特許第6418543号(P6418543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6418543プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置用アンテナユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418543
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置用アンテナユニット
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20181029BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20181029BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20181029BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   H05H1/46 L
   C23C16/505
   H01L21/302 101C
   H01L21/205
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-64996(P2014-64996)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-187951(P2015-187951A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】303029317
【氏名又は名称】株式会社プラズマイオンアシスト
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 稔明
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/142016(WO,A1)
【文献】 特開2010−135727(JP,A)
【文献】 特開2000−003878(JP,A)
【文献】 特開平09−246240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
C23C 16/505
H01L 21/265
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する処理チャンバと、高周波電力が印加されて前記処理チャンバ内にプラズマを発生させるアンテナユニットとを具備するプラズマ処理装置であって、
前記アンテナユニットが、
前記高周波電力が給電される複数の給電端子を備えて複数の高周波電源が接続され、所定の長さを有する給電側電極と、
前記給電側電極に対向して設けられるとともに、接地点に接続される1又は複数の接地端子を備え、所定の長さを有する接地側電極と、
前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡された複数のアンテナ導体とを有し、
前記給電側電極と前記接地側電極とが互いに平行に設けられており、
前記各電極の長さ方向に沿って設けられた前記複数のアンテナ導体のうち、少なくとも両端のアンテナ導体を除く複数のアンテナ導体に均等な高周波電流が流れるように構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
被処理物を収容する処理チャンバと、高周波電力が印加されて前記処理チャンバ内にプラズマを発生させるアンテナユニットとを具備するプラズマ処理装置であって、
前記アンテナユニットが、
前記高周波電力が給電される複数の給電端子を備えて複数の高周波電源が接続され、所定の長さを有する給電側電極と、
前記給電側電極に対向して設けられるとともに、接地点に接続される1又は複数の接地端子を備え、所定の長さを有する接地側電極と、
前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡された複数のアンテナ導体とを有し、
前記給電側電極に設けられた前記給電端子が、互いに隣り合った前記接地端子の二等分線上に位置しており、
前記アンテナ導体が、前記給電端子から互いに隣り合った前記接地端子に均等な高周波電流が流れるように前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記アンテナユニットが、前記給電側電極及び前記接地側電極に対して前記アンテナ導体を直交させたラダー形状をなすものであり、
前記アンテナ導体が、前記給電側電極及び前記接地側電極を等分するように架け渡されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
プラズマ処理装置に用いられ、被処理物が収容される処理チャンバ内にプラズマを発生させるアンテナユニットあって、
高周波電力が給電される複数の給電端子を備えて複数の高周波電源が接続され、所定の長さを有する給電側電極と、
前記給電側電極に対向して設けられるとともに、接地点に接続される1又は複数の接地端子を備え、所定の長さを有する接地側電極と、
