(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置1の全体構成を示すブロック図である。電気光学装置1は、ユーザーが3D眼鏡50を掛けた状態で3D映像を知覚することができるように、フレームシーケンシャル方式に基づいて3D映像を表示する。
図1に示すように、電気光学装置1は、制御回路10と、液晶パネル100と、走査線駆動回路130と、データ線駆動回路140とを備えた液晶装置である。
【0017】
制御回路10には、入力映像信号Vid−inが同期信号Syncに同期して入力される。入力映像信号Vid−inは、液晶パネル100が備える画素110毎に印加電圧を指定したデジタルデータである。入力映像信号Vid−inは、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号、水平走査信号及びドットクロック信号(いずれも図示省略)に従った走査の順番で供給される。
【0018】
入力映像信号Vid−inは、例えば、上位装置から電気光学装置1に供給された、各画素の階調値を示す階調信号を変換して得られる信号である。電気光学装置1では、例えば、当該階調信号に対してガンマ補正等の所定の処理を行った後に、図示せぬ変換回路において、階調値を電圧値に変換するテーブルを用いて入力映像信号Vid−inに変換される。
ただし、階調値に応じて、画素110に指定された印加電圧の電圧値が一意に定まる場合、入力映像信号Vid−inは、画素110毎に階調値を指定した映像信号といって差し支えない。
【0019】
制御回路10は、走査制御回路20と、映像処理回路30と、眼鏡制御部40とを備える。走査制御回路20は、各種の制御信号を生成して、同期信号Syncに同期して電気光学装置1の各部を制御する。映像処理回路30は、入力映像信号Vid−inに対して所定の映像処理を施して、液晶パネル100における複数の画素110のそれぞれに表示する階調を規定するためのデータ信号Vxを出力する。データ信号Vxは、液晶パネル100における画素110毎の印加電圧を指定したアナログデータである。
【0020】
液晶パネル100は、入射する光を映像信号に応じて変調する光変調器に相当する。液晶パネル100は、素子基板100aと対向基板100bとが一定の間隙を保って貼り合わせられるとともに、この間隙に、縦方向の電界で駆動される液晶105が挟持された構成である。素子基板100aのうち、対向基板100bとの対向面には、m行の走査線112がX(横)方向(第1の方向)に延在するように設けられる一方、n列のデータ線114がY(縦)方向(第2の方向)に延在し、且つ各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられている。
なお、本実施形態では、走査線112を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、m行目という呼び方をする場合がある。同様に、データ線114を区別するために、図において左から順に1、2、3、4、5、6、…、n−1、n列目という呼び方をする場合がある。
【0021】
素子基板100aでは、走査線112とデータ線114との交差のそれぞれに対応して、nチャネル型のTFT116と、矩形形状で透明性を有する画素電極118との組が設けられている。TFT116のゲート電極は走査線112に接続され、ソース電極はデータ線114に接続され、ドレイン電極が画素電極118に接続されている。
一方、対向基板100bのうち、素子基板100aとの対向面には、透明性を有するコモン電極108が全面にわたって設けられる。コモン電極108には、図示省略した回路によって電圧LCcomが印加される。
なお、
図1において、素子基板100aの対向面は紙面裏側であるので、その対向面に設けられる走査線112、データ線114、TFT116及び画素電極118については、かくれ線(破線)で示すべきであるが、見難くなるのでそれぞれ実線で示す。
【0022】
図2は、液晶パネル100における等価回路を示す図である。
図2に示すように、液晶パネル100は、画素110を有する。画素110は、走査線112とデータ線114との交差に対応して、画素電極118とコモン電極108とで液晶105を挟持した液晶素子120を備える。液晶素子120は、画素電極118と、コモン電極108とによって生じる電界に応じて、液晶105の分子配向状態が変化する。このため、液晶素子120は、透過型であれば、印加・保持電圧に応じた透過率となる。液晶パネル100では、液晶素子120毎(画素110毎)に透過率が変化する。
図1では図示を省略したが、実際には
図2に示すように、画素110の各々において、並列に補助容量(蓄積容量)125が設けられる。補助容量125は、一端が画素電極118に接続され、他端が容量線115に共通接続されている。容量線115は時間的に一定の電圧に保たれている。
【0023】
ここで、走査線112がHレベルになると、その走査線112にゲート電極が接続されたTFT116がオンとなり、画素電極118がデータ線114に接続される。このため、走査線112がHレベルであるときに、データ線114にデータ信号Vxに応じた電圧のデータ信号が供給されると、そのデータ信号は、オンしたTFT116を介して画素電極118に印加される。走査線112がLレベルになるとTFT116はオフするが、画素電極118に印加された電圧は、液晶素子120の容量によって保持されるとともに、液晶素子120に並列接続された補助容量125において保持される。
なお、本実施形態においては、液晶105をVA(Vertical Alignment)方式とし、液晶素子120の各々が、電圧無印加時において黒状態となるノーマリーブラックモードとする。
【0024】
図1に戻って説明する。
