(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記要求ポンプ動力及び前記制限ポンプ動力から最小値を選択し前記目標ポンプ動力として前記ポンプ制御装置に出力する最小値選択装置を備えていることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド式作業機械。
前記増加率演算装置は、前記蓄電装置情報として蓄電残量を前記監視装置から入力し、前記蓄電残量が少ないほど前記許容増加率を小さくすることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド式作業機械。
前記増加率演算装置は、前記蓄電装置情報として前記蓄電装置の充放電情報を前記監視装置から入力し、前記充放電情報を基に求めた実効電力若しくは実効電流、又は前記監視装置から入力した実効電力若しくは実効電流が大きいほど前記許容増加率を小さくすることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド式作業機械。
前記充放電情報を基に求めた実効電力若しくは実効電流、又は前記監視装置から入力した実効電力若しくは実効電流によって前記許容増加率の減少率に差が付けてあることを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド式作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
1.ハイブリッド式作業機械
図1は本発明の第1実施形態に係るハイブリッド式作業機械の一例であるハイブリッド式油圧ショベルの一部透視側面図である。但し、ハイブリッド式油圧ショベルは一適用例であり、ハイブリッド式のホイールローダ等、他のハイブリッド式作業機械にも本発明は適用可能である。
図1に示したハイブリッド式油圧ショベルは、走行体10、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20、及び旋回体20に設けたショベル機構(フロント作業機)30を備えている。
【0012】
走行体10は、左右一対のクローラ11a,11b及びクローラフレーム12a,12b、左右のクローラ11a,11bをそれぞれ駆動する走行用油圧モータ13,14、並びに走行用油圧モータ13,14の減速機等を備えている。クローラ11a,11b及びクローラフレーム12a,12bについてはそれぞれ左側のもののみ
図1に図示する。
【0013】
旋回体20は運転室やエンジン室等を含み、旋回フレーム21を介してクローラフレーム12a,12bの上部に搭載されている。運転室には油圧アクチュエータ(後述)の動作を指示する操作装置70(
図2参照)等が備わっている。旋回フレーム21は旋回輪を介してクローラフレーム12a,12bの上部に鉛直軸を中心に旋回可能に設けてある。特に図示していないが、旋回輪はクローラフレーム12a,12bに接続した内輪と旋回フレーム21に接続した外輪を備えていて、内輪に対して外輪が回転する構成である。旋回フレーム21上には旋回用発電モータ25及び旋回用油圧モータ27が設けられている。旋回用発電モータ25は旋回用油圧モータ27と共に旋回輪の外輪に支持されていて、減速機26を介して内輪の内歯車に出力軸を噛合させている。旋回用油圧モータ27は旋回用発電モータ25と同軸に設けられている。また、旋回用発電モータ25には蓄電装置24が接続されていて、蓄電装置24からの給電により旋回用発電モータ25が駆動される。この構成より旋回用油圧モータ27及び旋回用発電モータ25の駆動力が減速機26を介して旋回輪に伝達され、走行体10に対して旋回フレーム21と共に旋回体20が旋回する。
【0014】
ショベル機構30は、ブーム31、アーム33、バケット35を備えた多関節構造のフロント作業機である。ブーム31は旋回体20の旋回フレーム21に上下方向に回動動可能に連結されている。アーム33はブーム31の先端部に前後方向に回動可能に連結されている。バケット35はアーム33の先端部に回動可能に連結されている。そして、ブーム31、アーム33及びバケット35は、ブームシリンダ32、アームシリンダ34及びバケットシリンダ36でそれぞれ駆動される。ブームシリンダ32、アームシリンダ34及びバケットシリンダ36は油圧シリンダである。
