(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の血糖計は、装置本体の同心円状に形成された複数のコネクタに対し、測定用チップの電極の突出部が各々1つずつ突出している。このような構成では、測定用チップの突出部と、装置本体のコネクタとの間で電気的な接触不良が生じると、血糖測定が直ちに実施不能に陥る。
【0007】
特に、測定用チップは、使い捨てにされるため大量生産されるものであり、電極(突出部)が不充分な突出量で形成されて、コネクタとの間で接触不良を起こす可能性がある。逆に、突出部の突出量が大きいと、測定用チップと装置本体の装着に支障が生じる(突出部が邪魔する)可能性がある。また、血糖計の使用時には、糖尿病等により視力が低下した患者が測定用チップと装置本体を傾けて接続する、測定用チップの端子に血液が付着する等の不測の事態も起こり易い。
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたもので、電極式に構成される測定用チップと装置本体の装着性を向上させ、且つ相互の装着状態で一層確実に電気的に導通することができる成分測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、測定用チップと、前記測定用チップを装着した状態で該測定用チップに取り込んだ液体の成分を測定する装置本体とを有する成分測定装置であって、前記測定用チップは、前記装置本体に対向する面部を有するベース部と、前記
面部上に設けられた測定対象部に導かれた前記液体の成分を電気的に検出する第1及び第2電極と、前記第1及び第2電極に各々電気的に接続し、前記面部上で同心円状に周回する第1及び第2電極端子と、
前記面部から前記第1及び第2電極端子よりも突出し、前記測定対象部を覆う遮断部と、を含み、前記装置本体は、前記測定用チップを装着保持する保持部と、前記測定用チップと前記保持部の装着状態で、前記第1電極端子に接触して電気的に導通する第1コネクタ端子部と、前記第2電極端子に接触して電気的に導通する第2コネクタ端子部と、を備え、
前記測定対象部及び前記遮断部は、前記第1電極端子の周方向の一部を切り欠いた箇所に設けられ、前記第
1コネクタ端子
部は、前記第
1電極端子に接触可能な接触部を複数有し、前記複数の接触部は、前記
第1電極端子の周方向上の前記切り欠いた箇所よりも相互に離間した位置に設けられ
、前記複数の接触部は、前記保持部から前記ベース部に向かって延出し前記第1電極端子に接触する棒部と、前記棒部に電気的に導通すると共に、前記接触部を延在方向に弾性的に変位させるバネ部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記によれば、成分測定装置は、面部上で同心円状に周回する第1及び第2電極端子を有することで、測定用チップを周回りにどのような姿勢としても、測定用チップと保持部を良好に係合する、すなわち装着性を向上することができる。また、第1及び第2コネクタ端子部の少なくとも一方が複数の接触部により構成されることで、第1又は第2電極端子に対し複数箇所で接触可能となる。このため、測定用チップと装置本体の装着状態で、一方の接触部が接触不良であっても、他方の接触部が電極端子に接触して、一層確実に電気的に導通することができる。特に、複数の接触部は、測定対象部の大きさよりも相互に離間した位置に設けられるので、一方の接触部が測定対象部に重なっても、他方の接触部が電極端子に接触して、電極が検出した信号を送ることができる。
【0012】
そして、成分測定装置は、接触部が
棒部とバネ部によって構成されることで、バネ部により棒部を付勢して、第1又は第2電極端子に対し積極的に接触可能となる。また、プローブは、測定用チップの凹凸部分を弾性的に許容するので、測定用チップと装置本体の装着を邪魔することなく、装着状態を良好に形成することができる。
さらに、測定用チップが遮断部を備えることで、測定対象部を接触部から確実に保護して、第1及び第2電極による液体の検出を良好に行うことができる。
【0013】
また、前記接触部は、前記保持部の中心部を軸対称として一対設けられるとよい。
【0014】
このように、一対の接触部が保持部の中心部を軸対称として設けられることで、例えば測定用チップが保持部に斜めに傾いて取り付けられて一方の接触部が電極端子に接触できない場合でも、他方の接触部が接触する。よって、測定用チップと装置本体をより一層確実に電気的に導通させることができる。
【0015】
さらに、前記面部上には、前記第1及び第2電極と前記第1及び第2電極端子が共に設けられるとよい。
