(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について
図1〜5を参照して説明する。
図1は、サーマルヘッドX1の構成を概略的に示している。
図2は、保護層25、被覆層27、および封止部材12を省略して示している。また、
図4では封止部材12が設けられる領域を斑点で示している。
【0010】
サーマルヘッドX1は、ヘッド基体3と、コネクタ31と、封止部材12と、放熱板1と、接着部材14とを備えている。サーマルヘッドX1は、放熱板1上に接着部材14を介してヘッド基体3が載置されている。ヘッド基体3は、外部からの電圧が印加することにより発熱部9を発熱させ記録媒体(不図示)に印画を行っている。コネクタ31は、外部とヘッド基体3とを電気的に接続している。封止部材12は、コネクタ31とヘッド基体3とを接合している。放熱板1は、ヘッド基体3の熱を放熱するために設けられている。接着部材14は、ヘッド基体3と放熱板1とを接着している。
【0011】
放熱板1は、直方体形状をなしており、基板7が載置される台部1aを有している。放熱板1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。
【0012】
ヘッド基体3は、平面視して、長方形状に形成されており、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体(不図示)に印字を行う機能を有する。
【0013】
コネクタ31は、ヘッド基体3に電気的に接続されており、ヘッド基体3と外部電源とを電気的に接続している。コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収納するハウジング10とを有している。複数のコネクタピン8は、基板7を狭持するように基板7の上下に配置されており、上側に配置されたコネクタピン8が、ヘッド基体3のパッド2(
図2参照)に電気的に接続されている。
【0014】
封止部材12は、パッド2、およびコネクタピン8が外部に露出しないように設けられており、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により形成することができる。また、コネクタ31とヘッド基体3との接合強度を向上させている。
【0015】
接着部材14は、放熱板1の台部1aの上面に配置されており、ヘッド基体3と放熱板1とを接合している。接着部材14としては、両面テープ、あるいは樹脂性の接着剤を例示することができる。
【0016】
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について、
図2〜5を用いて説明する。
【0017】
基板7は、放熱板1の台部1a上に配置されており、平面視して、矩形状をなしている。そのため、基板7は、一方の長辺7aと、他方の長辺7bと、一方の短辺7cと、他方の短辺7dとを有している。基板7は、例えば、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
【0018】
基板7上には蓄熱層13が設けられている。蓄熱層13は、基板7の上方へ向けて突出した隆起部13aを備えている。隆起部13aは、基板7の一方の長辺7aに隣り合うように配置されており、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状をなしている。また、隆起部13aは、印画する記録媒体P(
図7参照)を、発熱部9上に形成された保護層25に良好に押し当てるように機能している。隆起部13aは、基板7からの高さが15〜90μmで設けられることが好ましい。
【0019】
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。そのため、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することで形成される。
【0020】
電気抵抗層15は、基板7の上面および蓄熱層13の上面に設けられており、電気抵抗層15上には、ヘッド基体3を構成する各種電極が設けられている。電気抵抗層15は、ヘッド基体3を構成する各種電極と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。各露出領域は発熱部9を構成しており、隆起部13a上に列状に配置されている。
【0021】
複数の発熱部9は、説明の便宜上、
図2では簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
【0022】
共通電極17は、主配線部17a,17dと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。共通電極17は、複数の発熱部9と、コネクタ31とを電気的に接続している。主配線部17aは、基板7の一方の長辺7aに沿って延びている。副配線部17bは、基板7の一方の短辺7cおよび他方の短辺7dのそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びている。主配線部17dは、基板7の他方の長辺7bに沿って延びている。
