(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような用途に使用される粘着シートについては、部材同士を貼り合わせた後に優れた粘着性を発揮すると共に、貼り直し等が必要となった場合に、リワーク(再剥離)させたいとの要求が高まってきている。特に液晶表示装置と他の部材(例えばタッチパネルモジュール)との貼合時、又はカバーガラスと飛散防止フィルムとの貼合時にゴミのかみ込みなどの不良が生じた場合は、相対的に価格の高い液晶表示装置やカバーガラスを再利用するためにリワークさせたいとの要求が非常に高まってきている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載された粘着シートにおいては、リワーク性が十分ではなく、リワーク作業時に被着物に粘着剤が残るという問題があった。被着物に残った粘着剤は、溶剤で拭き取ったり、溶剤で洗浄する必要があり、リワーク作業に手間と時間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、除去したい粘着剤面に貼付し、剥離することで被着物に付着した粘着剤を容易に除去できるような粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。さらに、本発明者らは、十分な粘着力を有しつつも、優れたリワーク性を発揮し得る粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、粘着シートの破断点伸度、破断点応力及びアクリル系粘着面に対する粘着力を一定値以上とすることにより、優れた粘着剤除去性能を備えた粘着シートが得られることを見出した。さらに、本発明者らは、このような粘着シートは、被着物に対し十分な粘着力を有し、かつ優れたリワーク性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1]破断点伸度が500%以上であり、破断点応力が1.0N/mm
2以上であり、且つアクリル系粘着面に対する粘着力が15N/25mm以上であることを特徴とする粘着シート。
[2]ゴム系樹脂を主成分とする[1]に記載の粘着シート。
[3]ゴム系樹脂は、スチレン系共重合体である[2]に記載の粘着シート。
[4]ゴム系樹脂は、スチレン系ブロック共重合体であって、スチレン系ブロック共重合体はスチレンを重合させたブロックと、エチレン、プロピレン及びブテンから選択される少なくとも1種を重合させたブロックと、を含有する[2]又は[3]に記載の粘着シート。
[5]スチレンを重合させたブロックの含有率は、スチレン系ブロック共重合体に対して10〜50質量%である[4]に記載の粘着シート。
[6]ゴム系樹脂は、A−B−A型トリブロック共重合体であって、Aはスチレンを重合させたブロックであり、Bはエチレン、プロピレン及びブテンから選択される少なくとも1種を重合させたブロックである[2]〜[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7]粘着シートは、ゴム系樹脂と、粘着付与剤と、可塑剤とを含み、粘着付与剤の含有量は、ゴム系樹脂100質量部に対して、10〜90質量部であり、可塑剤の含有量は、ゴム系樹脂100質量部に対して、10〜80質量部である[1]〜[6]のいずれかに記載の粘着シート。
[8]粘着シートは、両面粘着シートである[1]〜[7]のいずれかに記載の粘着シート。
[9]厚みが80μm以上である[1]〜[8]のいずれかに記載の粘着シート。
[10]光学部材に貼合するためのものである[1]〜[9]のいずれかに記載の粘着シート。
[11]光学部材は、液晶セル又はタッチパネルである[10]に記載の粘着シート。
[12] 支持体を有さず単層である[1]〜[11]のいずれかに記載の粘着シート。
[13][1]〜[12]のいずれかに記載の粘着シートの少なくとも一方の面に剥離シートが積層された剥離シート付き粘着シート。
[14][1]〜[12]のいずれかに記載の粘着シートの両面に剥離シートが積層された剥離シート付き粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた粘着剤除去性能を備えた粘着シートを得ることができる。さらに、本発明の粘着シートは、被着物に対し十分な粘着力を有し、かつ優れたリワーク性を発揮し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(粘着シート)
本発明は、破断点伸度が500%以上であり、破断点応力が1.0N/mm
2以上であり、且つアクリル系粘着面に対する粘着力が15N/25mm以上である粘着シートに関する。本発明の粘着シートは、破断点伸度及び破断点応力を上記値以上とすることにより、リワーク作業時に粘着シートにかかる剥離力に対応して伸長しやすく、また粘着シートが破断されにくいという特徴を有する。また、本発明の粘着シートは、アクリル系粘着面に対する粘着力を上記値以上とすることにより、被着物に残留した粘着剤に対して優れた粘着性を発揮することができる。このため、除去したい粘着剤が残った被着物に本発明の粘着シートを貼付し剥離することで、被着物に残留した粘着剤を容易に除去することができる。すなわち、本発明の粘着シートは、被着物及び残留粘着剤に対して優れた粘着性を発揮しつつ、優れた粘着剤除去性能を発揮し得る。
