特許第6419368号(P6419368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6419368
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】鳥害対策装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/26 20110101AFI20181029BHJP
【FI】
   A01M29/26
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-27744(P2018-27744)
(22)【出願日】2018年2月20日
【審査請求日】2018年3月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506310588
【氏名又は名称】株式会社フジナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤永 雅也
(72)【発明者】
【氏名】杉野 健司
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−000142(JP,A)
【文献】 特開平09−163911(JP,A)
【文献】 特開2002−119193(JP,A)
【文献】 特開2013−247864(JP,A)
【文献】 特開2013−247863(JP,A)
【文献】 米国特許第05850808(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第10352484(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不導体により形成され、長手方向に延びるベース部と、
導電体により形成され、前記ベース部に一部が上方に露出するように埋め込まれ、前記長手方向に延び、前記長手方向に直交する断面の輪郭形状が角のない湾曲した形状である複数の電撃線と、を備え
前記ベース部の上面が、幅方向の一端側よりも他端側の方が低くなる傾斜に沿って形成されており、前記幅方向に隣接する前記電撃線間にて、当該上面が前記一端側で下降している一端側凹部と、当該上面が前記他端側で下降している他端側凹部と、当該上面が中間で上方に突出した中間凸部と、を有し、
前記中間凸部は、前記幅方向に隣接する前記電撃線同士において前記ベース部から露出した部分の接線を基準として、当該接線の上方へ超えないように形成されている鳥害対策装置。
【請求項2】
前記ベース部の上面が、前記幅方向の一端側から他端側に向かうにつれ、前記幅方向に隣接する前記電撃線間にて、一旦緩傾斜となってから急傾斜となる形状である、請求項1に記載の鳥害対策装置。
【請求項3】
前記ベース部の上面が、前記幅方向の一端側においては、底面から急に立ち上げられた形状とされており、前記幅方向の他端側においては、緩やかに降下して前記底面に至る形状とされている、請求項1または2に記載の鳥害対策装置。
【請求項4】
前記複数の電撃線の各々につき、前記長手方向に直交する断面の輪郭形状が真円形状である、請求項1〜3のいずれかに記載の鳥害対策装置。
【請求項5】
前記ベース部と前記複数の電撃線とが組み合わされて所定長さの設置ユニットが構成され、
長手方向に隣接する前記設置ユニットが、同一極性の電撃線同士に対して外方から嵌め込むことのできるジョイント部材により接続されている、請求項1〜4のいずれかに記載の鳥害対策装置。
【請求項6】
前記所定長さの設置ユニットにおいて、前記ベース部よりも前記複数の電撃線の各々の方が長い、請求項5に記載の鳥害対策装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等に設置することにより、当該建築物等への鳥類の飛来を抑制できる鳥害対策装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、従来、特許文献1に記載の鳥害対策装置を提案している。従来の鳥害対策装置は、例えば図5に示すような断面形状とされていて、ビルの屋上等に設置される。樹脂製のベース部101には扁平な2本の電撃線102が埋め込まれており、一方の電撃線102と他方の電撃線102とに直流電流を通すよう構成されている。この際、一方の電撃線102の極性が−の場合、他方の電撃線102の極性は+となる。鳥類が飛来して、一方の電撃線102と他方の電撃線102とにまたがるように脚部を置いた場合、電撃線102からの電流が鳥類の身体に流れる。これにより、鳥類が痛みを感じて飛び去るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−247863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の鳥害対策装置では、鳥類が電撃線102の間にまたがっていない状態にもかかわらず、電撃線102の間で通電が生じて電圧降下が生じてしまうことで、鳥類が飛来した場合でも、有効な電撃を鳥類に与えられなくなる現象が生じていた。特にこの現象は、設置後の時間経過にしたがい顕著になる傾向があった。
