特許第6419046号(P6419046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419046
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】蓄電システムの故障形態判定装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20181029BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20181029BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20181029BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20181029BHJP
   G01R 31/36 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   H01M10/42 P
   H02J7/00 P
   H02J7/02 H
   H02J7/00 Y
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   G01R31/36 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-182068(P2015-182068)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-59358(P2017-59358A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】村井 尚子
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 英裕
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−020336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
G01R 31/36
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態を検知する状態検出手段と、
前記状態検出手段により取得されたデータを蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段から得られる蓄積データに基づき、前記蓄電手段又は前記状態検出手段の故障の有無を判定する判定手段と、を備え
前記状態検出手段は前記蓄電手段の電圧を測定し、
前記蓄積手段は前記蓄電手段から得られる第1の電圧値と前記第1の電圧値よりも後に得られる第2の電圧値との差分値を蓄積し、
前記判定手段は蓄積された前記差分値に基づき、前記第1の電圧値と前記2の電圧値との電圧差の増加量における傾きの値の絶対値が第1閾値を超えた場合に、前記蓄電手段又は前記状態検出手段のいずれかが故障していることを判定する蓄電システムの故障形態判定装置。
【請求項2】
前記傾きの値の絶対値に基づいて、前記蓄電手段と前記状態検出手段とのいずれが故障しているかを判定する請求項1に記載の蓄電システムの故障形態判定装置。
【請求項3】
前記傾きの値の絶対値が突然大きくなった場合には、前記状態検出手段が故障していると判定し、前記傾きの値の絶対値が徐々に大きくなった場合には、前記蓄電手段が故障していると判定する請求項2に記載の蓄電システムの故障形態判定装置。
【請求項4】
前記蓄電手段は複数の蓄電セルから構成され、
前記状態検出手段は前記蓄電セルの蓄電容量を均等化するために要する均等化時間を検知し、
前記蓄積手段は前記均等化時間の積算値を検出し、
前記判定手段は前記積算値に基づき、前記蓄電手段と前記状態検出手段とのいずれが故障しているかを判定する判定手段と、を備える請求項1に記載の蓄電システムの故障形態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のセルを有する蓄電モジュールを複数備える蓄電システムの故障形態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バッテリに接続される電流センサや電圧センサの値に基づき電池の劣化(故障)を検知することが記載されている。具体的には、電流センサや電圧センサが用いられてバッテリの充電状態が検出される。検出されたバッテリの充電状態が第1の閾値以上のときにバッテリの内部抵抗が測定され、複数個の内部抵抗のばらつきが測定される。ばらつきが第2の閾値以上のときに、バッテリが劣化していると判定され、バッテリの劣化の検出が行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電流センサや電圧センサ自体が故障している場合には、バッテリが劣化していないにもかかわらず、誤ってバッテリが劣化していると判断されることがある。
【0005】
本発明は、バッテリ、又は、バッテリの劣化(故障)を検出するためのセンサの故障の有無を判定できる蓄電システムの故障形態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、蓄電手段(例えば、後述のバッテリパック11、蓄電モジュール111、セル112)と、前記蓄電手段の状態を検知する状態検出手段(例えば、後述のセル電圧センサ12、電流センサ13、IPU吸気温度センサ15、温度センサ115)と、前記状態検出手段により取得されたデータを蓄積する蓄積手段(例えば、後述のレコーダ部29)と、前記蓄積手段から得られる蓄積データに基づき、前記蓄電手段又は前記状態検出手段の故障の有無を判定する判定手段(例えば、後述の故障判定部28)と、を備える蓄電システムの故障形態判定装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、蓄積された、状態検出手段により取得された蓄積データに基づいて判定が行われるため、蓄電手段又は状態検出手段の故障の有無を判定することができる。
【0008】
状態検出手段が故障しているにも関わらず蓄電手段が故障していると判定された場合には、本来であれば状態検出手段のみの交換で済むにも関わらず、蓄電手段を交換することになる。しかし、本発明では、蓄積されたデータの特異点を利用して故障形態を捉えることが可能となるため、故障形態の判別可能となる。このため、故障部位(蓄電手段又は状態検出手段のいずれか)のみの交換が可能となり、製品保証費用を大幅に削減することが可能となる。
【0009】
また、故障形態の判別が可能となるため、故障車両の修理のための入庫前に、故障形態を含む蓄積データが修理工場側へ送信されれば、故障形態をあらかじめ把握でき、故障部品の早期準備が可能となる。それにより、故障車両が入庫した際には、故障部位を即交換することができ、結果的に早期解決に繋げることができる。