【0016】
このように、測定用チップは、第1及び第2電極と第1及び第2電極端子を面部上に全て備えることで、構成が簡単化し、小型化を図ることができる。よって測定用チップの製造が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0017】
またさらに、
前記測定用チップは、血液を採取する採取孔を有し、前記遮断部は、前記採取孔の対向位置に、血液案内部としてスロープを有することが好ましい。
【0018】
上記構成に加えて、前記スロープは、前記採取孔側に傾いているとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、成分測定装置は、電極式に構成される測定用チップと装置本体の装着性を向上させ、且つ相互の装着状態で一層確実に電気的に導通することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る成分測定装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る成分測定装置10は、
図1に示すように、血液(液体)中のグルコース成分を測定する機器、所謂、血糖計として構成されている(よって以下、血糖計10ともいう)。この血糖計10は、主に、ユーザ(患者)が操作するパーソナルユースとして用いられ、例えば、ユーザは、食前の血糖を測定して自身の血糖管理を行う。勿論、医療従事者が患者の血糖を測定するために、本血糖計10を使用することもでき、この場合、血糖計10を適宜改変して医療施設等に設置可能な構成としてもよい。
【0023】
また、血糖計10は、血液中に含まれるグルコースの成分量(血糖値)を、電極16を用いて測定する電極式の血糖測定原理を採用している。この血糖計10は、電極16を有しユーザの血液を取り込む測定用チップ12と、測定用チップ12の装着により電極16に電気的に導通して取り込まれた血液のグルコースを測定する装置本体14とを備える。
【0024】
血糖計10の測定用チップ12は、装置本体14の先端部に着脱自在に装着される部材であり、1回の測定毎に廃棄する、所謂ディスポーザブルタイプに構成される。この測定用チップ12は、電極16が設けられたベース部18と、このベース部18の先端面から先端方向に突出するノズル部20と、ベース部18の基端面から基端方向に突出する係止部22とを有する。ベース部18、ノズル部20及び係止部22は、樹脂材料により一体成形される。
【0025】
ベース部18は、正面視で正円に形成された円板状の部位であり、弾性変形が抑制されるように比較的厚い板厚に形成されている。また、ベース部18の外周縁18aの外径は、ユーザが取り扱い易い程度の大きさに設定される。ベース部18の先端面18bの中心部付近には、ノズル部20が突出形成されている。
【0026】
ノズル部20は、先端面18bから先端方向に向かって所定長さ突出する筒状を呈している。ノズル部20の軸心及びベース部18の中心部には、ノズル部20の先端からベース部18の基端面18cに貫通する採取孔24が設けられる。採取孔24は、所定の内径に形成されてノズル部20の先端開口24aに連通している。先端開口24aに血液を接触させると、採取孔24は、毛細管現象により内部を通して、測定用チップ12内(ベース部18の基端面18c)に血液を取り込む。また、ノズル部20の外形は、ユーザが血液を点着し易いように、先端方向に向かって先細りとなるテーパ状(円錐状)に形成されるとよい。
【0027】
ベース部18の基端面18cは、装置本体14に対向する面部であり、係止部22が突出形成される他に、上述した電極16を複数備え、これらの電極16により血液を測定する測定対象部26を構成している。係止部22は、
図2Aに示すように、ベース部18の外周縁18aよりも若干内側位置で、周方向に等間隔に設けられた3つのフック28により構成される。
【0028】
3つのフック28は、
図2Bに示すように、基端方向に所定長さ突出し、基端側突出端28aが径方向内側に弾性的に変位可能となっている。各フック28は、基端側突出端28aの外側面に爪部30を備え、この爪部30は、測定用チップ12と保持部80の取付状態で、保持部80の係合溝96に引っ掛かる(
図4Bも参照)。これにより、測定用チップ12が保持部80に装着保持される。なお、係止部22の構成は、特に限定されず、例えば、フック28の形成数は自由に設定してよい。
【0029】
図2A及び
