特許第6419061号(P6419061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419061
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】基板取付型の電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20181029BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20181029BHJP
【FI】
   H01R13/52 301F
   H01R13/52 301H
   H01R13/52 E
   H01R12/71
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-243467(P2015-243467)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-111880(P2017-111880A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】實藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】村上 晃庸
(72)【発明者】
【氏名】内藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】川島 裕宣
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−138372(JP,U)
【文献】 実開昭54−184452(JP,U)
【文献】 特開2012−54025(JP,A)
【文献】 特開2006−5209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 12/71−12/75
H01R 12/79
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を保持するハウジングと、
前記ハウジングから前記端子が延出される側に配置されるポッティングケースと、
前記ハウジングと前記ポッティングケースの間に形成されるポッティング領域と、を備え、回路基板に取り付けられる電気コネクタであって、
前記ハウジングは、互いに所定の間隔を空けて後方に延びる一対の第一ポッティング壁を有し、
前記ポッティングケースは、一対の前記第一ポッティング壁のそれぞれと内接又は外接する一対の第二ポッティング壁と、後側において一対の前記第二ポッティング壁を繋ぐ後壁と、を有し、
前記第一ポッティング壁と前記第二ポッティング壁の間に、前記ハウジングと前記ポッティングケースの前後方向における相対的な移動を拘束する拘束部を備える、
ことを特徴とする基板取付型の電気コネクタ。
【請求項2】
一対の前記第二ポッティング壁は、一対の前記第一ポッティング壁のそれぞれに内接し、
前記ポッティングケースは、複数の前記端子を整列させる端子整列部が一体的に形成される、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
一対の前記第二ポッティング壁及び前記後壁に連なり水平方向に延びる底床を備え、
前記端子整列部は、一対の前記第二ポッティング壁の間に支持され、かつ、前記端子整列部の周囲に、前記底床の表裏を貫通する樹脂通路が形成されている、
請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングと前記ポッティングケースは、前記回路基板に取り付けられる共通の基板取付部を備える、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記拘束部は、
前記第一ポッティング壁と前記第二ポッティング壁のいずれか一方に形成される、高さ方向に延びるガイド溝と、
前記第一ポッティング壁と前記第二ポッティング壁のいずれかの他方に形成され、前記ガイド溝に挿入される、高さ方向に延びるガイド条と、を備える、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記第一ポッティング壁と前記第二ポッティング壁の間に、前記ガイド溝及び前記ガイド条よりも後方側に、互いに高さ方向に係止される係止部を備える、