【0010】
また、前記蓄電手段は複数の蓄電セルから構成され、前記状態検出手段は前記蓄電セルの蓄電容量を均等化するために要する均等化時間を検知し、前記蓄積手段は前記均等化時間の積算値を検出し、前記判定手段は前記積算値に基づき、前記蓄電手段と前記状態検出手段とのいずれが故障しているかを判定する判定手段と、を備えることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、蓄電セルの蓄電容量を均等化するために要する均等化時間が検知され、均等化時間の積算値が検出され、蓄積手段に蓄積されている積算値が用いられるため、蓄電セルの電圧センサによって検知することが困難な蓄電セルの故障であっても、検知することができ、蓄電セルの故障である旨の判定をすることができる。
【0012】
また、前記状態検出手段は前記蓄電手段の電圧を測定し、前記蓄積手段は前記蓄電手段から得られる第1の電圧値と前記第1の電圧値よりも後に得られる第2の電圧値との差分値を蓄積し、前記判定手段は蓄積された前記差分値に基づき、前記蓄電手段と前記状態検出手段とのいずれが故障しているかを判定することが好ましい。
【0013】
この発明によれば、蓄電手段の電圧が検出され、蓄電手段から得られる第1の電圧値と第1の電圧値よりも後に得られる第2の電圧値との差分値が蓄積されるため、当該蓄積された差分値に基づき、蓄電手段、状態検出手段のいずれが故障しているか否かの判定を行うことができる。このため、蓄電手段、状態検出手段のいずれが故障しているか否かの判定を行うための構成を新たに設けずに済み、容易に当該判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バッテリ、又は、バッテリの劣化(故障)を検出するためのセンサの故障の有無を判定できる蓄電システムの故障形態判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置を備える車両1を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において電圧センサの故障が検出される場合を示すグラフである。
図4】本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置においてバッテリパック11のセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。
図5】本発明の第2実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の第3実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の第4実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の第4実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置においてマイクロショートによるセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。
図9】本発明の第4実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において抵抗上昇によるセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。
図10】本発明の第5実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第6実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
図12】本発明の第6実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において取得される、走行中のバッテリパック11の温度の頻度分布を示すグラフである。
図13】本発明の第6実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において取得される、電池に導入される吸気温度の頻度分布を示すグラフである。
図14】本発明の第7実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
図15】本発明の第7実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置においてバッテリパック11のセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。
図16】本発明の第7実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において電流センサ13の故障が検出される場合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1は、本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置を備える車両1を示すブロック図である。図2は、本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。図3は、本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において電圧センサの故障が検出される場合を示すグラフである。図4は、本発明の第1実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置においてバッテリパック11のセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。
【0017】
第1実施形態に係る蓄電システムの故障形態判定装置は、電気自動車やハイブリッド車等の、蓄電システムを構成するバッテリパック11から供給される電気により駆動する車両1において備えられている。図1に示すように、車両1に設けられる蓄電システムは、組電池により構成されるバッテリパック11を有している。バッテリパック11は、複数個の蓄電モジュール111を有している。蓄電モジュール111は、例えばリチウムイオンバッテリにより構成された2次電池である複数個のセル(蓄電セル)112を有している。複数個のセル112は、積層され電気的に直列に接続されている。バッテリパック11は、高電圧バッテリを構成し、電気自動車やハイブリッド車の蓄電池として使用される。
【0018】
蓄電手段としてのバッテリパック11には、温度センサ115が設けられている。温度センサ115は、バッテリパック11における全てのセル112の温度を検出する。また、全てのセル112には、電圧センサ(以下「セル電圧センサ12」と言う)が電気的に接続されている。セル電圧センサ12は、各蓄電モジュール111に設けられており、バッテリパック11における全てのセル112の開放電圧や、全てのセル112についての、セル電圧の最大値及びセル電圧の最小値を検出する。また、バッテリパック11から出力される電流を検出可能な電流センサ13が設けられている。