【0005】
本発明は、前記現象に直面した発明者が鋭意研究の上で発想されたものであって、その課題は、設置後の長期にわたって電撃線間での意図しない通電を抑制して、性能を維持できる鳥害対策装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不導体により形成され、長手方向に延びるベース部と、導電体により形成され、前記ベース部に一部が上方に露出するように埋め込まれ、前記長手方向に延び、前記長手方向に直交する断面の輪郭形状が角のない湾曲した形状である複数の電撃線と、を備え、前記ベース部の上面が、幅方向の一端側よりも他端側の方が低くなる傾斜に沿って形成されており、前記幅方向に隣接する前記電撃線間にて、当該上面が前記一端側で下降している一端側凹部と、当該上面が前記他端側で下降している他端側凹部と、当該上面が中間で上方に突出した中間凸部と、を有し、前記中間凸部は、前記幅方向に隣接する前記電撃線同士において前記ベース部から露出した部分の接線を基準として、当該接線の上方へ超えないように形成されている鳥害対策装置である。
【0007】
この構成によると、各電撃線に関し、断面の輪郭形状が角のない湾曲した形状である。このため、電撃線間での放電が生じにくい。また、特に建築物の屋上端部に設置された場合、雨水を一方向に流すことができるので、排水性が良い。また、隣り合う電撃線同士が、溜まり水を介して導通するような状態でベース部の上面に雨水が残留することを抑制できる。また、隣り合う電撃線同士にまたがるようにして鳥類が脚部を置ける。
【0008】
また、前記ベース部の上面が、前記幅方向の一端側から他端側に向かうにつれ、前記幅方向に隣接する前記電撃線間にて、一旦緩傾斜となってから急傾斜となる形状であるものとできる。
【0009】
この構成によると、ベース部上面のうち、特に電撃線間の領域で、隣り合う電撃線が導通するような状態で雨水が残留することを抑制できる。
【0010】
また、前記ベース部の上面が、前記幅方向の一端側においては、底面から急に立ち上げられた形状とされており、前記幅方向の他端側においては、緩やかに降下して前記底面に至る形状とされているものとできる。
【0012】
また、前記複数の電撃線の各々につき、前記長手方向に直交する断面の輪郭形状が真円形状であるものとできる。
【0013】
この構成によると、例えば一般に市販されている金属製の丸棒を電撃線として利用できるので、製造コスト低減に貢献できる。
【0014】
また、前記ベース部と前記複数の電撃線とが組み合わされて所定長さの設置ユニットが構成され、長手方向に隣接する前記設置ユニットが、同一極性の電撃線同士に対して外方から嵌め込むことのできるジョイント部材により接続されているものとできる。
【0015】
この構成によると、複数の設置ユニットをジョイント部材により容易に接続できる。
【0016】
また、前記所定長さの設置ユニットにおいて、前記ベース部よりも前記複数の電撃線の各々の方が長いものとできる。
【0017】
この構成によると、両者の長さの差により電撃線がベース部から突出するため、ジョイント部材を電撃線に嵌め込む作業を容易にできる。更に、ベース部同士の間に隙間が生じるため、この隙間を排水のために用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、電撃線間での放電が生じにくい。このため、設置後の長期にわたって電撃線間での意図しない通電を抑制して、性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る鳥害対策装置における設置ユニットの設置例を示す縦断面斜視図である。
図2】(A)は前記設置ユニットの設置例を示す平面図であり、(B)は前記設置ユニット同士の接続部分を抜き出して示す側面図である。
図3】前記設置ユニットの形状を示す縦断面図である。
図4】前記鳥害対策装置に用いられるジョイント部材を示し、(A)は電撃線への取り付け状況を示す縦断面図、(B)は前記設置ユニットの屈曲配置部分における変形の一例を示す図である。
