(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419095
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】車両用のクラッチアッセンブリ及び車両を運転する方法
(51)【国際特許分類】
F16D 43/06 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
F16D43/06
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-561942(P2015-561942)
(86)(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公表番号】特表2016-509190(P2016-509190A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】DE2014200018
(87)【国際公開番号】WO2014139522
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】102013204446.1
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス メーリス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス キニガードナー
【審査官】
渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第4768392(US,A)
【文献】
特開昭62−132041(JP,A)
【文献】
特開2004−125142(JP,A)
【文献】
実開昭59−15829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/00− 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸(1,2)を断接する車両用のクラッチアッセンブリであって、前記軸(1,2)の一方に同軸に移動可能に配置されている少なくとも1つの切換スリーブ(3)が、前記軸(1,2)の一方の回転数の上昇に応じた遠心力による操作により、前記軸(1,2)を相対回動不能に結合すべく連結した位置から、前記軸(1,2)を連結解除した位置へと移動可能であり、
前記切換スリーブ(3)は、該切換スリーブ(3)の内径部において、第1の軸(1)上に、該第1の軸(1)に形状結合を介して相対回動不能に連結される位置と、該第1の軸(1)上で自由に回転可能な位置との間で移動可能に配置されており、かつ前記切換スリーブ(3)の外径部において、相対回動不能に第2の軸(2)に結合されていることを特徴とする、車両用のクラッチアッセンブリ。
【請求項2】
前記切換スリーブ(3)を遠心力により操作すべく、前記軸(1,2)の一方に相対回動不能に結合されて配置された、遠心力を発生させる単数又は複数の遠心力ウェイト(10)を備え、該遠心力ウェイト(10)は、連行体(12)において前記切換スリーブ(3)内に係合する、請求項1記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項3】
前記切換スリーブ(3)は、第1の軸(1)の端部領域に同軸に移動可能に配置されているとともに、第2の軸(2)の、同軸に配置されている端部領域を、該第2の軸(2)に対して移動可能に同軸に少なくとも部分的に包囲しており、単数又は複数の遠心力ウェイト(10)が、前記第2の軸(2)の端部領域に相対回動不能に結合されて配置されており、該遠心力ウェイト(10)は、連行体(12)において、遠心力による操作のために、前記切換スリーブ(3)の、前記第2の軸(2)の端部領域を包囲する端部区分内に同軸に係合する、請求項1又は2記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項4】
第1の軸(1)は、電動モータのモータ軸により形成され、第2の軸(2)は、車両伝動装置の伝動装置軸により形成される、請求項1から3までのいずれか1項記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項5】
