(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418864
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20181029BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20181029BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K1/14 E
H05K9/00 R
H05K9/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-190355(P2014-190355)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-63089(P2016-63089A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健志
【審査官】
馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−139488(JP,A)
【文献】
特開2008−28218(JP,A)
【文献】
特開2001−274558(JP,A)
【文献】
特開2005−159133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
H05K 9/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気保護対象である電子部品が実装された制御回路基板と、
磁気発生源の素子が実装された駆動回路基板と
を備え、
前記駆動回路基板は、前記制御回路基板の前記電子部品が実装された面とは反対側の面と対向して配置され、
前記制御回路基板の内層には、グランド層が備えられ、
前記グランド層は、前記電子部品の実装位置に対応した部位とその周囲とで離間し、且つ当該電子部品と前記素子との間に設けられたこと
を特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記グランド層は、前記電子部品の実装位置に対応した前記部位の設置面積が当該電子部品の実装面積よりも大きく、且つ前記周囲と間隙をもって離間していること
を特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記磁気発生源の素子は、電動モータを駆動させる駆動素子であり、
前記電子部品は、前記電動モータのシャフトの回転を検出する検出素子であること
を特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両等の搭載される電子制御装置の回路基板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電子制御装置は、電動モータを駆動させる駆動回路基板と、前記電動モータを制御する制御回路基板とを備える。前記制御回路基板には、電動モータの制御因子であるモータ回転角を検出する検出素子が実装されている。
【0003】
前記駆動回路基板には大電流を発生するスイッチング素子等の電子部品が実装されており、電子制御装置の動作時に前記電子部品から発生した磁気が前記検出素子の検出性能に影響を及ぼすことがある。
【0004】
前記発生した磁気への対策として、例えば、磁気保護対象の検出素子が実装された面とは反対側の制御回路基板の面における当該素子の実装位置と対応した部位に磁気遮蔽板が配置、若しくは、磁気発生源の電子部品に対して磁気遮蔽板が配置される。または、回路基板の絶縁層間に前記磁気を遮蔽させる強磁性体層が設けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−156597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御回路基板、磁気発生源に対する磁気遮蔽板の配置は、部品点数が増えるので製造コストが高くなることに加えて、駆動回路基板,制御回路基板間にデッドスペースが増えるので、電子制御装置の大型化を招く。
【0007】
一方、回路基板の絶縁層間に強磁性体層を形成させる処置は、磁気遮蔽板の配置が不要となり駆動回路基板,制御回路基板間の省スペース化に貢献できるが、絶縁層間に強磁性体層を形成させる工程を必要するので、制御回路基板の製造コストが高くなる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、電子部品を実装した回路基板の電子制御装置の大型化を回避しつつ当該電子部品に対する外部からの磁気の影響を低コストに低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の回路基板は、回路基板に実装された磁気保護対象の電子部品の実装位置に対応した部位の当該基板の内層がその周囲の内層と離間して設けられている。
【0010】
また、本発明の電子制御装置は、電子部品が実装された回路基板を備え、この回路基板は、磁気保護対象である前記電子部品の実装位置に対応した部位の当該基板の内層がその周囲の内層と離間して設けられている。
【0011】