【0014】
なお、本発明の粘着シートは、被着物に対しても十分な粘着力を有するため、各種部材の貼り合わせの用途にも用いても良い。この場合、本発明の粘着シートは、優れたリワーク性能を発揮し得る。ここで、リワーク性能とは、貼付後の剥離の際に、粘着シートの粘着剤の一部が被着物に残留しないこと、及びリワーク作業中に粘着シートが破断しない特性のことをいう。
【0015】
破断点伸度及び破断点応力は、JIS K 6251に準じて、引張試験機を用いて測定される。測定は、試料(粘着シート)を直径5mm長さ70mmの棒状に丸めたものを、チャック間の初期距離:50mm、引張速度:1000mm/minの条件で、引っ張ることにより測定できる。なお、上記引張試験は、23℃、相対湿度50%の環境下で行う。破断点伸度は、引張試験における、試験片(粘着シート)の決められた標点間での破断直前の伸びを表している。また、破断点応力は、引張試験における破断の際に破断点の引張力を試験片の初期断面積で除した値である。なお、上記引張試験は、粘着シートの長さ方向の破断点伸度及び破断点応力を測定したものである。
【0016】
粘着シートの破断点伸度は、500%以上であればよく、600%以上であることが好ましく、800%以上であることがより好ましく、1000%以上であることがさらに好ましい。粘着シートの破断点応力は1.0N/mm
2以上であればよく、1.5N/mm
2以上であることが好ましく、2.0N/mm
2以上であることがより好ましく、3.0N/mm
2以上であることがさらに好ましい。
【0017】
粘着シートのアクリル系粘着面に対する粘着力は、15N/25mm以上であればよく、20N/25mm以上であることが好ましく、25N/25mm以上であることがより好ましい。アクリル系粘着面に対する粘着力を測定する際には、本発明の粘着シートの粘着力測定用の被着体として、アクリル系粘着シート(新タック化成社製、CPETT75HNA/DP/T7)の離型フィルムを剥がした粘着面を被着体として使用する。粘着力の測定は、JIS Z 0237に準じて測定することができる。
【0018】
粘着シートの破断点伸度をAとし、破断点応力をBとした場合、100<A/B<1000であることが好ましく、200<A/B<800であることがより好ましい。破断点伸度と破断点応力の関係を上記範囲内とすることにより、粘着シートにかかる剥離力に対応して伸長しやすくすることができ、また粘着シートの破断を抑制することができる。
【0019】
本発明の粘着シートは、ゴム系樹脂を主成分とするものであることが好ましい。ゴム系樹脂としては、例えば、天然ゴム系樹脂や合成ゴム系樹脂等を挙げることができる。ここで、ゴム系樹脂を主成分とするとは、粘着シートの全質量に対して、ゴム系樹脂を30質量%以上含むことを意味し、好ましくは35質量%以上、より好ましくは45質量%以上含むことを意味する。
【0020】
ゴム系樹脂は、合成ゴム系樹脂であることが好ましく、合成ゴム系樹脂としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン系ブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリイソブチレン(PIB)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらの合成ゴムは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
中でも、ゴム系樹脂はスチレン系共重合体であることが好ましく、スチレン系ブロック共重合体であることがより好ましい。スチレン系ブロック共重合体は、スチレンを重合させたブロックと、エチレン、プロピレン及びブテンから選択される少なくとも1種を重合させたブロックを含有することが好ましい。エチレン、プロピレン及びブテンから選択される少なくとも1種を重合させたブロックは、これらの水素添加物を重合させたブロックであってもよい。
なお、スチレンを重合させたブロックは、スチレンを主の構成成分としたブロックであればよく、エチレン等の他の成分を含んでいてもよい。スチレンを重合させたブロックは、スチレン由来の成分を90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましい。また、エチレン、プロピレン及びブテンから選択される少なくとも1種を重合させたブロックについても、同様に他の構成成分を含んでいてもよい。
【0022】
