特許第6419637号(P6419637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419637
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20181029BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   B60J5/06 H
   B60J5/00 P
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-85212(P2015-85212)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-203724(P2016-203724A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100161399
【弁理士】
【氏名又は名称】大戸 隆広
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】深堀 敬
(72)【発明者】
【氏名】後藤 譲治
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−335412(JP,A)
【文献】 特開2007−168652(JP,A)
【文献】 特開平08−091051(JP,A)
【文献】 特開平08−025971(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0031003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に連結部材を介してドアが連結され、このドアによって、前記車体に形成された開口部を開閉可能な車体構造において、
前記ドアを構成するドアパネルは、前記連結部材と、前記ドアパネルを補強する補強部材と、によって挟みこまれ、
前記ドアパネルには、前記補強部材の車幅方向への移動を規制する規制部材が設けられ、
前記補強部材は、前記ドアパネルに向かって突出する補強部材突部を有し、
この補強部材突部は、前記ドアパネルに設けられた係合穴に係合され、
前記補強部材突部の前後方向幅は、前記係合穴の前後方向幅よりも小さいことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記補強部材突部は、プレス成形により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記補強部材突部の上下方向幅は、前記係合穴の上下方向幅と略同一に形成され、
前記補強部材突部と前記係合穴とは、それぞれ2つ以上形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記補強部材には、前記ドアパネルから離れるように突出する少なくとも2つの突出部が設けられ、
前記規制部材は、少なくとも一部が、前記突出部の間に位置していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車体構造。
【請求項5】
前記突出部には螺子穴が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の車体構造。
【請求項6】
前記規制部材は、長尺の金属板製の部材であり、
前記規制部材と、前記補強部材の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計は、前記係合穴と、前記補強部材突部の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計よりも大きいことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に連結部材を介してドアが連結された車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前後方向にスライド可能なスライドドアは、車体に対して連結部材を介して取り付けられている。このような車体構造に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、車両用ドアは、ドアの高さ方向略中央にセンターローラーが取り付けられ、このセンターローラーが車体に取り付けられることにより、車体にスライド可能に設けられている。即ち、連結部材としてのセンターローラーを介して、車体に取り付けられている。センターローラーは、パネルの裏面に配置された補強部材によって支持されている。
【0004】
ドアパネルの前後方向に対する、連結部材(センターローラー)の取り付け位置は、ドアと車体との見切りに影響を及ぼす。即ち、連結部材が、前後方向の不正確な位置に取り付けられると、車両の外観が低下する。このため、連結部材は、ドアパネルに対して、特に前後方向において正確な位置に取り付けられることが必要である。
【0005】
この点、補強部材によって支持される連結部材を正確な位置に取り付ける方法の一例として、図8において説明する方法が考えられる。
【0006】