【0023】
複数の個別電極19は、発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分けており、各群の発熱部9と各群に対応して設けられた駆動IC11とを電気的に接続している。個別電極19の端部には、パッド4が設けられている。パッド4は、上方に配置された駆動IC11と、接合部材23を介して電気的に接続されている。
【0024】
複数のIC−コネクタ接続電極21は、信号電極21aと、グランド電極21bとを備えている。複数のIC−コネクタ接続電極21は、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数のIC−コネクタ接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。信号電極21aは、駆動IC11
に主種の信号を送っている。
【0025】
グランド電極21bは、個別電極19と、IC−コネクタ接続電極21と、共通電極17の主配線部17dとにより取り囲むように配置されており、広い面積を有している。グランド電極4は、0〜1Vのグランド電位に保持されている。
【0026】
パッド2は、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21およびグランド電極21bをコネクタ31に接続するために、基板7の他方の長辺7b側に設けられている。パッド2はコネクタピン8に対応して設けられており、コネクタ31に接続する際は、それぞれ電気的に独立するように、コネクタピン8とパッド2とが接続されている。
【0027】
複数のIC−IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11を電気的に接続している。複数のIC−IC接続電極26は、それぞれIC−コネクタ接続電極21に対応するように設けられており、各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。
【0028】
上記のヘッド基体3を構成する各種電極は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、ヘッド基体3を構成する各種電極は、同じ工程によって同時に形成することができる。
【0029】
駆動IC11は、
図2に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部とIC−コネクタ接続電極21の一端部とに、接合部材23を介して接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いればよい。
【0030】
駆動IC11は、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって封止されている。
【0031】
図3に示すように、基板7上に設けられた蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。
【0032】
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。保護層25は、SiN、SiO
2、SiON、SiC、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができ、保護層25を単層で構成してもよいし、これらの層を積層して構成してもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
【0033】
また、
図5に示すように、基板7上には、共通電極17、個別電極19およびIC−コネクタ接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。被覆層27は、共通電極17、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有する。
【0034】
コネクタ31とヘッド基体3とは、コネクタピン8、接合部材23、および封止部材12により固定されている。接合部材23は、パッド2とコネクタピン8との間、あるいは
パッド2,4と駆動IC11との間に配置されており、例えば、はんだ、あるいは電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電接着剤等を例示することができる。サーマルヘッドX1においては、接合部材23としてはんだバンプを用いて説明する。
【0035】
なお、接合部材23とパッド2,4との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。なお、パッド2とコネクタピン8との間においては、接合部材23は必ずしも設けなくてもよい。この場合、クリップ式のコネクタピン8を用いて、コネクタピン8で基板7を挟持することにより、パッド2とコネクタピン8とを直接電気的に接続すればよい。