エチレン、プロピレン及びブテンから選択される少なくとも1種を重合させたブロックは、エチレン及びブテンの重合体を含むブロックを含有するものであることが好ましい。このようなブロックは、エチレンのブロックと、ブテンのブロックを含むブロックコポリマーであってもよく、エチレンとブテンのランダムコポリマーであってもよい。
【0023】
スチレン系ブロック共重合体中に含まれるスチレンを重合させたブロックの含有率は、スチレン系ブロック共重合体に対して10〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜35質量%であることがさらに好ましい。なお、スチレンを重合させたブロックの含有率は、スチレン系ブロック共重合体中に含まれるスチレンを重合させたブロックの含有率であって、粘着シート全体に含まれるスチレンの含有率とは異なるものである。本発明では、スチレン系ブロック共重合体中に含まれるスチレンを重合させたブロックの含有率を上記範囲内とすることにより、アクリル系粘着面に対する粘着力を所望の範囲内とすることができるため、アクリル系粘着剤除去用粘着シートとして好ましく用いられる。また、スチレンを重合させたブロックの含有率を上記範囲内とすることにより、粘着シートのアクリル系粘着面以外に対するタック(瞬間的な粘着力)を抑制することができるため、アクリル系粘着剤除去用粘着シートとしてのハンドリング性を高めることができる。
【0024】
さらに、ゴム系樹脂は、A−B−A型トリブロック共重合体であることが好ましい。ここで、A−B−A型トリブロック共重合体のAは、スチレンを重合させたブロックであり、Bはエチレン、プロピレン及びブテンから選択される少なくとも1種を重合させたブロックである。なお、Bは、エチレン、プロピレン及びブテンから選択される2つ以上のランダムコポリマーのブロックであってもよく、Bがランダムコポリマーの場合であっても、共重合体は、A−B−A型トリブロック共重合体に分類される。また、Bは、エチレン、プロピレン及びブテンから選択される2つ以上のブロックコポリマーであってもよく、このように2種のブロックを含む場合であっても、共重合体は、A−B−A型トリブロック共重合体に分類される。
【0025】
A−B−A型トリブロック共重合体としては、例えば、下記式(1)のスチレン系ブロック共重合体(スチレン-水添イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体)、下記式(2)のスチレン系ブロック共重合体(スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンのトリブロック共重合体)、下記式(3)のスチレン系ブロック共重合体(スチレン−(水添ビニル/イソプレン)−スチレンのトリブロック共重合体)などが挙げられる。
【0027】
式(1)において、mは重合度を表し、PSはスチレンを重合させたブロックを表す。mは、スチレン系ブロック共重合体の分子量から算出することができる。
【0029】
式(2)において、m、nはそれぞれ重合度を表し、PSはスチレンを重合させたブロックを表す。m及びnは、スチレン系ブロック共重合体の分子量から算出することができる。
【0031】
式(3)において、mは重合度を表し、PSはスチレンを重合させたブロックを表す。mは、スチレン系ブロック共重合体の分子量から算出することができる。
【0032】
A−B−A型トリブロック共重合体においては、Aは、スチレンを重合させたブロックであり、Bは水添イソプレンを重合させたブロックであることも好ましい。
【0033】
ゴム系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜1000000であることが好ましく、50000〜800000であることがより好ましく、80000〜500000であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。
【0034】
(添加剤)
本発明の粘着シートは、ゴム系樹脂を主成分として含む。さらに、本発明の粘着シートは、粘着付与剤と可塑剤を含むものであることが好ましい。粘着付与剤としては、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂などの石油系樹脂を挙げることができる。この中でもスチレン系樹脂(スチレン系粘着付与剤)が好ましく用いられる。
【0035】
粘着付与剤の含有量は、ゴム系樹脂100質量部に対して、10〜90質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましく、20〜80質量部であることがさらに好ましい。粘着付与剤の含有量を上記範囲内とすることにより、被着物に残留した粘着剤を効果的に除去することができる。さらに、粘着付与剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの粘着性を高めつつ、優れたリワーク性能を発揮する粘着シートを得ることができる。
【0036】