前記切換スリーブ(3)は、該切換スリーブ(3)の外径部において、第2の軸(2)に相対回動不能に結合されたクラッチハウジングのハブ状の端部区分(5)に、形状結合を介して相対回動不能にかつ軸方向相対移動可能に結合されている、請求項3または4記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項6】
前記切換スリーブ(3)は、内径部に複数の凸部(8)を有し、該凸部(8)は、周方向で相前後して位置し、半径方向内向きにノーズ状に延在しており、前記切換スリーブ(3)が第1の軸(1)に連結される位置で、前記凸部(8)に対向するように第1の軸(1)の外径部に位置する対応する長手方向の凹部(9)内に相対回動不能にかつ軸方向相対移動可能に係合し、該長手方向の凹部(9)は、軸方向で、第1の軸(1)の外径部において周囲を取り巻くように延びる環状の凹部(19)により画定されており、該環状の凹部(19)内に前記凸部(8)は、前記切換スリーブ(3)が第1の軸(1)上で自由に回転可能である位置で係合可能である、請求項3から5までのいずれか1項記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項7】
前記遠心力ウェイト(10)の連行体(12)と前記切換スリーブ(3)とは、対応する斜面(14,15)において、軸方向の作動力を伝達するために面接触している、請求項2または3記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項8】
第2の軸(1)の端部領域に対して直交方向に可動に、かつ周方向で相前後して位置するように配置されている複数の遠心力ウェイト(10)が、クラッチハウジングの、前記第2の軸(2)の端部領域に対して同軸に配置されているポット状の区分(11)内に組み込まれている、請求項3から7までのいずれか1項記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項9】
前記切換スリーブ(3)の、遠心力により操作された移動を戻すために、第1の軸(1)に対して同軸に配置されている戻しばね手段(16)が設けられており、該戻しばね手段(16)は、前記切換スリーブ(3)を前記遠心力ウェイト(10)の連行体(12)に向かって軸方向で付勢する、請求項2、3または8記載のクラッチアッセンブリ。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のクラッチアッセンブリを有する車両を運転する方法であって、前記クラッチアッセンブリを、前記軸(1,2)を相対回動不能に連結した状態から、前記軸(1,2)の一方の回転数の、所定の回転数への上昇に応じて、遠心力による操作により、前記軸(1,2)を連結解除した状態へ移行させることを特徴とする、車両を運転する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に詳細に規定した形態の車両用のクラッチアッセンブリ及び請求項10の上位概念部に詳細に規定した形態の車両を運転する方法に関する。
【0002】
この種のクラッチアッセンブリは、独国特許第19914350号明細書において公知である。当該明細書には、1つの内燃機関と少なくとも1つの電動モータとを有する自動車を運転する方法が記載されている。電動モータは、その回転数に応じて、自動的に閉鎖する力結合(Kraftschluss:摩擦力等の力による束縛)式の遠心クラッチを介して、車両アクスルのホイールハブに係合可能となっている。遠心クラッチにおける力結合は、電動モータが作動され、電動モータの回転数が比較的高いときだけ存在し、電動モータが停止されているか、又は電動モータの回転数が低いとき、遠心クラッチは開放されている。クラッチの力結合を介した操作は、クラッチスリップによる摩擦損失に至る。
【0003】
