(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、可撓管挿入装置である内視鏡装置1の構成を概略的に示す図である。
図2は、内視鏡装置1の主要な構成を概略的に示すブロック図である。内視鏡装置1は、内視鏡10と、光源装置20と、制御装置30と、表示装置40と、アンテナ50とにより構成されている。
【0010】
内視鏡10は、被検体に挿入される管状の細長い挿入部11と、挿入部11の基端側に設けられた操作部14とを有している。内視鏡10は、例えば大腸内視鏡である。挿入部11は、先端硬質部12と、先端硬質部12の基端側に設けられた可撓管部13とを有している。先端硬質部12には、不図示の照明光学系(照明窓)、観察光学系(観察窓)、撮像素子等が内蔵されている。可撓管部13は、可撓性を有する細長い部分であり、後述する複数のセグメントにより構成されている。また、可撓管部13には、可撓管部13の状態(湾曲形状や歪み)の検出に用いるための複数のソースコイル15が設けられている(
図3参照)。操作部14には、内視鏡10の湾曲操作や撮影操作を含む各種操作のために用いられるアングルノブ17、スイッチ18等が設けられている。可撓管部13の先端側は、アングルノブ17を操作することにより任意の方向に湾曲される。
【0011】
光源装置20は、内視鏡10の操作部14の基端側から延びたユニバーサルコード16を介して内視鏡10に接続されている。ユニバーサルコード16は、上述の照明光学系に接続されたライトガイド(光ファイバ)、上述の撮像素子に接続された電気ケーブル等を含む。光源装置20は、前記ライトガイドを介して、先端硬質部12の照明窓から照射する光を供給する。
【0012】
制御装置30は、CPUなどを含む機器によって構成されている。制御装置30は、
図2に示されるように、画像処理部32を含む表示制御部31と、交流信号出力部33と、状態算出部34と、硬度可変制御部35と、スタック判断部36とを有している。表示制御部31は、ケーブル61を介してユニバーサルコード16内の前記電気ケーブルに、従って内視鏡10(先端硬質部12の撮像素子)に接続されている。表示制御部31はまた、ケーブル62を介して表示装置40に接続されている。交流信号出力部33は、不図示のケーブルを介して各ソースコイル15に接続されている。状態算出部34は、ケーブル63を介してアンテナ50に接続されている。硬度可変制御部35は、不図示のケーブルを介して後述する硬度可変素子70に接続されている。
【0013】
アンテナ50は、内視鏡10が挿入される被検体の周囲に配置されている。アンテナ50は、可撓管部13に設けられたソースコイル15により発生した磁界を検出する。そして、アンテナ50は、検出信号をケーブル63を介して制御装置30(状態算出部34)に出力する。
【0014】
図3を参照して、可撓管部13の構成についてさらに説明する。
図3は、可撓管部13の構成の一例を概略的に示す図である。可撓管部13には、磁界を発生する磁界発生素子としての複数のソースコイル15が挿入部11の長手方向(軸方向)に間隔を空けて配置されている。ソースコイル15は、フェライトやパーマロイ等の磁性体に導線を巻回することにより構成されている。便宜上、可撓管部13はその軸方向にとった複数のセグメント(可撓管部13を長手方向に均等に区切る仮想的な単位)からなっているとする。例えば、
図3には、可撓管部13の5つのセグメント13a、13b、13c、13d、13eが示され、各セグメントにソースコイル15が1つずつ配置されている。各セグメントに設けられたソースコイル15は、それぞれ、発生した磁界に基づいてアンテナ50及び制御装置30(状態算出部34)が各セグメントの状態を検出することができるように配置されている。なお、ソースコイル15の配置はこれに限らず、一部のセグメントにのみ配置されていてもよい。
【0015】
可撓管部13には、複数の硬度可変素子(硬度可変アクチュエータ)70が設けられている。各硬度可変素子70は、それらが設けられた複数のセグメントを対象として可撓管部13の曲げ剛性(硬度)をセグメント単位で変更する剛性可変部である。
図4は、硬度可変素子70の構成を概略的に示す図である。硬度可変素子70は、金属線により構成されたコイルパイプ71と、コイルパイプ71内に封入された導電性高分子人工筋肉(Electroacive Polymer Artificial Muscle:EPAM)72と、コイルパイプ71の両端に設けられた電極73とを有している。硬度可変素子70は、