粘着付与樹脂としては、低温での粘着力と高温での凝集力を発揮させるため、軟化点100℃以下の粘着付与樹脂と120℃以上の粘着付与樹脂とを併用してもよい。このような粘着付与樹脂を含有する粘着シートは、幅広い温度環境下で良好に使用することができる。
【0037】
可塑剤としては、オイル成分やフタル酸エステル類等を使用できるが、環境面や安全面からオイル成分であることが特に好ましい。オイル成分は、粘着シートの破断点伸度と破断点応力をコントロールする働きをする。オイル成分としてはパラフィン系やナフテン系のシステムオイルが好ましく、ゴムの劣化が起き難い等の理由から、パラフィン系のシステムオイルがより好ましく用いられる。可塑剤の含有量は、用いるゴム系樹脂の分子量などによっても異なるが、ゴム系樹脂100質量部に対して、10〜90質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましく、10〜70質量部であることがさらに好ましく、20〜70質量部であることが特に好ましい。
【0038】
さらに、粘着シートには、必要に応じて、軟化剤、架橋剤、顔料等の添加剤が配合されていてもよい。
【0039】
また粘着シートの経時劣化を防ぐためには老化防止剤を添加することが好ましい。老化防止剤を添加することで、粘着シートの劣化による粘着力低下を防ぐことができる。老化防止剤としては、一般的なフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線防止剤、HALS(ヒンダードアミン系安定剤)などを挙げることができる。老化防止剤の添加量は、ゴム系樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。
【0040】
(粘着シートの構成)
本発明の粘着シートは、支持体(基材)の少なくとも一方の面に粘着シートを積層した積層粘着シートであってもよいが、
図1に示されているような単層の両面粘着シート10であることが好ましい。すなわち、本発明の粘着シートは支持体(基材)を有さず単層であることが好ましい。本発明の粘着シートは、アクリル系粘着面以外に対するタック(瞬間的な粘着力)は小さいため、ベタツキ感が少ない。このため、本発明の粘着シートは、支持体(基材)を有さずとも、取扱い性に優れている。ここで、粘着シートが単層であるとは、支持体(基材)を有さない両面粘着シートであることを意味し、全ての厚み領域において、破断点伸度が500%以上であり、破断点応力が1.0N/mm
2以上であり、且つアクリル系粘着面に対する粘着力が15N/25mm以上である粘着剤層のみから粘着シートが構成されることをいう。
【0041】
粘着シートが、支持体(基材)を有する場合、支持体(基材)も破断点伸度が500%以上であることが好ましい。すなわち、支持体(基材)も粘着シートを構成する粘着剤層と同様の伸度を有することが好ましい。また、粘着シートの破断点伸度をPとし、支持体(基材)の破断点伸度をQとした場合、P/Qは0.3〜3.0であることが好ましい。
【0042】
具体的には、支持体(基材)としては、ゴム系粘着剤との密着性が良く破断点伸度の大きな基材を用いることが好ましい。具体的には、ウレタンシート、軟質ポリ塩ビニルシートを挙げることができる。
【0043】
粘着シートの厚みは、80μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。本発明の粘着シートは一定以上の厚みを有することにより、被着物に残留した粘着剤を容易に除去することができる。さらに、粘着シートのリワーク性をより高めることができる。
【0044】
(剥離シート付き粘着シート)
粘着シートの少なくとも一方の面には、剥離シートが積層されることが好ましく、本発明の粘着シートは、剥離シート付き粘着シートであることが好ましい。剥離シートは粘着シートの少なくとも一方の面に積層されることが好ましく、
図2に示されているように両面に積層されることがより好ましい。剥離シートは高分子フィルムに剥離剤層を設けたものを用いることができる。
図2に示されているように、粘着シート10の両面に剥離シートを積層する場合、2枚の剥離シート(第1の剥離シート20及び第2の剥離シート30)は異なる剥離力を有することが好ましく、具体的には、異なる剥離剤が用いられることが好ましい。このように異なる剥離力を有する剥離シートを積層することにより、軽剥離力側の剥離シートを剥離する際に、重剥離力側の剥離シートから粘着シートが浮き上がる泣別れ現象を抑制することができる。重剥離力側の剥離シートの剥離力は0.08〜0.80N/50mmであることが好ましく、軽剥離力側の剥離シートの剥離力は0.01〜0.20N/50mmであることが好ましい。また重剥離力側の剥離力R
Hと軽剥離力側のシートの剥離力R
Lとの比(R
H/R
L)は1.5以上が好ましい。
【0045】
また、粘着シートの両面に剥離シートを積層する態様において、二つの剥離シートの剥離力の差が保てる場合は、第2の剥離シートに先に粘着剤塗工液を塗布したあと、第1の剥離シートを貼合圧着させてもよい。粘着シートの形状はシート状であってもよいし、ロール状に巻き上げられていてもよい。
