(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
不飽和エポキシエステル樹脂は、木工関係、金属、プラスチック用の塗料原料として、また、FRP用樹脂として、印刷インキ用樹脂として、また、絶縁塗料用樹脂原料として、電子部品の封止剤として広く使用されている。
【0003】
一般に、不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸とを必要に応じて不飽和モノカルボン酸の一部又は大部分を飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和無水多価カルボン酸、末端カルボキシル基を有する不飽和アルキッドの中から選ばれた1種又は2種以上で置換して反応触媒及び必要に応じて重合禁止剤、溶媒あるいは重合性単量体を共存させて加熱反応させることにより製造されている。
【0004】
通常使用されているエポキシ化合物はビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって製造される、いわゆる、エピ−ビス型エポキシ樹脂、ノボラックフェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるノボラック型エポキシ樹脂等、分子骨格にベンゼン環を有するものである。これらのエポキシ樹脂を用いて得られる不飽和エポキシエステル樹脂の硬化物は、ベンゼン骨格のため耐候性が悪く、また、透明性に欠けるといった欠点を有していた。
【0005】
特許文献1には、耐熱性、耐候性、硬度に優れた特性を有する硬化物を与える不飽和エポキシエステル樹脂の製造方法について記載されている。この方法によれば、エポキシ基と不飽和エステル基を両方有する不飽和エステル基含有エポキシ樹脂を合成することができる。不飽和エステル基含有エポキシ樹脂は、エポキシの熱架橋性と不飽和エステル基の光/熱硬化性の両方を有するため、幅広い用途で使用できる。しかしながら、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸とを4級アンモニウム塩等の反応触媒の存在下で加熱反応させるため、不飽和エポキシエステル樹脂が着色してしまう問題があった。さらに、エポキシ化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させる方法では、未反応の不飽和モノカルボン酸が不飽和エポキシエステル樹脂中に残存することがあるため、保存安定性の点で課題があった。
【0006】
すなわち、一分子中にエポキシ基と不飽和エステル基を任意の割合で有し、透明性および保存安定性に優れた不飽和エステル基含有エポキシ樹脂は未だ見出されていないのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における不飽和エステル基含有エポキシ樹脂について以下に説明する。
【0017】
本発明における不飽和エステル基含有エポキシ樹脂は、分子中に、下記式(A)で表されるエポキシユニットと、下記一般式(1)〜(3)で表される(メタ)アクリルユニットのうち少なくとも1つとを含有する、不飽和エステル基含有エポキシ樹脂であって、
エポキシユニットが10〜90重量%であり、
(メタ)アクリルユニットが90〜10重量%である。
【0019】
一般式(1)
【化9】
(式中、R
1は水素原子、又は、メチル基を表す。)
【0020】
一般式(2)
【化10】
(式中、R
2は水素原子、又は、メチル基を表す。)
【0021】
一般式(3)
【化11】
(式中、R
3は、水素原子、又は、メチル基を表す。
nは1〜6までの整数を表す。)
【0022】
本発明の不飽和エステル基含有エポキシ樹脂の製造方法について詳述する。
【0023】
本発明における不飽和エステル基含有エポキシ樹脂は、活性水素を有する有機化合物を開始剤にし、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドと、不飽和エステル基含有エポキシ化合物を開環重合させることによって、ビニル基と不飽和エステル基を側鎖に有するポリエーテル樹脂を得る第一工程と、得られたポリエーテル樹脂のビニル基を、酸化剤でエポキシ化する第二工程によって得られる。
【0025】
本発明において開始剤となる活性水素を有する有機化合物としては、アルコール類、フェノール類、カルボン酸類、アミン類、チオール類等が挙げられる。生成物の着色抑制の点で、アルコール類、カルボン酸類が好ましく、それらの中でもベンゼン環を含まない構造のものが最も好ましい。
【0026】
アルコール類としては、1価のアルコールでも、多価のアルコールでも良い。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコールのような芳香族アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール等がある。
【0027】
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、カテコール、ピロガロール、ハイロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールS、フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等がある。
【0028】
カルボン酸類としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、動植物油の脂肪酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、ドデカン2酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ポリアクリル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等がある。また、乳酸、クエン酸、オキシカプロン酸等、水酸基とカルボン酸を共に有する化合物も挙げられる。