図2に示されるように、硬度可変制御部35に接続されており、コイルパイプ71内のEPAM72には、硬度可変制御部35から電極73により電圧が印加できるようになっている。EPAM72は電圧を印加することにより伸縮し、その硬度が変化するアクチュエータである。硬度可変素子70は、コイルパイプ71の中心軸が可撓管部13の中心軸に一致するか平行となるようにして可撓管部13に内蔵されている。硬度可変素子70(EPAM72)は、可撓管部13を構成する部材の剛性よりも大きな剛性を有している。
【0016】
硬度可変素子70の電極73(EPAM72)には、不図示のケーブルを介して硬度可変制御部35から電圧が印加される。電圧が印加されると、EPAM73はコイルパイプ71の中心軸を中心としてその径を拡張しようとする。しかしながら、EPAM73はコイルパイプ71でその周囲を囲まれているため、径の拡張が規制されている。このため、硬度可変素子70は、
図5に示されるように、印加される電圧値が高くなるほど、曲げ剛性(硬度)が高くなる。すなわち、硬度可変素子70の硬度を変化させることにより、硬度可変素子70が内蔵された可撓管部13の曲げ剛性も変化する。
【0017】
次に、内視鏡装置1の動作について説明する。
内視鏡10の挿入部11は、ユーザによって被検体内に(肛門から直腸、結腸(腸管)に)挿入される。このとき、挿入部11は、被検体の形状に追従して湾曲しながら被検体内を進行する。制御装置30の表示制御部31は、ユーザの操作部14への入力操作に基づいて、ユニバーサルコード16の電気ケーブル等を介して挿入部11の先端硬質部12の撮像素子の動作を制御し、撮像素子から出力される撮像信号を取得する。表示制御部31は、画像処理部32により、取得した撮像信号に基づいて被検体の内部の画像を作成する。そして、表示制御部31は、ケーブル62を介して表示装置40の動作を制御し、作成された画像を表示装置40に表示させる。
【0018】
挿入中、交流信号出力部33が、ケーブル61等を介して各ソースコイル15に交流信号を順次印加する。各ソースコイル15はその周囲に磁界を発生し、すなわちソースコイル15から、ソースコイル15の位置に関する情報が出力される。アンテナ50は、ソースコイル15の出力に基づいて各ソースコイル15の位置を検出して検出信号を状態算出部34に出力する。状態算出部34は、アンテナ50からの検出信号に基づいて、可撓管部13(挿入部11)の状態(例えば3次元形状)を推定する。推定された状態の情報は、表示制御部31に伝達され、推定された状態に対応したコンピュータグラフィック画像が生成される。そして、表示制御部31は、生成した画像を表示装置40に表示させる。また、状態算出部34は、推定した可撓管部13の状態に基づいて、各セグメントの状態を示す状態量(例えば各セグメントの曲げ角度)を算出する。
【0019】
スタック判断部36は、状態算出部34が算出した各セグメントの状態量を取得する。そして、スタック判断部36は、取得した状態量から、各セグメントがスタックしている(すなわち、セグメントがV字形に折れ曲がっていることにより可撓管部13のスムーズな挿入(進行)が妨げられている)かどうかを判断する。スタックしているセグメントがあると判断した場合には、スタック判断部36から硬度可変制御部35に制御信号が伝達されて、そのセグメントに設けられた硬度可変素子70の硬度を低くする。これにより、そのセグメントは軟らかくなり、V字形の折れ曲がりが解消される。そして、大腸の深部へのさらなる挿入が容易となる。
【0020】
スタック判断部36による判断は、挿入時にリアルタイムで常時行ってもよいし、挿入中に患者が腸壁の押圧による痛みを感じたときにユーザが不図示の入力装置へ入力することによる手動操作で行ってもよい。
【0021】
また、スタック判断部36は、取得した状態量から略直線状のセグメントがあるかどうかを判断して、略直線状のセグメントに設けられた硬度可変素子70の硬度を高くする制御信号を硬度可変制御部35に伝達してもよい。これにより、略直線状の部分において可撓管部13に曲がりが生じて腸壁にぶつかるのを防ぎ、挿入性を高める。
【0022】
このように、内視鏡装置1では、被検体内における可撓管部13の状態に応じて硬度可変素子70を駆動させて挿入部11(可撓管部13)の曲げ剛性をセグメント単位で変更しながら、可撓管部13が曲がりくねった大腸の深部にスムーズに挿入される。
【0023】
[第1の実施形態]
図6並びに
図7を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図6は、第1の実施形態における可撓管部13の構成の一例を概略的に示す図である。
