特許第6418923号(P6418923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418923
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】管更生工法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20181029BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20181029BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20181029BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20181029BHJP
   E02B 5/02 20060101ALI20181029BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   E03F7/00
   F16L1/00 P
   E03F3/04 Z
   E21D11/04 Z
   E02B5/02 U
   F16L55/18 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-243642(P2014-243642)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-108723(P2016-108723A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】592057385
【氏名又は名称】株式会社湘南合成樹脂製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】神山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 武司
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−077261(JP,A)
【文献】 特開昭62−202140(JP,A)
【文献】 特開2008−030241(JP,A)
【文献】 特開平09−296501(JP,A)
【文献】 米国特許第03695044(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
E02B 5/00−7/18
E02B 8/00,8/06−8/08
E02C 1/00−5/02
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
F16L 51/00−55/48
F16L 1/00−1/26
F16L 5/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面板と、該内面板の周方向に延びる両側に立設された側板と、内面板の管長方向に延びる両端に立設された端板とからなるプラスチックでできた一体成形のセグメントを周方向並びに管長方向に連結して更生管を組み立て既設管を更生する管更生工法であって、
前記既設管の湾曲部の更生に、内面板、側板、端板がいずれも矩形の直方体形状のセグメントが複数用いられ、
前記湾曲部において、前記直方体形状の複数のセグメントが、各セグメントの端板間に間隔保持部材を介在させて周方向に連結され、該湾曲部の更生が行われ、
前記間隔保持部材が、直方体形状のセグメントの端板と当接する第1の当接面と、該第1の当接面と反対側にある直方体形状のセグメントの端板と当接する第2の当接面を有し、両当接面は所定の角度をなして交わる傾斜面となっていることを特徴とする管更生工法。
【請求項2】
前記間隔保持部材の両当接面なす傾斜角は、既設管の湾曲部の曲率並びに直方体形状のセグメントの周方向長さに基づいて決められることを特徴とする請求項に記載の管更生工法。
【請求項3】
前記直方体形状のセグメントの端板の内面部側の下方部に、管長方向に全体に渡って延びる凹部と凸部が形成され、前記端板と当接する間隔保持部材の第1あるいは第2の当接面には、該端板に形成された凹部と凸部に嵌合する凸部と凹部が管長方向に全体に渡って形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の管更生工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面を構成する内面板と、該内面板の周縁に立設された側板並びに端板とをプラスチックによって一体に形成したセグメントを周方向並びに管長方向に連結して組み立て既設管を更生する管更生工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、該管路を地中から掘出することなく、その内周面にライニングを施して該管路を補修する管ライニング工法が提案され、既に実用に供されている。
【0003】
上記管ライニング工法は、例えば管状樹脂吸収材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸せしめて構成される管ライニング材を流体圧によって管路内に反転させながら挿入し、該管ライニング材を流体圧によって管路の内周壁に押圧したまま、管ライニング材を任意の方法によって加熱してこれに含浸された熱硬化性樹脂を硬化させることによって、管路内にプラスチックパイプを形成して管路を補修する工法である。
【0004】
また、内周面を構成する内面板と、該内面板の周縁に立設された側板並びに端板とをプラスチックによって一体に形成したセグメントを周方向に連結して管ユニットを組み立て、該管ユニットを管長方向に連結して成る更生管を用いて管路を更生する工法も知られている(特許文献1)。大口径の管路に対しては、この工法が使用され、既設管内に更生管を組み立てた後、既設管と更生管の間の空間にグラウトなどの充填材を充填して硬化させ複合管が構築される。
【0005】
更生管を現場に設置する際に、既設管の施工誤差に対応させたり、あるいは他の構造物との取り合いのために更生管の管径を規格の寸法より少しだけ大きくしたい場合がある。そのため、セグメントを周方向に連結するとき、セグメント間に拡径部材を介在させて組み立て、更生管の管径を拡大することが行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−12803号公報
