特許第6419166号(P6419166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6419166交互旋回式主バーナを備える非対称なベースプレート冷却
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419166
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】交互旋回式主バーナを備える非対称なベースプレート冷却
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/14 20060101AFI20181029BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20181029BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   F23R3/14
   F23R3/28 D
   F02C7/18 Z
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-518338(P2016-518338)
(86)(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公表番号】特表2016-521840(P2016-521840A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】US2014039260
(87)【国際公開番号】WO2014197219
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/831,403
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/140,599
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ シー. ミドゥトゥリ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド エム. リットランド
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−052795(JP,A)
【文献】 特開2011−099444(JP,A)
【文献】 特開平07−091661(JP,A)
【文献】 特開2010−256003(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0064691(US,A1)
【文献】 特開2014−215036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−60
F02C 7/18
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器配列であって、
パイロット円錐を有するパイロットバーナと、
複数の反時計回りの主スワーラの間に配置されかつ前記パイロットバーナの周囲に同心に配置された複数の時計回りの主スワーラと、
前記主スワーラを横切るベースプレートと、を備え、
前記主スワーラを通る隣接する流れの隣接する部分がパイロット円錐に向かって流れる内向きゾーンが存在し、該内向きゾーンの間に配置されて、隣接する流れの隣接する部分が前記パイロット円錐から離れる方向へ流れる外向きゾーンが存在し、
当該燃焼器配列の長手方向軸線に関して前記内向きゾーンの上流に配置された高流量領域を介して、前記外向きゾーンよりも比較的多くの冷却流体を前記内向きゾーンへ選択的に供給するように構成されていることを特徴とする、燃焼器配列。
【請求項2】
前記パイロット円錐は、内側パイロット円錐を包囲する外側パイロット円錐を含み、前記内側パイロット円錐と前記外側パイロット円錐との間に、環状間隙冷却流体を前記内向きゾーン及び前記外向きゾーンへ供給するために有効な環状間隙が形成されており、該環状間隙の幅は、それぞれの高流量領域及び低流量領域を形成するように変化している、請求項1記載の燃焼器配列。
【請求項3】
