(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418981
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】操作用ハンドル及び当該操作用ハンドルのハンドル本体構造
(51)【国際特許分類】
E05B 79/06 20140101AFI20181029BHJP
F16B 21/18 20060101ALI20181029BHJP
F16D 1/06 20060101ALI20181029BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20181029BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20181029BHJP
E05B 85/12 20140101ALI20181029BHJP
E05B 77/36 20140101ALI20181029BHJP
【FI】
E05B79/06 A
F16B21/18 Z
F16D1/06 100
B60J5/04 H
B60J5/06 A
E05B85/12 Z
E05B77/36
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-41211(P2015-41211)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-160677(P2016-160677A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】池之谷 和人
(72)【発明者】
【氏名】征矢 浩司
【審査官】
小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】
実公平4−20135(JP,Y2)
【文献】
特許第4352742(JP,B2)
【文献】
米国特許第5131785(US,A)
【文献】
特開平10−274222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
B60J 5/04、5/06
F16B 21/18
F16D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体に連結されることで当該軸体の操作用の手掛けとなる操作用ハンドルにおいて、
前記軸体に外嵌する筒状の軸体保持部を備えるハンドル本体と、
基部を介して対向する一対の弾性脚を、前記軸体保持部に形成された一対のクリップ保持溝に挿入し、当該一対の弾性脚により軸体保持部を両側から挟持することで前記軸体保持部に装着されるとともに、前記一対の弾性脚が備える係止部が前記軸体保持部の内周壁よりも内方に延出する連結用クリップと、を有し、
前記クリップ保持溝は、前記連結用クリップの挿入方向に対して溝形状を変形させて、当該クリップ保持溝に挿入された前記弾性脚を溝形状に沿って弾性変形させる形状変形部を備えることを特徴とする操作用ハンドル。
【請求項2】
前記クリップ保持溝は、前記連結用クリップの挿入方向を基準に直線状に形成されるストレート領域と、前記ストレート領域に連続し当該ストレート領域に比して傾斜する勾配領域とで構成されることを特徴とする請求項1に記載された操作用ハンドル。
【請求項3】
前記クリップ保持溝は、前記連結用クリップの挿入方向の手前側に前記ストレート領域が設定され、前記連結用クリップの挿入方向の奥側に前記勾配領域が設定されることを特徴とする請求項2に記載された操作用ハンドル。
【請求項4】
前記形状変形部は、前記一対のクリップ保持溝のうち一方のクリップ保持溝に設定され、
前記一対のクリップ保持溝のうち他方のクリップ保持溝は、前記連結用クリップの挿入方向に対して溝形状を一様とする直線状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された操作用ハンドル。
【請求項5】
基部を介して対向する一対の弾性脚を備える連結用クリップにて軸体に連結される操作用ハンドルのハンドル本体構造において、
前記軸体の操作用の手掛けとなる本体部と、
前記軸体に外嵌する筒状の軸体保持部と、を有し、
前記軸体保持部は、
前記軸体保持部の外周面に形成された一対のクリップ保持溝を有し、当該一対のクリップ保持溝に前記一対の弾性脚が挿入されると、当該一対の弾性脚により前記軸体保持部が両側から挟持されて前記連結用クリップが装着されるとともに、前記一対の弾性脚が備える係止部が前記軸体保持部の内周壁よりも内方に延出しており、
