特許第6418893号(P6418893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418893
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】ズームレンズ及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/16 20060101AFI20181029BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   G02B15/16
   G02B13/18
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-214505(P2014-214505)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-80975(P2016-80975A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086818
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】梶山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 丈慶
(72)【発明者】
【氏名】中野 正嗣
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−002902(JP,A)
【文献】 特開2012−093548(JP,A)
【文献】 特開2003−329928(JP,A)
【文献】 特開2014−063026(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0300596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群を有し、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第2レンズ群は像側へ移動し、隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記第1レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1と、隣接して配置された正レンズLP2と負レンズLN2よりなるレンズ部LB2を有し、
前記第2レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP3と負レンズLN3よりなるレンズ部LB3を有し、
波長400nmでの材料の屈折率をN400、波長1050nmでの材料の屈折率をN1050、波長1700nmでの材料の屈折率をN1700とし、材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを
νIR=(N1050−1)/(N400−N1700)
θIR=(N400−N1050)/(N400−N1700)
なる式で定義し、
前記正レンズLP1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP1,θIRP1、前記負レンズLN1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN1,θIRN1、前記正レンズLP2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP2,θIRP2、前記負レンズLN2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN2,θIRN2、前記正レンズLP3の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP3,θIRP3、前記負レンズLN3の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN3,θIRN3とするとき、
0.000<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.015
−0.015<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<0.000
−0.005≦(θIRP3−θIRN3)/(νIRP3−νIRN3)<0.015
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記正レンズLP3と前記負レンズLN3は互いに接合されていることを特徴とする請求項に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記正レンズLP1と前記負レンズLN1は互いに接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
波長1050nmにおける前記第1レンズ群の焦点距離をF1M、波長1700nmにおける前記第1レンズ群の焦点距離をF1Lとするとき、
−0.005<(F1L−F1M)/F1M<0.005
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第1レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP4と負レンズLN4よりなるレンズ部LB4を有し、
波長486nmでの材料の屈折率をNF、波長587.6nmでの材料の屈折率をNd、波長656nmでの材料の屈折率をNcとし、材料のアッベ数νdを
νd=(Nd−1)/(NF−Nc)
なる式で定義し、
前記正レンズLP4の材料のアッベ数νdをνdP4、前記負レンズLN4の材料のアッベ数νdをνdN4とするとき、
65.0<νdP4
50.0<νdN4
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
波長1050nmにおける前記第1レンズ群の焦点距離をF1M、波長1050nmにおける望遠端における全系の焦点距離をFTMとするとき、
0.5<F1M/FTM<1.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群より構成され、広角端から望遠端へのズーミングに際して前記第3レンズ群は物体側へ移動することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
物体側から像側へ順に配置された、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群より構成され、広角端から望遠端へのズーミングに際して前記第4レンズ群は物体側へ移動することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