独国特許出願公開第19809302号明細書は、モータ軸とともに連れ回り、遠心力により操作される作動装置を有する小型モータ用の遠心クラッチを示している。作動装置は、モータ軸に固定される連行スリーブの自由端に配置されている。作動装置は、所定の回転数を上回ると、連行スリーブに支承された被動要素を軸方向で、連行スリーブ上で自由に回転可能な位置から、被動要素と連行スリーブとの間に形状結合(Formschluss:形状による束縛)及び/又は力結合が生じる位置へと移動させる。連行スリーブに作動装置を形成することは、構造的にコストあるいは手間を必要とし、これに加えて連行スリーブの自由端に軸方向の構成スペースを要求する。
【0004】
発明の概要
それゆえ、本発明の課題は、運転中の摩擦損失が回避され、かつ単純に形成されている上述の形態のクラッチアッセンブリを提供することである。さらに課題は、このようなクラッチアッセンブリを有する車両を運転する方法を提供することである。
【0005】
上記課題は、請求項1の特徴により解決され、択一的には請求項11の特徴により解決される。
【0006】
本発明により、2軸を断接するクラッチアッセンブリであって、軸の一方に同軸に移動可能に配置されている少なくとも1つの切換スリーブが、軸の一方の回転数の上昇に応じた遠心力による操作により、軸を相対回動不能に結合すべく連結した位置から、軸を連結解除した位置へと移動可能であるクラッチアッセンブリを提案する。これにより、軸は、所定の回転数を上回ると、遠心力により操作されてモーメントフリーの状態に互いに連結解除可能である。さらに切換スリーブにより、形状結合を介した軸の連結が可能となり、これにより、力結合を介した軸の連結による摩擦損失は、回避可能である。
【0007】
その際、好ましくは、切換スリーブを遠心力により操作すべく、軸の一方に相対回動不能に結合されて配置された、遠心力を発生させる単数又は複数の遠心力ウェイトが設けられている。遠心力ウェイトは、連行体において遠心力による操作のために切換スリーブ内に係合する。こうして、2軸を回転数に基づいて自動的に連結可能な、単純に形成された省スペースの遠心力操作式のクラッチアッセンブリが実現される。
【0008】
本発明の特に好ましい態様において、切換スリーブは、第1の軸の端部領域に同軸に移動可能に配置されているとともに、第2の軸の、同軸に配置されている端部領域を、第2の軸に対して移動可能に、少なくとも部分的に包囲している。この場合、好ましくは、単数又は複数の遠心力ウェイトが、第2の軸の端部領域に相対回動不能に結合されて配置されている。これにより、クラッチアッセンブリは、第2の軸の回転数に応じて遠心力により操作されて切り換え可能である。遠心力による操作のために、単数又は複数の遠心力ウェイトは、連行体において、切換スリーブの、第2の軸の端部領域側の端部区分内に係合する。
【0009】
別の特に好ましい態様において、第1の軸は、電動モータのモータ軸により形成され、第2の軸は、車両伝動装置の伝動装置軸により形成される。この場合、例えばハイブリッド車両において、従来慣用のパワートレーンに組み込まれた電動モータは、そのモータ軸において本発明に係るクラッチアッセンブリを介して伝動装置軸、特に伝動装置出力軸に形状結合を介して連結可能であり、伝動装置軸の回転数に基づいて遠心力により自動的に伝動装置軸から連結解除可能である。こうして、伝動装置軸の回転数が比較的高いときあるいは車両速度が比較的高いときは、パワートレーンからの電動モータの連結解除により、引きずり損失を最小化可能である。本発明に係るクラッチアッセンブリは、回転数に基づいて遠心力により操作されて自動的に開放されるので、付加的なアクチュエータ及び対応する制御装置は、省略される。
【0010】
本発明の別の特に好ましい態様において、切換スリーブは、切換スリーブの内径部において、第1の軸上に、第1の軸に形状結合を介して相対回動不能に連結される位置と、第1の軸上で自由に回転可能な位置との間で移動可能に配置されており、かつ切換スリーブの外径部において、相対回動不能に第2の軸に結合されている。
【0011】
切換スリーブを第2の軸に相対回動不能に結合するために、同軸に配置されているクラッチ要素が設けられていてもよい。好ましくは、切換スリーブは、クラッチハウジングを介して第2の軸に相対回動不能に結合されている。この場合、好ましくは、クラッチハウジングは、ハブ状の端部区分を有している。ハブ状の端部区分は、切換スリーブを同軸に少なくとも部分的に包囲し、切換スリーブに形状結合を介して相対回動不能にかつ軸方向相対移動可能に結合されている。こうして、切換スリーブは、移動時に、外径部においてクラッチハウジングに軸方向で案内されている。切換スリーブが第1の軸に連結された位置で、切換スリーブとクラッチハウジングとを介して、駆動出力あるいはトルクが、第1の軸と第2の軸との間で伝達可能である。