図2Bに示すように、測定用チップ12の複数の電極16は、係止部22の径方向内側でベース部18の基端面18c上に設けられる。具体的には、電極16は作用電極32(第1電極)と対極34(第2電極)により構成される。また、ベース部18の基端面18cには、作用電極32に対し電気的に接続される第1電極端子36と、対極34に対し電気的に接続される第2電極端子38とが設けられる。
【0030】
作用電極32、対極34、第1及び第2電極端子36、38は、高い導電率を有する銅等の金属線により構成され、ベース部18に対して公知の加工方法により固着される。この種の加工方法としては、例えば、金属線を
図2A中に示す形状に個別に成形し、各々接着する方法が挙げられる。勿論、他の加工方法として、印刷法、成膜法(蒸着法又はスパッタリング法等)、めっき(電解めっき法又は無電解めっき等)、エッチング、切削、レーザ加工(レーザトラッキング)等を適用してもよい。ベース部18に加工して設けられた作用電極32、対極34、第1及び第2電極端子36、38は、
図2Bに示すように、基端面18cに対し略均一な厚みで突出する。
【0031】
作用電極32は、試薬40(酵素)と血液が反応して生じる電子e
-を受ける電極である。この作用電極32は、ベース部18の背面視(
図2A参照)で、小径の円板状に形成された作用側極面42と、この作用側極面42と第1電極端子36を繋ぐ作用側極線44とを有する。作用側極面42は、血液の取込量や試薬40(酵素)の塗布量等に応じて、所定面積を有する円形状に形成される。作用側極線44は、作用側極面42の径よりも充分に幅狭に形成され、作用側極面42の所定位置から径方向外側且つ法線方向に延びる1本の線材で構成される。
【0032】
対極34は、作用電極32に対して電流を流動させる電極であり、血液の反応により水素イオンが周囲に存在する場合は、水素イオンに電子を供給する。対極34は、背面視で、C字状に形成され作用側極面42の径方向外側を囲う対側周回極線46と、この対側周回極線46と第2電極端子38を繋ぐ対側極線48とを有する。対側周回極線46は、作用側極面42の外縁に対し径方向外側に等間隔離れた位置で周回している。また、対側周回極線46は、対側周回極線46の開口部分から作用側極線44を外側に延出させて、作用電極32と対極34を非接触にしている。対側極線48は、対側周回極線46の幅よりも多少幅狭に形成され、対側周回極線46の所定位置から径方向外側且つ接線方向に延びる1本の線材で構成される。
【0033】
ここで、測定用チップ12は、ベース部18の基端面18c側の作用電極32及び対極34の形成位置に血液を導いて血糖を検出する測定対象部26を構築している。測定対象部26は、上記の電極16(作用電極32及び対極34)を含み、さらに電極16上に塗布される試薬40と、電極16及び試薬40を覆う囲い部50とを有する。この測定対象部26は、採取孔24の基端開口24b、及び基端開口24bの口縁に隣接する位置(近傍位置)に設けられる。
【0034】
測定対象部26の試薬40は、測定原理に応じて、血液中のグルコースと反応する種々の酵素を適用することができる。例えば、GOD法による測定原理を採用した場合は、グルコースオキシダーゼとフェリシアン化カリウムが試薬40として塗布される。また、GDH法の場合は、グルコースデヒドロゲナーゼとフェリシアン化カリウムが試薬40として塗布される。試薬40は、作用電極32の作用側極面42と対極34の対側周回極線46を被覆する範囲に塗布される。
【0035】
測定対象部26の囲い部50は、基端面18cに固着される一対の固着部52と、固着部52から若干量突出する一対の突出壁部54と、一対の突出壁部54の突出端部の間を架橋する架橋部56とを有する。囲い部50は、突出壁部54と架橋部56により、ベース部18の基端面18cとの間に空間部58を形成し、この空間部58に作用側極面42、対側周回極線46及び試薬40を収容している。これにより、囲い部50は、後述する装置本体14のプローブ92が電極16に接触することを遮断する遮断部としての役割を果たす。
【0036】
囲い部50の架橋部56は、採取孔24の略半分を覆うと共に、作用側極面42及び対側周回極線46の設置範囲に重なる大きさの長方形状に形成される。このため、囲い部50は、採取孔24の基端開口24bに重なる部分の空間部58と採取孔24を連通させている。また、架橋部56の採取孔24の対向位置には、採取孔24から電極16(作用側極面42、対側周回極線46)に血液を導くスロープ56a(血液案内部)が設けられる。このスロープ56aは、架橋部56の幅方向中間部を切欠いて採取孔24側に傾けた簡単な構成を採っている。
【0037】
