特許第6419178号(P6419178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419178
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】皮下注射針破壊
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
   A61G12/00 W
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-528599(P2016-528599)
(86)(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公表番号】特表2016-525005(P2016-525005A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】GB2014052135
(87)【国際公開番号】WO2015011443
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】1313209.7
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516021854
【氏名又は名称】ニードルスマート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】カービー クリフォード
(72)【発明者】
【氏名】ドウセ ノーマン
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/086665(WO,A1)
【文献】 米国特許第05741230(US,A)
【文献】 特開平04−067867(JP,A)
【文献】 米国特許第05288964(US,A)
【文献】 特開2006−296819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下注射針(2)を処理するための機器(110)であって、
前記針(2)をその中に受け入れて、束縛するための閉じ込めシリンダ(118)へ導く開口(114)を備える筺体(112)、
前記針(2)と第1の端部の近くで接触するための第1の電極(16)、
前記針(2)とその尖端で接触するための第2の電極(20)、
前記第1(16)および第2(20)の電極間で前記針(2)に電流を流すように動作可能な制御システムであって、それにより前記電流は、前記針(2)を軟化させ、前記第2の電極(20)は、前記閉じ込めシリンダ(118)内で移動して、前記針の軸に沿って前記針(2)に軸方向の圧縮力を与えるように配列された、制御システム、
を備え、
前記閉じ込めシリンダ(118)は、前記針(2)に前記軸方向の圧縮力を適用する前に前記閉じ込めシリンダ(118)を予備加熱するためのヒータ(300)を備えることを特徴とする、
機器。
【請求項2】
前記ヒータ(300)は、前記閉じ込めシリンダ(118)を囲むサーモスタット制御の加熱コイルの形をとる、請求項1に記載の機器(110)。
【請求項3】
前記閉じ込めシリンダ(118)は、ガス供給源に動作可能に接続され、それにより前記処理の間にガスが前記シリンダ(118)を通過する、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の機器(110)。
【請求項4】
前記ガスは、大気ガス、二酸化炭素、アルゴン、または他の実質的な不活性ガスのうちの1つ以上から選択される、請求項3に記載の機器(110)。
【請求項5】
前記閉じ込めシリンダ(118)は、前記第2の電極(20)が軸方向の圧縮力を与えるときに、前記針()の塊が前記シリンダ(118)内に閉じ込められるように配列される、請求項1に記載の機器(110)。
【請求項6】
前記制御システムは、前記第1の電極(16)および前記第2の電極(20)と前記針()との直接接触、および、前記針(2)に電流を誘導するための前記閉じ込めシリンダ(118)に隣接してまたはその周りに配置されるコイルを用いて前記針(2)に電流を誘導すること、を含むグループのうちのいずれか1つ以上により、前記針(2)に電流が流れるようにする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の機器(110)。
【請求項7】
前記第2の電極(20)は、ピストンを備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の機器(110)。
【請求項8】
前記ピストン(20)は、使用中に、前記針(2)の前記尖端が静止する刻み目を備える、請求項7に記載の機器(110)。
【請求項9】
前記機器(110)は、前記針をハブで把持して、その後の処理のためにそれを所定の位置に固定するためのロッキング手段を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器(110)。
【請求項10】
前記ロッキング手段は、共通シャフト(13)上に取り付けられた一対の摺動可能なクランプ(16)を備え、各クランプ(16)は、相対的に反対に切られたねじ山によって駆動される、請求項9に記載の機器(110)。
【請求項11】
一対のガイドブロック(7)をさらに備え、その各々は、前記ガイドブロック(7)が嵌合されたときに、円錐状チャンネルが前記針(2)を案内するように、前記円錐状チャンネルの半分を形成する、請求項10に記載の機器(110)。
【請求項12】
前記軸方向の圧縮力は、モータ(28)、ソレノイド、ばねまたは手の力のうちの1つによって与えられる、請求項7〜11のいずれか一項に記載の機器(110)。
【請求項13】
針のタイプに対応する複数の動作プログラムのうちの1つを選択するための手段が提供された、請求項1〜12のいずれか一項に記載の機器(110)。
【請求項14】
複数の動作プログラムのうちの1つを選択するための前記手段は、可能な針(2)の一組の物理的特性のうちの少なくとも1つを決定するための手段を備える、請求項13に記載の機器(110)。
【請求項15】
前記一組の物理的特性は、長さ、太さおよび電気抵抗のうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の機器(110)。
【請求項16】