【0015】
2.駆動システム
上記旋回フレーム21上には、各種アクチュエータを駆動するための駆動システムが搭載されている。この駆動システムには、油圧システム40、電動システム及びコントローラ80(
図2参照)が含まれる。油圧システム40は、走行用油圧モータ13,14、旋回用油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動する装置である。以下、走行用油圧モータ13,14、旋回用油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36等を総称して油圧アクチュエータと適宜記載する。電動システムは、旋回用発電モータ25の他、後述するアシスト発電モータ23等の電動アクチュエータを駆動する装置である。油圧システム40及び電動システムを制御するのがコントローラ80である。駆動システムの模式図を
図2に示す。
【0016】
・油圧システム
図2に示したように、油圧システム40は、油圧ポンプ41、ポンプレギュレータ43及びコントロールバルブ42を含む。油圧ポンプ41は油圧を発生する可変容量型の油圧ポンプであり、エンジン22が出力する動力によって駆動されて、油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する。エンジン22には回転数センサが設けられており、回転数センサでエンジン回転数Nが検出される。油圧ポンプ41の吐出管路には吐出圧センサ44が設けられており、吐出圧センサ44で油圧ポンプ41の吐出圧Pが検出される。コントロールバルブ42は各油圧アクチュエータを駆動制御するバルブユニットであり、運転室内にある操作装置70からの操作信号(本実施形態では油圧パイロット信号)で対応するスプールを動作させて、油圧ポンプ41から各油圧アクチュエータにそれぞれ供給される圧油の流量と方向を制御する。操作装置70からの操作信号はまた、電気信号に変換されてコントローラ80にも入力される。ポンプレギュレータ43は、コントローラ80からの信号に基づいて油圧ポンプ41の押し退け容積(吐出流量)を調整する。
【0017】
・電動システム
電動システムは、上述した蓄電装置24の他、インバータ50、アシスト発電モータ23及び蓄電装置24を含んでいる。アシスト発電モータ23は、エンジン22とトルク伝達可能に接続された電動モータであり、蓄電装置24からの給電により駆動されてエンジン22と共に油圧ポンプ41を駆動する。本実施形態ではアシスト発電モータ23に発電機としても機能する発電モータを用いた場合を例示するが、発電機能のない単なる電動モータを用いても良い。インバータ50はアシスト発電モータ23の他、旋回用発電モータ25(
図1参照)と電気的に接続しており、またコンタクタ(不図示)を介して蓄電装置24に接続している。アシスト発電モータ23及び旋回用発電モータ25の駆動状態(力行するか回生するか)は、コントローラ80からの指令に従ってインバータ50によって制御される。蓄電装置24は、インバータ50からの信号に基づき、アシスト発電モータ23及び旋回用発電モータ25の駆動状態によって充放電される。蓄電装置24には、当該蓄電装置24の充電残量(SOC)、充放電電力量、充放電電流量、実効電力、温度等を監視して、これら蓄電装置情報を取得する監視装置28が設けられている。
【0018】
・コントローラ
コントローラ80には、吐出圧センサ44で検出された油圧ポンプ41の吐出圧P、回転数センサで検出されたエンジン回転数N、操作装置70からの操作信号、及び監視装置28からの蓄電装置情報が入力される。コントローラ80は、これら種入力信号を基に、エンジン22の燃料噴射装置、ポンプレギュレータ43、インバータ50等に対する制御指令を生成し、アシスト発電モータ23及び旋回用発電モータ25の力行及び回生の切り換え並びに出力制御、油圧ポンプ41の吐出流量制御、エンジン22の出力制御等を実行する。
【0019】
図3はコントローラ80のポンプ流量制御に係る制御ブロック図である。この図に示したコントローラ80は、増加率演算装置81、制限動力演算装置82、要求動力演算装置83、出力可能動力演算装置84、最小値選択装置85、ポンプ制御装置86及び記憶装置87等を備えている。