物体側から像側へ順に配置された、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群より構成され、広角端から望遠端へのズーミングに際して前記第4レンズ群は物体側へ移動することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群より構成され、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第2レンズ群は像側へ移動し、前記第3レンズ群は物体側へ移動し、隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記第1レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1と、隣接して配置された正レンズLP2と負レンズLN2よりなるレンズ部LB2を有し、
波長400nmでの材料の屈折率をN400、波長1050nmでの材料の屈折率をN1050、波長1700nmでの材料の屈折率をN1700とし、材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを
νIR=(N1050−1)/(N400−N1700)
θIR=(N400−N1050)/(N400−N1700)
なる式で定義し、
前記正レンズLP1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP1,θIRP1、前記負レンズLN1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN1,θIRN1、前記正レンズLP2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP2,θIRP2、前記負レンズLN2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN2,θIRN2とするとき、
0.000<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.015
−0.015<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<0.000
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項11】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群より構成され、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第2レンズ群は像側へ移動し、前記第4レンズ群は物体側へ移動し、隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記第1レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1と、隣接して配置された正レンズLP2と負レンズLN2よりなるレンズ部LB2を有し、
波長400nmでの材料の屈折率をN400、波長1050nmでの材料の屈折率をN1050、波長1700nmでの材料の屈折率をN1700とし、材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを
νIR=(N1050−1)/(N400−N1700)
θIR=(N400−N1050)/(N400−N1700)
なる式で定義し、
前記正レンズLP1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP1,θIRP1、前記負レンズLN1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN1,θIRN1、前記正レンズLP2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP2,θIRP2、前記負レンズLN2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN2,θIRN2とするとき、
0.000<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.015
−0.015<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<0.000
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のズームレンズと、該ズームレンズによって形成される像を受光する固体撮像素子を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はズームレンズに関し、特に、監視カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、放送用カメラ等の撮像装置に用いる撮像光学系として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置に用いられる撮像光学系は、高ズーム比で全系が小型のズームレンズであることが要望されている。例えば、監視カメラ用の撮像光学系は全系が小型で高ズーム比であること、また昼夜の撮影において良好な光学性能が得られるズームレンズであることが要望されている。
【0003】
一般的に監視カメラは、昼間の撮影には可視光を使用し、夜間の撮影には近赤外光を使用している。近赤外光を使用すると、例えば視界の良くない濃霧時においては可視光よりも散乱の影響が少ない状態で撮影することができるという特徴がある。そのため、監視カメラに使用されるズームレンズには、可視域から近赤外域までの広い波長域で収差補正されていることが要望されている。従来、高ズーム比で可視域から近赤外域にかけて諸収差を補正したズームレンズが知られている(特許文献1乃至3)。
【0004】
特許文献1では物体側から像側へ順に、正、負、正、正の屈折力の第1レンズ群乃至第4レンズ群よりなり、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズーム比18.73のズームレンズを開示している。
【0005】
特許文献2では物体側から像側へ順に、正、負、正の屈折力の第1レンズ群乃至第3レンズ群よりなり、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズーム比2.44のズームレンズを開示している。
【0006】