請求項5に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に取り付けられる電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に回路基板に半田付けされた電気コネクタの端子及びその他の部品を囲むように枠状部材を設け、この枠状部材の内側に、溶融した樹脂材料をポッティング(potting)して封止することが提案されている。
また、特許文献2は、異なる方向からポッティングできる堰部材を備える電気コネクタを提案している。
特許文献1及び特許文献2によれば、ポッティング材により電気コネクタの端子及びその他の部品を封止するので、例えば回路基板を搭載する機器が水没するような事態に陥っても、端子の周囲に水が浸入して端子及びその他の部品に電気的な短絡が生ずるのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−271002号公報
【特許文献2】特開2012−54025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポッティング材は、使用を開始してから使用を終えるまでの間、端子などを封止状態に維持することが望まれるが、ポッティング材が破損して、外部から水分の侵入を許してしまうと、所期の目的が果たせなくなる。
ポッティング材の破損の要因として、外力が想定され、この外力としては、電気コネクタと嵌合される相手コネクタに接続されるハーネスに張力が作用する場合が掲げられ、そうすると、相手コネクタを介して電気コネクタが前方に引っ張られる外力が加わる。
【0005】
そこで、本発明は、使用開始後に外力によりポッティング材が破損するのを防止できる、基板取付型の電気コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基板取付型の電気コネクタは、端子を保持するハウジングと、ハウジングから端子が延出される側に配置されるポッティングケースと、ハウジングとポッティングケースの間に形成されるポッティング領域と、を備える。
本発明におけるハウジングは、互いに所定の間隔を空けて後方に延びる一対の第一ポッティング壁を有し、ポッティングケースは、一対の第一ポッティング壁のそれぞれと内接又は外接する一対の第二ポッティング壁と、後側において一対の第二ポッティング壁を繋ぐ後壁と、を有し、第一ポッティング壁と第二ポッティング壁の間に、ハウジングとポッティングケースの前後方向における相対的な移動を拘束する拘束部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の電気コネクタは、ハウジングの一対の第一ポッティング壁に、ポッティングケースの一対の第一ポッティング壁が内接又は外接し、しかも、第一ポッティング壁と第二ポッティング壁の間に、ハウジングとポッティングケースの前後方向における相対的な移動を拘束する拘束部を備える。したがって、ハウジングが前方に引っ張られる外力が作用したとしても、ポッティングケースもハウジングとともに引っ張られる。これにより、ハウジングとポッティングケースの間に相対的な位置ずれが生じることがないので、ポッティング領域に存在するポッティングに外力が加わらずに済み、ポッティング材が破損するのを防止できる。
【0008】
本発明の電気コネクタにおいて、一対の第二ポッティング壁を一対の第一ポッティング壁のそれぞれに内接させ、ポッティングケースに、ハウジングに保持される複数の端子を整列させる端子整列部を一体的に形成することが好ましい。
ポッティングケースに端子整列部を一体的に形成することにより、ポッティングケースをハウジングに組み付けるだけで、端子のタイン部を端子整列部に挿通することができる。なお、端子整列部を一体的に形成させるために、第二ポッティング壁を第一ポッティング壁に内接させる。
【0009】
本発明の電気コネクタにおいて、一対の第二ポッティング壁及び後壁に連なり水平方向に延びる底床を備え、端子整列部は、一対の第二ポッティング壁の間に支持され、かつ、端子整列部の周囲には、底床の表裏を貫通する樹脂通路が形成されていることが好ましい。
この底床は、ポッティングされる樹脂材料が、必要以上に回路基板に達するのを防ぐために設けられる。ただし、端子整列部と回路基板の間における端子の電気的な絶縁性を確保するために、樹脂通路を設け、この通路を通って樹脂材料を端子整列部と回路基板の間に充填させる。
【0010】
本発明の電気コネクタにおいて、ハウジングとポッティングケースは、回路基板に取り付けられる共通の基板取付部を備えることが好ましい。
例えば、ねじ止めにより電気コネクタを回路基板に取り付ける場合には、ハウジングとポッティングケースを個別に回路基板にねじ止めするのに比べて、ねじ止め箇所を共通にすることにより、ねじ止めの作業負担を半減できる。
【0011】
