(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾燥装置では、帯状電極材を十分に乾燥する必要があることから、乾燥装置を通過した後の帯状電極材に残留している溶剤量を、予め定められた基準値以下とすることが求められる。しかしながら、帯状電極材に含まれるバインダは耐熱温度が低いので、乾燥装置における加熱量を大きくすると、電極の性能を低下させるおそれがある。このため、特許文献1に記載の乾燥装置では、変更可能な温度範囲が制限されるので、帯状電極材を十分に乾燥するためには乾燥路を長くする必要があり、装置が大型化する。
【0006】
本発明は、装置を大型化することなく、溶剤を十分に除去可能な乾燥装置及び電極の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る乾燥装置は、溶剤を含む活物質合剤を金属箔に塗工することで形成された帯状電極材を乾燥させる乾燥装置である。この乾燥装置は、乾燥領域を区画する乾燥室と、乾燥室において蒸発した溶剤の濃度を検知し、検知した濃度を示す検出値を出力する濃度検知部と、乾燥室内における帯状電極材の搬送路を規定する複数のパスローラと、複数のパスローラのうち少なくとも一部の位置を、帯状電極材の搬送路の長さが増減する方向に変更する位置変更部と、濃度検知部から検出値を受信し、位置変更部を制御する制御部と、を備える。
【0008】
この乾燥装置によれば、乾燥室において帯状電極材から蒸発した溶剤の濃度が濃度検知部によって検知され、濃度検知部によって検知された溶剤の濃度に応じて、複数のパスローラのうち少なくとも一部の位置が乾燥室内における帯状電極材の搬送路の長さが増減する方向に変更される。帯状電極材における溶剤の含有量が大きいほど、溶剤の蒸発量が大きくなるので、濃度検知部によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、帯状電極材に残留している溶剤量が大きいと考えられる。このため、例えば、濃度検知部によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、乾燥室内における帯状電極材の搬送路の長さが長くなるように複数のパスローラのうち少なくとも一部の位置が変更される。これにより、帯状電極材における溶剤の含有量が大きいほど、帯状電極材の乾燥時間を長くすることができ、溶剤を十分に除去することができる。その結果、装置を大型化することなく、溶剤を十分に除去することが可能となる。
【0009】
制御部は、濃度検知部によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、乾燥室内の搬送路の長さが長くなるように、位置変更部を制御してもよい。この場合、帯状電極材における溶剤の含有量が大きいほど、帯状電極材の乾燥時間を長くすることができ、溶剤を十分に除去することができる。その結果、装置を大型化することなく、溶剤を十分に除去することが可能となる。
【0010】
乾燥室は第1乾燥室及び第2乾燥室を備え、第1乾燥室は第2乾燥室よりも帯状電極材の搬送方向の上流側に設けられてもよい。濃度検知部は第1乾燥室に設けられてもよく、複数のパスローラは第2乾燥室に設けられてもよい。この場合、濃度検知部は、乾燥室全体ではなく第1乾燥室において帯状電極材から蒸発した溶剤の濃度を検知するので、濃度検知精度を向上することができる。また、第1乾燥室において検知された溶剤の濃度に応じて、第1乾燥室よりも下流の第2乾燥室において複数のパスローラのうち少なくとも一部の位置が変更される。このため、フィードフォワード制御が可能となるので、溶剤の除去が不十分な部分の発生を抑制でき、帯状電極材全体に対して溶剤を十分に除去することが可能となる。
【0011】
濃度検知部は第2乾燥室に設けられてもよく、複数のパスローラは第1乾燥室に設けられてもよい。この場合、濃度検知部は、乾燥室全体ではなく第2乾燥室において帯状電極材から蒸発した溶剤の濃度を検知するので、濃度検知精度を向上することができる。また、第2乾燥室において検知された溶剤の濃度に応じて、第2乾燥室よりも上流の第1乾燥室において複数のパスローラのうち少なくとも一部の位置が変更される。このため、下流における溶剤の濃度を用いた制御ができるので、帯状電極材に残留している溶剤量が予め定められた基準値以下となるように、乾燥室内における帯状電極材の搬送路の長さを精度よく調整することが可能となる。
【0012】
本発明の別の態様に係る電極の製造方法は、溶剤を含む活物質合剤を金属箔に塗工することで形成された帯状電極材を乾燥装置内で乾燥させる電極の製造方法である。乾燥装置は、稼働開始から停止までの間で少なくとも一度、帯状電極材から蒸発した溶剤の濃度を検知する工程と、検知する工程において検知された濃度に応じて、乾燥装置内における帯状電極材の搬送路の長さを調整する工程と、を行う。
【0013】