架橋部56が基端面18cに対向する空間部58(採取孔24に重ならない他の部分)は、採取孔24から導かれた血液を滞留保持する保持空間58aとなっている。保持空間58aには、作用側極面42、対側周回極線46及び試薬40が存在し、保持空間58aで滞留する血液は、試薬40と容易に反応して、反応により生じた電子を作用電極32に移動させる。
【0038】
また、作用側極面42に連なる作用側極線44は、囲い部50の固着部52の下側を通るように設けられる。その一方で、対側周回極線46に連なる対側極線48は、囲い部50の採取孔24と反対側の貫通部分を通るように配置される。
【0039】
作用側極線44に接続される第1電極端子36は、背面視で、採取孔24の中心部を基点に周回するC字状を呈している。この第1電極端子36は、所定の幅を有すると共に、基端面18cから基端方向にある程度の厚みを有して突出形成され、その突出面36aが平坦状に形成されている。そして、第1電極端子36の開口部分には、囲い部50(測定対象部26)が非接触で配置される。換言すれば、第1電極端子36は、囲い部50の設置箇所だけ未周回部を有する円弧状の端子となっている。
【0040】
その一方で、対側極線48に接続される第2電極端子38は、背面視で、第1電極端子36と同心円状に形成された環状の端子となっている。つまり、第2電極端子38は、採取孔24の中心部を基点とし、且つ第1電極端子36の径方向外側を大きく周回している。第2電極端子38は、第1電極端子36と同程度の幅及び厚みを有し、その突出面38aが平坦状に形成される。また、第2電極端子38は、第1電極端子36から比較的離れた位置(作用側極面42と対側周回極線46の間隔よりも大きく離間した位置)に配置される。
【0041】
第1及び第2電極端子36、38の突出面36a、38aには、測定用チップ12と装置本体14の装着状態で、装置本体14に設けられたプローブ92が接触する。この構成については後に詳述する。
【0042】
測定用チップ12は、
図2Bに示すように、取付用のキャップ60に収容されてユーザに提供される(
図2A中ではキャップ60の図示を省略する)。このキャップ60は、測定用チップ12全体を収容する収容空間62を有し、この収容空間62の壁部64には、ベース部18の先端面18bに接触可能な段差64aが設けられている。段差64aには、測定用チップ12を仮止めする図示しない仮止手段が設けられ、仮止手段は、キャップ60の軸心部に対しベース部18(第1及び第2電極端子36、38)及び係止部22の中心部が一致するように測定用チップ12を固定する。これにより、係止部22は、収容空間62の壁部64から等間隔に離間した位置で基端方向に突出する。
【0043】
次に、血糖計10の装置本体14について説明する。装置本体14は、ディスポーザブルタイプに構成される測定用チップ12に対し、ユーザが血糖測定を簡易に繰り返すことができるように、携帯可能且つ頑強な機器に構成される。
【0044】
図1に示すように、装置本体14は、外観を構成する筐体70を有する。筐体70は、ユーザが把持操作し易い大きさに形成された箱体部72と、箱体部72の一辺(先端側)から先端方向に突出する筒状の突出ブロック74とを含む。箱体部72の内部には、血糖測定を行う制御部76と、血糖計10内に設けられる各種の電子部品に電力供給を行う電源部78が収容される。一方、突出ブロック74の先端部には、測定用チップ12を着脱自在に装着可能な保持部80が設けられる(
図3A及び
図3Bも参照)。
【0045】
また、箱体部72の上面には、電源ボタン82、操作ボタン84、ディスプレイ86が設けられ、突出ブロック74の上面にはイジェクトレバー88が設けられている。電源ボタン82は、ユーザの操作下に、血糖計10の起動と起動停止を切り換える。操作ボタン84は、起動状態となった血糖計10において、ユーザの操作に基づき、血糖値の測定や表示を行う、測定結果(過去の血糖値を含む)の表示を切り換える等の操作機能を有する。ディスプレイ86は、液晶や有機EL等により構成され、血糖値の表示やエラー表示等のように血糖値の測定においてユーザに提供する情報を表示する。
【0046】
さらに、イジェクトレバー88は、先端及び基端方向に移動可能に設けられ、突出ブロック74及び保持部80内に設けられる摺動部材89に連結している。摺動部材89は、
図3Bに示すように、突出ブロック74及び保持部80の周壁の内側近傍位置に設けられ、イジェクトレバー88に連れて先端及び基端方向に摺動可能である。そして、測定用チップ12を保持部80に装着した状態で、摺動部材89の先端部は、先端方向への移動に伴い、係止部22の基端側突出端28aに接触して押し出す。これにより測定用チップ12を保持部80から離脱させる。