特許文献3では物体側から像側へ順に、正、負、正、正、正の屈折力の第1レンズ群乃至第5レンズ群よりなり、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズーム比5.92のズームレンズを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−053526号公報
【特許文献2】特開2013−88782号公報
【特許文献3】特開2013−171207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
監視カメラ用のズームレンズにおいて、夜間の撮影には多くの場合、近赤外光が利用される。しかしながら、新月近くの月明かりが非常に少ない場合や、月が雲に隠れている場合等、近赤外光において十分な光量を得られないことがある。一方で、太陽光によって大気中の水酸化イオンが励起された後、ナイトグローと呼ばれる光(ピーク波長1.6μm)が放出される。この光を利用すると、月明かりがない場合でも良好な撮影が容易となる。
【0009】
監視カメラ用のズームレンズにおいて、高ズーム比化を図りつつ可視領域から近赤外領域に至る広い波長範囲にわたり良好なる光学性能を得るには、ズームタイプ、各レンズ群のレンズ構成を適切に設定することが重要になってくる。例えば、物体側より像側へ順に、正、負、正の屈折力の第1レンズ群乃至第3レンズ群を有する3群以上のレンズ群よりなるズームレンズでは、第1レンズ群を構成するレンズや第2レンズ群を構成するレンズの材料を適切に設定することが重要になってくる。
【0010】
特許文献1のズームレンズは、高ズーム比であるものの、波長1.6μmの近赤外域まで収差補正が十分ではない。特許文献2及び特許文献3のズームレンズは、可視域から近赤外域までの軸上の収差は良好に補正されているが、ズーム比が低く、特に望遠端における全系の焦点距離が短いため、遠方の物体の特定が必ずしも十分ではない。
【0011】
本発明は、高ズーム比で、しかも可視域から近赤外域までの広い波長域の光に対して、良好な結像性能を備えたズームレンズの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群を有し、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第2レンズ群は像側へ移動し、隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記第1レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1と、隣接して配置された正レンズLP2と負レンズLN2よりなるレンズ部LB2を有し、
前記第2レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP3と負レンズLN3よりなるレンズ部LB3を有し、
波長400nmでの材料の屈折率をN400、波長1050nmでの材料の屈折率をN1050、波長1700nmでの材料の屈折率をN1700とし、材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを
νIR=(N1050−1)/(N400−N1700)
θIR=(N400−N1050)/(N400−N1700)
なる式で定義し、
前記正レンズLP1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP1,θIRP1、前記負レンズLN1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN1,θIRN1、前記正レンズLP2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP2,θIRP2、前記負レンズLN2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN2,θIRN2、前記正レンズLP3の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP3,θIRP3、前記負レンズLN3の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN3,θIRN3とするとき、
0.000<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.015
−0.015<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<0.000
−0.005≦(θIRP3−θIRN3)/(νIRP3−νIRN3)<0.015
なる条件式を満足することを特徴としている。
本発明の他のズームレンズは物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群より構成され、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第2レンズ群は像側へ移動し、前記第3レンズ群は物体側へ移動し、隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記第1レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1と、隣接して配置された正レンズLP2と負レンズLN2よりなるレンズ部LB2を有し、
波長400nmでの材料の屈折率をN400、波長1050nmでの材料の屈折率をN1050、波長1700nmでの材料の屈折率をN1700とし、材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを
νIR=(N1050−1)/(N400−N1700)
θIR=(N400−N1050)/(N400−N1700)
なる式で定義し、
前記正レンズLP1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP1,θIRP1、前記負レンズLN1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN1,θIRN1、前記正レンズLP2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP2,θIRP2、前記負レンズLN2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN2,θIRN2とするとき、
0.000<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.015
−0.015<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<0.000
