特許第6418829号(P6418829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418829
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】導電性ポリマー溶液および導電性塗膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20181029BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20181029BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20181029BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20181029BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   C08L65/00
   C08L25/18
   C08L83/04
   C08K5/00
   C08J7/04
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-150582(P2014-150582)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-23287(P2016-23287A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝則
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−159365(JP,A)
【文献】 特開2010−168445(JP,A)
【文献】 特開2014−131834(JP,A)
【文献】 特開2012−144640(JP,A)
【文献】 特開2013−112686(JP,A)
【文献】 特開2008−045061(JP,A)
【文献】 特開2012−241130(JP,A)
【文献】 特開2011−001396(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/033388(WO,A1)
【文献】 特開2010−095580(JP,A)
【文献】 特開2012−097227(JP,A)
【文献】 特表2004−502004(JP,A)
【文献】 特開2008−133415(JP,A)
【文献】 特許第6005832(JP,B2)
【文献】 特許第6109920(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08J 7/04
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)π共役系導電性高分子と、
(b)上記(a)π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、
(c)上記(b)ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物と、
(d)シリコーン粘着剤と、
(e)有機溶剤と、
を含む導電性ポリマー溶液。
【請求項2】
前記(d)シリコーン粘着剤が付加硬化型のものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー溶液。
【請求項3】
前記(d)シリコーン粘着剤が電子線硬化型のものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー溶液。
【請求項4】
前記(a)π共役系導電性高分子が、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体からなる群から選択される少なくとも1種以上の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電性ポリマー溶液。
【請求項5】
前記(a)π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)またはポリピロールであることを特徴とする請求項4に記載の導電性ポリマー溶液。
【請求項6】
前記(b)ポリアニオンが、スルホン酸基、リン酸基およびカルボキシル基から選択される1種若しくはそれ以上の混合物であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電性ポリマー溶液。
【請求項7】
前記(b)ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸アルキレンスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)またはそれらの1種以上を共重合構成体として含むものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電性ポリマー溶液。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の導電性ポリマー溶液を基体上に供給して硬化させてなる導電性塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する粘着層を形成可能な導電性ポリマー溶液、および当該溶液を基体上に供給し形成して成る導電性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、主鎖がπ電子を含む共役系で構成されるπ共役系導電性高分子は、電解重合法あるいは化学酸化重合法により合成される。電解重合法では、ドーパントとなる電解質と、π共役系導電性高分子を形成するための前駆体モノマーとの混合溶液を用意し、当該溶液中に電極を配置すると共に予め形成した電極材料などの支持体を浸漬しておき、電極間に電圧を印加することによって、π共役系導電性高分子が当該支持体表面にフィルム状に形成される。このように、電解重合法は、電解重合用の装置を必要とし、かつバッチ生産となることから、大量生産性に劣る。一方、化学酸化重合法では、上記のような制約は無く、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーに酸化剤と酸化重合触媒とを添加し、溶液中で大量のπ共役系導電性高分子を製造することができる。