前記パイロット円錐は、内側パイロット円錐を包囲する外側パイロット円錐を含み、前記内側パイロット円錐と前記外側パイロット円錐との間に、環状間隙冷却流体を前記内向きゾーン及び前記外向きゾーンへ供給するために有効な環状間隙が形成されており、さらに、選択的に前記環状間隙冷却流体を前記内向きゾーンへ案内することによって高流量領域を形成するために有効な、前記環状間隙に配置された流れガイドを含む、請求項1記載の燃焼器配列。
【請求項4】
前記ベースプレートは、高流量領域を形成する開口を有し、該高流量領域のそれぞれを通って前記冷却流体が比較的高い流量で流れ、前記開口は、さらに、複数の低流量領域を形成しており、該低流量領域のそれぞれを通って前記冷却流体は比較的低い流量で流れる、請求項1記載の燃焼器配列。
【請求項5】
それぞれの前記高流量領域は、周方向でそれぞれの内向きゾーンと位置合わせされている、請求項1記載の燃焼器配列。
【請求項6】
高流量領域開口は、前記冷却流体が前記ベースプレートを通流することを可能にしており、それぞれの前記高流量領域において、前記高流量領域開口の大部分は、それぞれの隣接する主スワーラの長手方向軸線の半径方向外側に配置されている、請求項5記載の燃焼器配列。
【請求項7】
燃焼器配列であって、
パイロットバーナと、
該パイロットバーナの周囲に同心に配置された複数の予混合主スワーラであって、時計回りの旋回を付与する主スワーラと、反時計回りの旋回を付与する主スワーラとが交互に位置している、予混合主スワーラと、
ベースプレートであって、該ベースプレートを通って前記主スワーラが延びており、前記ベースプレートは、複数の高流量領域であって該高流量領域のそれぞれを冷却流体が比較的高い流量で流れる複数の高流量領域と、複数の低流量領域であって該低流量領域のそれぞれを前記冷却流体が比較的低い流量で流れる複数の低流量領域とを含む、ベースプレートと、を備え、
前記高流量領域を通流する冷却流体が、隣接する主スワーラ流の隣接する部分が前記パイロットバーナへ流れるところに形成されたそれぞれの内向きゾーンへ供給されるような位置に、前記高流量領域が配置されていることを特徴とする、燃焼器配列。
【請求項8】
前記低流量領域は、周方向で、隣接する高流量領域の間に配置されている、請求項7記載の燃焼器配列。
【請求項9】
それぞれの高流量領域は、パイロットバーナ長手方向軸線に対して半径方向で、かつ各内向きゾーンを包囲するように隣接しているそれぞれの主スワーラを二分する平面によって、範囲を定められている、請求項8記載の燃焼器配列。
【請求項10】
前記低流量領域は、前記高流量領域の間に位置するベースプレートの部分である、請求項9記載の燃焼器配列。
【請求項11】
それぞれの前記高流量領域は、周方向でそれぞれの内向きゾーンと位置合わせされている、請求項7記載の燃焼器配列。
【請求項12】
前記ベースプレートを貫通しかつそれぞれの前記高流量領域に関連した開口は、それぞれの前記高流量領域を通流する冷却流体が、前記パイロットバーナのパイロット円錐に隣接したそれぞれの内向きゾーンに流入するように位置決めされている、請求項7記載の燃焼器配列。
【請求項13】
前記パイロットバーナは、内側円錐と、該内側円錐を包囲する外側円錐とを有し、前記内側円錐と前記外側円錐との間に環状間隙が形成されており、該環状間隙は、該環状間隙を通流する冷却流体用の通路を形成しており、前記環状間隙から出た前記冷却流体は、前記内向きゾーンに進入する、請求項7記載の燃焼器配列。
【請求項14】
燃焼器配列であって、
パイロット円錐を有するパイロットバーナの周囲に配置された複数の交互に旋回する主スワーラであって、隣接する主スワーラによって形成された収束する流れは、パイロット円錐に関して交互の内向き及び外向きの流れ領域を形成する、複数の交互に旋回する主スワーラと、
外向きの流れ領域よりも内向きの流れ領域により高い流量の冷却流体を選択的に供給するために有効な冷却流体流れ配列と、
を備えることを特徴とする、燃焼器配列。
【請求項15】
前記主スワーラを支持するベースプレートと、
該ベースプレートに形成された、前記外向きの流れ領域の上流の領域よりも、前記内向きの流れ領域の上流の領域においてより多数の冷却流体開口と、
をさらに備える、請求項14記載の燃焼器配列。