【0029】
アミン類としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン等がある。
【0030】
チオール類としてはメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、フェニルメルカプタン等のメルカプト類、メルカプトプロピオン酸あるいはメルカプトプロピオン酸の多価アルコールエステル、例えばエチレングリコールジメルカプトプロピオン酸エステル、トリメチロールプロパントリメルカプトプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールペンタメルカプトプロピオン酸エステル等が挙げられる。
【0031】
さらにその他、活性水素を有する化合物としてはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル部分加水分解物、澱粉、セルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシエチルセルロース、アクリルポリオール樹脂、スチレンアリルアルコール共重合樹脂、スチレン−マレイン酸共重合物、アルキッド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリエステルカルボン酸樹脂、ポリカプロラクトンポリオール樹脂、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレングリコール等がある。
【0032】
また、活性水素を有する化合物は、その骨格中に不飽和二重結合を有していても良く、具体例としては、アリルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、3−シクロヘキサンメタノール、テトラヒドロフタル酸等がある。
【0033】
4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドは、下記式(B)で表される。ブタジエンの二量化反応によって得られるビニルシクロヘキセンを過酢酸によって部分エポキシ化することによって得られる。
【0035】
本発明における不飽和エステル基含有エポキシ化合物は、分子中に不飽和エステル基とエポキシ基を同時に有するものであればどのようなものをでも用いることができ、それらは2種以上を混合しても良い。市販されている不飽和エステル基含有エポキシ化合物としては、4HBAGE(4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル:日本化成製)、ライトエステルG(グリシジルメタクリレート:共栄社化学製)、サイクロマーM−100(3,4−エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート)等が挙げられる。
【0036】
活性水素を有する有機化合物存在下、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドと、不飽和エステル基含有エポキシ化合物を開環重合させる際、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドと不飽和エステル基含有エポキシ化合物の比率を変更することによって、エポキシユニットと(メタ)アクリルユニットの比率をコントロールすることができる。熱硬化性と光硬化性の両方の硬化性を活かすためには、4ービニルシクロヘキセンオキシドと不飽和エステル基含有エポキシ化合物はそれぞれ10〜90重量%の範囲で合計が100重量%となるように使用することが好ましい。
【0037】
また、4ービニルシクロヘキセンオキシドと不飽和エステル基含有エポキシ化合物の合計量は、活性水素を有する有機化合物の活性水素に対して1〜20倍モルが好ましい。20倍モル以上では、融点の高い樹脂となり、取り扱いにくく実際上は使用できるものとはならない。
【0038】
前記開環重合の際には触媒を使用することが好ましい。
【0039】
開環重合反応時に用いられる触媒としては、BF
3、ZnCl
2、AlCl
3、SnCl
4等のルイス酸又はそのコンプレックス類が好ましい。触媒の量は、出発原料に対して0.1〜5%、好ましくは0.1〜3%の範囲で使用することができる。
【0040】
さらに、必要に応じて重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、4−メトキシフェノール等である。重合禁止剤は、出発原料に対して0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0041】
反応温度は−20℃〜150℃、着色を防ぐ観点で、好ましくは0℃〜100℃である。
【0042】
開環重合反応は溶媒を用いて行なうこともできるが、活性水素を有しているものは使用できない。すなわち、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルのようなエステル類、その他エーテル類等を使用することができる。
【0043】
第二工程では、第一工程で合成された、ビニル基と不飽和エステル基を側鎖に有するポリエーテル樹脂に酸化剤を作用させて、ビニル基をエポキシ化する。
【0044】
酸化剤としては、たとえば、酸素を含むガス、過酸化水素、過酸化ナトリウム等の無機過酸化物、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸、p−ニトロ過安息香酸、モノペルオキシフタル酸マグネシウム、ペルオキシマレイン酸、ペルオキシトリフルオロ酢酸、ペルオキシフタル酸、ペルオキシラウリン酸、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、メンチルヒドロペルオキシド、1−メチルヘキサンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0045】