前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡された複数のアンテナ導体とを有し、
前記給電側電極と前記接地側電極とが互いに平行に設けられており、
前記各電極の長さ方向に沿って設けられた前記複数のアンテナ導体のうち、少なくとも両端のアンテナ導体を除く複数のアンテナ導体に均等な高周波電流が流れるように構成されていることを特徴とするアンテナユニット。
【請求項5】
プラズマ処理装置に用いられ、被処理物が収容される処理チャンバ内にプラズマを発生させるアンテナユニットあって、
高周波電力が給電される複数の給電端子を備えて複数の高周波電源が接続され、所定の長さを有する給電側電極と、
前記給電側電極に対向して設けられるとともに、接地点に接続される1又は複数の接地端子を備え、所定の長さを有する接地側電極と、
前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡された複数のアンテナ導体とを有し、
前記給電側電極に設けられた前記給電端子が、互いに隣り合った前記接地端子の二等分線上に位置しており、
前記アンテナ導体が、前記給電端子から互いに隣り合った前記接地端子に均等な高周波電流が流れるように前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡されていることを特徴とするアンテナユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて被処理物の表面に薄膜形成やエッチング等の処理を施すプラズマ処理装置及びそのプラズマ処理装置に用いられるアンテナユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ処理装置としては、特許文献1に示すように、高周波電力が印加されて真空容器内にプラズマを発生させるアンテナユニットを具備し、この真空容器内の被処理物に表面処理を施すものがある。
【0003】
より詳細にこのアンテナユニットは、高周波電力が印加される給電端子と、接地点に接続される接地端子と、給電端子及び接地端子を接続するアンテナ導体とを具備し、前記アンテナ導体を例えばU字形状に形成したものである。これにより、アンテナ導体における平行部分の間隔に反比例した電磁界強度が発生し、真空容器内に高密度なプラズマを発生させることができる。
【0004】
しかしながら、上述した構成では、アンテナ導体が平行部分を有するように形成されているので、アンテナ導体の長さが長くなり、高周波電流経路のインピーダンスが大きくなってしまう。これにより、アンテナ導体の両端での電位差が大きくなり、均一なプラズマ密度を得にくいのみならず、給電端子近傍で異常放電が発生するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−225296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであって、均一かつ高密度なプラズマを大面積にわたって発生させ、このプラズマを用いて被処理物に表面処理を施すことにより、被処理物に所望の特性を持たせることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、被処理物を収容する処理チャンバと、高周波電力が印加されて前記処理チャンバ内にプラズマを発生させるアンテナユニットとを具備するプラズマ処理装置であって、前記アンテナユニットが、前記高周波電力が給電される1又は複数の給電端子を備え、所定の長さを有する給電側電極と、前記給電側電極に対向して設けられるとともに、接地点に接続される1又は複数の接地端子を備え、所定の長さを有する接地側電極と、前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡された複数のアンテナ導体とを有することを特徴とするものである。
【0008】
このようなプラズマ処理装置であれば、給電側電極と接地側電極との間に複数のアンテナ導体が架け渡されているので、これらのアンテナ導体に高周波電流を流すことで高密度なプラズマを発生させることができる。そのうえ、各アンテナ導体の長さを短くして両端でのインピーダンス差を小さくすることで、上述した高密度プラズマを広い領域に均一に発生させることができる。これにより、均一かつ高密度なプラズマを用いて被処理物に表面処理を施すことが可能になり、ひいては、被処理物に所望の特性を持たせることができる。
【0009】
高密度なプラズマを広い領域で均一に発生させる具体的実施態様としては、前記給電側電極と前記接地側電極とが互いに平行に設けられており、前記各電極の長さ方向に沿って設けられた前記複数のアンテナ導体のうち、少なくとも両端のアンテナ導体を除く複数のアンテナ導体に均等な高周波電流が流れるように構成されているものが好ましい。
【0010】
前記給電側電極に設けられた前記給電端子が、互いに隣り合った前記接地端子の二等分線上に位置しており、前記アンテナ導体が、前記給電端子から互いに隣り合った前記接地端子に均等な高周波電流が流れるように前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡されているものが好ましい。