走査線駆動回路130は、走査制御回路20による制御信号Yctrに従って、1、2、3、…、m行目の走査線112に、走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymを順番に供給する。詳細には、走査線駆動回路130は、走査線112を1、2、3、・・・、m行目という順番で1本ずつ選択するとともに、選択した走査線112への走査信号を選択電圧V
H(Hレベル)とし、それ以外の走査線112への走査信号を非選択電圧V
L(Lレベル)とする。
ここにおいて、1フレームは、液晶パネル100を駆動することによって、画像の1コマ分を表示させるのに要する期間である。1フレームは、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号の周波数が120Hzであれば、その逆数であるおよそ8.3ミリ秒である。
【0025】
データ線駆動回路140は、映像処理回路30から供給されるデータ信号Vxを、走査制御回路20による制御信号Xctrに従って、1、2、3、4、5、6、…、n−1、n列目のデータ線114に、データ信号X1、X2、X3、X4、X5、X6、…、Xn−1、Xnとしてサンプリングする。
走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路140は、線順次で液晶パネル100を駆動する駆動回路を構成する。
なお、本実施形態において、電圧については、液晶素子120の印加電圧を除き、特に明記しない限り、図示省略した接地電位を電圧ゼロの基準とする。液晶素子120の印加電圧は、コモン電極108の電圧LCcomと画素電極118との電圧差であり、他の電圧と区別する。
【0026】
眼鏡制御部40は、制御信号CSを、例えば赤外線通信により3D眼鏡50に送信する。制御信号CSは、3D映像の表示時において右目用画像の表示期間であるのか、左目用画像の表示期間であるのかを示す制御信号である。3D眼鏡50は、右目のレンズ部分が液晶シャッター52Rであり、左目のレンズ部分が液晶シャッター52Lである。液晶シャッター52R、52Lは、受信部51によって受信された制御信号CS等に従って、それぞれ透過状態又は不透過状態に制御される。詳細には、3D映像の表示時において、右目開期間において、液晶シャッター52Rは透過状態になり、液晶シャッター52Lは不透過状態になり、左目開期間において、液晶シャッター52Rは不透過状態になり、液晶シャッター52Lは透過状態になる。それ以外の期間は液晶シャッター52R及び52Lはともに不透過状態になる。
【0027】
図3は、制御回路10の表示動作を説明する図である。
同期信号Syncにより制御される液晶パネル100の垂直走査信号の周波数は、本実施形態では240Hzである。制御回路10は、
図3に示すように、1フレームを第1フィールド、及び第2フィールドの2つのフィールドに分割し、分割した各フィールドで、1〜m行目の走査線を1本ずつ走査(選択)する。即ち、上位装置から120Hzの供給速度で供給される入力映像信号Vid−inに基づいて、制御回路10は、240Hzの駆動速度で液晶パネル100を駆動する。1フィールドの期間は、1/2フレーム期間に相当し、ここではおよそ4.2ミリ秒である。
【0028】
データ信号Vxの書込極性について説明すると、制御回路10は、第1フィールドにおいて正極性書込(+)を指定し、第2フィールドにおいて負極性書込(−)を指定する。即ち、制御回路10は、フィールド毎に書込極性を反転して、画素110へのデータ信号Vxの書き込みを行う。制御回路10は、フレーム毎に、左目用画像Lと、右目用画像Rとを交互に表示するように、画素110へのデータ信号Vxの書き込みを行う。
3D眼鏡50の制御について説明すると、制御回路10は、第1フィールドでは、3D眼鏡50の液晶シャッター52R、52Lを不透過状態(
図3の「オフ」)とする。制御回路10は、左目用画像Lを表示するフレームの第2フィールドでは、3D眼鏡50の液晶シャッター52Lを透過状態(
図3の「左オン」)、液晶シャッター52Rを不透過状態とし、右目用画像Rを表示するフレームの第2フィールドでは、3D眼鏡50の液晶シャッター52Lを不透過状態、液晶シャッター52Rを透過状態(
図3の「右オン」)とする。
【0029】
図4は、左目用画像L及び右目用画像Rの表示例を示す図である。
図4において、1つの正方形が1画素に対応し、X方向及びY方向に5×5の画素からなる領域が示されている。
図4に示す右目用画像Rは、左目用画像LをX方向に移動した映像で、ここでは、左目用画像LをX方向に1画素分移動した映像である。以下では、比較的明るい階調を表示する画素を「明画素」と称し、比較的暗い階調を表示する画素を「暗画素」と称する。明画素及び暗画素の具体的な条件を、
図5を用いて説明する。
【0030】
図5は、画素110に指定される印加電圧と、画素110が備える液晶素子120の透過率との関係(V−T特性)を示すグラフである。
図5に示すグラフにおいて、横軸は画素110に指定される印加電圧を表し、縦軸は液晶素子120の透過率(具体的には、相対透過率)を表す。
図5に示すように、ノーマリーブラックモードでは、画素110に対する印加電圧が大きいほど、画素110の透過率(又は反射率)が大きくなる。本実施形態では、暗画素は、入力映像信号Vid−inで指定された印加電圧が閾値電圧JV以下の画素110であり、明画素は、指定された印加電圧が閾値電圧JVを上回る画素110である。閾値電圧JVは、液晶素子120の透過率(又は反射率)が、
図5に示す「Rg」のときに表示される所定階調(階調レベル)に対応している。よって、暗画素は、この所定階調以下の階調を表示する画素(第1画素)で、明画素は、この所定階調よりも高い階調を表示する画素(第2画素)である。