本発明の電気コネクタにおいて、拘束部は、第一ポッティング壁と第二ポッティング壁のいずれか一方に形成される、高さ方向に延びるガイド溝と、第一ポッティング壁と第二ポッティング壁のいずれかの他方に形成され、ガイド溝に挿入される、高さ方向に延びるガイド条と、を備えることが好ましい。
このガイド溝及びガイド条を設けることにより、ハウジングとポッティングケースの前後方向への相対的な移動を拘束するのに加え、ハウジングにポッティングケースを組み付ける際に、お互いを位置決めしながら組み付けることができる。
【0012】
本発明の電気コネクタにおいて、ハウジングの第一ポッティング壁とポッティングケースの第二ポッティング壁の間に、ガイド溝及びガイド条よりも後方側に、互いに高さ方向に係止される係止部を備えることが好ましい。
このように、ハウジングとポッティングケースの高さ方向の移動を拘束すれば、高さ方向におけるハウジングとポッティングケースの位置ずれによるポッティングの破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気コネクタによれば、ハウジングが前方に引っ張られたとしても、ポッティングケースもハウジングとともに前方に引っ張られるので、ハウジングとポッティングケースの間に相対的な位置ずれが生じることがなく、ポッティング領域に存在するポッティング材が破損するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る基板取付型の電気コネクタを示す斜視図であり、上面側から視た図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板取付型の電気コネクタを示す斜視図であり、底面側から視た図である。
図3図1の電気コネクタのハウジングを単体で示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は(b)のIIId−IIId線矢視断面図、(e)は底面図である。
図4図1の電気コネクタのポッティングケースを単体で示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。
図5図1の電気コネクタを基板に取り付ける様子を示す斜視図である。
図6図1の電気コネクタにポッティングを施した様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る基板取付型の電気コネクタ1について説明する。
本実施形態に係る電気コネクタ1は、回路基板3(図5参照)に取り付けられるものであり、回路基板3に形成される回路と相手コネクタとを電気的に接続するものである。電気コネクタ1は、図1及び図2に示すように、電気的な接続を担う端子5を保持するハウジング10と、ハウジング10から端子5が延出される側に配置されるポッティングケース20と、を備え、ハウジング10とポッティングケース20の間にポッティング領域7が形成される。電気コネクタ1は、ハウジング10が保持するオス型の端子5を保持するオス型のコネクタである。
【0016】
電気コネクタ1は、図5に示すように、ハウジング10及びポッティングケース20が互いに組み付けられた後に回路基板3に取り付けられ、その後、回路基板3の上に形成されたポッティング領域7に溶融した樹脂材料を導入して硬化させることでポッティング材が形成される。電気コネクタ1は、回路基板3に取り付けられて使用を開始した後に、外力が加わってもポッティング材が破損しにくい構造を有している。以下、電気コネクタ1の構成を説明した後に、電気コネクタ1が奏する効果を説明する。
なお、電気コネクタ1において、回路基板3が配置される側を下、その反対側を上とする。また、電気コネクタ1において、図示を省略する相手コネクタが嵌合される側を前、端子5が引き出される側を後とする。この定義は、本実施形態だけでなく、本願発明にも適用されるものとする。
【0017】
[ハウジング10]
複数の端子5を保持するハウジング10は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより、一体に形成される。
図1図3に示すように、ハウジング10は、図示しない相手コネクタが嵌合される嵌合フード11を前側に備えている。嵌合フード11の内側には、前端が開口する受容空間12(図3(a),(b))が形成されている。相手コネクタは、この受容空間12に挿入されることにより、電気コネクタ1と嵌合される。
【0018】
ハウジング10は、嵌合フード11から後方に向けて延びる一対の第一ポッティング壁13を備えている。第一ポッティング壁13は、互いに所定の間隔を空けて、ほぼ平行に形成されている。