【0047】
図1に戻り、突出ブロック74は、ユーザの指等に先端を押し当て易くするために、比較的細く形成され、箱体部72から先端方向に長く延出している。また、突出ブロック74は、複数の導線90を筒内に備え、これら導線90は、箱体部72内の電源部78から保持部80のプローブ92にわたって設けられる。
【0048】
保持部80は、絶縁性を有する樹脂材料により中空状の円筒状部として形成され、突出ブロック74の先端面から先端方向に向かって所定長さ突出している。保持部80の先端方向に突出する周壁80aの外径は、測定用チップ12の外周縁18aの外径に一致している。なお、突出ブロック74と保持部80は一体成形されていてもよい。
【0049】
保持部80の周壁80aの内側には、測定用チップ12の装着空間94が設けられ、この装着空間94は、保持部80の先端に設けられた露出口94aを介して外部に連通している。また、周壁80aの内面の基端寄りには、周方向に沿って測定用チップ12のフック28(爪部30)が引っ掛かる係合溝96が形成されている。係合溝96は、周壁80aの全周(360°)にわたって設けられることで、測定用チップ12がどのような姿勢で挿入されても係止部22との係止を実現する。
【0050】
装着空間94を構成する保持部80の底面80b(基端対向面)は、平坦状に形成され、4つのプローブ92(接触部)が所定位置に設けられている。各プローブ92は、作用電極32及び対極34に接続するための第1及び第2コネクタ端子部を構成している。各プローブ92は、底面から先端方向に向かって突出する筒状のガイド筒98と、ガイド筒98内に収容され弾性変形自在なバネ部100と、バネ部100の先端部に固着支持される棒部102とを備える。
【0051】
プローブ92のガイド筒98は、摺動用空間部99を有する中空状の円筒体に形成され、その基端部には内部端子104がそれぞれ設けられている。4つの内部端子104には上述した導線90が1つずつ接続され、保持部80には合計4つの導線90が接続されている。
【0052】
バネ部100は、導電性を有する材料により螺旋状に形成され、ガイド筒98内で収縮及び弾性復元(伸長)可能に設けられる。従って、バネ部100の先端で支持された棒部102は、ガイド筒98の延在方向に沿って弾性的に進退自在となっている。また、バネ部100は、その基端部が内部端子104に電気的に接続され、棒部102との間で電気を導通することが可能である。
【0053】
棒部102は、導電性を有する材料により、ガイド筒98の摺動用空間部99の内径よりも若干小径な外径を有する中実状の円柱体に形成される。棒部102の基端面には、溶接等の固着手段によりバネ部100が接合される。棒部102は、測定用チップ12が保持部80に装着されていない状態で、ガイド筒98から胴部が突出して、胴部に連なる先端部が露出口94a付近に達している。棒部102の先端部は、測定用チップ12の電極16に接触する部位となっており、電極16を傷付けずに接触するように、半球状に形成されている。
【0054】
以上の構成からなる4つのプローブ92は、測定用チップ12と保持部80の装着状態で、棒部102が測定用チップ12の第1及び第2電極端子36、38に接触して電気的に導通することが可能となっている。棒部102は、進退自在に変位することで、電極16の接触に伴い基端方向に押される。逆に言えば、棒部102は、バネ部100の弾性復元力により先端方向に付勢され、第1及び第2電極端子36、38に積極的に接触する。
【0055】
そして、4つのプローブ92は、正面視で、保持部80の中心部Oを通って直線状に並んで配置されている。以下、
図3A中の上側から下側に向かって符号A〜Dを付して各プローブ92A〜92Dと区別する。より詳細には、中心部Oを挟んで内側の一対のプローブ92B、92C同士が軸対称(180°反対側)に設けられ、中心部Oを挟んで外側の一対のプローブ92A、92D同士が軸対称に設けられている。
【0056】
内側の一対のプローブ92B、92Cは、第1電極端子36に対向する位置に配置される第1コネクタ端子群106(第1コネクタ端子部)を構成する。これらのプローブ92B、92Cは、測定用チップ12と保持部80の装着状態で、第1電極端子36を介して作用電極32に電気的に導通する。一対のプローブ92B、92Cの各内部端子104は、突出ブロック74の内部の導線90b、90cにそれぞれ接続され、この導線90b、90cは接点Aにて導線90eに接続し、この導線90eが電源部78の正極に接続されている。