図5】従来の鳥害対策装置における設置ユニットの形状を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。図1に示すように、本実施形態の鳥害対策装置1は、建築物等の設置対象物(例えばパラペットPの上面や、パラペットPに被せられた笠木の上面)に設置される設置ユニット2と、設置ユニット2に対して電力を供給する給電ユニット3(概略のみ図示する)とを備える。なお、給電ユニット3は従来から用いられているものと同様の構成であることから、詳細な説明は行わない。給電ユニット3に関しては、太陽電池を備えたものとし、太陽光により発電された電力を昇圧して設置ユニット2に供給する構成とできる。この構成は、商用電源に接続不要であることから電気工事を省略できるため好ましい。
【0021】
設置ユニット2は、図2(A)(B)または図3に示すように、ベース部4と複数(本実施形態では2本)の電撃線5とが組み合わされて構成されている。電撃線5には給電ユニット3から高圧の直流電流が流される。本実施形態の給電ユニット3の出力電圧は無負荷状態で8000Vに設定されている。電撃線5は、複数のうち少なくとも1本が給電ユニット3の−極に接続され、他の少なくとも1本が給電ユニット3の+極に接続される。本実施形態では、電撃線5の1本ずつが給電ユニット3の−極と+極に接続される。異極の電撃線5同士は、給電ユニット3と反対側の端部で接続されることで閉回路を形成する。
【0022】
ベース部4は、幅寸法に対して高さ寸法が小さい扁平な形状であって、長手方向に延びる形状とされている。このベース部4は全体が不導体により形成されている。本実施形態では、軟質塩化ビニル樹脂の押出成形で形成されている。なお、ベース部4の全体が不導体であることは必須ではなく、少なくとも、各電撃線5の外周領域が不導体で形成されていればよい。
【0023】
ベース部4は所定の長手寸法に形成されている。複数のベース部4を長手方向に連ねていくことで、設置場所に応じたフレキシブルな設置が可能である。このベース部4の底面41には小さい凹凸が形成されている。本実施形態では長手方向に沿う小さな溝が多数設けられている。これは設置面に対する滑り止めとして機能する。
【0024】
ベース部4の上面には複数の嵌合溝42が形成されている。本実施形態では、電撃線5の本数に合わせて2本の嵌合溝42が平行に形成されている。各嵌合溝42は、電撃線5の断面形状に対応して、断面形状が円形とされており、上部がベース部4の上面に開放されている。図3に示すように、電撃線5はベース部4の一部が上方に露出するように嵌合溝42に嵌め込まれることで埋め込まれる。なお、長手方向に隣接する設置ユニット2を接続するため、図2(A)に示すように、ベース部4の長手方向寸法に比べて電撃線5の長手寸法が大きくなっている。このため、嵌合溝42に埋め込まれた電撃線5はベース部4の長手方向端部からはみ出た状態となる。隣り合う嵌合溝42の間隔は、電撃線5が埋め込まれた状態で、対策対象として想定される種類の鳥類の脚部が、隣り合う電撃線5同士に自然にまたがることができる間隔に設定される。電撃線5の上方への露出状態は、図示のように電撃線5がベース部4の上面から突出している状態(電撃線5の一部がベース部4の断面形状における上端よりも上方に位置する状態)が、鳥類の脚部に触れやすいことから好ましい。ただし、例えば嵌合溝42の奥側で電撃線5の一部がのぞくように露出している等、露出はするものの突出はしていない状態であってもよい。電撃線5を確実に支持するため、嵌合溝42の上部は電撃線5の配置される空間の一部を上方から覆うように張り出している。この構成では、ベース部4の有する弾性により、電撃線5を前記空間に確実に留めておくことができる。
【0025】
ベース部4の上面43は、図3に示す矢印43Sの方向であって、幅方向の一端側(図3における右側)よりも他端側(図3における左側)の方が順次低くなる傾斜(片傾斜)に沿って形成されている。なお、前記「沿って」とは、前記片傾斜のライン(直線状のライン)に平行なものだけに限られず、前記片傾斜のラインを挟んで上昇と下降が繰り返されるものも含まれる。要は、上面43が幅方向の一端側に比べて他端側の方が低くなるような形状であればよい。本実施形態の上面43は、幅方向の一端側においては、底面41から急に立ち上げられてアールを描くような形状とされている。そして、矢印43Sの方向に沿って下降していき、幅方向の他端側においては、緩やかに降下して底面41に至る形状とされている。
【0026】
ベース部4の上面43をこのように形成することにより、設置ユニット2が屋外で使用されることから、特に建築物の屋上端部に設置する場合、ベース部4の上面43にて雨水を一方向に流すことができるので、排水性が良い。図1に示すようにパラペットPの上面に設置ユニット2を設置する場合には、ベース部4のうち低い側の端部をパラペットPの上面における端縁に近い側に設置することで、ベース部4の上面43を流れた雨水をパラペットPの上面から速やかに落下させることができる。
【0027】