前記針(2)に流す電流は、前記針(2)の前記物理的特性に応じて、時間、加えられるエネルギーまたは計算された針の温度に基づく動作プログラムに従って適用される、請求項6〜15のいずれか一項に記載の機器(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に注射するために医科および歯科で使用されるような、使用済みの皮下注射針の安全な破壊に関係する機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薬剤を患者に投与するか、または血液サンプルを患者から取り出すために皮下注射針が一旦使用されると、再使用されないように、かつ感染が一人の患者から他の患者へ確実に伝播しないようにするために、皮下注射針を含むシリンジ組立品全体が廃棄される。現在の慣行では、組立品全体がいわゆる「シャープス」ビンに廃棄されて、それが危険な医療廃棄物として処置され、相応に取り扱われて廃棄される。針を使用後にシリンジから取り外すと傷害が最も生じやすいので、安全衛生手順は、一般にこれを許可しない。
【0003】
いくつかの特定用途、特に、歯科では、メタルボディのシリンジが使用される。これは、適切な処置後に再使用できるが、針を廃棄する問題が依然として付随する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、皮下注射針の安全な廃棄に関連する問題がある。皮下注射針が一旦使用されると、針をシャープス・ビンへ運ぶ間に、医師が自身または同僚の皮膚をその針で不用意に突き刺す可能性がある。かかる傷害は、針刺し傷害として知られる。これによって、医師は、問題の患者から場合によっては危険な1つ以上の病原体を接種されかねない。
【0005】
医師がこのように曝露されるかもしれないいくつかの病原体は、非常に危険な可能性があり、キャリアを制限し、または潜在的に生命さえ危うくしかねない。これらの例は、肝炎およびHIVを含むが、さらに非常に多くの例がある。医師がこれらの病気の1つ以上に感染した場合、処置は、抗レトロウイルス薬を含めて長期にわたる医薬を伴い、その副作用は、それら自体が危険かつ不快でありうる。最近、数人のヘルスケア専門家が針刺し傷害から直接感染した後に死亡した。さらに多数が針刺し傷害の直接の結果としてキャリアを変更せざるを得なかった。
【0006】
個人が潜在的に危険な使用済みのシリンジと接触しうる他の場所は、薬剤使用者がしばしば訪れる区域、針交換、およびある病気、例えば、糖尿病の自己治療を行う人々を含む家庭を含む。
【0007】
使用済みの皮下注射針の廃棄に関するさらなる問題は、使用済みの針と関連する特別な取り扱い要件、およびそれらの安全な廃棄に伴うコストである。上述のように、使用済みの皮下注射針がシャープス・ビンに廃棄されると、そのシャープス・ビンは、潜在的に危険な内容物が確実に誰も損傷しえないようにするために特別な取り扱いを必要とする。いくつかの傷害は、破損したシャープス・ビンからの危険な針に曝露された個人から生じた。
【0008】
典型的な病院環境では、多数のかかるシャープス・ビンの廃棄のコストおよび複雑さが実際に非常に高くなりうる。英国国民保険サービスの全体にわたって、毎年何百万というシャープス・ビンが供給され、使用されて、その後焼却される。これは、相当な出費を伴い、環境汚染の一因となる。
【0009】
使用済みの皮下注射針を廃棄するための先行技術の提案は、一般に、必要とされる解決策には不十分であり、使用済みの針の安全な廃棄に関連する問題に十分には対処しない。しばしば、先行技術の解決策は、針を実効的に焼却する高電流の通過によって針を破壊しようとする。これは、複雑な機器を必要とし、焼却処理によって残された残渣を廃棄する問題が依然として残る。さらに他の先行技術の解決策は、針の先端を単に曲げるに過ぎず、針は、誰かを害するかもしれない状態のままであり、健康安全規則の下での「シャープ」としての処置をおそらく依然として必要とするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それゆえに、使用済みの皮下注射針をより安全かつ費用効果が高い方法で取り扱って廃棄する必要性が存在する。本発明の実施形態は、この問題と、かかる問題が本明細書に挙げられるかどうかにかかわらず先行技術に伴う他の問題とに対処することを目指す。
【0011】
本発明によれば、添付される特許請求の範囲に提示されるような機器および方法が提供される。本発明の他の特徴は、従属請求項および以下に続く記載から明らかになるであろう。
【0012】
本発明をさらによく理解するために、かつ本発明の実施形態がどのように実行されるとよいかを示すために、例として、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】先行技術のシリンジ組立品を示す。
図2a】本発明の第1の実施形態の動作原理を示す。
図2b】本発明の第1の実施形態の動作原理を示す。
図3a】本発明の第1の実施形態の動作原理のさらなる詳細を示す。
図3b】本発明の第1の実施形態の動作原理のさらなる詳細を示す。
図3c】本発明の第1の実施形態の動作原理のさらなる詳細を示す。
図3d】本発明の第1の実施形態の動作原理のさらなる詳細を示す。
図3e】本発明の第1の実施形態の動作原理のさらなる詳細を示す。
図4】本発明の第2の実施形態の斜視図を示す。
図5】本発明の第2の実施形態の詳細断面図を示す。
図6】本発明の第2の実施形態による機器の斜視図を示す。
図7】本発明の実施形態による機器を用いた処理後のシリンジ組立品を示す。
図8】本発明の第3の実施形態の部分分解図を示す。
図9】針の破壊前の本発明の第4の実施形態の断面図を示す。
図10】針の破壊が完了したときの本発明の第4の実施形態の断面図を開示する。
図11】針がデバイス中へ挿入されるために所定の位置にある本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
図12】針がデバイス中へ部分的に挿入された本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
図13】針がデバイス中へ完全に挿入されて、クランプ電極が閉じようとしている本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
図14】針がデバイス中へ完全に挿入されて、破壊処理が始まろうとしている本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
図15】破壊処理が融合針の冷却で実質的に完了した本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
図16】冷却された融合針が引き出されようとしている本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
図17】融合針がまさに引き出された本発明の第3の実施形態の断面図を示す。