【0020】
増加率演算装置81は、駆動システムが出力する動力のうち油圧ポンプ41で消費される動力(以下、ポンプ吸収動力と記載する)の許容増加率rを演算する機能部である。この許容増加率rは、蓄電装置24の状態によって定まる値であり、エンジン22の出力動力WE(以下、エンジン動力WEと記載する)の増加率よりは高い増加率でポンプ吸収動力が増加するように、操作装置70の操作信号に応じたポンプ吸収動力の要求値WPreq(以下、要求ポンプ動力WPreqと記載する)に関わらず蓄電装置情報に応じて設定される。増加率演算装置81には蓄電装置情報(蓄電残量、充放電電流量、実効電力、蓄電装置温度等の少なくとも1つ)と許容増加率rとの関係が予め格納されており、増加率演算装置81では、この関係に基づき、監視装置28から入力された蓄電装置情報に応じた許容増加率rが演算される。
【0021】
ここで、
図4は増加率演算装置81の一例を示すブロック図である。この図に例示した増加率演算装置81aは、蓄電装置情報として蓄電残量を監視装置28から入力する。許容増加率rの演算の基礎として蓄電残量を入力する場合、増加率演算装置81aには蓄電残量が少ないほど許容増加率rが小さくなる関係が格納され、入力された蓄電残量が小さいほど許容増加率rは小さく演算される。本実施形態では、蓄電残量が設定の規定値a1以下の領域において、蓄電残量が規定値a1から減少するのに正比例して許容増加率rも減少するようにしてある。
【0022】
図5は増加率演算装置81の他の例を示すブロック図である。この図に例示した増加率演算装置81bは、蓄電装置情報として蓄電装置24の充放電電力を監視装置28から入力する。許容増加率rの演算の基礎として充放電電力を入力する場合、増加率演算装置81bには実効電力が大きいほど許容増加率rが小さくなる関係が格納される。実効電力は、蓄電装置24の設定時間の充放電電力の二乗平均平方根で求められる。例えば設定時間を100秒間とすると、100秒前から現在までの蓄電装置24の充放電電力の二乗平均を求め、その平方根を採ることで実効電力を基得ることができる。実効電力の演算は、監視装置28で実行されない場合は増加率演算装置81bで実行するようにしても良い。増加率演算装置81bには実効電力が大きいほど許容増加率rが小さくなる関係が格納され、求めた実効電力が大きいほど許容増加率rは小さく演算される。本実施形態では、実効電力が設定の規定値a2以上の領域において、実効電力が規定値a2から増加するのに正比例して許容増加率rが減少するようにしてある。
【0023】
図6は増加率演算装置81の更に他の例を示すブロック図である。この図に例示した増加率演算装置81cは、蓄電装置情報として蓄電装置24の蓄電残量を監視装置28から入力する。
図6の増加率演算装置81cに格納された蓄電残量と許容増加率rの関係は、蓄電残量が少ないほど許容増加率rが小さくなる点で
図4の例と同様であるが、蓄電残量によって許容増加率rの増減率に差がある点で相違する。
図6の例では、蓄電残量が規定値a3からa4(<a3)にかけて減少する際には許容増加率rが一定割合α1で減少していき、規定値a4を下回って減少する際には許容増加率rがより大きな一定割合α2(>α1)で減少する。蓄電残量によって許容増加率rに差を付ける場合、蓄電残量と許容増加率rの関係線を蓄電残量が小さいほど許容増加率rの減少率が大きくなるような曲線に設定することも考えられる。
【0024】
図7は増加率演算装置81の更に他の例を示すブロック図である。この図に例示した増加率演算装置81dは、蓄電装置情報として蓄電装置24の充放電電力を監視装置28から入力する。
図7の増加率演算装置81dに格納された実効電力と許容増加率rの関係は、実効電力が大きいほど許容増加率rが小さくなる点で
図5の例と同様であるが、実効電力によって許容増加率rの増減率に差がある点で相違する。
図7の例では、実効電力が規定値a5からa6(>a5)にかけて増加する際には許容増加率rが一定割合α3で減少していき、規定値a6を超えて増加する際には許容増加率rがより大きな一定割合α4(>α3)で減少する。実効電力によって許容増加率rに差を付ける場合、実効電力と許容増加率rの関係線を実効電力が大きいほど許容増加率rの減少率が大きくなるような曲線に設定することも考えられる。