【0003】
しかし、化学酸化重合法では、π共役系導電性高分子を構成する主鎖の共役系の成長に伴い、溶媒に対する溶解性が乏しくなるため、π共役系導電性高分子は、溶媒に不溶の固体粉末で得られる。このため、塗布等の手法によって、プラスチック等の各種基材上にπ共役系導電性高分子の膜を均一な厚みにて形成することは難しい。かかる理由から、π共役系導電性高分子に官能基を導入して溶媒に可溶にする方法、バインダ樹脂にπ共役系導電性高分子を分散させて溶媒に可溶化する方法、π共役系導電性高分子にアニオン基含有高分子酸を添加して溶媒に可溶化する方法などが試みられている。
【0004】
例えば、π共役系導電性高分子の水への溶解性を向上させるため、分子量2,000〜500,000のアニオン基含有高分子酸としてのポリスチレンスルホン酸の存在下にて、酸化剤を用いて、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合し、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)水溶液を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、ポリアクリル酸の存在下で、π共役系導電性高分子を形成するための前駆体モノマーを化学酸化重合し、π共役系導電性高分子コロイド水溶液を製造する方法も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
さらに、有機溶剤に可溶若しくは分散して有機樹脂と混合可能な導電性溶液を製造する方法も提案されている。その一例として、ポリアニリンの有機溶剤溶液およびその製造方法が知られている(例えば、特許文献3を参照)。また、ポリアニオンと真性導電性高分子とを含む水溶液から有機溶剤への転相による溶媒置換法も知られている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7を参照)。また、凍結乾燥後の真性導電性高分子を有機溶剤に溶解させる方法も知られている(例えば、特許文献8を参照)。しかし、これらの方法では、ポリアニリンの例のように他の有機樹脂との混合が困難であり、加えて、多量の水を含む溶剤系に限られるという問題がある。水が少量若しくは実質的に水を含まない場合であっても、上記文献(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7を参照)のように、アミン化合物を用いることに起因して、樹脂と混合した場合の経時的な色調劣化、導電性高分子へのポリアニオンのドープがアミンによって徐々に引き抜かれて導電性が経時的に低下するという問題がある。さらには、付加硬化型シリコーン樹脂に導電性高分子を混合した場合には、アミンによる硬化阻害が生じ、シリコーン樹脂の硬化が不十分であるという欠点もある。一方、縮合硬化型シリコーン樹脂に導電性高分子を混合した場合には、アミンによるシラノールやアルコキシシリル基の縮合に関与するといった現象が生じ、保存特性が低下するという欠点がある。
【0006】
従来から、シリコーン業界においては、剥離用途あるいは粘着剤用途で、絶縁性の高いシリコーン組成物に対して帯電防止機能を付与したいという要望が存在する。この要望に応えるべく、従来から、カーボン粉末、金属粉末、イオン性導電物質をシリコーン組成物に添加する方法が試みられている。しかし、このような方法では、シリコーン樹脂の透明性、剥離性能、粘着性能、導電性の耐湿度依存性などの多くの機能を満足させるに至っていないのが現状である。なお、導電性高分子をエマルジョンの形態でシリコーン樹脂エマルジョンに混合する技術が知られているが(例えば、特許文献9および特許文献10を参照)、この技術の製造物は、水分散体であるため、実用性に限界があるとともに水による機器の腐食、密着性の不足などの欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−090060号公報
【特許文献2】特開平7−165892号公報
【特許文献3】国際公開WO2005/052058
【特許文献4】特開2006−249303号公報
【特許文献5】特開2007−254730号公報
【特許文献6】特開2008−045061号公報
【特許文献7】特開2008−045116号公報
【特許文献8】特開2011−032382号公報
【特許文献9】特開2002−241613号公報
【特許文献10】特開2003−251756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の導電性溶液は、アミン系化合物を用い、導電性高分子を水相から有機相に転相すると、アミン系化合物に由来する上記欠点を克服することはできない。また、水分散体の形態は、実用性が低く、水による腐食も起き易いという欠点がある。このような欠点を克服し、シリコーン粘着剤に導電性を付与したいという強い要望がある。
【0009】
本発明は、アミン系化合物由来の問題および水由来の問題を低減でき、導電性を有するシリコーン粘着層を形成可能な導電性ポリマー溶液およびそれを基体上に供給し形成して成る導電性塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは、アミン系化合物を使用せず、オキシラン系あるいはオキセタン系の化合物を使用して水相から有機相への転相を可能にする全く新しい技術を開発し、シリコーン粘着剤と相溶性のある導電性ポリマー溶液を作製し、本発明の完成に至った。具体的な課題解決手段は、以下のとおりである。
【0011】
上記目的を達成するための導電性ポリマー溶液は、(a)π共役系導電性高分子と、(b)上記(a)π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、(c)上記(b)ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物と、(d)シリコーン粘着剤と、(e)有機溶剤とを含む。
【0012】
別の実施の形態にかかる導電性ポリマー溶液は、(d)シリコーン粘着剤を付加硬化型のものとする。