以上の発明によれば、電子部品が実装された回路基板において、磁気保護対象である前記電子部品の実装位置に対応した部位の当該基板の内層がその周囲の内層と離間しているので、当該基板の外部で発生した磁気の当該電子部品への廻りこみが遮断される。また、前記部位の内層においては、外部から入射された磁気を反射する。したがって、外部からの磁気による電子部品への影響を低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子部品を実装した回路基板の電子制御装置の大型化を回避しつつ当該電子部品に対する外部からの磁気の影響を低コストに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態における電子制御装置の分解斜視図。
【
図2】同電子制御装置のケースに収容された駆動回路基板及び制御回路基板を示した縦断面図。
【
図3】同制御回路基板の内層に設けられた磁気保護対象素子に対する磁気を遮蔽する層とその周辺を示す当該基板の縦断面図。
【
図4】(a)同制御回路基板に実装された磁気保護対象素子とその周辺を示した平面図、(b)同回路基板の内層における磁気を遮蔽する層とその周辺を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1に示された本実施形態の電子制御装置1は、例えば、自動車に搭載されてエンジン、トランスミッションブレーキ、パワーステアリング等を制御する電動モータに適用される制御装置である。
【0016】
電子制御装置1は、モータハウジング2の外装部に固定されるケース3と、ケース3と接合されるカバー4と、このケース3,カバー4間に収容されて図示省略の電動モータを駆動させる駆動回路基板5と、ケース3,カバー4間に収容されて駆動回路基板5の駆動を制御する制御回路基板6と、図示省略の電源バッテリから駆動回路基板5,制御回路基板6及び前記電動モータに電力などを供給するコネクタ7とを有している。
【0017】
駆動回路基板5は、コネクタ7から供給される電流を三相(U相,V相,W相)交流に変換し、制御回路基板6からの制御信号に応じて前記電動モータを駆動させるパワーモジュールの機能を備えた回路基板である。
【0018】
駆動回路基板5にはベースとなる金属材料からなる板上に絶縁層を介して図示省略の配線パターンが形成され、コネクタ7の第一通電端子71の一端部と電気接続される電源用の第二通電端子51と、三相交流の各相に上流側Pと下流側Qとが直列に電気接続された駆動トランジスタ(駆動素子、スイッチング素子)52と、図示省略の電動モータの三相の第一通電端子21の一端部と電気接続される三相モータ用の第二通電端子53とが実装されている。
【0019】
すなわち、駆動トランジスタ52が「2個(上流Pと下流Qとが一対となったセット)×3セット(三相分)」の配列で駆動回路基板5に実装され、各セットの上流側の各駆動トランジスタ52と下流側の各駆動トランジスタ52と並列に第二通電端子53が配置され、三相交流を前記電動モータの各第一通電端子21に供給している。
【0020】
各第二通電端子51はコネクタ7の第一通電端子71の一端部と対向して配置され、各第二通電端子53は電動モータの第一通電端子21の一端部と対向して配置されている。
【0021】
駆動回路基板5は、図示省略の平滑コンデンサ、障害発生時のフェイルセーフ用リレー、コイル等の電子部品が実装されている。前記平滑コンデンサは、第一通電端子71,第二通電端子51の電気接続により供給される電流を平滑化して各駆動トランジスタ52に供給している。
【0022】
さらに、駆動回路基板5の左右の縁部には通電端子54の基端部が電気接合され、またカバー4への固定用の貫通孔群が形成されている。この各貫通孔に挿通された固定ねじの軸部が、カバー4の雌ねじ孔に締結されている。
【0023】
制御回路基板6は、プリント基板(ガラスエポキシ基板)またはセラミック基板により構成されている。この制御回路基板6は、各駆動トランジスタ52を制御するマイクロコンピュータ(CPU:以下、マイコンと省略する)61と、前記電動モータの回転を検出するホール素子62とを有している。
【0024】
マイコン61は制御回路基板6の駆動回路基板5に対向する面に実装されている一方、ホール素子62はマイコン61と反対の面、すなわち、ケース3の開口部31に収容配置されたセンサマグネットSの対向面に実装されている。マイコン61,ホール素子62は制御回路基板6の回路パターンを通じて電気接続され、この回路パターンが両者61,62間の信号伝達経路となっている。
【0025】
ホール素子62は、制御回路基板6の一端部側において、前記電動モータのシャフトの基端部に固定されたセンサマグネットSと対向する位置に配置されている。そして、ホール効果(Hall effect)を利用してセンサマグネットSの磁界を検出し、前記シャフトの回転を検出する。この検出信号は制御回路基板6の回路パターンを通じてマイコン61に入力される。
【0026】
また、制御回路基板6の一端部側には、通電端子54の先端部が挿通されて半田付や溶接などで電気接続されている。一方、制御回路基板6の他端部側には、通電端子71の一端部を駆動回路基板5側に通すための切欠部63が形成されている。この切欠部63の両側にはコネクタ7の信号端子,通信端子の一端部が挿通されて電気接続されている。