【0025】
図3に戻り、制限動力演算装置82は、蓄電装置情報に応じた許容増加率rに基づいてポンプ吸収動力の制限値WPlim(以下、制限ポンプ動力WPlimと記載する)を演算する。本実施形態では制限動力演算装置82に加算器を用いている。制限ポンプ動力WPlimは、制限動力演算装置82において、前回(1つ前のサイクルで)最小値選択装置58で演算された目標ポンプ動力WP(後述)に、今回(現在のサイクルで)増加率演算装置81で演算された許容増加率rを加算することによって演算される。制限ポンプ動力WPlimは、コントローラ80のサイクル処理の進捗に伴って許容増加率rで経時的に変化していく。
【0026】
要求動力演算装置83は、前述した要求ポンプ動力WPreqを演算する機能部である。要求動力演算装置83には操作装置70の操作量と要求ポンプ動力WPreqとの関係が予め格納されており、要求動力演算装置83では、この関係に基づき、操作装置70から入力された操作信号に応じた要求ポンプ動力WPreqが演算される。
【0027】
出力可能動力演算装置84は、出力可能動力Wfull(以下、出力可能動力Wfull)を演算する機能部である。出力可能動力Wfullとは、その時点で(現在のサイクルにおいて)エンジン22及びアシスト発電モータ23によって駆動システムがエンストやラグダウン等することなく出力することができる最大動力である。この出力可能動力Wfullは、エンジン回転数Nによってエンジン22のトルクカーブが変わることからエンジン回転数Nに応じて値が変化するが、その演算に蓄電装置情報は考慮されない。出力可能動力演算装置84にはエンジン回転数Nと出力可能動力Wfullとの関係が予め格納されており、出力可能動力演算装置84では、この関係に基づき、エンジン回転数Nに応じた出力可能動力Wfullが演算される。
【0028】
最小値選択装置85は、制限ポンプ動力WPlim、要求ポンプ動力WPreq及び出力可能動力Wfullを入力し、3つの入力値から選択した最小値を現在のサイクルにおけるポンプ吸収動力の目標値WP(以下、目標ポンプ動力WPと記載する)として出力する。この目標ポンプ動力WPは、前述したように次回(1つ後のサイクル)の制限ポンプ動力WPlimの演算のために制限動力演算装置82にも出力される。
【0029】
ポンプ制御装置86は、目標ポンプ動力WPに基づいてポンプレギュレータ43を制御する機能部である。このポンプ制御装置86には乗算器88と除算器89が含まれている。ポンプ制御装置86においては、最小値選択装置85から入力された目標ポンプ動力WPに対し、記憶装置87から読み出された油圧ポンプ41のポンプ効率eを乗算器88で掛け、更に除算器89において吐出圧センサ44から入力された油圧ポンプ41の現在のサイクルの吐出圧Pで割ることで、ポンプ流量指令値Qが算出される。コントローラ80は、このポンプ流量指令値Qをポンプレギュレータ43に出力する。これにより、油圧ポンプ41の吸収動力が目標ポンプ動力WPになるように、油圧ポンプ41の吐出流量(容積)が制御される。
【0030】
3.ポンプ流量指令値Qの演算手順
図8はコントローラ80によるポンプ流量指令値Qの演算手順を表したフローチャートである。
図8に示したように、コントローラ80は、例えばエンジン回転数Nによりエンジン22が回転駆動中であることを認識すると、
図8のステップS1−S8の手順を設定時間Δt(例えば0.1s)のサイクルで実行し、状況に応じたポンプ流量指令値Qを繰り返し演算しポンプレギュレータ43に出力する。
【0031】
・ステップS1
図8の手順を開始すると、コントローラ80は、監視装置28から蓄電装置情報を入力し、蓄電装置情報に応じたポンプ吸収動力の許容増加率rを増加率演算装置81で演算する。演算された許容増加率rは1つ前の処理サイクルで演算したポンプ41の目標ポンプ動力WP(t−Δt)に制限動力演算装置82で加算され、制限ポンプ動力WPlimとして最小値選択装置85に出力される。
【0032】
・ステップS2−S4