【0019】
また、IPU(バッテリボックス)の中に設けられるバッテリパック11の冷却のために供給される冷媒の温度を検出可能なIPU吸気温度センサ15が設けられている。IPU吸気温度センサ15は、一方が車両1の車内に開口すると共に他方が組電池に向けて開口する吸気ダクト内に配置されており、バッテリパック11への吸気の温度を検出可能である。また、車両1の車外の温度を検出可能な外気温度センサ16が設けられている。外気温度センサ16は、車両1の車外に設けられている。セル電圧センサ12、電流センサ13、IPU吸気温度センサ15、外気温度センサ16、温度センサ115は、導線や基板上の配線等を介して、ECU20に電気的に接続されている。セル電圧センサ12、電流センサ13、IPU吸気温度センサ15、温度センサ115は、蓄電手段の状態を検知する状態検出手段を構成する。
【0020】
また、ECU20からの出力を車の外部へ出力する送信部18が、ECU20に電気的に接続されている。具体的には、送信部18は、DSP(Digital Signal Processor)等を有し、3GやLTE等の携帯電話網に代表される無線通信網を通じて無線通信を行い、サーバと無線通信を行うことが可能に構成されている。送信部18は、セル電圧センサ12が故障している旨の情報や、セル112が故障している旨の情報や、故障しているセル電圧センサ12又はセル112のIDの情報をサーバに送信可能であるとともに、車両1を識別する識別番号(以下、「車両ID」ともいう)、パスワード、車両の現在位置情報、及び施設情報の配信要求等をサーバに送信可能である。
【0021】
ECU20は、セル電圧センサ12等からの入力信号波形を入力する入力回路や、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)や、CPUで実行される各種演算プログラム、各種マップ、後述の第1閾値A〜第8閾値Lなどを記憶する記憶回路や、制御信号を出力する出力回路等を備えている。これらにより、ECU20においては、電圧管理部21と、電流管理部22と、出力管理部23と、温度管理部24と、SOC演算部25と、容量演算部26と、均等化部27と、故障判定部28と、レコーダ部29と、タイムスタンプ部30と、が構成される。
【0022】
電圧管理部21は、セル電圧センサ12により検出された、全てのセル112の開放電圧を入力する。また、電圧管理部21は、セル電圧センサ12により検出された、全てのセル112についてのセル電圧の最大値及びセル電圧の最小値を入力し、セル電圧の最大値とセル電圧の最小値との差(以下「電圧差」と言う)を算出する。また、電圧管理部21は、全てのセル112の開放電圧のデータと、電圧差のデータとを、出力管理部23、SOC演算部25、容量演算部26、均等化部27、故障判定部28、及び、タイムスタンプ部30へ出力する。
【0023】
電流管理部22は、電流センサ13により検出された、バッテリパック11から出力された電流を入力する。また、電流管理部22は、電流センサ13により検出された、バッテリパック11から出力された電流のデータを、出力管理部23、SOC演算部25、容量演算部26、均等化部27、故障判定部28、及び、タイムスタンプ部30へ出力する。
【0024】
出力管理部23は、電圧管理部21からの開放電圧のデータと、電流管理部22からの電流のデータと、SOC演算部25からの全てのセル112のSOCと、に基づき、バッテリパック11から出力される電流の指示値を管理する。
【0025】
温度管理部24は、外気温度センサ16からの温度のデータを入力し、エンジン冷却水の温度を略一定温度に温度管理する。また、温度管理部24は、IPU吸気温度センサ15及び外気温度センサ16からの温度のデータを故障判定部28及びタイムスタンプ部30へ出力する。
【0026】
SOC演算部25は、セル電圧センサ12によって得られた全てのセル112の電圧値と、セル112のSOC(State of Charge)特性グラフと、に基づいて、全てのセル112のSOCを算出し、出力管理部23及び容量演算部26へ出力する。
【0027】
容量演算部26は、SOC演算部25によって得られた全てのセル112の現在のSOCに基づき、各セル112の容量を算出する。また、容量演算部26は、SOC演算部25によって得られた各セル112の現在のSOCと、各セル112の使用下限SOCと、の差と、各セル112の容量と、の積を算出することにより、全てのセル112について、放電可能容量を算出する。また、容量演算部26は、セル112の使用上限SOCと、SOC演算部25によって得られた全てのセル112の現在のSOCと、の差と、各セル112の容量と、の積を算出することにより、全てのセル112について、充電可能容量を算出する。容量演算部26は、算出した各セル112の容量、放電可能容量、及び、充電可能容量を、出力管理部23及び均等化部27へ出力する。
【0028】
均等化部27は、均等化回路を有している。均等化部27は、容量演算部26からの各セル112の容量、放電可能容量、及び、充電可能容量に基づき、各セル112の放電可能容量に応じた放電を行って全セル112において蓄電容量の均等化を行うために、均等化回路に対して制御を行う。また、均等化部27は、各セル112について、均等化の制御を開始してから完了するまでの、均等化に要した時間を計測して検知し、レコーダ部29に記憶されている各セル112についての均等化に要した時間のこれまでの積算値を読み出し、当該積算値に今回計測した、均等化に要した時間を加算して新たな積算値のデータとして、タイムスタンプ部30へ出力する。
【0029】
タイムスタンプ部30は、電圧管理部21からの開放電圧のデータや電圧差のデータ、電流管理部22からの電流のデータ、出力管理部23からの電流の指示値のデータ、均等化部27からの均等化に要した時間の積算値のデータ、温度センサ115からのバッテリパック11の温度のデータ、IPU吸気温度センサ15からのバッテリパック11の冷却のために供給される冷媒の温度のデータ等に、日付や時間を含むタイムスタンプを付して、レコーダ部29へ出力する。
【0030】
蓄積手段としてのレコーダ部29は、状態検出手段により取得されたデータを蓄積する。