【0012】
このために、例えばクラッチ要素のハブ状の区分の内周面に、半径方向の凸部が形成されていてもよい。半径方向の凸部は、切換スリーブの外径部において、対応する軸方向の縦長の凹部内に相対回動不能にかつ長手方向相対移動可能に係合する。例えば嵌め合い歯列又は差し込み歯列が、特に角形歯列又はインボリュート歯列を備えて設けられていてもよい。
【0013】
第1の軸に形状結合を介して連結するために、切換スリーブの内径部に、好ましくは、周方向で相前後して位置し、半径方向内向きにノーズ状に延在する複数の凸部が設けられている。切換スリーブが第1の軸に連結される位置で、これらの凸部は、凸部に対向するように第1の軸の外径部に位置する対応する長手方向の凹部内に相対回動不能にかつ軸方向相対移動可能に係合する。好ましくは、これらの凹部は、軸方向で、第1の軸の外径部において周囲を取り巻くように延びる環状溝により画定され、環状溝内に凸部は、切換スリーブが第1の軸上で自由に回転可能な位置で係合可能である。
【0014】
好ましくは、遠心力ウェイトの連行体と切換スリーブとは、対応する斜面において、軸方向の作動力を切換スリーブに伝達するために面接触している。
【0015】
各連行体が、遠心力ウェイトに設けられた、自由端に向かって先細りする軸方向の付設部として、切換スリーブの端部区分内に係合するように構成されていると、有利である。
【0016】
斜面は、それぞれ、連行体及び切換スリーブに設けられた面取り部により形成されてもよい。
【0017】
好ましくは、斜面は、円錐形に形成された接触面として連行体及び切換スリーブに構成されており、円錐結合部を形成している。
【0018】
好ましくは、第1の軸の端部領域に対して直交方向に可動に、かつ周方向で相前後して位置するように配置されている複数の遠心力ウェイトが、クラッチ要素の、第2の軸の端部領域に対して同軸に配置されているポット状のハウジング区分内に組み込まれている。こうして簡単に、遠心力ウェイトは、第2の軸に相対回動不能に結合されて遠心力により可動に案内されてコンパクトに配置可能である。好ましくは、遠心力ウェイトは、周方向で均等に分配配置されている。
【0019】
クラッチハウジングの簡単な固定は、クラッチハウジングが、第2の軸に対して同軸に形成されているフランジ状の端部区分を有しており、端部区分が第2の軸の端部領域を少なくとも部分的に包囲し、相対回動不能にかつ軸方向相対移動不能に第2の軸に結合されていると達成される。このために例えばプレス結合が設けられていてもよい。しかし、形状結合も可能である。
【0020】
切換スリーブの、遠心力により操作された移動を戻すために、戻し装置が設けられている。戻し装置は、好ましくは、第1の軸に対して同軸に配置されている戻しばね手段を有している。好ましくは、戻しばね手段は、切換スリーブを遠心力ウェイトの連行体に向かって軸方向で付勢する。これにより、切換スリーブと連行体とが、斜面において常時面接触することが保証される。戻しばね手段として、単数又は複数の圧縮ばね又は引っ張りばねが設けられていてもよい。戻しばね手段は、第1の軸を部分的に同軸に包囲する少なくとも1つのコイルばねを有していてもよい。コイルばねは、一方のばね端部で切換スリーブの端部に軸方向で支持され、他方のばね端部で第1の軸、例えば第1の軸に結合される軸方向の保持要素又は軸段部に軸方向で支持されていることができる。択一的には、単数又は複数の省スペースの皿ばねが戻しばね手段として設けられていてもよい。好ましくは、戻しばね手段は、スラスト支承を介して切換スリーブに支持されており、場合によっては切換スリーブと戻しばね手段との間の回転数差を、特に切換スリーブが第1の軸上で自由に回転可能な位置にあるときに、補償することができる。
【0021】