第一ポッティング壁13は、ポッティングケース20の第二ポッティング壁21とともに、ポッティング領域7を形成する。一対の第一ポッティング壁13の間には、ハウジング10から引き出される端子5が配置される。第一ポッティング壁13は、後方側に延出する長さ(L1)がやはり後方側に延出される端子5の水平部5Hの長さよりもわずかに長く設定されており、また、その頂面の位置が、端子5の垂直部5Vの上端よりもわずかに高く設定されている。
【0019】
第一ポッティング壁13は、互いに対向する内壁面14のそれぞれに、ガイド溝15と、係止片16と、を備えている。
ガイド溝15は、第一ポッティング壁13の高さ方向に貫通する開口断面が矩形の溝である。係止片16は、ポッティングケース20が組み付けられると、ポッティングケース20の係止片25と互いに係止される。
ガイド溝15にポッティングケース20のガイド条24が隙間なく挿入され、かつ、係止片16が係止片25と互いに係止されることで、ハウジング10とポッティングケース20が、互いに適切な位置で組み付けられ、かつ、抜け止めされる。
また、第一ポッティング壁13は、図3(e)に示すように、それぞれの下面17に、電気コネクタ1をねじ止めにより回路基板3に固定するためのねじ穴18が形成されている。ねじ穴18は、一方が下面17の前方端の近くに、他方が下面17の後方端の近くに形成されている。
【0020】
嵌合フード11と第一ポッティング壁13との境界には、端子保持壁19が形成されている(図3(d))。多くの電気コネクタは、保持壁に設けられる保持孔に端子を圧入することで、端子をハウジングに保持する。しかし、本実施形態の電気コネクタ1は、ハウジング10を射出成形するのと同時に端子5をインサート成形することにより、端子5を端子保持壁19に保持させる。これは、それぞれの端子5と端子保持壁19の間に隙間が生じるのを防止し、充填された溶融状態の樹脂材料が、ポッティング領域7から嵌合フード11の受容空間12に漏洩するのを防止するためである。ただし、この端子5のインサート成形は、本発明における好ましい形態であり、本発明は圧入による端子5の保持を採用することを妨げない。
【0021】
それぞれの端子5は、図3に示すように、回路基板3と平行をなす水平部5Hと、この水平部5Hの端部から直角に屈曲された垂直部5VとからなるL字形状を有している。本実施形態における端子5は、水平部5Hが回路基板3に最も近い内側列の端子51と、水平部5Hが回路基板3から最も遠い外側列の端子53と、水平部5Hが端子51と端子53の間に配置される中間列の端子52と、を含んでいる。なお、水平部5Hの長さ及び垂直部5Vの長さは、内側列の端子51が最も短く、外側列の端子53が最も大きい。内側列の端子51、中間列の端子52及び外側列の端子53は同一のピッチ及び同一の位相で配列されているが、配列方向に位相を例えば半ピッチずつずらすこともできる。
【0022】
[ポッティングケース20]
ポッティングケース20は、図1及び図2に示すように、ハウジング10とともにポッティング領域7を区画し、電気絶縁性の樹脂を射出成形することにより、一体に形成される。
ポッティングケース20は、図1図2及び図4に示すように、平面視した形状がコ字状(又は、C字状)をなしており、互いに所定の間隔を空けてほぼ平行に形成されている一対の第二ポッティング壁21と、第二ポッティング壁21を後側であるその一方端で繋ぐ後壁23と、を有する。
第二ポッティング壁21は、後壁23からの突出長さ(L2)が、ハウジング10の第一ポッティング壁13の長さ(L1)とほぼ同等であり、高さ(H2)も、第一ポッティング壁13の高さ(H1)と同等である。一対の第二ポッティング壁21の外壁面22の間隔は、第二ポッティング壁21がハウジング10の第一ポッティング壁13の間にほぼ隙間なく挿入できるように設けられている。
【0023】
第二ポッティング壁21は、互いに対向する外壁面22のそれぞれに、ガイド条24と、係止片25と、を備えている。
ガイド条24は、第二ポッティング壁21の高さ方向に連なる断面が矩形の突起である。係止片25は、前述したように、係止片16と互いに係止されることで係止部を構成する。
ガイド条24がハウジング10のガイド溝15に隙間なく挿入され、かつ、係止片25が係止片16と互いに係止されることで、ハウジング10とポッティングケース20は、互いに適切な位置で組み付けられ、かつ、抜け止めされる。
【0024】
