特許第6417895号(P6417895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6417895-エレベータ装置 図000002
  • 特許6417895-エレベータ装置 図000003
  • 特許6417895-エレベータ装置 図000004
  • 特許6417895-エレベータ装置 図000005
  • 特許6417895-エレベータ装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6417895
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
   B66B3/02 Q
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-238884(P2014-238884)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-98113(P2016-98113A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/114529(WO,A1)
【文献】 特開2012−066881(JP,A)
【文献】 特開2014−177313(JP,A)
【文献】 特開2012−136322(JP,A)
【文献】 特開2013−230936(JP,A)
【文献】 特開2012−126486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路の上端部又は下端部の少なくとも一方において、エレベータのかごを強制的に減速させる装置に前記かごの位置信号を出力する装置であって、前記かごに設置されたセンサと、前記センサと対向する前記昇降路の所定位置に設置した複数の遮蔽板とを備えたものにおいて、
前記センサは前記かごに一つ設置され、
前記遮蔽板は空隙部と遮蔽部とが、昇降路の上下方向に交互に配置された構成であって、
空隙部の数が異なる複数種類あり、空隙部の数の少ない遮蔽板が昇降路の中央側に、空隙部の数の多い遮蔽板が昇降路の端部側に来るように配置されていることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記センサは前記遮蔽部の上下端を検出し、これをカウントすることにより、前記かごの位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記空隙部の数は0以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
昇降路の上端部又は下端部の少なくとも一方において、エレベータのかごを強制的に減速させる装置に前記かごの位置信号を出力する装置であって、前記かごに設置されたセンサと、前記センサと対向する前記昇降路の所定位置に設置した複数の遮蔽板とを備えたものにおいて、
前記遮蔽板は空隙部と遮蔽部とが、昇降路の上下方向に交互に配置された構成であって、空隙部の数が異なる複数種類あり、空隙部の数の少ない遮蔽板が昇降路の中央側に、空隙部の数の多い遮蔽板が昇降路の端部側に来るように配置され、
前記かごが前記遮蔽板を通過した時間を計測する手段を有し、
前記遮蔽板の長さと前記通過時間とにより、前記かごの速度を計測すること
を特徴とするエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降路内を走行するエレベータのかごの位置を検出する装置に係り、特に昇降路上下端部におけるかごの位置を検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇降路内を走行するエレベータのかごの位置を検出する手段として、かごに複数組の投光器と受光器を設けるとともに、昇降路に前記投光器と受光器の間を通過可能な遮蔽板を配置した構成のものがある。そして、前記遮蔽板が前記投光器と受光器の間の光軸を遮断したときの出力信号に基づいて、かごの位置を検出している。
【0003】
この装置の一例を図 により説明する。図4はかご位置検出装置の全体構成を示す概略図、図5は複数組の投光器と受光器を有する光電センサを示す図である。
図において、100はかご101が昇降する昇降路、102はかご101の上部に設置された光電センサであり、投光器111,121,131と、各投光器111,121,131から照射される光軸112,122,132を受光する受光器113,123,133を備えている。
【0004】