【請求項16】
前記主スワーラを支持するベースプレートと、
該ベースプレートに形成された、前記外向きの流れ領域の上流の領域よりも、前記内向きの流れ領域の上流の領域において比較的大きな冷却流体開口と、
をさらに備える、請求項14記載の燃焼器配列。
【請求項17】
前記パイロット円錐は、前記外向きの流れ領域よりも前記内向きの流れ領域により高い流量の冷却流体を供給するように構成されている、請求項14記載の燃焼器配列。
【請求項18】
前記パイロット円錐は、その円周に沿って変化する幅を有する環状間隙を有する、請求項17記載の燃焼器配列。
【請求項19】
前記パイロット円錐は、その円周に沿って変化するジオメトリを有する環状間隙を有する、請求項17記載の燃焼器配列。
【請求項20】
前記パイロット円錐は、前記冷却流体を方向付けるために有効な流れガイドを有する、請求項17記載の燃焼器配列。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/831403号の出願日2013年6月05日の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、交互旋回式主バーナを利用する缶型環状燃焼器において逆火及び火炎保持を生じやすい領域に冷却流体を選択的に供給するように構成されたベースプレート用の最適化された冷却配列に関する。この最適化された冷却配列はNOx及びCOエミッションを低減する。
【0003】
発明の背景
ガスタービンエンジン用の缶型環状燃焼器は、中央のパイロットバーナと、パイロットバーナの周囲に配置された複数の予混合主バーナとを有する燃焼器アセンブリを有してもよい。パイロットバーナは通常、圧縮機から受け取られた圧縮空気の流れの一部を受け取り、パイロットバーナ流を燃料と混合してパイロットバーナ空気・燃料混合物を形成する。パイロットバーナ混合物は、軸方向に移動するパイロットバーナ混合物に周方向運動を付与するパイロットバーナにおける流れ制御面によって旋回させられてもよい。この旋回させられた流れは、拡開するパイロット円錐内で継続し、この配列は、拡開するらせん形に流れるパイロット混合物を生じる。この混合物は、点火され、燃焼器火炎をアンカリングするように機能する。
【0004】
主バーナは、パイロットバーナの周囲の所定の位置に保持され、主バーナを横切る方向に向くベースプレートを貫通して延びていてもよい。パイロットバーナと同様に、各主バーナは、圧縮機から受け取られた圧縮空気の流れのそれぞれの部分を受け取る。圧縮空気のそれぞれの流れは、それぞれの主バーナを通流し、主バーナにおいて燃料と混合され、主バーナ空気・燃料混合物を形成する。主バーナ混合物は、軸方向に移動する主バーナ混合物に周方向運動を付与する主バーナにおける流れ制御面によって旋回させられてもよい。この旋回させられた混合物は、主バーナ流とパイロットバーナ流とが混合するまで下流へ継続し、この箇所において、主バーナ流は口火によって点火される。主バーナ混合物は、通常、パイロットバーナ混合物よりも希薄であり、ひいては、安定した燃焼は、パイロットバーナ混合物のアンカリング効果に依存する。
【0005】
主バーナ流の予混合は、燃料消費及びエミッションを低減することを意図している。予混合燃焼器における燃焼火炎の安定性は、主バーナにおけるスワーラの旋回効果によって提供される適切な予混合に依存する。適切に旋回させられ、混合された流れは、燃焼不安定性を低減し、ひいてはNOx及びCOエミッションを低減する。
【0006】
従来の燃焼器では、主バーナは、各主バーナ流に同じ方向に旋回を付与するように構成されている。燃焼器軸線に沿って見ると、各主バーナ流は、他のものと同じ方向に回転しているものと見てもよい。例えば、各主バーナ流は、時計回りに旋回していてもよい。しかしながら、この配列では、隣接する流れの隣接する部分は反対方向に移動する。これは、混合領域において、発熱率及びエミッションを増大させるせん断及び渦を生じる。このことを軽減するために、主バーナ流に付与される旋回の方向を交互に反転させ、主バーナ流が交互に時計回り及び反時計回りに旋回するようにすることが提案されている。これは、Ryanの米国特許出願公開第2010/0071378号明細書に開示されており、当該明細書の全体は本明細書に援用される。