【0013】
別の実施の形態にかかる導電性ポリマー溶液は、(d)シリコーン粘着剤を電子線硬化型のものとする。
【0014】
別の実施の形態にかかる導電性ポリマー溶液は、(a)π共役系導電性高分子を、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体からなる群から選択される少なくとも1種以上の繰り返し単位を有するものとする。
【0015】
別の実施の形態にかかる導電性ポリマー溶液は、(a)π共役系導電性高分子を、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)またはポリピロールとする。
【0016】
別の実施の形態にかかる導電性ポリマー溶液は、(b)ポリアニオンを、スルホン酸基、リン酸基およびカルボキシル基から選択される1種若しくはそれ以上の混合物とする。
【0017】
別の実施の形態にかかる導電性ポリマー溶液は、(b)ポリアニオンを、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸アルキレンスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)またはそれらの1種以上を共重合構成体として含むものとする。
【0018】
本発明の実施の形態にかかる導電性塗膜は、上記いずれかの導電性ポリマー溶液を基体上に供給して硬化させてなる導電性塗膜である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アミン系化合物由来の問題および水由来の問題を低減でき、導電性を有するシリコーン粘着層を形成可能な導電性ポリマー溶液およびそれを基体上に供給し形成して成る導電性塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る導電性ポリマー溶液および導電性塗膜の各実施の形態について説明する。
【0021】
<A 導電性ポリマー溶液の実施の形態>
1.導電性ポリマー溶液
本発明の実施の形態に係る導電性ポリマー溶液は、(a)π共役系導電性高分子と、(b)上記(a)π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、(c)上記(b)ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物と、(d)シリコーン粘着剤と、(e)有機溶剤とを含む。本願で用いられるポリアニオンをドーパントとしている真性導電性高分子は、おおよそ数十ナノメータの粒子径を持つ微粒子から形成される。かかる微粒子は、界面活性剤の作用をも持つポリアニオンの存在によって可視光領域において透明であって、溶媒中に微粒子が溶解しているように見える。実際には、当該微粒子は溶媒中に分散しているが、本願では、この状態を「分散可溶」の状態と称している。この場合の溶媒は、有機溶剤であるが、有機溶剤のみに限定されず、有機溶剤を主とする限り、少量の水を含んでいても良い。ここで、「有機溶剤を主とする」とは、溶媒中に占める有機溶剤が質量比にて50%を超えることを意味する。特に、溶媒は、重量比にて有機溶剤:水=90:10〜100:0の範囲であるのが好ましい。
【0022】
1.1 製造方法
導電性ポリマー溶液を構成する(a)π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、(c)上記(b)ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物を含み、まだシリコーン粘着剤を含まない粘着剤未含有組成物は、一例として、以下の方法によって製造することができる。
(1)導電性高分子/ポリアニオン錯体水分散体の溶液からの製造方法
導電性高分子/ポリアニオン錯体水分散体は、導電性高分子用のモノマーとドーパントとが共存した水溶液または水分散体の状態に、酸化剤の存在下で重合を行う。ただし、このようなモノマーからの重合のみならず、市販の導電性高分子/ドーパント水分散体を用いても良い。市販の導電性高分子/ドーパント水分散体としては、例えば、Heraeus社のPEDOT/PSS水分散体(商品名: Clevios)、アグファ社のPEDOT/PSS水分散体(商品名: Orgacon)などを挙げることができる。
【0023】
上記粘着剤未含有組成物は、上述の水分散体に、オキシラン基若しくはオキセタン基含有化合物を溶剤と共に添加後、アニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させて、その後に反応液を濃縮、濾別あるいは乾固して得られる。その後、好適には、得られた濃縮物あるいは固体を、有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させて、塗料の形態で使用する。また、上記水分散体に、オキシラン基若しくはオキセタン基含有化合物を溶剤と共に添加後、アニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させている間若しくは反応後に、水に不溶の有機溶剤を加えて、水不溶の溶剤相に粘着剤未含有組成物を転相させ、必要に応じて脱水などの工程を経た後に、粘着剤未含有組成物を、有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させても良い。
【0024】
(2)凍結乾燥された導電性高分子/ポリアニオン錯体固形物からの製造方法
既に固体となっているπ共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンの状態の導電性組成物に、水および/またはオキシラン基若しくはオキセタン基含有化合物が溶解する溶剤を適量添加後、アニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させる。その後、反応液を濃縮、濾別あるいは乾固して、粘着剤未含有組成物を得る。その後、好適には、得られた濃縮物あるいは固体を、有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させて、塗料の形態で使用する。また、上記製造において、アニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させた後、水に不溶の有機溶剤を加えて、水不溶の溶剤相に粘着剤未含有組成物を転相させ、必要に応じて脱水などの工程を経た後に、粘着剤未含有組成物を、有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させても良い。このように、(2)の方法では、凍結乾燥された粘着剤未含有組成物を原料として用いているので、特に、濃縮する工程の時間を短縮できる。