前記クリップ保持溝は、前記連結用クリップの挿入方向に対して溝形状を変形させて、当該クリップ保持溝に挿入された前記弾性脚を溝形状に沿って弾性変形させる形状変形部を備えることを特徴とする操作用ハンドルのハンドル本体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作用ハンドル及びそのハンドル本体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スライドドアを備えた車両が知られている。この車両において、ドアインナパネルの所要の位置には、操作用ハンドルであるインサイドハンドルが設けられている。操作用ハンドルを後方へ引くように回動させることで、スライドドアが後方へとスライドし、スライドドアが開かれる。逆に、操作用ハンドルを前方へ押し出すように回動させることで、スライドドアが前方へとスライドし、スライドドアが閉じられる。
【0003】
操作用ハンドルは、ハンドル本体と、略U字形状の連結用クリップとで構成されており、室内側表面のトリム材より室内側に露出した軸体に連結される。具体的には、ハンドル本体には、軸体に外嵌する筒状の軸体保持部が形成されており、また、軸体保持部の外周面には一対のクリップ保持溝が形成されている。連結用クリップは、クリップ保持溝に挿入されると軸体保持部を両側から挟持し、これにより、軸体保持部に装着される。また、連結用クリップは、軸体保持部の内方へと入り込むように折り曲げ形成されており、軸体保持部に挿入される軸体の係止部を係止する。これにより、軸体からハンドル本体が抜けることを規制することができる。
【0004】
ところで、このような係止構造においては、クリップ保持溝の隙間において連結用クリップにがたつきが生じることがある。この場合、車両の振動に起因して軸体が動くと、連結用クリップも移動し、連結用クリップとクリップ保持溝とが干渉することで異音を発生させるという問題がある。
【0005】
例えば特許文献1には、連結用クリップとしてのスナップリングが開示されている。具体的には、ドライブシャフトの先端部には、シャフトの側面に溝部が形成される。スナップリングは、この溝部に取付けられ、ドライブシャフトのディファレンシャル機構部からの抜けを防止する役割を果たしている。スナップリングは、C形の形状を有し、捻り方向の変形が加えられて、一方の先端部と他方の先端部とが該リングの軸方向にずれた形状を有している。
【0006】
このような捻り変形を伴うスナップリングにおいては、溝部の側面をシャフトの軸方向に押付ける付勢力(ばね力)を生じさせることが可能になる。この結果、スナップリングをドライブシャフトの径方向にずらす力が作用した場合にも、ドライブシャフトの軸中心とスナップリングの中心とを合わせた状態を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−322518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、連結用クリップを予め変形させているため、クリップ保持溝への挿入時には、連結用クリップとクリップ保持溝とが干渉しないように上手く位置合わせを行う必要がある。そのため、連結用クリップの組み付け作業においては、微妙なさじ加減が要求されるため手作業で行うほかなく、製造装置を用いて自動化することが困難であった。これにより、組み付けコストがかかるばかりか、高い生産性を得ることができないという問題があった。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、連結用クリップの組み付け作業性に優れる操作用ハンドル及びそのハンドル本体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、軸体に連結されることで当該軸体の操作用の手掛けとなる操作用ハンドルを提供する。この操作用ハンドルは、軸体に外嵌する筒状の軸体保持部を備えるハンドル本体と、基部を介して対向する一対の弾性脚を、軸体保持部に形成された一対のクリップ保持溝に挿入し、当該一対の弾性脚により軸体保持部を両側から挟持することで軸体保持部に装着されるとともに、一対の弾性脚が備える係止部が軸体保持部の内周壁よりも内方に延出する連結用クリップと、を有している。そして、クリップ保持溝は、連結用クリップの挿入方向に対して溝形状を変形させて、当該クリップ保持溝に挿入された弾性脚を溝形状に沿って弾性変形させる形状変形部を備える。
【0011】