【0046】
本発明の粘着シートは、形状保持性に優れている点にも特徴がある。通常、単層の両面の粘着シートは剥離シートを剥離した状態では、その形状を保っておくことが困難である。例えば、粘着シート内において一部と他の部分が接着したり、皺が寄ることがある。このような場合、剥離シートを剥がす前の粘着シートの面積に比べて、両面の剥離シートを剥離した後の粘着シートの投影面積は小さくなり、粘着面が少なくなることから粘着剤除去面積が減ったり、取り扱い性が著しく悪化する。しかし、本発明の粘着シートは形状保持性に優れているため、単層であっても、粘着剤除去用粘着シートとして好適であり、取り扱い性に優れている。具体的には、本発明の粘着シートにおいては、剥離シートを剥がす前の粘着シートの面積(cm
2)をSとして、両面の剥離シートを剥離した後の粘着シートの投影面積(cm
2)をTとした場合、T/S>0.9であることが好ましく、T/S>0.95であることがより好ましい。なお、両面の剥離シートを剥離した後の粘着シートの投影面積(cm
2)Tは、粘着シートの1つの角部のみをもって剥離シートから剥離した後の単層粘着シートの粘着面の投影面積である。
【0047】
(粘着シートの製造方法)
本発明の粘着シートは、粘着シート用粘着剤を塗工することによりシート化したものである。粘着シート用粘着剤は、ゴム系樹脂、粘着付与剤及びオイル成分が均一に混合されたものでありことが好ましい。粘着シート用粘着剤の製造方法としては、市販されているペレット状のゴム系樹脂をトルエン等の溶剤に溶解して、粘着付与剤、オイル成分等を混合することにより製造する方法、又は、ペレット状のゴムを加熱することにより軟化させて、ニーダにより粘着付与剤やオイル成分を混練する方法などが挙げられる。
このようにして製造した粘着シート用粘着剤を、既存の方法により塗工することによりシート化することができる。溶剤に溶解して製造した粘着剤を用いる場合は、ナイフコーター等で塗工した後、乾燥炉にて溶剤を乾燥させることでシート化できる。一方、加熱による混練法で製造した粘着剤を用いる場合は、予め加熱することにより粘着剤を軟化さる事が可能なホットメルトコーダーを用いることによりシート化が可能となる。
【0048】
粘着シートは、第1の剥離シートの上に形成されることが好ましく、第1の剥離シートの上に上述した方法で粘着シートを形成した後に、第2の剥離シートを積層することが好ましい。このように、粘着シートの両面に剥離シートが積層された剥離シート付き粘着シートを製造することができる。
【0049】
(粘着剤除去用粘着シート)
本発明の粘着シートは、粘着剤除去用粘着シートとして用いることができる。具体的には、被着物に残留した粘着剤面に本発明の粘着シートを貼付した後に、粘着シートを剥離することで被着物に付着した残留粘着剤を除去することができる。被着物に付着した残留粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を挙げることができるが、本発明の粘着シートは、特に、残留アクリル系粘着剤に対して優れた粘着剤除去性能を発揮することができ、アクリル系粘着剤除去用粘着シートとして好ましく用いられる。
【0050】
(光学部材用粘着シート)
本発明の粘着シートは、各種部材の貼り合わせの用途に好ましく用いられる。貼り合わせの用途は制限されないが、光学部材に貼合用とすることが好ましい。光学部材としては、例えば、液晶セル又はタッチパネルを挙げることができる。
【0051】
(画像表示装置)
本発明は、光学部材用粘着シートを備えて画像表示装置に関するものであってもよい。本発明の粘着シートを光学部材に貼合し、粘着シート付き光学部材を画像表示装置に組み込むことにより画像表示装置を作製することができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0053】
(実施例1)
[粘着シート用粘着剤の製造]
スチレン系ブロック共重合体(スチレン-水添イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体)(クラレ社製、セプトン2063)100質量部、スチレン系粘着付与剤(三井化学社製、FTR8100)70質量部、パラフィン系オイル(出光社製、ダイアナプロセスオイルPW−90)50質量部をトルエンに溶解し均一になるまで撹拌して、固形分濃度45質量%の粘着剤のトルエン溶液を得た。スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて換算したところ、120000であった。なお、固形分とはゴム成分、粘着付与剤、オイル成分のことを指す。
【0054】
[粘着シートの作成]
上記で作成した粘着シート用粘着剤溶液をナイフコーターで重剥離側の剥離シート(王子エフテックス社製、RL−07(2))に乾燥後100μmの厚みになるように塗工した後、100℃3分で乾燥して溶剤のトルエンを乾燥させ、両面粘着シートを得た。得られた粘着シートの上に軽剥離側の剥離シート(王子エフテックス社製、RL−07(L))にてラミネートすることにより剥離シート付き粘着シートを得た。