続くステップS2に手順を移すと、コントローラ80は、ステップS1で算出した制限ポンプ動力WPlimが、エンジン回転数Nを基に出力可能動力演算装置84で演算した出力可能動力Wfullより小さいかどうかを最小値選択装置85で判断する。コントローラ80は、蓄電装置情報に応じた制限ポンプ動力WPlimが出力可能動力Wfullよりも小さく、最小値選択装置85においてステップS2の判定が満たされた場合にはステップS3に手順を移す。反対に、コントローラ80は、制限ポンプ動力WPlimが出力可能動力Wfull以上で、最小値選択装置85において判定が満たされない場合にはステップS4に手順を移す。ステップS3に進んだ場合、コントローラ80は、小さい方の値である制限ポンプ動力WPlimを中間変数WPaに設定する。一方、ステップS4に進んだ場合、コントローラ80は、小さい方の値である出力可能動力Wfullを中間変数WPaに設定する。
【0033】
・ステップS5−S7
続くステップS5では、コントローラ80は、ステップS3又はS4で計算した中間変数WPaが、操作信号を基に要求動力演算装置83で演算した要求ポンプ動力WPreqより小さいかどうかを最小値選択装置85で判断する。コントローラ80は、中間変数WPaが要求ポンプ動力WPreqよりも小さく、最小値選択装置85において判定が満たされる場合にはステップS6に手順を移す。反対に、コントローラ80は、中間変数WPaが要求ポンプ動力WPreq以上で、最小値選択装置85において判定が満たされない場合にはステップS7に手順を移す。ステップS6に進んだ場合、コントローラ80は、小さい方の値である中間変数WPaを現在のサイクルの目標ポンプ動力WP(t)に設定する。一方、ステップS7に進んだ場合、コントローラ80は、小さい方の値である要求ポンプ動力WPreqを目標ポンプ動力WP(t)に設定する。ステップS2−S7の処理により、制限ポンプ動力WPlim、要求ポンプ動力WPreq及び出力可能動力Wfullの最小値が目標ポンプ動力WP(t)に設定される。
【0034】
・ステップS8
ステップS6又はS7の手順を終えたら、コントローラ80はステップS8に手順を移し、ステップS2−S7で演算した目標ポンプ動力WP(t)、ポンプ効率e及び現在のポンプ吐出圧P(t)を用いてポンプ制御装置86で現在のサイクルにおけるポンプ流量指令値Q(t)を算出し、ポンプレギュレータ43に出力する。
【0035】
以上の手順を設定時間Δtで繰り返し実行することで、サイクル毎に随時更新されるポンプ流量指令値Qがポンプレギュレータ43に出力され、ポンプ吸収動力が目標ポンプ動力WP(t)に近づくように油圧ポンプ41の吐出流量が制御される。
【0036】
4.目標ポンプ動力の挙動
図9は本実施形態におけるポンプ吸収動力、ポンプ吐出圧及びポンプ吐出流量の経時的変化の一例を示す図である。
図9において時刻t0は操作装置70による操作開始時刻である。また、蓄電装置24の蓄電残量が少ない等の理由により最小値選択装置85で目標ポンプ動力WPとして制限ポンプ動力WPlimが選択されるものとする。
【0037】
操作装置70の操作量が例えば最大操作量であるとすると、油圧ポンプ41に対する要求ポンプ動力WPreqは点線に示したように急激に立ち上がる。それに対し、本実施形態においては、蓄電装置情報に応じて要求ポンプ動力WPreqに比べて緩やかな増加率で目標ポンプ動力WPが立ち上がり、その後目標ポンプ動力WPが要求ポンプ動力WPreqに到達する。同図では増加率の異なる目標ポンプ動力WP1,WP2を例示している。目標ポンプ動力WP1は時刻t2(>t0)で、相対して増加率が低い目標ポンプ動力WP2は時刻t3(>t2)でそれぞれ要求ポンプ動力WPreqに追い付く。両者の増加率の違いは蓄電装置24の状態に起因しており、目標ポンプ動力WP1の演算時に相対して例えば蓄電残量が少ない場合、同図のように目標ポンプ動力WP2は目標ポンプ動力WP1よりも緩やかな増加率で設定される。目標ポンプ動力WPが小さい場合、油圧ポンプ41の吐出圧P(油圧負荷)が同じでもポンプ流量指令値Qは小さく設定される。Q1,Q2はそれぞれ目標ポンプ動力WP1,WP2に基づいて演算されたポンプ流量指令値である。同図の場合、ポンプ流量指令値Q2はポンプ流量指令値Q1に対して時刻t0からt3にかけて小さく演算される。
【0038】
図10は
図9の例を横軸に吐出圧、縦軸に流量をとって表したPQ線図である。図中の点線は等馬力線を、実線はポンプ流量指令値Qの変化を表している。図中の点A1,B1は