特に本実施形態では、ベース部4の上面43が、前記幅方向の一端側から他端側に向かうにつれ、幅方向に隣接する前記電撃線間(中間上面431)にて、一旦緩傾斜となってから急傾斜となるような波打った形状である。具体的には、図3に示すように、高い側の電撃線5よりも図示左方で、上面43がわずかに下降して一端側凹部431aとなってから上昇し、緩やかに上方に突出した凸状部分である中間凸部431bを経てから再度下降し、緩やかな凹状部分である他端側凹部431cに連続して、その後、低い側の電撃線5の方に至るような形状である。このような形状とすることで、ベース部4の上面43のうち、特に電撃線5間(中間上面431)の領域で雨水が溜まったとしても、比較的大きな空間を有する他端側凹部431c、または、比較的小さな空間を有する一端側凹部431aに分かれて溜まることになる。また、中間凸部431bが一端側凹部431a及び他端側凹部431cに比べて突出していることから、中間上面431の全域にわたって雨水が溜まることがない。よって、隣り合う電撃線5同士が、溜まり水を介して導通するような状態で雨水が残留することを抑制できる。なお、隣り合う電撃線5同士にまたがるようにして鳥類が脚部を置けるようにするため、中間凸部431bは高くなり過ぎないように、具体的には、隣り合う電撃線5同士においてベース部4から露出した部分の接線を基準として、当該接線の上方へ超えないように形成されることが望ましい。
【0028】
電撃線5は、導電体により形成された棒状体であって、長手方向に延びる形状とされている。本実施形態ではステンレス合金製とされている。腐食しにくいため、屋外に設置される設置ユニット2への使用に適している。この電撃線5は、長手方向に直交する断面の輪郭形状(外縁の形状)が角のない湾曲した形状である。ここでいう「角」とは、断面の輪郭形状において2本の直線が交差して形成されたような角に限定されず、湾曲した形状も含まれる。具体的には、湾曲に係る曲率が他の湾曲部分よりも顕著に大きいことによる「尖った」ような形状(図5に示した電撃線102のような形状)も含まれる。本実施形態の電撃線5では放電の起点となり得る角がない形状のため、電撃線5同士の間での放電が生じにくい。ここで特に、従来の鳥害対策装置では、電撃線同士の接続箇所において電撃線が空中に露出しており、この露出した部分にて、電撃線の角部分からの放電が集中的に発生していた疑いがあった。これに対し、本実施形態の電撃線5は角のない湾曲した形状であることから、電撃線5同士の接続箇所においても、従来疑われたような放電は発生しにくくなっている。したがって、設置後の長期にわたって電撃線5同士の間での意図しない通電を抑制して、鳥害対策装置1の性能を維持できる。本実施形態では、電撃線5の長手方向に直交する断面の輪郭形状が真円形状である。このため、例えば一般に市販され、容易に入手できる金属製の丸棒を電撃線5として利用できるので、製造コスト低減に貢献できる。本実施形態では直径4mmの丸棒が用いられている。ただし、丸棒を用いる場合、電撃線5の直径はこれに限られず種々の直径とできる。
【0029】
ここで、従来の鳥害対策装置では、電撃線が空中に設置されるよう構成されていたものが存在した。しかしこのような構成では、建築物等のメンテナンス時に作業者の足が引っ掛かる危険性があった。また、メンテナンス用具(例えば窓拭き作業の際に作業者がぶら下がるロープ)に圧迫されて電撃線が変形したり破損したりするおそれがあった。これに対して、本実施形態の電撃線5は扁平なベース部4に埋め込まれている。しかもベース部4は軟質の材料から形成されている。このため、電撃線が空中に設置された構成に比べて、前記不都合が起こりにくい。また、前述のようにベース部4の上面43が幅方向において緩やかに変化する形状とされているため、建築物に設置された状態でも作業者の足に引っ掛かりにくく、ベース部4が建築物から剥がれてしまう等の不都合が生じにくいことも利点である。
【0030】
前述のように、ベース部4と複数の電撃線5とが組み合わされて所定長さの設置ユニット2が構成される。本実施形態では1本の設置ユニット2の長さが2mとされている。ただし、設置ユニット2の長さは適宜設定することができる。また、図2(A)に示すように、設置ユニット2を直角方向に並べる場合、直角部分に面するベース部4の長手方向端縁を斜めにし、電撃線5の長さに長短の差を設けることも可能である。
【0031】
長手方向に隣接する設置ユニット2は、同一極性の電撃線5同士に対して外方から嵌め込むことのできるジョイント部材6により接続されている。なお、ジョイント部材6を含む、ベース部4が途切れた部分の下方には、電撃線5から建築物等への放電を防止するため、絶縁シートを敷く等、絶縁材料を配置しておくことが好ましい。
【0032】