【特許文献2】特開2014−77261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
断面が円形の既設管を更生する場合には、既設管の円に対応して円を等分割した円弧状のセグメントが用いられ、あるいは、断面が矩形の既設管を更生する場合には、矩形の四辺に対しては直方体セグメントが、また4隅には、その形状に対応して屈曲した屈曲セグメントが用いられる。
【0008】
既設管に所与の曲率で湾曲する部分があるとき、その曲率に合った規格の円弧セグメントがあれば、それを用いて管路を更生することができるが、曲率が異なるごとに、それに合った円弧状セグメントを作製することはコストを上昇させる要因になる。
【0009】
従って、既設管の湾曲部の曲率に合った円弧状セグメントがない場合には、その曲率に近い規格の円弧状セグメントを用いることになるが、円弧状のセグメントを周方向に連結するほど、既設管との隔たりが大きくなるという問題がある。そこで、特許文献2に示されるような、拡径部材を介在させてセグメントを連結することが考えられる。しかし、特許文献2は、セグメントを周方向に連結したときの形成される管ユニットの径を拡大させるもので、異なる既設管の湾曲部に合わせるものではない。
【0010】
そこで、本発明は、既設管の湾曲部を効果的かつ安価に更生することができる管更生工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
内面板と、該内面板の周方向に延びる両側に立設された側板と、内面板の管長方向に延びる両端に立設された端板とからなるプラスチックでできた一体成形のセグメントを周方向並びに管長方向に連結して更生管を組み立て既設管を更生する管更生工法であって、
前記既設管の湾曲部の更生に、内面板、側板、端板がいずれも矩形の直方体形状のセグメントが複数用いられ、
前記湾曲部において、前記直方体形状の複数のセグメントが、各セグメントの端板間に間隔保持部材を介在させて周方向に連結され、該湾曲部の更生が行われ、
前記間隔保持部材が、直方体形状のセグメントの端板と当接する第1の当接面と、該第1の当接面と反対側にある直方体形状のセグメントの端板と当接する第2の当接面を有し、両当接面は所定の角度をなして交わる傾斜面となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直方体形状の複数のセグメントを、各セグメントの端板間に間隔保持部材を介在させて周方向に連結させ、既設管の湾曲部を更生するようにしているので、既設管の湾曲部を効果的かつ安価に更生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】更生管の組み立てに使用されるセグメントの構造を示した斜視図である。
図2】(a)は図1に示したセグメントの一方の端板の正面図、(b)はその他方の端板の正面図である。
図3】(a)は間隔保持部材の正面図、(b)はその側面図である。
図4】管路に敷設された更生管の正面図である。
図5】種々の形状のセグメントを用いて更生管を組み立てる状態を示した説明図である。
図6】間隔保持部材を用いてセグメントを周方向に連結する工程を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を、添付図面に示す実施例に基づいて説明する。本発明は、下水管、上水管、トンネル、あるいは農業用水路などの大口径の既設管を更生あるいは修復するのに適しており、実施例では、既設管は、管長方向に直交する断面形状が、湾曲部並びに直線部を有する形状と説明される。しかし、それ以外の形状の既設管にも本発明を適用できることは勿論であり、更に、前記断面形状が管として閉じた形状でなく、例えば馬蹄形や半円形、凹字形など片側が開いた形状である場合にも管と見なして本発明を適用することができるものである。
【0015】
なお、本明細書において、管長方向とは、既設管ないし更生管が長さ方向に延びる方向をいい、周方向とは、管長方向に垂直な断面で既設管ないし更生管が描く閉曲線の周の方向をいう。
【実施例】
【0016】
図1には、既設管を更生する更生管の組立単位部材となる更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に内面板に対して垂直に立設された側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に内面板に対して垂直に立設された端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0017】
セグメント1は、内面板、側板、端板がいずれも矩形(平行四辺形)で、直方体形状のセグメントとなっている。しかし、既設管の断面形状に応じて、特許文献2に記載されているように、円周を複数等分する所定角度、例えば6等分する60度の円弧状に湾曲した円弧状セグメント、あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた湾曲セグメントも用いられる。
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、4個の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。
【0018】
内面板101、側板102、103、端板104、105、内部板106、107は、いずれも透明、半透明あるいは不透明な同じプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0019】
側板102、側板103、並びに内部板106には、セグメント1を管長方向に連結する連結具を通すための挿通穴102a、103a、106aが複数(4個)形成され、内部板107には、同連結具を通す切り欠き107aが複数(同じく4個)形成される。
【0020】
端板104は、図2(a)に示すように、側板102と側板103間に配置され、端板104には、セグメント1を周方向に連結するボルトなどの連結部材を通すための円形の挿通穴104aが複数(5個)形成され、また後述する間隔保持部材(スペーサ)の凸部と嵌合する凹部104bが2個形成される。更に、端板104の下方部には、間隔保持部材の凸部と凹部に嵌合する凹部104eと凸部104fが管長方向に全体に渡って形成される。
【0021】