図18】摺動電極メカニズムの詳細図を示す本発明の第3の実施形態の一部分の断面図を示す。
図19a】本発明の第3の実施形態の一部を形成する電極清浄化メカニズムの断面図を示す。
図19b】本発明の第3の実施形態の一部を形成する電極清浄化メカニズムの斜視図を示す。
図20】予備加熱およびガス供給システムを有する本発明の実施形態を示す。
図21図20の予備加熱およびガス供給システムの分解斜視図を示す。
図22図20および21に示される電極の詳細図を示す。
図23図20および21の実施形態のさらなる部分図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、シリンジ組立品1を形成するために皮下注射針2が取り付けられた、標準的なディスポーザブル・シリンジ3を示す。かかる組立品1は、様々な医療状況で使用される。典型的な使用は、患者への医薬の投与を含み、それによって問題の医薬が医薬のバイアルまたは同様の容器中への針2の挿入を通じて、シリンジ3の本体中へ引き込まれる。いくつかの状況では、シリンジ組立品1は、医薬が予め満たされて供給され、必要なのは、医薬を投与するために皮下注射針2を使用する前に、医師が針2からシース(図示されない)を取り外すことだけである。シリンジ組立品1の別の使用は、患者からサンプル(例えば、血液)を取り出すことである。この場合、シリンジ3は、初めは空であり、プランジャの引き抜きによって血液で満たされる。
【0015】
しかしながら、シリンジ組立品1が実際に使用されて、使用後にそれをどのように廃棄するかの問題が常にある。
【0016】
本発明の実施形態は、シリンジ組立品1の皮下注射針2を使用後に安全に処理するための機器を提供する。
【0017】
図2aおよび図2bは、本発明の第1の実施形態の動作原理を示す。使用中に、シリンジ組立品1は、針2を安全に破壊するための機器中へ下の方向に導入される。シリンジ組立品は、所定の位置にクランプされる(ここでは図示されないが、後で記載される)。クランプから尖端へ針の長さにわたって電圧が印加される。針の尖端には電極20の実質的に凹んだまたは円錘状の端部5が接触し、印加電圧により針を通して電流が流れて針を加熱し、結果として軟化させる。
【0018】
針が十分な度合いまで一旦軟化すると、電極20は、上に向かってハブ4の方へ進む。電極20の凹んだ端部5は、針が圧縮されるにつれて曲がる場合に、図2bに示されるように、針が確実に円錐の範囲内に留まって小さい塊に圧縮されるようにするのに役立つ。
【0019】
図3a〜図3eは、針の処理に含まれる段階をより詳細に示す。これらの図は、針およびシリンジが垂直方向に向けられることを示すが、後述されるように、方位がそうではなくて、特に、水平方向であってもよい。
【0020】
図3aでは、最初に針が電極20の凹んだ端部5に接触する。電極20とクランプ電極(図示されないが、ハブ4に隣接して配置される)との間で接触がなされると、電圧が印加されて針2に電流が流れる。同時に、またはわずかに後で、電極20がハブ4の方へ進み、従って針が圧縮し始める。これが図3bに示される。
【0021】
正確な印加電圧および針の物理的特性を含む、多数の要因に依存して、針が融解するほど印加電流が針を加熱することがある。このシナリオは、針が一連の融解した金属液滴に変換されている図3cに示される。
【0022】
電極20の継続的な前進(図3dを参照)により、図3eに示されるように、針のこれらの融解部分が単一の塊に融合するまで集められる。
【0023】
図3a〜図3eに示されるシナリオは、電圧の印加の下での針の融解を示すが、当然のことながら、軟化した針が電極により圧縮されて材料の単一の塊を生じるために針が融解する必要はない。
【0024】
当然のことながら、図3a〜図3eに示される簡略化された一連の事象は、特に、針が実質的に垂直以外の任意の角度に置かれた場合、実際には容易に達成できないであろう。実際に、針は、一般に図3bに示されるように自ら重なるようには圧縮せず、従って、結果は、所望の小さい単一の塊にはならないであろう。
【0025】
実際に、圧縮動作の間に針を束縛できれば、処理の再現性および信頼性がはるかに改善されることがわかった。結果として、本発明の第2の実施形態が図4図6に示される。
【0026】
図4は、機器110の斜視図を示し、さらなる詳細は、図5の断面図および図6の等角図に示される。機器110は、それ自体の片側に開口114を有する筐体112を備える。開口114は、シリンジ組立品1の皮下注射針2を受け入れるように配列される。皮下注射針2は、一端に尖りを有し、他端にシリンジ3に接続されたハブ4を有する。使用中に、シリンジ組立品1は、ハブ4が筺体の傍らに置かれた停止板116に接触して停止するまで開口114中へ挿入される。針2が機器110中へ一旦完全に挿入されると、破壊処理を開始できる。針の完全な挿入は、筺体内のマイクロスイッチ(図示されない)または同様のデバイスの作動によってセンシングされる。
【0027】
完全な挿入をセンシングすると、ハブ4は、シリンジ組立品をしっかりと把持して針を開口114内の中心に保持する、電気的に動作可能なクランプ・メカニズムによって所定の位置にロックされる。クランプ・メカニズムは、単一シャフト上に取り付けられた、一対の逆方向に切られたねじ山によって動作可能な、一対の摺動可能な電極を備える。このような方法で、シャフトの回転により両方の電極が開または閉位置のいずれかに向かって一斉に移動する。重要なことに、一対のクランプ電極の直接の機械的リンケージに起因して、これらのクランプ電極は、まったく同じ位置で常に接近しており、それによって開口における針の位置を確実に首尾一貫して予測することが可能である。
【0028】
開口114には、針2を受け入れるように配列された閉じ込めシリンダ118が配置される。閉じ込めシリンダは、好ましくは、ガラス、セラミックまたはめっき鋼のような、耐熱、耐久性材料から製造される。
【0029】
挿入されたとき、針2は、実質的に完全に閉じ込めシリンダ118内に存在する。さらに、閉じ込めシリンダ118内に置かれるのは、ピストン120である。針4が最初に挿入されるときに、ピストン120は、開口114に最も近くシリンダ118の端部に隣接して配置される。ユーザが針4を挿入する圧力によって、ピストンは、針を収容するようにシリンダ中へ押し戻される。
【0030】
ピストン120は、シリンダ118内で針2に圧縮力を与えるように配列される。本発明の好ましい実施形態において、圧縮力は、ユーザまたは自動制御の下で動作可能なソレノイドによって与えられる。本発明の他の実施形態では、圧縮力は、ばねまたは他の適切な手段によって与えられてもよい。破壊処理は、連続的であってもよく、またはいくつか個別の段階を備えてもよい。