【0007】
図面の簡単な説明
本発明は以下の説明において図面に関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】缶型−環状ガスタービンエンジンの従来の燃焼器配列を示している。
図2】ベースプレートと、従来の冷却開口と、従来のスワーラ配列の旋回とを示している。
図3図2のベースプレート及び従来の冷却開口と、代替的な従来のスワーラ配列の旋回とを示している。
図4】ベースプレートと、従来の冷却開口と、図3の代替的な従来のスワーラ配列とを使用する燃焼器配列の端面図を示している。
図5】本明細書に開示された冷却配列を備える、ベースプレートと、交互旋回主バーナとを示している。
図6】燃焼器配列と、本明細書に開示された冷却配列の代替的な典型的な実施の形態との端面図を示している。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の発明者は、パイロットバーナを包囲する予混合主バーナを使用する燃焼配列が、主バーナにおけるスワーラが主バーナ流に交互に反転する旋回を付与した場合に燃焼器内に変化する燃料濃度のゾーンを形成することを認識した。発明者は、隣接する主バーナ流の隣接する部分が内向きに(口火内へ)流れるゾーンにおいて、燃料高濃度ゾーンが形成され得ることを確認した。これらの内向きゾーンにおける高い燃料含有量は、逆火及び火炎保持の傾向を高める。対照的に、発明者は、隣接する主バーナ流の隣接する部分が外向きに(口火から離れる方向へ)流れるゾーンにおいて、燃料希薄ゾーンが形成され得ることを確認した。発明者は、さらに、ベースプレートを通流する冷却流体が主バーナ流に引き込まれることを確認した。発明者は、この知識を活用し、このような交互に反転するスワール配列における逆火及び火炎保持の可能性を低減するように構成された独特の装置を発明した。
【0010】
特に、本明細書に記載された改良された燃焼器装置は、料高濃度内向きゾーンに供給する冷却空気流を選択的により多くし、これによって、これらのゾーンにおける燃料・空気混合物レベルを低下させる。これらの内向きゾーンにおける燃料の量を減じることにより、火炎がこれらのゾーンを介して逆火し、望ましくないところに保持されるという可能性が低減される。内向きゾーンへ供給される冷却流の量が多くなることを補うために、改良された燃焼器装置は料希薄外向きゾーンに供給する冷却空気流を選択的に少なくする。冷却流のこの関連した減少は、内向きゾーンへの冷却剤の増加した流れを相殺する助けとなり、ひいては燃焼器を通る冷却剤の流れの総量を増加させる代わりに、燃焼器を通過する冷却流の全体量はほぼ維持される。同じ若しくは同等の全体合計冷却流を維持することは、エンジン効率を維持し、さもなければ合計冷却空気流の増加に関連し得るNOx及びCOエミッションを低減する助けとなる。
【0011】
図1は、従来の缶型環状ガスタービンエンジンの燃焼器配列10を示している。圧縮機(図示せず)から受け取られる圧縮空気12は、概して燃焼器配列10の上流端部14から燃焼器配列長手方向軸線18に沿って下流端部16に向かって流れる。複数の予混合主バーナ20は、パイロットバーナ22の周囲に周方向にかつ燃焼器配列長手方向軸線18と同心に配置されている。各主バーナ20は、圧縮空気12の一部を受け取り、各主バーナ20によりこの一部は各主バーナ20を通るそれぞれの主バーナ流24となる。同様に、パイロットバーナは、パイロット流(図示せず)となる圧縮空気12の一部を受け取る。各主バーナ20内には、スワーラアセンブリ26(見えていない)及び燃料インジェクタ(図示せず)が設けられており、燃料インジェクタは、燃料を圧縮空気に導入し、これにより、主バーナ燃料・空気混合物を形成する。各スワーラアセンブリ26は、それぞれの主バーナ流24に周方向の運動を付与する。その結果、主バーナ出口28から排出される各主バーナ流24は、軸方向及び周方向の両方に運動し、これにより、らせん形の流れ(図示せず)を形成する。主バーナ出口28は、図示したように選択的な主バーナ後方延長部30の端部に配置されていてもよいし、又は選択的な主バーナ後方延長部30が設けられていない場合には僅かにより上流に配置されていてもよい。