酸化反応において、必要に応じて触媒を使用することができる。たとえば、タングステン、モリブデン、バナジウム、チタン、レニウム、ルテニウムなどが含まれる金属化合物、アセトアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレロアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、などのアルデヒド類、α−アミノメチルホスホン酸、α−アミノエチルホスホン酸などの、α−アミノホスホン酸類、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、臭化トリオクチルエチルアンモニウム、ヨウ化ジラウリルジメチルアンモニム、リン酸水素ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、などの4級オニウム塩などが挙げられる。
【0046】
酸化反応に用いる溶媒は上記酸化剤と反応しないものを使用できる。たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0047】
酸化反応の反応温度は使用する酸化剤、触媒、溶媒によって異なるが、0〜70℃が好ましく、より好ましくは0〜50℃である。
【0048】
本発明の硬化性材料について説明する。
【0049】
本発明の硬化性材料は重合開始剤を含む。本発明の硬化性材料を塗布後、光などの活性エネルギー線および/又は熱によってラジカル種を発生させることで、ラジカル重合が起こり硬化する。
【0050】
光ラジカル重合開始剤として、公知の化合物から任意に選択した化合物を使用できる。具体例として、例えば、以下が挙げられる。2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−チオキサントン、カンファーキノン、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等。また、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合開始剤を使用することもできる。光ラジカル重合開始剤の使用量は、硬化性材料に対して1〜10重量%が好ましい。
【0051】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物類が挙げられる。使用できる有機過酸化物類としては、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等を使用することができる。上記有機過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキサン、2,4 −ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシジーイソプロビルベンゼン、1 ,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキシド等が挙げられる。有機過酸化物類の使用量は、硬化性材料に対して0.5 〜4重量% が好ましい。
【0052】
上記の光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤はそれぞれ単独で使用しても良いし、両者を任意の割合で混合して使用することができる。
【0053】
本発明の硬化性材料は、(メタ)アクリレート化合物を含んでも良い。(メタ)アクリレート化合物としては、公知の種々の不飽和化合物が使用できる。具体例としては、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、オクチルノデシル(メタ)アクリレート、エトキシフェニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6− ヘキサンジオールジ(メタ)アクリート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、各種P E G ジ(メタ) アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA エトキシレートジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、(メタ)アクリレート化合物には重合性オリゴマーである各種のエポキシアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステルやポリエステル(メタ)アクリレート及びポリエーテル(メタ)アクリレートも含まれる。
【0054】
上記の(メタ)アクリレート化合物は、必要に応じて1種又は2 種以上を任意の割合で混合して使用することができる。
【0055】
本発明の硬化性材料を賦形する方法としては、型を用いて成形する方法、基材上に塗布する方法などが挙げられる。型を用いて成形する方法としては、成形型内に本発明の組成物を注入した後、上述の方法により硬化し、脱型することにより、本発明の組成物からなる成形体を得ることができる。型を用いて成形すると、型の表面形状を転写させた成形体を得ることもできる。
【0056】
本発明の硬化性材料の用途としては、反射防止や保護を目的としたコーティング剤、接着剤、封止材料、あるいは、部品、シート、積層板、複合材等の成形体の原料などが挙げられる。また、本発明の組成物が硬化することにより得られる硬化物の用途としては、レンズ、プリズム、導波路、基板などの光学部品、積層材、複合材、電子部品の材料としての使用が例示される。特に、得られた硬化物の透明性、高屈折性などの特性を生かし、レンズ、導波路などの光学部品、およびそれらの接着剤、封止剤などに用いることもできる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を意味する。