【0036】
封止部材12は、第1封止部材12aと第2封止部材12bとを有している。第1封止部材12aは基板7の上面に位置しており、第2封止部材12bは基板7の下面に位置している。第1封止部材12aは、コネクタピン8と各種電極とを封止するように設けられており、第2封止部材12bは、コネクタピン8を封止するように設けられている。なお、第1封止部材12aと第2封止部材12bとが同じ材料により形成されていてもよく、別の材料により形成されていてもよい。
【0037】
図5〜9を用いて、パッド2,4および被覆層27について詳細に説明する。なお、
図5においては、駆動IC11および被覆部材29の図示を省略している。また、
図5(b)においては、搬送中の記録媒体Pを図示している。
【0038】
被覆層27は、基板7の略全域にわたって設けられており、開口28を有している。被覆層27は、一部が保護層25上に設けられており、その他の部分は基板7上に設けられている。
【0039】
開口28は、第1開口28aと、第2開口28bと、第3開口28cとを有している。第1開口28aは、主走査方向に長く形成されており、基板7の一方の長辺7aに隣り合うように配置されている。第1開口28aは、複数の発熱部9を取り囲むように開口しており、第1開口28a内には発熱部9および保護層25が配置されている。
【0040】
第2開口28bは、主走査方向に長く形成されており、駆動IC11に対応して設けられている。そのため、第2開口28bは、主走査方向に複数配列して設けられている。第2開口28bは、複数のパッド4を取り囲むように開口しており、第2開口28b内には、個別電極19のパッド4およびIC−コネクタ接続電極21bのパッド4が配置されている。
【0041】
第3開口28cは、主走査方向に長く形成されており、コネクタピン8に対応して設けられている。第3開口28cは、複数のパッド2を取り囲むように開口しており、第3開口28c内には、IC−コネクタ接続電極21bのパッド2が配置されている。
【0042】
被覆層27は、第1部位27aと第2部位27bとを有している。第2部位27bは、第1部位27aよりも厚みが薄くなっている。第1部位27aは開口28を有しており、基板7上の略全域にわたって形成されている。第2部位27bは、第1部位27aから連続して形成されており、開口28内に設けられている。
【0043】
第1部位27aは、基板7上に設けられた各部材を保護する機能を有している。また、第1部位27aは、搬送される記録媒体P(
図5(b)参照)との接触から、基板7上に設けられた各部材を保護する機能を有している。
【0044】
そのため、第1部位27aは、厚みが10〜30μmであることが好ましい。厚みが1
0μm以上であることにより、耐腐食性を向上させることができる。また、厚みが30μm以下であることにより、記録媒体Pの搬送を阻害しにくくなる。
【0045】
第1部位27aは、耐腐食性、耐摩耗性の機能を有する必要があり、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等により形成することができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、あるいはビスフェノールF型を用いることができる。
【0046】
第2部位27bは、開口28内に設けられており、水分あるいはゴミ等から開口28内に位置する各部材を保護する機能を有しており、耐腐食性の機能を有している。
【0047】
図5(b)に示すように、第1開口28aに位置する第2部位27bは、第1部位27aから発熱部9に向けて延びるように設けられており、隆起部13aと第1部位27aとの間の隙間を埋めるように、保護層25上に配置されている。第2部位27bの一部が、隆起部13a上に重畳する重畳部27b1を形成している。
【0048】
図6(a)に示すように、第2開口28bに位置する第2部位27bは、第1部位27aから駆動IC11に向けて延びるように設けられており、対向する第1部位27a同士の間の隙間を埋めるように、パッド2,4および基板7上に配置されている。駆動IC11の下方に位置する基板7上にも、第2部位27bが形成されている。
【0049】
図6(b)に示すように、第3開口28cに位置する第2部位27bは、第1部位27aから基板7の他方の長辺7bに向けて延びるように設けられている。第2部位27bは、パッド2および基板7上に配置されており、第2部位27bが、基板7の他方の長辺7bを被覆している。
【0050】
第2部位27bの厚みは、0.01〜1μmとすることができる。第2部位27bは、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等により形成することができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型等を用いることができる。
【0051】