【0025】
1.2 導電性ポリマー溶液の原料
(a)π共役系導電性高分子
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば、何らの限定もなく用いることができる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体を好適に挙げることができる。重合の容易性、空気中における安定性の観点では、特に、ポリピロール類、ポリチオフェン類あるいはポリアニリン類を好適に用いることができる。π共役系導電性高分子は、本発明においては、無置換のままでも、十分に高い導電性およびバインダへの相溶性を示すが、導電性、バインダへの分散性若しくは溶解性をより高めるためには、アルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基などの官能基が導入されても良い。
【0026】
上記のπ共役系導電性高分子の好適な例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0027】
上記のπ共役系導電性高分子の例において、抵抗値あるいは反応性を考慮すると、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選択される1種若しくは2種以上からなる共重合体を、特に好適に用いることができる。高導電性および高耐熱性の面では、さらに、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を好適に用いることができる。また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は、有機溶剤を主とする溶媒への溶解性、疎水性樹脂を添加したときの相溶性および分散性を向上させるために、より好適に用いることができる。アルキル基の中でも、メチル基は、導電性に悪影響を与えることが少ないので、より好ましい。
【0028】
(b)ポリアニオン
ポリアニオンは、アニオン性化合物であれば、特に制約無く用いることができる。アニオン性化合物とは、分子中に、(a)π共役系導電性高分子への化学酸化ドーピングが起こりうるアニオン基を有する化合物である。アニオン基としては、製造の容易さおよび高い安定性の観点から、硫酸エステル基、リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホン基、などが好ましい。これらのアニオン基の内、(a)π共役系導電性高分子へのドープ効果に優れる理由から、スルホン基、硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
【0029】
ポリアニオンとしては、例えば、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホ化してポリマー内にアニオン基を導入したポリマーの他、アニオン基含有重合性モノマーを重合して得られたポリマーを挙げることができる。通常、ポリアニオンは、製造の容易さの観点から、好ましくは、アニオン基含有重合性モノマーを重合して得る。かかる製造方法としては、例えば、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤および/または重合触媒の存在下、酸化重合またはラジカル重合させて得る方法を例示できる。より具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保持し、そこに、予め溶媒に所定量の酸化剤および/または重合触媒を溶解しておいた溶液を添加して、所定時間で反応させる。当該反応により得られたポリマーは、触媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させることもできる。アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤および/または酸化触媒、溶媒は、(a)π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0030】
アニオン基含有重合性モノマーは、分子内にアニオン基と重合可能な官能基を有するモノマーであり、具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸及びその塩類、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH−COO−C−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH−COO−C10−SOH)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH)−COO−C−SOH)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH)−COO−C10−SOH)及びその塩類等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0031】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0032】
こうして得られるポリアニオンの重合度は、特に限定されるものではないが、通常、モノマーの単位が10〜100,000程度であり、溶媒可溶化、分散性および導電性を良好にする観点から、50〜10,000程度とするのがより好ましい。
【0033】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)を好適に挙げることができる。
【0034】