なお、閾値電圧JVは、リバースチルト発生領域の知覚されやすさに基づいて、例えば実験的に又は計算により設定される。閾値電圧JVの設定例として、V−T特性の変曲点に相当する電圧があるが、この例に限られない。
【0031】
液晶パネル100において、入力映像信号Vid−inで指定された電圧が、そのまま画素110に印加された場合、隣り合う2つの画素110間の印加電圧の差に応じて、リバースチルトドメインが発生することがある。本実施形態では、リバースチルトドメインの発生領域(以下「リバースチルト発生領域」という。)が、暗画素から見て、上辺又は左辺に沿って現れる場合があるものとする。この場合、
図4に示す右目用画像Rが表示されたときには、
図6に示す位置に、リバースチルト発生領域が現れる。そして、この右目用画像Rの次のフレームで左目用画像Lが表示された場合、
図6に示す位置で、右目用画像Rのリバースチルトドメインを原因とした残像ドメインがユーザーに視認される可能性がある。
そこで、映像処理回路30は、入力映像信号Vid−inに基づいて、残像ドメインの発生を抑制するための映像処理を実行する。
【0032】
図7は、映像処理回路30の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、映像処理回路30は、遅延回路31と、境界検出部32と、補正部33と、D/A変換部34とを備える。
遅延回路31は、FIFO(First In First Out:先入れ先出し)メモリーや多段のラッチ回路等を有し、供給された入力映像信号Vid−inを蓄積して、1フレームの期間の経過後に読み出して、境界検出部32に出力する。遅延回路31における蓄積及び読出は、走査制御回路20によって制御される。
【0033】
境界検出部32は、現フレーム、及び現フレームの1フレーム前のフレーム(以下「前フレーム」という。)の入力映像信号Vid−inに基づいて、現フレームにおける暗画素と明画素との境界を検出する。前フレームは、現フレームと時間軸上で隣り合うフレームの一例である。前フレームの入力映像信号Vid−inは、遅延回路31によって境界検出部32に供給される。境界検出部32の機能は、特定部321と、判定部322とに大別される。
【0034】
特定部321は、現フレームの入力映像信号Vid−inに基づいて、明画素と接する暗画素を特定する。特定部321は、ここでは、暗画素のうち、X方向の反対方向(左方向)、又はY方向の反対方向(上方向)に明画素が接している暗画素を特定する。
判定部322は、前フレームの入力映像信号Vid−inに基づいて、特定部321により特定された暗画素の位置に、前フレームにおいて明画素が存在するかどうかを判定する。前述したように、制御回路10は、1フレームを2つのフィールドに分割して、液晶パネル100を駆動する。このため、判定部322は、現フレームの一のフィールドにおける暗画素の位置に、前フレームにおける最後のフィールドにおいて、明画素が存在するかどうかを判定することとなる。前フレームにおける最後のフィールドは、前フレームのうち、現フレームの各フィールドから時間軸上で最も近いフィールドである。
【0035】
境界検出部32は、判定部322により前フレームで明画素が存在すると判定された場合には、特定部321により特定された暗画素と、この暗画素に隣り合う明画素との境界の位置を示す位置情報RE1(N)を、補正部33へ出力する。
なお、3D映像を表示する場合に、同一の左目用画像L及び右目用画像Rが、或る程度の期間継続して、交互に表示されることがある。このため、境界検出部32は、現フレームの暗画素の位置に、前フレームにおいて明画素が存在するかどうかを判定することにより、現フレームの1フレーム後のフレーム(以下「次フレーム」という。)における残像ドメインの発生箇所を検出(推定)できるようにする。
【0036】
補正部33は、境界検出部32から供給された位置情報RE1(N)に基づいて、現フレームの入力映像信号Vid−inを補正する。補正部33は、具体的には、位置情報RE1(N)が示す位置の境界に接する暗画素と明画素との印加電圧の差を小さくするように、暗画素と明画素との少なくとも一方を補正の対象として、現フレームの入力映像信号Vid−inを補正する。補正部33は、補正後の映像信号を出力映像信号Vid−out1として、D/A変換部34に出力する。他方、補正部33は、位置情報RE1(N)に基づいて入力映像信号Vid−inを補正しなかった場合には、入力映像信号Vid−inをそのまま、出力映像信号Vid−out1として出力する。
【0037】
D/A変換部34は、補正部33から入力されたデジタルデータである出力映像信号Vid−out1を、アナログのデータ信号Vxに変換して出力する出力部として機能する。即ち、D/A変換部34は、出力映像信号Vid−out1に基づいて、液晶パネル100を駆動するためのデータ信号Vxを、データ線駆動回路140へ出力する。
なお、液晶105に直流成分が印加されるのを防止するため、データ信号Vxの電圧は、ビデオ振幅中心である電圧Vcntに対して高電位側の正極性電圧と低電位側の負極性電圧とに、ここではフィールド毎に交互に切り替えられる。
なお、コモン電極108に印加される電圧LCcomは、電圧Vcntとほぼ同電圧と考えてよいが、nチャネル型のTFT116のオフリーク等を考慮して、電圧Vcntよりも低位となるように調整されることがある。
【0038】
図8は、映像処理回路30が実行する映像処理を示すフローチャートである。
図9及び
図10は、映像処理回路30が実行する映像処理の具体例を説明する図である。
図9には、
図4において破線で囲った領域の画素に関する映像処理の具体例が示されている。
まず、映像処理回路30は、入力映像信号Vid−inに基づいて、一の画素に着目し、これを着目画素とする(ステップS1)。次に、映像処理回路30は、着目画素が暗画素かどうかを判定する(ステップS2)。
