特許第6418880号(P6418880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418880
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
   A63B37/00 412
   A63B37/00 618
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-205402(P2014-205402)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-73423(P2016-73423A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192844
【氏名又は名称】神東塗料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩和
(72)【発明者】
【氏名】八木 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松山 悦子
(72)【発明者】
【氏名】横田 政利
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−040357(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0148445(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/099256(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターと前記センターを被覆するn層(nは、1以上の自然数)の包囲層とを有するゴルフボールであって、前記包囲層の少なくとも一層が、ポリウレタンを主成分とするポリウレタン包囲層であり、前記ポリウレタン包囲層と、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材とが、ウレタンポリオールとエポキシ樹脂とを含有する主剤と、ポリアミン化合物を含有する硬化剤とを含有し、主剤中のウレタンポリオールの含有率が5質量%以上、40質量%未満である接着用樹脂組成物により接着されており、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材が、アイオノマー樹脂を含有するセンターまたは包囲層であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記接着用樹脂組成物のゲル分率が、40質量%以上、80質量%以下である請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記主剤中のエポキシ基と硬化剤中のアミノ基との当量比(エポキシ基/アミノ基)が、0.5〜2.0である請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記接着用樹脂組成物は、揮発成分を含有し、揮発成分中の水の含有率が80質量%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記主剤中のウレタンポリオールの含有率は、7質量%以上、30質量%未満である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記ポリウレタン包囲層と隣接する構成部材との接着強度が、8N以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関するものであり、より詳しくは、ゴルフボールを構成する構成部材間の密着性の改良技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアと、前記コアを被覆する中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有し、前記中間層が、アイオノマー樹脂から形成され、前記カバーが、ポリウレタンから形成されたゴルフボールが知られている。しかし、アイオノマー樹脂とポリウレタンとは、接着性が低く、得られるゴルフボールの耐久性や反発性が低下するという問題がある。ゴルフボールを構成する部材間の接着性を改良する技術として、例えば、特許文献1〜4がある。
【0003】
特許文献1には、第一層と、その材質が上記第一層の材質とは異なる第二層と、接着剤から形成されており、上記第一層と上記第二層との間に位置する接着層とを備えており、上記接着剤の基材ポリマーが、ポリアミン化合物を含有する硬化剤によってビスフェノールA型エポキシ樹脂が硬化されて得られる二液硬化型エポキシ樹脂であり、上記接着剤のゲル分率が40%以上80%以下であるゴルフボールが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ソリッドコアと該ソリッドコアに内層と外層とからなる2層構造のカバーを被覆してなるマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記内層カバー上に熱可塑性樹脂を主材とする接着剤層を形成し、この接着剤層上に外層カバーを積層してなると共に、内層カバーが少なくとも15重量%のα,β−不飽和カルボン酸を含むアイオノマー樹脂を主材とし、外層カバーがアイオノマー樹脂を含まない熱可塑性エラストマーを主材としてなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールが開示されている。前記接着剤としては、オレフィン系化合物にグリシジルメタクリレート又は有機酸をグラフト共重合又はランダム共重合させた重合体が例示されている。
【0005】
特許文献3には、球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置する補強層と、この補強層の外側に位置するカバーとを備えており、この中間層の基材ポリマーの主成分がアイオノマー樹脂であり、この中間層の、ショアD型硬度計で測定された硬度Hmが55以上であり、このカバーの基材ポリマーの主成分が熱可塑性ポリウレタンエラストマーであり、このカバーの厚みTcが0.6mm以下であり、このカバーの、ショアD型硬度計で測定された硬度Hcが54以下であり、このカバーの厚みTcに対する補強層の厚みTrの比(Tr/Tc)が0.005以上3.0以下であるゴルフボールが開示されている。