得られたアニオン性化合物がアニオン塩である場合には、アニオン酸に変質させるのが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法などを挙げることができる。これらの方法の中でも、作業容易性の観点から、限外ろ過法が好ましい。ただし、金属イオン濃度を低減することを要する場合には、イオン交換法を用いる。
【0035】
(a)π共役系導電性高分子と(b)ポリアニオンとの組み合わせとしては、(a)および(b)の各グループから選択されたものを使用できるが、化学的安定性、導電性、保存安定性、入手容易性などの観点から、(a)π共役系導電性高分子の一例であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、(b)ポリアニオンの一例であるポリスチレンスルホン酸との組み合わせが好ましい。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とは、前述のように、導電性高分子用のモノマーとドーパントが共存した水溶液または水分散液の状態で酸化剤の存在下にて重合を行い、合成しても良い。また、市販の導電性高分子/ドーパント水分散体を使用しても良い。
【0036】
ポリアニオンの含有量は、好ましくはπ共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲、より好ましくは1〜7モルの範囲である。ポリアニオンの含有量を0.1モル以上とすることにより、π共役系導電性高分子へのドーピング効果を高め、導電性を高めることができる。加えて、溶媒への溶解性が高くなり、均一分散形態の導電性高分子の溶液を得やすくなる。一方、ポリアニオンの含有量を10モル以下にすると、π共役系導電性高分子の含有割合を相対的に多くすることができ、より高い導電性を発揮させることができる。
【0037】
(c)ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物
ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物は、前述の(a)π共役系導電性高分子、(b)ポリアニオンに、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物を添加して反応させることにより得られる。
【0038】
オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物としては、ポリアニオンのアニオン基または電子吸引基に配位あるいは結合するものであれば、特に限定されない。1分子中に1個以下のオキシラン基若しくはオキセタン基を含有する化合物を用いると、凝集やゲル化を低減できる点でより好ましい。オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物の分子量は、有機溶剤への易溶解性を考慮すると、好ましくは50〜2,000の範囲である。
【0039】
オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物の量は、好ましくは、π共役系導電性高分子のポリアニオン中のアニオン基あるいは電子吸引基に対して、重量比で0.1〜50であり、より好ましくは1.0〜30.0である。オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物の量を上記重量比で0.1以上とすると、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物を、ポリアニオンのアニオン基が溶剤に溶解する程度に変成することが出来る。一方、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物の量を上記重量比で50以下とすると、余剰のオキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物が導電性高分子溶液中に析出しにくいので、得られる導電性塗膜の導電率および機械的物性の低下を防止しやすい。
【0040】
オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物としては、オキシラン基若しくはオキセタン基を分子中に有していればどのような分子構造を持つ化合物でも良い。ただし、極性の低い有機溶剤に可溶化するには、カーボン数の多い化合物が有効である。好適にはカーボン数が10以上の化合物が使用される。また、製造工程中において水を多用する場合には、加水分解や水と反応する官能基を有するアルコキシシリル基を含有する化合物は、なるべく使用しないのが好ましい。一方、凍結乾燥を経由の製造方法の場合には、アルコキシシリル基を含有する化合物もまた、その特徴を維持したまま溶剤に分散あるいは可溶するので、使用しても良い。従来から、導電性向上剤或いは架橋剤としてオキシラン基或いはオキセタン基を有する化合物を、導電性ポリマー水溶液に添加されることが行われている。それら公知の技術と本願との差異は、1)導電性高分子のドーパント兼分散剤であるポリアニオンとオキシラン基或いはオキセタン基含有化合物とを反応させた反応物を得ていること、2)水分を除去若しくは低減していること、にある。これら1)および2)の要件を達成することによって、水分の少ない状態で有機溶剤への可溶化が達成され、有機樹脂との混合も可能であるという効果を発現できる。
【0041】
以下、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物を例示する。
【0042】
(オキシラン基含有化合物)