これならば、給電端子から互いに隣り合った接地端子までのインピーダンスを等しくすることができ、電極間に架け渡された複数のアンテナ導体に均等な電流を流すことができる。
【0011】
具体的な実施態様としては、前記給電側電極が、当該給電側電極の長さ方向中央に設けられた1つの給電端子を有し、前記接地側電極が、当該接地側電極の両端に設けられた2つの接地端子を有し、前記アンテナ導体が、前記1つの給電端子から前記2つの接地端子に均等な高周波電流が流れるように前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡されているものが挙げられる。
【0012】
前記アンテナユニットが、前記給電側電極及び前記接地側電極に対して前記アンテナ導体を直交させたラダー形状をなすものであり、前記アンテナ導体が、前記給電側電極及び前記接地側電極を等分するように架け渡されているものが好ましい。
これならば、アンテナユニットがラダー形状をなし、アンテナ導体が給電側電極及び接地側電極を等分するので、各アンテナ導体のインピーダンスにはほとんど差が生じず、各アンテナ導体に流れる電流をより均等にすることで、発生するプラズマをより均一なものにすることができる。
【0013】
前記アンテナユニットを収容するとともに、前記処理チャンバに形成された開口に嵌め込まれた収容体を更に具備し、前記アンテナユニットが、前記収容体内において、前記開口の内側開口面と平行に設けられているものが好ましい。
これならば、アンテナユニットを収容体とともに着脱することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
さらに、アンテナユニットが、内側開口面と平行に設けられているので、この開口を介して処理チャンバ内に安定的にプラズマを発生させることができる。
【0014】
前記収容体が、前記内側開口面と平行な底板を具備し、前記底板が、前記収容体内から前記処理チャンバ内に向かって形成された複数の凹溝を有し、前記複数のアンテナ導体が、前記複数の凹溝に収容されているものが好ましい。
これならば、アンテナ導体を処理チャンバ内により近づけることができ、高周波電力を効率よく処理チャンバ内に誘導することが可能になり、高密度のプラズマを発生することができる。
【0015】
前記収容体が、前記内側開口面と平行な平板状をなす誘電体板であって、前記誘電体板が、前記処理チャンバ内に向かって形成された複数の凹溝を有し、前記複数のアンテナ導体が、前記複数の凹溝に収容されているものが好ましい。
これならば、上述したように、アンテナ導体を処理チャンバ内により近づけることで、高密度のプラズマを発生することができるうえ、一枚の平板状をなす誘電体板を加工して収容体を製作することができ、製造コストを低減することができる。
【0016】
また、本発明に係るアンテナユニットは、プラズマ処理装置に用いられ、被処理物が収容される処理チャンバ内にプラズマを発生させるものであって、高周波電力が給電される1又は複数の給電端子を備え、所定の長さを有する給電側電極と、前記給電側電極に対向して設けられるとともに、接地点に接続される1又は複数の接地端子を備え、所定の長さを有する接地側電極と、前記給電側電極と前記接地側電極との間に架け渡された複数のアンテナ導体とを有することを特徴とするものである。
このように構成されたアンテナユニットによれば、上述した作用効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、均一かつ高密度なプラズマを大面積にわたって発生させることができ、ひいては、このプラズマによる表面処理を施すことで被処理物に所望の特性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す図。
図2】同実施形態の収容体を示す拡大図。
図3】同実施形態のアンテナユニットを示す模式図。
図4】変形実施形態のアンテナユニットを示す模式図。
図5】変形実施形態の収容体を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係るプラズマ処理装置100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、アンテナユニット30に高周波電流を流すことで発生する電磁界を用いて放電プラズマを発生させる、いわゆる誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式のものである。
【0021】
具体的にこのプラズマ処理装置100は、図1に示すように、例えば燃料電池のセパレータに用いられる基板等の被処理物Wを収容する処理チャンバ10と、収容体20に収容されて、処理チャンバ10内にプラズマを発生させるアンテナユニット30とを具備するものである。
【0022】
処理チャンバ10は、例えばアルゴンと水素との混合ガスが導入されるとともに、内部空間Sが密閉されて所定の真空度に保たれている。
【0023】
具体的にこの処理チャンバ10は、図1に示すように、上壁部11に上方から視て矩形状の開口111が形成されており、この開口111に後述する収容体20をがた無く嵌め込むことにより内部空間Sが密閉されるように構成されている。