映像処理回路30は、着目画素が暗画素でない、即ち明画素と判定した場合には(ステップS2;NO)、入力映像信号Vid−inを出力映像信号Vid−out1とし、データ信号Vxに変換して出力する。
【0039】
ステップS2の処理で「YES」と判定した場合には、映像処理回路30は、着目画素である暗画素から見て、X方向の反対方向(左方向)、又はY方向の反対方向(上方向)に明画素が接しているかどうかを判定する(ステップS3)。
ここで、
図9(a)に示すように、N−2フレームからN+1フレームまでの各フレームの入力映像信号Vid−inが、映像処理回路30に順次供給された場合を考える。この場合、「RE」と記した暗画素が着目画素となったときには、映像処理回路30は、ステップS3で「YES」と判定する。ステップS3で「NO」と判定した場合には、映像処理回路30は、入力映像信号Vid−inを出力映像信号Vid−out1とし、データ信号Vxに変換して出力する。
【0040】
ステップS3で「YES」と判定して、明画素と接する暗画素を特定すると、映像処理回路30は、この暗画素が存在する位置に、前フレームにおいて明画素が存在するかどうかを判定する(ステップS4)。例えば、Nフレームを現フレームとして、「RE」と記した暗画素が特定された場合、前フレームであるN−1フレームにおいて、この暗画素の位置には明画素が存在する。この場合、映像処理回路30は、ステップS4で「YES」と判定する。ステップS4で「YES」と判定した場合、映像処理回路30は、特定した暗画素と、この暗画素に接する明画素との境界に基づいて補正対象の画素を決定し、現フレームの入力映像信号Vid−inを補正する(ステップS5)。そして、映像処理回路30は、補正後の映像信号を出力映像信号Vid−out1とし、データ信号Vxに変換して出力する。
【0041】
ステップS5で、映像処理回路30は、暗画素を補正対象とする場合には、
図9(b)の補正例1に示すように、暗画素の入力映像信号Vid−inを、印加電圧CV_Lを指定する映像信号に補正する。印加電圧CV_Lは、
図5に示すように、補正前の暗画素の印加電圧よりも高い電圧である。印加電圧CV_Lは、固定の電圧であってもよいし、特定された暗画素と接する明画素に指定された印加電圧に応じて設定されてもよい。後者の場合、映像処理回路30は、明画素に指定された印加電圧が大きいほど、印加電圧CV_Lを大きくするとよい。
この補正により、左目用画像Lにおける暗画素と明画素との境界付近において、リバースチルトドメインの発生が抑制される。これにより、次のフレームの右目用画像Rにおいて、残像ドメインによる表示不具合がユーザーに視認され難くなる(
図9(b)の波線の楕円部参照)。
【0042】
ステップS5で、映像処理回路30は、暗画素及び明画素を補正対象としてもよい。この場合、映像処理回路30は、
図9(c)の補正例2に示すように、暗画素の入力映像信号Vid−inを、印加電圧CV_Lを指定する映像信号に補正するとともに、明画素の入力映像信号Vid−inを、印加電圧CV_Hを指定する映像信号に補正する。印加電圧CV_Hは、固定の電圧であってもよいし、特定された暗画素に指定された印加電圧に応じて設定されてもよい。後者の場合、映像処理回路30は、暗画素に指定された印加電圧が小さいほど、印加電圧CV_Hを小さくするとよい。
この補正により、左目用画像Lにおける暗画素と明画素との境界付近において、リバースチルトドメインの発生が抑制され、次のフレームの右目用画像Rにおいて、残像ドメインによる表示不具合がユーザーに視認され難くなる(
図9(c)の波線の楕円部参照)。また、補正例2の場合、補正例1の場合に比べて、補正対象の画素の数は増えているが、一画素当たりの補正量を小さくすることも可能である。
【0043】
以上説明した映像処理が、
図4に示す入力映像信号Vid−inに施された場合、出力映像信号Vid−out1は、
図10に示すとおりになる。
図10(a)は補正例1に対応し、
図10(b)は補正例2に対応する。
図10(a)、(b)に示すように、
図6で説明した残像ドメインの発生箇所に存在する画素が、補正対象となるので、残像ドメインを原因とした表示不具合がユーザーに視認され難くなる
【0044】
ステップS5において、映像処理回路30は、暗画素を補正対象とせずに、明画素を補正対象としてもよい。また、映像処理回路30は、明画素又は/及び明画素の補正処理数を、「2」以上としてもよい。補正処理数とは、暗画素と明画素との境界に接する画素から数えて、当該境界の反対方向に連続する補正対象の画素の数のことをいう。例えば、補正処理数が「3」の場合、境界と接する画素から数えて、当該境界の反対方向に連続する3つの画素が補正対象となる。
なお、映像処理回路30は、ステップS4の処理で、着目画素が前フレームにおいて明画素でない、即ち暗画素と判定した場合には(ステップS4;NO)、入力映像信号Vid−inを出力映像信号Vid−out1とし、データ信号Vxに変換して出力する。
【0045】
図22は、ステップS2の処理を、着目画素が明画素かどうかを判定するステップに置き換えた場合の映像処理を説明する図である。この場合、
図22(a)に「RE」と記した明画素が着目画素となったときに、補正対象の画素が決定される。このとき、
図22(b)に示すように、残像ドメインの発生箇所に接する画素は補正対象とならないため、残像ドメインによる表示不具合がユーザーに視認されやすくなる。よって、映像処理回路30は、ステップS2で、着目画素が暗画素かどうかを判定しているのである。