また昇降路100内の光電センサ102と対向する所定の位置には、複数の切り欠きを有する遮蔽板141〜146が配置されている。これらの遮蔽板のうち、141〜143は昇降路100の上端部側に、144〜146は昇降路100の下端部側に配置されており、それぞれ異なる形状になっている。更に、昇降路100の中央に近い遮蔽板141と144は互いに上下方向に反転させた形状であり、同様に、遮蔽板142と145、143と146も互いに上下方向に反転させた形状になっている。
【0005】
この従来装置の動作を説明すると、かご101が図4の位置から上昇すると、遮蔽板141の中央部が光電センサ102内に入り、光軸122が遮断される。次に遮蔽板141の左方が光電センサ102内に入り、光軸112が遮断される。
更に、遮蔽板141の右方が光電センサ102内に入り、光軸132が遮断される。
【0006】
更にかご101が上昇すると、遮蔽板141の中央部が光電センサ102から抜け、光軸122は受光器123を照射する。次に遮蔽板141の左方が光電センサ102から抜け、光軸112は受光器113を照射する。更に、遮蔽板141の右方が光電センサ102から抜け、光軸132は受光器133をを照射し、元の状態に戻る。この各光軸112,122,132の遮断及び照射の順は、遮蔽板141〜143によって異なる。従って、各光軸112,122,132の遮断及び照射の順を予め記憶させておき、かご101の走行時の遮断及び照射順と比較すれば、上昇時かご101が遮蔽板141〜143のいずれの位置にあるかを知ることができる。
【0007】
また、かご101の下降時における遮蔽板144〜146の場合も同様である。この場合、遮蔽板144〜146は、141〜143と対称であるので、各光軸112,122,132の遮断及び照射の順は、かご101の上昇時と同じになる。
このように、各光軸112,122,132の遮断及び照射順を検出することにより、かご101の位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4485960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の従来技術は、かごの位置を検出するために、光電センサとして、3組の投光器及び受光器を使用しており、遮蔽板は横方向に長くなっている。そのため装置構成が大型化するという問題がある。
本発明は、上記の課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、昇降路の上端部又は下端部の少なくとも一方において、エレベータのかごを強制的に減速させる装置に前記かごの位置信号を出力する装置であって、前記かごに設置されたセンサと、前記センサと対向する前記昇降路の所定位置に設置した複数の遮蔽板とを備えたものにおいて、前記センサは前記かごに一つ設置され、前記遮蔽板は空隙部と遮蔽部とが、昇降路の上下方向に交互に配置された構成であって、空隙部の数が異なる複数種類あり、空隙部の数の少ない遮蔽板が昇降路の中央側に、空隙部の数の多い遮蔽板が昇降路の端部側に来るように配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、前記センサは前記遮蔽部の上下端を検出し、これをカウントすることにより、前記かごの位置を検出することを特徴とするものである。更に本発明は、前記空隙部の数を0以上としたものである。
更にまた本発明は、昇降路の上端部又は下端部の少なくとも一方において、エレベータのかごを強制的に減速させる装置に前記かごの位置信号を出力する装置であって、前記かごに設置されたセンサと、前記センサと対向する前記昇降路の所定位置に設置した複数の遮蔽板とを備えたものにおいて、前記遮蔽板は空隙部と遮蔽部とが、昇降路の上下方向に交互に配置された構成であって、空隙部の数が異なる複数種類あり、空隙部の数の少ない遮蔽板が昇降路の中央側に、空隙部の数の多い遮蔽板が昇降路の端部側に来るように配置され、前記かごが前記遮蔽板を通過した時間を計測する手段を有し、前記遮蔽板の長さと前記通過時間とにより、前記かごの速度を計測することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも横幅の狭い遮蔽板を使用して、かご位置検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態によるかご位置検出装置の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態による遮蔽板の詳細図である。
図3】本発明の実施の形態による動作説明図である。
図4】従来のかご位置検出装置の全体構成を示す概略図である。