具体的には、レコーダ部29は、タイムスタンプ部30から出力された、電圧管理部21からの開放電圧のデータや電圧差のデータ、電流管理部22からの電流のデータ、出力管理部23からの電流の指示値のデータ、均等化部27からの均等化に要した時間の積算値のデータ、温度センサ115からのバッテリパック11の温度のデータ、IPU吸気温度センサ15からのバッテリパック11の冷却のために供給される冷媒の温度のデータ等を記憶回路に記憶する。また、レコーダ部29は、過去にレコーダ部29に記憶し蓄積しているデータ、具体的には、開放電圧の値のデータや、電圧差のデータや、セル112の均等化にかかった均等化時間や、均等化時間の積算値のデータ、即ち、全セル112において所定の期間に複数回行われた均等化にかかった均等化時間の累計(以下、「均等化回路作動積算時間」と言う)のデータや、バッテリパック11の温度のデータや、バッテリパック11への吸気の温度のデータや、バッテリパック11の電流のデータ等を検出し、故障判定部28へ出力する。
【0031】
判定手段としての故障判定部28は、蓄積手段としてのレコーダ部29から得られる蓄積データに基づき、蓄電手段(バッテリパック11やセル112)、又は、状態検出手段(セル電圧センサ12、電流センサ13、IPU吸気温度センサ15、温度センサ115)の故障の有無を判定する。具体的には故障判定部28は、レコーダ部29に記憶されている電圧管理部21からの開放電圧のデータ、電圧値の電流管理部22からの電流のデータ、出力管理部23からの、電流の指示値のデータ、均等化部27からの、均等化に要した時間の積算値のデータ、温度センサ115からの、バッテリパック11の温度のデータ、IPU吸気温度センサ15からの、バッテリパック11の冷却のために供給される冷媒の温度のデータ等に基づき、セル電圧センサ12、電流センサ13、IPU吸気温度センサ15、温度センサ115等が故障しているのか、バッテリパック11やセル112が故障しているのか、の判定を行う。
【0032】
上記構成による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御については、以下のとおりである。
先ず、図2に示すように、車両1においてイグニッションスイッチをONにしたときに、S11では、セル電圧センサ12(図1参照)は、複数のセル112を有する蓄電モジュール111を複数備える蓄電装置のバッテリパック11における、全てのセル112の電圧差を検出し、タイムスタンプ部30へ出力する。そして、タイムスタンプ部30は、セル電圧センサ12により検出された全てのセル112の電圧差のデータを入力し、当該電圧差を測定した日の日付及び時間含むタイムスタンプを電圧差のデータに付して、レコーダ部29へ出力する。レコーダ部29は、当該タイムスタンプが付された電圧差のデータを記憶する。そして、ECU20の制御は、S12へ移行する。
【0033】
S12では、セル電圧センサ12は、バッテリパック11における、全てのセル112の開放電圧を検出し、タイムスタンプ部30へ出力する。そして、タイムスタンプ部30は、セル電圧センサ12により検出された全てのセル112の開放電圧の値のデータを入力し、当該値を測定した日の日付及び時間含むタイムスタンプを当該値のデータに付して、レコーダ部29へ出力する。レコーダ部29は、当該タイムスタンプが付された開放電圧の値のデータを記憶する。そして、ECU20の制御は、S13へ移行する。
【0034】
S13では、故障判定部28は、今回算出した電圧差と前回算出した電圧差とをレコーダ部29から入力し、これらに基づき、経過時間に対する電圧差の増加量のグラフにおける傾きの値(dx/dt)を算出し、タイムスタンプ部30へ出力する。そして、タイムスタンプ部30は、故障判定部28からの傾きの値のデータを入力し、当該傾きの値を測定した日の日付及び時間含むタイムスタンプを当該傾きの値のデータに付して、レコーダ部29へ出力する。レコーダ部29は、当該タイムスタンプが付された傾きの値のデータを記憶する。そして、故障判定部28は、算出した傾きの値の絶対値が第1閾値Aを超えているか否かの判断を行う。
【0035】
セル112は、図4において実線のグラフで示すように、使用され続けることに伴い、徐々に電位差が大きくなり、これに伴い、電位差の傾き(増加率)が大きくなる。従って、電位差の傾き(増加率)が、徐々に大きくなり、所定の第1閾値Aよりも大きくなった場合には、セル112が劣化(故障)していると判定することができる。これに対して、図3において実線のグラフで示すように、突然電位差の傾き(増加率)が大きくなり、所定の第1閾値Aを超えた場合には、セル112が劣化(故障)しているとは考えにくく、セル電圧センサ12の故障であると考えられる。
【0036】
そこで、算出した傾きの値の絶対値が第1閾値Aを超えている場合(YES)には、ECU20の制御は、S14へ移行する。算出した傾きの値の絶対値が第1閾値A以下の場合(NO)には、ECU20の制御は、S11へ戻る。
【0037】
S14では、故障判定部28は、前回算出した傾きの値、及び、前々回算出した傾きの値をレコーダ部29から入力する。そして、前回算出した傾きの値、又は、前々回算出した傾きの値が、0に略等しい値であるか否かの判断を行う。前回算出した傾きの値、又は、前々回算出した傾きの値が、0に略等しい値である場合(YES)には、ECU20の制御は、S15へ移行する。前回算出した傾きの値、又は、前々回算出した傾きの値が、0に略等しい値ではない場合(NO)には、ECU20の制御は、S17へ移行する。
【0038】
S15では、故障判定部28は、セル電圧センサ12が故障している旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S16へ移行する。
【0039】
S16では、故障判定部28は、S11において検出された電圧差が最大のときに、S12で検出された全セル電圧において、傾きの値の絶対値が第1閾値Aを超えているセル112の電圧の検出したセル電圧センサ12のIDを特定し、当該IDを送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S11へ戻る。
【0040】
S17では、故障判定部28は、セル112が故障している旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S18へ移行する。
【0041】
S18では、故障判定部28は、S12において検出された全てのセル112の開放電圧うちで、電圧値が第2閾値領域Bに含まれず、電圧値が極端に大きいか又は極端に小さいセル112のIDを特定し、当該IDを送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S11へ戻る。
【0042】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、蓄電システムの故障形態判定装置は、蓄電手段としてのバッテリパック11と、バッテリパック11の状態を検知する状態検出手段(セル電圧センサ12、電流センサ13、IPU吸気温度センサ15、温度センサ115)と、状態検出手段により取得されたデータを蓄積する蓄積手段としてのレコーダ部29と、レコーダ部29から得られる蓄積データに基づき、蓄電手段又は状態検出手段の故障の有無を判定する判定手段としての故障判定部28と、を備える。