ポッティングケース20は、下方の面側において、後壁23及び第二ポッティング壁21に連なり水平方向に延びる底床26と、底床26の概略中央部分に形成されるタインプレート28と、を備えている。端子整列部として機能するタインプレート28は、一対の第二ポッティング壁21の間に支持されており、また、タインプレート28の前後には底床26の表裏を貫通するスリット状の樹脂通路27が設けられており、底床26に両端支持されている。タインプレート28には、複数の端子5の垂直部5Vのそれぞれが挿通される複数の保持孔29が表裏を貫通して形成されている。
底床26のほぼ四隅には、固定片30が平面方向の外側に突出して設けられ、それぞれの固定片30には、電気コネクタ1をねじ止めにより回路基板3に固定するためのねじ孔31が形成されている。ポッティングケース20がハウジング10に組み付けられると、それぞれのねじ孔31が、ハウジング10のねじ穴18に位置が一致するように形成されており、回路基板3にねじ止めする際に共通の基板取付部を構成する。
【0025】
[組み付け手順]
ハウジング10とポッティングケース20の組み付けは、以下のようにして行われる。なお、端子5はハウジング10とともにインサート成形されているので、ハウジング10と端子5はすでに組み付けられているものとする。
ハウジング10の第一ポッティング壁13より下方にポッティングケース20を位置決めする。この位置決めは、ポッティングケース20のガイド条24がハウジング10のガイド溝15に挿入されるように行われる。ポッティングケース20の係止片25を係止片16に位置を合せることによっても、ハウジング10とポッティングケース20の位置決めを行うことができる。
位置決めが済んだら、ポッティングケース20をハウジング10に対して上向きに押し込む。係止片16と係止片25が、互いに係止されてロック状態に至るまで、ポッティングケース20を押し込むと、ハウジング10とポッティングケース20の組み付けは完了する。
ポッティングケース20を組み付け完了位置まで押し込む過程で、ハウジング10に保持された複数の端子5のそれぞれが、タインプレート28の対応する保持孔29に挿通されることにより、底床26を貫通する端子5の垂直部5Vは所望される正規の位置に整列される。
【0026】
次に、ハウジング10とポッティングケース20の組立体である電気コネクタ1は、回路基板3に固定される。回路基板3への固定は、図5に示すように、ねじ9を、回路基板3を貫通してポッティングケース20のねじ孔31及びハウジング10のねじ穴18にねじ込むことにより行われる。つまり、電気コネクタ1は、構成部品であるハウジング10とポッティングケース20がともに、回路基板3にねじ止めされる。
タインプレート28によりそれぞれが所望の位置に整列された端子5の垂直部5Vの先端は、回路基板3の対応する保持孔に挿通される。
電気コネクタ1が回路基板3に取り付けられると、回路基板3とタインプレート28の間には、両者の間の隙間からなる樹脂溜33が設けられる。樹脂通路27を介して樹脂材料がこの樹脂溜33に流入することにより、回路基板3とタインプレート28の間における複数の垂直部5V同士の電気的な絶縁を確保する。
【0027】
電気コネクタ1を回路基板3に固定したならば、図6に示すように、ポッティング領域7にポッティング材Pとなる溶融した樹脂材料を充填する。充填は、ポッティング領域7に摺り切りで一杯になるまで行われる。
溶融した樹脂材料は、相応の流動性を有しているため、ポッティング領域7の内部を流動して、端子5と端子5の間に充填される。こうして、ポッティング材が回路基板3よりも上のポッティング領域7に隙間なく充填される。
必要な量だけ溶融樹脂をポッティング領域7にポッティングしたならば、樹脂が硬化するまで、電気コネクタ1は静置される。
【0028】
[効 果]
次に、電気コネクタ1の効果について説明する。
電気コネクタ1は、ポッティング領域7に絶縁樹脂がポッティングされ、このポッティング領域7には、ハウジング10から引き出された端子5が、回路基板3に挿通された部分を除いて収容されている。したがって、ポッティング領域7には外部から水分が浸入するのを防止することができるので、電気コネクタ1が水没したとしても、端子5同士が電気的に短絡するのを防止できる。
【0029】
電気コネクタ1は、ハウジング10とポッティングケース20の組立体として、回路基板3に取り付けることができる。特に、電気コネクタ1は、ハウジング10とポッティングケース20を個別に回路基板3に取り付けるのではなく、共通の基板取付部を構成するねじ穴18とねじ孔31にねじを締結することにより、ハウジング10とポッティングケース20を同時に回路基板3に取り付けることができる。したがって、電気コネクタ1が供給された先は、電気コネクタ1を回路基板3に取り付ける作業の負担が少ない。
【0030】