なお、第1部位27aは、ビスフェノールA型、およびビスフェノールF型により形成されており、第2部位27bは、ビスフェノールA型により形成されていることが好ましい。それにより、第1部位27aと第2部位27bとの樹脂材料の組成を近づけることができ、サーマルヘッドX1の封止性を向上させることができる。
【0052】
なお、上記の場合、第1部位27aと第2部位27bとは、ビスフェノールF型の有無により区別することができ、ビスフェノールF型がある部位を第1部位27a、ビスフェノールF型がない部位を第2部位27bとすることができる。
【0053】
図6(a)に示すように、パッド4は、個別電極19またはIC−コネクタ接続電極21bと連続して設けられており、接合部材23を介して駆動IC11の端子(不図示)と電気的に接続されている。パッド4は、露出部4aと、凹部4bとを備えている。露出部4aおよび凹部4bは、互いに連続的に設けられており、パッド4の算術表面粗さSaが0.1〜1μmとなっている。なお、算術表面粗さSaは、レーザー式あるいは接触式の表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0054】
露出部4aは、第2部位27bから露出するように複数設けられており、平面視して、互いに独立して配置されている。すなわち、露出部4a同士が、互いに離間してランダムに配置されている。
【0055】
凹部4bは、パッド4の表面に複数設けられており、第2部位27bを透過して平面視
すると、互いに独立して配置されている。すなわち、凹部4b同士が、互いに離間してランダムに配置されている。凹部4bの内部には、第2部位27bが収容されている。
【0056】
図6(b)に示すように、パッド2は、IC−コネクタ接続電極21a(
図2参照)またはIC−コネクタ接続電極21bと連続して設けられており、接合部材23を介してコネクタピン8と電気的に接続されている。パッド2は、露出部2aと、凹部2bとを備えている。露出部2aおよび凹部2bは、互いに連続的に設けられており、パッド2の算術表面粗さSaが0.1〜1μmとなっている。
【0057】
露出部2aは、第2部位27bから露出するように複数設けられており、平面視して、互いに独立して配置されている。すなわち、露出部2a同士が、互いに離間してランダムに配置されている。凹部2bは、パッド2の表面に複数設けられており、第2部位27bを透過して平面視すると、互いに独立して配置されている。すなわち、凹部2b同士が、互いに離間してランダムに配置されている。凹部2bの内部には、第2部位27bが収容されている。
【0058】
ここで、駆動IC11は、外部から保護するために、被覆部材29により封止されている。被覆部材29は、上述したように樹脂材料等により形成されており、駆動IC11とパッド2,4とを接合部材23とにより電気的に接続した後に、駆動IC11を覆うように塗布し、これを硬化することにより、駆動IC11を封止している。
【0059】
このように、被覆部材29を塗布した際に、パッド2,4の算術表面粗さSaが0.1〜1μm程度であると、被覆部材29とパッド2,4との間に隙間が生じてしまい、被覆部材29とパッド2,4との接合強度が弱くなる可能性がある。また、隙間に位置する空気が、被覆部材29の内部に気泡となって残存した場合、サーマルヘッドX1の熱駆動に伴って、気泡が膨張し、サーマルヘッドX1が破損する可能性がある。
【0060】
これに対して、サーマルヘッドX1は、パッド4,6の算術表面粗さSaが0.1〜1μmであり、第2部位27bが凹部2b,4bに収容されていることにより、第2部位27bがパッド4,6の表面を平滑にすることができる。その結果、被覆部材29が、平滑なパッド4,6の上面に隙間なく配置されることとなり、被覆部材29とパッド2,4との間に隙間が生じる可能性を低減することができる。それゆえ、被覆部材29とパッド2,4との接合強度を向上させることができる。
【0061】
また、被覆部材29が、平滑なパッド4,6の上面に隙間なく配置されることとなり、被覆部材29とパッド2,4との間に隙間が生じる可能性を低減することができることから、被覆部材29の内部に気泡が残存する可能性を低減することができる。その結果、サーマルヘッドX1が破損する可能性を低減することができる。
【0062】
また、第2部位27bの厚みが0.01~1μmであることが好ましい。それにより、
第2部位27bが、パッド2,4の凹部2b,4bに収容されてパッド2,4の平滑性を高めることができる。
【0063】
また、第2部位27bが、駆動IC11とパッド2,4との間に位置している。すなわち、
図6(a)に示すように、第2部位27bが、駆動IC11の下方に位置するパッド2,4上、および、駆動IC11の下方に位置する基板7上に設けられている。それにより、駆動IC11に破損が生じる可能性を低減することができる。
【0064】
すなわち、接合部材23に不均一な外力が生じて、一部の接合部材23につぶれが生じると、駆動IC11は傾いた状態でパッド2,4に搭載されることとなる。その場合に、