この電極の製造方法によれば、帯状電極材から蒸発した溶剤の濃度が検知され、検知された溶剤の濃度に応じて、乾燥装置内における帯状電極材の搬送路の長さが調整される。帯状電極材における溶剤の含有量が大きいほど、溶剤の蒸発量が大きくなるので、検知された溶剤の濃度が大きいほど、帯状電極材に残留している溶剤量が大きいと考えられる。このため、例えば、検知された溶剤の濃度が大きいほど、乾燥装置内における帯状電極材の搬送路の長さが長くなるように調整される。これにより、帯状電極材における溶剤の含有量が大きいほど、帯状電極材の乾燥時間を長くすることができ、溶剤を十分に除去することができる。その結果、乾燥装置を大型化することなく、溶剤を十分に除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乾燥装置を大型化することなく、溶剤を十分に除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る乾燥装置を備える電極の製造装置を模式的に示す概略構成図である。
図1に示されるように、電極の製造装置1は、蓄電装置に用いられる電極を製造するための装置であり、具体的には、製造工程中の塗工工程に対応する。電極の製造装置1は、巻出ロール2と、搬送ローラ3と、塗工装置4と、乾燥装置5と、巻取ロール6と、を備える。
【0018】
巻出ロール2は、ロール状に巻かれた金属箔10を繰り出す。金属箔10は、例えば厚さ数十μm程度に圧延された銅箔またはアルミニウム箔である。搬送ローラ3は、巻出ロール2から繰り出された金属箔10を方向D1に案内する。搬送ローラ3は、巻出ロール2と乾燥装置5との間、及び、乾燥装置5と巻取ロール6との間に設けられる。
【0019】
塗工装置4は、巻出ロール2から繰り出された金属箔10の第1面10aに、蓄電装置に用いられる電極のための活物質合剤(活物質ペースト)を塗工し、金属箔10と活物質合剤層とにより、電極の前駆体である帯状電極材11を形成する。塗工装置4は、活物質合剤を貯蔵するタンク、活物質合剤を金属箔10の第1面10aに向けて供給する供給管及びポンプ等を有する。
【0020】
活物質合剤は、例えば活物質、バインダ及び溶剤を含む。活物質合剤には、例えばアセチレンブラック等の導電助剤がさらに含まれていてもよい。活物質は、正極活物質及び負極活物質のいずれであってもよい。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。
【0021】
負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。
【0022】
バインダは、例えばポリアミドイミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂であってもよく、主鎖にイミド結合を有するポリマー樹脂であってもよい。溶剤は、例えばNMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤であってもよく、水であってもよい。
【0023】
例えば、図示しない前工程にて、活物質、バインダ、導電助剤及び溶剤が混練されることにより、活物質合剤が生成され、生成された活物質合材が塗工装置4のタンクに供給される。この混練時に、良好な塗工状態を得るため、活物質合剤の粘度が所定の値となるように、ロット毎に溶剤量(希釈度)が調整される。このため、溶剤量は、例えば5〜10%程度の範囲で変更され得る。なお、本実施形態におけるロットとは、混練を行う単位である。
【0024】
乾燥装置5は、帯状電極材11を乾燥させる装置である。乾燥装置5は、帯状電極材11に残留する溶剤量が、予め定められた基準値以下となるように乾燥を行う。なお、「帯状電極材11を乾燥させる」とは、具体的には「活物質合剤を乾燥させる」ことを意味する。乾燥装置5は、乾燥室50と、加熱部53と、加熱部54と、濃度検知部55と、加熱部56と、パスローラ57と、位置変更部58と、制御部60と、を備える。乾燥室50は、乾燥領域を区画し、第1乾燥室51と、第2乾燥室52と、を備える。第1乾燥室51及び第2乾燥室52は、その順に方向D1に設けられる。つまり、第1乾燥室51は、第2乾燥室52よりも帯状電極材11の搬送方向の上流側に設けられる。第2乾燥室52は、第1乾燥室51よりも帯状電極材11の搬送方向の下流側に設けられる。
【0025】
第1乾燥室51には、加熱部53と、加熱部54と、濃度検知部55と、が設けられる。加熱部53は、第1乾燥室51内に熱風を吹き入れる。加熱部53は、例えば、送風機及びヒータを有する。加熱部54は、帯状電極材11を加熱する。加熱部54は、例えば、帯状電極材11の搬送経路の下側に配置され、帯状電極材11の第2面11b側から帯状電極材11を加熱する。加熱部54は、例えば、ヒータである。濃度検知部55は、第1乾燥室51において帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度を検知する。濃度検知部55は、例えば、第1乾燥室51の排気口に設けられる。濃度検知部55は、例えば、溶剤濃度センサである。濃度検知部55は、検知した濃度を示す検出値を制御部60に出力する。
【0026】