【0006】
特許文献4には、球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置する補強層と、この補強層の外側に位置するカバーとを備えており、この中間層の厚みTmが0.5mm以上1.7mm以下であり、このカバーの基材ポリマーの主成分がアイオノマー樹脂であり、このカバーの、ショアD型硬度計で測定された硬度Hcが56以上65以下であり、このカバーの厚みTcが1.0mm以下であるゴルフボールが開示されている。前記補強層の基材ポリマーとしては、カルボキシル基含有ポリウレタンとポリカルボジイミドとの反応生成物が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−40357号公報
【特許文献2】特開平11−137725号公報
【特許文献3】特開2006−34745号公報
【特許文献4】特開2006−289059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4に開示の技術では、ポリウレタンを含有する構成部材に対する密着性が十分とは言えず、ゴルフボールの耐久性が低下する問題点があった。特に、ポリウレタンを含有するカバーの膜厚が薄くなると、耐久性の低下が顕著になりやすい傾向があった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、ゴルフボールにおいて、ポリウレタンを含有する構成部材に対する密着性を改善することにより、耐久性が向上したゴルフボールを提供することを目的とする。特に、アイオノマー樹脂を含有する構成部材とポリウレタンを含有する構成部材との密着性を向上させることにより、耐久性が向上したゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴルフボールは、センターと前記センターを被覆するn層(nは、1以上の自然数)の包囲層とを有するゴルフボールであって、前記包囲層の少なくとも一層が、ポリウレタンを主成分とするポリウレタン包囲層であり、前記ポリウレタン包囲層と、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材とが、ウレタンポリオールとエポキシ樹脂とを含有する主剤と、ポリアミン化合物を含有する硬化剤とを含有し、主剤中のウレタンポリオールの含有率が5質量%以上、40質量%未満である接着用樹脂組成物により接着されていることを特徴とする。
【0010】
本発明で使用する接着用樹脂組成物は、エポキシ樹脂に加えて、所定量のウレタンポリオールを含有する。前記接着用樹脂組成物は、ポリウレタンを含有する構成部材に対する密着性に優れる。その結果、得られるゴルフボールの耐久性が向上する。
【0011】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。前記主剤中のウレタンポリオールの含有率は、5質量%以上、40質量%未満であることが好ましい。前記主剤中のエポキシ基と硬化剤中のアミノ基との当量比(エポキシ基/アミノ基)が、0.5〜2.0であることが好ましい。
【0012】
前記接着用樹脂組成物のゲル分率が、40質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。前記接着用樹脂組成物は、揮発成分を含有し、揮発成分中の水の含有率が90質量%以上であることが好ましい。
【0013】
前記ポリウレタン包囲層と隣接する構成部材との接着強度が、8N以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴルフボールにおいて、ポリウレタンを含有する構成部材に対する密着性を改善できる。その結果、耐久性が向上したゴルフボールが得られる。さらに、本発明によれば、アイオノマー樹脂を含有する構成部材とポリウレタンを含有する構成部材との密着性を向上させることにより、耐久性が向上したゴルフボールが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴルフボールは、センターと前記センターを被覆するn層(nは、1以上の自然数)の包囲層とを有するゴルフボールであって、前記包囲層の少なくとも一層が、ポリウレタンを主成分とするポリウレタン包囲層であり、前記ポリウレタン包囲層と、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材とが、ウレタンポリオールとエポキシ樹脂とを含有する主剤と、ポリアミン化合物を含有する硬化剤とを含有し、主剤中のウレタンポリオールの含有率が5質量%以上、40質量%未満である接着用樹脂組成物により接着されていることを特徴とする。
【0016】
まず、本発明で使用する接着用樹脂組成物について説明する。本発明で使用する接着用樹脂組成物は、ウレタンポリオールとエポキシ樹脂とを含有する主剤と、ポリアミン化合物を含有する硬化剤とを含有し、前記主剤中のウレタンポリオールの含有率が5質量%以上、40質量%未満である。
【0017】
前記接着用樹脂組成物の主剤は、ウレタンポリオールとエポキシ樹脂とを含有する。前記ウレタンポリオールとは、分子内にウレタン結合を複数有し、一分子中に水酸基を2以上有する化合物である。ウレタンポリオールとしては、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、ポリオール成分の水酸基がポリイソシアネート成分のイソシアネート基に対して過剰になるような条件で反応させて得られるウレタンプレポリマーを挙げることができる。
【0018】