単官能オキシラン基含有化合物としては、プロピレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシエイコサン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシ−9−デカン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2−エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシシクロドデカン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタデカン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−ヘプタデカフルオロブタン、3,4−エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ琥珀酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α−ピネンオキサイド、2,3−エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(3−グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10−エポキシ−1,5−シクロドデカジエン、4−tert−ブチル安息香酸グリシジル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2−tert−ブチル−2−[2−(4−クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール−5α,6α−エポキシド、スチルベンオキサイド、p−トルエンスルホン酸グリシジル、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、N−プロピル−N−(2,3−エポキシプロピル)ペルフルオロ−n−オクチルスルホンアミド、(2S,3S)−1,2−エポキシ−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フェニルブタン、3−ニトロベンゼンスルホン酸(R)−グリシジル、3−ニトロベンゼンスルホン酸−グリシジル、パルテノリド、N−グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4−グリシジルオキシカルバゾール、7,7−ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]などを例示できる。
【0043】
多官能オキシラン基含有化合物としては、1,7−オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、ポリエチレングリコール#200ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどを例示できる。
【0044】
(オキセタン基含有化合物)
単官能オキセタン基含有化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(=オキセタンアルコール)、2−エチルヘキシルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メタアクリレートなどを例示できる。
【0045】
多官能オキセタン基含有化合物としては、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4−ベンゼンジカルボン酸,ビス{[3−エチル−3−オキセタニル]メチル}エステルなどを例示できる。
【0046】
以上のように、ポリアニオンのアニオン基にオキシラン基若しくはオキセタン基が反応しているため、ポリアニオンの親水性が失われ、親油性を呈する。したがって、(a)π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、(c)上記(b)ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物を含む組成物は、有機溶剤に高濃度に可溶化あるいは分散可能である。
【0047】
(d)シリコーン粘着剤
シリコーン粘着剤は、その硬化方式により付加反応硬化型、過酸化物硬化型、電子線硬化型などのいくつかのタイプに分けられる。
【0048】
(d1)付加反応硬化型
付加硬化型シリコーン粘着剤は、例えば、末端にビニル基を有するシリコーンゴム(生ゴムなど)と、シリコーンレジンと、Si−H基を有する架橋剤と、反応抑制剤と、付加反応触媒とを含む。シリコーンゴムそのものは、粘着性に乏しいため、付加硬化型シリコーン粘着剤は、粘着性付与剤としてシリコーンレジンを混合してなる。シリコーンレジンは、好ましくは、Qユニット(SiにOを4個結合した単位)を結合させ、末端の反応を止めるべく、Mユニット(Siに1個のOと3個のメチル基を結合した単位)を結合させた構造を有する。架橋剤は、Si−H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、直鎖状あるいは分岐状のいずれをも使用できる。反応制御剤は、粘着剤の硬化前の増粘やゲル化を防止するための成分であり、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等を使用できる。付加反応触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体、ルテニウム錯体等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、これらのものをイソプロパノール、トルエン等の溶剤や、シリコーンオイルなどに溶解、分散させたものを用いることができる。
【0049】
付加硬化型シリコーン粘着剤としては、一例としては、以下の化合物から主に構成される。
a)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
b)末端をトリメチルシリル基とするシリコーンレジン
c)分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン
d)主として白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属変性体若しくは錯体からなるヒドロシリル化触媒
【0050】
(d2)過酸化物硬化型