図8を参照する。図8には、ドアパネルの一部が車外側から見た状態において示されている。連結部材101をドアパネル102に取り付ける際に、予め、補強部材103をドアパネル102に仮保持させる方法が考えられる。補強部材103は、上下方向に延びる仮保持バンド104と、車体前後方向に延びる第2の仮保持バンド105と、によって仮保持されている。各仮保持バンド104,105は、ドアパネル102に溶接されている。
【0007】
各仮保持バンド104,105は、補強部材103の変位を許容するようにして、補強部材103を保持している。この変位可能な量が、連結部材101を位置決めする際の調整代となる。
【0008】
次に、連結部材101を補強部材105に仮締結する。ボルト106,106を用いて、連結部材101を補強部材105に連結する。この際、ボルト106,106は、連結部材101及び補強部材105の変位を許容する程度に締結される。
【0009】
次に、連結部材101の位置決めを行い、ボルト106,106を補強部材105に本締結する。これにより、連結部材101と、補強部材105と、によって、ドアパネル102が挟みこまれると共に、ドアパネル102の所定の位置に連結部材101を固定することができる。
【0010】
ところで、このような取り付け方法を採用した場合には、2枚の仮保持バンド104,105をそれぞれドアパネル102に溶接する必要がある。部品点数の削減、取り付け作業の簡易化、ドアの軽量化を考慮すると、仮保持バンド104を1枚にできれば好ましい。
【0011】
しかし、2枚の仮保持バンド104,105を、単純に1枚とするだけでは、連結部材101の取り付け作業時に補強部材103が落下する虞がある。一方、補強部材103の落下を防止するために、隙間の少ない仮保持バンド104を用いると、位置決めのための調整代が確保できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4551689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、少ない部品点数であっても、連結部材の取り付け作業時に、補強部材の落下を抑制することのできる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1による発明によれば、車体に連結部材を介してドアが連結され、このドアによって、前記車体に形成された開口部を開閉可能な車体構造において、
前記ドアを構成するドアパネルは、前記連結部材と、前記ドアパネルを補強する補強部材と、によって挟みこまれ、
前記ドアパネルには、前記補強部材の車幅方向への移動を規制する規制部材が設けられ、
前記補強部材は、前記ドアパネルに向かって突出する補強部材突部を有し、
この補強部材突部は、前記ドアパネルに設けられた係合穴に係合され、
前記補強部材突部の前後方向幅は、前記係合穴の前後方向幅よりも小さいことを特徴とする車体構造が提供される。
【0015】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記補強部材突部は、プレス成形により形成された。
【0016】
請求項3に記載のごとく、好ましくは、前記補強部材突部の上下方向幅は、前記係合穴の上下方向幅と略同一に形成され、
前記補強部材突部と前記係合穴とは、それぞれ2つ以上形成されている。
【0017】
請求項4に記載のごとく、好ましくは、前記補強部材には、前記ドアパネルから離れるように突出する少なくとも2つの突出部が設けられ、
前記規制部材は、少なくとも一部が、前記突出部の間に位置している。
【0018】
請求項5に記載のごとく、好ましくは、前記突出部には螺子穴が形成されている。
【0019】
請求項6に記載のごとく、好ましくは、前記規制部材は、長尺の金属板製の部材であり、
前記規制部材と、前記補強部材の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計は、前記係合穴と、前記補強部材突部の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計よりも大きい。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明では、補強部材に形成され、ドアパネルに向かって突出する補強部材突部は、ドアパネルに設けられた係合穴に係合される。連結部材の取り付け作業時に、補強部材が脱落しそうになることがある。このような場合に、補強部材突部が係合穴に引っ掛かることにより、補強部材の落下が抑制される。このため、連結部材の取り付け作業時において、補強部材を仮保持するための規制部材を削減したとしても、十分な調整代を確保することができる。
【0021】
加えて、補強部材突部の前後方向幅は、係合穴の前後方向幅よりも小さい。前後方向において、補強部材突部が係合穴に対して移動が可能になる。車体前後方向に延びる規制部材を用いることなく、位置調整分の余裕を持たせることが可能となる。位置決めの正確さとドアの軽量化が両立される。
【0022】
請求項2に係る発明では、補強部材突部は、プレス成形により形成されている。別部材を接合することなく、プレス成形するだけなので、接合の工程と、別部材の重量、及び、部品の増加によるコストを削減できる。
【0023】