前記ウレタンポリオールを構成し得るポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ウレタンポリオールを構成するポリオール成分としては、分子量が500未満の低分子量ポリオールや平均分子量が500以上の高分子量ポリオールを挙げることができる。前記低分子量ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記高分子量のポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;および、アクリルポリオールなどが挙げられる。前記ポリオール成分は、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
【0020】
前記ウレタンポリオールの水酸基価は、50mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは60mgKOH/g以上、さらに好ましくは70mgKOH/g以上であり、500mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは450mgKOH/g以下、さらに好ましくは400mgKOH/g以下である。ウレタンポリオールの水酸基価が上記範囲内であれば、ゴルフボール構成部材への密着性が向上するからである。なお、本発明において、水酸基価は、JIS K 1557−1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
【0021】
前記ウレタンポリオールの重量平均分子量は、200以上が好ましく、より好ましくは250以上、さらに好ましくは300以上であり、50,000以下が好ましく、より好ましくは45,000以下、さらに好ましくは40,000以下である。ウレタンポリオールの重量平均分子量が上記範囲内であれば、塗膜の耐水性及び耐衝撃性を向上させることができる。なお、ウレタンポリオール成分の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
【0022】
主剤中の前記ウレタンポリオールの含有率は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、40質量%未満が好ましく、35質量%未満がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。主剤中のウレタンポリオールの含有率が、前記範囲内であれば、ポリウレタン包囲層と隣接する層との密着性が良好となるからである。その結果、ゴルフボールの耐久性が向上する。
【0023】
次に、本発明で使用するエポキシ樹脂について説明する。前記エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂や、ビスフェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0024】
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、分子内に2個超(好ましくは3個以上)のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂である。ノボラック型エポキシ樹脂を含有することにより、接着用樹脂組成物の硬化物の架橋密度を制御することができる。前記ノボラック型エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0025】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリン等のエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールFとエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。ビスフェノールAD型エポキシ樹脂は、ビスフェノールADとエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。可撓性が向上するという観点から、本発明で使用する接着用樹脂組成物の主剤は、エポキシ樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有することが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有することがより好ましい。
【0026】
前記主剤(溶媒なども含む)のエポキシ当量としては、1,400以上が好ましく、1,450以上がより好ましく、1,500以上がさらに好ましく、3,500以下が好ましく、3,450以下がより好ましく、3,400以下がさらに好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量が、前記範囲内であれば、塗膜の耐衝撃性および耐摩耗性が向上するからである。
【0027】
本発明の接着用樹脂組成物の硬化剤は、ポリアミン化合物を含有する。前記ポリアミン化合物の具体例としては、ポリアミドアミンまたはその変性物が挙げられる。ポリアミドアミンは、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基とを有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミドアミンは、重合脂肪酸とポリアミンの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油、及び、魚油などが挙げられる。ダイマー成分が90質量%以上であり、トリマー成分が10質量%以下であり、かつ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、キシレンジアミン、ポリエチレンジアミン及びポリオキシアルキレンジアミン並びにこれらの誘導体が例示される。
【0028】
接着用樹脂組成物は、例えば、ウレタンポリオール、エポキシ樹脂および溶媒を含む主剤と、ポリアミン化合物および溶媒を含む硬化剤とが混合されることで得られる。
【0029】
好ましい有機溶媒としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール及び酢酸エチルが例示される。有機溶媒は、単独、または、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0030】