図9の時刻t1、点A2,B2は時刻t2、点A3,B3は時刻t3におけるポンプ吐出圧P及びポンプ流量指令値Qを表す点である。この図では右上に行くほど出力(馬力)が大きくなる。時刻t3に至るまでの間、同時刻(t1,t2)ではポンプ流量指令値Q2による出力がポンプ流量指令値Q1による出力に対して抑えられることが分かる。また、時刻t3で目標ポンプ動力WP2がWP1に追い付いて以降、ポンプ流量指令Q1,Q2による出力は同一となる。
【0039】
5.効果
図11は本実施形態の効果の説明図である。エンジン動力WEはエンストやラグダウン防止の観点からエンジン回転数Nに応じて制限される。そのため、例えば急操作による動き出し時には、要求ポンプ動力WPreqが急激に立ち上がってエンジン22の定格最大出力WEmaxに到達しても、エンジン動力WEについては所定の増加率でしか増加させることができない。それに対し、本実施形態のようなハイブリッド式作業機械の場合、動き出し時の要求ポンプ動力WPreqに対するエンジン動力WEの不足分をアシスト発電モータ23の動力で補うことができる。このとき、例えば蓄電残量が十分にある場合のように蓄電装置24の状態によってアシスト発電モータ23に対する給電が制約されない場合、
図11(a)に示すようにエンジン動力WEの不足分相当をアシスト発電モータ23の動力(
図11(a)におけるハッチング部分)で補い、要求ポンプ動力WPreq相当の動力を油圧ポンプ41に対して与えることができる。
【0040】
しかし、蓄電装置24の状態によっては要求ポンプ動力WPreqに対するエンジン動力WEの不足分をアシスト発電モータ23の動力で補いきれない場合もある。この場合、目標ポンプ動力WPを要求ポンプ動力WPreqに追従させて立ち上げると、制限ポンプ動力WPlimの最大値WPmax(以下、最大制限ポンプ動力WPmaxと記載する)は、
図11(b)のように必然的にエンジン22の定格最大出力WEmaxよりも低く設定される。最大制限ポンプ動力WPmaxを抑えなければ、蓄電残量が尽きてアシスト発電モータ23による動力付加がなくなった際にエンストやラグダウンをし得るからである。ここでは目標ポンプ動力WPが制限ポンプ動力WPlimに等しくなる例を説明しているので、目標ポンプ動力WPの最大値は最大制限ポンプ動力WPmaxに等しい。従って、定格最大出力WEmaxよりも最大制限ポンプ動力WPmaxが低く設定されると、本来であればその後エンジン回転数Nが上昇した時に出せる動力が出力できなくなってしまう。例えば操作開始直後の時刻t1における目標ポンプ動力WP(t1)を要求ポンプ動力WPreqに追従させることはできるが、時刻t2で目標ポンプ動力WP(t2)は最大制限ポンプ動力WPmaxに達してしまう。その結果、本来であればその後エンジン単独で定格最大出力WEmaxが出せる筈の時刻t3になっても、目標ポンプ動力WP(t3)は最大制限ポンプ動力WPmaxのままであり、定格最大出力WEmaxを出力することができない。
【0041】
それに対し、本実施形態においては、アシスト発電モータ23に対する給電が制限される場合には、
図11(c)に示したように、給電の制約下でもその後定格最大出力WEmaxまで到達し得るように要求ポンプ動力WPreqよりも緩やかに目標ポンプ動力WPが立ち上がる。従って、目標ポンプ動力WPの最大値が過度に抑えられることがなく、制約の範囲で動き出し時のエンジン動力WEをアシスト発電モータ23の動力でアシストすることができる。
図11(c)の例の場合、操作開始直後の時刻t1における目標ポンプ動力WP(t1)は
図11(b)の例に比べて低くなるが、エンジン動力WEよりも高い増加率で目標ポンプ動力WPを上げていくことができ、時刻t3には目標ポンプ動力WP(t3)は定格最大出力WEmaxに到達し得る。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、アシスト発電モータ23への給電が制限される状況でも、ポンプ吸収動力が過度に制限されることを抑制することができ、作業効率の低下を抑制することができる。
【0043】
また、
図4に示したように蓄電残量に基づいて許容増加率rを決定する場合、蓄電残量の減少を抑制することができるメリットがある。加えて