【0012】
ベースプレート40は、燃焼器配列長手方向軸線18と、各主バーナ20の長手方向軸線42とを横切る方向を向いており、各主バーナ20の支持を補助している。ベースプレート40は、主バーナ開口44を有しており、この主バーナ開口44を通って主バーナ20が延びている。ベースプレート40は、燃焼器配列10を分離させており、上流領域46と、燃焼が生じる下流領域48とを形成している。均一な大きさでかつ対称的なパターンの冷却開口50が、ベースプレート40の全周に、かつベースプレート40を貫通して配置されており、これにより、圧縮空気12を冷却流体52として作用させ、ベースプレート40を流過させ、従来の冷却配列における所要の冷却を提供する。
【0013】
パイロットバーナ22は同様に、パイロット流に旋回を付与するベースプレート40の近くのパイロットスワーラ(図示せず)と、燃料を圧縮空気へ導入してパイロット流空気・燃料混合物を形成する燃料インジェクタとを有してもよい。旋回させられたパイロット流は、パイロットバーナ円錐配列60によって範囲を定められている。このパイロットバーナ円錐配列60は、内側パイロット円錐62と、内側パイロット円錐62を包囲する外側パイロット円錐64とを含んでもよく、これらの間に環状間隙66を形成している。圧縮空気12は、環状間隙66内を流れ、環状間隙出口68から排出されてもよい。環状間隙出口68は、パイロット円錐配列下流端部70の上流又はパイロット円錐配列下流端部70と同一平面上に存在してもよい。パイロットバーナ流は、パイロット円錐配列下流端部70の近くで口火ゾーン74に存在する口火を介して燃焼をアンカリングする。各主バーナ旋回流は、この旋回流が口火によって点火される口火ゾーン74に到達するまでそれぞれの主バーナ出口28から移動する。旋回させられたパイロット流と、旋回させられた主バーナ流とは、口火ゾーン74と同様ではあるがそれよりも大きい燃焼火炎ゾーン76において燃焼火炎を形成する。燃焼器配列長手方向軸線18に関して、旋回させられた主流が、半径方向外側78においては燃焼器ライナ80によって範囲を定められていることが分かる。半径方向内側82では、旋回させられた主流は、外側パイロット円錐64によって範囲が定められている。この半径方向で非対称の範囲は、以下でさらに説明するような半径方向で非対称の空力特性を生じる。
【0014】
図2は、燃焼器配列長手方向軸線18に沿って下流端部16から上流端部14に向かって見た、燃焼器配列10から取り外された図1のベースプレート40及び関連する冷却配列を示している。この構成では、スワーラアセンブリ(見えていない)は、この図では反時計回りである同じ方向102で各主バーナ流24に旋回を付与し、これにより、旋回させられた主流104を形成する。エンジン作動中、隣接する旋回させられた主流108の隣接する部分108が軸方向に燃焼器配列長手方向軸線18に沿って移動するとき、これらの隣接する部分108は、反対の直線的な方向に移動しながら最終的に衝突する。反時計回りに旋回させられた主流130は、燃焼器配列長手方向軸線18と、この燃焼器配列長手方向軸線18に中心あわせされたパイロットバーナ22とから離れる直線的な外向き方向112に移動しており、隣接する第2の旋回させられた流れ132は、パイロットバーナ2に向かって直線的な内向き方向116に移動している。この領域では、互いに反対向きの流れ方向の衝突が、せん断及び渦を生じ、これらは、不安定な燃焼、脈動の増大、NOx及びCOの増大などを生じる。
【0015】
衝突により生ぜしめられるせん断及び渦を軽減するために、図3に示された、図2のベースプレート40及び関連する冷却配列とともに使用されるスワール構成が提案されており、この場合、スワーラアセンブリは各主バーナ流24に交互に逆の方向で旋回を付与する。例えば、1つおきの旋回させられた主流104は、時計回りに旋回させられた主流130であってもよいのに対し、その間に配置される旋回させられた主流104は、反時計回りに旋回させられた主流132であってもよい。このような構成では、エンジン作動中、隣接する旋回させられた主流108の隣接する部分106が燃焼器配列長手方向軸線18に沿って軸方向に移動するとき、隣接する部分106同士は最終的に衝突するが、図2の構成とは対称的に、隣接する部分106同士が衝突する時に、それらは両方とも同じ方向に移動している。