【0057】
同様に、外側の一対のプローブ92A、92Dは、第2電極端子38に対向する位置に配置される第2コネクタ端子群108を構成する。これらのプローブ92A、92Dは、測定用チップ12と保持部80の装着状態で、第2電極端子38を介して対極34に電気的に導通する。一対のプローブ92A、92Dの内部端子104は、突出ブロック74の内部の導線90a、90dにそれぞれ接続され、この導線90a、90dは接点Bにて導線90fに接続し、この導線90fが電源部78の負極に接続されている。
【0058】
図1に戻り、装置本体14の制御部76は、例えば、図示しない演算部、記憶部、入出力部を有する制御回路によって構成される。この制御部76は、周知のコンピュータを適用することが可能である。
図3Bでは制御部76の図示を省略するが、例えば、制御部76は、電源部78とプローブ92の間に設けられ、電源部78からプローブ92への通電状態を制御及び検出して、血糖測定を実施する。血糖測定時には、ユーザの操作ボタン84の操作下に、電源部78から測定用チップ12に通電して血液中のグルコースを検出及び算出し、ディスプレイ86に算出した血糖値を表示する。
【0059】
血糖計10の測定用チップ12及び装置本体14は、基本的には以上のように構成される。次に、
図4A〜
図6を参照して、血糖計10の動作及び効果について説明する。
【0060】
ユーザは、血糖測定の実施時に、
図4Aに示すように、キャップ60の収容空間62に収容された測定用チップ12を装置本体14に取り付ける操作を行う。ユーザは、装置本体14の保持部80の正面に測定用チップ12及びキャップ60を対向させ、装置本体14と相対的にキャップ60を基端方向に移動させて保持部80の周壁80aに嵌め込む。そうすると、測定用チップ12の係止部22とキャップ60の壁部64の間に、保持部80の周壁80aがちょうど入り込み、係止部22が周壁80aの内側に沿ってスムーズに移動する。
【0061】
そして、
図4Bに示すように、キャップ60を基端方向に充分差し込むと、測定用チップ12の3つのフック28(爪部30)が保持部80の係合溝96に引っ掛かって、測定用チップ12と保持部80の装着がなされる。係合時には、爪部30と係合溝96の引っ掛かりが触感又は音によりユーザに伝わる。ユーザは、測定用チップ12が保持部80に装着したと認識すると、キャップ60を先端方向に引き戻し、測定用チップ12との仮留めを解除して、該測定用チップ12から離脱させる。
【0062】
測定用チップ12と保持部80の装着状態では、第1コネクタ端子群106のプローブ92B、92Cが第1電極端子36に接触する。この際、プローブ92B、92Cのいずれか一方が、囲い部50に接触する可能性がある(
図4B中ではプローブ92Cが囲い部50に接触した状態を示している)。しかしながら、第1コネクタ端子群106のプローブ92B、92Cは、互いに軸対称位置に設けられていることから、他方のプローブ92Bが第1電極端子36に接触して、電気的に導通する。これにより、作用電極32に連なる第1電極端子36と第1コネクタ端子群106は、オーミック接続が確実にとれることになる。
【0063】
囲い部50に接触したプローブ92Cは、バネ部100が他のプローブ92A、92B、92Dよりも収縮して棒部102を基端方向に容易に変位させる。従って、測定用チップ12と保持部80の装着状態で、プローブ92Cが測定用チップ12を強く押して、装着不良や脱落を起こすことが抑制される。
【0064】
一方、第2コネクタ端子群108のプローブ92A、92Dは、2つとも第2電極端子38に接触して電気的に導通する。これにより、対極34に連なる第2電極端子38と第2コネクタ端子群108もオーミック接続が確実にとれる。装置本体14の制御部76(
図1参照)は、測定用チップ12の装着を所定の検出手段(例えば、電極16と電源部78の通電状態を検出する等)により検出し、装着不良が生じた場合にユーザにその旨を知らせるとよい。
【0065】
図5Aに示すように、装置本体14に測定用チップ12を取り付けた後は、ユーザの血液を測定用チップ12内に取り込む。ユーザは、図示しない穿刺具での穿刺により指等から少量の血液を流出させ、この血液をノズル部20の先端開口24aに点着させる。この血液は、
図5Bに示すように、毛細管現象により採取孔24内を基端方向に流動する。
【0066】