【0031】
第1の実施形態において、針が完全に挿入されて、ロック116がそれを所定の位置にしっかりとクランプしたとき、針を通して電流が流される。電流は、ロック・メカニズム116および電極として機能するピストン120によって印加される。この実施形態では、より実質的な塊を作り出すために、針の尖端を溶かす比較的小さい電流が最初に印加される。その後、針が圧縮されるのを可能にするために針を十分に軟化させるより大きい電流が印加される。
【0032】
次の段階は、軟化した針に圧縮力を加えて、ハブ4に付いたまま針材料を小さい塊に圧縮するためのピストン120の移動を含む。
【0033】
圧縮力は、モータ、ソレノイド、ばね圧力、圧縮空気力によって加えられてもよく、ユーザが手動で加えることもできる。
【0034】
摺動電極の先端上の細片によって生じる電流遮断の影響を低減するためのさらなる実施形態は、針の先端との電気接続性を向上させるために、一方または両方の電極を振動させることである。振動は、摺動電極モータの使用を通じて、または他の手段によって半径方向または軸方向に加えることができる。
【0035】
針の正確な組成および寸法に依存して、針を単に軟化させるのではなく、時には融解させることができる。かかる事例では、針を単に軟化させる場合について記載されたのとまったく同じ方法で、融解した針の複数の小さいビーズを小さい塊に融合または結合させることができる。最終結果は、いずれの場合もほぼ同じ−尖りのない小さい塊であり、シャープとして処置する必要なしに廃棄できる。
【0036】
閉じ込めシリンダ118は、針2をその中に束縛しておくのに役立つ。それがないときには、針がその軸から遠ざかるように曲がりかねない傾向があり、従って、圧縮の結果が所望の効果を常に生み出すわけではない。しかしながら、シリンダ118が所定の位置にあると、圧縮は、ハブ4に付いたまま材料の小球を生成させる。
【0037】
動作が完了すると、圧縮された針を安全な温度に冷却させるために時間が与えられる。この時間の終わりに、ロック116が解除されて、シリンジ組立品1を取り外すことが可能になる。ハブ4は、今や、手動で取り外して適宜に廃棄してもよい、尖りのない圧縮された金属材料の小さい塊で終端される。塊は、実質的に球状であるが、ピストン120のプロファイルに概ね依存して、尖りまたはエッジを何も有さない他の形状を作り出すことができる。
【0038】
図7は、処理後のシリンジの斜視図を示し、ハブ4に付いたほぼ球状の塊の形態の処置された針を明らかに示す。
【0039】
シリンジ組立品1が取り外されると、ピストン120は、シリンダ118の入口に座して、その凹んだ先端が別の針を受け入れることができるように移動してもよく、またはシリンダ中へ戻されてもよい。
【0040】
本発明の実施形態は、多くの異なる標準寸法および/または組成の針を処理することが可能である。好ましい実施形態では、1つ以上のユーザ操作可能な制御を用いて様々な動作パラメータがユーザによって変更されてもよい。例として、簡易なロータリスイッチを設けることができて、ユーザは、それぞれが特定のタイプの針に対応する、予め定義された数のプログラムのうちの1つを選択することが可能である。代わりに、自動センシング手段を設けることができて、この手段は、針が完全に挿入されると、ピストン120の位置を読み取ることにより挿入された針の長さを決定することが可能である。針の太さは、シリンダ118を通して針を見るように配列された光学センサによって決定できる。加えて、または代わりに、針が完全に挿入されると、その抵抗を直接に測定できて、適切な動作プロファイルを選択するためにこの読取値を使用できる。
【0041】
本発明の代わりの実施形態は、針を軟化させるために、針2を通して直接に電流を流すのではなく、電気誘導処理を活用する。この実施形態では、図示されないが、針に適切な電流を誘導するためのコイルが閉じ込めシリンダ118に隣接して、またはその周りに配列される。すべての他の材料の点で、この実施形態の動作は、すでに記載された動作と同じである。
【0042】
本発明の第3の実施形態が図8および図11図17に示され、これら図は、皮下注射針を安全に廃棄するための代わりの、しかし関連する手段を表す。
【0043】
図8は、本発明の第3の実施形態を形成する機器の部分分解斜視図を示す。この機器は、形状がほぼ円筒状で、輸送を容易にするためのハンドルを備えた筺体12を備える。筺体内に配置されるのは、挿入されたシリンジ組立品1の皮下注射針2を処理するためのメカニズムである。このメカニズムの詳細な動作は、すぐ後に続くであろう。筺体12の一端には、シリンジ組立品1の皮下注射針2が挿入される開口14を含む終板が設けられる。このメカニズムの動作は、針の挿入後には基本的に自動的である。
【0044】
図9および図10は、本発明の第4の実施形態の詳細図を示す。この実施形態は、圧縮の間に針が束縛されない点で前述の第2の実施形態と概括的に同様である。この第4の実施形態のメカニズムおよび動作は、針に対する束縛手段の欠如を別として、図8に一般的に示され、図11〜17に関する記載により詳細に示される第3の実施形態と同一である。
【0045】
図9は、針2が導入されたときの針破壊メカニズムの部分断面図を示す。説明を容易にするために、本発明の実施形態の動作の理解に必要ない機器の部分は、以下の図面から削除された。前述の実施形態と同様に、シリンジ1の先端における針2は、機器中への挿入のときに電極20の凹んだ端部5と接触し、前記電極20は、機器の本体内で移動可能である。機器中へ完全に挿入されると、シリンジ1のハブ4を所定の位置にしっかりとクランプして次に針破壊処理を開始するためのメカニズムが動作可能である。
【0046】
図10は、針破壊処理がほとんど完了したときの本発明の第3の実施形態の部分断面図を示す。この図では、電極20が図9に示される位置から進んで針2を圧縮し、従って、針2は、もはや細長くて尖ってはおらず、むしろハブ4の端部に配置された金属のほぼ球状の塊である。
【0047】
図11図17は、本発明の第3の実施形態における針破壊処理の様々な段階を詳細に示す。
【0048】