内向きゾーン134において、時計回りに旋回させられた主流130及び反時計回りに旋回させられた主流132の隣接する部分106は両方とも、内向き方向116に移動している。この図では、反時計回りに旋回させられた主流132が、時計回りに旋回させられた主流130の周方向右側に隣接して配置されている場合、時計回りに旋回させられた主流130と、反時計回りに旋回させられた主流132との間に、内向きゾーンが形成される。外向きゾーン136においては、反時計回りに旋回させられた主流132と時計回りに旋回させられた主流130との隣接する部分は両方とも外向き方向112に移動している。この図では、反時計回りに旋回させられた主流132が、時計回りに旋回させられた主流130の周方向左側に隣接して配置されている場合、反時計回りに旋回させられた主流132と、時計回りに旋回させられた主流130との間に、外向きゾーンが形成される。
【0016】
図4は、燃焼器配列長手方向軸線18に沿って下流端部16から上流端部14に向かって見た、ベースプレート40と、冷却配列と、図3の交互の旋回とを、主バーナ20、内側パイロット円錐62、外側パイロット円錐64及び環状間隙66とともに示している。この図では、内向きゾーン134においては、らせん形に移動する時計回りに旋回させられた主流130と、反時計回りに旋回させられた主流132とが、半径方向外側78から半径方向内側82に向かって回転することが分かる。外側パイロット円錐64が存在するところでは、外側パイロット円錐64は、流れの内向き部分のさらなる内向きの移動を妨害し、内向き部分を外側パイロット円錐64に沿って軸方向下流へ移動させる。パイロット円錐配列下流端部70の軸方向下流の位置においては、流れの内向き部分は、旋回させられたパイロット流と衝突し、旋回させられたパイロット流は、大きな内向きの突入に対抗するように作用する。予混合された内向き部分は、予混合パイロット流の周縁部と混合され、予混合パイロット流とともに軸方向に沿って流れる。対照的に、半径方向内側82から半径方向外側78に向かって旋回する場合、主流の外向き部分は、拡開する内側パイロット円錐62によっても半径方向外向きに案内され、外向きゾーン136における外向きの効果を高める。その結果、各内向きゾーン134においては、口火は、燃焼火炎に寄与する燃料・空気混合物の流入を受け取る。対照的に、各外向きゾーン136においては、口火は、燃料・空気混合物の流入を受け取らないが、その代わりに、外向きゾーンにおける燃料及び空気は、口火から離れるように方向付けられる。
【0017】
作動中、口火の周縁部と混合される内向きゾーンからの燃料は、燃焼火炎の逆火及び火炎保持を許容する傾向がある条件を形成する。このような条件の間、火炎は、パイロット円錐及び/又はスワーラにとどまり、その結果、ハードウェア損傷を生じる。パイロット円錐にとどまる火炎の傾向に寄与し得る1つの要因は、比較的低速で移動する冷却流体が排出される環状間隙出口68であり得る。環状間隙66からの比較的低速で移動する冷却流体は、内向きゾーンにおいて燃料・空気混合物と混合される。これは、合流した冷却空気と燃料・空気混合物との全体的な速度を減速させ、これにより、火炎がとどまることを容易にする。
【0018】
流体力学モデリング他を用いた調査により、発明者は、この現象を認識することができた。発明者はさらに、ベースプレート40の冷却開口50を通流する冷却流体52が旋回させられた主流104に引き込まれることを認識した。特に、冷却開口50を通流する冷却流体52のある部分は、引き込まれた流れを内向きゾーンへ方向付けるように引き込まれることが分かった。このことから、発明者は、図4に示された従来の均一な冷却孔パターンを、冷却開口50のための新たなパターンを設計することによって改良することができると結論づけた。新たなパターンは、向きゾーン134などの、利用可能な燃料の豊富さ及び/又は比較的低速の流量による逆火及び火炎保持を生じやすい燃焼配列の部分へ、冷却流体52を選択的に供給する。発明者は、さらに、内向きゾーン134へ冷却流体52を供給しないパターンの他の部分を、より少ない冷却流がそこを通過するように調節することができることを認識した。冷却流のこの減少は、冷却流体52を内向きゾーン134へ方向付けるために使用される冷却流の増大を相殺するために利用することができる。この相殺により、燃焼器配列10を通る冷却流体52の合計流量を同一のままにするか、又はほぼ同一のままにすることができる。同一の又はほぼ同一の合計冷却流量を維持することで、冷却空気流の増大に関連したエンジン作動効率の低下が防止され、冷却流の増大にしばしば関連する付加的なNOx及びCOエミッションの形成が防止される。