【0058】
実施例1
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン2.6部、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイド28.5部を仕込み70℃で加熱攪拌した。トリメチロールプロパン溶解後、室温まで放冷し、グリシジルメタクリレート8.14部、4−メトキシフェノール0.05部を仕込み攪拌した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.8部と酢酸エチル15.5部を混合し、1時間かけてゆっくり滴下して加えた。室温で2時間反応させ
1H−NMRで反応が完結しているのを確認した。同じ反応容器に、炭酸水素ナトリウム109.1部、アセトン241.8部、水220部を仕込み、室温で攪拌した。オキソン(ペルオキシ硫酸カリウム複塩)155.0部を4分割して2時間ごとに加えた。室温で一晩反応後、水を加えて酢酸エチルで抽出、水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥し、固形分19.6%の不飽和エステル基含有エポキシ樹脂の酢酸エチル溶液を158.8g得た。収率72.6%。
【0059】
実施例2
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン2.4部、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイド26.3部を仕込み70℃で加熱攪拌した。トリメチロールプロパン溶解後、室温まで放冷し、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル10.6部、4−メトキシフェノール0.04部を仕込み攪拌した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.7部と酢酸エチル14.5部を混合し、1時間かけてゆっくり滴下して加えた。室温で2時間反応させ
1H−NMRで反応が完結しているのを確認した。同じ反応容器に、炭酸水素ナトリウム101.1部、アセトン218.7部、水210部を仕込み、室温で攪拌した。オキソン(ペルオキシ硫酸カリウム複塩)143.5部を4分割して2時間ごとに加えた。室温で一晩反応後、水を加えて酢酸エチルで抽出、水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥し、固形分61.8%の不飽和エステル基含有エポキシ樹脂の酢酸エチル溶液を39.9g得た。収率93.7%。
【0060】
実施例3
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン2.4部、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイド26.4部を仕込み70℃で加熱攪拌した。トリメチロールプロパン溶解後、室温まで放冷し、3,4−エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート10.4部、4−メトキシフェノール0.04部を仕込み攪拌した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.7部と酢酸エチル15.5部を混合し、1時間かけてゆっくり滴下して加えた。室温で2時間反応させ
1H−NMRで反応が完結しているのを確認した。50℃に加熱後、過酢酸41.69部を4時間かけてゆっくり滴下して加えた。そのまま3時間加熱攪拌して反応を進行させ、
1H−NMRで反応が完結しているのを確認した。放冷後、亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出、次に炭酸水素ナトリウムを加えて酢酸エチルで抽出、最後に飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥し、固形分42.0%の不飽和エステル基含有エポキシ樹脂の酢酸エチル溶液を53.5g得た。収率53.1%。
【0061】
実施例4
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン2.2部、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイド18.1部を仕込み70℃で加熱攪拌した。トリメチロールプロパン溶解後、室温まで放冷し、3,4−エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート19.1部、4−メトキシフェノール0.04部を仕込み攪拌した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.7部と2−アセトキシ−1−メトキシプロパン15.5部を混合し、1時間かけてゆっくり滴下して加えた。室温で2時間反応させ
1H−NMRで反応が完結しているのを確認した。同じ反応容器に、炭酸水素ナトリウム101.1部、アセトン228.5部、水220部を仕込み、室温で攪拌した。オキソン(ペルオキシ硫酸カリウム複塩)143.7部を4分割して2時間ごとに加えた。室温で一晩反応後、水を加えて2−アセトキシ−1−メトキシプロパンで抽出、水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥し、固形分29.4%の不飽和エステル基含有エポキシ樹脂の2−アセトキシ−1−メトキシプロパン溶液を124.6g得た。収率80.3%。
【0062】
実施例5