【0024】
収容体20は、概略直方体形状をなす筐体であり、内部にアンテナユニット30を収容するとともに、上述した処理チャンバ10の開口111にがた無く嵌め込まれている。本実施形態では、この収容体20は、例えばシール部材4を介して図示しない螺子等により前記開口111に着脱可能に設けられている。
【0025】
より詳細にこの収容体20は、図1及び図2に示すように、上部に開口21が形成されるとともに、この開口21を介してアンテナユニット30を出し入れできるように構成されており、本実施形態では、この開口21を塞ぐ蓋体22が収容体20の上部に例えば図示しない螺子等により着脱可能に設けられている。
【0026】
前記開口21と対面した下部には底板として誘電体窓23が設けられており、この誘電体窓23は、所定の真空度に保たれている処理チャンバ10の内部空間Sと大気圧に保たれている収容体20内とを隔てるものであり、所定の厚み、つまり、所定の機械強度を有している。
【0027】
より詳細にこの誘電体窓23は、特に図2に示すように、その厚み方向に向かって、つまり、収容体20内から処理チャンバ10の内部空間Sに向かって形成された複数の凹溝231を有しており、本実施形態では、これらの凹溝231は所定の方向に沿って互いに平行に設けられている。この誘電体窓23は、その内面232に互いに平行に形成された複数の凹溝231が形成されたものである。
これら複数の凹溝231は、後述するアンテナ導体33が収容されるものであり、本実施形態では、各凹溝231の深さ寸法は、大気圧に耐え得る厚さを必要とし、誘電体窓23の厚み寸法の3分の2となるように形成されている。
なお、各凹溝231の深さ寸法は、大気圧に耐える強度の厚さを残せばよく特定されるものではない。
【0028】
誘電体窓23の外面233、すなわち前記内面232の裏面は、処理チャンバ10の開口111の内側開口面と平行であり、処理チャンバ10の上壁部11の内側面112と同一平面状に設けられている。これにより、収容体20は、処理チャンバ10における上壁部11の内側面112に対して段差なく嵌め込まれていることになる。
なお、収容体20は、必ずしも処理チャンバ10における上壁部11の内側面112に対して段差なく嵌め込まれている必要はなく、収容体20を内部空間Sに突出して設ける方が高周波電力の利用効率は高くなる。
【0029】
本実施形態では、誘電体窓23の外面233に、処理チャンバ10で生じるダスト等の副生物により誘電体窓23に汚れが付着することを防ぐ汚れ防止板24が設けられており、本実施形態の汚れ防止板24は、誘電体窓23の外面233に例えば螺子によって固定された石英板である。
なお、上述したように、誘電体窓23の外面233を処理チャンバ10の上壁部11の内側面112と略面一に形成している場合は、汚れ防止板24は必ずしも設ける必要はない。
【0030】
上述した収容体20は、本実施形態では、金属酸化物、窒化物、炭化物、又はフッ化物等の誘電体製のものであり、より具体的には石英、アルミナ、ジルコニア、イットリア、窒化珪素又は炭化珪素等を材質とするものである。
【0031】
なお、本実施形態では、収容体20の内部に冷媒を循環させる図示しない冷却手段が設けられており、冷媒としてはアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスが用いられている。
【0032】
そして、上述した収容体20に収容されるアンテナユニット30は、図3に示すように、上方から視てラダー形状をなすものであり、高周波電源41に接続されて高周波電力が給電される給電端子311を有する給電側電極31と、接地点42に接続される接地端子321を有する接地側電極32と、給電側電極31と接地側電極32との間に架け渡された複数のアンテナ導体33とを具備するものである。
【0033】
より詳細にこのアンテナユニット30は、給電端子311と接地端子321との間に形成された複数の電流経路に均等な高周波電流が流れるように、つまり、これら複数の電流経路のインピーダンスが互いに等しくなるように構成されており、本実施形態では、各電流経路の長さが互いに等しい長さになるように構成されている。
【0034】
以下、各端子311、321や各アンテナ導体33の配置等、アンテナユニット30の具体的な構成について図3を参照して説明する。
【0035】
給電側電極31は、所定の長さを有し、長さ方向に延伸する帯状の導体であり、その長さ方向に沿った所定の位置に給電端子311が配置されたものである。
より具体的には、本実施形態の給電側電極31は、図3に示すように、長さ600mmの銅板であり、その長さ方向における中央に1つの給電端子311が配置されている。
なお、本実施形態では、この給電端子311は、後述する接地側電極32における長さ方向に沿って互いに隣り合う接地端子321の二等分線L上に配置されている。
【0036】
接地側電極32は、前記給電側電極31に対向するとともに当該給電側電極31と平行に設けられており、所定の長さを有し、長さ方向に延伸する帯状の導体であり、その長さ方向に沿った所定の位置に接地端子321が配置されたものである。