【0043】
これにより、電圧差の過去の蓄積データを利用することで、セル電圧センサ12の故障か、セル112の劣化(故障)かを判別でき、確実にバッテリパック11を構成するセル112の劣化の有無を検出することができる。このため、蓄電手段、状態検出手段のいずれが故障しているか否かの判定を行うことができる。
【0044】
セル電圧センサ12が故障しているにも関わらずバッテリパック11のセル112が故障していると判定された場合には、本来であればセル電圧センサ12のみの交換で済むにも関わらず、バッテリパック11を交換することになる。しかし、本実施形態では、蓄積されたデータの特異点を利用して故障形態を捉えることが可能となるため、故障形態の判別可能となる。このため、故障部位(セル電圧センサ12又はバッテリパック11のいずれか)のみの交換が可能となり、製品保証費用を大幅に削減することが可能となる。
【0045】
また、故障形態の判別が可能となるため、故障車両の修理のための入庫前に、故障形態を含む蓄積データが修理工場側へ送信部18から送信されることにより、故障形態をあらかじめ把握でき、故障部品の早期準備が可能となる。それにより、故障車両が入庫した際には、故障部位を即交換することができ、結果的に早期解決に繋げることができる。
【0046】
また、状態検出手段は蓄電手段としてのセル112の電圧を測定する。蓄積手段は、蓄電手段から得られる第1の電圧値と、第1の電圧値よりも後に得られる第2の電圧値と、の差分値としての電圧差を蓄積する。判定手段は蓄積された差分値としての電圧差に基づき、蓄電手段と状態検出手段とのいずれが故障しているかを判定する。
【0047】
これにより、蓄電手段としてのセル112の電圧を検出し、電圧値の差分である電圧差が蓄積され利用されるため、蓄電手段と状態検出手段とのいずれが故障しているかを判定することができる。このため、蓄電手段、状態検出手段のいずれが故障しているか否かの判定を行うための構成を新たに設けずに済み、容易に当該判定を行うことができる。
【0048】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態を、図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の第2実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。本実施形態に係る蓄電システムの故障形態判定装置は、主として各セル112の充電量を均等化する際の、均等化回路の動作積算時間を用いて、故障形態の判定を行う点において、第1実施形態とは異なる。
【0049】
第2実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御については、以下のとおりである。第2実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御を行う前提として、セル112の均等化が、所定の時間間隔で行われる。
【0050】
セル112の均等化において均等化部27は、セル112の充電量にばらつきが生じ、所定のセル112の充電量が他のセル112の充電量に対して極端に多いか又は少ない場合には、均等化回路を作動させて、セル112の充電量の均等化を行う。そして、均等化部27は、均等化が行われている時間、即ち、均等化回路が作動している時間のデータ(以下「均等化時間データ」と言う)を、タイムスタンプ部30へ出力する。そして、タイムスタンプ部30は、均等化時間データを入力し、均等化を行った日の日付及び時間含むタイムスタンプを、均等化時間データに付して、レコーダ部29へ出力する。レコーダ部29は、当該タイムスタンプが付された均等化時間データを記憶する。
【0051】
先ず、S111では、故障判定部28は、所定の期間に複数回均等化が行われて得られた均等化時間データであって、レコーダ部29に蓄積されている、タイムスタンプが付された均等化時間データを入力する。そして、入力した均等化時間データを用いて、全セル112において、均等化回路作動積算時間を算出する。そして、ECU20の制御は、S112へ移行する。
【0052】
S112では、故障判定部28は、S111においてレコーダ部29から入力した均等化時間データを用いて、全セル112について、今回までの均等化にかかった累計時間と、前回の均等化にかかった累計時間との差(以下、「均等化回路作動積算時間差」と言う)を算出する。そして、ECU20の制御は、S113へ移行する。
【0053】
S113では、故障判定部28は、S111において算出した均等化回路作動積算時間が第3閾値よりも小さいセル112の有無を判定する。均等化回路作動積算時間が第3閾値Cよりも小さいセル112がある場合(YES)、ECU20の制御は、S115へ移行する。均等化回路作動積算時間が第3閾値Cよりも小さいセル112がない場合(NO)、ECU20の制御は、S114へ移行する。
【0054】
S114では、故障判定部28は、S112において算出した均等化回路作動積算時間差が第4閾値Dよりも小さいセル112がある場合(YES)、ECU20の制御は、S115へ移行する。均等化回路作動積算時間差が第4閾値Dよりも小さいセル112がない場合(NO)、ECU20の制御は、S111へ戻る。
【0055】
S115では、故障判定部28は、セル112が故障している旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S111へ戻る。
【0056】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、蓄電手段としてのバッテリパック11は複数の蓄電セルとしてのセル112から構成される。状態検出手段としての均等化部27は、セル112の蓄電容量を均等化するために要する均等化時間を検知する。蓄積手段としてのレコーダ部29は均等化時間の積算値を検出する。判定手段としての故障判定部28は、レコーダ部29の積算値に基づき、蓄電手段と状態検出手段とのいずれが故障しているかを判定する判定手段と、を備える。
【0057】
これにより、セル電圧センサ12により検知することが困難なセル112の故障であっても、検知することができ、セル112の故障である旨の判定をすることができる。
【0058】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態を、図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の第3実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
【0059】