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン2.2部、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイド3.1部を仕込み70℃で加熱攪拌した。トリメチロールプロパン溶解後、室温まで放冷し、3,4−エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート44.0部、4−メトキシフェノール0.04部を仕込み攪拌した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.7部と酢酸エチル15.5部を混合し、1時間かけてゆっくり滴下して加えた。室温で2時間反応させ
1H−NMRで反応が完結しているのを確認した。同じ反応容器に、炭酸水素ナトリウム101.1部、アセトン228.5部、水220部を仕込み、室温で攪拌した。オキソン(ペルオキシ硫酸カリウム複塩)143.7部を4分割して2時間ごとに加えた。室温で一晩反応後、水を加えて酢酸エチルで抽出、水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥し、固形分22.4%の不飽和エステル基含有エポキシ樹脂の酢酸エチル溶液を167.0g得た。収率75.3%。
【0063】
比較合成例1
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製のEHPE―3150)22.6部、4−メトキシフェノール0.02部、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド0.18部、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン80部を仕込み110℃で加熱攪拌した。アクリル酸2.2部と2−アセトキシ−1−メトキシプロパン20部を混合し、滴下ロートよりゆっくり滴下して加えた。110℃で4時間攪拌し反応を継続した。室温まで冷却後に水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥することで、固形分21.4%の不飽和エポキシエステル樹脂の2−アセトキシ−1−メトキシプロパン溶液を60.1g得た。収率51.9%。
【0064】
比較合成例2
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製のEHPE―3150)22.6部、4−メトキシフェノール0.02部、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド0.18部、酢酸エチル80部を仕込み110℃で加熱攪拌した。アクリル酸22.2部と酢酸エチル20部を混合し、滴下ロートよりゆっくり滴下して加えた。110℃で4時間攪拌し反応を継続した。室温まで冷却後に水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥することで、固形分18.4%の不飽和エポキシエステル樹脂の酢酸エチル溶液を63.7g得た。収率40.2%。
【0065】
実施例と比較合成例から得られた不飽和エステル基含有エポキシ樹脂の性状を表1に示す。
GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)はTOSOH HLC-8320GPC(TSKgel SUPERHZ 3000、2000、1000)を用いて測定した。
エポキシ当量は、JIS-K-7236(電位差滴定法)に準じて測定した。
酸価は、JIS-K-0072(電位差滴定法)に準じて測定した。
【0066】
表1
【表1】
【0067】
また、ユニット構造と実施例の対比表を表2に示す。
【0068】
表2
【表2】
【0069】
硬化性材料の配合例を表3に示す。
【0070】
表3
【表3】
表3における略号は以下の通りである。
NP−A:ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製)
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成製)
PE−3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学製)
Irg651:イルガキュア−651(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)
Irg369:イルガキュア−369(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)
【0071】
[実施例6、9、10]、[比較例1、2]
配合例1に示す硬化性材料を、ガラス板上に、ワイヤーバーコーターを用いて膜厚20〜25μmとなるように塗工し、樹脂組成物層を形成した。活性エネルギー線照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度300mW/cm
2、積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。
【0072】
[実施例7、8]
配合例1に示す硬化性材料を、ガラス板上に、ワイヤーバーコーターを用いて膜厚20〜25μmとなるように塗工し、樹脂組成物層を形成した。次に、150℃のオーブンで1時間加熱して硬化させた。
【0073】
硬化性材料および硬化物の特性は次の方法で評価した。
【0074】
≪保存安定性≫
調製した硬化性材料を室温で5日間保存した後の、硬化性材料の状態を目視で観察した。
○:変化無し
×:増粘あるいはゲル化
【0075】
≪外観≫
硬化物の透明性を目視で評価し、無色透明を○、濁りや着色が見られたものを×とした。
【0076】
評価結果を表4に示す。
【0077】
表4
【表4】
【0078】
比較例1、2の保存安定性が著しく悪い結果となった。これは、酸価を有するエポキシ樹脂を配合しているためと考えられる。
【0079】
比較例2の外観が著しく悪い結果となった。配合しているエポキシ樹脂自体の着色が強く影響していると考えられる。
【0080】
以上の結果から、本願発明の不飽和基含有エポキシ樹脂を含有する硬化性材料を用いることで、透明性と保存安定性を両立させることができた。