図11は、針2が機器へまさに導入されようとしている時点での本発明の第3の実施形態による部分断面図を示す。針2は、機器の端面上の開口14を通過し、開口内に配置されるのは、中心円錐状チャンネル6がさらに設けられた一対のガイドブロック7であり、このチャンネルは、針を受け入れて、針の先端が摺動電極20の中心および端部5と適正にアライメントするように、針を正確に導くために動作可能である。ガイドブロック7は、それぞれに円錐状チャンネルの半分が設けられ、ガイドブロック7が嵌合されたときに、円錐状チャンネルの外側に形成された大きい方の直径が針先2を容易に受け入れて、クランプ電極16に隣接して位置する円錐状チャンネルの小さい方の直径へとそれを導く。これは、必要に応じて針が摺動電極の先端5と確実にアラインするようにする。ガイドブロック7は、図に示されるように、それらの下方に位置するクランプ電極16のアクセスと平行に摺動できるように機器に取り付けられる。ガイドブロック7には、それらを嵌合位置、すなわち、それらが互いに接触する位置へ戻すばね18が設けられる。中心に配置された取り付けフレームからの突起または同様の特徴は、それらが嵌合されたときに、円錐状ガイドチャンネル6の小さい方の直径が摺動電極20の端部の中心と直接にアラインされるように、それらが確実に束縛されるようにする。
【0049】
ガイドブロック7の下方に配置された、それぞれのクランプ電極16には、その上方の対応するガイドブロック7中の凹部に位置する駆動ピンが設けられる。駆動ピンとそれらに対応するガイドブロック中の凹部とは、電極16が離れるときに、初めにガイドブロック7は動かずに、ばね18によって与えられたばね力の下で嵌合されたままであるように適切なクリアランスを伴って設計される。摺動電極20を通過させるのに十分にこれらの電極が離れたときに、ガイドブロックも分離し始めるであろう。この特徴は、2つのガイドブロック7は完全に嵌合されているが、クランプ電極16は分離されて、摺動電極20の凹んだ端部5が針2を受け入れる用意のできたガイドブロックの下面に近接して置かれることを可能にする。これは、針2が摺動電極20の凹んだ端部5の中心へ常に正確に誘導されることを確実にする。
【0050】
図12は、針2が機器中へ部分的に挿入された状況を示す。針2が円錘状ガイドチャンネル16を通って挿入されて摺動電極20と接触するときに、摺動電極は、ユーザによって与えられた圧力の下で後戻り始める傾向があることがわかる。電子制御システムは、この動作を検出して、次に、2つのクランプ電極16、結果としてガイドブロック7を分離すべく駆動デバイスを作動させるために動作可能である。制御システムは、この動作を摺動電極5とその駆動メカニズムとの間に配置されたセンサの使用によって検出するために動作可能である。
【0051】
このような方法でのガイドブロック7の分離は、針2のハブ4が、針が完全に挿入されたという事実を示すさらなる信号を供給するために動作可能なスイッチプレート15と接触することを可能にする。
【0052】
針が完全に挿入されたことが一旦検出されると、制御システムは、次に、破壊処理を開始するために動作可能である。
【0053】
図18は、電極20が針2の方へ移動する手段のクローズアップ詳細図を示す。電極20は、破壊処理が進んだ後に電極と針との間に確実に連続的またはほとんど連続的な接触があるように移動しなければならない。図18は、延いてはモータ(図示されない)で駆動される、歯付きベルトによって電極20がどのように移動するかを示す。歯付きベルトに付けられるのは、メタルスリーブ22が自由に通過する可動ブロック21である。スリーブ22の端部には、その動きを制限し、かつ予圧縮送出しばね23を含むために固定カラーが設けられる。スリーブ22には、摺動電極20のねじ付き端部をねじ込むねじ穴が設けられる。スリーブ22の反対端には、摺動電極20および移動ブロック21に付けられたセンサ24を動作させる延長部分への電源の接続のための取り付けポイントが設けられる。
【0054】
機器が破壊のための針2を受け入れる準備ができているときに、電子制御システムは、関連するモータを静止位置に維持し、回転、結果として歯付きベルトの移動に抗して、摺動電極20の先端5をガイドブロック7の下側に隣接して置くように動作可能である。ガイドブロック7における中心円錐状チャンネル6を通して針2を挿入すると、針の先端は、摺動電極20の凹んだ端部5に接触するであろう。針2をデバイス中へ挿入するためのさらなる圧力は、送出しばね23を圧縮して、センサ24の活性化により回路を完成することに繋がるであろう。この回路の完成は、モータにエネルギーを与えて、モータを順調に回転させ、結果として針をより完全に装置に入り込ませる。針に対する圧力が緩和された場合、モータは、前記圧力が再び加えられてこの回路が再度完成するまで停止するであろう。デバイスのこの機能の動作は、デバイス中への針2の進入が順調かつ制御されていると確実に感じられるようにするが、針2が単にベルトを押してモータ自体を回転させるだけであればそうはならないであろう。かかる場合、モータがその本質的に一様でない特性により移動に抗する傾向があるので、移動がぎくしゃくするであろう。かかる特性は、ユーザにとって望ましくなく、本方法でのモータの能動的な動作の方がより制御された感じをユーザにもたらす。
【0055】
次に、図13を参照すると、同図は、針が完全に挿入されて、電子制御システムが完全な挿入をスイッチプレート15と接触しているハブ4の動作によってセンシングした状態を示す。次に、針2の付根が一対のクランプ電極16を備える電気的に動作可能なクランプ・メカニズムによって所定の位置にしっかりと把持され、このメカニズムは、針をしっかりと把持して、それを摺動電極20に対して中心に保持するように動作可能である。クランプ・メカニズムは、その上をクランプ電極16が走るシャフト(単数または複数)をさらに備える。クランプ電極16は、シャフト13上の一対の逆方向のねじ山によって動作可能である。このような方法で、シャフトの回転が両方のクランプ電極16を開または閉位置のいずれかに向かって一斉に動かす。クランプ電極16は、直接機械的に連結しているので、常に同じ位置に向かって閉じることになり、それによって開口における針の位置を確実に、首尾一貫して正確に予測することが可能である。ねじ付きシャフト(単数または複数)は、歯付きベルトによって駆動され、延いてはモータ(図示されない)で駆動される。
【0056】
機器内にはクランプ電極16に隣接して位置し、針を受け入れるように配列された閉じ込めシリンダ17がある。閉じ込めシリンダ17は、ガラス、セラミックまたは金属のような耐熱かつ耐久性材料から形成される。閉じ込めシリンダ17は、随意的に、日常的な保守点検のために容易に取り外して交換されるように機器のフレームワーク中に取り付けられたさらなるシリンダ内に収められてもよい。
【0057】
機器中へ挿入されると、針2は、実質的に閉じ込めシリンダ17内に存在する。閉じ込めシリンダ17内にやはり置かれるのは、シリンダ17内にぴったり合う寸法に形作られた摺動電極20である。針2が最初に挿入されるときに、摺動電極20は、閉じ込めシリンダ17の端部に隣接してクランプ電極16の最も近くに配置される。針2を挿入するユーザによって加えられる力は、針を収容するために摺動電極20を閉じ込めシリンダ内へ押し戻す。モータの制御の下でのこの移動は、先に記載された。