過酸化物硬化型シリコーン粘着剤は、例えば、ポリジメチルシロキサンに代表されるポリジアルキルシロキサンと、シリコーンレジンと、過酸化ベンゾイルに代表される有機過酸化物とを含む。シリコーンレジンは、付加反応硬化型シリコーン粘着剤に含まれるものと同種のものを使用できる。有機過酸化物は、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、4,4’−ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、3,3’−ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’−ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’,4,4’−テトラクロロジベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0051】
(d3)電子線硬化型
電子線硬化型シリコーン粘着剤は、例えば、以下例1〜例6記載のいずれかの化合物に加え、上述と同種のシリコーンレジンと、重合開始剤とを含み、電子線によって硬化される。
<例1>
アクリルアミド基含有オルガノポリシロキサン
このオルガノポリシロキサンは、分子中に、下記一般式(I)で表されるアクリルアミド官能基を含むオルガノポリシロキサンである。
【0052】
【化1】
【0053】
上記一般式(I)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは二価の炭化水素基である。
【0054】
<例2>
一分子中に少なくとも2個のメルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサン
このオルガノポリシロキサンは、一分子中に、下記一般式(II)で表されるメルカプトアルキル官能基を少なくとも2個含むオルガノポリシロキサンである。
【0055】
【化2】
【0056】
上記一般式(II)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは二価の炭化水素基である。
【0057】
<例3>
一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンからなる組成物
このオルガノポリシロキサンは、一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基(−C2n−1(nは、2以上の数。))を含むオルガノポリシロキサンからなる組成物である。
<例4>
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
このオルガノポリシロキサンは、分子中にアルケニル基(−C2n−1(nは、2以上の数。))を含むオルガノポリシロキサンである。
<例5>
アクリル基またはメタクリル基含有オルガノポリシロキサン
このオルガノポリシロキサンは、分子中にアクリル基(CHCHCO−)またはメタクリル基(CHC(CH)CO−)を含むオルガノポリシロキサンである。
<例6>
a)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
b)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン
【0058】
(e)有機溶剤
有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホニウムトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等に代表される極性溶媒; クレゾール、フェノール、キシレノール等に代表されるフェノール類; メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等に代表されるアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等に代表されるケトン類; 酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等に代表されるエステル類; ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等に代表される炭化水素類; ギ酸、酢酸等に代表されるカルボン酸; エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表されるカーボネート化合物; ジオキサン、ジエチルエーテル等に代表されるエーテル化合物; エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等に代表される鎖状エーテル類; 3−メチル−2−オキサゾリジノン等に代表される複素環化合物; アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等に代表されるニトリル化合物などを好適に例示できる。これらの有機溶剤は、単独で用いても良く、あるいは2種以上を混合して用いても良い。これらの有機溶剤の内、種々の有機物との易混合性の観点から、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類をより好適に用いることができる。
【0059】
(f)その他
導電性ポリマー溶液への添加剤として、例えば、導電性を向上させるものを挙げることができる。
(導電性向上剤)
導電性向上剤としては、グリシジル化合物、極性溶媒、多価脂肪族アルコール、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、2個以上のカルボキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基と1個以上のカルボキシ基を有する化合物、ラクタム化合物等が挙げられる。これらのなかでも、剥離性成分の硬化を阻害しにくいものが好ましい。剥離性成分の硬化を阻害しにくければ、該帯電防止性剥離剤から得た剥離剤層に、粘着シートの粘着剤層を重ねた後、粘着剤層に剥離剤が転写することを防ぐことができる。剥離性成分の硬化を阻害しにくい導電性向上剤としては、グリシジル化合物、極性溶媒、多価脂肪族アルコールが挙げられる。また、導電性向上剤は、25℃で液状であることが好ましい。液状であれば、該帯電防止性剥離剤から形成した剥離剤層の透明性を向上させることができ、剥離剤層に貼り合わされる粘着剤層への異物の転写を防ぐことができる。
【0060】