接着用樹脂組成物は、揮発分として水を含んでいることが好ましい。揮発分との用語は、水及び有機溶媒の両方を意味する。揮発分の全量に対する水の量の比率Pwは、80質量%以上が好ましい。この比率Pwが80質量%以上である接着用樹脂組成物では、ゲル分率の制御が容易である。この観点から、この比率Pwは82質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。この比率Pwが100%であってもよい。環境の観点から、揮発分の全量に対する有機溶媒の量の比率Poは10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
前記接着用樹脂組成物のアセトンに対するゲル分率は、40質量%以上が好ましい。ゲル分率が40質量%以上である接着用樹脂組成物から形成される接着層は、揮発分が残存しにくいので、ほとんど気泡を含まない。前記接着用樹脂組成物は、包囲層を堅固に接着させる。この観点から、ゲル分率は45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0032】
前記接着用樹脂組成物のゲル分率は、80質量%以下が好ましい。ゲル分率が80質量%以下である接着用樹脂組成物は、包囲層の基材ポリマーと十分に反応する。この観点から、ゲル分率は、76質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
前記ゲル分率が40質量%以上80質量%以下の接着用樹脂組成物から形成された接着層は、カバーが薄いゴルフボールにおいて特に効果を発揮する。また、ゲル分率が40質量%以上80質量%以下である接着用樹脂組成物から形成された接着層は、カバーが軟質であるゴルフボールにおいて特に効果を発揮する。
【0034】
ゲル分率の測定では、主剤と硬化剤とが混合された直後に、接着用樹脂組成物がPB−137Tリン酸亜鉛処理鋼板に塗布される。この鋼板のサイズは、「150mm×70mm」である。この鋼板の厚みは、0.8mmである。この鋼板を40℃の環境下に24時間保持し、接着用樹脂組成物からなる塗膜を形成する。鋼板と塗膜とから試験片が得られる。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M1を算出する。この試験片をアセトンに浸漬し、24時間静置する。この試験片を105℃の環境下に1時間保持する。この試験片を23℃まで冷却する。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M2を算出する。ゲル分率Gは、下記の数式によって算出される。
G=(M2/M1)×100
【0035】
主剤のエポキシ基と、硬化剤のアミノ基との当量比(エポキシ基/アミノ基)は、0.5/1.0以上、2.0/1.0以下が好ましい。この比が0.5/1.0以上である接着用樹脂組成物では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着用樹脂組成物が包囲層を堅固に接着する。この観点から、この比は0.6/1.0以上がより好ましく、0.7/1.0以上がさらに好ましい。この比が、2.0/1.0以下ある接着用樹脂組成物では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着用樹脂組成物が、包囲層を堅固に密着する。この観点から、この比は、1.9/1.0以下がより好ましく、1.8/1.0以下がさらに好ましい。
【0036】
硬化剤のアミン活性水素当量は、100g/eq以上800g/eq以下が好ましい。この当量が100g/eq以上である接着用樹脂組成物では、ゲル分率が大きすぎない。従って、接着用樹脂組成物が、包囲層を堅固に接着する。この観点から、この当量は200g/eq以上がより好ましく、300g/eq以上がさらに好ましい。この当量が800g/eq以下である接着用樹脂組成物では、ゲル分率が小さすぎない。従って、接着用樹脂組成物がゴルフボールの構成部材を堅固に接着する。この観点から、この当量は600g/eq以下がより好ましく、500g/eq以下がさらに好ましい。
【0037】
本発明で使用する接着用樹脂組成物は、さらに着色剤(典型的には、二酸化チタン)、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
【0038】
接着層は、接着用樹脂成分が溶剤に溶解又は分散した液が、構成部材の表面に塗布されることで得られる。作業性の観点から、スプレーガンによる塗布が好ましい。塗布後に溶剤が揮発して、接着層が形成される。
【0039】
接着層の厚みは3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。接着層が容易に形成されるとの観点から、厚みは300μm以下、さらには100μm以下、さらには50μm以下、さらには20μm以下が好ましい。厚みは、ゴルフボールの断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により構成部材の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。
【0040】
本発明のゴルフボールは、センターと前記センターを被覆するn層(nは、1以上の自然数)の包囲層とを有するゴルフボールであって、前記包囲層の少なくとも一層が、ポリウレタンを主成分とするポリウレタン包囲層であり、前記ポリウレタン包囲層と、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材とが上述した接着用樹脂組成物で接着されている。なお、ゴルフボールの構成部材とは、センターもしくは包囲層を意味する。
【0041】
本発明のゴルフボールは、センターを被覆するn層の包囲層を有する。センターから順に、第1包囲層、第2包囲層・・・第n包囲層と称した時に、第n包囲層は、最外層であり、カバーに相当する。nは、1以上の自然数であれば、特に限定されず、1以上、4以下の自然数であることがより好ましい。第1包囲層から第n層は、ゴルフボールの構成により、外層コア、中間層、内層カバー、または、カバーと呼ばれる場合がある。本発明のゴルフボールの具体例としては、ツーピースゴルフボール(n=1)、スリーピースゴルフボール(n=2)、フォーピースゴルフボール(n=3)、ファイブピースゴルフボール(n=4)、シックスピースゴルフボール(n=5)を挙げることができる。