本発明の別の態様では、2軸を断接するクラッチアッセンブリを有する車両を運転する方法を提案する。この場合、クラッチアッセンブリを、軸を形状結合式に相対回動不能に連結した状態から、軸の一方の回転数の、所定の回転数への上昇に応じて、遠心力による操作により、軸を互いに連結解除した状態へ移行させる。こうして、クラッチアッセンブリを車両の停止状態で又は回転数が比較的低いときに閉鎖状態に維持すること、及び回転数が比較的高いときに遠心力により操作して開放することが、可能である。
【0022】
この場合、例えば電動モータのモータ軸は、車両伝動装置の伝動装置軸から、伝動装置軸の回転数に基づいて、伝動装置軸の回転数が比較的高いときあるいは車両速度が比較的高いとき、遠心力により操作されて連結解除可能である。伝動装置軸から連結解除された状態で、電動モータにより、特に車両速度が比較的高いとき、補機駆動装置が伝動装置軸の回転数あるいは車両速度にかかわらず、駆動可能あるいは引き続き運転可能である。
【0023】
クラッチアッセンブリを閉鎖するために、軸の回転数の同期化が、軸の形状結合を介した連結時の摩擦損失を回避するために実施されると、有利である。例えば、電動モータのモータ軸を伝動装置軸に形状結合を介して連結するために、モータ軸と伝動装置軸との回転数の同期化が電動モータにより実施可能である。この場合、同期化は、電動モータの電子式の回転数制御により実施可能である。
【0024】
本発明のその他の特徴は、以下の説明及び図面から看取可能である。図面には、本発明の一実施の形態を略示してある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るクラッチアッセンブリの斜視図である。
【
図2】第1の運転状態にある
図1に示したクラッチアッセンブリの縦断面図である。
【
図4】
図3に示した線A−Aに沿ったクラッチアッセンブリの横断面図である。
【
図5】第2の運転状態にあるクラッチアッセンブリの部分縦断面図である。
【
図6】第3の運転状態にあるクラッチアッセンブリの部分縦断面図である。
【0026】
図面の詳細な説明
図1乃至4は、本発明に係る2軸を断接する車両用のクラッチアッセンブリの例示的な一形態を示している。第1の軸1及び第2の軸2は、それぞれの端部領域において同軸に対向して位置するように配置されている。第1の軸1は、本実施の形態では、例えば図示しない電動モータのモータ軸により形成され、第2の軸2は、図示しない車両伝動装置の伝動装置軸、特に伝動装置出力軸により形成される。
【0027】
クラッチアッセンブリは、切換スリーブ3を備えている。切換スリーブ3は、第1の軸1の端部領域に同軸に移動可能に配置されているとともに、第2の軸2の端部領域を第2の軸2に対して移動可能に同軸に一区分において包囲している。このとき、切換スリーブ3は、切換スリーブ3の内径部において第1の軸1に形状結合を介して相対回動不能に連結可能に形成されていると同時に、切換スリーブ3の外径部において形状結合を介して相対回動不能にかつ相対移動可能にクラッチハウジングを介して第2の軸2に結合されている。クラッチハウジングは、軸1,2の端部領域を同軸に包囲している。クラッチハウジングは、第2の軸2側の軸方向面に、固定のために環状フランジとして形成されている端部区分4を形成している。端部区分4において、クラッチハウジングは、第2の軸2の端部領域にプレス結合部で相対回動不能かつ軸方向相対移動不能にプレスばめされている(
図1及び
図2)。しかし、クラッチハウジングと第2の軸2との間の形状結合を介した結合、形状結合及び力結合を介した結合又は素材結合を介した結合も、可能である。
【0028】
クラッチハウジングは、第1の軸1側の軸方向面に、ハブ状の端部区分5を形成している。ハブ状の端部区分5は、切換スリーブ3の外径部を同軸に包囲している。この場合、切換スリーブ3は、クラッチハウジングのハブ状の端部区分5に形状結合を介して相対回動不能にかつ軸方向相対移動可能に結合されている。このために、ハブ状の端部区分5の内周面には、半径方向の凸部6が形成されている。半径方向の凸部6は、切換スリーブ3の外径部において軸方向で延在する対応する長手方向の凹部7あるいは長手方向溝内に相対回動不能にかつ長手方向相対移動可能に係合する(