ジョイント部材6は、長手方向に隣接する電撃線5にまたがるようにして、両電撃線5に図4(A)に示すような要領で弾性変形させて嵌め込まれる。嵌め込み前の状態が二点鎖線で示した状態であって、嵌め込み後の状態が実線で示した状態である。ジョイント部材6は、導電体により形成された板状体が折り曲げられたものである。本実施形態ではステンレス合金製である。長手方向の両端に取付部61が形成され、中間に接続部62が形成されている。このジョイント部材6により、複数の設置ユニット2を容易に接続できる。よって、設置の際の現場での作業性が良好である。
【0033】
本実施形態の設置ユニット2においては、ベース部4よりも電撃線5の方が長く形成されている。両者の長さの差により、電撃線5がベース部4から突出するため(電撃線5の端部がベース部4に覆われないため)、ジョイント部材6を電撃線5に嵌め込む作業が容易にできる。更に、図2(A)(B)に示すように、ベース部4同士の間に隙間2Sが生じるため、この隙間2SをパラペットP等の上面の排水のために用いることができる。よって、雨水がベース部4(特に底面41)の周囲に長期にわたって残留することを避けることができる。
【0034】
また、ジョイント部材6は、中間に位置する接続部62を折り曲げて使用することができる。このため、例えばパラペットのコーナー部分に設置ユニット2を設置する場合、例えば図2(A)に示すように、直交して設置された設置ユニット2の間に、折り曲げたジョイント部材6を取り付けることにより、コーナー部分の設置ユニット2を容易に接続できる。ジョイント部材6の折り曲げは、図2(A)に示すように、角を有するように折り曲げてもよいし、図4(B)に示すように、湾曲するように折り曲げてもよい。図4(B)に二点鎖線で示すように、接続部62を湾曲したり折り曲げたりする方向は適宜設定できる。
【0035】
次に、本実施形態の鳥害対策装置1と図5に示す従来の鳥害対策装置とを同一条件の設置場所に設置し、通電のテストを発明者が行ったので説明する。新旧鳥害対策装置の設置ユニットは、屋外に40m分設置された。晴れた昼間において、同一の給電ユニットを新旧鳥害対策装置の各々の設置ユニットに接続し、電撃線間に生じている電圧(電位差)を測定した。
【0036】
本実施形態の鳥害対策装置1では、通電距離0m、15m、40mのいずれでも電圧は7600Vであり、しかも、測定値は安定していた。これに対し、従来の鳥害対策装置では、通電距離0mでの電圧は7600V、同15mでの電圧は7500V、同40mでの電圧は7200Vであり、通電距離が長くなるにつれ電圧低下していた。しかも、測定値は上下動し安定していなかった。このテスト結果から、従来に比べて本実施形態の鳥害対策装置1が、電圧降下が生じず優れていることが実際に確認できた。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0038】
例えば、前記実施形態のベース部4及び電撃線5は直線状に延びる形状であったが、湾曲した形状とすることもできる。また、ベース部4及び電撃線5が直線状ではあるが、例えばベース部4にスリットを形成しておき、電撃線5に柔軟な線状体を用いることで、現場で容易に湾曲させることのできるフレキシブルな構成とすることもできる。
【0039】
また、前記実施形態では、電撃線5の長手方向に直交する断面の輪郭形状が真円形状であったが、長円形、楕円形、円形が複数連なった形状(メガネ形)等、種々の形状とすることができる。ただし、電撃線5の長手方向に直交する断面の輪郭形状(外縁の形状)が角のない湾曲した形状であったとしても、あまりにも扁平な形状では、扁平な先端部から放電してしまう可能性がある。このため、電撃線5の断面形状は、扁平率を0以上0.7以下とすることが好ましく、0以上0.5以下とすることがより好ましい。
【0040】
また、ジョイント部材6は前記実施形態のものに限定されるものではなく、例えばコイルばねのような形状とし、電撃線5の外周に配置させることもできる。その他、ジョイント部材6は、電撃線5に固定できる導電体であれば種々の形態とできる。
【符号の説明】
【0041】
1 鳥害対策装置
2 設置ユニット
3 給電ユニット
4 ベース部
43 ベース部の上面
431 上面のうち電撃線間の部分、中間上面
43S 傾斜の方向
5 電撃線
6 ジョイント部材
【要約】
【課題】設置後の長期にわたって電撃線間での意図しない通電を抑制して、性能を維持できる鳥害対策装置を提供すること。
【解決手段】不導体により形成され、長手方向に延びるベース部4と、導電体により形成され、前記ベース部4に一部が上方に露出するように埋め込まれ、前記長手方向に延び、前記長手方向に直交する断面の輪郭形状が角のない湾曲した形状である複数の電撃線5と、を備えることにより、電撃線5間での放電が生じにくい鳥害対策装置1である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5