ここで、第1の発明において、クリップ保持溝は、連結用クリップの挿入方向を基準に直線状に形成されるストレート領域と、ストレート領域に連続し当該ストレート領域に比して傾斜する勾配領域とで構成されることが好ましい。
【0012】
また、第1の発明において、クリップ保持溝は、連結用クリップの挿入方向の手前側にストレート領域が設定され、連結用クリップの挿入方向の奥側に勾配領域が設定されることが好ましい。
【0013】
また、第1の発明において、形状変形部は、一対のクリップ保持溝のうち一方のクリップ保持溝に設定され、一対のクリップ保持溝のうち他方のクリップ保持溝は、連結用クリップの挿入方向に対して溝形状を一様とする直線状に形成されていることが好ましい。
【0014】
また、第2の発明は、基部を介して対向する一対の弾性脚を備える連結用クリップにて、軸体に連結される操作用ハンドルのハンドル本体構造を提供する。このハンドル本体構造は、軸体の操作用の手掛けとなる本体部と、軸体に外嵌する筒状の軸体保持部とを有している。軸体保持部は、軸体保持部の外周面に形成された一対のクリップ保持溝を有し、当該一対のクリップ保持溝に一対の弾性脚が挿入されると、当該一対の弾性脚により軸体保持部が両側から挟持されて連結用クリップが装着されるとともに、一対の弾性脚が備える係止部が軸体保持部の内周壁よりも内方に延出する。また、クリップ保持溝は、連結用クリップの挿入方向に対して溝形状を変形させて、当該クリップ保持溝に挿入された弾性脚を溝形状に沿って弾性変形させる形状変形部を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連結用クリップと軸体保持部のクリップ保持溝との当接力を増加させることができるので、連結用クリップのがたつきが抑制される。その結果、ハンドル本体の軸方向のずれを効果的に抑制することができる。また、形状を予め変形させた連結用クリップを用いる必要がないので、クリップ保持溝に対して連結用クリップを容易に挿入することができ、連結用クリップの組み付け作業を自動化することが可能となる。これにより、連結用クリップの組み付け作業性に優れる操作用ハンドルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る操作用ハンドルを示す斜視図
【
図7】操作用ハンドルの要部を拡大して示す左側面図
【
図8】
図7に示す操作用ハンドルのAA断面を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態に係る操作用ハンドル1を示す斜視図である。同図において、(a)は操作用ハンドル1を平面側から示す図であり、(b)は操作用ハンドル1を底面側から示す説明図である。操作用ハンドル1は、軸体に連結されることで当該軸体の操作用の手掛けとなるものであり、例えば、車両用スライドドアの開閉を行うために室内側に配設されるインサイドハンドルである。
【0018】
図2は、軸体5を示す説明図である。スライドドアの室内側表面には柔軟なトリム材(図示せず)が配置され、ドア本体内部に設けられた軸体5は、その先端部がトリム材より室内側に露出している。操作用ハンドル1は、軸体5に連結され、乗員により操作される。
【0019】
軸体5の先端部には、外周面にセレーションが加工されたセレーション部11が設けられている。また、軸体5の最先端には、テーパーが施されたテーパー部12が設けられている。さらに、セレーション部11の基端部には、円周方向に沿って凹状に形成されたクリップ嵌込溝13が設けられており、セレーション部11の基端部において軸体5の外径が段状に縮小する形状に設定されている。このような段違い形状により、後述する連結用クリップ4が係止するためのクリップ係止部14が形成される。
【0020】
操作用ハンドル1は、ハンドル本体2と、連結用クリップ4とを有しており、当該操作用ハンドル1は、ハンドル本体2に連結用クリップ4を装着して構成される。
【0021】
図3はハンドル本体2の底面図であり、
図4はハンドル本体2の要部を拡大して示す右側面図であり、
図5はハンドル本体2の要部を拡大して示す左側面図である。ハンドル本体2は、軸体5に外嵌され、スライドドアを開閉する際に手掛けとなるものである。
【0022】
ハンドル本体2は、当該ハンドル本体2の主要な部位をなす本体部20と、軸体5が挿入される軸体保持部30とで構成されている。ハンドル本体2は、例えば合成樹材を射出成型することにより所要の形状に形成されている。
【0023】