請求項3に係る発明では、補強部材突部の上下方向幅は、係合穴の上下方向幅と略同一に形成され、且つ、補強部材突部と係合穴とは、それぞれ2つ以上形成されている。連結部材の取り付け作業時に、補強部材が回転することを規制することができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、補強部材には、ドアパネルから離れるように突出する少なくとも2つの突出部が設けられ、規制部材は、少なくとも一部が、突出部の間に位置している。規制部材が突出部同士を結んだ線分上に配置されるので、車幅方向と直交する方向において、補強部材の移動を規制することができ、補強部材突部を係合穴に係合させる前の段階でも、規制部材を補強部材に押し付けておくだけで、仮止めすることができる。
【0025】
請求項5に係る発明では、突出部には螺子穴が形成されている。突出部において螺子切りの車幅方向長さを確保することが出来る。1つの部材によって、補強部材の位置規制と、螺子切りを共用できる。また、突出部に螺子切りが設けられていることにより、他の部位を肉薄にすることができ、補強部材を軽量に出来る。
【0026】
請求項6に係る発明では、規制部材と、補強部材の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計は、係合穴と、補強部材突部の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計よりも大きい。規制部材の成形は通常プレス成形により行われるため、規制部材は、スプリングバックにより精度を高く出来ないことがある。これに対して、補強部材突部は、単なる凸形状とすることで形成できるため、高い精度により成形することが出来る。組み付け後には、精度高く形成できる補強部材突部と係合穴とによって上下方向が位置決めされればよく、規制部材自体は位置決めにかかわることがないようにすることができるので、規制部材の成形精度が要求されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例による車体構造が採用された車両の側面図である。
図2図1に示されたドアがアウタパネルを外された状態において示される図である。
図3図2の3部の拡大図である。
図4図3の4−4線断面図である。
図5図3に示された補強部材の斜視図である。
図6図3に示されたインナパネルを車室側から見た状態の図である。
図7図6の7部の拡大図である。
図8】連結部材の取付方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下、Ceは車幅中央を示している。
<実施例>
【0029】
図1を参照する。図1には、車両10の一例として、ワゴン車が示されている。車両10は、車体11の後側部に開口部12が形成され、この開口部12を開閉可能にドア13が設けられてなる。ドア13は、車体11の側面部に設けられたレール14上をスライド可能な、いわゆるスライドドアである。ドア13は、前後方向にスライド可能に車体11に支持されている。
【0030】
図2を併せて参照する。ドア13は、車室側に配置されているインナパネル20(ドアパネル20)に、車外から視認可能なアウタパネル16が被されてなる。
【0031】
インナパネル20の上部には、窓開口21が形成されている。インナパネル20の窓開口21の後下部に形成されたコーナ部22に沿って、コーナスティフナ17が接合されている。コーナスティフナ17は、インナパネル20を補強するための板材である。
【0032】
コーナスティフナ17の下部には、リヤラッチスティフナ18が接合されている。リヤラッチスティフナ18は、インナパネル20に接合されている板材である。リヤラッチスティフナ18は、ドア13の後部に設けられるラッチ装置の取り付け剛性を高めている。
【0033】
図3及び図4を参照する。インナパネル20、コーナスティフナ17、及び、リヤラッチスティフナ18が重ねられた部位の車室Vi側に、センターローラー19(連結部材19)が取り付けられている。センターローラー19は、車体11(図1参照)に形成されたレール14(図1参照)によって支持されている。即ち、ドア13は、センターローラー19を介して、車体11に連結されている。センターローラー19及びレール14の構造は、周知の構造が採用される。
【0034】
インナパネル20、コーナスティフナ17、及び、リヤラッチスティフナ18が重ねられた部位の車外側には、補強部材30が取り付けられている。補強部材30は、センターローラー19の取り付け剛性を高めるために設けられている。補強部材30は、センターローラー19と共に、インナパネル20、コーナスティフナ17、及び、リヤラッチスティフナ18を挟みこんでいる。
【0035】
補強部材30は、仮保持バンド40(規制部材40)によって、車幅方向(図4左右方向)への移動が規制されている。仮保持バンド40は、プレス成形によって成形された長尺の金属板製の部材である。仮保持バンド40は、センターローラー19のインナパネル20への取り付けの際に、補強部材30の車幅方向への移動を規制しつつ、前後方向(図3左右方向)への移動を許容する部材である。
【0036】
図3及び図5を参照する。図5には、車室側から見た状態の補強部材30が示されている。即ち、図5には、図3に示された補強部材30が裏面側から見た状態によって示されている。
【0037】
補強部材30は、略六角形上の板状の部材に、補強側ピン挿通丸穴31、補強側ピン挿通長穴32、突出部差込穴33,33、補強部材突部34,34が形成されると共に、突出部差込穴33,33に突出部35,35が差し込まれてなる。