図6以降では、可撓管部13は大腸100に挿入された状態で示され、また、ソースコイル15は省略されている。
図6では、可撓管部13の各セグメント13a、13b、13c、13d、13eに1つずつ配置された硬度可変素子70に加えて、2つの連続した(隣り合う)セグメント(例えばセグメント13aと13b、セグメント13bと13c、セグメント13cと13d、セグメント13dと13e)にまたがって配置された硬度可変素子70aが設けられている。硬度可変素子70aは、セグメント間の接続部に配置され、セグメント間の曲げ剛性がセグメントの曲げ剛性と連続的になる(セグメント間の曲げ剛性が急激に変化しない)ようにセグメント間の曲げ剛性を変更するための剛性接続部である。硬度可変素子70aの構成及び動作原理は、硬度可変素子70と同様である。硬度可変素子70の長手方向の長さはセグメント長よりも短く、また、硬度可変素子70aの長手方向の長さは隣り合うセグメントに設けられた硬度可変素子70間の長さ以上である。
【0024】
硬度可変素子70は、セグメント間の接続部(境界)には配置されていないが、硬度可変素子70aは、少なくともセグメント間の接続部に配置されている。言い換えれば、硬度可変素子は、可撓管部13の長手方向において欠落個所なく配置されている。例えば、
図6では、硬度可変素子70aは、可撓管部13の長手方向において硬度可変素子70が配置されていない範囲に必ず配置され、その一部が長手方向において硬度可変素子70とオーバーラップして配置されている。
【0025】
図7は、第1の実施形態における可撓管部13の構成の他の例を概略的に示す図である。
図7では、3つの連続したセグメント(例えばセグメント13b、13c、13d)にまたがって配置された硬度可変素子70bと、これとは異なる3つの連続したセグメント(例えばセグメント13a、13b、13c、セグメント13c、13d、13e)にまたがって配置された硬度可変素子70cとが設けられている。硬度可変素子70b、70cは、セグメント間の接続部においてオーバーラップして配置されている剛性接続部であり、セグメント間の曲げ剛性がセグメントの曲げ剛性と連続的になるようにセグメント間の曲げ剛性を変更する。硬度可変素子70b、70cの構成及び動作原理もまた、硬度可変素子70と同様である。硬度可変素子70b、70cは、互い違いになっており、可撓管部13の長手方向において欠落個所なく配置されている。
図7では、硬度可変素子70b、70cは長手方向の長さが同じであるが、これに限定されず、可撓管部13の長手方向において硬度可変素子70bが配置されていない範囲に硬度可変素子70cが必ず配置されていればよい。
【0026】
例えば、
図3に示されるように、各セグメントにセグメント長よりも短い硬度可変素子70のみを配置すると、挿入部11のセグメント間の接続部には硬度可変素子が存在しない。このため、例えば硬度可変制御部35が隣り合う2つのセグメントの硬度可変素子70にこれらの硬度を高くする制御信号を伝達しても、2つのセグメント間の接続部は軟らかいままである。従って、軟らかいままの接続部が腸壁等に接触して外力(抗力)を受けた場合、セグメント間の接続部が硬度の不連続部となり(剛性境界が発生し)、可撓管部13がV字形に折れ曲がり、挿入性が低下しうる。また、屈曲した可撓管部13が腸壁にぶつかって腸壁を押圧すると、患者はかなりの苦痛を受ける。
【0027】
本実施形態では、可撓管部13の長手方向においてセグメント間の接続部にも空白個所なく硬度可変素子(剛性接続部)が配置されており、セグメント境界における可撓管部13の曲げ剛性も硬度可変素子により調整可能である。例えば
図6において隣り合う2つのセグメントの硬度を高くする場合、隣り合う2つのセグメントの硬度可変素子70のみならず、これらセグメントにまたがって配置された硬度可変素子70aの硬度も同様に高くする。従って、セグメント境界においても、腸壁等から外力を受けた際にV字形の屈曲あるいは座屈が生じない。
【0028】
このように、セグメント境界にも硬度可変素子が配置されていることにより、セグメント間の接続部において剛性境界が発生せず、可撓管部13の長手方向において曲げ剛性が不連続となることはない。従って、セグメント境界においても、外力を受けた際にV字形の曲がりが生じず、挿入性が高く操作性が向上した可撓管挿入装置が提供されることができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、例えば大腸への挿入時において、可撓管部13の屈曲による直腸−S字結腸曲、左結腸曲、右結腸曲などの大腸屈曲部における腸管への負荷を低減することでき、挿入性が向上すると共に患者の苦痛を低減することができる。