軸体保持部30は、本体部20の端部に位置付けられている。軸体保持部30は、筒状に形成されており、その先端部が本体部20よりも突出するように、本体部20の底面側に立設されている。軸体保持部30の内周壁31には、軸体5のセレーション部11と対応するセレーション溝32が形成されている。この軸体保持部30に軸体5を挿入することで軸体5と軸体保持部30とが嵌合する。この際、軸体5のセレーション部11と、内周壁31のセレーション溝32とが歯合することで、回転軸である軸体5に装着した際のハンドル本体2の空転が規制される。
【0024】
軸体保持部30の外周面には、連結用クリップ4を挿入して装着するための一対のクリップ保持溝33,34が形成されている。一対のクリップ保持溝33,34は、軸体保持部30の中心位置を挟んで対向する位置に、ハンドル本体2の長手方向に沿ってそれぞれ形成されている。本実施形態に係るハンドル本体2は、軸体保持部30が位置付けられる本体部20の端部側から、ハンドル本体2の長手方向に沿って連結用クリップ4を挿入する仕様となっている。
【0025】
第1クリップ保持溝33は、連結用クリップ4の挿入方向を基準に直線状に形成されている。第1クリップ保持溝33の中央部には、図中のハッチングで示すように、内周壁31の内方と貫通する貫通部33aが形成されている。この貫通部33aの両側には、連結用クリップ4が係止する開口係止部33b,33cが設定される。
【0026】
第2クリップ保持溝34は、屈曲点Paを境に屈曲する略L字状に形成されている。具体的には、第2クリップ保持溝34は、連結用クリップ4の挿入方向を基準に直線状に形成されるストレート領域A1と、ストレート領域A1に連続し、かつ当該ストレート領域A1に比して傾斜する勾配領域A2とで構成されている。ここで、ストレート領域A1は、挿入方向の手前側から屈曲点Paまでの領域に設定され、勾配領域A2は、屈曲点Paから挿入方向の奥側に至る領域に設定されている。
【0027】
なお、本実施形態では、勾配領域A2は、その傾斜が二段階に変化している。これは、勾配領域A2の傾斜を一様とした場合に、軸体保持部30の頂部の肉厚が薄くなること考慮したものである。したがって、軸体保持部30の形状によっては、勾配領域A2の傾斜を一様に設定することも可能である。
【0028】
第2クリップ保持溝34の中央部には、第1クリップ保持溝33と同様、内周壁31の内方と貫通する貫通部34aが形成されている。この貫通部34aの両側には、連結用クリップ4が係止する開口係止部34b,34cが設定される。
【0029】
連結用クリップ4は、ハンドル本体2(クリップ保持溝33,34)に装着されて、軸体5とハンドル本体2との固定や、軸体5に対するハンドル本体2の抜け止めを行う連結具である。ここで、
図6は、連結用クリップ4を示す説明図である。同図において、(a)は連結用クリップ4の平面図であり、(b)は連結用クリップ4の側面図であり、(c)は連結用クリップ4の正面図である。
【0030】
連結用クリップ4は、略U字形状を有し、先端同士を反対方向に開放して構成されている。連結用クリップ4は、ピアノ線等の弾性を有する線材を折り曲げることで形成されている。
【0031】
具体的には、連結用クリップ4は、緩やかに湾曲形成された基部40と、当該基部40の両側から延出する一対の弾性脚41とで構成されている。
【0032】
個々の弾性脚41は、相対する弾性脚41に向かって略L字状に屈曲した形状を備えており、基部40側に位置付けられる第1傾斜部41aと、先端部側に位置付けられる第2傾斜部41bとから構成されている。第1傾斜部41aでは、基部40から離れるほど弾性脚41同士の間隔が狭くなり、また、第2傾斜部41bでは、先端部に向かうほど弾性脚41同士の間隔が広くなる。
【0033】
個々の弾性脚41において、各傾斜部41aの境界である屈曲位置は、軸体5を係止するための係止部42として機能する。すなわち、弾性脚41の屈曲形状により、係止部42は、軸体保持部30の内周壁31の内方に飛び出して、当該軸体保持部30に挿入される軸体5のクリップ係止部14を係止する。
【0034】
なお、係止部42は、2本の弾性脚41をそれぞれ屈曲させることにより2本の弾性脚41の両方に設定してもよいし、一方の弾性脚41のみを屈曲させて一方の弾性脚41のみに設定することも可能である。
【0035】
このような構成の操作用ハンドル1は、軸体5に連結することにより使用される。操作用ハンドル1を軸体5に連結するには、まず、連結用クリップ4をハンドル本体2に装着し、その後、当該ハンドル本体2を軸体5に外嵌する。
【0036】
第1に、連結用クリップ4のハンドル本体2への装着方法について説明する。
図7は、操作用ハンドル1の要部を拡大して示す左側面図であり、