【0038】
補強側ピン挿通丸穴31、及び、補強側ピン挿通長穴32については、詳細を後述する。
【0039】
補強部材突部34,34は、インナパネル20に向かって突出している。補強部材突部34,34は、板材の一部をプレスすることによって形成されている。
【0040】
図6及び図7を参照する。補強部材突部34,34は、インナパネル20に形成された係合穴23,23に係合している。係合穴23,23は、前後に長い長穴である。補強部材突部34,34の直径は、係合穴23,23の上下の幅に比べて、僅かに小さい。
【0041】
図4を参照する。突出部35は、ボルト51が締結されるボスであり、突出部差込穴33(図5参照)に差し込まれると共に固定されている。突出部35には、ボルト51が螺合可能な螺子穴35aが形成されている。
【0042】
図3を参照する。仮保持バンド40は、リヤラッチスティフナ18に溶接されている脚部41,41と、これらの脚部41,41から補強部材30の縁に沿って立ち上げられた立ち上げ部42,42と、これらの立ち上げ部42,42間に渡され補強部材30に接触している移動規制部43と、からなる。
【0043】
立ち上げ部42,42から移動規制部43まで、連続してビード42a,42a,43aが形成されている。移動規制部43は、突出部35,35の間を通り、上下方向に延びている。移動規制部43には、ビード42a,43a,42aを避けた部位に、規制部側ピン挿通穴43b,43bが形成されている。
【0044】
図5を併せて参照する。規制部側ピン挿通穴43b,43bは、補強側ピン挿通丸穴31、補強側ピン挿通長穴32にそれぞれ重ねられている。重ねた上で、ピン52,52を挿入することにより、仮保持バンド40を補強部材30に対して位置決めすることができる。この位置決めは、移動規制部43のインナパネル20(リヤラッチスティフナ18)への溶接時に行い、溶接後には、ピン52,52を取り外すことができる。詳細は、後述する。
【0045】
図3及び図4を参照する。インナパネル20の前後方向に対する、センターローラー19の取り付け位置は、ドア13と車体11(図1参照)との見切りに影響を及ぼす。即ち、センターローラー19が、前後方向の不正確な位置に取り付けられると、車両10の外観が低下する。このため、センターローラー19は、インナパネル20に対して、特に前後方向において正確な位置に取り付けられることが必要である。補強部材30によって支持されるセンターローラー19を正確な位置に取り付ける方法を以下に説明する。
【0046】
まず、補強部材突部34をインナパネル20に形成された係合穴23に係合させる。補強部材30は、上下方向へ位置決めされた状態となる。この工程は、補強部材突部34をインナパネル20の係合穴23に係合させて、補強部材30の上下方向への位置決めを行う工程、ということができる。
【0047】
このとき、ピン52,52(図5参照)を用いて、仮保持バンド40を補強部材30に連結しておくとよい。即ち、補強部材30の上下方向への位置決めを行う工程の際には、補強部材30の所定の位置に仮保持バンド40を連結させておくことが好ましい。仮保持バンド40が、補強部材30に連結されていることにより、補強部材30の上下方向への位置決め時に、仮保持バンド40の位置決めも一体的に行われるからである。
【0048】
次に、仮保持バンド40の脚部41,41を、インナパネル20(リヤラッチスティフナ18)へ溶接する。溶接することにより、上下方向に位置決めされた補強部材30の、車幅方向への移動を規制する。この工程は、仮保持バンド40をインナパネル20に接合して、上下方向に位置決めされた補強部材30の、車幅方向への移動を規制する工程、ということができる。仮保持バンド40の接合が終わったら、ピン52,52を抜く。
【0049】
次に、センターローラー19を、インナパネル20の補強部材30が配置されるのとは逆側の面に合わせる工程を行う。
【0050】
次に、ボルト51をセンターローラー19から補強部材30の突出部35に向かって挿通させて、センターローラー19を補強部材30に仮止めする工程を行う。仮止めとは、センターローラー19、及び、補強部材30の前後方向への移動を許容しつつ、これらが連結されている状態をいう。
【0051】
次に、仮止めされたセンターローラー19、及び、補強部材30を前後方向の所定の位置に合わせる工程を行う。
【0052】
次に、インナパネル20の所定の位置に合わされたセンターローラー19、及び、補強部材30を固定する工程を行う。ボルト51を締め付けることにより、インナパネル20の所定の位置にセンターローラー19、及び、補強部材30は、固定される。
【0053】
以上の本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0054】
図3及び図6を参照する。補強部材30に形成され、インナパネル20に向かって突出する補強部材突部34は、インナパネル20に設けられた係合穴23に係合される。センターローラー19の取り付け作業時に、補強部材30が脱落しそうになることがある。このような場合に、補強部材突部34が係合穴23に引っ掛かることにより、補強部材30の落下が抑制される。なお、車幅方向への移動は、仮保持バンド40によって規制されている。このため、センターローラー19の取り付け作業時において、補強部材30を仮保持するための仮保持バンド40を1枚に削減したとしても、十分な調整代を確保することができる。