なる条件式を満足することを特徴としている。
本発明の他のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群より構成され、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第2レンズ群は像側へ移動し、前記第4レンズ群は物体側へ移動し、隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記第1レンズ群は、隣接して配置された正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1と、隣接して配置された正レンズLP2と負レンズLN2よりなるレンズ部LB2を有し、
波長400nmでの材料の屈折率をN400、波長1050nmでの材料の屈折率をN1050、波長1700nmでの材料の屈折率をN1700とし、材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを
νIR=(N1050−1)/(N400−N1700)
θIR=(N400−N1050)/(N400−N1700)
なる式で定義し、
前記正レンズLP1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP1,θIRP1、前記負レンズLN1の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN1,θIRN1、前記正レンズLP2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRP2,θIRP2、前記負レンズLN2の材料のアッベ数νIRと部分分散比θIRを各々νIRN2,θIRN2とするとき、
0.000<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.015
−0.015<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<0.000
なる条件式を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高ズーム比で可視域から近赤外光全域にわたって諸収差を良好に補正した高い光学性能を有するズームレンズが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図
図2】(A)、(B) 実施例1のズームレンズの広角端と望遠端における諸収差図
図3】実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図
図4】(A)、(B) 実施例2のズームレンズの広角端と望遠端における諸収差図
図5参考例1のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図
図6】(A)、(B) 参考例1のズームレンズの広角端と望遠端における諸収差図
図7】実施例のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図
図8】(A)、(B) 実施例のズームレンズの広角端と望遠端における諸収差図
図9】本発明の監視カメラ(撮像装置)の要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のズームレンズ及びそれを有する撮像装置について説明する。本発明のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第2レンズ群は像側へ移動する。そして隣り合うレンズ群の間隔が変化する。
【0016】
図1は、本発明の実施例1のズームレンズの広角端(短焦点距離端)におけるレンズ断面図である。図2(A)及び(B)はそれぞれ、実施例1のズームレンズの広角端及び望遠端(長焦点距離端)における収差図である。実施例1のズームレンズの光学倍率は19.8倍(ズーム比19.8)で、収差補正された波長域は400nm〜1700nmである。
【0017】
図3は、本発明の実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。図4(A)及び(B)はそれぞれ、実施例2のズームレンズの広角端及び望遠端における収差図である。実施例2のズームレンズの光学倍率は14.6倍で、収差補正された波長域は400nm〜1700nmである。
【0018】
図5は、本発明の参考例1のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。図6(A)及び(B)はそれぞれ、参考例1のズームレンズの広角端及び望遠端における収差図である。参考例1のズームレンズの光学倍率は19.8で、収差補正された波長域は400nm〜1700nmである。
【0019】
図7は、本発明の実施例のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。図8(A)及び(B)はそれぞれ、実施例のズームレンズの広角端及び望遠端における収差図である。実施例のズームレンズの光学倍率は25.0で、収差補正された波長域は400nm〜1700nmである。
【0020】
図9は本発明の撮像装置の要部概略図である。各実施例と参考例に係るズームレンズは撮像装置に用いられる。レンズ断面図において、左方が物体側(前方)で右方が像側(後方)である。レンズ断面図において、G1は正の屈折力の第1レンズ群、G2は負の屈折力の第2レンズ群、G3は正の屈折力の第3レンズ群、G4は正の屈折力の第4レンズ群、G5は正の屈折力の第5レンズ群である。
【0021】
STOは解放Fナンバー(Fno)光束を決定(制限)する開口絞りの作用をするFナンバー決定部材(以下「開口絞り」ともいう。)である。CGは光学フィルター、フェースプレート、水晶ローパスフィルター、赤外カットフィルター等に相当する光学ブロックである。
【0022】
IMGは像面であり、ビデオカメラやデジタルスチルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が置かれる。矢印は広角端から望遠端へのズーミングに際しての各レンズ群の移動軌跡を示している。各実施例と参考例において、第1レンズ群G1を物体側へ繰り出すことで無限遠から近距離へのフォーカシングを行っている。
【0023】
収差図はミリメートル単位で示しており、球面収差図においては波長1700nm(1.70μm)、波長1050nm(1.05μm)、波長587nm(0.587μm)(d線)、波長435nm(0.435μm)(g線)に関する収差を示している。非点収差図においては、mはd線のメリディオナル像面、sはd線のサジタル像面を表している。尚、以下の実施例において広角端と望遠端は変倍用レンズ群(第2レンズ群G2)が機構上で光軸上移動可能な範囲の両端に位置した時のズーム位置をいう。以下、断りがない限り、レンズ構成は物体側から像側へ順に配置されているものとして説明する。