図8は、
図7に示す操作用ハンドル1のAA断面を示す断面図である。
【0037】
まず、軸体保持部30のクリップ保持溝33,34を両側から挟むように、連結用クリップ4を開放された先端側からクリップ保持溝33,34に挿入する。一対の弾性脚41がクリップ保持溝33,34に進入するに従い、第2傾斜部41bにはクリップ保持溝33,34からの抗力が作用し、一対の弾性脚41は外方へと弾性変形させられる。第2傾斜部41bに引き続き係止部42がクリップ保持溝33,34へと進入すると、係止部42にはクリップ保持溝33,34からの抗力が作用し、一対の弾性脚41は一定の変形状態を維持したまま挿入される。
【0038】
連結用クリップ4の挿入を継続すると、係止部42がクリップ保持溝33,34の貫通部33a,34aへと到達する。係止部42が貫通部33a,34aへと到達すると、原形状に復帰する方向への弾性変形作用により、係止部42が貫通部33a,34aの内方へと入り込む。そして、弾性脚41の第1傾斜部41aが、クリップ保持溝33,34の基部側の開口係止部33b,34bに沿ってスライドし、一対の弾性脚41は内方へと弾性変形させられる。
【0039】
一方、第2クリップ保持溝34においては、弾性脚41の先端側に位置する第2傾斜部41bが屈曲点Paを通過して勾配領域A2へと進入することで、弾性脚41が屈曲形状に沿って弾性変形する。弾性変形した弾性脚41には、原形状に復帰する方向へと力が作用するため、第2クリップ保持溝34と弾性脚41との当接力が増加することとなる。
【0040】
この当接力の増加に抗して連結用クリップ4の挿入を継続すると、弾性脚41の第2傾斜部41bが、クリップ保持溝33,34の先端側の開口係止部34cに当接する。これにより、連結用クリップ4の挿入方向への移動が規制され、連結用クリップ4の挿入が完了する。
【0041】
第2に、ハンドル本体2を軸体5に外嵌する方法について説明する。まず、ハンドル本体2の軸体保持部30を軸体5の先端に押し付けると、軸体5のテーパー部12により、連結用クリップ4の係止部42が外方へと押し出され、弾性脚41が外方に向けて弾性変形させられる。このため係止部42間の間隔が広くなり、軸体5のセレーション部11の通過が許容される。軸体5が進入して、軸体5のクリップ嵌込溝13が係止部42へと到達すると、弾性脚41は原形状に復帰する方向へと弾性変形し、係止部42がクリップ嵌込溝13へと入り込む。これにより、係止部42がクリップ係止部14を係止し、ハンドル本体2は軸体5に対して抜け止めされて連結される。
【0042】
以上の工程により、連結用クリップ4のハンドル本体2への装着、そして、当該ハンドル本体2の軸体5への外嵌が行われる。この場合、軸体5のセレーション部11と、軸体保持部30のセレーション溝32との嵌合により、軸体5と軸体保持部30との径方向への結合がなされる。また、各弾性脚41は、クリップ保持溝33,34の基部側の開口係止部33b,34b及び先端側の開口係止部33c,34cに係止し、連結用クリップ4と軸体保持部30との結合がなされる。加えて、各弾性脚41の係止部42が軸体5のクリップ嵌込溝13に嵌まり込み、係止部42がクリップ係止部14を係止することにより、ハンドル本体2と軸体5との軸方向の結合がなされるとともに、ハンドル本体2と軸体5との径方向の係合がなされる。
【0043】
また、本実施形態の特徴の一つとして、第2クリップ保持溝34へと挿入された弾性脚41は、ストレート領域A1から勾配領域A2へと至る屈曲形状に沿って弾性変形する。弾性変形した弾性脚41には、原形状に復帰する方向へと力が作用するため、第2クリップ保持溝34と弾性脚41との当接力が増加する。すなわち、連結用クリップ4の挿入方向に対して溝形状を変形させた勾配領域A2は、第2クリップ保持溝34に挿入された弾性脚41を溝形状に沿って弾性変形させる形状変形部として機能する。
【0044】
このような構成によれば、連結用クリップ4と軸体保持部30のクリップ保持溝33,34との当接力が増加するので、クリップ保持溝33,34における連結用クリップ4のがたつきの発生を抑制することができる。そのため、ハンドル本体2の軸方向の移動を抑制することが可能となり、軸体5の振動等により異音が発生するといった問題を解消することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、形状を予め変形させた連結用クリップを用いる必要がないので、連結用クリップ4をクリップ保持溝33,34へと容易に挿入することができる。このため、連結用クリップ4の組み付け作業を、製造装置を用いて自動化することが可能となる。もっとも、弾性脚41の先端側(第2傾斜部41b)が勾配領域A2へと進入する際には、第2クリップ保持溝34と弾性脚41との当接力が増加するが、製造装置には、当接力に勝る程度の押し込み力が要求されるのみであり、高い精度での位置合わせといった煩雑な作業がなく、組み付け作業の自動化を実現することができる。