図5】従来の複数組の投光器と受光器を有する光電センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1はかご位置検出装置の全体構成を示す概略図、図2は遮蔽板の詳細図、図3は動作説明図である。
【0015】
図において、1はかご2が昇降する昇降路、3はかご2の上部に設置された光電センサであり、一組の投光器と受光器を備えている。11〜14は光電センサ3と対向するように昇降路1の上端部側及び下端部側に配置された遮蔽板である。そして、遮蔽板11の上端はかご2の位置を検出する位置検出点1となっており、同様に遮蔽板12の上端は位置検出点2となっている。一方、昇降路1の下端部側は、遮蔽板13の下端が位置検出点3、遮蔽板14の下端が位置検出点4となっている。
【0016】
図2に示すように、遮蔽板には空隙部Gが空けられ、その上下は遮蔽板本体である遮蔽部Sとなっている。遮蔽部Sは光電センサ3の光軸を遮断し、空隙部Gは光電センサ3の光軸が通過可能であり、両者は上下方向に交互に並んでおり、遮蔽部Sと空隙部Gの長さLは同一になっている。そして、空隙部Gが1個の遮蔽板11,13は昇降路1の中央側に配置され、空隙部Gが2個の遮蔽板12,14は昇降路1の端部側に配置されている。
【0017】
光電センサ3が遮蔽部Sの上端又は下端(エッジ)を検出するとパルス信号を発生し、このパルス数をカウントして、所定数(閾値)になると、かご位置を検出するようになっている。この実施の形態では、カウントされたエッジ数が4のときを閾値1、同じくエッジ数が6のときを閾値2とする。更にパルス信号が発生しないOFF状態が一定時間(例えば、かご2が長さLの10倍移動した時間)継続すると、かご2は遮蔽板から離れた位置にあると認識して、カウントしたパルス数をリセットする。
【0018】
次に本実施の形態の動作について説明する。
かご2が図1の位置から上昇すると、光電センサ3は遮蔽板11の下端のエッジを検出する(図3a点)。更にかご2が上昇すると、遮蔽板11のエッジを次々に検出し、b点では4つのエッジを検出して閾値1に達する。この時点で、かご2は遮蔽板11の上端、つまり位置検出点1にあると認識する。
更にかご2が上昇を続け、b点から一定時間経過してc点に達すると、かご2は遮蔽板11から離れた位置にあると判断して、パルス数のカウントをリセットする。
【0019】
次にかご2が上昇を続けると、光電センサ3が遮蔽板12の下端のエッジを検出する(図3d点)。更にかご2が上昇すると、遮蔽板12のエッジを次々に検出し、e点では4つのエッジを検出して閾値1に達し、かご2は遮蔽板11の上端、つまり位置検出点1にあると認識する。更にかご2が上昇を続けて遮蔽板12のエッジを検出し続け、f点では6つのエッジを検出して閾値2に達する。この時点で、かご2は遮蔽板12の上端、つまり位置検出点2にあると認識する。
更にかご2が上昇を続け、f点から一定時間経過してg点に達すると、かご2は遮蔽板12から離れた位置にあると判断して、パルス数のカウントをリセットする。
【0020】
このように、本実施の形態によれば、光電センサ3が遮蔽板11の上端を検出(図3b点)すると、かご2が位置検出点1にあると認識する。また、光電センサ3が遮蔽板12で4つのエッジを検出(e点)すると、かご2が位置検出点1にあると認識するが、かご2が上昇して光電センサ3が6つのエッジを検出(f点)すると、かご2が位置検出点2にあると認識する。
また、下降時も同様の動作となる。
【0021】
ところで、昇降路1の上下端部でかご2を強制的に減速させる安全装置の場合、かご2の位置が昇降路1の端部に近いほどかご2の速度が遅くなるように制御する必要がある。
例えば、図1では、位置検出点1,3におけるかご2の速度をV1以下、位置検出点2,4におけるかご2の速度をV2以下に設定する場合、V1>V2であり、かご2が昇降路1の上下端部の安全装置、例えばオイルバッファに衝突する場合でも、衝突速度が許容速度以下になるようにV1、V2を設定する。
【0022】
本実施の形態の場合では、遮蔽板11の位置検出点1(図3b点)におけるかご2の速度がV1以上であればかご2の速度をV1以下に減速させ、かご2の速度がV1以下であればそのままの走行を許容するように制御される。
【0023】