【0058】
摺動電極20は、閉じ込めシリンダ17内の針2に圧縮力を与えるように配列される。本発明の好ましい実施形態では、圧縮力は、自動電子制御の下で動作可能なモータによって与えられる。本発明の他の実施形態では、圧縮力を重力、ばね、ソレノイドによって、または圧縮空気の手段によって与えることも可能である。破壊処理は、連続的に生じてもよく、またはいくつか個別の不連続な段階を備えてもよい。
【0059】
図14は、針2が完全に挿入されてクランプ電極16の間にしっかりと把持された状況を示す。次に、針2を通過して、摺動電極からクランプ電極へ針を通して電流が流される。示される実施形態では、最初に、定常的かまたは一連のより小さいステップを通じて間歇的かのいずれかの比較的小さい電流が、摺動電極20を通じて針の先端へ力とともに加えられる。この目的は、より実質的な接触面積を作り出すために、針の尖端を軟化させて変形させることである。接触面積が大きいほど、その後により大きい電流を針2に印加することが可能であり、摺動電極20でのスパークが低減され、結果として閉じ込めシリンダ17における汚染度が低下する。
【0060】
図15は、より大きい電流が印加された後の状況を示す。この電流は、針2をさらに軟化させて、摺動電極20の移動により針を変形させて圧縮するのに十分であり、摺動電極20は、針のハブの方へ進んで軟化した針に圧縮力を加える。これは、針材料をシリンジ4のハブに付いたままの小さい融合した塊に圧縮する。
【0061】
針の正確な組成および寸法に依存して、針を単に軟化させるのではなく、融解させてもよい。かかる場合には、融解した針材料の小さいビーズを生成できて、針が単に軟化される場合について記載されたのと同じ方法で、これらを小さい塊に融合または結合させることができる。最終結果は、いずれの場合も同様であり、融合した針、すなわち、ハブに付いた尖りのない塊である。
【0062】
閉じ込めシリンダ17は、針をその中に束縛しておく傾向があるという点で第2の実施形態に関して記載されたのと同様に振舞う。それがないときには、針がその軸から遠ざかるように曲がる傾向があり、従って、圧縮の結果が所望の効果を常に生み出すわけではなく、単に曲がった依然として鋭い針を結果として生じうる。閉じ込めシリンダが所定の位置にあると、ハブに付いたままの材料の小球が確実に生成される傾向がある。
【0063】
針が一旦圧縮されて金属の塊が融合されると、融合した針を安全な取り扱い温度に冷却させるためにある時間が与えられる。この冷却時間中に、針を機器内のその位置に維持するためにクランプ電極16が使用される。これは、ユーザが融合した針を時期尚早に引き出すことを防止する。このシナリオが図16に示される。
【0064】
冷却時間が一旦終了すると、クランプ電極16が解除されて、図17に示されるようにシリンジ組立品1および融合した針を安全に取り外すことができる。
【0065】
シリンジ組立品1が機器から取り外されると、摺動電極20は、閉じ込めシリンダ17の入口に座して、その凹んだ先端5が別の針を受け入れることができるように置かれる。あるいは、クランプ電極16が解除されると、摺動電極20は、その代わりにシリンダのさらに下方へ移動してもよい。
【0066】
シリンジ組立品1は、今や、針材料の融合した塊で終端されたハブ4を備える。塊は、実質的に球状であるように配列されるが、正確な形状は、摺動電極20の先端5の凹んだプロファイルに概ね依存する。最終結果が基本的に滑らかで突出した尖りを何も有さないことを条件として、任意の適切な形状が使用されてもよい。さらにまた、融合した針材料は、針の内孔を封じる効果を有し、それによってシリンジからの液漏れを阻害する。もちろん、使用済みのシリンジが1つ以上の危険物を含む可能性であり、本明細書に記載される破壊処理は、任意のかかる物質が使用済みシリンジのユーザに害を与えることを防止する意図をもつ。融合した針材料は、尖りを有さないので、シャープとして処置し、より高価なシャープス・ビン手順を用いて廃棄しなければならない代わりに、通常の医療廃棄物を通じて廃棄されてもよい。融解処理の間に遭遇する高温は、針の表面上の任意の危険な病原体を確実に完全に破壊して、かかる病原体のユーザとの接触を最小限に抑えることを目指す。
【0067】
本機器は、クランプ電極、摺動電極を配置するためのモータ、および破壊のために針に適用される電流源を含めて、デバイスのすべての機能の動作を制御するために動作可能な電子制御システムをさらに備える。電子制御システムは、適切にプログラムされたマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを備える。代わりに、電子制御システムは、カスタム集積回路を備えてもよい。
【0068】
大きい針(すなわち長いかまたは直径が大きい針)ほど、小さい針に比べて処理のためにより大きい熱エネルギーを必要とし、さらに、針を十分に圧縮するためには摺動電極20がさらに遠くまで進まなければならないことがわかった。それゆえに、明らかなのは、異なる針のタイプおよびサイズを首尾よく処理して安全にするのであれば、それらが異なる電流および摺動電極20の移動を必要とすることである。電子制御システムは、それゆえに、予め記憶されるかまたは特定の針に基づいて算出されるかのいずれかであってよい種々の動作プロファイルを備え、これらの動作プロファイルが異なる針のタイプおよびサイズごとに最適化される。
【0069】
所定の針のタイプおよびサイズに対する特定の動作プロファイルは、針を処理している間の正確な時点に然るべき電流を印加できるように針電流vs時間に関する瞬時設定値を含むことができる。このような方法で、処理の開始のときのより低い電流の使用によって単に針の先端だけを軟化させる先述の技術を直接的に管理できる。
【0070】
特定の動作プロファイルは、摺動電極20の位置に関する瞬時値も含む。各位置が時間に関係するので、かかる値は、摺動電極の速度も決定できる。典型的に、針の処理中に、針に電流が印加されてもよい全時間は、0.2および2秒の間である。同様であるが必ずしも完全には一致しない時間にわたって摺動電極20が動作中であってもよい。針に印加される電流は、予め決定されるかまたは瞬時に算出される値へ毎秒何回も変調される。典型的に、プロファイルが電流の値を5から50msごとに決定してもよい。同様に、摺動電極20の設定位置が5から50msごとに更新されてもよい。動作電流プロファイルは、針の中または表面上に含まれる液体を蒸発させるために針の軟化前に低電流を供給するための設定を含む。
【0071】