【0019】
図5は、ベースプレート40を貫通した高流量冷却開口152及び低流量冷却開口154を有する新たなベースプレート冷却配列150の典型的な実施の形態を示している。高流量冷却開口152は、ベースプレート40の比較的高流量の領域156を形成しており、低流量冷却開口154は、ベースプレート40の(領域156と比較して)比較的低流量の領域158を形成している。この典型的な実施の形態では、ベースプレート40は、燃焼器配列長手方向軸線18と、(燃焼器配列長手方向軸線18に対して平行な)主バーナ長手方向軸線164とが位置する平面162によって区切られた偶数の円弧160に分割されている。言い換えれば、平面162は、燃焼器配列長手方向軸線18から半径方向に延びており、燃焼器配列長手方向軸線18の両側における主バーナ20を二分している。この図では、それぞれが2つの主スワーラ20を二分する4つの平面162が存在する。ベースプレート40の高流量領域156は、高流量冷却開口152を含む円弧160である。同様に、ベースプレート40の低流量領域158は、低流量冷却開口154を含む円弧160である。この典型的な実施の形態では、高流量領域156は、変更された内向きゾーン134’の上流にありかつ変更された内向きゾーン134’と周方向で一致しており、低流量領域158は、変更された外向きゾーン136’の上流にありかつ変更された外向きゾーン136’と周方向で一致している。変更された内向きゾーン134’において、変更は、比較的希薄な混合物を含む。変更された外向きゾーン136’において、変更は、比較的濃厚な混合物を含む。
【0020】
この位置においてベースプレート40を通流する冷却流体52が引き込まれ、内向きゾーン134’へ供給されることが観察されたので、この構成が選択された。外向きゾーン136’は既に比較的希薄であり、外向きゾーン136’へ方向付けられる冷却流体52の量を減じることは外向きゾーン136’における混合物の希薄性を減じる傾向があり、これにより、燃焼器配列10における混合物のさらなる均一化に寄与するので、低流量領域158における冷却流体52の低減は外向きゾーン136’に悪影響を及ぼさないということも観察された。これは、ひいては、燃焼器配列10を通る合計冷却流量を維持もしながら、より良好な燃焼に寄与する。図5に示された実施の形態では、高流量冷却開口152の大部分は、主バーナ長手方向軸線164の半径方向外側に配置されている。なぜならば、この位置は、冷却流体52が所望のように引き込まれかつ内向きゾーンへ供給されることを促進するからである。この構成は、実証され、逆火及び火炎保持の可能性を低減することが証明された。
【0021】
高流量領域156における比較的高い流量は、冷却開口の直径を変更すること以外に様々な方法によって達成することができる。例えば、高流量領域156においては、単により多くの冷却開口を設けるか、又はその領域において比較的大きな流量を提供するために有効な、より大きくより多くの開口のあらゆる組合せであってもよい。同様に、流量を減じるために、より小さな又はより少ない開口又はそれら両方が用いられてもよく、加えて、逆火及び火炎保持を軽減するために有効な高流量領域及び低流量領域のその他の構成を構想することができ、このようなその他の構成は本開示の範囲に含まれる。例えば、示された領域は、合計円弧長さの8分の1の円弧長さを有する円弧であるが、円弧は、より短い又はより長い円弧長さなどのあらゆる形状を有することができる。これに代えて、高流量又は低流量領域は、ベースプレート40の範囲内で円形、正方形又はその他の形状であってもよい。領域の形状は、対象とされる内向きゾーンの形状に合致するように形成することができる。