また、遮蔽板12の位置検出点1(図3e点)におけるかご2の速度がV1以上であればかご2の速度をV1以下に減速させる。しかしながら、かご2は遮蔽板11を通過した時点でその速度はV1以下に制御されているため、e点で速度がV1以上になることはないので、かご2はそのままe点を通過する。更に位置検出点2(図3f点)におけるかご2の速度がV2以上であればかご2の速度をV2以下に減速させ、V2以下であればそのままの走行を許容する。従って、かご2が遮蔽板12の通過中に位置検出点1を認識しても、かご2の動作に影響することはない。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、遮蔽板に1又は2の空隙部Gを上下方向に配置するというシンプルな構成で、昇降路1の上下端部でかご2を強制的に減速させる安全装置に使用するかご位置検出装置として十分な機能を実現することができる。また、図4,5の従来技術に比べて、遮蔽板の幅を狭くできるとともに、光電センサも一組の投光器及び受光器を有するのみでよい。
【0025】
尚、本実施の形態では、昇降路1内の遮蔽板の配置は上下対称になっているため、かごの運転方向は別の機器によって検出することになる。もし、本装置を使用してかご2の運転方向も検出する必要があるなら、2重系にすればよい。
【0026】
即ち、前記遮蔽板11〜14群と同じ遮蔽板群(第2遮蔽板群)を少しずらし、例えば第2遮蔽板群を遮蔽板11〜14群よりも、L/2だけ上方に配置するとともに、第2遮蔽板群用の光電センサ(第2光電センサ)をかご2に設置する。
そうすると、かご2の上昇時には遮蔽板11〜14群の方が先に光電センサ3によって検出され、かご2の下降時には第2遮蔽板群の方が先に第2光電センサによって検出されることになる。逆に言えば、光電センサ3が遮蔽板11〜14群を先に検出したら、かご2は上昇中であり、第2光電センサが第2遮蔽板群を先に検出したら、かご2は下降中であることがわかる。
【0027】
尚、本実施の形態では、昇降路1の上下それぞれに位置検出点が2箇所あるため、遮蔽板は空隙部Gを1又は2個備えた2種類としているが、位置検出点は2箇所に限ることはない。例えば、位置検出点が3箇所なら、空隙部Gを1〜3個備えた3種類の遮蔽板を、位置検出点がN箇所なら、空隙部Gを1〜N個備えたN種類の遮蔽板を使用する。これらの空隙部Gは、上下方向に1列に並べ、空隙部Gと遮蔽部Sの高さはLとする。
更に空隙部Gは0個とすることもできる。従って、位置検出点がN箇所なら、空隙部Gを0〜N−1個備えたN種類の遮蔽板を使用することもできる。
【0028】
これらの遮蔽板は、図1と同様に、昇降路1の中央に近い位置の遮蔽板は空隙部Gが最少であり、昇降路1の端部に近づくほど空隙部Gの多い遮蔽板を使用する。
また、本実施の形態では、昇降路1の上下両端部に遮蔽板を配置しているが、かご2の落下のみ又は過上昇のみを検出できればよいなら、昇降路1の下端部側又は上端部側のみに配置することもできる。
更にパルス数のカウントをリセットする一定時間も、「かご2が長さLの10倍移動した時間」に限ることはない。
【0029】
また、空隙部Gと遮蔽部Sの高さLは、エッジが確実に検出できれば同一でなくてもよい。
更にまた、光電センサ3は図5のような、投光器と受光器が分離した透過型センサのほか、遮蔽板として反射板を使用し、光電センサとして投光器と受光器が一体になった反射型センサを使用して、投光器からの光軸を反射板(遮光板)に反射させて受光器で受光させてもよい。
【0030】
次に、本発明の他の実施の形態を図1図3により説明する。この実施の形態は、かご位置検出用の遮蔽板を使って、かごの速度も検出するものである。
各遮蔽板の長さは既知であるため、かご2が遮蔽板を通過した時間を測定し、遮蔽板の長さを通過時間で割ったものである。ここで、かご2は遮蔽板を等速で通過したとみなしている。従って、
かご速度=遮蔽板の長さ/遮蔽板の通過時間
となる。
例えば、図3のa点からb点までの時間を測定し、遮蔽板11の長さ3Lをこの測定した時間で割れば、遮蔽板11におけるかご速度を検出することができる。
【0031】
ここで、
遮蔽板の遮蔽部S及び空隙部Gの長さLを30mm、
かご2の通過速度を1000m/min、
パルス数のカウント演算のサンプリング周波数を2000Hz(=0.5msec)
とすると、位置検出点1での遮蔽板の長さは3L(90mm)、位置検出点2での遮蔽板の長さは5L(150mm)となる。
【0032】
かご2が長さLを通過するのに要する時間tLは、
tL=(30/1000)/(1000/60)=1.8msec
この場合、tLはサンプリング周期(0.5msec)より大きい必要がある。
【0033】
従って、かご2が位置検出点1の遮蔽板を通過するのに要する時間t1は、
t1=(3×30/1000)/(1000/60)=5.4msec
サンプリング周期が0.5msecのため、5msec又は5.5msecと認識する。
【0034】
次に、かご2が位置検出点1を通過する場合の速度誤差について検証する。
上記で5msecと認識した場合のかご2の検出速度v5は、
v5=((3×30/1000)/(5/1000))×60=1080m/min