【0046】
さらに、折り曲げ加工にて連結用クリップの形状を変形させる場合には、クリップ保持溝への挿入を考慮して、連結用クリップの加工精度を厳しく評価する必要がある。しかしながら、本実施形態によれば、連結用クリップ4の形状管理が不要となり、製造性の向上を図ることができる。一方、クリップ保持溝33,34の形状を管理する必要があるが、成型手法によりクリップ保持溝34を精度よく形成することが可能であり、その形状管理を容易に行うことができる。
【0047】
また、連結用クリップは、他の多くの部品に汎用的に使用することができる部品であるため、これに固有の形状を採用すると汎用性を失ってしまう。これにより、連結用クリップを専用品として設計をしなければならず、部品の共用化の妨げとなり、コストアップを招来する可能性がある。しかしながら、本実施形態によれば、連結用クリップ4に捻りを加えるといった固有の形状を採用する必要がないので、このような問題を解消することができる。
【0048】
また、本実施形態において、第2クリップ保持溝34は、連結用クリップ4の挿入方向を基準に直線状に形成されるストレート領域A1と、ストレート領域A1に連続し当該ストレート領域A1に比して傾斜する勾配領域A2とで構成されている。
【0049】
この構成によれば、第2クリップ保持溝34がストレート領域A1から勾配領域A2へと屈曲した形状を採用しているので、このストレート領域A1から屈曲した勾配領域A2を形状変形部として機能させることができる。これにより、上述した効果を奏することができる。
【0050】
また、本実施形態において、第2クリップ保持溝34は、連結用クリップ4の挿入方向の手前側にストレート領域A1が設定され、連結用クリップ4の挿入方向の奥側に勾配領域A2が設定されている。
【0051】
連結用クリップ4の挿入方向の手前側に勾配を設定した場合には、連結用クリップ4の挿入の妨げとなり、連結用クリップ4の組み付け作業の自動化が困難となる。その点、本実施形態によれば、連結用クリップ4の挿入方向の手前側にストレート領域A1を設定しているので、連結用クリップ4の挿入を容易に行うことができる。これにより、連結用クリップ4の組み付け作業を、製造装置を用いて自動化することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態において、形状変形部は、一対のクリップ保持溝33,34のうち第2クリップ保持溝34に設定されている。そして、第1クリップ保持溝33は、連結用クリップ4の挿入方向に対して溝形状が一様となる直線状に形成されている。
【0053】
形状変形部は一対のクリップ保持溝33,34に対してそれぞれ設定することもできるが、この場合には、個々のクリップ保持溝33,34において大きな当接力が発生することとなる。このため、連結用クリップ4を一対のクリップ保持溝33,34に挿入する際に、大きな押し込み力が必要となり、作業性を悪化させる場合もある。しかしながら、本実施形態に示すように、第2クリップ保持溝34のみに形状変形部を設定することで、過度な押し込み力を必要とせずに、連結用クリップ4の挿入を容易に行うことができる。
【0054】
以上、本実施形態に係る操作用ハンドルを説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。また、操作用ハンドルを構成するハンドル本体構造についても本発明の一部として機能する。さらに、本発明の操作用ハンドルは、スライドドアのインサイドハンドル以外にも、レギュレータハンドルといったように、軸体の操作用の手掛けとなる操作用ハンドルとして広く適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 操作用ハンドル
2 ハンドル本体
20 本体部
30 軸体保持部
31 内周壁
32 セレーション溝
33 第1クリップ保持溝
34 第2クリップ保持溝
A1 ストレート領域
A2 勾配領域
4 連結用クリップ
40 基部
41 弾性脚
41a 第1傾斜部
41b 第2傾斜部
42 係止部
5 軸体
11 セレーション部
12 テーパー部
13 クリップ嵌込溝
14 クリップ係止部