以上のとおり、映像処理回路30が実行する映像処理により、残像ドメインを原因とした表示不具合の発生を抑制することができる。また、この残像ドメインを抑制する効果は、例えば、高階調の背景部に対して、黒低階調の表示部が配置された映像の場合も同様に奏する。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
この第2実施形態の電気光学装置1では、制御回路10が以下で説明する表示動作を行う。
図11は、本実施形態の制御回路10の表示動作を説明する図である。
同期信号Syncにより制御される液晶パネル100の垂直走査信号の周波数は、本実施形態では480Hzである。制御回路10は、
図11に示すように、1フレームを第1フィールド〜第4フィールドの4つのフィールドに分割し、分割した各フィールドで1〜m行目の走査線を走査する。
【0047】
データ信号Vxの書込極性について説明すると、制御回路10は、2フィールド毎に書込極性を反転して、画素110へのデータ信号Vxの書き込みを行う。また、制御回路10は、フレーム毎に、左目用画像と、右目用画像とを交互に表示するように、画素110へのデータ信号Vxの書き込みを行う。ただし、制御回路10は、左目用画像を表示するフレームでは、第1フィールド及び第3フィールドで左目用画像L1を表示し、第2フィールド及び第4フィールドで左目用画像L2を表示する。また、制御回路10は、右目用画像を表示するフレームでは、第1フィールド及び第3フィールドで右目用画像R1を表示し、第2フィールド及び第4フィールドで右目用画像R2を表示する。
【0048】
3D眼鏡50の制御について説明すると、制御回路10は、各フレームの第1フィールドでは、3D眼鏡50の液晶シャッター52R、52Lを不透過状態とし、左目用画像を表示するフレームの第2〜4フィールドでは3D眼鏡50の液晶シャッター52Lを透過状態、液晶シャッター52Rを不透過状態とし、右目用画像を表示するフレームの第2〜4フィールドでは、3D眼鏡50の液晶シャッター52Lを不透過状態、液晶シャッター52Rを透過状態とする。これにより、上述した第1実施形態の場合よりも、液晶シャッター52L、52Rが透過状態となる期間が長くなり、ユーザーに視認される3D映像の明るさが向上する。
【0049】
また、
図11に示すように、本実施形態では、1フィールドの期間が上述した第1実施形態の半分(1/2)となる。このため、制御回路10は、複数の走査線112をK本(Kは2以上の整数)単位で選択して、各走査線112に対応する画素110にデータ信号Vxを書き込む「複数本同時書き込み」を行う。本実施形態ではK=2とし、制御回路10は、Y方向に隣り合う2本の走査線112を同時に選択する。
【0050】
複数本同時書き込みが行われるときには、上位装置から電気光学装置1に対して、フレーム毎に、1フレームの映像信号を、Y方向に半分に間引いた入力映像信号Vid−inが供給される。ここでは、奇数行である第i行(i=1、3、5、・・・)の画素110に対する印加電圧を指定した入力映像信号Vid−inが供給される。
【0051】
そして、制御回路10は、
図12に示すように、N−1フレームで左目用画像L1を表示する場合、及びNフレームで右目用画像R1を表示する場合には、第i行の走査線112に対応する画素の入力映像信号Vid−inに基づいて、第2i−1行及び第2i行の走査線112に対応する画素110に、データ信号Vxを書き込む。同様に、制御回路10は、第i+1行の走査線112に対応する画素の入力映像信号Vid−inに基づいて、第2i+1行及び第2i+2行の走査線112に対応する画素110に、データ信号Vxを書き込む。また、制御回路10は、N−1フレームで、左目用画像L2を表示する場合には、左目用画像L1をY方向に1行ずつ(1画素ずつ)ずらしたデータ信号Vxを書き込む。同様に、制御回路10は、Nフレームで、右目用画像R2を表示する場合には、右目用画像R1をY方向に1行ずつ(1画素ずつ)ずらしたデータ信号Vxを書き込む。
この複数本同時書き込みにより、Y方向における解像度ha低くなるものの、液晶パネル100の高速駆動によって、ユーザーに視認される3D映像の明るさが向上する。
【0052】
以上の表示動作の下、X方向の補正処理数P(Pは自然数)と、Y方向の補正処理数Q(Qは自然数)とが同じ値に設定された場合、以下で説明する映像処理の問題点が生じることがある。ここでは、暗画素について、X方向の補正処理数Pと、Y方向の補正処理数Qとが「2」に設定された場合を考える。
この場合、
図23に示すように、X方向に対しては、暗画素と明画素との境界から、X方向に連続する2個の暗画素が補正対象となる。しかしながら、Y方向に対しては、暗画素と明画素との境界から、Y方向に4個の画素が補正対象となる。その理由は、補正対象となったY方向に連続する2個の暗画素に基づいて、複数本同時書き込みが行われるからである。これにより、Y方向に対して補正対象となる画素の数が意図せず多くなり、補正による表示内容の変化がユーザーによって視認されやすくなる。即ち、複数本同時書き込みを行った場合、補正処理数P、Qの設定と、実際の補正対象の画素の数とに、齟齬が生じることがある。
【0053】
そこで、本実施形態の映像処理回路30は、複数の走査線112がK本単位で選択される場合には、Y方向における補正処理数Qを、X方向における補正処理数Pよりも少なくする。具体的には、映像処理回路30は、補正処理数Qを、補正処理数Pの1/Kとする。映像処理回路30は、例えば、補正処理数Pを「2」とし、補正処理数Qを「1」とする。
これにより、
図12に示す右目用画像R1及び右目用画像R2を示す入力映像信号Vid−inが補正された場合には、
図13に示す右目用画像R1及び右目用画像R2が表示される。
図13に示すように、本実施形態の映像処理により、複数本同時書き込みが行われた場合でも、補正による表示内容の変化がユーザーに視認されるのを抑制することができる。