駆動IC11が、パッド2,4あるいは基板7に接触して破損する可能性がある。これに対して、サーマルヘッドX1は、第2部位27bが、駆動IC11の下方に位置するパッド2,4上、および、駆動IC11の下方に位置する基板7上に設けられている。そのため、駆動IC11が、パッド2,4あるいは基板7に接触する際に、第2部位27bが緩和部材として機能し、駆動IC11に破損が生じる可能性を低減することができる。
【0065】
また、サーマルヘッドは、基板7上に各種部材および被覆層を形成した後に、パッド上に、接合部材を介して駆動ICを搭載している。パッドは、接合部材と電気的に接続するため、サーマルヘッドは、パッドが露出した状態で駆動ICを搭載する工程に供給される。そのため、露出したパッドに、水あるいはゴミが付着し、サーマルヘッドに腐食が生じる可能性がある。
【0066】
しかしながら、サーマルヘッドX1は、第2部位27bがパッド2,4上に配置されており、パッド2,4が第2部位27aから露出した露出部2a,4aを有しており、接合部材23が、露出部2a,4aに接合される構成を有している。
【0067】
そのため、露出部2a,4aにて、パッド2,4と接合部材23との電気的な導通を確保することができるとともに、第2部位27bがパッド2,4の露出部2a,4a以外の部位を腐食から保護することができる。その結果、サーマルヘッドX1の耐腐食性を向上させることができる。
【0068】
また、パッド2,4の算術表面粗さSaが0.1〜1μmであり、第2部位27bの厚みが0.01〜1μmであることにより、パッド2,4上に第2部位27bを形成することにより、パッド2,4の露出部2a,4aを形成することができるとともに、凹部2b,4bに第2部位27bを収容することができる。また、パッド2,4の算術表面粗さSaは、0.3〜1μmが好ましい。それにより、突出部2a,4aを容易に設けることができる。
【0069】
また、パッド2,4は、露出部2a、4aを複数有しており、平面視して、互いに独立して配置されている。すなわち、露出部2a、4a同士が、それぞれ互いに離間してランダムに配置されている。そのため、複数の露出部2a,4aは、互いに離間した状態で配置されていることとなる。その結果、接合部材23とパッド2,4とが、複数箇所にて接続されることとなり、接合部材23の水平方向における安定性を向上させることができる。
【0070】
また、平面視して、露出部2a,4aの総面積が、露出部2a,4aを含むパッド2,4の面積の5〜30%である。それにより、パッド2,4の耐腐食性を向上させつつ、接合部材23との電気的な接続を確保することができる。
【0071】
すなわち、露出部2a,4aの総面積が、露出部2a,4aを含むパッド2,4の面積の5%以上であることにより、接合部材23との電気的な接続を確保することができる。また、露出部2a,4aの総面積が、露出部2a,4aを含むパッド2,4の面積の30%以下であることにより、パッド2,4の腐食を抑えることができる。なお、露出部2a,4aの総面積が、露出部2a,4aを含むパッド2,4の面積の10〜20%であることがより好ましい。
【0072】
なお、露出部2aの総面積は、パッド2,4上に第2部位27bが設けられた状態で、平面視方向から写真を撮影し、写真を画像処理することにより計測することができる。露出部2a,4aを含むパッド2,4の面積は、第2部位27bを機械的、あるいは化学的に除去することによりパッド2,4を露出させ、パッド2,4を平面視方向から写真を撮
影し、写真を画像処理することにより計測することができる。
【0073】
図5(b)に示すように、第2部位27b1は、発熱部9上に設けられている。具体的には、第2部位27bは、開口28a内に設けられており、隆起部13a上に設けられた第2部位27b1を有している。第2部位27bは、隆起部13a上に設けられた保護層25上に設けられており、第2部位27bの一部が、発熱部9aの上方に配置されている。
【0074】
そのため、記録媒体Pが、サーマルヘッドX1に接触しながら搬送された場合においても、第2部位27b1が保護層25を保護することができ、サーマルヘッドX1の耐摩耗性を向上させることができる。また、第2部位27bが、0.01〜1μmの厚みであることから、発熱部9にて発熱した熱を記録媒体Pに効率よく熱伝導することができる。
【0075】
サーマルヘッドX1の製造方法について、
図7〜9を用いて説明する。
【0076】
まず、基板7上に、電気抵抗体層15(
図3参照)および各種電極層、パッド2,4となる材料層をスパッタリング法により順次成膜する。次に、
図7(a)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いて、電気抵抗体層15および材料層をパターニングした後に、ドライエッチングにより発熱部9(