【0024】
本発明のズームレンズは、物体側から像側へ順に正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3を有している。広角端から望遠端へのズーミングに際して、第2レンズ群G2は光軸にそって物体側から像側へ移動する。
【0025】
第1レンズ群G1は、隣接して配置された正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1と、隣接して配置された正レンズLP2よりなるレンズ群LB2を有している。波長400nmでの材料の屈折率をN400、波長1050nmでの材料の屈折率をN1050、波長1700nmでの材料の屈折率をN1700、材料のアッベ数νIRと材料の部分分散比θIRを
νIR=(N1050−1)/(N400−N1700)
θIR=(N400−N1050)/(N400−N1700)
なる式で定義する
【0026】
正レンズLP1の材料のアッベ数と部分分散比を各々νIRP1,θIRP1、負レンズLN1の材料のアッベ数と部分分散比を各々νIRN1,θIRN1とする。このとき、
0.000<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.015
・・・(1)なる条件式を満足する。
【0027】
条件式(1)は第1レンズ群G1が有する隣り合った正レンズLP1と負レンズLN1よりなるレンズ部LB1の各レンズの材料に関する。条件式(1)は正レンズLP1と負レンズLN1で波長400nmと波長1700nmにおける軸上色収差を補正した場合に発生する波長1050nmにおける軸上色収差の2次スペクトルの指標を表している。
【0028】
一般的な材料よりなる正レンズと負レンズよりなる1対のレンズ部を用いて軸上色収差を補正する条件式(1)で示す軸上色収差の2次スペクトルの指標は負の値を持っている。そのため、一般的な材料で軸上色収差を補正したレンズ群G1に条件式(1)を満たすような正レンズLP1と負レンズLN1よりなる1対のレンズ部LB1を配置することにより、軸上色収差の2次スペクトルが打ち消しあう。そして可視域から近赤外域の広い波長域にわたって軸上色収差を良好に補正している。
【0029】
各実施例と参考例において更に好ましくは次の条件式の1つ以上を満足するのが良い。第1レンズ群G1は、隣接して配置された正レンズLP2と負レンズLN2よりなるレンズ部LB2を有する。正レンズLP2の材料のアッベ数と部分分散比を各々νIRP2,θIRP2、負レンズLN2の材料のアッベ数と部分分散比を各々νIRN2,θIRN2とする。第2レンズ群G2は、隣接して配置された正レンズLP3と負レンズLN3よりなる1対のレンズ部LB3を有する。
【0030】
正レンズLP3の材料のアッベ数と部分分散比を各々νIRP3,θIRP3、負レンズLN3の材料のアッベ数と部分分散比を各々νIRN3,θIRN3とする。波長1050nmにおける第1レンズ群の焦点距離をF1M、波長1700nmにおける第1レンズ群の焦点距離をF1Lとする。第1レンズ群G1は隣接して配置された正レンズLP4と負レンズLN4よりなるレンズ部LB4を有する。波長486nmでの材料の屈折率をNF、波長587.6nmでの材料の屈折率をNd、波長656nmでの材料の屈折率をNc、材料のアッベ数νdを
νd=(Nd−1)/(NF−Nc)
なる式で定義する
【0031】
正レンズLP4の材料のアッベ数をνdP4、負レンズLN4の材料のアッベ数をνdN4とする。波長1050nmにおける第1レンズ群G1の焦点距離をF1M、波長1050nmでの望遠端における全系の焦点距離をFTMとする。このとき次の条件式のうち1つ以上を満足するのが良い。
【0032】
−0.015<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<0.000
・・・(2)−0.005≦(θIRP3−θIRN3)/(νIRP3−νIRN3)<0.015
・・・(3)−0.005<(F1L−F1M)/F1M<0.005 ・・・(4)65.0<νdP4 ・・・(5)50.0<νdN4 ・・・(6)0.5<F1M/FTM<1.0 ・・・(7)
【0033】
次に前述の各条件式の技術的意味について説明する。条件式(2)は第1レンズ群G1に含まれる隣り合った正レンズLP2と負レンズLN2よりなる1対のレンズ部LB2の各レンズの材料に関する。条件式(2)の下限を下回ると、或いは上限を上回ると、第1レンズ群G1より発生する軸上色収差の2次スペクトルを補正するのが困難になり、結像性能が低下してくる。
【0034】
条件式(3)は、第2レンズ群G2に含まれる隣り合った正レンズLP3と負レンズLN3よりなる1対のレンズ部LB3の各レンズの材料に関する。条件式(3)の下限を下回ると、或いは上限を上回ると、第2レンズ群G2より発生する軸上色収差の二次スペクトルが増大し、ズーミングに際して色収差の変動が増大し、高ズーム比化が困難となる。
【0035】
条件式(4)は波長1050nmでの第1レンズ群G1の焦点距離F1Mと、波長1700nmでの第1レンズ群G1の焦点距離F1Lに関する。条件式(4)は第1レンズ群G1より発生する近赤外域の軸上色収差量を推定する指標である。条件式(4)の下限を下回ると或いは上限を上回ると、第1レンズ群G1より望遠端において軸上色収差の2次スペクトルが多く発生し、結像性能が低下してくる。
【0036】
条件式(5),(6)は第1レンズ群G1に含まれる隣り合った正レンズLP4と負レンズLN4よりなる1対のレンズ部LB4の各レンズの材料に関する。条件式(5),(6)の下限を下回ると、第1レンズ群G1より望遠端において軸上色収差が多く発生し、この収差の補正が困難となる。
【0037】
条件式(7)は波長1050nmでの第1レンズ群G1の焦点距離F1Mと、波長1050nmでの望遠端における全系の焦点距離F1Lとの比に関する。条件式(7)の下限を下回り、第1レンズ群G1の焦点距離が短くなりすぎると諸収差の補正が困難になる。また条件式(7)の上限を上回り、第1レンズ群G1の焦点距離が長くなりすぎると、レンズ全長が長くなり、全系の小型化が困難になる。
【0038】
以上により本発明によれば、可視域から近赤外域の広い波長域に亘って諸収差を良好に補正した、ズームレンズが得られる。
【0039】
各実施例と参考例において、更に好ましくは条件式(1)乃至(7)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
【0040】
0.002<(θIRP1−θIRN1)/(νIRP1−νIRN1)<0.014