【0054】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
この第3実施形態の電気光学装置1は、3D映像を表示するだけでなく、2D映像を表示する機能を有する。更に、本実施形態の映像処理回路は、3D映像を表示する場合と、2D映像を表示する場合とで、リバースチルトドメインの発生を抑えるための映像処理を異ならせる。具体的には、映像処理回路は、3D映像を表示する場合には、前述した残像ドメインを抑制するための映像処理を実行し、2D映像を表示する場合には、動画の表示を原因として発生するリバースチルトドメイン(以下「動画ドメイン」という。)を抑制するための映像処理を実行する。
【0055】
図14は、動画ドメインが発生する原因を説明する図である。
図14に示すように、N−2フレーム、N−1フレーム、Nフレームの順に、暗画素(第4画素)を背景として、明画素(第3画素)が1フレームにつき1画素ずつX方向に移動する場合を考える。2D映像の表示時における暗画素及び明画素の条件は、前述した3D映像の表示時における暗画素及び明画素の条件と異なるものとする。具体的には、2D映像の表示時における暗画素は、印加電圧が所定電圧以下である画素110で、2D映像の表示時における明画素は、印加電圧がこの所定電圧よりも大きい画素110である。この所定電圧は、閾値電圧JVと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
図14に示すように、動画ドメインは、映像の動きに伴って暗画素から明画素に変化すべき画素が、リバースチルトドメインの発生によって本来の階調にはならないことにより発生する。この動画ドメインは、複数の明画素のリバースチルト発生領域が連結して、一種の尾引き現象として顕在化する。したがって、動画ドメインを原因とした表示不具合を抑えるためには、前フレームから現フレームにわたって暗画素から明画素に変化した画素に着目して、補正対象の画素が決定されればよい。
【0057】
図15は、本実施形態の映像処理回路30Aの構成を示すブロック図である。
図15に示すように、映像処理回路30Aは、上述した第1実施形態で説明した遅延回路31と、境界検出部32と、補正部33と、D/A変換部34とに加え、切替制御部35と、遅延回路36と、境界検出部37と、補正部38とを備える。
切替制御部35は、供給された入力映像信号Vid−inの出力先を切り替える制御を行う。切替制御部35は、上位装置又は映像処理回路30Aに設けられた、3D映像か又は2D映像かを判定する回路ブロック(図示略)からの信号に基づいて、入力映像信号Vid−inが3D映像又は2D映像のどちらを示すかを判定する。切替制御部35は、3D映像と判定した場合には、入力映像信号Vid−inを、遅延回路31、境界検出部32及び補正部33に出力する。切替制御部35は、表示映像が2D映像と判定した場合には、入力映像信号Vid−inを、遅延回路36、境界検出部37及び補正部38に出力する。
【0058】
遅延回路36は、遅延回路31と同じ構成を有し、供給された入力映像信号Vid−inを蓄積して、1フレームの期間の経過後に読み出して、境界検出部37に出力する。遅延回路36における蓄積及び読出は、走査制御回路20によって制御される。
【0059】
境界検出部37は、現フレーム、及び前フレームの入力映像信号Vid−inに基づいて、現フレームにおける暗画素と明画素との境界を検出する。前フレームの入力映像信号Vid−inは、遅延回路36によって境界検出部37に供給される。境界検出部37の機能は、特定部371と、判定部372とに大別される。
特定部371は、現フレームの入力映像信号Vid−inに基づいて、暗画素が接している明画素を特定する。特定部371は、ここでは、明画素のうち、X方向(右方向)、又はY方向(下方向)に暗画素が接している明画素を特定する。
判定部372は、前フレームの入力映像信号Vid−inに基づいて、特定部371により特定された明画素の位置に、前フレームにおいて暗画素が存在するかどうかを判定する。
【0060】
境界検出部37は、判定部372により前フレームで暗画素が存在すると判定された場合には、特定部371により特定された明画素と、この明画素に隣り合う暗画素との境界の位置を示す位置情報RE2(N)を、補正部38へ出力する。
【0061】
補正部38は、境界検出部37から供給された位置情報RE2(N)に基づいて、現フレームの入力映像信号Vid−inを補正する。補正部38は、具体的には、位置情報RE2(N)が示す位置の境界に接する暗画素と明画素との印加電圧の差を小さくするように、暗画素と明画素との少なくとも一方を補正の対象として、現フレームの入力映像信号Vid−inを補正する。補正部38は、補正後の映像信号を出力映像信号Vid−out2として、D/A変換部34に出力する。補正部38は、位置情報RE2(N)に基づいて入力映像信号Vid−inを補正しなかった場合には、この入力映像信号Vid−inをそのまま、出力映像信号Vid−out2として出力する。
【0062】
以上の構成により、映像処理回路30Aでは、3D映像を表示する場合には、補正部33よって補正された出力映像信号Vid−out1が、D/A変換部34に出力され、2D映像を表示する場合には、補正部38よって補正された出力映像信号Vid−out2が、D/A変換部34に出力される。切替制御部35は、この制御のほかに、遅延回路31、境界検出部32と、補正部33とからなる第1回路ブロック、及び遅延回路36と、境界検出部37と、補正部38とからなる第2回路ブロックとを選択的に動作させる制御を行ってもよい。
【0063】
図16は、映像処理回路30Aが実行する映像処理の流れを示すフローチャートである。
図17は、映像処理回路30Aが実行する映像処理の具体例を説明する図である。