図4)。凸部6及び凹部7は、それぞれ軸方向で一貫して、すなわちハブ状の端部区分5あるいは切換スリーブ3の軸方向の全長にわたって形成されている。これにより、切換スリーブ3の外径部において、軸方向の全長にわたって、軸方向の案内が達成されるとともに、駆動出力を伝達する、クラッチハウジングの周方向での形状結合が達成される。凹部7及び凸部6は、それぞれ、周囲にわたって均等に分配配置されている。凹部7及び凸部6は、それぞれ、長方形の横断面輪郭を有しており、クラッチハウジングと切換スリーブ3との間の角形歯列を形成している。
【0029】
図示の第1の運転状態は、閉鎖された初期状態、すなわち軸1,2を連結した初期状態のクラッチアッセンブリを示している。このとき、第1の軸1と第2の軸2との間で、切換スリーブ3とクラッチハウジングとを介してトルクあるいは駆動出力が伝達可能である。初期状態において、切換スリーブ3の内径部は、第1の軸1に形状結合を介して相対回動不能に連結された位置にある。このために、切換スリーブ3の、第1の軸1の端部領域側の端部には、その内径部に、複数の凸部8が形成されており、これらの凸部8は、周方向で相前後して位置し、半径方向内向きにノーズ状に延在している。これらの凸部8は、凸部8に対向するように第1の軸1の端部領域の外径部に位置する対応する長手方向の凹部9あるいは長手方向溝内に相対回動不能にかつ軸方向相対移動可能に係合する(
図3)。凹部9は、第1の軸1の端部を起点に軸方向で延在している。こうして切換スリーブ3は、初期位置から軸方向で移動する際に、内径部に設けられた凸部8において、第1の軸1に設けられた凹部9内で案内されている。
【0030】
切換スリーブ3の、第2の軸2の端部領域側の端部は、複数の遠心力ウェイト10と作用結合している。これらの遠心力ウェイト10は、第2の軸2の端部領域に対して直交方向で可動であり、相対回動不能に配置されている。これらの遠心力ウェイト10は、第2の軸2の回転により遠心力ウェイト10に形成される遠心力に応じて切換スリーブ3を遠心力により操作するために用いられる。遠心力ウェイト10は、第1の軸1の周囲にわたって均等に分配され、クラッチハウジングのポット状の区分11内に相対回動不能に組み込まれて、かつ半径方向で可動に配置されている。この場合、遠心力ウェイト10は、それぞれ、クラッチハウジングの軸方向の内壁において、図示しない保持装置により周方向で案内される。図示の第1の運転状態で、第2の軸2は、回転していないか、又は低い回転数しか有していない。このとき、遠心力ウェイト10は、それぞれ、半径方向内向きに第2の軸2の外径部に当接している。このために、遠心力ウェイト10の半径方向内側の端面は、第2の軸2の外径部に適合されて、凹面状に内向きに湾曲されて形成されている。遠心力ウェイト10は、それぞれ、軸方向及び半径方向ではそれぞれ狭幅とされ、周方向では広幅とされた面を有する直方体状に構成されている。遠心力ウェイト10は、第1の軸1側の狭幅の軸方向面の半径方向内側に、切換スリーブ3を遠心力により操作する連行体12を有している。連行体12は、それぞれ、遠心力ウェイト10と一体に、軸方向の付設部又は凸部として形成されている。この場合、切換スリーブ3は、第2の軸2の端部領域を同軸に包囲する端部区分において、第2の軸2の外径部に対して半径方向で離隔配置されており、こうして第2の軸2に対して半径方向の空隙を形成している。この空隙内には、連行体12の付設部又は凸部が係合している。加えて、連行体12は、切換スリーブ3に対して同軸に配置されている。連行体12を形成する付設部の半径方向外側の面は、第1の軸1側の端部に向かって先細りするように形成されている。この場合、付設部は、切換スリーブ3の内径部と、互いに対応するように回転軸線13に対して斜めに方向付けられた斜面14,15において面接触している。遠心力ウェイト10の、連行体12に伝達された遠心力から、斜面14,15において、第2の軸2とは反対方向の軸方向で作用する作動力が、切換スリーブ3に伝達されるように、斜面14,15は方向付けられている。この場合、切換スリーブ3と連行体12とは、斜面14,15において切換スリーブ3の内径部に設けられた内円錐と、連行体12に設けられた、外円錐形に形成された対応する接触面とを有する円錐結合部を形成している。
【0031】
切換スリーブ3を戻すために、軸方向の戻しばね手段16が設けられている(