【0042】
本発明のゴルフボールは、前記包囲層の少なくとも一層が、ポリウレタンを主成分とするポリウレタン包囲層であり、前記ポリウレタン包囲層と、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材とが上述した接着用樹脂組成物で接着されている。前記ポリウレタン包囲層と、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材との接着強度は、8N以上が好ましく、12N以上がさらに好ましい。接着強度が前記範囲内であれば、前記ポリウレタン包囲層と、前記ポリウレタン包囲層に隣接する構成部材とが十分密着しており、ゴルフボールの耐久性が向上する。
【0043】
本発明で使用する接着用樹脂組成物は、ゴルフボールにおいて、アイオノマー樹脂を含有する層と、ポリウレタン包囲層の密着性を改善するのに好適に使用できる。すなわち、本発明のゴルフボールには、アイオノマー樹脂を含有する層と、ポリウレタン包囲層とを有するゴルフボールであって、前記アイオノマー樹脂を含有する層と、前記ポリウレタン包囲層とが、前記接着剤で接着されていることが好ましい。
【0044】
以下、本発明の具体的態様について説明する。ここで、第1包囲層〜第n−1包囲層のことを中間層と称し、最外包囲層(第n包囲層)のことをカバーと称する。本発明のゴルフボールの具体例としては、例えば、センターと前記センターを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、前記センターがアイオノマー樹脂を含有し、カバーがポリウレタンを含有し、前記センターとカバーとが前記接着用樹脂組成物で接着されている態様;センターと、前記センターを被覆する中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボールであって、前記中間層がアイオノマー樹脂を含有し、カバーがポリウレタンを含有し、前記中間層とカバーとが、前記接着用樹脂組成物で接着されている態様;センターと前記センターを被覆する二層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーを有するマルチピースゴルフボールであって、隣接する中間層の一方の層がアイオノマー樹脂を含有し、他方の層がポリウレタンを含有し、一方の層と他方の層とが前記接着用樹脂組成物で接着されている態様;センターと前記センターを被覆する二層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーを有するマルチピースゴルフボールであって、中間層の最外層がアイオノマー樹脂を含有し、カバーがポリウレタンを含有し、中間層の最外層とカバーとが前記接着用樹脂組成物で接着されている態様を挙げることができる。
【0045】
ポリウレタン包囲層の樹脂成分中のポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が最も好ましい。
【0046】
ポリウレタン包囲層に使用し得るポリウレタンは、分子鎖内にウレタン結合を複数有するポリマーであり、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。必要に応じて、さらに低分子量ポリオールや低分子量ポリアミンなどの鎖延長剤により鎖延長反応がなされていてもよい。
【0047】
前記ポリウレタンを構成するポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等の脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート等のうちの1種、または、2種以上の混合物などである。
【0048】
ポリウレタンを含有するカバーの場合、耐擦過傷性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。芳香族ポリイソシアネートを使用することにより、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られる。また、耐候性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、非黄変性のポリイソシアネート(TMXDI、XDI、HDI、HXDI、IPDI、H12MDI、NBDIなど)を使用することが好ましく、さらに好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用する。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)は剛直な構造を有しており、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られるからである。
【0049】
ポリウレタンを構成するポリオール成分としては、ヒドロキシル基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、鎖延長剤として使用される低分子量ポリオールやソフトセグメントを構成する重合体ポリオールなどを挙げることができる。低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。重合体ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられ、上述したポリオールの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。ポリウレタンを含有するカバーの場合、ポリウレタンを構成するポリオール成分は、ポリオキシテトラメチレングリコールであることが好ましい。
【0050】
重合体ポリオールの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、400以上であることが好ましく、より好ましくは1,000以上である。重合体ポリオールの数平均分子量が小さくなりすぎると、得られるポリウレタンが硬くなり、ゴルフボールの打球感が低下するからである。重合体ポリオールの数平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、10,000以下、より好ましくは8,000以下である。