図3参照)、各種電極、およびパッド2,4を形成する。その際に、パッド2,4の算術表面粗さSaが0.1〜1μmとなるようにパッド2,4を形成し、パッド2,4の凹部2a,4aも同時に形成する。なお、凹部2a,4aを形成するために、混酸などのエッチング液を用いてエッチング処理をしてもよい。続いて、発熱部9を被覆するように保護層25をスパッタリング法により成膜する。
【0077】
次に、第1部位27aを形成するために、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、およびイミダゾールを混合して第1部位27a用樹脂を作製する。また、第2部位27bを形成するために、ビスフェノールA型、およびイミダゾールを混合して第2部位27b用樹脂を作製する。
【0078】
続いて、印刷法により第1部位27a用樹脂を基板7に塗布する。その際に、開口28bが形成され、パッド2,4が露出するように第1部位27a用樹脂を塗布する。次に、
図8(a)に示すように、開口28abから露出した領域に、第2部位27b用樹脂を塗布する。第2部位27b用樹脂は、開口28bから露出したパッド2,4上に、スクリーン印刷、あるはディスペンサ等によって塗布する。それにより、凹部2b,4bに第2部位27bを収容することができる。また、隣り合うパッド2とパッド4との間に位置する基板7上に、第2部位27bを形成することができる。
【0079】
なお、第1部位27a用樹脂と第2部位27b用樹脂とを混合させた状態で、開口28bが形成されるように印刷法により塗布し、被覆層27を形成してもよい。この場合、第1部位27a用樹脂と第2部位27b用樹脂との混合樹脂を、塗布し、塗布後に所定時間放置した後に乾燥させることにより、第1部位27aおよび第2部位27bを形成することができる。
【0080】
続いて、
図8(b)に示すように、第2部位27bの一部を除去してパッド2,4の露出部2a,4aを形成する。第2部位27bは、例えば、イソプロピルアルコールを塗布した不織布により、開口28b内を払拭することにより除去すればよい。それにより、パッド2,4に露出部2a,4aを形成することができる。
【0081】
また、第2部位27bを形成した後に、プラズマ洗浄装置を用いて、サーマルヘッドX1の全体を、プラズマ洗浄処理を行いて洗浄し、第2部位27bの一部を除去してもよい
。
【0082】
続いて、
図9(a)に示すように、接合部材23が設けられた駆動IC11をパッド2,4上に搭載し、パッド2,4の露出部2a,4aと接合部材23とを電気的に接続する。
【0083】
続いて、駆動IC11が埋設されるように、被覆部材29を開口28bにディスペンサにより塗布、硬化して、駆動IC11を封止する。被覆部材29の縁は、被覆層27の第1部位27a上に配置されており、被覆部材29の縁が広がることを抑えることができる。なお、駆動IC11ごとに被覆部材29を個別に設けてもよく、主走査方向に延びるように被覆部材29を設けることにより、複数の駆動IC11を同時に封止してもよい。
【0084】
このように、第2部位27bが、パッド2,4の凹部2b,4bに収容されることにより、パッド2,4および第2部位27bの表面が平滑となる。その結果、被覆部材29がパッド2,4および第2部位27bの表面を円滑に広がることとなり、パッド2,4および第2部位27bの表面と、被覆部材29との間に隙間が生じる可能性を低減することができる。
【0085】
さらに、第2部位27bが、パッド2とパッド4との間の基板7上に配置されることにより、基板7の表面に凹凸があった場合においても、第2部位27bが、基板7の凹凸を埋めるように機能し、被覆部材29がパッド第2部位27bの表面を円滑に広がる事ができる。その結果、駆動IC11の下方に気泡が生じる可能性を低減することができる。
【0086】
次に、サーマルプリンタZ1について、
図10を参照しつつ説明する。
【0087】
図10に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
【0088】
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを
図6の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
【0089】
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
【0090】
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
【0091】
サーマルプリンタZ1は、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
【0092】
<第2の実施形態>
図11,12を用いてサーマルヘッドX2について説明する。なお、サーマルヘッドX1と同一の部材については同じ符号を付しており、以下同様とする。なお、サーマルヘッドX2においては、接合部材23はボンディングワイヤを用いている。
【0093】