第2乾燥室52には、加熱部56と、パスローラ57と、位置変更部58と、が設けられる。加熱部56は、第2乾燥室52内に熱風を吹き入れる。加熱部56は、例えば、送風機及びヒータを有する。パスローラ57は、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路を規定する。パスローラ57は、パスローラ57aとパスローラ57bとを含む。パスローラ57aは、その回転面が帯状電極材11の第1面11aに当接するように設けられる。パスローラ57bは、その回転面が帯状電極材11の第2面11bに当接するように設けられる。パスローラ57aとパスローラ57bとは帯状電極材11の搬送路に沿って交互に配置される。
【0027】
位置変更部58は、パスローラ57bの位置を、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さが増減する方向に変更する。位置変更部58は、パスローラ57bの回転軸の位置を移動することによってパスローラ57bの位置を変更する。位置変更部58は、パスローラ57bの回転軸を移動するための機構であり、例えば、アクチュエータである。位置変更部58は、方向D1と交差する方向D2及び方向D2の反対方向にパスローラ57bの位置を変更する。位置変更部58は、制御部60からの制御信号に応じて、パスローラ57bの位置を変更する。なお、初期状態では、帯状電極材11の搬送路が方向D1に直線的となるように、パスローラ57aが方向D1に配列され、パスローラ57bが方向D1に配列される。このとき、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路は最短となる。
【0028】
制御部60は、乾燥装置5を通過した後の帯状電極材11に残留している溶剤量が、予め定められた基準値以下となるように、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを制御する。制御部60は、例えば、濃度検知部55から検出値を受信し、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度に応じて、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを制御する。制御部60は、例えば、プロセッサ、メモリ等を備える情報処理装置である。
【0029】
ここで、乾燥室50の温度及び風量は、乾燥装置5の稼働中において一定に保たれる。同一の温度及び風量では、帯状電極材11における溶剤の含有量が大きいほど、溶剤の蒸発量が大きくなるので、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、帯状電極材11に残留している溶剤量が大きいと考えられる。このため、制御部60は、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さが長くなるように制御する。
【0030】
具体的に説明すると、制御部60は、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度に基づいて、帯状電極材11に残留している溶剤量を算出する。制御部60は、残留している溶剤量が基準値以上の場合、所定量だけ搬送路の長さを延ばすように制御する。そして、制御部60は、予め定めた時間が経過した後、再度、残留している溶剤量を算出する。制御部60は、前述の処理を、残留している溶剤量が基準値を下回るまで繰り返す。
【0031】
制御部60は、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度の他、例えば、金属箔10に塗工される活物質合剤の希釈度(溶剤量)、第1乾燥室51において帯状電極材11に与えられる熱量等を用いて、帯状電極材11に残留している溶剤量を算出してもよい。また、帯状電極材11に残留している溶剤量を算出するための各値が予め定められている場合には、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度と、帯状電極材11に残留している溶剤量と、が一意に対応付けられるので、制御部60は、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度から帯状電極材11に残留している溶剤量を算出してもよい。
【0032】
また、各温度及び各風量において、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度と、帯状電極材11に残留している溶剤量を基準値以下とするために必要な乾燥室50内の搬送路の長さと、の関係が実験等によって予め定められてもよい。この場合、制御部60は、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度に応じて、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを変更する。
【0033】
乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さの変更は、パスローラ57bの位置を変更することによって行われる。具体的には、制御部60は、位置変更部58に制御信号を出力し、位置変更部58にパスローラ57bの位置を変更させることによって、帯状電極材11の搬送路の長さを制御する。制御部60は、方向D2の反対方向にパスローラ57bの位置を移動することにより、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを短くし、方向D2にパスローラ57bの位置を移動することにより、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを長くする。なお、パスローラ57aは、第2乾燥室52の出入口に対応するように配置され、移動しない。乾燥装置5では、パスローラ57は第2乾燥室52内に設けられているので、厳密には、制御部60は、第2乾燥室52内における帯状電極材11の搬送路の長さを変更している。
【0034】
ロット毎に溶剤量(希釈度)が異なるので、制御部60は、例えば、ロット毎に、本稼働前に行われる条件出し時において、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを調整する。制御部60は、さらに各ロットの塗工開始の初期において、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを微調整してもよい。
【0035】
制御部60は、条件出し時及び各ロットの塗工開始初期だけでなく、乾燥装置5の稼働開始から停止までの間で少なくとも一度、帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度に応じて、乾燥装置5内における帯状電極材11の搬送路の長さを調整してもよい。例えば、制御部60は、電極の製造装置1の稼働中において逐次、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを調整してもよい。この場合、制御部60は、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さを変更することに同期して、巻出ロール2及び巻取ロール6を駆動する駆動装置を制御する。これにより、制御部60は、帯状電極材11が適切に搬送されるように、巻出ロール2及び巻取ロール6の作動又は停止及び回転速度(帯状電極材11の搬送速度)等を制御する。
【0036】
巻取ロール6は、乾燥装置5を通過した帯状電極材11をロール状に巻き取る。
【0037】
次に、電極の製造装置1が行う電極の製造方法を説明する。
図2は、電極の製造装置1を用いた電極の製造方法における製造工程を概略的に示すフローチャートである。
【0038】
まず、活物質、バインダ、導電助剤及び溶剤が混練されて、活物質合剤が生成され、塗工装置4のタンクに供給される(混練工程S01)。このとき、良好な塗工状態を得るために、ロット毎に溶剤量(希釈度)が調整される。次に、巻出ロール2から金属箔10を繰り出す(繰出工程S02)。そして、繰出工程S02において繰り出された金属箔10の第1面10aに、混練工程S01において生成された活物質合剤を塗工装置4が塗工することにより、帯状電極材11を形成する(塗工工程S03)。
【0039】
続いて、塗工工程S03において形成された帯状電極材11を乾燥装置5が乾燥する(乾燥工程S04)。乾燥工程S04では、帯状電極材11が乾燥されることにより、第1乾燥室51内において帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度を濃度検知部55が検知する(濃度検知工程S05)。そして、濃度検知工程S05において検知された溶剤の濃度に応じて、第2乾燥室52内における帯状電極材11の搬送路の長さを制御部60が調整する(搬送路長調整工程S06)。そして、乾燥工程S04において乾燥された帯状電極材11を巻取ロール6がロール状に巻き取る(巻取工程S07)。
【0040】
上述のように、乾燥装置5及び電極の製造装置1の電極の製造方法によれば、第1乾燥室51において帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度が濃度検知部55によって検知され、第1乾燥室51において検知された溶剤の濃度に応じて、複数のパスローラ57のうちパスローラ57bの位置が第2乾燥室52内における帯状電極材11の搬送路の長さが増減する方向に変更される。帯状電極材11における溶剤の含有量が大きいほど、溶剤の蒸発量が大きくなるので、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、帯状電極材11に残留している溶剤量が大きいと考えられる。このため、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、第2乾燥室52内における帯状電極材11の搬送路の長さが長くなるように複数のパスローラ57のうちパスローラ57bの位置が変更される。これにより、帯状電極材11における溶剤の含有量が大きいほど、帯状電極材11の乾燥時間を長くすることができ、溶剤を十分に除去することが可能となる。その結果、装置を大型化することなく、溶剤を十分に除去することが可能となる。
【0041】