より具体的にこの給電側電極31は、図3に示すように、給電側電極31と等しい長さ(600mm)の銅板であり、その長さ方向において中央から線対称な位置、つまり、中央から互いに等距離な位置に複数の接地端子321が配置されている。
より詳細に本実施形態の接地側電極32は、その長さ方向における両端にそれぞれ1つずつ、合計2つの接地端子321が配置されている。
【0037】
アンテナ導体33は、上述したように、誘電体窓23に形成された凹溝231に収容されており、前記給電端子311から前記接地端子321へ高周波電流が流れるように給電側電極31と接地側電極32との間に架け渡されたものである。本実施形態では、給電側電極31及び接地側電極32の長さ方向に沿って複数のアンテナ導体33が設けられている。
【0038】
より詳細には、図3に示すように、複数のアンテナ導体33が、給電側電極31及び接地側電極32の長さ方向に沿って等間隔に配置されており、各アンテナ導体33は互いに同一な形状をなしている。これにより、少なくとも両端に位置するアンテナ導体33を除く各アンテナ導体33に略均等な高周波電流が流れることになる。
【0039】
具体的に各アンテナ導体33は、給電側電極31及び接地側電極32よりも細い帯状をなすものであり、本実施形態では、長さ200mm、幅20mm、厚さ2mmの銅板である。
なお、本実施形態では、アンテナ導体33の長さ方向と給電側電極31及び接地側電極32の長さ方向とは直交している。つまり、本実施形態の各アンテナ導体33は、給電側電極31及び接地側電極32に対して直交して延伸するように設けられている。
【0040】
本実施形態では、図3に示すように、各電極31、32を4等分するように5本のアンテナ導体33が等間隔に設けられおり、この配置により、前記給電端子311は、真ん中のアンテナ導体33と給電側電極31との接続部に位置し、前記接地端子321は、両端のアンテナ導体33と接地側電極32との接続部に位置することになる。
【0041】
上述の構成により、給電側電極31と接地側電極32と互いに隣り合うアンテナ導体33とによって囲まれた領域S1は、いずれも同一形状(本実施形態では長方形状)に形成されている。本実施形態では、これらの領域S1が誘電体窓23の外面233と平行になるように、つまり、アンテナユニット30が誘電体窓23と平行になるように、当該アンテナユニット30を収容体20に収容させている。
【0042】
このように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置100によれば、給電側電極31と接地側電極32との間に複数のアンテナ導体33が架け渡されているので、これらのアンテナ導体33に高周波電流を流すことで高密度なプラズマを発生させることができる。
そのうえ、各アンテナ導体33に均等な高周波電流を流しているので、領域S1と平行な平面において、上述した高密度なプラズマを均一に発生させることができ、ひいては、このプラズマを用いた表面処理により被処理物Wに所望の特性を持たせることができる。
【0043】
また、アンテナユニット30が誘電体窓23と平行に設けられているので、この誘電体窓23を介してプラズマを処理チャンバ10内に安定的に発生させることができる。
【0044】
さらに、複数のアンテナ導体33が誘電体窓23に形成された凹溝231に収容されているので、アンテナ導体33を処理チャンバ10の内部空間Sに近接させることができ、高周波電力を効率よく処理チャンバ10内に誘導することが可能になり、高密度のプラズマを発生させることができる。
【0045】
加えて、給電側電極31と接地側電極32とが互いに平行に設けられるとともに、アンテナ導体33がこれらの電極31、32と直交して設けられ、アンテナユニット30がラダー形状をなすので、高密度なプラズマを広い領域に亘って均一に発生させることができる。云うまでもなく、前記給電側電極31及び前記接地側電極32にも高周波電流が流れるので、アンテナ導体としてプラズマ生成に寄与する。
【0046】
また、収容体20の上部に蓋体22が設けられているので、蓋体22を取り外すことにより収容されているアンテナユニット30の状態を確認することができ、この収容体20が処理チャンバ10に着脱可能に設けられているので、アンテナユニット30に不具合が生じた場合には、収容体20ごとアンテナユニット30を取り替えることができ、また、汚れ防止板24のメンテナンスが容易になる。
【0047】
さらに、誘電体窓23の外面233が処理チャンバ10の上壁部11の内側面112と同一平面状に配置されており、誘電体窓23と処理チャンバ10の内側面112との間に段部が形成されない構成なので、処理チャンバ10内に生じるダスト等の副生物が処理チャンバ10の内側面112に付着しても、この副生物をプラズマ洗浄により容易に除去することができる。
【0048】
加えて、アンテナユニット30は高周波電流が流れることによりその温度が非常に高くなり、収容体20における誘導体窓の内側は高密度のプラズマに晒されて数百度に加熱されるところ、冷却手段が収容体20内に冷媒を循環させているので、上述したアンテナユニット30及び収容体20の誘電体窓23を確実に冷却することができる。
【0049】