サーマルヘッドX2は、放熱板1と、ヘッド基体103と、配線基板6と、接着部材14と、フレキシブル配線基板5(以下、FPC5と称する)と、コネクタ131とを備えている。サーマルヘッドX2は、ヘッド基体103と配線基板6とが隣り合うように配置されており、放熱板1上に接着部材14を介して、ヘッド基体103と、配線基板6とが裁置されている。
【0094】
配線基板6は、主走査方向に長い平板形状をなしており、上面に駆動IC11が裁置されている。駆動IC11からは、ボンディングワイヤにより形成された接合部材16が引き出されており、接合部材16が、ヘッド基体103のパッド2(
図2参照)に電気的に接続されている。なお、図示していないが、駆動IC11からは配線基板6に向けて接合部材16が引き出されており、配線基板6に設けられた配線パターン(不図示)と電気的に接続されている。
【0095】
配線基板6は、内部に配線パターンが設けられており、配線パターンを介してFPC5とヘッド基体103とを電気的に接続している。配線基板6としては、硬質なリジッド基板、あるいはPCB等を例示することができる。
【0096】
FPC5は、配線基板6と電気的に接続されており、コネクタ131を介して外部と電気的に接続されている、FPC5は可撓性のフレキシブルプリント配線板により形成されている。
【0097】
被覆部材129は、主走査方向に延びるように形成されており、複数の駆動IC11にわたって形成されている。また、被覆部材129は、配線基板6上からヘッド基体3上までわたって形成されており、ヘッド基体3と配線基板6とを接合している。
【0098】
図12に示すように、被覆層127は、基板7の略全域にわたって設けられており、第1開口128aおよび第2開口128bを有している。第1開口128aおよび第2開口128bは、構成がサーマルヘッドX1の第1開口28aおよび第2開口28bと同様であり説明を省略する。
【0099】
被覆層127は、第1部位127aと、第2部位127bとを有している。第2部位127bは、開口128a,128b内に配置されており、パッド4の一部を被覆している。第2部位127b1は、パッド4上に設けられており、パッド4を腐食から保護してい
る。第2部位127b2は、隣り合うパッド4同士の間に設けられており、パッド4が形成されていない基板7上に設けられることにより、開口128a,128bを封止している。第2部位127b3は、パッド4の主走査方向に対向する側面上に設けられており、パッド4の主走査方向に対向する側面の封止性を向上させている。
【0100】
サーマルヘッドX2は、第2部位127b2が、隣り合うパッド4同士の間に設けられており、第2部位127b2が、パッド4が形成されていない基板7上に設けられた構成を有している。それにより、隣り合うパッド4同士の間に位置する基板7上を封止することができ、開口128bの封止性を向上させることができる。
【0101】
また、隣り合うパッド4同士の間に設けられた第2部位127b2の平均厚みが、パッド上4に位置する第2部位127b1の平均厚みよりも大きいことが好ましい。それにより、開口128bの封止性をさらに向上させることができる。なお、第2部位127b2の平均厚みとは、例えば、第2部位127b2の任意の3点の厚みを測定し、測定した値の平均値とすればよく、第2部位127b1の平均厚みも同様である。
【0102】
また、第2部位127b3は、パッド4の主走査方向に対向する側面上に設けられており、第2部位127b3の側面からの距離が、基板7に向かうにつれて大きくなっている。そのため、パッド4の側面近傍の封止性を向上させることができる。
【0103】
つまり、パッド4の側面近傍には、パッド4の高さにより段差が生じている。第2部位127b3は、側面からの距離が、基板7に向かうにつれて大きくなっていることにより、段差を第2部位127b3が埋めるように作用する。その結果、被覆部材129が段差を埋めるように配置されることとなり、サーマルヘッドX2の耐腐食性を向上させることができる。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。
【0105】
例えば、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示して示したが、これに限定されるものではない。各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成することにより、発熱部9の厚い厚膜ヘッドに本発明を用いてもよい。
【0106】
また、発熱部9が基板7上に形成された平面ヘッドを例示して説明したが、発熱部9が基板7の端面に設けられた端面ヘッドに本発明を用いてもよい。
【0107】
また、蓄熱層13が隆起部13a以外の領域に、下地部を形成してもよい。また、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を形成してもよい。
【0108】
なお、封止部材12を、駆動IC11を被覆する被覆部材29とを同じ材料により形成してもよい。その場合、被覆部材29を印刷する際に、封止部材12が形成される領域にも印刷して、被覆部材29と封止部材12とを同時に形成してもよい。