【0055】
(実施例2)
粘着シート用粘着剤の製造工程において、スチレン系粘着付与剤の添加量を30質量部、出光社製のパラフィン系オイルの添加量を25質量部に変更した以外は実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを得た。
【0056】
(実施例3)
スチレン系ブロック共重合体として、スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンのトリブロック共重合体(クラレ社製、セプトン8007L)を使用した以外は実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを得た。スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて換算したところ、100000であった。
【0057】
(実施例4)
スチレン系ブロック共重合体として、スチレン−(水添ビニル/イソプレン)−スチレンのトリブロック共重合体(クラレ社製、ハイプラー7311)を使用した以外は実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを得た。スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて換算したところ、160000であった。
【0058】
(比較例1)
両面粘着シートとして、NA084(新タック化成社製、OCA/アクリル系)を用いた以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを得た。
【0059】
(比較例2)
両面粘着シートとして、SA114(新タック化成社製、OCA/アクリル系)を用いた以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを得た。
【0060】
(比較例3)
粘着シート用粘着剤の製造工程において、スチレン系粘着付与剤の添加量を100質量部、パラフィン系オイルの添加量を100質量部に変更した以外は実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを得た。
【0061】
(評価)
(破断点伸度及び破断点応力の測定方法)
直径5mm、長さ70mmの棒状に丸めた粘着シートを引張試験機に装着し、チャック間距離50mmにて引張速度1000mm/minで引っ張ることにより、破断点伸度及び破断点応力を測定した。
【0062】
(対アクリル系粘着面粘着力)
実施例又は比較例の両面粘着シートの軽剥離側の剥離シートを剥がして、100μのPETフィルム(東洋紡社製:コスモシャインA4300)と貼合し、粘着フィルムシートを作成した後、残った重剥離側の剥離シートを剥がして粘着フィルムシートの粘着力を測定した。その際、粘着力測定用の被着体として、CPETT75HNA/DP/T7(新タック化成社製)の離型フィルムを剥がした粘着面を被着体として使用した以外はJIS Z 0237に準じて粘着力を測定した。
【0063】
(粘着剤除去性能の評価)
基材なしの両面テープ(以降OCA/新タック化成社製 SA032)の軽剥離力側の離型フィルムを剥がしてガラスに貼着しオートクレーブ処理(0.5MPa、40℃、30分)を実施した。重剥離力側の離型フィルムを剥がし、露出した粘着面に実施例及び比較例の両面粘着シートを貼り付けた。その後、両面テープと両面粘着シートの積層体をガラスから剥離した。
○:積層体がガラスから簡単にかつ奇麗に剥がれて、ガラスに両面テープ(OCA)や粘着シート由来の粘着物が全く残らない。
△:積層体がガラスから剥がれるが、途中で粘着シートが切れて剥がしにくい。
×:すぐに両面粘着シートが切れる、又は両面粘着シートと両面テープ(OCA)の界面で剥がれが生じて、ガラスから積層体または両面テープ(OCA)が剥がれない。
【0064】
(リワーク性の評価)
実施例および比較例の両面粘着シートを5cm×5cmサイズとなるように切り取り、軽剥離側の剥離フィルムを剥がしてソーダーガラスに貼合した。その後オートクレーブにより0.5MPa、40℃の条件で30分処理し、重剥離側の剥離フィルムを除去した。ついで両面粘着シートを手剥がしによりリワーク(ガラスから剥がす)した。その時の両面粘着シートのリワーク性を以下の基準で評価した。
○:ガラスから両面粘着シートが簡単にかつ奇麗に剥がれて、粘着物が全く残らない。
△:ガラスから両面粘着シートが剥がれるが、途中で粘着シートが切れて剥がしにくい。
×:すぐに両面粘着シートが切れて、ガラスから両面粘着シートが剥がれない。
【0065】
【表1】
【0066】
比較例に比べて実施例1では、アクリル系粘着面に対する粘着力が高く、優れた粘着剤除去性能を有していることがわかる。また、実施例の粘着シートはリワーク性にも優れている。