図6に示すように、このように取り込まれた血液は、測定用チップ12の基端面18c側で囲い部50のスロープ56aに沿って測定対象部26に移動する。そして血液は、測定対象部26の試薬40と反応する。例えば試薬40にGODが適用されている場合には、血液中のグルコースがGODによってグルコン酸に変えられ、同時に電子伝達体であるフェリシアンイオンに電子を与えて、フェロシアンイオンに変換する。そして、電源部78から電極16に一定電圧が印加されると、フェロシアンイオンが作用電極32に電子を与え、フェリシアンイオンに戻り、対極34では水素イオンが電子を受け取って酸素と水を生成する。制御部76は、グルコース濃度に応じて生じた電子量(電流量)を計測して、血糖値を算出し、ディスプレイ86に表示する。
【0067】
血糖測定後は、ユーザによるイジェクトレバー88の前進操作により測定用チップ12が保持部80から離脱して、この測定用チップ12は廃棄される。
【0068】
以上のように本実施形態に係る血糖計10は、ベース部18上で同心円状に周回する第1及び第2電極端子36、38を有することで、測定用チップ12を周回りにどのような姿勢としても、測定用チップ12と保持部80を良好に係合することができる。すなわち、測定用チップ12と装置本体14の装着性が向上する。
【0069】
また、第1及び第2コネクタ端子群106、108は、一対のプローブ92B、92Cと、一対のプローブ92A、92Dにより構成されることで、第1又は第2電極端子36、38に対し複数箇所で接触可能となる。測定用チップ12と装置本体14の装着状態で、一方のプローブが接触不良であっても、他方のプローブが電極端子に接触して、一層確実に電気的に導通することができる。特に、プローブ92B、92Cは、測定対象部26の大きさよりも相互に離れた位置に設けられるので、一方のプローブ92Cが測定対象部26に重なっても、他方のプローブ92Bが第1電極端子36に確実に接触する。よって、測定用チップ12の電流の検出を確実に行うことができる。
【0070】
この場合、プローブ92は、測定用チップ12の凹凸部分(測定対象部26等)を弾性的に許容するので、測定用チップ12と装置本体14の装着を邪魔することなく、装着状態を良好に形成することができる。また、血糖計10は、一対のプローブ92B、92C、及び一対のプローブ92A、92Dが、保持部80の中心部Oの軸対称にそれぞれ設けられる。これにより例えば、測定用チップ12が保持部80に斜めに傾いて取り付けられて一方のプローブが電極端子に接触できない場合でも、他方のプローブが電極端子に接触する。よって、測定用チップ12と装置本体14をより一層確実に電気的に導通させることができる。
【0071】
さらに、測定用チップ12は、作用電極32、対極34、第1及び第2電極端子36、38をベース部18の基端面18c上に全て備えることで、構成が簡単化し、小型化を図ることができる。よって、大量生産される測定用チップ12の製造が容易となり、製造コストを低減することができる。またさらに、測定用チップ12が囲い部50を備えることで、測定対象部26をプローブ92から確実に保護して、作用電極32と対極34による血糖の検出を良好に行うことができる。
【0072】
なお、本発明に係る成分測定装置(血糖計10)は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の応用例又は変形例をとり得る。例えば、測定用チップ12は、第2電極端子38を環状に形成して囲い部50のように接触を遮断する構成がないことから、第2コネクタ端子群108を構成するプローブ92は1つだけでもよい。また、第1及び第2コネクタ端子群106、108は、3以上のプローブ92によって構成すれば、さらに電気的導通を確実なものとすることができる。
【0073】
また、第1電極端子36に接触する2つのプローブ92B、92Cは、180°反対側の位置に設けた構成に限定されず、相互のプローブ92B、92Cが、少なくとも測定対象部26(囲い部50)のサイズよりも離れる間隔に設定されていればよい。これにより、一方のプローブ92Cが囲い部50に接触しても他方のプローブ92Bが第1電極端子36に確実に接触する。
【0074】
また、本実施形態に係る血糖計10は、作用電極32と対極34の2極により電極16を構成しているが、電極16の形成数は特に限定されるものではない。例えば、血糖計10は、作用電極32や対極34の他にも参照電極や、ヘマトクリット値を検出するための補助電極をさらに設けた構成であってもよい。この場合、形成した電極の種類に応じて、測定用チップ12の電極端子や装置本体14のコネクタ端子部(プローブ92)を適宜設けることは勿論である。
【0075】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。