本実施形態に係る蓄電システムの故障形態判定装置は、セル112の故障の判定が行われた場合に、いずれのセル112が故障しているのかについて、セル112のIDを特定する点において、第2実施形態とは異なる。これ以外の第3実施形態における構成については、第2実施形態の構成と同様であるため、同一の部材や処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
第3実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御については、以下のとおりである。第3実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御のS111〜S114についは、第2実施形態におけるECU20の制御のS111〜S114と同一である。S115では、故障判定部28は、セル112が故障している旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S116へ移行する。
【0061】
S116では、故障判定部28は、レコーダ部29に記憶されている均等化回路作動積算時間のデータ、均等化回路作動積算時間差のデータを入力する。そして、故障判定部28は、S111において算出した均等化回路作動積算時間が第3閾値Cよりも小さいセルID、又は、S114において算出した均等化回路作動積算時間差が第4閾値Dよりも小さいセルIDを特定し、当該IDを送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S111へ戻る。
【0062】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、セル112の故障であると判定された当該セル112のIDを特定することができる。これにより、セル112を交換する際に、どのセル112が故障しているかについて把握することができるので、セル112の交換作業等を効率よく行うことができる。
【0063】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態を、図7図9を参照しながら説明する。
図7は、本発明の第4実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。図8は、本発明の第4実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置においてマイクロショートによるセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。図9は、本発明の第4実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において抵抗上昇によるセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。
【0064】
本実施形態に係る蓄電システムの故障形態判定装置は、セル112の故障の判定が行われた場合に、当該セル112がどのような故障形態かを特定する点において、第2実施形態とは異なる。これ以外の第4実施形態における構成については、第2実施形態の構成と同様であるため、同一の部材や処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0065】
第4実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御については、以下のとおりである。第4実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御のS111〜S114についは、第2実施形態におけるECU20の制御のS111〜S114と同一である。
【0066】
S115では、故障判定部28は、セル112が故障している旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S216へ移行する。
【0067】
S216では、故障判定部28は、S112において算出した均等化回路作動積算時間差が増減しているセル112の有無を判定する。
具体的には、図9において一点鎖線で囲まれた48番目のセル112が示すように、今回の均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差が減少し、且つ、前回までの均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差が増加しているか否かの判定を行う。図8及び図9においては、実線のグラフが、今回の均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差を示しており、破線のグラフが、前回までの均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差を示している。
【0068】
図9に示すように、均等化回路作動積算時間差に減少、及び、増加がある場合、セル112において抵抗上昇となっていることにより、セル112が故障していると考えられる。そこで、今回の均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差が減少し、且つ、前回までの均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差が増加している場合には(YES)、ECU20の制御は、S217へ移行する。
【0069】
また、例えば、セル112においてマイクロショートが発生している場合には、図8において一点鎖線で囲まれた48番目のセル112が示すように、今回の均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差と、前回までの均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差と、の両方が減少することが考えられる。そこで、今回の均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差が減少し、且つ、前回までの均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差が増加しておらず、例えば、今回の均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差と、前回までの均等化にかかった時間が含まれた均等化回路作動積算時間差と、の両方が急激に減少している場合には(NO)、ECU20の制御は、S218へ移行する。
【0070】
S217では、故障判定部28は、抵抗上昇が発生していることに起因するセル112の故障である旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S111へ戻る。S218では、故障判定部28は、マイクロショートが発生していることに起因するセル112の故障である旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S111へ戻る。