図1乃至3)。戻しばね手段16は、切換スリーブ3が遠心力により操作されて初期位置から軸方向で移動する際に、移動に抗して作用する戻しばね力を形成する。本実施の形態では、例えば第1の軸1に対して同軸に配置されている圧縮ばねとしてのコイルばねが、切換スリーブ3を戻すために設けられている。戻しばね手段16の一方のばね端部は、スラスト軸受17を介して、切換スリーブ3の、第1の軸1の端部領域側の端部に支持され、他方のばね端部は、軸方向の保持要素18、本実施の形態では、第1の軸1にプレスばめされたリテーナリングに支持されている。戻しばね手段16は、切換スリーブ3を遠心力ウェイト10の連行体12に向かって軸方向で付勢している。このプリロードにより、クラッチアッセンブリを開放すべく遠心力により操作されて移動するときも、戻しばね手段16により形成される戻しばね力によりクラッチアッセンブリを閉鎖すべく切換スリーブ3を戻すときも、斜面14,15における連行体12と切換スリーブ3との常時の面接触が保証される。
【0032】
第2の軸2の回転時、連れ回る遠心力ウェイト10は、遠心力により半径方向外向きに押し出される。その結果、遠心力ウェイト10の半径方向内側の端面と第2の軸2の外径部との間に半径方向の空隙が生じる(
図5)。その際、第2の軸2の回転数により遠心力ウェイト10に形成される遠心力に応じて、連行体12において、斜面14,15で、軸方向の作動力が切換スリーブ3に伝達される。これにより、切換スリーブ3は、第1の軸1に沿って戻しばね手段16の戻しばね力に抗して軸方向で、切換スリーブ3において軸方向の作動力と戻しばね力との間で力の均衡がとれるまで移動される。切換スリーブ3の軸方向移動時、切換スリーブ3は、内径部に設けられた凸部8で、第1の軸1の外径部に設けられた長手方向溝9内において軸方向で案内されるとともに、外径部に設けられた長手方向溝7内で、クラッチハウジングのハブ状の端部区分5の内径部に設けられた凸部6において軸方向で案内される。
【0033】
第2の軸2の回転数がさらに上昇すると、切換スリーブ3は、さらに第1の軸1に沿って第1の軸1の端部あるいは第2の軸2から離れる方向に、第2の軸2の回転数が所定の回転数まで上昇し、切換スリーブ3の終端位置が達成される(
図6)まで移動される。このとき、切換スリーブ3の内径部に設けられたノーズ状の凸部8は、第1の軸1の外径部に設けられた長手方向溝9を軸方向で画定する、環状に周囲を取り巻くように延びる凹部19あるいは環状溝内に到達する。これにより、第1の軸1と切換スリーブ3との間の周方向の形状結合は、解かれ、これにより、切換スリーブ3は、第1の軸1上で自由に回転可能な位置に到達する。これにより、第1の軸1と第2の軸2とは、連結解除されており、クラッチアッセンブリは、開放された状態にある。
【0034】
第2の軸2の回転数が下がると、遠心力ウェイト10に作用する遠心力、ひいては切換スリーブ3に伝達される軸方向の作動力は、減少する。この作動力と、戻しばね手段16の戻しばね力との間で力の均衡がとれるまで、切換スリーブ3は、第2の軸2に向かって押し戻され、これにより、クラッチアッセンブリは、再び閉鎖状態へ移行する。その際、切換スリーブ3の内径部に設けられた凸部8は、戻しばね手段16の戻しばね力により第1の軸1の外径部に設けられた環状の凹部19から再び長手方向溝9内に押し込まれる。このとき、クラッチアッセンブリの閉鎖は、制御技術的に、モータ軸としての第1の軸1を駆動する電動モータにより補助され得る。このために、モータ軸の回転数は、電動モータの回転数制御により、伝動装置軸を形成する第2の軸2の回転数に適合される。モータ軸と伝動装置軸との回転数が等しいとき、両軸は、互いに相対的にモーメントフリーの状態にある。これにより、切換スリーブ3の内径部に設けられた凸部8は、モータ軸の外径部に設けられた環状の凹部19から力を要さずに、ひいては摩擦なしに長手方向溝9内に戻しばね力により押し込み可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 軸
2 軸
3 切換スリーブ
4 端部区分
5 端部区分
6 凸部
7 凹部
8 凸部
9 凹部
10 遠心力ウェイト
11 区分
12 連行体
13 回転軸線
14 斜面
15 斜面
16 戻しばね手段
17 スラスト軸受
18 保持要素
19 凹部