・・・(1a)−0.010<(θIRP2−θIRN2)/(νIRP2−νIRN2)<−0.002
・・・(2a)−0.005≦(θIRP3−θIRN3)/(νIRP3−νIRN3)<0.010
・・・(3a)−0.003<(F1L−F1M)/F1M<0.004 ・・・(4a)70.0<νdP4 ・・・(5a)60.0<νdN4 ・・・(6a)0.6<F1M/FTM<0.9 ・・・(7a)
【0041】
本発明におけるズームレンズにおいては、前記隣り合った正レンズと負レンズよりなるレンズ部を接合レンズより構成すると、色収差をさらに良好に補正することが容易となる。また層数の多い広波長域用の反射防止膜が不必要になる。例えばレンズ部LB1は接合レンズよりなるのが良い。またレンズ部LB3は接合レンズよりなるのが良い。
【0042】
実施例1、参考例1のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群より構成される。そして広角端から望遠端へのズーミングに際して第2レンズ群は像側へ移動し、第4レンズ群は物体側へ移動する。参考例1においてレンズ部LB1とレンズ部LB4は同じである。参考例1においてレンズ部LB3は2つ有している。
【0043】
実施例2のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、正の屈折力の第3レンズ群より構成される。そして広角端から望遠端へのズーミングに際して第2レンズ群は像側へ移動し、第3レンズ群は物体側へ移動する。実施例2においてレンズ部LB1とレンズ部LB4は同じである。
【0044】
実施例のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群より構成される。そして広角端から望遠端へのズーミングに際して前記第2レンズ群は像側へ移動し、第4レンズ群は物体側へ移動する。実施例3においてレンズ部LB1とレンズ部LB4は同じである。
【0045】
次に各実施例と参考例のレンズ構成について説明する。
[実施例1]
実施例1のズームレンズのレンズ構成について説明する。実施例1のズームレンズは、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、所定の口径を決める開口絞りSTOと、正の屈折力の第3レンズ群G3と正の屈折力の第4レンズ群G4より構成される。第4レンズ群G4と像面IMGの間にはフィルターやプリズム等の光学ブロックCGが配置される。この光学ブロックCGに関しては、必要のない場合は省略可能である。
【0046】
第1レンズ群G1は、負の屈折力のレンズ(以下、単に負レンズと称する)L1と、正の屈折力(以下、単に正レンズと称する)レンズL2と、負レンズL3と、正レンズL4と、正レンズL5により構成され、負レンズL1と正レンズL2は接合されている。また負レンズL3と正レンズL4は接合されている。第2レンズ群G2は、負レンズL6と、負レンズL7と、正レンズL8と、負レンズL9により構成される。負レンズL7と正レンズL8は接合されている。
【0047】
第3レンズ群G3は、正レンズL10と、負レンズL11により構成されている。正レンズL10と負レンズL11は接合されている。第4レンズ群G4は、正レンズL12と、負レンズL13と、正レンズL14と、負レンズL15と、正レンズL16により構成されている。正レンズL12と負レンズL13は接合されている。また負レンズL15と正レンズL16は接合されている。正レンズL14の両レンズ面は非球面形状である。
【0048】
ズーミングに際して第2レンズ群G2及び第4レンズ群G4が光軸方向に移動する。具体的には、第2レンズ群G2を光軸上で移動させることで変倍が行われ、それに伴う像面の変動は第4レンズ群G4を移動させることで補正している。各条件式に関するレンズ部、レンズ等の値は表1に示すとおりである。
【0049】
[実施例2]
実施例2のズームレンズのレンズ構成について説明する。実施例2のズームレンズは、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、所定の口径を決める開口絞りSTOと、正の屈折力の第3レンズ群G3より構成される。第3レンズ群G3と像面IMGの間には光学ブロックCGが配置される。この光学ブロックCGに関しては、必要のない場合は省略可能である。
【0050】
第1レンズ群G1は、負レンズL1と、正レンズL2と、正レンズL3と、負レンズL4により構成されている。負レンズL1と正レンズL2は接合されている。また負レンズL3と正レンズL4は接合されている。第2レンズ群G2は、負レンズL5と、負レンズL6と、正レンズL7と、負レンズL8により構成される。負レンズL6と正レンズL7は接合されている。第3レンズ群G3は、負レンズL9と、正レンズL10と、負レンズL11と、正レンズL12と、正レンズL13と、負レンズL14により構成されている。負レンズL11と正レンズL12は接合されている。
【0051】
また正レンズ13と負レンズL14は接合されている。負レンズL9の両レンズ面は非球面形状である。ズーミングに際して第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3が光軸方向に移動する。具体的には、第2レンズ群G2を光軸上で移動させることで変倍が行われ、それに伴う像面の変動は第3レンズ群G3を移動させることで補正している。各条件式に関するレンズ部、レンズ等の値は表1に示すとおりである。
【0052】
参考例1
参考例1のズームレンズのレンズ構成について説明する。参考例1のズームレンズは、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、所定の口径を決める開口絞りSTOと、正の屈折力の第3レンズ群G3と正の屈折力の第4レンズ群G4より構成される。第1レンズ群G1は、負レンズL1と、負レンズL2と、正レンズL3と、正レンズL4により構成されている。負レンズL2と正レンズL3は接合されている。
【0053】
第2レンズ群G2は、負レンズL5と、負レンズL6と、正レンズL7と、負レンズL8と、正レンズL9により構成される。負レンズL6と正レンズL7は接合されている。また負レンズL8と正レンズL9は接合されている。負レンズL5の両レンズ面は非球面形状である。第3レンズ群G3は、正レンズL10と、負レンズL11により構成されている。正レンズL10と負レンズL11は接合されている。
【0054】
第4レンズ群G4は、正レンズL12と、負レンズL13と、正レンズL14と、負レンズL15と、正レンズL16により構成されている。正レンズL12と負レンズL13は接合されている。また負レンズ15と正レンズ16は接合されている。正レンズL14の両レンズ面は非球面形状である。ズーミングに際して第2レンズ群G2及び第4レンズ群が光軸方向に移動する。具体的には、第2レンズ群G2を光軸上で移動させることで変倍が行われ、それに伴う像面の変動は第4レンズ群G4を移動させることで補正している。各条件式に関するレンズ部、レンズ等の値は表1に示すとおりである。