【0071】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、例えば、抵抗上昇が発生していることに起因するセル112の故障や、マイクロショートが発生していることに起因するセル112の故障等の、故障の態様を特定できる。このため、セル112が用いられているバッテリパック11において生じやすい故障の態様を把握することができる。
【0072】
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態を、図10を参照しながら説明する。図10は、本発明の第5実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。
【0073】
本実施形態に係る蓄電システムの故障形態判定装置は、セル電圧センサ12が故障しているか否かの判定をする点において、第2実施形態とは異なる。これ以外の第4実施形態における構成については、第2実施形態の構成と同様であるため、同一の部材や処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0074】
第5実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御については、以下のとおりである。
先ず、S111では、故障判定部28は、所定の期間に複数回均等化が行われて得られた均等化時間データであって、レコーダ部29に蓄積されている、タイムスタンプが付された均等化時間データを入力する。そして、入力した均等化時間データを用いて、全セル112において、均等化回路作動積算時間を算出する。そして、ECU20の制御は、S312へ移行する。
【0075】
S312では、故障判定部28は、S111において算出した均等化回路作動積算時間の中で、第5閾値Eよりも小さい均等化回路作動積算時間を有するセル112のみにより構成されている蓄電モジュール111の有無を判定する。第5閾値Eは、他の蓄電モジュール111に含まれているセル112の均等化回路作動積算時間が考慮されて、故障判定部28によって、適切な値に設定されている。第5閾値Eよりも小さい均等化回路作動積算時間を有するセル112のみにより構成されている蓄電モジュール111が存在する場合(YES)、ECU20の制御は、S314へ移行する。第5閾値Eよりも小さい均等化回路作動積算時間を有するセル112のみにより構成されている蓄電モジュール111が存在しない場合(NO)、ECU20の制御は、S313へ移行する。
【0076】
S313では、故障判定部28は、S111において算出した均等化回路作動積算時間に基づき、蓄電モジュール111毎の均等化回路作動積算時間σ(以下「モジュール均等化回路作動積算時間σ」と言う)が算出される。そして、第6閾値Fよりも大きいモジュール均等化回路作動積算時間σを有する蓄電モジュール111の有無を判定する。第6閾値Fは、他の蓄電モジュール111のモジュール均等化回路作動積算時間σが考慮されて、故障判定部28によって、適切な値に設定される。第6閾値Fよりも大きいモジュール均等化回路作動積算時間σを有する蓄電モジュール111が存在する場合(YES)、ECU20の制御は、S314へ移行する。第6閾値Fよりも大きいモジュール均等化回路作動積算時間σを有する蓄電モジュール111が存在しない場合(NO)、ECU20の制御は、S111へ戻る。
【0077】
S314では、故障判定部28は、セル電圧センサ12の故障である旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S111へ戻る。
【0078】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、蓄電モジュール111単位の均等化回路作動積算時間(モジュール均等化回路作動積算時間σ)について、閾値に対する大小を判断する。これにより、蓄電モジュール111毎に設けられたセル電圧センサ12が故障している場合の均等化回路作動積算時間の特異点を利用して、セル電圧センサ12が故障しているか否かの判定を行うことができる。
【0079】
<第6実施形態>
以下、本発明の第6実施形態を、図11図13を参照しながら説明する。
図11は、本発明の第6実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。図12は、本発明の第6実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において取得される、走行中のバッテリパック11の温度の頻度分布を示すグラフである。図13は、本発明の第6実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において取得される、電池に導入される吸気温度の頻度分布を示すグラフである。
【0080】
本実施形態に係る蓄電システムの故障形態判定装置は、バッテリパック11の温度センサ115により検出されるバッテリパック11の温度と、IPU吸気温度センサ15により検出される、バッテリパック11に導入される吸気温度と、に基づいて、温度センサ115の故障の有無を判定するように構成されている点において、第1実施形態とは異なる。
【0081】
第6実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御については、以下のとおりである。
先ず、S411では、故障判定部28は、バッテリパック11の温度センサ115によって検出され、タイムスタンプが付されてレコーダ部29に蓄積され保存されているバッテリパック11の温度のデータを、レコーダ部29から入力する。そしてECU20の制御は、S412へ移行する。
【0082】
S412では、故障判定部28は、IPU吸気温度センサ15によって検出され、タイムスタンプが付されてレコーダ部29に蓄積され保存されている、バッテリパック11への吸気の温度のデータを、レコーダ部29から入力する。そしてECU20の制御は、S413へ移行する。
【0083】
S413では、故障判定部28は、所定の期間に検出され蓄積されたバッテリパック11の温度のデータから、図12に示すようなバッテリパック11の温度分布を作成する。また、同様に、故障判定部28は、所定の期間に検出され蓄積されたバッテリパック11への吸気の温度のデータから、図13に示すような吸気温度分布を作成する。そして、故障判定部28は、バッテリパック11の温度分布と吸気温度分布とを比較し、バッテリパック11の温度分布の温度範囲と、吸気温度分布の温度範囲とが略一致しているか否かの判定を行う。
【0084】