まず、映像処理回路30Aは、入力映像信号Vid−inが、3D映像と2D映像とのどちらを示すかを判定する(ステップS11)。3D映像を示すと判定した場合(ステップS11;3D映像)、映像処理回路30Aは、
図8のステップS1へ進む。3D映像を表示する場合の映像処理は、上述した第1実施形態と同じでよく、ここでの説明を省略する。
映像処理回路30Aは、2D映像を示すと判定した場合(ステップS11;2D映像)、入力映像信号Vid−inに基づいて一の画素に着目し、これを着目画素とする(ステップS12)。次に、映像処理回路30Aは、着目画素が明画素かどうかを判定する(ステップS13)。
映像処理回路30Aは、着目画素が明画素でない、即ち暗画素と判定した場合には(ステップS13;NO)、入力映像信号Vid−inを出力映像信号Vid−out2とし、データ信号Vxに変換して出力する。
【0064】
ステップS13の処理で「YES」と判定した場合には、映像処理回路30Aは、着目画素である明画素から見て、X方向(右方向)、又はY方向(下方向)に暗画素が接しているかどうかを判定する(ステップS14)。
ここで、
図17(a)に示すように、N−2フレーム、N−1フレーム、Nフレームの順で、暗画素を背景として、明画素が1フレームにつき1画素ずつX方向に移動する場合を考える。この場合、「RE」と記した明画素が着目画素となったときに、映像処理回路30Aは、ステップS14で「YES」と判定することとなる。映像処理回路30Aは、ステップS14で「NO」と判定した場合には、入力映像信号Vid−inを出力映像信号Vid−out2とし、データ信号Vxに変換して出力する。
【0065】
ステップS14で「YES」と判定して、暗画素と接する明画素を特定すると、映像処理回路30Aは、この明画素が存在する位置に、前フレームにおいて暗画素が存在するかどうかを判定する(ステップS15)。ここで、Nフレームを現フレームとして、「RE」と記した明画素を特定した場合、映像処理回路30Aは、ステップS15で「YES」と判定する。ステップS15で「YES」と判定した場合、映像処理回路30Aは、特定した明画素に基づいて補正対象の画素を決定し、現フレームの入力映像信号Vid−inを補正する(ステップS16)。そして、映像処理回路30Aは、補正後の映像信号を出力映像信号Vid−out2とし、データ信号Vxに変換して出力する。補正対象の画素を決定する方法、及び補正後の印加電圧の決定の方法は、ステップS5と同じでよく、ここでは説明を省略する。
【0066】
映像処理回路30Aは、例えば暗画素を補正対象とする場合には、
図17(b)に示すように、暗画素の映像信号を、印加電圧CV_Lを指定する映像信号に補正する。そして、映像処理回路30Aは、補正後の映像信号を出力映像信号Vid−out2とし、データ信号Vxに変換して出力する。
なお、映像処理回路30Aは、ステップS15の処理で、着目画素が前フレームで暗画素でない、即ち明画素と判定した場合には、ステップS15の処理で「NO」と判定する。この場合、映像処理回路30Aは、入力映像信号Vid−inを出力映像信号Vid−out2とし、データ信号Vxに変換して出力する。
【0067】
以上のように、液晶パネル100に2D映像を表示させる場合には、映像処理回路30Aは、動画ドメインを原因とした尾引き現象が目立ち難くなるように、入力映像信号Vid−inを補正する。これにより、映像処理回路30Aは、3D映像と2D映像とのどちらを表示する場合でも、リバースチルトドメインを原因とした表示不具合を抑制することができる。
なお、本実施形態では、映像処理回路30Aが、残像ドメインを抑制するための第1回路ブロックと、動画ドメインを抑制するための第2回路ブロックとを個別に備える場合を説明したが、第1回路ブロックを構成する各要素が、残像ドメインを抑制するための映像処理と、動画ドメインを抑制するための映像処理とを選択的に行ってもよい。
【0068】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施することが可能である。また、以下に示す変形例は、各々を適宜に組み合わせてもよい。以下では、上述した第1、第2実施形態の映像処理回路30と、上述した第3実施形態の映像処理回路30Aとを、「映像処理回路30」と総称する。
(変形例1)
補正処理数を「2」以上とする場合に、映像処理回路30は、暗画素と明画素との境界に近い画素ほど、補正量を大きくしてもよい。映像処理回路30は、例えば、暗画素及び明画素を補正対象とし、且つ、それぞれの補正処理数を「2」とした場合、
図18で説明する映像処理を実行する。即ち、映像処理回路30は、暗画素については、明画素との境界に近い画素ほど印加電圧を大きくするために補正量を大きくし、この境界から遠い画素ほど印加電圧を小さくするために補正量を小さくする。また、映像処理回路30は、明画素については、暗画素との境界に近い画素ほど印加電圧を小さくするために補正量を大きくし、この境界から遠い画素ほど印加電圧を大きくするために補正量を小さくする。これにより、映像処理回路30は、リバースチルトドメインの発生しやすさを加味した補正量で、映像信号を補正することができる。
【0069】
(変形例2)
上述した各実施形態では、映像処理回路30は、現フレームにおいて暗画素が存在する位置に、前フレームにおいて明画素が存在するかどうかを判定していた。
しかし、残像ドメインが発生するのは、次フレームの右目用画像が表示されたとき(例えば、
図22(b)のN+1フレーム)である。そこで、映像処理回路30は、現フレームの暗画素が存在する位置に、次フレームにおいて明画素が存在するかどうかを判定してもよい。なお、次フレームは、現フレームと時間軸上で隣り合うフレームの一例である。