また、濃度検知部55は、乾燥室50全体ではなく第1乾燥室51において帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度を検知するので、濃度検知精度を向上することができる。また、第1乾燥室51において検知された溶剤の濃度に応じて、第1乾燥室51よりも下流の第2乾燥室52において複数のパスローラ57の位置が変更される。このため、フィードフォワード制御が可能となるので、溶剤の除去が不十分な部分の発生を抑制でき、帯状電極材11全体に対して溶剤を十分に除去することが可能となる。
【0042】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る乾燥装置を備える電極の製造装置を模式的に示す概略構成図である。
図3に示されるように、電極の製造装置1Aは、電極の製造装置1と比較して、乾燥装置5に代えて乾燥装置5Aを備える点で相違している。乾燥装置5Aは、乾燥装置5と比較して、乾燥室50に代えて乾燥室50Aを備える点で相違している。つまり、乾燥装置5Aは、乾燥装置5と比較して、第1乾燥室51に代えて第1乾燥室51Aを備える点、及び、第2乾燥室52に代えて第2乾燥室52Aを備える点で相違している。
【0043】
第1乾燥室51Aには、加熱部56と、パスローラ57と、位置変更部58と、が設けられる。第2乾燥室52Aには、加熱部53と、加熱部54と、濃度検知部55と、が設けられる。
【0044】
次に、
図2を参照して、電極の製造装置1Aが行う電極の製造方法を説明する。電極の製造装置1Aが行う電極の製造方法は、電極の製造装置1が行う電極の製造方法と比較して、濃度検知工程S05及び搬送路長調整工程S06における処理が異なる。
【0045】
濃度検知工程S05では、帯状電極材11が乾燥されることにより、第2乾燥室52A内において帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度を濃度検知部55が検知する。そして、搬送路長調整工程S06では、濃度検知工程S05において検知された溶剤の濃度に応じて、第1乾燥室51A内における帯状電極材11の搬送路の長さを制御部60が調整する。
【0046】
上述のように、乾燥装置5A及び電極の製造装置1Aの電極の製造方法によれば、第2乾燥室52Aにおいて帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度が濃度検知部55によって検知され、第2乾燥室52Aにおいて検知された溶剤の濃度に応じて、複数のパスローラ57のうちパスローラ57bの位置が第1乾燥室51A内における帯状電極材11の搬送路の長さが増減する方向に変更される。帯状電極材11における溶剤の含有量が大きいほど、溶剤の蒸発量が大きくなるので、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、帯状電極材11に残留している溶剤量が大きいと考えられる。このため、濃度検知部55によって検知された溶剤の濃度が大きいほど、第1乾燥室51A内における帯状電極材11の搬送路の長さが長くなるように複数のパスローラ57のうちパスローラ57bの位置が変更されることにより、帯状電極材11における溶剤の含有量が大きいほど、活物質合剤の乾燥時間を長くすることができ、溶剤を十分に除去することが可能となる。その結果、装置を大型化することなく、溶剤を十分に除去することが可能となる。
【0047】
また、濃度検知部55は、乾燥室50A全体ではなく第2乾燥室52Aにおいて帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度を検知するので、濃度検知精度を向上することができる。また、第2乾燥室52Aにおいて検知された溶剤の濃度に応じて、第2乾燥室52Aよりも上流の第1乾燥室51Aにおいて複数のパスローラ57の位置が変更される。このため、下流における溶剤の濃度を用いた制御ができるので、帯状電極材11に残留している溶剤量が予め定められた基準値以下となるように、乾燥室50A内における帯状電極材11の搬送路の長さを精度よく調整することが可能となる。
【0048】
なお、本発明に係る乾燥装置及び電極の製造方法は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、乾燥室50,50Aは、第1乾燥室51,51A及び第2乾燥室52,52Aを備えるが、1つの乾燥室のみを備えてもよく、3以上の乾燥室を備えてもよい。
【0049】
また、濃度検知部55の数は、1つに限られず、2以上でもよい。この場合、帯状電極材11から蒸発した溶剤の濃度の検知精度を向上することができる。
【0050】
また、パスローラ57a及びパスローラ57bの数は、所望の搬送路長の調整範囲に応じて定められる。また、パスローラ57bの各々は、方向D2及び方向D2の反対方向に限られず、乾燥室50内における帯状電極材11の搬送路の長さが増減する方向に位置変更可能であればよい。また、パスローラ57のうち少なくとも一部が位置変更可能であればよい。例えば、すべてのパスローラ57bが位置変更可能である必要はなく、また、すべてのパスローラ57が位置変更可能であってもよい。