例えば、対象とされる内向きゾーンが球形を特徴とするならば、高流量領域は円形であってもよい。同様に、対象とされる内向きゾーンがあらゆるその他の形状を特徴とするならば、高流量領域は、内向きゾーンに向かって移動するときに高流量領域を通流する冷却流体のあらゆる流れ収束及び/又は拡散に対応するために必要などのようなサイズであっても、その形状に合致することができる。この形式では、高流量領域を通流する冷却流体の横断面の形状は、冷却流体が内向きゾーンに到達するときに内向きゾーンの横断面の形状及び/又は大きさに適合し、内向きゾーンの最大量は、冷却流体によって浸透される。高流量領域の形作りは、単に複数の同じ又は同等の大きさ及び/又は形状の冷却開口を適切な場所において適切な形状で配置することを含む、あらゆる数の方法で行うことができる。これに代えて、作動中に高流量領域を通流する冷却流体のための所望の形状を生じる様々な大きさ及び形状の個々の冷却開口を、高流量領域において集合させることができる。
【0022】
図6に示された代替的な典型的な実施の形態では、ベースプレートにおける開口を変更する代わりに又はそれに加えて、パイロット円錐が、冷却流体の流れを偏らせるように構成されてもよい。1つの典型的な実施の形態では、環状間隙66の形状は、選択的に、環状間隙66から内向きゾーン134へ供給する冷却流体をより多くし、環状間隙66から外向きゾーン136へ供給する冷却流体をより少なくするように変更されてもよい。これは、典型的な実施の形態では、周方向で波形になるように外側パイロット円錐64の形状を変化させることによって行われてもよい。これは、間隙の幅170が波形によって周方向で変化するような環状間隙66を生じさせることができる。幅170は、内向きゾーン134へ流入する環状間隙冷却流体をより多くするために、比較的大きな幅172を内向きゾーン134の近くに存在させることができる。外向きゾーン136へ流入する環状間隙冷却流体をより少なくするように、比較的小さな幅174が外向きゾーン136の近くに存在している。これに代えて、又はこれに加えて、内側パイロット円錐62が同様に波形にされてもよい。
【0023】
環状間隙冷却剤流の周方向分配を変更することは、あらゆる数の他の方法で行われてもよい。例えば、環状間隙冷却流体を選択的に内向きゾーン134へ方向付けるために、流れガイド180が、環状間隙66内、環状間隙出口68及び/又は環状間隙出口68の上流に配置されてもよい。これらの流れガイド180は、加的な冷却流体を内向きゾーン134へ、より少ない冷却流体を外向きゾーン136へ選択的に供給するように、単独で又は開口変更及び/又は好適な環状間隙寸法決めと関連して用いることができる。
【0024】
これに代えて、側方から見たときに、外側パイロット円錐64が、比較的多くの環状間隙冷却流体を内向きゾーン134へ供給するために有効な、内向きゾーン134の近くのカットバック領域を備えたクラウンに似るように、外側パイロット円錐64が内向きゾーン134の近くで切り込まれてもよい。軸方向突出部は、外向きゾーン136の近くに配置することができ、比較的少ない環状間隙冷却流体を外向きゾーン136へ供給するために有効である。詳述されていないが、選択的に、内向きゾーン134へ供給する環状間隙冷却流体をより多くし、外向きゾーン136へ供給する環状間隙冷却流体をより少なくする様々なその他の構成が、本開示の範囲において考えられる。
【0025】
前記説明から、発明者は、燃焼器における潜在的な改良のための領域を認識し、その領域において燃焼器の性能に影響するパラメータを決定し、材料及び製造に関して極めて僅かなコストしか生じずかつ付加的な合計冷却流を必要とせずに改良を提供する改良された設計を開発したということが分かる。その結果、本明細書に開示された冷却配列は、技術の改良を提供する。
【0026】
本発明の様々な実施の形態が本明細書中で図示及び説明されているが、これらの実施の形態は単に例として提供されていることが明らかになるであろう。本明細書における本発明から逸脱することなく、多数の改変、変更及び代用がなされ得る。したがって、本発明は、添付の請求項の思想及び範囲によってのみ限定されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6