映像処理回路30は、例えば、現フレームの入力映像信号Vid−inを蓄積するフレームメモリーを更に備え、このフレームメモリーから読み出した現フレームの入力映像信号Vid−inと、次に供給された次フレームの入力映像信号Vid−inとに基づいて、残像ドメインを抑制するための映像処理を実行する。この場合の映像処理は、上述した各実施形態で説明した、前フレームの映像信号を、次フレームの映像信号に置き換えた映像処理でよい。
ただし、映像処理回路30の判定部322は、現フレームの一のフィールドにおける暗画素の位置に、次フレームにおける最初のフィールドにおいて、明画素が存在するかどうかを判定することとなる。次フレームにおける最初のフィールドは、次フレームのうち、現フレームの各フィールドから時間軸上で最も近いフィールドである。
この変形例の映像処理回路30によれば、例えば2D映像を表示する場合に、残像ドメインが発生する条件が整った場合でも、リバースチルトドメインの発生を抑制することができる。
【0070】
(変形例3)
上述した各実施形態では、液晶105にVA方式を用いた例を説明したが、TN(Twisted Nematic)方式とし、液晶素子120の各々が、電圧無印加時において白状態となるノーマリーホワイトモードとしてもよい。
図19は、ノーマリーホワイトモードにおける、画素110に指定される印加電圧と、画素110が備える液晶素子120の透過率との関係(V−T特性)を示すグラフである。
図19に示すグラフにおいて、横軸は画素110に指定される印加電圧を表し、縦軸は液晶素子120の透過率(具体的には、相対透過率)を表す。
図19に示すように、ノーマリーホワイトモードでは、画素110に対する印加電圧が小さいほど、画素110の透過率(又は反射率)が大きくなる。このため、ノーマリーホワイトモードでは、例えば、画素110に対して指定された印加電圧が閾値電圧JV以下の画素110が明画素(第2画素)となり、閾値電圧JVを上回る画素110が暗画素(第1画素)となる。
映像処理回路30で実行される映像処理については、ノーマリーホワイトモードの液晶パネル100の場合、画素110の液晶素子120に印加される電圧と透過率との関係が、ノーマリーブラックモードの液晶パネル100の場合とは逆となり、透過率(又は反射率)が低い場合ほど、液晶素子120に印加されるべき電圧が大きくなる。ただし、映像処理回路30Aは、この点を除いて、上述した各実施形態と同様の映像処理を実行すればよい。
【0071】
(変形例4)
暗画素及び明画素は、上述した各実施形態で説明した条件によって規定されなくてもよい。例えば、画素110に対して指定された印加電圧が予め決められた閾値以下である画素を暗画素とし、指定された印加電圧がこの閾値よりも大きい閾値以上である画素を明画素としてもよい(ノーマリーブラックモードの場合)。即ち、暗画素及び明画素は、隣り合う2つの画素であって、或る印加電圧が指定された画素110と、これよりも大きい印加電圧が指定された画素110との組み合わせによって規定されていればよい。
図7で説明した映像処理回路30、及び
図15で説明した映像処理回路30Aの構成はあくまで一例であり、例えば、2以上のブロックを統合した回路で実現されてもよいし、一部のブロックを省略した回路で実現されてもよい。
また、上述した実施形態で説明した具体的な数値は、あくまで一例である。
また、上述した実施形態で説明した処理の順番は適宜入れ替えられてもよい。
また、液晶パネル100は、透過型に限られず、例えば反射型であってもよい。
【0072】
[電子機器]
上述した各実施形態に係る電気光学装置1を用いた電子機器の一例として、液晶パネル100をライトバルブ(即ち光変調器)として用いた投射型表示装置(プロジェクター)について説明する。
図20は、このプロジェクターの構成を示す平面図である。
図20に示すように、プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106及び2枚のダイクロイックミラー2108によってR色、G色、B色の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123及び出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0073】
このプロジェクター2100では、液晶パネル100を含む電気光学装置1が、R色、G色、B色のそれぞれに対応して3組設けられる。ライトバルブ100R、100G及び100Bの構成は、上述した液晶パネル100と同様である。R色、G色、B色のそれぞれの原色成分の映像信号がそれぞれ外部上位回路から供給されて、ライトバルブ100R、100G及び100Bがそれぞれ駆動される構成となっている。
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色及びB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各原色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ2114によってカラー画像が投射されることとなる。
【0074】
なお、ライトバルブ100R、100G及び100Bには、ダイクロイックミラー2108によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bによる水平走査方向は、ライトバルブ100Gによる水平走査方向と逆向きにして、左右を反転させた像を表示する構成となっている。
【0075】
電子機器としては、
図20を参照して説明したプロジェクターの他にも、テレビジョンや、ビューファインダー型・モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。そして、これらの各種の電子機器に対して、電気光学装置1が適用可能である。