さらなる実施形態において、制御システムは、摺動電極の移動プロファイルを修正できるように、加えられるエネルギーまたは針の温度を計算する手段を備える。この方法は、圧縮を成功させるために針が常に十分に軟化されるように、例えば、摺動電極上の細片に起因する電流の一時的な遮断を考慮することが可能であろう。
【0072】
好ましい実施形態において、針電流を決定するための手段は、閉ループ電流帰還制御を用いた高周波パルス幅変調(PWM:pulse width modulation)スイッチモード電源の使用による。電源は、損失を低減して電池を長寿命化するために高電力MOSFETまたは同様のスイッチを使用する。典型的なスイッチング周波数範囲は、100kHzから1MHzであろう。低周波動作での物理的な電源サイズならびに低損失と、高周波動作による小型およびより高い損失との間にトレードオフがある。電源は、例えば、出力キャパシタに蓄積されたエネルギーに起因して針の先端に加えられる任意の制御されないエネルギーを制限しなければならないことがわかった。かかる制御されないエネルギーは、摺動電極の表面上のスパークと非導電酸化物細片のより迅速な蓄積とを引き起こす。
【0073】
電源は、選択された値の電流を強制的に流し、結果として針に熱効果を生み出す。これは、クランプ取付具および接続ケーブルにおける電圧降下を無視することを可能にして、より安定な融解特性を提供する。電源は、動作中に恐らく遭遇する最大電流での針および関連機器における電圧降下を埋め合わせるのに十分な出力電圧能力を提供する。摺動電極との電気接続性の維持に関しては、電源電圧が高いほど有益なことがわかった。しかしながら、電圧は、電源の物理的サイズ、複雑さおよびコストによって制限される。
【0074】
さらなる実施形態では、電気接続性を高めるために、摺動電極の表面上の細片を破壊するのを助けるための低電力、高電圧昇圧デバイスが電源に設けられてもよい。高電圧は、動作サイクルの計画外の電流遮断の間に印加され、加えられるエネルギーは、摺動電極の表面上のスパークとさらなる細片形成とを防止するように制限される。高電圧は、機器が稼働していないときに帯電される、キャパシタに蓄積されてもよい。
【0075】
典型的に、電流フィードバックは、電源インダクタ電圧測定ならびにホール効果デバイスを用いて実施されるであろう。これらは、スイッチング制御に必要な単一サイクル電流測定を、針融解プロファイルの必要条件を満たすための高精度電流測定とともに提供する。デバイスを可搬性にするために、電源および関連機器は、充電式バッテリから動作するように設計される。バッテリを再充電できるように、配電線に接続されたドッキング・ステーションがデバイスに設けられる。
【0076】
機器の好ましい実施形態において、電子制御システムによって駆動される表示装置は、機器が破壊のための針を受け入れる用意ができていること、破壊処理の段階、ならびに多くの動作パラメータの状況、例えば、最後のバッテリ再充電以来処理された針の数、およびバッテリに残っている電荷を含めて、1つ以上の動作パラメータを示すであろう。
【0077】
経時的に、金属および/または他の細片が摺動電極20の端部における凹部5に蓄積することがある。この細片は、針2を通しての通電を阻害するか、または別様に破壊処理を妨げることがある。かかる細片がユーザに見えるか、または針を破壊する試みの1つ以上の失敗を通して明らかなときには、凹部を清浄化するための半または全自動処理を開始できる。
【0078】
図19aおよび図19bは、機器の一部を形成する自己清浄化デバイスのそれぞれ概略図および斜視図を示す。これらのデバイスの位置は、図8から明らかにわかる。図19aは、自己清浄化機器の概略断面図であり、この機器は、小球または同様の形状のロータリカッタ、グラインダまたはブラシ25を備え、その端点26が機器から突出し、かつ摺動電極20の端部凹面5よりわずかに小さい。このカッタ25は、自由に回転するように適切なプレーンまたはボールベアリング中に置かれ、電気モータ28によって歯付きまたは平ベルト29を用いて駆動されてもよい。
【0079】
カッタ軸は、摺動電極20の軸に平行に設定され、カッタを摺動電極20と同軸にアライメントするために手動かまたは自動的かのいずれかで移動できる。清浄化デバイスは、機器の外部からアクセスできるレバーまたは同様の突起によって所定の位置へ手動で移動する。カッタが摺動電極20と同軸に正しく配置されたときに、マイクロスイッチ(図示されない)が作動し、電子制御システムによって清浄化シーケンスが自動的に開始されるであろう。清浄化シーケンスでは、電気モータ28に電力が供給されてカッタ25が回転するであろう。同時に、回転しているカッタ25の方へ摺動電極20が前進し、それによって摺動電極20の凹んだ端部5がカッタポイント26に接触する。電気モータ28によってやはり駆動されるファンが設けられて、収束したエアジェットを発生させ、カッタ25によって緩んだ任意の細片を除去する。細片を受け入れて収集するために、機器から取り外しできる適切な収集デバイスまたは容器が設けられる。
【0080】
使用から、経時的にさらなる細片がシリンダ17の内壁上に蓄積することがある。これは、内面と摺動電極20との間に摩擦を生じさせる。これによって電極の自由な移動が阻害され、結果として破壊処理を損ないかねない。この潜在的な問題に対処するために、シリンダの内面を清浄化するための処理が使用されてもよく、それによって摺動電極20は、予め定義されたサイクル数に対して延長された距離にわたってシリンダ17内を走行する。この処理は、後の廃棄のために細片が収集されてもよいシリンダ17の外部へ細片を効果的に排除する。この処理を助けるために、細片の排除処理を助ける多数の浅い環状溝が摺動電極20の外面に設けられてもよい。かかる清浄化処理は、必要に応じて定期的に、または針の破壊後ごとに行なわれてもよい。代わりに、針の破壊の失敗に1回もしくはある回数遭遇して初めて、かかる清浄化処理が開始されてもよい。
【0081】
図20は、閉じ込めシリンダ118にヒータ300が設けられた、本発明のさらなる実施形態を示す。これによって、機器の動作を改善されることがわかった。ある量の液体(例えば、溶液中の薬剤または血液)が破壊されることになる針内に保持されている場合、このことが破壊処理の圧縮フェーズの間の首尾一貫した制御可能な金属塊の形成に悪影響を及ぼしうることがわかった。
【0082】
圧縮前に、針2を加熱する予備段階の間に、針内の任意の液体が蒸発して蒸気を形成し、周囲温度にある閉じ込めチューブ118の内表面上に凝結する可能性があることがわかった。この凝結した蒸気は、軟化した金属を時期尚早に冷却し、融合処理に望ましくない結果をもたらしかねない。
【0083】
圧縮フェーズの前に閉じ込めチューブ118を予備加熱することによって、この凝結は発生できず、針の軟化した金属を予測可能かつ均一な塊に確実に融合させる処理が改善される。