【0055】
[実施例
実施例のズームレンズのレンズ構成について説明する。実施例のズームレンズは、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、所定の口径を決める開口絞りSTOと、正の屈折力の第3レンズ群G3と、正の屈折力の第4レンズ群G4と正の屈折力の第5レンズ群G5より構成される。第1レンズ群G1は、負レンズL1と、正レンズL2と、負レンズL3と、正レンズL4と、正レンズL5により構成されている。負レンズL1と正レンズL2は接合されている。また負レンズL3と正レンズL4は接合されている。
【0056】
第2レンズ群G2は、負レンズL6と、負レンズL7と、正レンズL8と、負レンズL9により構成される。正レンズL8と負レンズL9は接合されている。負レンズL6の両レンズ面は非球面形状である。第3レンズ群G3は、正レンズL10と、負レンズL11により構成されている。正レンズL10と負レンズL11は接合されている。第4レンズ群G4は、正レンズL12と、正レンズL13と、負レンズL14と、正レンズL15と、負レンズL16により構成されている。正レンズL13と負レンズL14は接合されている。
【0057】
また正レンズ15と負レンズ16は接合されている。正レンズL12の両レンズ面は非球面形状である。第5レンズ群G5は、正レンズL17と、負レンズL18により構成されている。正レンズL17と負レンズL18は接合されている。ズーミングに際して第2レンズ群G2及び第4レンズ群が光軸方向に移動する。具体的には、第2レンズ群G2を光軸上で移動させることで変倍が行われ、それに伴う像面の変動は第4レンズ群G4を移動させることで補正している。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、本実施例では波長400nm〜波長1700nmの波長範囲で色収差を補正したズームレンズを示したが、補正波長範囲を限定するものではなく上記補正波長範囲を狭くあるいは広くしたズームレンズにも同様に適用できる。また、各実施例と参考例ではズーミングに際して第1レンズ群G1は不動であるが、第1レンズ群G1を移動させる構成としても本発明の効果を得ることができる。
【0059】
以下、実施例1、2、参考例1、実施例3に対応する数値実施例1乃至4を示す。各数値実施例において面番号iは物体面から像面まで順に数えた光学面である。riは第i番目の光学面の曲率半径である。diは第i番目と第i+1番目の間隔である(符号は物体側から像面側へ測ったときを(光が近行するときを)正、逆方向を負としている)。Ndi、νdiはそれぞれ波長587.6nm(d線)に対する材料の屈折率とアッベ数を示している。焦点距離は波長587.6nmにおける値である。
【0060】
非球面の形状は、以下の式に示す一般的な非球面の式で表される。以下の式において、Zは光軸方向の座標、cは曲率(曲率半径rの逆数)、hは光軸からの高さ、kは円錐係数、A、B、C、D、Eは各々、4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数である。
【0061】
【数1】
【0062】
「E−X」は「10-X」を意味する。*面形状を有する面を意味している。また、前述
した各条件式と数値実施例との関係を表1に示す。
【0063】

(数値実施例1)
面データ
面番号 r d Nd νd
1 85.19 1.60 1.801 35.0
2 46.17 8.63 1.439 94.9
3 -141.97 0.15
4 -1041.53 1.00 1.613 44.3
5 41.22 6.20 1.717 47.9
6 -1706.01 0.15
7 50.51 4.00 1.497 81.5
8 156.26 d8
9 73.78 0.70 1.883 40.8
10 11.40 5.08
11 -21.86 0.75 1.497 81.5
12 11.46 4.54 1.801 35.0
13 -34.09 1.10
14 -16.89 1.00 1.439 94.9
15 20.25 d15
16(絞り)∞ 1.20
17 17.15 2.68 1.497 81.5
18 -20.35 1.00 1.648 53.0
19 -1352.33 d19
20 9.08 4.26 1.497 81.5
21 -12.32 0.70 1.772 49.6
22 81.27 0.80
23* 12.93 3.00 1.583 59.4
24* -12.30 0.15
25 -66.82 0.60 1.694 53.2
26 5.39 2.50 1.439 94.9
27 13.86 d27
28 ∞ 10.00 1.516 64.1
29 ∞ 1.33
【0064】
非球面データ
面番号
23 K=0.00E+00 A=-2.29E-04 B=-1.90E-06 C=-9.17E-08 D= 2.39E-09
E=0.00E+00
24 K=0.00E+00 A= 3.08E-04 B=-7.02E-06 C= 1.12E-07 D=-2.96E-10
E=0.00E+00

各種データ
広角端 中間 望遠端
焦点距離 4.8 21.4 95.1
Fno 1.8 3 3.5
像高 3 3 3

d8 0.15 29.67 44.04
d15 44.61 15.09 0.72
d19 15.91 9.35 0.15
d27 1.19 7.75 16.95
【0065】
(数値実施例2)
面データ
面番号 r d Nd νd
1 65.96 1.60 1.801 35.0
2 39.52 5.22 1.439 94.9
3 -160.57 0.15
4 33.18 6.44 1.497 81.5
5 -78.57 1.00 1.487 70.2
6 79.91 d6
7 901.89 0.75 1.883 40.8
8 11.99 4.31
9 -14.02 0.75 1.497 81.5
10 14.98 3.26 1.804 39.6
11 -14.98 0.42
12 -12.45 0.50 1.497 81.5
13 58.33 d13
14(絞り)∞ d14
15* 15.88 1.80 1.583 59.4
16* 14.70 0.15
17 11.56 4.87 1.497 81.5
18 -17.03 0.32
19 -491.32 1.00 1.583 59.4
20 6.37 4.17 1.497 81.5
21 38.61 2.00
22 58.10 2.02 1.497 81.5
23 -10.99 0.60 1.834 37.2