【0051】
必要に応じてポリウレタンを構成し得るポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族系ポリアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式系ポリアミン、及び、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0052】
前記ポリウレタンのスラブ硬度は、ショアD硬度で5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましい。前記ポリウレタンのスラブ硬度が、ショアD硬度で5以上であれば、構成部材の形状を保つことができるからである。前記ポリウレタンのスラブ硬度は、ショアD硬度で、60以下が好ましく、55以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。前記ポリウレタンのスラブ硬度が、ショアD硬度で60以下であれば、得られるゴルフボールの打球感が良くなるからである。
【0053】
前記ポリウレタンの具体例としては、BASFジャパン社から市販されている「エラストランNY85A」、「エラストランNY90A」、「エラストランNY97A」、「エラストランNY585」など、大日精化工業社から市販されている「レザミンP4585LS」、「レザミンPS62490」などを挙げることができる。
【0054】
本発明のゴルフボールの包囲層に使用しうるアイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0055】
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
【0056】
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
【0057】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
【0058】
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
【0059】
本発明のゴルフボールの構成部材は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分を含有してもよい。他の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0060】
本発明のゴルフボールにおいて、第1包囲層から第n−1包囲層の各層の厚みについては、特に限定されず、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.2mm以上がさらに好ましく、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
【0061】
第n包囲層(最外層)の厚みは、3.0mm以下が好ましく、より好ましくは2.7mm以下、さらに好ましくは2.4mm以下、特に好ましくは2.0mm以下である。第n包囲層(最外層)の厚みが3.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記第n包囲層(最外層)の厚みは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.5mm以上である。第n包囲層(最外層)の厚みが0.3mm未満では、第n包囲層(最外層)の成形が困難になるおそれがあり、また、第n包囲層(最外層)の耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
【0062】
本発明のゴルフボールのセンターとしては、公知のゴム組成物(以下、単に「センター用ゴム組成物」という場合がある)を用いることが好ましい。前記センターは、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0063】
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。また、前記センター用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類、チオフェノール類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0064】
前記センター用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記センター用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間と2段階加熱することが好ましい。前記センターの形状は、球状であることが好ましい。
【0065】
前記球状センターの直径は、15mm以上が好ましく、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは30mm以上であり、41mm以下が好ましく、より好ましくは40mm以下、さらに好ましくは39mm以下である。前記センターの直径が、前記範囲内であれば、打球感が良く、反発性がより良好となるからである。
【0066】
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0068】
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
包囲層用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
【0069】
(2)耐久性
ツルーテンパー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、商品名「XXIO」 シャフト硬度:S ロフト角:11°)を取り付け、ヘッドスピードを45m/秒に設定した。各ゴルフボールを、恒温器にて23℃で12時間保管した。各ゴルフボールを恒温器から取り出した後、すみやかに打撃して、ゴルフボールが壊れるまでの繰り返し打撃回数を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12個ずつ行った。数値が大きいほど、ゴルフボールが耐久性に優れていることを示す。