また、プラズマ処理装置100が、誘導結合型プラズマ方式を用いているので、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitive Coupled Plasma)方式に比べて、低ガス圧下においても高密度なプラズマを発生させることができ、電子温度が低いので、イオンエネルギーの小さいプラズマを生成することができる。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0051】
例えば、アンテナユニット30の構成については、図4の(b)〜(d)に示すようなものであっても良い。なお、図4の(a)は、前記実施形態のアンテナユニット30を示す概略図であり、(a)〜(d)において前記実施形態と対応する部材には同じ符号を付している。
詳述すると、前記実施形態では、(a)に示すように、アンテナ導体33が5本設けられており、これらのアンテナ導体33が給電側電極31及び接地側電極32を4等分するように配置されていたが、例えば(b)に示すように、4本のアンテナ導体33が各電極を3等分するように配置されても良いし、(d)に示すように、さらに多数のアンテナ導体33を設けても良い。アンテナ導体33の数、長さ及びアンテナ導体33同士の相互間隔は、アンテナユニット30の設計要因であってプラズマ密度、均一性を考慮して任意に選択することができる。
また、前記実施形態では、給電端子311が1つであったが、(c)及び(d)に示すように、複数の給電端子311を設けても良い。
さらに、前記実施形態では、接地端子321が2つであったが、(c)及び(d)に示すように、3つの接地端子321を設けても良いし、さらに多数の接地端子321を設けても良い。加えて、アンテナ導体33に流れる電流が略均一になる構成であれば、接地端子321を1つにしても良い。
【0052】
また、前記実施形態では、収容体が概略直方体形状をなす筐体であったが、必ずしも匡体構造である必要はなく、例えば図5に示すように、収容体20xは、処理チャンバ10の開口111に設けられた概略平板状をなす誘電体板23xから構成されるものであってもよい。
具体的にこの誘電体板23xは、例えばシール部材4を介して図示しない螺子等により前記開口111内に形成された段部112xに着脱可能に設けられている。より詳細には、この誘電体板23xは、処理チャンバ10内に向かって形成された複数の凹溝231xを有し、複数のアンテナ導体33が、前記複数の凹溝231xに収容されている構成である。
このように構成することにより、収容体20xは、平板状をなす一枚の誘電体を加工すればよく、前記実施形態の概略直方体形状をなす筐体に比べて遥かに安価に製作することができる。
【0053】
また、前記実施形態では、給電側電極と接地側電極とが互いに帯状をなしかつ等しい長さを有するものであったが、これらの電極の形状は棒状や線状をなすものであっても良いし、長さは必ずしも等しくする必要はない。さらに、前記実施形態のように、これらの電極は、必ずしも互いに平行に設けられている必要はなく、例えば互いに対向して、反対向きに湾曲した曲線状をなすものであっても良い。
【0054】
さらに、前記実施形態では、複数のアンテナ導体は、いずれも同じ形状をなすものであったが、例えば互いに幅寸法が異なるアンテナ導体を用いても良い。
また、アンテナ導体の形状に関しても、上述した給電側電極及び接地側電極と同様、棒状、線状、湾曲形状等をなすものであっても良い。
【0055】
加えて、前記実施形態では、処理チャンバに1つのアンテナユニットが設けられたプラズマ処理装置について説明したが、処理チャンバに複数のアンテナユニットを一列又は縦横に並べ設けた構成であっても良い。
これにより、アンテナユニットを標準化して使用することができるうえ、複数のアンテナユニットにより均一かつ高密度なプラズマをより大面積にわたって発生させることができる。そのうえ、大きなアンテナユニットを用いてプラズマを発生させる場合に比べて、耐圧構造や電流制御等の問題が生じにくい。
【0056】
また、前記実施形態では平板状の蓋体で処理チャンバの開口を塞ぐ構成であったが、この開口にはアンテナユニットを収容する収容体の他に、導線等の種々の部品が配置されるところ、この開口を内部空間が形成された筐体で塞ぐように構成しても良い。これにより、上述した種々の部品を配置する空間を広くすることができる。
さらに、前記実施形態の蓋体をメッシュ状のものにしても良い。これにより、例えばファンからこの蓋体に向けて送風することで、アンテナユニット等の冷却効果を得ることができる。
【0057】
接地端子は、前記実施形態では直接接地点に接続されるように構成されていたが、例えばコンデンサを介して接地点に接続されるように構成されていても良い。
【0058】
さらに、前記実施形態では冷媒として不活性ガスを用いていたが、空気や絶縁油等を用いても良い。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
100・・・プラズマ処理装置
W ・・・被処理物
10 ・・・処理チャンバ
20 ・・・収容体
23 ・・・誘電体窓
231・・・凹溝
30 ・・・アンテナユニット
31 ・・・給電側電極
311・・・給電端子
32 ・・・接地側電極
321・・・接地端子
33 ・・・アンテナ導体
図1
図2
図3
図4
図5