24 -23.37 d24
25 ∞ 8.00 1.516 64.1
26 ∞ 3.95
【0066】
非球面データ
面番号
15 K=0.00E+00 A=-4.45E-05 B=-2.95E-06 C=-5.59E-09 D=4.52E-10
E=0.00E+00
16 K=0.00E+00 A=5.95E-05 B=-2.53E-06 C=-9.19E-09 D=7.29E-10
E=0.00E+00

各種データ
広角端 中間 望遠端
焦点距離 6.5 24.8 95
Fno 3 3.25 3.5
像高 3 3 3

d6 0.89 23.35 36.39
d13 35.93 13.48 0.43
d14 13.22 7.06 0.17
d24 6.68 12.84 19.74
【0067】
(数値実施例3)
面データ
面番号 r d Nd νd
1 73.46 2.10 1.801 35.0
2 42.53 3.10
3 96.08 1.50 1.487 70.2
4 31.35 8.28 1.439 94.9
5 -164.50 0.15
6 36.39 7.09 1.497 81.5
7 -207.10 d7
8* -178.56 0.70 1.851 40.1
9* 12.08 4.72
10 -14.60 0.75 1.516 64.1
11 22.63 3.39 1.801 35.0
12 -14.98 0.78
13 -11.25 0.50 1.439 94.9
14 8.04 3.40 1.487 70.2
15 36.87 d15
16(絞り)∞ 1.20
17 20.03 3.33 1.497 81.5
18 -17.42 1.00 1.618 63.3
19 -211.26 d19
20 10.47 4.22 1.497 81.5
21 -12.69 0.70 1.772 49.6
22 78.70 1.30
23* 18.75 2.83 1.583 59.4
24* -12.94 0.15
25 230.54 0.60 1.772 49.6
26 6.95 3.50 1.439 94.9
27 21.7261 d27
【0068】
非球面データ
面番号
8 K=0.00E+00 A= 2.76E-04 B=-4.38E-06 C= 4.18E-08 D=-1.39E-10
E=0.00E+00
9 K=0.00E+00 A= 2.53E-04 B=-1.18E-06 C=-4.29E-08 D= 1.00E-09
E=0.00E+00
23 K=0.00E+00 A=-1.82E-04 B=-1.95E-06 C=-2.37E-08 D= 1.50E-09
E=0.00E+00
24 K=0.00E+00 A= 1.72E-04 B=-4.03E-06 C= 5.88E-08 D= 3.02E-10
E=0.00E+00

各種データ
広角端 中間 望遠端
焦点距離 4.8 21.4 95
Fno 2 3.25 4
像高 3 3 3

d7 0.15 29.32 45.52
d15 45.76 16.60 0.40
d19 11.81 4.73 0.15
d27 11.99 19.07 23.65
【0069】
(数値実施例4)
面データ
面番号 r d Nd νd
1 77.99 1.60 1.801 35.0
2 48.52 6.58 1.439 94.9
3 903.39 0.15
4 208.20 1.00 1.516 64.1
5 37.89 7.58 1.497 81.5
6 -949.09 0.15
7 45.28 5.50 1.497 81.5
8 274.35 d8
9* -234.03 0.70 1.851 40.1
10* 8.84 6.06
11 -16.52 0.50 1.439 94.9
12 39.80 0.15
13 22.91 4.54 1.801 35.0
14 -15.26 0.75 1.497 81.5
15 31.22 d15
16(絞り)∞ 1.20
17 19.96 2.56 1.497 81.5
18 -14.75 1.00 1.772 49.6
19 -55.45 d19
20* 11.33 3.09 1.439 94.9
21* -18.04 0.46
22 20.19 4.91 1.497 81.5
23 -9.45 0.70 1.801 35.0
24 -226.97 1.30
25 -48.64 2.11 1.583 59.4
26 -6.07 1.00 1.487 70.2
27 5.74 d27
28 12.99 2.01 1.603 65.4
29 -5.73 0.90 1.772 49.6
30 -19.76 2.08
【0070】
非球面データ
面番号
9 K=0.00E+00 A= 8.70E-05 B=-7.26E-07 C= 1.87E-09 D= 1.89E-12
E=0.00E+00
10 K=0.00E+00 A= 2.69E-05 B=-4.72E-07 C= 1.44E-08 D=-4.97E-10
E=0.00E+00
20 K=0.00E+00 A=-4.67E-05 B=-9.48E-07 C=-8.32E-09 D= 0.00E+00
E=0.00E+00
21 K=0.00E+00 A= 9.06E-05 B=-1.63E-06 C= 1.02E-08 D= 0.00E+00
E=0.00E+00

各種データ
広角端 中間 望遠端
焦点距離 4 20 100
Fno 1.8 3 3.5
像高 3 3 3
d8 0.21 30.34 46.16
d15 47.24 17.11 1.29
d19 16.56 9.12 0.15
d27 2.32 9.76 18.73
【0071】
【表1】
【0072】
次に本発明のズームレンズを撮影光学系として用いた監視カメラ(撮像装置)の実施例を、図9を用いて説明する。図9において、30は監視カメラ本体、31は実施例1乃至4で説明したいずれかのズームレンズによって構成された撮影光学系である。32はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系31によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。
【0073】
33は固体撮像素子32によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリである。34は撮影した32によって光電変換された被写体像を転送するためのネットワークケーブルである。
【符号の説明】
【0074】
G1:第1レンズ群 G2:第2レンズ群 G3:第3レンズ群
G4:第4レンズ群 G5:第5レンズ群 STO:絞り
IMG:像面 CG:フィルター等のガラスブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9