【0027】
したがって、マイコン61は、コネクタ7の信号端子,通信端子を通じて外部から入力される情報(例えば操舵トルク、車速信号など)やホール素子62の検出信号に基づき駆動トランジスタ52を制御する。
【0028】
さらに、制御回路基板6の左右の縁部には貫通孔群が形成され、これらの貫通孔に挿通された固定ねじの軸部がケース3の基板固定部の雌ねじ孔に締結される。
【0029】
制御回路基板6は、
図3に例示したように多層プリント配線基板の態様を成し、第一内層81の両面に第二内層82を有しこの第二内層82にさらに表層83が配置されている。
【0030】
第一内層81は、いわゆるグランド層であり、具体的には、制御回路基板6に実装された電気回路の共通の電源や、接地電位、シールド等のための共通の基準として用いられる配線層として機能する。
【0031】
第二内層82は、いわゆる信号層であり、具体的には信号線を有する配線層として機能する。本実施形態の第二内層82は、例えば、マイコン61とホール素子46と間で電気信号を伝えるための配線として機能し、より具体的には、マイコン61が実装された一方の表層83と、ホール素子46が実装された他方の表層83とを、層間接続によって電気的に接続させる。
【0032】
表層83は、最も外側に配置されたいわゆる配線層であり、外装回路として機能する。本実施形態の表層83は、表面実装型の電子部品(例えば、マイコン61、ホール素子46)を搭載するための接続端子や、挿入部品を搭載するためのランド等に加え、これらの接続端子やランドを電気的に接続するための配線(信号線)を有している。
【0033】
また、
図4(a)(b)に示したように、第一内層81においては、制御回路基板6に実装されたホール素子46の実装位置に対応した部位の内層81aがその周囲の内層81bと間隙84をもって分離して形成されている。内層81aの設置面積は、ホール素子62の実装面積よりも大きく且つホール素子62の近傍周囲以内に設定されている。
【0034】
以上の第一内層81、第二内層82、表層83を有する制御回路基板6は周知の多層プリント配線基板の製造方法によって製造できる。
【0035】
本実施形態の電子制御装置1が電動パワーステアリング装置に適用された事例における同装置1の動作例について説明する。
【0036】
ステアリングホィールが操作されてステアリングシャフトがいずれかの方向へ回動すると、このステアリングシャフトの回動方向と回動トルクとがトルクセンサによって検出される。制御回路基板6の制御回路は、前記トルクセンサ並びにホール素子46の検出値に基づき、操舵力を補助する電動モータの駆動操作量を算出する。駆動回路基板5の駆動トランジスタ52は前記演算された駆動操作量の値に基づく制御信号に基づき前記電動モータを駆動させる。
【0037】
この電子制御装置1の動作時に、
図2に示した駆動回路基板5に実装された駆動素子、スイッチング素子等の駆動トランジスタ52や駆動回路からは磁界が発生し、その磁気が制御回路基板6側に放射される。制御回路基板6に放射された磁気は第一内層81(グランド層)を介して例えば電子制御装置1の筐体(ケース3,カバー4)等に接地されるが、一部の磁気はホール素子62側に廻りこむ。
【0038】
ホール素子62の実装位置に対応した内層81の部位においては、
図3に示したように、内層81aがその周囲の内層81bと間隙84をもって離間しているので、ホール素子62への磁気の入射が遮断される。一方、内層81aにおいては制御回路基板6の外部から入射された磁気を反射するので、ホール素子62への磁気の入射が遮断される。
【0039】
以上のように、駆動回路基板5の動作時に発生した磁界によるホール素子62への影響を低減させることができる。これにより、駆動回路基板5の駆動によって発生した磁界によるホール素子62の測定ノイズが軽減し、前記電動モータの運転精度の維持が図れる。
【0040】
以上の本実施形態の制御回路基板6によれば、その内層81領域、特にグランド層領域において外部から入射した磁界を遮蔽できるので、駆動回路基板5や制御回路基板6に対して磁気遮蔽板を付帯させることなく、ホール素子62への磁気の影響を低減できる。また、磁気を遮蔽するためのランドパターンを新たに追加する必要がないので、周知の多層プリント配線基板の製造方法によって製造できる。
【0041】
したがって、ホール素子62を実装した制御回路基板6の電子制御装置1の大型化を回避しつつホール素子62に対する外部からの磁気の影響を低コストに低減できる。
【0042】
特に、制御回路基板6の内層81aはその設置面積がホール素子62の実装面積よりも大きく且つホール素子62の近傍周囲以内に設定されているので、磁気を確実に遮蔽できる。
【0043】
尚、内層81aを内層81bの材料よりも強磁性の材料によって構成すると、内層81aにおいて磁気の反射性能が高まり、ホール素子62に対する磁気の遮蔽効果がさらに向上する。
【0044】
以上説明した本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…電子制御装置
6…制御回路基板(回路基板)
62…ホール素子(磁気保護対象の電子部品)
81…第一内層、81a…内層、81b…内層
82・・・第二内層
83…表層