次に、電気コネクタ1は、ポッティング領域7の幅方向の両側が、第一ポッティング壁13と第二ポッティング壁21が重なっており、しかも、第一ポッティング壁13に形成されたガイド溝15に第二ポッティング壁21に形成されたガイド条24が挿入されている。これにより、ハウジング10とポッティングケース20は、前後方向における相対的な移動が拘束されるので、ハウジング10に前方に引っ張る外力が作用したとしても、ポッティングケース20もハウジング10とともに引っ張られるので、ハウジング10とポッティングケース20の間に相対的な位置ずれが生じない。よって、ポッティング領域7に存在するポッティング材は、外力が加わっても、健全な状態を維持することができる。
【0031】
ここで、ガイド溝15とガイド条24は、ハウジング10とポッティングケース20の前後方向における相対的な移動を拘束する拘束部を構成する他に、ハウジング10にポッティングケース20を組み付ける際の位置決めガイドとして機能し、さらに、ポッティング領域7にポッティングされた溶融した樹脂材料Pが外部に漏洩する障害となる。
溶融樹脂が漏洩する障害となるのは、ガイド溝15とガイド条24だけでなく、係止片16及び係止片25もその機能を有する。係止片16及び係止片25は、ガイド溝15とガイド条24の組合せに比べて、後方に存在している。したがって、漏れ出ようとする溶融樹脂は、ガイド溝15とガイド条24の組合せを通過してから係止片16と係止片25の組合せに到達することになるので、係止片16と係止片25の組合せまで溶融樹脂が達する可能性は極めて低い。
【0032】
次に、電気コネクタ1は、タインプレート28がポッティングケース20に一体的に形成されている。したがって、端子5が保持されているハウジング10にポッティングケース20を組み付けるだけで、複数の端子5を所定の位置に整列させることができる。
【0033】
タインプレート28は、一対の第二ポッティング壁21の間に両端支持されているが、その周囲に底床26の表裏を貫通する樹脂通路27が形成されている。したがって、溶融樹脂をポッティング領域7に充填すれば、溶融樹脂は樹脂通路27を介して、回路基板3とタインプレート28の間に進入し、タインプレート28から回路基板3に向けて突出する複数の垂直部5Vの絶縁を確保することができる。一方で、樹脂通路27を除けば、ポッティング領域7は底床26により下側が区画されているため、必要な領域を除けば、回路基板3まで樹脂が漏洩することがない。
【0034】
また、電気コネクタ1は、第一ポッティング壁13に第二ポッティング壁21を内接させ、かつ、相当の長さに亘ってオーバーラップさせているので、幅方向の剛性を高くできるのに加えて、前後方向の寸法を小さくできる。
【0035】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明において、ハウジング10及びポッティングケース20の具体的な構造は任意であり、例えば、一つの嵌合フード11を備えるハウジング10を例にしたが、複数の嵌合フードを備えるハウジングにすることもできる。この場合には、嵌合フードの数に応じた数の第一ポッティング壁13を設けることになり、ポッティング領域7も同様である。
【0036】
また、本実施形態の第一ポッティング壁13及び第二ポッティング壁21は、それぞれが、互いに略平行をなしている。しかし、ハウジング10とポッティングケース20を組み付ける際に、第一ポッティング壁13と第二ポッティング壁21が互いに摺動して、第一ポッティング壁13と第二ポッティング壁21が内接又は外接することができれば、平行に限定されるものではない。
また、本実施形態は、第一ポッティング壁13に第二ポッティング壁21が内接する形態を採用している。しかし、第一ポッティング壁13に第二ポッティング壁21が外接する形態を採用することもできる。ただし、本実施形態のように、ポッティングケース20にタインプレート28を一体的に形成する場合には、第一ポッティング壁13に第二ポッティング壁21が内接する形態を採用する必要がある。
【符号の説明】
【0037】
1 電気コネクタ
3 回路基板
5,51,52,53 端子
5H 水平部
5V 垂直部
7 ポッティング領域
10 ハウジング
11 嵌合フード
12 受容空間
13 第一ポッティング壁
14 内壁面
15 ガイド溝
16 係止突起
17 下面
18 ねじ穴
19 端子保持壁
20 ポッティングケース
21 第二ポッティング壁
22 外壁面
23 後壁
24 ガイド条
25 係止突起
26 底床
27 樹脂通路
28 タインプレート
29 保持孔
30 固定片
31 ねじ孔
33 樹脂溜
図1
図2
図3
図4
図5
図6