触が抑制され、バッテリ150の損傷を抑えることができる。
【0063】
図17(a)、(b)は、さらに別の変形例を示すクロスフレーム110Eの図14(a)、(b)に対応する断面図である。図17(a)、(b)のクロスフレーム110Eは、図16(a)、(b)のクロスフレーム110C、110Dの低強度部71C,71Dのように貫通孔71Chやスリット71Ds設ける構造に代えて、低強度部71Eの板厚を高強度部73Eの板厚より薄くしている。これにより、部材の断面積について、低強度部71Eのほうが高強度部73Eよりも小さくなり、低強度部71Eは、高強度部73Eよりも強度が低くなる。この場合、互いに板厚が異なる低強度部71E及び高強度部73Eは、別部材として溶接などによって互いに接合固定する。
【0064】
したがって、図17(a)、(b)の例においても、クロスフレーム110Eが軸方向に荷重Fを受けても、低強度部71Eが潰れるようにして変形するので、高強度部73Eは、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。高強度部73Eの変形が抑制されることで、高強度部73Eのバッテリ150への接触が抑制され、バッテリ150の損傷を抑えることができる。
【0065】
図18は、さらに別の変形例を示すクロスフレーム110Fの図11に対応する斜視図である。このクロスフレーム110Fは、低強度部71Fと高強度部73Fとで剛性を互いに異ならせている。例えば、高強度部73Fを鉄系の材料で構成し、低強度部71Fをアルミニウム系の材料で構成する。あるいは、同一の鉄系材料を用いた上で、高強度部73Fを焼き入れによる熱処理によって硬度を高め、低強度部71Fよりも高強度とする。
【0066】
低強度部71Fの車幅方向内側の端部に、高強度部73Fの車幅方向外側の端部を重ね合わせ、その重ね合わせ部分を、スポット溶接やボルト、ナットなどの締結具により互いに結合固定する。低強度部71Fの高強度部73Fと反対側の端部には、サイドフレーム70の側壁70cにスポット溶接によって接合固定する端部フランジ71Faを設けている。
【0067】
したがって、図18の例においても、クロスフレーム110Fが軸方向に荷重Fを受けても、低強度部71Fが潰れるようにして変形するので、高強度部73Fは、たわみ、もしくは屈曲などの変形が抑制される。高強度部73Fの変形が抑制されることで、高強度部73Fのバッテリ150への接触が抑制され、バッテリ150の損傷を抑えることができる。
【0068】
なお、上記した各実施形態における「高強度部」及び「低強度部」は、それぞれ「高剛性部」及び「低剛性部」と言い換えることもできる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0070】
例えば、上記した各実施形態、一例として図1に示す第1の実施形態では、バッテリケース1のサイドフレーム7,9が車体前後方向に延びる側部部材を構成している。しかし、図2に示す車体側のサイドシル17、あるいは図示しないサイドメンバが側部部材を構成してもよい。すなわち、この場合には、クロスフレーム11の車幅方向の両端部が、サイドシル17やサイドメンバに接続される。
【符号の説明】
【0071】
7,9 サイドフレーム(側部部材)
11,11A〜11C,110,110A〜110F クロスフレーム(接続部材)
15,47,49,59,61,150 バッテリ
19,21,27,29,41,43,45,73,73A〜73F 高強度部
23,31,33,37,39,71,71A〜71F 低強度部
25,35 中央高強度部(高強度部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18