5.5msecと認識した場合のかご2の検出速度v5.5は、
v5.5=((3×30/1000)/(5.5/1000))×60=982m/min
このようにサンプリング周波数を2000Hz(=0.5msec)に設定すると、±98m/min程度の誤差になる。
【0035】
この誤差を小さくするには、サンプリング周波数を高くするか、遮蔽板を長くすれば良い。例えばサンプリング周波数を1MHz(=1μsec)とすれば、
かご2が位置検出点1の遮蔽板を通過するのに要する時間t1は、
t1=(3×30/1000)/(1000/60)=5.4msec
サンプリング周期が1μsecのため、5.4msec又は5.401msecと認識する。
上記で5.4msecと認識した場合のかご2の検出速度は、上記t1と同じ、1000 m/minであり、5.401msecと認識した場合のかご2の検出速度v5.401は、
v5.401=((3×30/1000)/(5.401/1000))×60=999.8m/min
となって、±0.2m/min程度の誤差に収まる。
【0036】
次に、かご2が位置検出点2の遮蔽板を通過するのに要する時間t2は、
t2=(5×30/1000)/(1000/60)=9msec
サンプリング周波数が2000Hzの場合、サンプリング周期が0.5msecのため、9msec又は9.5msecと認識する。
【0037】
かご2が位置検出点2を通過する場合の速度誤差は、
上記で9msecと認識した場合のかご2の検出速度v9は、
v9=((5×30/1000)/(9/1000))×60=1000m/min
9.5msecと認識した場合のかご2の検出速度v9.5は、
v9.5=((5×30/1000)/(9.5/1000))×60=947m/min
このようにサンプリング周波数を2000Hz(=0.5msec)に設定すると、±53m/min程度の誤差になる。
【0038】
前記と同様に、サンプリング周波数を1MHz(=1μsec)とすれば、かご2の検出速度vM1は、
vM1=((5×30/1000)/(9.001/1000))×60=999.9m/min
となって、±0.1m/min程度の誤差に収まる。
上記のように、サンプリング周波数を上げると、かご2の速度をより正確に測定することができる。
【0039】
パルス数のカウントをリセットする時間(図3のb点〜c点で示される一定時間)は、かご2が長さLを通過するのに要する時間の10倍とすると、かご2が長さLを通過するのに要する時間が、1.8msecであったため、18msecとなる。またLの10倍であるため、300mmの距離になるため、各遮蔽板は300mm以上の間隔をおいて配置することになる。
【0040】
既に説明したように、本実施の形態は、昇降路1の上下端部でかご2を強制的に減速させる安全装置であり、位置検出点1におけるかご2の速度をV1以下、位置検出点2におけるかご2の速度をV2以下に設定する場合、V1>V2である。そのためV1を1000m/min、V2を100m/minとすると、かご2が速度V2で長さL(30mm)を通過するのに要する時間tL2は、
tL2=(30/1000)/(100/60)=18msec
になる。
【0041】
そうすると、前記パルス数のカウントをリセットする時間と同じになってしまうため、V2が100m/min以下だと正確な測定ができなくなる。しかし、通常V1はもっと小さく、またV1とV2の速度差ももっと小さい場合が多いため実用上は問題にならないことが多い。
【0042】
しかし、この問題を解決する必要がある場合には、一定時間を長くすればよい。上記実施の形態では、各遮蔽板は300mm以上の間隔であるが、更に長い間隔となる上、更に遮蔽板の数が増えると昇降路内に遮蔽板が配置できない可能性もでてくる。そのときには、コストアップになることもあるが、サンプリング周波数を上げ、長さLを短縮すればよい。
【0043】
このかごの速度も検出する実施の形態においても、遮蔽板の種類の数や配置、昇降路の上下の一方にのみ遮蔽板を配置したり、光電センサの種類などは前記のかご位置検出の実施の形態の場合と同様に適用できる。空隙部Gと遮蔽部Sの高さ(長さL)も、予めそれぞれの長さがわかっておれば、同一の長さでなくてもよい。
【0044】
以上のように、各実施の形態は、遮蔽板の遮蔽部のエッジを検出しているため、従来のように、遮蔽板の横幅を広くする必要がなく、装置構成の小型化を実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 昇降路
2 かご
3 光電センサ
11,12,13,14 遮蔽板
G 空隙部
S 遮蔽部
図1
図2
図3
図4
図5