グリシジル化合物の具体例としては、エチルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等が挙げられる。極性溶媒の具体例としては、N−メチルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル等が挙げられる。多価脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、チオジエタノール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0061】
導電性向上剤の含有量は、導電性成分100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、30〜5000質量部であることがより好ましい。導電性向上剤の含有量が前記下限値以上であれば、帯電防止性をより向上させることができる。一方、前記上限値以下であれば、剥離性をより向上できる。
【0062】
<B 導電性塗膜の実施の形態>
本発明の実施の形態に係る導電性塗膜は、前記の導電性ポリマー溶液を基体上に供給し形成してなる膜である。導電性ポリマー溶液は、例えば、紙、プラスチック、鉄、セラミックス、ガラスに代表される基体上に供給される。供給方法としては、刷毛やバーコーターを使う塗布法、導電性ポリマー溶液中に基体を浸漬するディップ法、導電性ポリマー溶液を基体上に滴下して基体を回転させて溶液を拡げるスピンコート法などの種々の手法を例示できる。基体上の導電性ポリマー溶液の硬化法は、加熱により有機溶剤などの溶媒を除去する方法、紫外線などの光や電子線を照射して硬化する方法などを例示できる。
【0063】
以上のように、この実施の形態に係る導電性塗膜は、ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物を含むため、種々の有機溶剤を主とする溶媒中に分散、可溶なものである。導電性塗膜を形成する導電性ポリマー溶液は、従来から知られているアミン系化合物、相間移動触媒を用いた導電性高分子水分散液におけるポリアニオン残渣との反応によって溶剤置換する方法に比べて、保存安定性、電気抵抗値の安定性に優れると共に、アミンなどが障害になる分野にも適用可能である。導電性ポリマー溶液にシリコーン粘着剤を含めることにより、導電性を有するシリコーン粘着剤を得ることができる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の製造例および実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
<製造例>
【0066】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。
【0067】
(製造例2)PEDOT−PSSの水溶液の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のPEDOT−PSSの水溶液を得た。
【0068】
(製造例3)PEDOT−PSSの分散した有機溶剤の製造
150gのメタノールと12.5gのC12、C13混合高級アルコールグリシジルエーテルを混合した。次いで、製造例2で得た50gのPEDOT−PSSの水溶液を室温で混合撹拌し紺色の析出物を得た。この析出物を濾過回収しメチルエチルケトンに分散させ、約0.5質量%のメチルエチルケトンに分散したPEDOT−PSS(粘着剤未含有組成物)を得た。
【0069】
<導電性塗膜の製造>
(実施例1)
X−40−3229(信越化学工業社製シリコーン粘着剤)10gと、製造例3で得られた粘着剤未含有組成物20gと、CAT−PL−50T(硬化触媒)0.05gとを混合して導電性ポリマー溶液を調製し、これを、#2のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布した。得られた塗膜を130℃で2分間乾燥した後、表面抵抗値を測定した。次に、塗膜を他のPETフィルムと張り合わせた後、20時間室温に静置し、25mm幅に切断して、0.3m/分の速度で180度剥離を行い、剥離強度を測定した。
【0070】
(比較例1)
実施例2において製造例3で得られた導電性ポリマー溶液をメチルエチルケトンに変えたこと以外は同様にして測定を行った。
(比較例2)
実施例7において製造例3で得られた導電性ポリマー溶液をメチルエチルケトンに変えたこと以外は同様にして測定を行った。
(比較例3)
実施例9において製造例3で得られた導電性ポリマー溶液をメチルエチルケトンに変えたこと以外は同様にして測定を行った。
【0071】
<塗膜の評価方法>
(表面抵抗率)
三菱化学社製ハイレスタMCP−HT450を用い、プローブMCP−HTP12、印加電圧10Vで測定した。
(剥離強度)
厚さ38μmのPETフィルムに、得られた塗料(粘着剤とも称する)を、バーコーターによって塗布し、130℃の熱風式乾燥機中で2分間加熱して粘着層を形成した。次に、粘着層の表面に2.5cm×15cmのポリエステルフィルム(商品名:ルミラーT−60、東レ(株)製)を載せ、次いで、その粘着テープ上で2kgのローラーを用いて圧着し、粘着層にポリエステルフィルムを貼り合せた。その後、室温で20時間放置し、試験片を作製した。そして、引張試験機を用いて、粘着層からポリエステルフィルムを180度の角度で剥離(剥離速度0.3m/分)し、粘着力を測定した。
【0072】
<評価結果>
表1に、各種実施例及び各種比較例の評価結果を示す。表中、「OVER」は、測定上限値以上を意味する。
【0073】
【表1】
【0074】
上記のように、製造例3の導電性ポリマー溶液を添加しなかった比較例1〜3の塗膜は導電性が低く、高い帯電防止性能を有していなかった。これに対し、製造例3の導電性ポリマー溶液を添加した実施例1〜9の塗膜は導電性に優れ、高い帯電防止機能を有していた。また、実施例2と比較例1、実施例7と比較例2、実施例9と比較例3をそれぞれ比較すると、導電性ポリマーを添加したことによる顕著な粘着力の違いは見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば、工業用テープ、保護フィルム、剥離紙、粘着層、帯電防止フィルム、導電性塗料、タッチスクリーン、有機EL、導電性高分子繊維などに有効に利用できる。