【0070】
(3)接着強度
試験方法A:ゴルフボールから中間層とカバーからなる試験片を切り出す。試験片のサイズは『10mm×50mm』である。試験片の先端近傍にて、中間層をカバーから剥離させる。中間層を第一チャックに固定し、カバーを第二チャックに固定する。第一チャックに対して、第二チャックを相対的に移動させ、中間層からカバーを剥離させる。この剥離のときの力を測定する。測定には島津製作所の『オートグラフAG-IS』が用いられる。引張速度は、50mm/minである。
【0071】
(4)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0072】
[ゴルフボールの作製]
(1)センターの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、15分間加熱プレスすることにより、直径39.7mmの球状センターを得た。
【0073】
【表1】
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン、シス−1,4−結合含有量=96質量%、1,2−ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZNDA−90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺(登録商標)R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製
【0074】
(2)包囲層用組成物の調製
表2に示した配合材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の包囲層用組成物を調製した。中間層には、アイオノマー樹脂を含有する包囲層用組成物No.1を用い、カバーには、ポリウレタンを含有する包囲層用組成物No.2を用いた。包囲層用組成物No.1(中間層用組成物)の押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35、シリンダー温度140〜200℃で行った。包囲層用組成物No.2(カバー用組成物)の押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
【0075】
【表2】
ハイミランAM7329:三井デュポンケミカル社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
サーリン8945:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
エラストランNY85A:BASFジャパン社製ポリウレタンエラストマー
【0076】
(3)ゴルフボール本体の作製
(2)で得られた包囲層用組成物No.1を、(1)で得たセンター上に射出成形することにより、前記センターを被覆する中間層(厚み:1.0mm)を形成した。
【0077】
(4)接着層の作製
表3に示した接着用樹脂組成物を配合した。得られた接着用樹脂組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気で12時間保持して、接着層(厚み0.003mm)を形成した。なお、ゴルフボールNo.12は、接着用樹脂組成物を使用せずにゴルフボールを作製した。
【0078】
【表3】
【0079】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂1:日本エヌエスシー(株)製 エポルジョンHC-116
ビスフェノールA型エポキシ樹脂2:神東塗料(株)製 エポキシ樹脂
ウレタンポリオール:キング インダストリーズ社製 FLEXOREZ UD-350W
変性ポリアミドアミン1:(株)T&K TOKA製 トーマイドTXS-53-C
変性ポリアミドアミン2:(株)T&K TOKA製 トーマイドTXD-628
【0080】
(5)カバー(ポリウレタン包囲層)の作製
第n包囲層(カバー)は、前記で得た包囲層用組成物No.2を圧縮成形することにより形成した。ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状の包囲層用組成物No.2をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに一つずつ投入し、加圧した。圧縮成形は成形温度160℃、成形時間2分、成形圧力11MPaの条件で行った。中間層を形成した球体を、2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、キャビティ―面に多数のピンプルを備えた金型に投入して、圧縮成形によりカバー(厚み:0.5mm)を成形した。圧縮成形は成形温度150℃、成形時間3分、成形圧力13MPaの条件で行った。成形後の第n包囲層(カバー)には、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.8mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。
【0081】
ポリウレタン包囲層とアイオノマー樹脂を含有する包囲層との密着性について評価した結果を表3に示した。また、得られたゴルフボールの耐久性について評価した結果を、表3に併せて示した。表3の結果から、ウレタンポリオールとエポキシ樹脂とを含有する主剤と、ポリアミン化合物を含有する硬化剤とを含有し、主剤中のウレタンポリオールの含有率が5質量%以上、40質量%未満である接着用樹脂組成物を用いれば、ポリウレタン包囲層と、アイオノマー樹脂を含有する包囲層との接着強度が高くなることが分かる。また、前記接着用樹脂組成物を用いた本発明のゴルフボールは、耐久性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、アイオノマー樹脂を含有する構成部材と、ポリウレタンを含有する構成部材とを有するゴルフボールに好適である。