端板105は、図2(b)に示したように、端板104と同様な形状であり、端板105には、連結部材を通すための円形の挿通穴105aが複数(5個)形成され、また間隔保持部材の凹部に嵌合する凸部105bが形成される。更に、端板105の下方部には、間隔保持部材の凹部と凸部に嵌合する凸部105eと凹部105fが管長方向に全体に渡って形成される。
【0022】
図3には、管路の湾曲部において直方体セグメントを用いて管更生を行うときに使用される間隔保持部材(スペーサ)120が図示されている。間隔保持部材120は、セグメント1と同様な材質であり、セグメント1の端板105と当接する当接面120aとその反対側の当接面120bは角度αをなして交わるような傾斜平面となっている。間隔保持部材120の下面には、連結されるセグメントの各側板、内部板の管長方向の位置に一致する突出部122、126、127、123が設けられ、セグメント1の端板104、105の挿通穴104a、105aに対応する挿通穴120iが複数形成される。
【0023】
また、間隔保持部材120の当接面120aには、セグメント1の端板105に形成された凸部105bと嵌合する凹部120cが、また当接面120bには、セグメント1の端板104に形成された凹部104bに嵌合する凸部120dが形成される。更に、当接面120aの上部には、セグメント1の端板105に形成された凸部105eと凹部105fと嵌合する凹部120eと凸部120fが管長方向に全体に渡って形成され、当接面120bの上部には、セグメント1の端板104に形成された凹部104eと凸部104fに嵌合する凸部120gと凹部120hが管長方向に全体に渡って形成される。
【0024】
以下に、図4図6を参照して、上述したセグメント並び、間隔保持部材を用いて異なる湾曲部がある更生管を既設管内に組み立てる方法を説明する。
【0025】
図4には、更生すべき既設管10が示されており、既設管10は、管長方向に直交する垂直断面で見て凹状に湾曲した湾曲部10a、10c、直線部10b、10d並びに屈曲部10e、10fを有している。
【0026】
湾曲部10aは、特許文献2に記載されたような、円を6等分する60度の円弧状に湾曲したセグメント3を用いて更生され、湾曲部10cは、湾曲部10aに比較して湾曲が僅かであり、図1に図示した直方体形状のセグメント1と隔保持部材120を用いて更生され、直線部10b、10dは、セグメント1と同様な直方体形状のセグメントで、周方向長さがセグメント1の約2倍のセグメント2を用いて更生され、また、湾曲部10e、10fは、端板がセグメント1の端板104、105と同じで、内面板、側板、内部板が直角に丸みを付けて折り曲げた形状のセグメント4を用いて更生される。
【0027】
図5は、各種セグメント1〜4を周方向並びに管長方向に連結する工程を一部のセグメントを取り出して説明している。
【0028】
図5の右側に示したように、上から順にセグメント3、2、2、4、1のそれぞれの端板を合わせ、ボルトとナットを用いて各セグメントを締め付けることによりこれらのセグメントが周方向に連結される。
湾曲部10cは、円弧曲率が大きく、規格の円弧状のセグメント3などでは、更生が困難であるので、図6に図示したように、直方体形状のセグメント1、1間に間隔保持部材120を介在させて周方向に連結し、湾曲部10cを更生するようにしている。
【0029】
図6(a)において、2つのセグメント1、1の端板104、105間に間隔保持部材120を挿入し、一方のセグメント1の側板104に形成された凹部104b、104e、凸部104fを、間隔保持部材120の当接面120bに形成された凸部120d、120g、凹部120hに位置合わせするとともに、他方のセグメント1の側板105に形成された凸部105b、105e、凹部105fを、間隔保持部材120の当接面120aに形成された凹部120c、120e、凸部120fに位置合わせする。
【0030】
続いて、図6(b)に図示したように、それぞれ位置合わせされた凸部とそれに対応する凹部を嵌合させ、2つのセグメント1、1の端板104、105と間隔保持部材120の当接面120b、120aをそれぞれ当接させる。その状態で、端板105の挿通穴105aから間隔保持部材120の挿通穴120i、端板104の挿通穴104aにボルト6を通して反対側のナット7に螺合させ、両セグメント1、1を締め付けることにより両セグメント1、1を周方向に連結する。
【0031】
図4に示す湾曲部10cの4つのセグメント1は、それぞれその間に間隔保持部材120を介在させて連結されるので、図4に拡大して示すように、セグメント1の側板102の上側(図4では下側)と湾曲部10c間の隙間が少なくなり、湾曲部10cの緩やかな円弧に対応した円弧状セグメントを周方向に連結したときに得られるのと同様な効果が得られる。
【0032】
なお、間隔保持部材120の当接面120aと120bのなす傾斜角αは、既設管の湾曲部の曲率、セグメント1の周方向長さなどで決めるようにする。例えば、湾曲部の曲率が大きく(曲率半径が小さく)湾曲度が大きい場合、あるいはセグメント1の周方向長さが長い場合には、それに応じて当接面120a、120bの傾斜を大きくし傾斜角αを大きくする。このようにすることにより、間隔保持部材を介して周方向に連結されたセグメントのなす湾曲を、湾曲部の湾曲により良好に合わせることが可能になる。
【0033】
このように、周方向に全てのセグメントを連結すると、図5の中央に図示したような周方向に連結されたリング状の管が得られる。そのリング状の管の各セグメントを既に周方向に連結が終わった図5の左に示すリング状の管のセグメントと管長方向に連結する。このような管長方向のセグメントの連結は、特許文献1、2に記載されたように、一方のセグメントに固定されたナットに、他方のセグメントからボルト状の連結具を螺合させ、両セグメントを締め付けることにより行われる。
【0034】
すべてのセグメントを管長方向に連結し、既設管10内に更生管を組み立てた後、既設管と更生管間の隙間にグラウトなどの充填材を注入し、固化させ、既設管と更生管からなる複合管を構築して、既設管の更生を終了する。
【0035】
なお、上述した間隔保持部材は、それを規格のセグメント間に介在させてセグメントを周方向に連結し組み立てられる更生管の管径を拡大させる拡径部材として用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1、2、3、4 セグメント
6 ボルト
7 ナット
10 既設管
101 内面板
102、103 側板
104、105 端板
106、107 内部板
120 間隔保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6