図6のように蓄電残量によって許容増加率rの減少率に差を付ける場合、例えば同図の規定値a3−a4の領域は電力消費抑制の必要性はあるものの出力低下抑制が優先される領域、規定値a4以下の領域は出力低下抑制よりも電力消費抑制が優先される領域といったように、蓄電残量に応じて目標ポンプ動力WPの設定を場面に応じて柔軟にすることができる。
【0044】
また、短時間の急激な充放電は蓄電装置24の劣化を進行させ得るが、
図5に示したように実効電力を許容増加率rの演算の基礎とし、実効電力が大きく放電が急激な場合に許容増加率rを抑えることで、蓄電装置24の保護及び長寿命化にも寄与し得る。加えて
図7のように実効電力によって許容増加率rの減少率に差を付ける場合、例えば同図の規定値a5−a6の領域は放電抑制の必要性はあるものの出力低下抑制が優先される領域、規定値a6以上の領域は出力低下抑制よりも放電抑制が抑制される領域といったように、実効電力に応じて目標ポンプ動力WPの設定を場面に応じて柔軟にすることができる。なお、蓄電装置24の使用強度を加味して目標ポンプ動力WPを決定する観点では、実効電力の代わりに実効電流や蓄電装置24の温度に応じて増加率演算装置81で許容増加率rを演算する構成としても良い。実効電流は、監視装置28から入力される充放電電流を基に、設定時間の充放電電流の二乗平均平方根で求めることができる。蓄電装置24の温度は監視装置28の温度センサで計測された蓄電装置24の温度情報を用いることができる。また、監視装置28で実効電力や実効電流の測定又は演算ができる場合には、実効電力や実効電流は監視装置28から増加率演算装置81に入力されるようにしても良い。
【0045】
(第2実施形態)
図12は本発明の第2実施形態に係るハイブリッド式作業機械に備えられたコントローラのポンプ流量制御に係る制御ブロック図である。この図は第1実施形態の
図3に対応している。
図12に示したコントローラ80Aが
図3のコントローラ80と相違する点は、前述した最大制限ポンプ動力WPmax(制限ポンプ動力WPlimの最大値)を演算する最大制限動力演算装置90を更に備えている点である。それ以外の要素は
図3のコントローラ80と同様であり、
図12において第1実施形態と同符号を付して説明を省略する。
【0046】
最大制限動力演算装置90には蓄電装置情報と最大制限ポンプ動力WPmaxとの関係が予め格納されている。最大制限動力演算装置90は、この関係に基づき、監視装置28から入力された蓄電装置情報に応じた最大制限ポンプ動力WPmaxを演算し、最小値選択装置85に出力する。最小値選択装置85では、制限ポンプ動力WPlim、要求ポンプ動力WPreq、出力可能動力Wfull及び最大制限ポンプ動力WPmaxから最小値が選択されて、これが目標ポンプ動力WPとしてポンプ制御装置86に出力される。本実施形態のその他の構成及び動作については第1実施形態と同様である。
【0047】
図13は本実施形態におけるポンプ吸収動力、ポンプ吐出圧及びポンプ吐出流量の経時的変化の一例を示す図である。本実施形態においては蓄電残量が規定値よりも少ない場合は、蓄電残量に応じて最大制限ポンプ動力WPmaxが抑えられる。アシスト発電モータ23に対する給電が制限されるような場合、制限ポンプ動力WPlimが最大制限ポンプ動力WPmax以下の領域では制限ポンプ動力WPlimが目標ポンプ動力WPとして出力され、制限ポンプ動力WPlimが最大制限ポンプ動力WPmaxを超える領域では最大制限ポンプ動力WPmaxが目標ポンプ動力WPとして出力される。
【0048】
従って、蓄電残量が少ない場合又は実効電力が大きい場合等には、本実施形態においても第1実施形態と同様に要求ポンプ動力WPreqに対して緩やかな増加率で目標ポンプ動力WPが設定され、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、同じ条件下でも、制限ポンプ動力WPlimが最大制限ポンプ動力WPmaxを超える範囲では、
図13に示したように本実施形態では第1実施形態よりも目標ポンプ動力WPが低く設定され、ポンプ流量指令値Qも小さくなる。この場合、蓄電残量の減少に伴って最大制限ポンプ動力WPmaxが低くなるので、第1実施形態に比べて蓄電装置24の連続放電量が抑制できるメリットがある。