【0084】
ヒータ300は、閉じ込めシリンダ118を囲むサーモスタット制御の加熱コイルの形をとる。ヒータは、圧縮フェーズが始まる数秒前に作動し、保持された任意の水が蒸気に変換されるように100℃超の温度まで加熱される。チューブをおよそ130℃まで加熱すると、良好で信頼性の高い機器の動作が確実になることがわかった。
【0085】
随意的に、機器の使用が必要なときに加熱処理にとられる時間が短縮されるように、閉じ込めシリンダが周囲より高いスタンバイ温度に維持されてもよい。ヒータが動作しているときのシリンダからの熱損矢を最小限に抑えるために、外側断熱スリーブ(図示されない)を設けることができる。
【0086】
前述のように、針の加熱は、誘導コイルの使用によって達成されてもよい。かかる実施形態では、加熱エレメント300の構造が変化してもよい。上述の加熱コイルが使用されてもよく、または代わりにいくらかの電磁放射を吸収し、伝導によって、閉じ込めシリンダを加熱する分離形状の金属シースが設けられてもよい。
【0087】
本発明の実施形態の性能をさらに改善するために、破壊処理の圧縮フェーズの間にシリンダ118にガスを通過させてもよい。ガスは、圧縮の前および/または後にも通過させてもよい。これは、生成された任意の蒸気をシリンダ118から排出させる。一実施形態では、周囲環境から空気が調達されて、発生した任意の蒸気が反対端から排出されるように、単にシリンダの一端を通して空気を流すことができる。シリンダを通る空気流を収束かつ集中させるための小型コンプレッサの使用によりシリンダを通して空気を流してもよい。
【0088】
別の実施形態では、破壊処理の圧縮フェーズの間に不活性または非酸化性ガスがシリンダを通過する。ガスは、圧縮の前および/または後にも通過させてもよい。これは、針の金属および中心摺動電極の先端の酸化が最小限に抑えるか、または回避する利点を有する。ガスは、好ましくは、加圧容器で容易に入手可能なガス、例えば、二酸化炭素またはアルゴンである。二酸化炭素が使用される場合、ソーダサイフォンおよびペイントボール武器での使用が意図された、小型で取り扱いが容易なカプセルで容易にこれを入手可能である。
【0089】
空気またはガスは、中心摺動電極320中に導入された流路を通して、または閉じ込めシリンダ118自体における開口を通してシリンダ118中へ導入されてもよい。空気またはガスは、チューブ330によって針とは接触しない電極320の端部へ供給されてもよく、先に考察されたように、適切な供給源から送り込まれる。電極320は、その長さに沿って複数の通気口を含み、供給された空気またはガスは、それを通してシリンダの内部へ直接に放出される。
【0090】
破壊処理の間に排出された空気またはガスは、機器のケーシング中の適切な通気口によって周囲大気中へ単に放出できる。代わりに、ある場合には、排出された空気またはガスをフィルタまたはスクラブ処理するのが好ましいこともある。
【0091】
破壊処理中にシリンダの加熱とシリンダ中のガスの通過とを組み合わせることによって、信頼度の向上が経験され、最終結果は、実質的に融合されて鋭い突起のない、簡単に廃棄できる通常の金属球である可能性が高まることがわかった。しかしながら、特に適切なガス供給源が手元になければ、シリンダ118を単に加熱することによって破壊処理における改善を達成できる。
【0092】
本出願における前述のいずれの実施形態もヒータ(およびガス供給源)を設けることによる利益を享受でき、これを達成するためのそれぞれの適切な修正が当事者にはすぐに分かるであろう。
【0093】
本発明の実施形態は、皮下注射針によく似ていない物体が機器中へ挿入されるのを防止する安全機能を備える。かかる安全機能は、シリンジ以外の物体がデバイス中に挿入されるのを防止する物理的制限、または、挿入された物体が皮下注射針であるか、もしくはそれらしいかどうかを確かめるためにその抵抗を測定することが可能なより高度なデバイスを備えることができる。
【0094】
機器を動作させるための電力は、機器を電源から離れて使用することを可能にする1つ以上のバッテリーセル、好ましくは再充電可能なセルから供給できる。代わりにまたは加えて、電力は、主電圧源から供給できる。
【0095】
この明細書を通して、皮下注射針の用語が使用された。この用語は、詳細に記載されたように、シリンジに嵌められた針を含みうるが、皮下注射針の用語は、人間または動物の体へ/から液体を導入/除去するために使用される他の針を含むことも意図されることを当業者はすぐに理解するであろう。他のかかる針は、少なくとも1つの尖った端部を有する、一般にチューブ状の金属組成物であることを特徴とする。この定義に明示的に含まれる針の具体的なタイプは、カニューレとともに使用される針である。
【0096】
本発明の種々の実施形態は、記載される実施形態のいずれか1つからの1つ以上の特徴を、任意のかかる特徴が相互に矛盾しない場合には、含んでもよい。記載の簡潔さのために、1つの特定の実施形態に関していくつかの特徴が記載されたが、本明細書に記載されるいずれかの実施形態において任意の特徴が組み込まれてもよい。
【0097】
本出願と関連してこの明細書と同時にまたはそれより前に提出され、この明細書とともに公衆縦覧に供されるすべての論文および文書が注目され、すべてのかかる論文および文書の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
この明細書に開示される特徴のすべて(添付の任意の請求項、要約および図面を含む)、および/または、その通り開示された任意の方法または処理のステップのすべては、かかる特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせに結合されてもよい。
【0099】
この明細書に開示される各特徴(添付の任意の請求項、要約および図面を含む)は、明示的に別様に明記されない限り、同じ、同等または同様の目的に役立つ代わりの特徴に置き換えられてもよい。従って、別様に明記されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または同様の特徴の一例に過ぎない。
【0100】
本発明は、前述の実施形態(単数または複数)の詳細には制限されない。本発明は、この明細書に開示される特徴(添付の任意の請求項、要約および図面を含む)の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせに及び、あるいは、その通り開示される任意の方法または処理の段階の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19a
図19b
図20
図21
図22
図23