具体的には、図12に示すようなバッテリパック11の温度分布の温度範囲Gと、図13に示すような吸気温度分布の温度範囲Hと、が大きく異なっている場合には、温度センサ115が故障している可能性が高い。そこで、吸気温度分布の温度範囲である0℃〜40℃の範囲H内に、バッテリパック11の温度分布の温度範囲Gが、第7閾値Jの割合で含まれているか否かの判定を行う。吸気温度分布の温度範囲H内に、バッテリパック11の温度分布の温度範囲Gが第7閾値以上の割合で含まれている場合(YES)には、ECU20の制御は、S411へ戻る。吸気温度分布の温度範囲内に、バッテリパック11の温度分布が第7閾値未満の割合で含まれている場合(NO)には、ECU20の制御は、S414へ移行する。
【0085】
S414では、故障判定部28は、温度センサ115の故障である旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S411へ戻る。
【0086】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、バッテリパック11の温度分布と吸気温度分布とを用いて、温度センサ115が故障しているか否かを容易に判定することができる。
【0087】
<第7実施形態>
以下、本発明の第7実施形態を、図14図16を参照しながら説明する。
図14は、本発明の第7実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置における故障形態判定処理を示すフローチャートである。図15は、本発明の第7実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置においてバッテリパック11のセル112の故障が検出される場合を示すグラフである。図16は、本発明の第7実施形態による蓄電システムの故障形態判定装置において電流センサ13の故障が検出される場合を示すグラフである。
【0088】
本実施形態に係る蓄電システムの故障形態判定装置は、電流センサ13により検出されるバッテリパック11の電流値を用いて、故障形態の判定を行う点において、第1実施形態とは異なる。
【0089】
第7実施形態による車両1の蓄電システムの故障形態判定装置におけるECU20の制御については、以下のとおりである。
先ず、S511では、故障判定部28は、所定の期間に電流センサ13によって検出され、タイムスタンプが付されてレコーダ部29に蓄積され保存されているバッテリパック11の電流のデータを、レコーダ部29から入力する。同様に、タイムスタンプが付されてレコーダ部29に蓄積され保存されている、所定の期間における電流管理部22からの電流の指示値のデータを、レコーダ部29から入力する。そして故障判定部28は、図15図16に示すように、当該所定期間における、電流管理部22からの電流の指示値に対する、レコーダ部29から入力された電流のデータの電流値の割合(比率)を算出する。そしてECU20の制御は、S512へ移行する。
【0090】
バッテリパック11を使用し続けることにより、図15に示すように、電流のデータの電流値の割合(比率)の絶対値は、徐々に減少し、その傾き(dx/dt)の絶対値は増加する。従って、時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、所定の第8閾値Lよりも大きくなったときには、バッテリパックの劣化(故障)であると判定することが可能である。一方、図16に示すように、突然、経過時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、所定の閾値よりも大きくなったときには、バッテリパックの劣化(故障)であるとは考えにくく、電流センサ13の故障である可能性が高い。
【0091】
そこで、S512では、故障判定部28は、時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、第8閾値Lよりも大きいか否かの判定を行う。時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、第8閾値Lよりも大きい場合(YES)には、ECU20の制御は、S513へ移行する。時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、第8閾値Lよりも大きくない場合(NO)には、ECU20の制御は、S511へ戻る。
【0092】
S513では、故障判定部28は、前回の電流値及び前回の電流の指示値による、時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、略0に等しい値であるか否かの判定を行う。時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、略0に等しい値である場合(YES)には、ECU20の制御は、S514へ移行する。時間に対する当該割合(比率)の傾き(dx/dt)の絶対値が、略0に等しい値ではない場合(NO)には、ECU20の制御は、S515へ移行する。
【0093】
S514では、故障判定部28は、電流センサ13の故障である旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S511へ戻る。S515では、故障判定部28は、バッテリパック11の劣化(故障)である旨の判定を行い、その旨を送信部18へ出力する。そしてECU20の制御は、S511へ戻る。
【0094】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、電流の指示値に対する、電流センサ13により検出された電流値の割合(比率)を用いて、電流センサ13が故障しているか、バッテリパック11が故障しているのかを判定することができる。
【0095】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、第4実施形態では、マイクロショートによるセル122の故障や、抵抗上昇によるセル122の故障を判定したが、これらに限定されない。また、本実施形態では、状態検出手段は、セル電圧センサ12、電流センサ13、IPU吸気温度センサ15、温度センサ115により構成されたが、この構成に限定されない。また、蓄電システムの故障形態判定装置においては、例えば、テレマティクス(登録商標)によるサーバ判定、オンボード診断のいずれが行われてもよい。
また、本実施形態では、セル電圧センサ12は、セル112の開放電圧を検出したが、これに限定されない。セル電圧センサは、開放電圧に代えて、閉路電圧を検出してもよい。
【符号の説明】
【0096】
11 バッテリパック(蓄電手段)
12 セル電圧センサ(状態検出手段)
13 電流センサ(状態検出手段)
15 IPU吸気温度センサ(状態検出手段)
27 均等化部
28 故障判定部(判定手段)
29 レコーダ部(蓄積手段)
111 蓄電モジュール(蓄電手段)
112 セル(蓄電手段)
115 温度センサ(状態検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16