【0055】
加えて、補強部材突部34の前後方向幅は、係合穴23,23の前後方向幅よりも小さい。前後方向において、補強部材突部34が係合穴23に対して移動が可能になる。車体前後方向に延びる規制部材(図8参照)を用いることなく、位置調整分の余裕を持たせることが可能となる。位置決めの正確さとドア13の軽量化が両立される。
【0056】
さらに、補強部材突部34は、プレス成形により形成されている。別部材を接合することなく、プレス成形するだけなので、接合の工程と、別部材の重量、及び、部品の増加によるコストを削減できる。
【0057】
さらに、補強部材突部34の上下方向幅は、係合穴23,23の上下方向幅と略同一に形成され、且つ、補強部材突部34と係合穴23とは、それぞれ2つ以上形成されている。センターローラー19の取り付け作業時に、補強部材30が回転することを規制することができる。
【0058】
さらに、補強部材30には、インナパネル20から離れるように突出する少なくとも2つの突出部35,35が設けられ、仮保持バンド40は、少なくとも一部が、突出部35,35の間に位置している。仮保持バンド40が突出部35,35同士を結んだ線分上に配置されるので、車幅方向と直交する方向において、補強部材30の移動を規制することができ、補強部材突部34を係合穴23に係合させる前の段階でも、仮保持バンド40を補強部材30に押し付けておくだけで、仮止めすることができる。
【0059】
さらに、突出部35,35には螺子穴35a,35aが形成されている。突出部35,35において螺子切りの車幅方向長さを確保することが出来る。1つの部材によって、補強部材30の位置規制と、螺子切りを共用できる。また、突出部35,35に螺子切りが設けられていることにより、他の部位を肉薄にすることができ、補強部材30を軽量に出来る。
【0060】
図3及び図5を参照する。補強部材30には、補強側ピン挿通穴31,32(補強側ピン挿通丸穴31、補強側ピン挿通長穴32)が形成されている。仮保持バンド40には、規制部側ピン挿通穴43b,43bが形成されている。これらの補強側ピン挿通穴31,32、及び、規制部側ピン挿通穴43b,43bには、共通のピン52,52を挿通させることができる。ピン52,52を挿通させることにより、仮保持バンド40は、補強部材30に対して、位置決めされる。このため、補強部材突部34をインナパネル20の係合穴23に係合させた際に、仮保持バンド40も一体的に位置決めすることができる。これにより、仮保持バンド40をインナパネル20の所定の位置へ容易に接合させることができる。なお、仮保持バンド40は、補強部材30の車幅方向への移動を規制できればよいため、前後方向への多少のずれは許容される。
【0061】
補強側ピン挿通穴31,32、及び、規制部側ピン挿通穴43b,43bは、2つずつ形成されている。これにより、仮保持バンド40が補強部材30に対して回転することを防止できる。
【0062】
2つの補強側ピン挿通穴31,32のうちの1つは、長穴であることが望ましい。製品間に必然的に生じる寸法誤差を吸収することができるためである。
【0063】
図4及び図7を参照する。仮保持バンド40と、補強部材30の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計L1+L2は、係合穴23と、補強部材突部34の上下の端部と、の間にそれぞれ形成されている隙間の長さの合計L3+L4よりも大きい。仮保持バンド40の成形は通常プレス成形により行われるため、仮保持バンド40は、スプリングバックにより精度を高く出来ないことがある。これに対して、補強部材突部34は、単なる凸形状とすることで形成できるため、高い精度により成形することが出来る。組み付け後には、精度高く形成できる補強部材突部34と係合穴23とによって上下方向が位置決めされればよく、仮保持バンド40自体は位置決めにかかわることがないようにすることができるので、仮保持バンド40の高い成形精度が要求されることがない。
【0064】
センターローラー19と、補強部材30とは、インナパネル20に加えて、インナパネル20を補強している補強パネル17,18(コーナスティフナ17、及び、リヤラッチスティフナ18)をも挟みこんでいる。これらの補強パネル17,18をも挟みこむことにより、センターローラー19の取り付け剛性を高めることができる。
【0065】
尚、本発明による車体構造は、実施例において、車体左側部に取り付けられたスライドドアを例に説明したが、車体右側部に取り付けられるスライドドアにも同様の構成を採用することができる。このとき、車体左側部についての説明は、適宜、車体右側部についての説明に読み替えることができる。
【0066】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の車体構造は、ワゴン車に好適である。
【符号の説明】
【0068】
11…車体
12…開口部
13…ドア
19…センターローラー(連結部材)
20…インナパネル(ドアパネル)
23…係合穴
30…補強部材
34…補強部材突部
35…突出部
35a…螺子穴
40…仮保持バンド(規制部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8