【0030】
なお、
図6並びに
図7に示される硬度可変素子の配置や長手方向の長さは例示であり、硬度可変素子が可撓管部13の長手方向において欠落個所なく配置されていれば他の配置や長さであってもよい。
【0031】
[第2の実施形態]
図8並びに
図9を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態における可撓管部13の構成の一例を概略的に示す図である。
図8では、可撓管部13のセグメント13a、13b、13c、13d、13eには、剛性可変部として1つの長尺な硬度可変素子70dが配置されている。硬度可変素子70dの構成は硬度可変素子70と同様である。硬度可変素子70dは、セグメント13aからセグメント13eにわたって延びている1つの連続した部材であり、それ自身が複数のセグメント境界にまたがって配置されている剛性接続部でもある。つまり、本実施形態では、硬度可変素子70dが、セグメント間の曲げ剛性がセグメントの曲げ剛性と連続的になるようにセグメント間の曲げ剛性を変更する。
【0032】
また、各セグメント13a、13b、13c、13d、13eには、各セグメントにおいて硬度可変素子70dを部分的に硬化又は軟化させるための電圧印加部80が設けられている。電圧印加部80は、不図示のケーブルにより制御装置30に接続されており、制御装置30からの制御信号に基づいてその電圧印加部80のセグメントに対応する硬度可変素子70dの部分の硬度を変更させる硬度可変制御部として機能する。
【0033】
電圧印加部80から電圧が印加されると、その電圧印加部80に対応するセグメントの範囲において硬度可変素子70dの曲げ剛性が変更される。硬度可変素子70dは複数のセグメントにわたって延びている連続部材であるため、あるセグメントの電圧印加部80から印加された電圧により硬度可変素子70dの一部の硬度が変更されてもセグメント境界における曲げ剛性は連続しており、曲げ剛性が不連続になることはない。
【0034】
図9は、第2の実施形態における可撓管部13の構成の他の例を概略的に示す図である。
図9では、
図8と同様の1つの長尺な連続部材である硬度可変素子70dと、各セグメント13a、13b、13c、13d、13eに1つずつ配置された電圧印加部80aと、2つの連続した(隣り合う)セグメント(例えばセグメント13aと13b、セグメント13bと13c、セグメント13cと13d、セグメント13dと13e)にまたがって配置された電圧印加部80bとが設けられている。電圧印加部80a、80bの構成及び動作原理は、電圧印加部80と同様である。
図9では、電圧印加部80a、80bは、可撓管部13の長手方向において欠落個所なく配置されている。このように、電圧印加部80a、80bは、長手方向においてオーバーラップして配置されてもよい。このような配置によっても、長手方向における電圧印加部80a、80bの欠落個所がなくなり、曲げ剛性が不連続になることはない。
【0035】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、外力を受けた際にセグメント境界にV字形の屈曲あるいは座屈が生じず、挿入性を高め操作性を向上させることができる可撓管挿入装置が提供されることができる。
【0036】
なお、
図8並びに
図9に示される硬度可変素子及び電圧印加部の配置は例示であり、硬度可変素子の硬度が可撓管部13の長手方向において連続であるようになっていれば他の配置であってもよい。
【0037】
また、硬度可変素子70dに代わって、形状記憶合金(超弾性合金)硬度可変アクチュエータを用いてもよい。この場合には、電圧印加部80に代わって、ヒーターを用いて加熱することにより形状記憶合金(超弾性合金)硬度可変アクチュエータの曲げ剛性を変更すればよい。
【0038】
ここまで、医療用の内視鏡10を備えた内視鏡装置1を挙げて本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は内視鏡装置に限定されるものではなく、可撓性の挿入部を有する可撓管挿入装置を含む。
【0039】
また、剛性接続部として、剛性可変部となる硬度可変素子とは異なる硬度可変素子(
図6並びに
図7)、剛性可変部と剛性接続部とを兼ねた硬度可変素子(
図8並びに
図9)を挙げたが、これ以外にも、可撓管部13を構成する部材の剛性よりも大きな剛性を有する部材を剛性接続部として用いることが可能である。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良及び変更が可能である。